IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝デバイス&ストレージ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-磁気ヘッド及び磁気記録装置 図1
  • 特許-磁気ヘッド及び磁気記録装置 図2
  • 特許-磁気ヘッド及び磁気記録装置 図3
  • 特許-磁気ヘッド及び磁気記録装置 図4
  • 特許-磁気ヘッド及び磁気記録装置 図5
  • 特許-磁気ヘッド及び磁気記録装置 図6
  • 特許-磁気ヘッド及び磁気記録装置 図7
  • 特許-磁気ヘッド及び磁気記録装置 図8
  • 特許-磁気ヘッド及び磁気記録装置 図9
  • 特許-磁気ヘッド及び磁気記録装置 図10
  • 特許-磁気ヘッド及び磁気記録装置 図11
  • 特許-磁気ヘッド及び磁気記録装置 図12
  • 特許-磁気ヘッド及び磁気記録装置 図13
  • 特許-磁気ヘッド及び磁気記録装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】磁気ヘッド及び磁気記録装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/31 20060101AFI20231024BHJP
   G11B 5/02 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
G11B5/31 A
G11B5/31 E
G11B5/02 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020141831
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037607
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 仁志
(72)【発明者】
【氏名】成田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】首藤 浩文
(72)【発明者】
【氏名】高岸 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】永澤 鶴美
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-130672(JP,A)
【文献】特開2017-059690(JP,A)
【文献】特開2013-222485(JP,A)
【文献】特開2012-014791(JP,A)
【文献】特開2016-207238(JP,A)
【文献】特開2017-117502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/31
G11B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を備え、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、
前記第1磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられCuを含む第1非磁性層と、
前記第3磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第1磁極と前記第3磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、
を含み、
前記第2磁性層は、第1磁性領域及び第2磁性領域を含み、前記第2磁性領域は、前記第2非磁性層と前記第1磁性領域との間にあり、
前記第1磁性領域は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素を含み、
前記第2磁性領域は、前記第1元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素と、を含み、
前記第1磁性領域は、前記第2元素を含まない、または、前記第1磁性領域における前記第2元素の濃度は、前記第2磁性領域における前記第2元素の濃度よりも低い、磁気ヘッド。
【請求項2】
前記第1磁性領域における前記第2元素の濃度は、0原子%以上20原子%未満であり、
前記第2磁性領域における前記第2元素の濃度は、20原子%以上50%以下である、請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
前記第3磁性層は、前記第1元素及び前記第2元素を含む、請求項1または2に記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
前記積層体は、第4磁性層をさらに含み、
前記第4磁性層は、前記第1磁極と前記第3非磁性層との間にあり、
前記第3磁性層は、前記第1元素を含み、
前記第3磁性層は、前記第2元素を含まない、または、前記第3磁性層における前記第2元素の濃度は、前記第2磁性領域における前記第2元素の濃度よりも低い、請求項1または2に記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
前記積層体は、第4磁性層をさらに含み、
前記第4磁性層は、前記第1磁極と前記第3非磁性層との間にあり、
前記第4磁性層は、前記第1元素及び前記第2元素を含み、
前記第3磁性層は、前記第1元素及び前記第2元素を含む、請求項1または2に記載の磁気ヘッド。
【請求項6】
前記積層体を流れる電流は、前記第1磁性層から前記第3磁性層への向きを有する、請求項1~5のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
前記積層体に電流を供給可能な電気回路と、
備え、
前記電流は、前記第1磁性層から前記第3磁性層への向きを有する、磁気記録装置。
【請求項8】
磁気記録媒体をさらに備え、
前記積層体に流れる前記電流が第1電流のときの前記積層体の電気抵抗は、第1抵抗であり、
前記積層体に流れる前記電流が前記第1電流よりも大きい第2電流のときに、前記積層体の前記電気抵抗は、前記第1抵抗よりも高い第2抵抗であり、
前記積層体に流れる前記電流が前記第1電流と前記第2電流との間の第3電流のときに、前記積層体の前記電気抵抗は発振し、
