IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シロキ工業株式会社の特許一覧 ▶ 日本発條株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-シート支持装置 図1
  • 特許-シート支持装置 図2
  • 特許-シート支持装置 図3
  • 特許-シート支持装置 図4
  • 特許-シート支持装置 図5
  • 特許-シート支持装置 図6
  • 特許-シート支持装置 図7
  • 特許-シート支持装置 図8
  • 特許-シート支持装置 図9
  • 特許-シート支持装置 図10
  • 特許-シート支持装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】シート支持装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/005 20060101AFI20231024BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B60N2/005
B60N2/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020114166
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012366
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】アイシンシロキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 明弘
(72)【発明者】
【氏名】西城戸 智
(72)【発明者】
【氏名】吉野 英明
(72)【発明者】
【氏名】薦口 司
(72)【発明者】
【氏名】西田 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】杉本 正樹
【審査官】西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-202814(JP,A)
【文献】特開2009-274647(JP,A)
【文献】実開平6-12165(JP,U)
【文献】特開2003-290951(JP,A)
【文献】特開2013-107558(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0144746(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00- 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートと、
前記プレートに溶接された状態で取り付けられてシートを支持する一対のブラケットとを備え、
一対の前記ブラケットは、それぞれ前記プレートに溶接された溶接部を有する平板部を備え、
一対の前記平板部の少なくとも一方には、シートベルトを固定するためのベルトアンカーを取り付ける取付部が設けられており、
一対の前記平板部における互いに対向する方向を内方とし、互いに対向する方向とは反対の方向を外方とし、前記シートの前側を前方とし、前記シートの後側を後方とすると、
前記取付部が設けられた平板部の溶接部は、当該溶接部の後端部から外方に傾斜しつつ前方に向かって延びる傾斜部を有していることを特徴とするシート支持装置。
【請求項2】
前記傾斜部の少なくとも一部は、前記取付部よりも前記平板部の後方に位置する請求項1に記載のシート支持装置。
【請求項3】
前記傾斜部を有する溶接部は、前記傾斜部と連続しており、前記溶接部の後端部から前記平板部の前方に折り返す前方折り返し部を有している請求項1又は2に記載のシート支持装置。
【請求項4】
前記傾斜部を有する溶接部は、前記傾斜部よりも前方において、前記傾斜部から連続して前方に延びる延出部を有している請求項1~3のいずれか一項に記載のシート支持装置。
【請求項5】
前記傾斜部を有する溶接部は、前記傾斜部よりも前方において、前記傾斜部から連続しており、前記平板部の内方に曲がるとともに後方に折り返す後方折り返し部を有している請求項1~4のいずれか一項に記載のシート支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレートにブラケットが溶接されたシート支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アッパレールにブラケットが溶接されたシート支持装置について記載している。
