(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】クロマトグラフィー用樹脂スラリーの特定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/56 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
G01N30/56 A
(21)【出願番号】P 2020508490
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(86)【国際出願番号】 US2018055827
(87)【国際公開番号】W WO2019079159
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-14
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】マオ ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】シャーリー エリック
(72)【発明者】
【氏名】ガレア ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】フォン レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】ディサーナーヤカ ティキリ
(72)【発明者】
【氏名】シリング バーンハード
(72)【発明者】
【氏名】カーヴァー スコット
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-532470(JP,A)
【文献】特表2010-520485(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0215548(US,A1)
【文献】cytiva社,Tricorn Empty High Performance Columns,カタログ,2020年,[online], [令和4年11月23日検索], インターネット <URL: https://cdn.cytivalifesciences.com/api/public/content/digi-15799-pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/56
B01D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー濃度の特定方法であって、
樹脂を含むスラリーを第一のクロマトグラフィーカラムに添加する工程、
ある体積の液体を前記第一のクロマトグラフィーカラムにある
流速でポンプによって送り込んで、前記第一のクロマトグラフィーカラムに圧密樹脂を形成する工程であって、前記体積の液体が、自動ポンプシステムによって前記第一のクロマトグラフィーカラムに送り込まれ、第二のクロマトグラフィーカラムが採用する圧密速度と一致するように前記
流速を制御して、前記第一のクロマトグラフィーカラムに前記圧密樹脂を形成し、前記自動ポンプシステムが、所定の時間または複数の時間にわたってオン及びオフを繰り返すようにプログラムされている、工程、
前記圧密樹脂を形成する工程の終了後、前記第一のクロマトグラフィーカラムの前記圧密樹脂の床高さを測定する工程、及び
前記第二のクロマトグラフィーカラムに充填するスラリー濃度を特定する工程であって、該充填された第二のクロマトグラフィーカラムが、理想的な充填率の5%以内の充填率を有する、工程を含む、前記
特定方法。
【請求項2】
前記液体が、脱イオン水、蒸留水、精製水、生理食塩水、または有機溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スラリーを第一のクロマトグラフィーカラムに添加する工程の後であって、前記体積の液体のポンプによる送り込みの前に、前記第一のクロマトグラフィーカラムに水を添加すること、及び前記スラリーを5分~1時間沈降させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記自動ポンプシステムが、ポンプに動作可能に結合されたシリンジを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
カラム充填時のクロマトグラフィー用樹脂スラリーのスラリー濃度を特定するための方法であって、
樹脂を含むスラリーを第一のクロマトグラフィーカラムに添加する工程、
自動ポンプを一定