前記磁気ヘッドを用いて前記磁気記録媒体に情報を記録する記録動作において、前記電気回路は、前記第2電流を前記積層体に供給することが可能である、請求項7記載の磁気記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気ヘッド及び磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ヘッドを用いて、HDD(Hard Disk Drive)などの磁気記録媒体に情報が記録される。磁気記録装置において、記録密度の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-130672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、記録密度の向上が可能な磁気ヘッド及び磁気記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、磁気ヘッドは、第1磁極と、第2磁極と、前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、を含む。前記積層体は、第1磁性層と、前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、前記第1磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられCuを含む第1非磁性層と、前記第3磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、前記第1磁極と前記第3磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、を含む。前記第2磁性層は、第1磁性領域及び第2磁性領域を含む。前記第2磁性領域は、前記第2非磁性層と前記第1磁性領域との間にある。前記第1磁性領域は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素を含む。前記第2磁性領域は、前記第1元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素と、を含む。前記第1磁性領域は、前記第2元素を含まない、または、前記第1磁性領域における前記第2元素の濃度は、前記第2磁性領域における前記第2元素の濃度よりも低い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的断面図である。
図3図3は、実験試料を例示する模式的断面図である。
図4図4は、実験結果を例示するグラフ図である。
図5図5(a)~図5(c)は、実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
図6図6は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図7図7は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、第1実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
図9図9(a)~図9(c)は、実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
図10図10は、実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図11図11は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図12図12は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図13図13は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図14図14(a)及び図14(b)は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図2は、第1実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的断面図である。
図2に示すように、実施形態に係る磁気記録装置210は、磁気ヘッド110と、電気回路20Dと、を含む。磁気記録装置210は、磁気記録媒体80を含んでも良い。磁気記録装置210において、例えば、少なくとも記録動作が行われる。記録動作において、磁気ヘッド110を用いて磁気記録媒体80に情報が記録される。
【0009】
磁気ヘッド110は、記録部60を含む。後述するように、磁気ヘッド110は、再生部を含んでも良い。記録部60は、第1磁極31と、第2磁極32と、積層体20Sと、を含む積層体20Sは、第1磁極31と第2磁極32との間に設けられる。
【0010】
例えば、第1磁極31及び第2磁極32は、磁気回路を形成する。第1磁極31は、例えば、主磁極である。第2磁極32は、例えば、トレーリングシールドである。第1磁極31がトレーリングシールドで、第2磁極32が主磁極でも良い。以下では、第1磁極31が主磁極で、第2磁極32がトレーリングシールドであるとする。
【0011】
磁気記録媒体80から磁気ヘッド110への方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。Z軸方向は、例えばハイト方向に対応する。X軸方向は、例えば、ダウントラック方向に対応する。Y軸方向は、例えば、クロストラック方向に対応する。ダウントラック方向に沿って、磁気記録媒体80と磁気ヘッド110とが相対的に移動する。磁気記録媒体80の所望の位置に、磁気ヘッド110から生じる磁界(記録磁界)が印加される。磁気記録媒体80の所望の位置の磁化が、記録磁界に応じた方向に制御される。これにより、磁気記録媒体80に情報が記録される。
【0012】
第1磁極31から第2磁極32への方向を第1方向D1とする。第1方向D1は、実質的にX軸方向に対応する。第1方向D1は、X軸方向に対して、小さい角度で傾斜しても良い。
【0013】
図2に示すように、コイル30cが設けられる。この例では、コイル30cの一部は、第1磁極31と第2磁極32との間にある。この例では、シールド33が設けられている。X軸方向において、シールド33と第2磁極32との間に第1磁極31がある。コイル30cの別の一部が、シールド33と第1磁極31との間にある。これらの複数の要素の間に、絶縁部30iが設けられる。
【0014】
図2に示すように、記録回路30Dから、コイル30cに記録電流Iwが供給される。第1磁極31から、記録電流Iwに応じた記録磁界が磁気記録媒体80に印加される。
【0015】
図2に示すように、第1磁極31は、媒体対向面30Fを含む。媒体対向面30Fは、例えば、ABS(Air Bearing Surface)である。媒体対向面30Fは、例えば、磁気記録媒体80に対向する。媒体対向面30Fは、例えば、X-Y平面に沿う。
【0016】
図2に示すように、電気回路20Dが、積層体20Sに電気的に接続される。この例では、積層体20Sは、第1磁極31及び第2磁極32と電気的に接続される。磁気ヘッド110に、第1端子T1及び第2端子T2が設けられる。第1端子T1は、第1配線W1及び第1磁極31を介して積層体20Sと電気的に接続される。第2端子T2は、第2配線W2及び第2磁極32を介して積層体20Sと電気的に接続される。電気回路20Dから、例えば、電流Is(例えば、直流電流)が積層体20Sに供給される。
【0017】
図1に示すように、積層体20Sは、第1磁性層21、第2磁性層22、第3磁性層23、第1非磁性層41、第2非磁性層42及び第3非磁性層43を含む。
【0018】
第1磁性層21は、第1磁極31と第2磁極32との間にある。第2磁性層22は、第1磁極31と第1磁性層21との間に設けられる。第3磁性層23は、第1磁極31と第2磁性層22との間に設けられる。