図11に示すように、アッパレール62上にブラケット63を配置した後、レーザー溶接を行うことによって両者を接続している。ブラケット63は、アッパレール62の天壁に対して平行に延びる平板部64と、平板部64の幅方向の端部から上方に延びる縦壁部65とを有している。ブラケット63には、アッパレール62に溶接された溶接部としての溶接ビード66が2箇所に形成されている。溶接ビード66は、前後方向の後端部から前方に向かって縦壁部65から離間するように傾斜して延びた後、縦壁部65側に屈曲して、さらに縦壁部65に接近するように傾斜して、くの字状に延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-202814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図11に示すように、特許文献1のシート支持装置60においてブラケット63の縦壁部65にシートベルトを固定するためのベルトアンカー(図示省略)が取り付けられていると、ベルトアンカーに対してアッパレール62から離間する方向に荷重が印加された際に、平板部64にはベルトアンカーによって後方から前方に向かって応力が加わる。具体的には、幅方向の縦壁部65側から離間しつつ上方に向かう方向(図11の紙面に対して手前側)に応力が加わる。この応力は溶接部の後端部66aに集中するため、後端部66aから溶接部が剥離しやすくなるという課題を有している。本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブラケットにおける溶接部の剥離を抑制しうるシート支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのシート支持装置は、プレートと、前記プレートに溶接された状態で取り付けられてシートを支持する一対のブラケットとを備え、一対の前記ブラケットは、それぞれ前記プレートに溶接された溶接部を有する平板部を備え、一対の前記平板部の少なくとも一方には、シートベルトを固定するためのベルトアンカーを取り付ける取付部が設けられており、一対の前記平板部における互いに対向する方向を内方とし、互いに対向する方向とは反対の方向を外方とし、前記シートの前側を前方とし、前記シートの後側を後方とすると、前記取付部が設けられた平板部の溶接部は、当該溶接部の後端部から外方に傾斜しつつ前方に向かって延びる傾斜部を有していることを要旨とする。
【0006】
この構成によれば、溶接部が後端部から外方に傾斜しつつ前方に向かって延びる傾斜部を有していることにより、ベルトアンカーによって取付部に対してプレートから離間する方向(前方に対して上方と内方の両方に傾斜した方向)に荷重が印加された際に、溶接部に加わる応力を傾斜部で分散させることができる。溶接部の一点に応力が集中する態様に比べて溶接部の耐久性を向上させることができるため、溶接部の剥離を抑制することができる。
【0007】
上記シート支持装置について、前記傾斜部の少なくとも一部は、前記取付部よりも前記平板部の後方に位置することが好ましい。ベルトアンカーによって取付部に対してプレートから離間する方向(前方に対して上方と内方の両方に傾斜した方向)に荷重が印加されると、平板部における後端部の外方側から応力が発生しやすい。傾斜部の少なくとも一部が取付部よりも平板部の後方に位置することにより、応力が発生する箇所により近い位置に傾斜部を設けることができる。そのため、応力の発生により迅速に対応して溶接部の剥離を抑制することができる。
【0008】
上記シート支持装置について、前記傾斜部を有する溶接部は、前記傾斜部と連続しており、前記溶接部の後端部から前記平板部の前方に折り返す前方折り返し部を有していることが好ましい。この構成によれば、傾斜部に加えて前方折り返し部を有することによって、溶接部の接合力を向上させることができる。
【0009】
上記シート支持装置について、前記傾斜部を有する溶接部は、前記傾斜部よりも前方において、前記傾斜部から連続して前方に延びる延出部を有していることが好ましい。この構成によれば、傾斜部に加えて延出部を有することによって、溶接部の接合力を向上させることができる。
【0010】