流速で一定時間運転するように設定する工程、
圧密樹脂を形成するために、ある体積の液体を前記第一のクロマトグラフィーカラムに第二のクロマトグラフィーカラムが採用する圧密速度と一致する
前記流速でポンプによって送り込む工程であって、前記体積の液体が、前記自動ポンプによって前記第一のクロマトグラフィーカラムに送り込まれ、前記自動ポンプが、所定の時間または複数の時間にわたってオン及びオフを繰り返すようにプログラムされている、工程、
前記ポンプによって送り込む工程の終了後、前記圧密樹脂の床高さを測定する工程、及び
前記測定された床高さから前記第二のクロマトグラフィーカラムに充填するスラリー濃度を特定する工程であって、該充填された第二のクロマトグラフィーカラムは、理想的な充填率の5%以内の充填率を有する工程
を含む、前記方法。
【請求項6】
前記自動ポンプを中断し、前記第一のクロマトグラフィーカラムを通る液体の流れを停止して前記樹脂を沈降させる工程、及び
前記ポンプによって送り込む工程の終了前に前記ポンプを再開して前記第一のクロマトグラフィーカラムに液体を流す工程
をさらに含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポンプによる送り込みが、複数の期間中断される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポンプによる送り込みが、1~60分間中断される、請求項
6または
7に記載の方法。
【請求項9】
前記
流速が、20cm/時間~1500cm/時間の範囲である、請求項
5に記載の方法。
【請求項10】
前記スラリーを前記第一のクロマトグラフィーカラムに添加する前に前記スラリーを混合する工程をさらに含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項11】
前記液体が、脱イオン水、蒸留水、精製水、生理食塩水、または有機溶媒である、請求項
5に記載の方法。
【請求項12】
カラム充填時のクロマトグラフィー用樹脂スラリーのスラリー濃度を特定するための方法であって、
樹脂を含むスラリーを提供する工程、
前記スラリーを混合して前記樹脂を均一に分布させる工程、
前記スラリーを第一のクロマトグラフィーカラムに添加する工程、
制御装置を有するポンプを含む自動ポンプシステムを提供する工程であって、前記自動ポンプシステムが、ある体積の水を、前記第一のクロマトグラフィーカラムにポンプによって送り込むように構成され、前記制御装置が、前記体積の水の
流速を、前記樹脂を充填する第二のクロマトグラフィーカラムが採用する圧密速度と一致するように制御するように構成されている、工程、
圧密樹脂を形成するために、前記体積の水を前記第一のクロマトグラフィーカラムに一定
流速でポンプによって送り込む工程であって、前記自動ポンプシステムが、所定の時間または複数の時間にわたってオン及びオフを繰り返すようにプログラムされている、工程、
前記ポンプによって送り込む工程の終了後に、前記第一のクロマトグラフィーカラムの前記圧密樹脂の床高さを測定する工程、
前記測定された床高さからスラリー濃度を特定する工程、
前記特定されたスラリー濃度を前記自動ポンプシステムに入力する工程、及び
前記特定されたスラリー濃度を使用して前記第二のクロマトグラフィーカラムに前記樹脂を充填する工程であって、該充填された第二のクロマトグラフィーカラムが、理想的な充填率の5%以内の充填率を有する工程
を含む、前記方法。
【請求項13】
前記
流速が、30cm/時間~60cm/時間の範囲である、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記充填された第二のクロマトグラフィーカラムが、目標床高さの1cm以内の床高さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記充填された第二のクロマトグラフィーカラムが、目標床高さの1cm以内の床高さを有する、請求項
5に記載の方法。
【請求項16】
前記充填された第二のクロマトグラフィーカラムが、目標床高さの1cm以内の床高さを有する、請求項
12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、カラム充填時に使用するクロマトグラフィー用樹脂スラリーに関する樹脂スラリーの特定方法に関する。より具体的には、本発明は、クロマトグラフィーカラムを例えば、軸方向圧縮方式により充填するためのより正確で一貫したスラリー濃度の特定方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