【0019】
第1非磁性層41は、第2磁性層22と第1磁性層21との間に設けられる。第1非磁性層41は、Cuを含む。第1非磁性層41は、例えばCu層である。
【0020】
第2非磁性層42は、第3磁性層23と第2磁性層22との間に設けられる。第3非磁性層43は、第1磁極31と第3磁性層23との間に設けられる。
【0021】
この例では、第1磁性層21は、第2磁極32と接する。第1非磁性層41は、第2磁性層22及び第1磁性層21と接する。第2非磁性層42は、第3磁性層23及び第2磁性層22と接する。第3非磁性層43は、第1磁極31及び第3磁性層23と接する。
【0022】
第2磁性層22は、第1磁性領域22a及び第2磁性領域22bを含む。第2磁性領域22bは、第2非磁性層42と第1磁性領域22aとの間にある。第1磁性領域22aは、第1非磁性層41側の領域である。第2磁性領域22bは、第2非磁性層42側の領域である。例えば、第1磁性領域22aは、第1非磁性層41と接する。例えば、第2磁性領域22bは、第2非磁性層42と接する。
【0023】
第1磁性領域22aは、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素を含む。第2磁性領域22bは、第1元素及び第2元素を含む。第2元素は、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2磁性領域22bがこのような材料を含む場合、例えば、第2磁性領域22bは、負のスピン分極を有する。第1磁性領域22aは、第2元素を含まない。または、第1磁性領域22aにおける第2元素の濃度は、第2磁性領域22における第2元素の濃度よりも低い。第1磁性領域22aがこのような材料を含む場合、第1磁性領域22aは、正のスピン分極を有する。
【0024】
1つの例において、第1磁性領域22aにおける第2元素の濃度は、実質的に0原子%である。例えば、第1磁性領域22aにおける第2元素の濃度は、0原子%以上20原子%未満でも良い。例えば、第2磁性領域22bにおける第2元素の濃度は、20原子%以上50%以下である。
【0025】
既に説明したように、電気回路20Dから、電流Isが積層体20Sに供給される(図2参照)。図1に示すように、積層体20Sを流れる電流jc1(電流Is)は、第1磁性層21から第3磁性層23への向きを有する。電子流je1は、第3磁性層23から第1磁性層21への向きを有する。
【0026】
例えば、積層体20Sに電流jc1が供給されないときは、第1磁性層21、第2磁性層22及び第3磁性層23の磁化の向きは、第1磁極31の磁化の向き及び第2磁極32の磁化の向きと実質的に同じである。第1磁極31から出た磁界(記録磁界)の一部は、磁気記録媒体80に向かう。一方、第1磁極31から出た磁界(記録磁界)の別の一部は、磁気記録媒体80に向かうことなく、積層体20Sを通過して、第2磁極32に入る。このため、第1磁極31から出た記録磁界のうちで磁気記録媒体80に向かう部分の割合は、少ない。
【0027】
積層体20Sに電流jc1が供給されると、例えば、積層体20Sの少なくとも一部(例えば第2磁性層22及び第3磁性層23の少なくとも一部)の磁化の向きは、第1磁極31の磁化の向き及び第2磁極32の磁化の向きに対して反転する。これにより、第1磁極31から出た磁界(記録磁界)は、積層体20Sに向かい難くなる。このため、第1磁極31から出た記録磁界のうちで磁気記録媒体80に向かう部分の割合が、積層体20Sに電流jc1が供給されない場合に比べて高くなる。第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。
【0028】
この現象は、第1磁極31と第2磁極32との間の距離(記録ギャップ)が短くなると、より顕著になる。このような積層体20Sを用いることで、記録ギャップが小さくなった場合でも良好な記録が実施できる。実施形態によれば、良好な記録ができる記録ギャップを小さくできる。実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0029】
一方、複数の磁性層を含む積層体から発生した高周波磁界を磁気記録媒体80に印加して、磁気記録媒体80の磁気特性を局部的に制御して記録を行うMAMR(Microwave Assisted Magnetic Recording)がある。MAMRにおいては、磁性層の磁化の発振により高周波磁界が発生する。
【0030】
これに対して、実施形態においては、例えば、積層体20Sの少なくとも一部の磁化が第1磁極31の磁化及び第2磁極32の磁化に対して反転する。MAMRとは異なる動作により、第1磁極31から出た磁界が磁気記録媒体80に効率的に印加される。
【0031】
実施形態においては、第2磁性層22は、第1磁性領域22a及び第2磁性領域22bを含む。このような構成により、より安定して、第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。
【0032】
以下、第2磁性層22が第1磁性領域22a及び第2磁性領域22bを含まない場合についての実験結果の例について説明する。
【0033】
図3は、実験試料を例示する模式的断面図である。
図4は、実験結果を例示するグラフ図である。
図3に示すように、実験試料は、第1磁性層21、第2磁性層22及び第1非磁性層41を含む。第1非磁性層41は、第1磁性層21と第2磁性層22との間にある。第1磁性層21は、FeCo層である。第1非磁性層41は、Cu層である。第1試料においては、第2磁性層22は、FeCrを含む。第2試料においては、第2磁性層22は、FeCoを含む。第1試料においては、第2磁性層22は、負のスピン分極を有する。第2試料においては、第2磁性層22は、正のスピン分極を有する。
【0034】
このような試料に、磁界を印加しつつ、第1端子TM1から第2端子TM2への向きを有する電流が供給される。磁界は、第2磁性層22から第1磁性層21への向きを有する。第1磁性層21の磁化の変動と、磁界の強度と、の関係が調べられる。
【0035】
図4の横軸は、磁界の強度H1である。図4の縦軸は、第1磁性層21の磁界が変動し始める電流密度CDである。図4に示すように、第1試料SP1においては、第1磁性層21の磁界が変動し始める電流密度CDが低い。第2試料SP2においては、第1磁性層21の磁界が変動し始める電流密度CDが高い。第1試料SP1においては、第1磁性層21の磁化が不安定であると考えられる。
【0036】
第1試料SP1においては、負の分極を有する第2磁性層22からの透過スピントランスファトルク(STT)が第1磁性層21に作用することで、第1磁性層21の磁化が不安定になると考えられる。
【0037】