上記シート支持装置について、前記傾斜部を有する溶接部は、前記傾斜部よりも前方において、前記傾斜部から連続しており、前記平板部の内方に曲がるとともに後方に折り返す後方折り返し部を有していることが好ましい。この構成によれば、傾斜部に加えて後方折り返し部を有することによって、溶接部の接合力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシート支持装置によれば、ブラケットにおける溶接部の剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】シートを取り付けた状態のシート支持装置の斜視図。
図2】シート支持装置の斜視図。
図3】シート支持装置の側面図。
図4図3の4-4線断面図。
図5】シート支持装置の平面図。
図6】ブラケットの平面図。
図7】シート支持装置の後方側の斜視図。
図8】変更例のブラケットの平面図。
図9】別の変更例のブラケットの平面図。
図10】さらに別の変更例のブラケットの平面図。
図11】従来技術のシート支持装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図7を参照して、シート支持装置をシートスライド装置10に具体化した実施形態について説明する。
シートスライド装置10は、車両のシート12をスライド可能に支持する。シート12は、シートクッション12aと、当該シートクッション12aに対して回動可能に取り付けられたシートバック12bとを有する。
【0014】
図1、2に示すように、シートスライド装置10は、一対のロアレール21と、一対のロアレール21に対して移動可能に取り付けられるプレートとしての一対のアッパレール22と、一対のアッパレール22に溶接された状態で取り付けられてシート12を支持するブラケットとを備えている。
【0015】
ブラケットとしては、シート12の前側を支持する一対の第1ブラケット30と、シート12の後側を支持する一対の第2ブラケット40とを備えている。第1ブラケット30及び第2ブラケット40には、リンク14が取り付けられている。各リンク14にはクッションフレーム13が取り付けられており、このクッションフレーム13がシートクッション12aを保持している。リンク14が高さ調節可能に構成されていることにより、シート12の高さを調整することができるように構成されている。
【0016】
図3に示すように、一対の第2ブラケット40における車両の前方に向かって右側の第2ブラケット40aには、シートベルト(図示せず)を固定するためのベルトアンカー15が取り付けられている。ベルトアンカー15にはバックル16が接続されており、このバックル16にシートベルトは固定される。
【0017】
ここで、シートスライド装置10を車両フロアに設置した状態において、車両の前後方向に沿う方向を「前後方向DY」といい、車両の幅方向に沿う方向を「幅方向DX」といい、車両の上下方向に沿う方向を「上下方向DZ」という。前後方向DYにおいて、シート12の前側を前方とし、シート12の後側を後方とする。車両の前方に向かって左方を幅方向DXの左方とし、右方を幅方向DXの右方とする。
【0018】
幅方向DXにおいて、一対のブラケットにおける互いに対向する方向を内方とし、互いに対向する方向とは反対の方向を外方とする。
なお、本実施形態では、幅方向DXに2つのシート12が並設された車両における左側のシート12を支持するシートスライド装置10について説明する。
【0019】
以下、シートスライド装置10における幅方向DXの右方側のロアレール21、アッパレール22、第1ブラケット30a、及び、第2ブラケット40aについて説明する。幅方向DXの左方側のロアレール21、アッパレール22、第1ブラケット30b、及び、第2ブラケット40bは、後述するベルトアンカー15を取り付ける取付部47の有無と溶接部の形状以外は、以下の説明に対し左右方向において対称となる形状を有する。
【0020】
図2に示すように、以下の説明において、幅方向DXの左方は、内方と言い換えることができる。同様に、幅方向DXの右方は、外方と言い換えることができる。
ロアレール21について説明する。
【0021】
図4に示すように、ロアレール21は、車両フロアに固定される板状の底壁21aを備える。底壁21aの幅方向DXにおける両端部には、上下方向DZに沿って上方に延びる一対の側壁21bが設けられている。一対の側壁21bにおける底壁21a側とは反対側の端部には、それぞれ幅方向DXにおいて底壁21aの内側に延びる一対の横壁21cが設けられている。一対の横壁21cにおける側壁21b側とは反対側の端部は、それぞれ上下方向DZに沿って下方に延びる一対の縦壁21dが設けられている。一対の縦壁21dは間隔をおいて設けられ、縦壁21d同士の間に隙間が形成されている。ロアレール21は、底壁21a、一対の側壁21b、一対の横壁21c、及び一対の縦壁21dによって囲まれた内部空間S1を有する。この内部空間S1は、上下方向DZにおいて、縦壁21d間の隙間を介して外部空間と連通している。