樹脂スラリーの特定は、水性スラリーに含まれるクロマトグラフィー媒体の量を特定するために一般に使用される方法である。樹脂スラリーのパーセンテージまたはスラリー濃度は、クロマトグラフィーカラム充填操作時の計算に使用され、適切な操作及び目標床高さを確保するためにカラムに入れるべき水性スラリーの量が特定される。スラリー濃度は、一貫して正確な高さ及び充填率まで充填するために、特定され、自動充填カラム、例えば、AxiChrom(登録商標)カラムに入力しなければならない主要な変数である。実際、自動充填カラム、例えば、AxiChrom(登録商標)カラムは、高度に自動化された充填操作をもたらすが、再現性よく行うためには正確なスラリー濃度に依存している。
【0003】
現在の樹脂スラリーの特定方法としては、重力沈降、遠心分離、及び流動圧密が挙げられる。現在の方法は、代表的なサンプルを樹脂スラリーのバルクから取得し、該サンプルを樹脂の沈降を引き起こす力に供することで、沈降した樹脂と上清の比(スラリー濃度)の分析が可能になる。しかしながら、これらの方法にはいくつかの欠点がある。例えば、現在の方法では、スラリー濃度の結果及び達成された充填率(圧密床の高さと最終的な充填床の高さの比として定義される)及びカラムの高さの間にしばしば矛盾が認められる。さらに、遠心分離の結果は、遠心分離後に異なる待機時間が採用された場合に、同じ基準の異なる樹脂の種類及び異なる比の間で高い変動性を有することが示されている。重力沈降は、より一貫性があると考えられるが、終了までにかなりの時間がかかる可能性があり、実験的に特定されて適用される補正係数が必要になる場合があり、方法の不確実性が増す。
【0004】
最近になって、GE Healthcareは、特に自動充填カラム、AxiChrom(登録商標)に推奨される圧密法を提供した。この方法は、樹脂のバルクから代表的なサンプルを取得し、直径10mm×100mmのTricornカラムにそれをロードし、シリンジを手動で操作して該サンプルに対する圧密力を生じさせることを含む。最後の圧密が達成された後、樹脂と上清の比から樹脂スラリーが特定される。しかしながら、この方法は、シリンジのプランジャーの押圧の程度のばらつきが主因で一貫性がない。
【0005】
従って、クロマトグラフィーカラム、例えば、自動充填クロマトグラフィーカラムの充填用のスラリー濃度のより正確で一貫した特定方法が依然として必要である。
【発明の概要】
【0006】
クロマトグラフィーカラムのスラリー用の樹脂スラリーのパーセンテージまたはスラリー濃度を特定するための方法を提供する。本発明の方法は、樹脂をクロマトグラフィーカラム、例えば、自動充填カラムに充填する際、正確な目標床高さを提供する非常に正確なスラリー濃度を提供する。
【0007】
1つの実施形態では、本発明は、スラリー濃度の特定方法を提供し、これには、樹脂を含むスラリーを第一のクロマトグラフィーカラムに添加する工程、圧密樹脂を形成するために、ある体積の液体、例えば、脱イオン水、蒸留水、精製水、生理食塩水、または有機溶媒を、該クロマトグラフィーカラムに一定流量でポンプによって送り込む工程であって、該体積の液体が自動ポンプシステムによって該クロマトグラフィーカラムに送り込まれる、工程、該ポンプによって送り込む工程の終了後、該圧密樹脂の床高さを測定する工程、及び測定された床高さからスラリー濃度を特定する工程が含まれる。いくつかの実施形態では、該方法はさらに、該クロマトグラフィーカラムに水を添加し、該スラリーを約5分~約1時間、沈降させる工程を、ポンプによる送り込みの前に含んでもよい。他の実施形態では、該方法はさらに、特定されたスラリー濃度を使用して、第二のクロマトグラフィーカラムを充填する工程を含んでもよい。この態様において、該第二のクロマトグラフィーカラムは、ある圧密速度を含み、該流量は該圧密速度と同等である。さらに別の実施形態では、該自動ポンプシステムは、ポンプに動作可能に結合されたシリンジを含み得る。いくつかの実施形態では、該ポンプシステムは、所定の時間または複数の時間にわたってオン及びオフを繰り返すようにプログラムされる。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、カラム充填時のクロマトグラフィー用樹脂スラリーのスラリー濃度の特定方法を提供し、これには、樹脂を含むスラリーをクロマトグラフィーカラムに添加する工程、自動ポンプを一定流量で一定時間、例えば、ポンプによる送り込みの開始時から樹脂の沈降時まで運転するように設定する工程、圧密樹脂を形成するために、ある体積の液体を該クロマトグラフィーカラムに一定流量でポンプによって送り込む工程であって、該体積の液体が、該自動ポンプによって該クロマトグラフィーカラムに送り込まれる、工程、該ポンプによって送り込む工程の終了後、該圧密樹脂の床高さを測定する工程、及び測定された床高さからスラリー濃度を特定する工程が含まれる。