実施形態においては、第2磁性層22に第1磁性領域22a及び第2磁性領域22bが設けられる。第1磁性領域22aは、例えば、正のスピン分極を有する。このため、STTが第1磁性層21に作用することが抑制され、第1磁性層21の磁化は安定する。第1磁性層21の磁化が安定することで、第1磁性層21からのSTTにより、例えば、第2磁性層22及び第3磁性層23の磁化が安定して反転できると考えられる。これにより、実施形態においては、より安定して、第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。記録密度の向上が可能な磁気ヘッドが提供できる。
【0038】
以下、磁化の反転の例について説明する。
図5(a)~図5(c)は、実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
これらの図において、第1磁極31及び第2磁極32の磁化は、第1磁極31から第2磁極32への向きを有する。
【0039】
図5(a)に示すように、電流jc1が積層体20Sに供給されないときは、第1磁性層21の磁化21M、第2磁性層22の磁化22M及び、第3磁性層23の磁化は、第1磁極31及び第2磁極32の磁化の向き(第1磁極31から第2磁極32への向き)と同じである。電子流je1の向きは、第2磁極32から第1磁極31への向きである。
【0040】
図5(b)に示すように、しきい値以上の電流jc1が積層体20Sに供給されると、第1磁性領域22aからの正透過のスピントランスファトルクS1が第1磁性層21に作用し、第1磁性層21の磁化21Mは、安定化する。
【0041】
図5(c)に示すように、第1磁性層21からの正反射のスピントランスファトルクS2により、第2磁性層22の磁化2Mが反転する。反転した磁化21Mからの負反射のスピントランスファトルクS3により、第3磁性層23の磁化23Mが反転する。このように、例えば、第2磁性層22の磁化22M、及び、第3磁性層23の磁化23Mが、第1磁極31及び第2磁極32の磁化に対して、安定して反転する。これにより、第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。記録密度の向上が可能な磁気ヘッドが提供できる。記録性能が向上する。
【0042】
実施形態において、第1磁性層21は、例えば、Fe及びCoを含む。第1磁性層21は、例えば、正のスピン分極を有する。
【0043】
磁気ヘッド110において、第3磁性層23は、例えば、上記の第1元素及び上記の第2元素を含む。第3磁性層23は、例えば、負のスピン分極を有する。後述するように、第3磁性層23は、正のスピン分極を有しても良い。
【0044】
既に説明したように、第1非磁性層41は、Cuを含む。これにより、スピントランスファトルクが効率良く伝達できる。
【0045】
第2非磁性層42は、例えば、Cuを含む。第2非磁性層42は、Cuと、上記の第2元素と、を含んでも良い。
【0046】
図1の例においては、第3非磁性層43は、例えば、Ta、Ru及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0047】
図1に示すように、磁気ヘッド110において、第1磁性層21は、厚さt21を有する。第1磁性領域22aは、厚さt22aを有する。第2磁性領域22bは、厚さt22bを有する。第3磁性層23は、厚さt23を有する。磁気ヘッド110において、第1~第3非磁性層41~43は、厚さt41~t43を有する(図1参照)。
【0048】
磁気ヘッド110において、第1磁性領域22aの厚さt22aは、例えば、0.5nm以上10nm以下であることが好ましい。厚さt22aは、0.5nm以上であることで、例えば、STTが効果的に低減できる。厚さt22aが10nm以下であることで、例えば、反転電流が過度に大きくなることが抑制され、例えば、高い信頼性が得られる。厚さt22aは、0.3nm以下でも良い。これにより、磁化の反転による記録能力が効果的に向上する。
【0049】
第2磁性領域22bの厚さt22bは、例えば、2nm以上7nm以下であることが好まし。厚さt22bが2nm以上であることで、例えば、大きなスピントランスファトルクが得られ、第2磁性領域22bの作用により第3磁性層23の磁化23Mを効果的に反転できる。厚さt22bが7nm以下であることで、例えば、第2磁性領域22bの硬度が過度に高くなることが抑制できる。これにより、積層体20Sの加工が容易になる。
【0050】
第2磁性層22の厚さ(例えば、厚さt22aと厚さt22bとの和)は、例えば、3nm以上10nm以下であることが好ましい。
【0051】
第1磁性層21の厚さt21は、例えば、1nm以上3nm以下であることが好ましい。厚さt21が1nm以上であることで、例えば、第1磁性層21の磁化21Mが安定になる。厚さt21が3nm以下であることで、例えば、ギャップ長(第1磁極31と第2磁極32との間の距離)が過度に大きくなることが抑制できる。例えば、高い記録密度が得易い。
【0052】
第3磁性層23の厚さt23は、例えば、1nm以上5nm以下であることが好ましい。厚さt23が1nm以上であることで、例えば、第3磁性層23の磁化の極端な低下を抑制することができる。厚さt23が5nm以下であることで、例えば、第3磁性層23の磁化23Mの反転が容易になる。
【0053】
第1非磁性層41の厚さt41は、例えば、1nm以上5nm以下であることが好ましい。厚さt41が1nm以上であることで、例えば、第1磁性層21と第2磁性層22との間の磁気的な分離が安定になる。厚さt41が5nm以下であることで、例えば、積層体20Sの加工が容易になる。
【0054】
第2非磁性層42の厚さt42は、例えば、1nm以上5nm以下であることが好ましい。厚さt42が1nm以上であることで、例えば、第2磁性層22と第3磁性層23との間の磁気的な分離が安定になる。厚さt42が5nm以下であることで、例えば、積層体20Sの加工が容易になる。
【0055】
図1の例において、第3非磁性層43の厚さt43は、例えば、1nm以上5nm以下であることが好ましい。厚さt43が1nm以上であることで、例えば、第3非磁性層43のX軸方向の両側の磁気的な分離が容易になる。厚さt43が5nm以下であることで、例えば、STTの伝達が容易になる。
【0056】
図6は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図6に示すように、実施形態に係る磁気ヘッド111においては、積層体20Sは、第1~第3磁性層21~23、及び、第1~第3非磁性層41~43に加えて、第4磁性層24を含む。磁気ヘッド111においては、第3磁性層23は、正のスピン分極を有する。上記を除いて、磁気ヘッド111の構成は、磁気ヘッド110の構成と同様で良い。
【0057】
第4磁性層24は、第1磁極31と第3非磁性層43との間にある。第4磁性層24は、例えば、第1元素及び第2元素を含む。例えば、第4磁性層24における第2元素の濃度は、20原子%以上50%以下である。例えば、第3磁性層23は、上記の第1元素を含む。第3磁性層23は、例えば、FeCo層である。第3磁性層23は、上記の第2元素を含まない。または、第3磁性層23における第2元素の濃度は、第2磁性領域22bにおける第2元素の濃度よりも低い。1つの例において、第4磁性層24は、第1磁極31と接して、第1磁極31と磁気結合する。例えば、第1磁極31と第4磁性層24との間に、第1磁極31と第4磁性層24とが磁気的に結合するような層が設けられても良い。