【0022】
アッパレール22について説明する。
図4に示すように、アッパレール22は、車両フロアに対して平行に延びる板状の天壁22aを備える。天壁22aの幅方向DXにおける両端部には、上下方向DZに沿って下方に延びる一対の側壁22bが設けられている。一対の側壁22bにおける天壁22a側とは反対側の端部には、それぞれ幅方向DXにおいて天壁22aの外側に延びる一対の横壁22cが設けられている。一対の横壁22cにおける側壁22b側とは反対側の端部には、それぞれ上下方向DZに沿って上方に延びる一対の縦壁22dが設けられている。アッパレール22は、天壁22a、及び一対の側壁22bによって囲まれた内部空間S2を有する。
【0023】
アッパレール22は、一対の横壁22cがロアレール21の一対の縦壁21d間に形成された隙間を通じてロアレール21の内部空間S1に挿入された状態でロアレール21に摺動可能に取り付けられる。すなわち、アッパレール22は、ロアレール21に対して前後方向DYに移動可能な状態でロアレール21に取り付けられている。ロアレール21にアッパレール22が取り付けられた状態で、上下方向DZにおいて、アッパレール22の横壁22cと、ロアレール21の横壁21cとが重なる位置に配置されることによって、上下方向DZにおいて、アッパレール22がロアレール21から離脱することが抑制されている。
【0024】
第1ブラケット30aについて説明する。
図3、5に示すように、シートの前側を支持する第1ブラケット30aは、アッパレール22の天壁22aに対して平行に延びる平板部31と、平板部31の内方側の端部から上下方向DZの上方に延びる縦壁部32とを有する。縦壁部32には、リンク14を取り付けるための貫通孔32aが設けられている。
【0025】
平板部31は、前後方向DYに沿って長尺状に構成されている。平板部31には、アッパレール22の天壁22aに溶接された溶接部33、34が2箇所設けられている。各溶接部33、34は、前後方向DYに並設されている。
【0026】
図5に示すように、溶接部33、34は線状に構成されている。
前方に位置する溶接部(以下、「第1溶接部」ともいう。)33は、前方側が凸となるV字状に構成されている。具体的には、第1溶接部33は、2本の直線部33a、33bと、各直線部33a、33bを連結する連結部33cとを有している。外方に位置する直線部33aは、前後方向DYに沿って延びるとともに、内方に位置する直線部33bは、後方に向かって内方側に傾斜して延びている。
【0027】
後方に位置する溶接部(以下、「第2溶接部」ともいう。)34は、後方側が凸となるU字状に構成されている。具体的には、第2溶接部34は、2本の平行な直線部34a、34bと、各直線部34a、34bを連結する湾曲状の連結部34cとを有している。各直線部34a、34bは、前後方向DYに沿って延びている。
【0028】
ここで、線状とは、線のように細長い形状を意味するものとする。具体的には、線状とは、幅方向の寸法に対して、長さ方向の寸法が5倍以上である長尺状の形状を意味するものとする。
【0029】
また、溶接部は、平板部31とアッパレール22の天壁22aとが溶接された箇所を意味するものとする。溶接された箇所は、溶接ビードとして平板部31の厚さ方向に盛り上がった形状を有している。
【0030】
溶接部33、34を形成する方法としては、特に限定されず、公知の溶接方法を採用することができる。公知の溶接方法としては、例えば、レーザー溶接、アーク溶接、電子ビーム溶接等が挙げられる。その中でも、レーザー溶接は、相対的に幅の狭い領域を溶接することが容易であるため好ましい。
【0031】
第2ブラケット40について説明する。
図4、6に示すように、シートの後側を支持する第2ブラケット40は、アッパレール22の天壁22aに対して平行に延びる平板部41と、平板部41の外方側の端部から上下方向DZの上方に延びる外縦壁部42aと、平板部41の内方側の端部から上下方向DZの上方に延びる内縦壁部42bとを有する。内縦壁部42bには、リンク14を取り付けるための貫通孔48(図2参照)が設けられている。
【0032】
平板部41の後端部は、アッパレール22の前後方向DYの中心部よりも後方に位置している。
外縦壁部42aには、シートベルトを固定するためのベルトアンカー15を取り付ける貫通孔(以下、「取付部」ともいう。)47が設けられている。なお、図6では、便宜上、ベルトアンカー15を構成するネジ部材のみを示している。外縦壁部42aに取付部47が設けられていることにより、取付部47は、平板部41の外方側に設けられた状態となる。
【0033】
ここで、平板部41の外方側とは、平板部41の幅方向DXの中央部に対して外方を意味するものとする。
図6に示すように、平板部41は、前後方向DYに沿って長尺状に構成されている。平板部41には、アッパレール22の天壁22aに溶接された溶接部43、44が2箇所設けられている。各溶接部43、44は、前後方向DYに並設されている。
【0034】
図6に示すように、溶接部43、44は線状に構成されている。
前方に位置する溶接部(以下、「第1溶接部」ともいう。)43は、内方側が開いたC字状に構成されている。具体的には、第1溶接部43は、前後方向DYに延びる直線状の延出部(以下、「外延出部」ともいう。)43aと、外延出部43aの両端部からそれぞれ内方側に曲がった後、前後方向DYに折り返す折り返し部を有している。後方に折り返す折り返し部を「後方折り返し部43b」とする。前方に折り返す折り返し部を「前方折り返し部43c」とする。後方折り返し部43b、及び、前方折り返し部43cは、半円形状の湾曲した形状を有している。後方折り返し部43b、及び、前方折り返し部43cにおける外延出部43a側とは反対側の端部には、それぞれ、前後方向DYに沿って延びる直線状の延出部(以下、「内延出部」ともいう。)43dを有している。内延出部43d同士は連結しない状態で設けられている。
【0035】
図6に示すように、第1溶接部43は、第1溶接部43における前後方向DYの中央部において、幅方向DXに延びる仮想線Lを想定した際に、仮想線Lを中心に線対称となるように構成されている。
【0036】
図6に示すように、後方に位置する溶接部(以下、「第2溶接部」ともいう。)44は、内方側が開いたC字状に構成されている。具体的には、第2溶接部44は、前後方向DYに延びる直線状の延出部(以下、「外延出部」ともいう。)44aと、外延出部44aの前端部から内方側に曲がった後、後方に折り返す折り返し部(以下、「後方折り返し部」ともいう。)44bを有している。後方折り返し部44bは、半円形状の湾曲した形状を有している。後方折り返し部44bにおける外延出部44a側とは反対側の端部には、前後方向DYに沿って後方に延びる直線状の延出部(以下、「第1内延出部」ともいう。)44dを有している。
【0037】
第2溶接部44は、第2溶接部44の後端部44eから外方に傾斜しつつ、前方に向かって直線状に延びる傾斜部44fを有している。傾斜部44fの前端部は、外延出部44aの後端部に連結している。言い換えれば、外延出部44aは、傾斜部44fから連続して前方に延びている。また、後方折り返し部44bは、傾斜部44fよりも前方において、傾斜部44fから連続して設けられている。
【0038】
第2溶接部44の後端部44eには、傾斜部44fに連続して前方に折り返す折り返し部(以下、「前方折り返し部」ともいう。)44cを有している。
前方折り返し部44cは、後方折り返し部44bよりも曲率半径が小さく湾曲した状態で形成されている。前方折り返し部44cにおける傾斜部44fとは反対側の端部には、前後方向DYに沿って前方に延びる直線状の延出部(以下、「第2内延出部」ともいう。)44gを有している。第1内延出部44dと第2内延出部44gは連結しない状態で設けられている。
【0039】
第2溶接部44における前後方向DYの中央部よりも前方の形状は、第1溶接部43における前後方向DYの中央部よりも前方の形状と同一形状となっている。
なお、シートスライド装置10の幅方向DXの左方側の第2ブラケット40bでは、第2溶接部44は傾斜部を有してなく、第1溶接部43と同一形状となっている。
【0040】
図6に示すように、前後方向DYに対する傾斜部44fの傾斜角度αは、平板部41の後端部の外方側から第2溶接部44に加わる応力の方向に対して、傾斜部44fの延びる方向が直交するように設定されていることが好ましい。
【0041】
第2溶接部44の後端部44eは、ベルトアンカー15を取り付ける貫通孔である取付部47よりも後方に位置している。そして、傾斜部44fの一部が、取付部47よりも後方に位置するように構成されている。
【0042】
本実施形態の作用を説明する。