【0058】
このような磁気ヘッド111においても、第1磁性層21の磁化21Mが安定になる。例えば、第2磁性層22の磁化、及び、第3磁性層23の磁化23Mが安定して反転できる。第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。記録密度の向上が可能な磁気ヘッドが提供できる。
【0059】
図6の例において、第3非磁性層43は、例えば、Cuを含む。第3非磁性層43は、第2元素をさらに含んでも良い。第3非磁性層43の厚さt43は、例えば、1nm以上5nm以下であることが好ましい。
【0060】
図6の例において、第4磁性層24の厚さt24は、例えば、2nm以上5nm以下が好ましい。厚さt24が2nm以上であることで、例えば、第4磁性層24において、負の分極が安定して得られる。厚さt24が5nm以下であることで、例えば、ギャップ長が過度に大きくなることが抑制できる。記録磁界の急峻性の低下が抑制できる。例えば、高い記録密度が得易い。
【0061】
図7は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図7に示すように、実施形態に係る磁気ヘッド112においても、積層体20Sは、第1~第3磁性層21~23、及び、第1~第3非磁性層41~43に加えて、第4磁性層24及び第4非磁性層44を含む。磁気ヘッド112においては、第3磁性層23は、負のスピン分極を有する。上記を除いて、磁気ヘッド112の構成は、磁気ヘッド110の構成と同様で良い。
【0062】
第4磁性層24は、第1磁極31と第3非磁性層43との間にある。第4磁性層24は、例えば、第1元素及び第2元素を含む。第4磁性層24における第2元素の濃度は、20原子%以上50%以下である。例えば、第3磁性層23は、第1元素及び第2元素を含む。例えば、第3磁性層23における第2元素の濃度は、20原子%以上50%以下である。
【0063】
第4非磁性層44は、第1磁極31と第4磁性層24との間にある。第4非磁性層44は、Ta、Ru及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0064】
このような磁気ヘッド112においても、第1磁性層21の磁化21Mが安定になる。例えば、第2磁性層22の磁化、及び、第3磁性層23の磁化23Mが安定して反転できる。第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。記録密度の向上が可能な磁気ヘッドが提供できる。
【0065】
図7の例において、第4磁性層24の厚さt24は、例えば、1nm以上5nm以下が好ましい。厚さt24が1nm以上であることで、例えば、磁極31と第4磁性層4との間の磁気結合を安定して抑制できる。例えば、磁極31及び第4磁性層4との間のSTTの授受を安定して抑制できる。厚さt24が5nm以下であることで、例えば、ギャップ長が過度に大きくなることが抑制できる。記録磁界の急峻性の低下が抑制できる。例えば、高い記録密度が得易い。
【0066】
図8(a)及び図8(b)は、第1実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
これらの図は、実施形態に係る積層体20Sに流れる電流jc1の大きさと、積層体20Sの電気抵抗との関係を模式的に示している。これらの図の横軸は、電流jc1の大きさである。図8(a)の縦軸は、積層体20Sの電気抵抗Rx1である。
【0067】
図8(a)に示すように、電流jc1が大きくなると、電気抵抗Rx1は大きくなる。図8(a)に示すように、電流jc1の大きさを、第1電流範囲ir1、第2電流範囲ir2及び第3電流範囲ir3に分けることができる。第3電流範囲ir3は、第1電流範囲ir1と第2電流範囲ir2との間にある。
【0068】
第1電流範囲ir1及び第2電流範囲ir2においては、電気抵抗Rx1は、電流jc1の大きさに対して二次関数に従って変化する。これは、電流jc1が大きくなることに応じて積層体20Sの温度が上昇することに起因すると考えられる。
【0069】
第3電流範囲ir3における電気抵抗Rx1の変化は、温度の上昇の影響とは異なる。第3電流範囲ir3における電気抵抗Rx1の変化は、磁性層の磁化の反転率に基づく磁気抵抗効果によると考えられる。
【0070】
図8(b)において、図8(a)における二次関数の変化(温度の影響)を除去して、電流jc1の大きさと、電気抵抗Rx2と、の関係が示されている。図8(b)に示すように、二次関数の影響を除去した場合に、第1電流範囲ir1において、電気抵抗Rx2は実質的に一定である。または、第1電流範囲ir1において、第3電流範囲ir3に比べて、電気抵抗Rx2は、緩やかに変化する。第3電流範囲ir3において、電気抵抗Rx2が変化する。第2電流範囲ir2において、電気抵抗Rx2は実質的に一定である。または、第2電流範囲ir2において、第3電流範囲ir3に比べて、電気抵抗Rx2は、緩やかに変化する。
【0071】
例えば、図8(b)に示すように、積層体20Sに流れる電流jc1が第1電流i1のときの積層体20Sの電気抵抗Rx2は、第1抵抗R1である。第1電流i1は、第1電流範囲ir1にある。
【0072】
図8(b)に示すように、積層体20Sに流れる電流jc1が第2電流i2のときに、積層体20Sの電気抵抗Rx2は、第2抵抗R2である。第2電流i2は、第1電流i1よりも大きい。第2電流i2は、第2電流範囲ir2にある。第2抵抗R2は、第1抵抗R1よりも高い。
【0073】
第1電流i1と第2電流i2との間の第3電流i3において、積層体20Sの電気抵抗Rx2は、第3抵抗R3である。第3電流i3は、第3電流範囲ir3にある。
【0074】
例えば、電流jc1が第1電流i1または第2電流i2のときは、電気抵抗Rx2は、実質的に発振しない。例えば、電流jc1が第3電流i3のときに、電気抵抗Rx2は、発振する。第1電流i1、第2電流i2及び第3電流i3は、第1磁性層21から第3磁性層23への向きを有する。
【0075】
図9(a)~図9(c)は、実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
これらの図は、電気抵抗Rx2の信号の一部をFFT(Fast Fourier Transform)処理した信号を例示している。電気抵抗Rx2の信号は、時間的に変化する成分(高周波成分)と、時間的に実質的に変化しない成分(時間的な平均値の成分)と、を含む。FFT処理においては、電気抵抗Rx2の、時間的に変化する成分が処理される。これらの図の横軸は、周波数ffである。縦軸は、信号の強度Intである。図9(a)は電流jc1が第1電流i1であるときに対応する。図9(b)は電流jc1が第3電流i3であるときに対応する。図9(c)は電流jc1が第2電流i2であるときに対応する。
【0076】
図9(b)に示すように、電流jc1が第3電流i3であるとき、1つの周波数fp1にて、ピークp1が観測される。このピークは、積層体20Sにおいて、高周波の発振が生じていることに対応する。