図7に示すように、ベルトアンカー15に対してアッパレール22から離間する方向(矢印Aで示す、前方に対して上方と内方の両方に傾斜した方向)に荷重が印加されると、第2ブラケット40の平板部41には、矢印Bで示すように後方から前方に向かって、上方と内方の両方に傾斜した応力が加わる。この応力は、平板部41の後端部の外方側から平板部41を引き剥がすように作用する。この応力が作用する方向に対して、第2溶接部44の傾斜部44fは交差する方向に延びているため、応力が第2溶接部44の一点に集中することを抑制することができる。言い換えれば、傾斜部44fにおいて、第2溶接部44に加わる応力を分散させることができる。
【0043】
本実施形態の効果を説明する。
(1)第2ブラケット40の外縦壁部42aの取付部47は、平板部41の外方側に設けられており、第2溶接部44は、第2溶接部44の後端部44eから外方に傾斜しつつ前方に向かって延びる傾斜部44fを有している。
【0044】
第2溶接部44が後端部44eから外方に傾斜しつつ前方に向かって延びる傾斜部44fを有していることにより、ベルトアンカー15によって取付部47に対してアッパレール22から離間する方向(前方に対して上方と内方の両方に傾斜した方向)に荷重が印加された際に、第2溶接部44に加わる応力を傾斜部44fで分散させることができる。第2溶接部44の一点に応力が集中する態様に比べて第2溶接部44の耐久性を向上させることができるため、第2溶接部44の剥離を抑制することができる。
【0045】
(2)傾斜部44fの一部は、取付部47よりも平板部41の後方に位置する。取付部47に対してアッパレール22から離間する方向(前方に対して上方と内方の両方に傾斜した方向)に荷重が印加されると、平板部41における後端部の外方側から応力が発生しやすい。傾斜部44fの少なくとも一部が取付部47よりも平板部41の後方に位置することにより、応力が発生する箇所により近い位置に傾斜部44fを設けることができる。そのため、応力の発生により迅速に対応して第2溶接部44の剥離を抑制することができる。
【0046】
(3)第2溶接部44は線状に形成されている。したがって、傾斜部44fを容易に形成することができる。また、第2溶接部44の面積を相対的に小さくすることができる。第2溶接部44の面積が相対的に大きいと、溶接の熱によって第2ブラケット40やアッパレール22が変形しやすくなる。第2溶接部44の面積が相対的に小さいことによって、上記変形を抑制することができる。
【0047】
(4)傾斜部44fを有する第2溶接部44は、傾斜部44fから連続して後方折り返し部44bと前方折り返し部44cとを有している。したがって、傾斜部44fに加えて、後方折り返し部44bと前方折り返し部44cとを有することによって第2溶接部44の接合力を向上させることができる。
【0048】
(5)傾斜部44fと連続して前方折り返し部44cを有することにより、傾斜部44fを安定して形成することができる。すなわち、一般に、溶接の開始地点、及び、溶接の終了地点では、それ以外の中間地点に対して溶接状態を一定にすることが難しい。第2溶接部44が前方折り返し部44cを有していない場合、傾斜部44fの後端部44eが、溶接の開始地点、又は、溶接の終了地点になる。そのため、傾斜部44fの後端部44eと中間地点とにおいて溶接状態を一定することが難しく、溶接状態にばらつきが生じやすくなる。これに対し、第2溶接部44が傾斜部44fと連続して前方折り返し部44cを有することにより、前方折り返し部44c側に溶接の開始地点、又は、溶接の終了地点を設けることができるため、傾斜部44fの溶接状態を一定にしやすくなる。傾斜部44fの溶接状態を一定にすることにより、第2溶接部44の耐久性を向上させることができるため、第2溶接部44の剥離を好適に抑制することができる。
【0049】
(6)傾斜部44fは、外延出部44aに連結するとともに、前方折り返し部44cを介して第2内延出部44gに連結している。言い換えれば、傾斜部44fの両端部は、前方に延びる2本の延出部に連結している。幅方向DXの寸法が相対的に小さく長尺状の平板部41に対して効率良く第2溶接部44を形成することができるため、第2溶接部44の接合力を好適に向上させることができる。
【0050】
(7)第2ブラケット40の第1溶接部43、及び、第2溶接部44は、内方側が開いたC字状に構成されている。C字状の内側と外側とが連通しているため、取付部47にアッパレール22から離脱する方向(前方に対して上方と内方の両方に傾斜した方向)に応力が印加された際に、平板部41におけるC字状の内側部分を残して外側部分全体が剥離することを抑制することができる。すなわち、C字状の内側と外側とが繋がった部分の引張り強度が、第2溶接部44を跨る外側と内側との間の引っ張り強度よりも高いため、C字状の外側部分全体が剥離することを抑制することができる。