【0077】
図9(a)及び図9(c)に示すように、電流jc1が第1電流i1または第2電流i2であるときは、ピークp1が明確に観測されない。これらの電流においては、MAMRに有効な磁化発振は、実質的に生じない。
【0078】
このように、積層体20Sに流れる電流jc1が第1電流i1と第2電流i2との間の第3電流i3のときに、積層体20Sの電気抵抗Rx2は発振する。
【0079】
実施形態においては、このような特性を有する積層体20Sを用いて記録動作が行われる。
【0080】
実施形態に係る磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体80に情報を記録する記録動作において、電気回路20Dは、上記の第2電流i2を積層体20Sに供給することが可能である。上記のような第2電流i2を供給しつつ、記録回路30Dから記録電流Iwをコイルに供給する記録動作を行うことで、第2電流i2を供給しないで記録動作を行う場合に比べて、第1磁極31から磁気記録媒体80に向かう記録磁界の量を増やすことができる。良好な記録ができる記録ギャップを小さくできる。実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0081】
(第2実施形態)
第2実施形態は、磁気記録装置に係る。磁気記録装置210(図2などを参照)は、実施形態に係る磁気ヘッド(例えば磁気ヘッド110)と、積層体20Sに電流jc1(または電流Is)を供給可能な電気回路20Dと、を含む。電流jc1は、第1磁性層21から第3磁性層23への向きを有する。記録動作において、電気回路20Dは、上記の第2電流i2を積層体20Sに供給することが可能である。第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。記録密度の向上が可能な磁気ヘッドが提供できる。
【0082】
以下、実施形態に係る磁気記録装置210に含まれる磁気ヘッド及び磁気記録媒体80の例について説明する。
【0083】
図10は、実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図10に示すように、実施形態に係る磁気ヘッド(例えば、磁気ヘッド110)において、第2磁極32から第1磁極31への第1方向D1は、X軸方向に対して傾斜しても良い。第1方向D1は、積層体20Sの積層方向に対応する。X軸方向は、第1磁極31の媒体対向面30Fに沿う。第1方向D1と媒体対向面30Fとの間の角度を角度θ1とする。角度θ1は、例えば、15度以上30度以下である。角度θ1は、0度でも良い。
【0084】
第1方向D1が、X軸方向に対して傾斜する場合、層の厚さは、第1方向D1に沿う長さに対応する。第1方向D1がX軸方向に対して傾斜する構成は、第1実施形態または第2実施形態に係る任意の磁気ヘッドに適用されて良い。
【0085】
図11は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図11に示すように、実施形態に係る磁気ヘッド(例えば、磁気ヘッド110)は、磁気記録媒体80と共に用いられる。この例では、磁気ヘッド110は、記録部60及び再生部70を含む。磁気ヘッド110の記録部60により、磁気記録媒体80に情報が記録される。再生部70により、磁気記録媒体80に記録された情報が再生される。
【0086】
磁気記録媒体80は、例えば、媒体基板82と、媒体基板82の上に設けられた磁気記録層81と、を含む。磁気記録層81の磁化83が記録部60により制御される。
【0087】
再生部70は、例えば、第1再生磁気シールド72a、第2再生磁気シールド72b、及び磁気再生素子71を含む。磁気再生素子71は、第1再生磁気シールド72aと第2再生磁気シールド72bとの間に設けられる。磁気再生素子71は、磁気記録層81の磁化83に応じた信号を出力可能である。
【0088】
図11に示すように、磁気記録媒体80は、媒体移動方向85の方向に、磁気ヘッド110に対して相対的に移動する。磁気ヘッド110により、任意の位置において、磁気記録層81の磁化83に対応する情報が制御される。磁気ヘッド110により、任意の位置において、磁気記録層81の磁化83に対応する情報が再生される。
【0089】
図12は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図12は、ヘッドスライダを例示している。
磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ159に設けられる。ヘッドスライダ159は、例えばAl/TiCなどを含む。ヘッドスライダ159は、磁気記録媒体の上を、浮上または接触しながら、磁気記録媒体に対して相対的に運動する。
【0090】
ヘッドスライダ159は、例えば、空気流入側159A及び空気流出側159Bを有する。磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ159の空気流出側159Bの側面などに配置される。これにより、磁気ヘッド110は、磁気記録媒体の上を浮上または接触しながら磁気記録媒体に対して相対的に運動する。
【0091】
図13は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図14(a)及び図14(b)は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図13に示すように、実施形態に係る磁気記録装置150においては、ロータリーアクチュエータが用いられる。記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ180Mに装着される。記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ180Mにより矢印ARの方向に回転する。スピンドルモータ180Mは、駆動装置制御部からの制御信号に応答する。本実施形態に係る磁気記録装置150は、複数の記録用媒体ディスク180を備えても良い。磁気記録装置150は、記録媒体181を含んでもよい。記録媒体181は、例えば、SSD(Solid State Drive)である。記録媒体181には、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリが用いられる。例えば、磁気記録装置150は、ハイブリッドHDD(Hard Disk Drive)でも良い。
【0092】
ヘッドスライダ159は、記録用媒体ディスク180に記録する情報の、記録及び再生を行う。ヘッドスライダ159は、薄膜状のサスペンション154の先端に設けられる。ヘッドスライダ159の先端付近に、実施形態に係る磁気ヘッドが設けられる。
【0093】
記録用媒体ディスク180が回転すると、サスペンション154による押し付け圧力と、ヘッドスライダ159の媒体対向面(ABS)で発生する圧力と、がバランスする。ヘッドスライダ159の媒体対向面と、記録用媒体ディスク180の表面と、の間の距離が、所定の浮上量となる。実施形態において、ヘッドスライダ159は、記録用媒体ディスク180と接触しても良い。例えば、接触走行型が適用されても良い。