【0051】
<その他の実施形態>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0052】
・溶接部33、34、43、44の形状は線状に限定されない。すなわち、溶接部33、34、43、44は、幅方向の寸法に対して、長さ方向の寸法が5倍未満である形状であってもよく、四角形状等の多角形状で構成されていてもよい。円形状やオーバル形状の一部に傾斜部が設けられた形状であってもよい。
【0053】
図10に示すように、例えば、第2溶接部44が三角形状に構成されており、三角形状の一辺が傾斜部44fを構成していてもよい。第2溶接部44を三角形状にする際は、例えば、輪郭が三角形状となるようにレーザーを照射するとともに、輪郭の内側にレーザーを照射することにより、全体を三角形状とすることができる。
【0054】
・第2溶接部44の傾斜部44fは直線状に限定されない。第2溶接部44の後端部44eから外方に傾斜しつつ前方に向かって延びており、第2溶接部44に加わる応力を好適に分散させることができる範囲において、傾斜部44fは曲線を有していてもよい。
【0055】
図8に示すように、例えば、傾斜部44fは波線状であってもよいし、複数の直線が組み合わされた形状、例えば、ギザギザ形状であってもよい。曲線と直線とが組み合わされていてもよい。
【0056】
・第2溶接部44は、傾斜部44fのみで構成されていてもよい。
図9に示すように、第2溶接部44は、例えば、外延出部44a、第1内延出部44d、第2内延出部44g、後方折り返し部44b、及び、前方折り返し部44cを有することなく構成されていてもよい。また、第2溶接部44が、後方折り返し部44b、及び、前方折り返し部44cのいずれか一方を有することなく構成されていてもよい。
【0057】
・第2溶接部44の傾斜部44fは、複数の点状の溶接部が並設されて、全体として、直線状の外観を有するように形成されていてもよい。
・本実施形態では、外延出部44a、43a、内延出部43d、第1内延出部44d、及び、第2内延出部44gは、直線状に構成されていたが、少なくとも一部が曲線を有した状態で延びるように構成されていてもよい。
【0058】
・本実施形態では、傾斜部44fと後方折り返し部44bとの間に外延出部44aが設けられていたが、外延出部44aは省略されていてもよい。すなわち、傾斜部44fから直接連続して、後方折り返し部44bが設けられていてもよい。
【0059】
・本実施形態では、第2溶接部44における傾斜部44fの一部が、取付部47よりも後方に位置するように構成されていたが、この態様に限定されない。傾斜部44fの全体が取付部47よりも後方に位置するように構成されていてもよいし、傾斜部44fの全体が取付部47よりも前方に位置するように構成されていてもよい。
【0060】
・本実施形態において、溶接部は、溶接ビードとして平板部の厚さ方向に盛り上がった形状を有していたが、この態様に限定されない。溶接部は、例えば、溶接によって平板部の厚さ方向に窪んだ形状や、溶接部以外の箇所と色彩が異なる箇所を含むものとする。
【0061】
・本実施形態において、ブラケットは、一対の第1ブラケット30と一対の第2ブラケット40の合計4つ設けられていたが、ブラケットの数は4つに限定されない。例えば、ブラケットは一対(合計2つ)のみ設けられていてもよいし、3対(合計6つ)以上設けられていてもよい。
【0062】
・本実施形態では、第2ブラケット40は、第1溶接部43と第2溶接部44の2箇所に溶接部を有していたが、溶接部は2箇所に限定されない。溶接部は1箇所のみに形成されていてもよく、3箇所以上に形成されていてもよい。
【0063】
・本実施形態において、第1ブラケット30の第1溶接部33、及び、第2溶接部34は省略されていてもよい。例えば、第1ブラケット30の平板部31とアッパレール22の天壁22aにネジ孔を設け、これらのネジ孔を挿通したネジにナットを螺合させることによって、第1ブラケット30をアッパレール22に取り付けてもよい。
【0064】
・本実施形態では、第2ブラケット40の外縦壁部42aに、シートベルトを固定するためのベルトアンカー15を取り付ける取付部47である貫通孔が設けられていたが、外縦壁部42aは省略されていてもよい。例えば、第2ブラケット40の平板部41が、アッパレール22の天壁22aよりも外方に突出しており、この突出した箇所に、シートベルトを固定するためのベルトアンカー15を取り付ける貫通孔が設けられていてもよい。この態様においても、取付部47が平板部41の外方側に設けられた態様となる。
【0065】
・第2ブラケット40の内縦壁部42bに、シートベルトを固定するためのベルトアンカー15を取り付ける取付部47である貫通孔が設けられていてもよい。すなわち、取付部47は、平板部41の内方側に設けられていてもよい。取付部47が平板部41の内方側に設けられている態様であっても、ベルトアンカー15に対してアッパレール22から離間する方向(前方に対して上方と内方の両方に傾斜した方向)に荷重が印加されると、第2ブラケット40の平板部41には、図7の矢印Bで示すように後方から前方に向かって、上方と内方の両方に傾斜した応力が加わる。この応力が作用する方向に対して、第2溶接部44の傾斜部44fは交差する方向に延びているため、応力が第2溶接部44の一点に集中することを抑制することができる。
【0066】
・本実施形態では、一対のアッパレール22における幅方向DXの右方側のアッパレール22に取り付けられた第2ブラケット40aの平板部41に、シートベルトを固定するためのベルトアンカー15を取り付ける取付部47が設けられていたが、この態様に限定されない。一対のアッパレール22における幅方向DXの左方側のアッパレール22に取り付けられた第2ブラケット40bの平板部41に、ベルトアンカー15を取り付ける取付部47が設けられていてもよい。一対のアッパレール22の両方において、第2ブラケット40a、40bの平板部41に取付部47が設けられていてもよい。すなわち、シートスライド装置10の両側にベルトアンカー15を取り付けることができるように構成されていてもよい。
【0067】
・本実施形態のシートスライド装置10は、幅方向DXに2つのシート12が並設された車両における左側のシート12を支持するシートスライド装置10であったが、右側のシート12を支持するシートスライド装置10であってもよい。右側のシート12を支持するシートスライド装置10は、本実施形態のシートスライド装置10と左右が反転した構成となる。
【0068】
・本実施形態のシートスライド装置10は、幅方向DXに2つのシート12が並設された車両に用いられていたが、この態様に限定されない。幅方向DXに3つ以上のシート12が並設された車両に用いられてもよいし、1つのみのシート12が設けられた車両に用いられてもよい。
【0069】
・本実施形態では、シート支持装置がシートスライド装置10である態様について説明したが、この態様に限定されない。シート支持装置は、シートをスライドさせることなく支持する態様であってもよい。すなわち、シート支持装置は、アッパレール22及びロアレール21を有することなく構成されていてもよい。例えば、プレートとしてのアッパレール22に代えて、車両フロア、もしくは、車両フロアに固定された板材をプレートとして用い、このプレートに、シートを支持する一対のブラケットが溶接された状態で取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
DX…幅方向、DY…前後方向、DZ…前後方向、S1…内部空間、S2…内部空間、10…シートスライド装置、12…シート、12a…シートクッション、12b…シートバック、13…クッションフレーム、14…リンク、15…ベルトアンカー、16…バックル、21…ロアレール、21a…底壁、21b…側壁、21c…横壁、21d…縦壁、22…アッパレール、22a…天壁、22b…側壁、22c…横壁、22d…縦壁、30…第1ブラケット、30a…幅方向DXの右方側の第1ブラケット、31…平板部、32…縦壁部、32a…貫通孔、33…第1溶接部、33a…直線部、33b…直線部、33c…連結部、34…第2溶接部、34a…直線部、34b…直線部、34c…連結部、40…第2ブラケット、40a…幅方向DXの右方側の第2ブラケット、40b…幅方向DXの左方側の第2ブラケット、41…平板部、42a…右縦壁部、42b…左縦壁部、43…第1溶接部、43a…外延出部、43b…後方折り返し部、43c…前方折り返し部、43d…内延出部、44…第2溶接部、44a…外延出部、44b…後方折り返し部、44c…前方折り返し部、44d…第1内延出部、44e…後端部、44f…傾斜部、44g…第2内延出部、60…スライドレール、62…アッパレール、63…ブラケット、64…平板部、65…縦壁部、66…溶接部、66a…後端部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11