【0094】
サスペンション154は、アーム155(例えばアクチュエータアーム)の一端に接続されている。アーム155は、例えば、ボビン部などを有する。ボビン部は、駆動コイルを保持する。アーム155の他端には、ボイスコイルモータ156が設けられる。ボイスコイルモータ156は、リニアモータの一種である。ボイスコイルモータ156は、例えば、駆動コイル及び磁気回路を含む。駆動コイルは、アーム155のボビン部に巻かれる。磁気回路は、永久磁石及び対向ヨークを含む。永久磁石と対向ヨークとの間に、駆動コイルが設けられる。サスペンション154は、一端と他端とを有する。磁気ヘッドは、サスペンション154の一端に設けられる。アーム155は、サスペンション154の他端に接続される。
【0095】
アーム155は、ボールベアリングによって保持される。ボールベアリングは、軸受部157の上下の2箇所に設けられる。アーム155は、ボイスコイルモータ156により回転及びスライドが可能である。磁気ヘッドは、記録用媒体ディスク180の任意の位置に移動可能である。
【0096】
図14(a)は、磁気記録装置の一部の構成を例示しており、ヘッドスタックアセンブリ160の拡大斜視図である。
図14(b)は、ヘッドスタックアセンブリ160の一部となる磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ:HGA)158を例示する斜視図である。
【0097】
図14(a)に示すように、ヘッドスタックアセンブリ160は、軸受部157と、ヘッドジンバルアセンブリ158と、支持フレーム161と、を含む。ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延びる。支持フレーム161は、軸受部157から延びる。支持フレーム161の延びる方向は、ヘッドジンバルアセンブリ158の延びる方向とは逆である。支持フレーム161は、ボイスコイルモータ156のコイル162を支持する。
【0098】
図14(b)に示すように、ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延びたアーム155と、アーム155から延びたサスペンション154と、を有している。
【0099】
サスペンション154の先端には、ヘッドスライダ159が設けられる。ヘッドスライダ159に、実施形態に係る磁気ヘッドが設けられる。
【0100】
実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ)158は、実施形態に係る磁気ヘッドと、磁気ヘッドが設けられたヘッドスライダ159と、サスペンション154と、アーム155と、を含む。ヘッドスライダ159は、サスペンション154の一端に設けられる。アーム155は、サスペンション154の他端と接続される。
【0101】
サスペンション154は、例えば、信号の記録及び再生用のリード線(図示しない)を有する。サスペンション154は、例えば、浮上量調整のためのヒーター用のリード線(図示しない)を有しても良い。これらのリード線と、磁気ヘッドに設けられた複数の電極と、が電気的に接続される。
【0102】
磁気記録装置150において、信号処理部190が設けられる。信号処理部190は、磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の記録及び再生を行う。信号処理部190は、信号処理部190の入出力線は、例えば、ヘッドジンバルアセンブリ158の電極パッドに接続され、磁気ヘッドと電気的に接続される。
【0103】
実施形態に係る磁気記録装置150は、磁気記録媒体と、実施形態に係る磁気ヘッドと、可動部と、位置制御部と、信号処理部と、を含む。可動部は、磁気記録媒体と磁気ヘッドとを離間させ、または、接触させた状態で相対的に移動可能とする。位置制御部は、磁気ヘッドを磁気記録媒体の所定記録位置に位置合わせする信号処理部は、磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体への信号の記録及び再生を行う。
【0104】
例えば、上記の磁気記録媒体として、記録用媒体ディスク180が用いられる。上記の可動部は、例えば、ヘッドスライダ159を含む。上記の位置制御部は、例えば、ヘッドジンバルアセンブリ158を含む。
実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成1)
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を備え、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、
前記第1磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられCuを含む第1非磁性層と、
前記第3磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第1磁極と前記第3磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、
を含み、
前記第2磁性層は、第1磁性領域及び第2磁性領域を含み、前記第2磁性領域は、前記第2非磁性層と前記第1磁性領域との間にあり、
前記第1磁性領域は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素を含み、
前記第2磁性領域は、前記第1元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素と、を含み、
前記第1磁性領域は、前記第2元素を含まない、または、前記第1磁性領域における前記第2元素の濃度は、前記第2磁性領域における前記第2元素の濃度よりも低い、磁気ヘッド。
(構成2)
前記第1磁性領域における前記第2元素の濃度は、0原子%以上20原子%未満であり、
前記第2磁性領域における前記第2元素の濃度は、20原子%以上50%以下である、構成1記載の磁気ヘッド。
(構成3)
前記第1磁性層は、Fe及びCoを含む、構成1または2に記載の磁気ヘッド。
(構成4)
前記第2非磁性層は、Cuを含む、構成1~3のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
(構成5)
前記第2非磁性層は、前記第2元素を含む、構成4記載の磁気ヘッド。
(構成6)
前記第3非磁性層は、Cuを含む、構成1~5のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
(構成7)
前記第3磁性層は、前記第1元素及び前記第2元素を含む、構成1~6のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
(構成8)
前記積層体は、第4磁性層をさらに含み、
前記第4磁性層は、前記第1磁極と前記第3非磁性層との間にあり、
前記第3磁性層は、前記第1元素を含み、
前記第3磁性層は、前記第2元素を含まない、または、前記第3磁性層における前記第2元素の濃度は、前記第2磁性領域における前記第2元素の濃度よりも低い、構成1~6のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
(構成9)
前記積層体は、第4磁性層をさらに含み、
前記第4磁性層は、前記第1磁極と前記第3非磁性層との間にあり、
前記第4磁性層は、前記第1元素及び前記第2元素を含み、
前記第3磁性層は、前記第1元素及び前記第2元素を含む、構成1~6のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
(構成10)
前記第1磁性領域は、前記第1非磁性層と接し、
前記第2磁性領域は、前記第2非磁性層と接した、構成1~9のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
(構成11)
前記第1磁性領域の厚さは、0.5nm以上10nm以下である、構成1~10のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
(構成12)
前記第2磁性領域の厚さは、1nm以上7nm以下である、構成1~11のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
(構成13)
前記第1磁性層の厚さは、1nm以上3nm以下である、構成1~12のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
(構成14)
前記第3磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成1~13のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
(構成15)
前記第1非磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成1~14のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
(構成16)
前記第2非磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成1~15のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
(構成17)
前記第3非磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成1~16のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
(構成18)
前記積層体を流れる電流は、前記第1磁性層から前記第3磁性層への向きを有する、構成1~17のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
(構成19)
構成1~17のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
前記積層体に電流を供給可能な電気回路と、
備え、
前記電流は、前記第1磁性層から前記第3磁性層への向きを有する、磁気記録装置。
(構成20)
磁気記録媒体をさらに備え、
前記積層体に流れる前記電流が第1電流のときの前記積層体の電気抵抗は、第1抵抗であり、
前記積層体に流れる前記電流が前記第1電流よりも大きい第2電流のときに、前記積層体の前記電気抵抗は、前記第1抵抗よりも高い第2抵抗であり、
前記積層体に流れる前記電流が前記第1電流と前記第2電流との間の第3電流のときに、前記積層体の前記電気抵抗は発振し、
前記磁気ヘッドを用いて前記磁気記録媒体に情報を記録する記録動作において、前記電気回路は、前記第2電流を前記積層体に供給することが可能である、構成19記載の磁気記録装置。
【0105】
実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気ヘッド及び磁気記録装置が提供できる。
【0106】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0107】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気記録装置に含まれる磁気ヘッド、第1磁極、第2磁極、積層体、磁性層、非磁性層、及び配線などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0108】
各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0109】
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気記録装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気記録装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0110】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
20D…電気回路、 20S…積層体、 21~24…第1~第4磁性層、 21M~23M…磁化、 22a、22b…第1、第2磁性領域、 30D…記録回路、 30F…媒体対向面、 30c…コイル、 30i…絶縁部、 31、32…第1、第2磁極、 33…シールド、 41~44…第1~第4非磁性層、 60…記録部、 70…再生部、 71…磁気再生素子、 72a、72b…第1、第2再生磁気シールド、 80…磁気記録媒体、 81…磁気記録層、 82…媒体基板、 83…磁化、 85…媒体移動方向、 θ1…角度、 110、111、112…磁気ヘッド、 150…磁気記録装置、 154…サスペンション、 155…アーム、 156…ボイスコイルモータ、 157…軸受部、 158…ヘッドジンバルアセンブリ、 159…ヘッドスライダ、 159A…空気流入側、 159B…空気流出側、 160…ヘッドスタックアセンブリ、 161…支持フレーム、 162…コイル、 180…記録用媒体ディスク、 180M…スピンドルモータ、 181…記録媒体、 190…信号処理部、 210…磁気記録装置、 AR…矢印、 CD…電流密度、 D1…第1方向、 H1…強度、 Int…強度、 Is…電流、 Iw…記録電流、 R1~R3…第1~第3抵抗、 Rx1、Rx2…電気抵抗、 S1~S3…スピントランスファトルク、 SP1、SP2…第1、第2試料、 T1、T2…第1、第2端子、 TM1、TM2…端子、 W1、W2…第1、第2配線、 ff…周波数、 fp1…周波数、 i1~i3…第1~第3電流、 ir1~ir3…第1~第3電流範囲、 jc1…電流、 je1…電子流、 p1…ピーク、 t21、t22a、t22b、t23、t24…厚さ、 t41~t43…厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14