いくつかの実施形態では、該方法は、当該スラリーに使用される樹脂の種類に基づいて流量を与える工程を含んでもよい。該流量は、約20cm/時間~約1500cm/時間の範囲でよい。他の実施形態では、該方法は、当該スラリーをクロマトグラフィーカラムに添加する前に該スラリーを混合する工程を含んでもよい。さらに他の実施形態では、該方法は、特定されたスラリー濃度を使用して、第二のクロマトグラフィーカラムに該樹脂を充填するための工程を含んでもよく、ここでは、該第二のクロマトグラフィーカラムは、ある圧密速度を含み、該流量は該圧密速度と同等である。さらに別の実施形態では、該液体は、脱イオン水、蒸留水、精製水、生理食塩水、または有機溶媒でよい。
【0009】
さらに別の実施形態では、本発明は、カラム充填時のクロマトグラフィー用樹脂スラリーのスラリー濃度の特定方法を含み、これには、樹脂を含むスラリーを提供する工程、該スラリーを混合して該樹脂を均一に分布させる工程、該スラリーをクロマトグラフィーカラムに添加する工程、制御装置を有するポンプ及び該ポンプに動作可能に結合されたシリンジを含む自動シリンジポンプシステムを提供する工程であって、該自動シリンジポンプシステムが、ある体積の水を、該クロマトグラフィーカラムにポンプによって送り込むように構成され、該制御装置が、該体積の水の流量を、該流量が一定時間不変であるように制御するように構成されている、工程、圧密樹脂を形成するために、該体積の水を該クロマトグラフィーカラムに該一定流量でポンプによって送り込む工程、該ポンプによって送り込む工程の終了後に、該圧密樹脂の床高さを測定する工程、測定された床高さからスラリー濃度を特定する工程、第二のクロマトグラフィーカラムに特定されたスラリー濃度を入力する工程、ならびに特定されたスラリー濃度を使用して該第二のクロマトグラフィーカラムに該樹脂を充填する工程が含まれる。いくつかの実施形態では、該流量は、約30cm/時間~約60cm/時間の範囲である。別の実施形態では、該第二のクロマトグラフィーカラムは、ある圧密速度を含み、該流量は該圧密速度と同等である。他の実施形態では、該第二のクロマトグラフィーカラムは、ある圧密速度を含み、該流量は該圧密速度とは異なる。さらに他の実施形態では、充填された第二のクロマトグラフィーカラムは、目標床高さの1cm以内の床高さを有する。
[本発明1001]
スラリー濃度の特定方法であって、
樹脂を含むスラリーを第一のクロマトグラフィーカラムに添加する工程、
圧密樹脂を形成するために、ある体積の液体を前記クロマトグラフィーカラムに一定流量でポンプによって送り込む工程であって、前記体積の液体が、自動ポンプシステムによって前記クロマトグラフィーカラムに送り込まれる、工程、
前記ポンプによって送り込む工程の終了後、前記圧密樹脂の床高さを測定する工程、及び
前記測定された床高さからスラリー濃度を特定する工程
を含む、前記方法。
[本発明1002]
前記液体が、脱イオン水、蒸留水、精製水、生理食塩水、または有機溶媒である、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記スラリーを添加する工程が、前記クロマトグラフィーカラムに水を添加すること、及び前記スラリーを約5分~約1時間沈降させることを、ポンプによる送り込みの前にさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1004]
第二のクロマトグラフィーカラムを充填するために前記特定されたスラリー濃度を使用する工程をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1005]
前記第二のクロマトグラフィーカラムがある圧密速度を含み、前記流量が前記圧密速度と同等である、本発明1004の方法。
[本発明1006]
前記自動ポンプシステムが、ポンプに動作可能に結合されたシリンジを含む、本発明1001の方法。
[本発明1007]
カラム充填時のクロマトグラフィー用樹脂スラリーのスラリー濃度を特定するための方法であって、
樹脂を含むスラリーをクロマトグラフィーカラムに添加する工程、
自動ポンプを一定流量で一定時間運転するように設定する工程、
圧密樹脂を形成するために、ある体積の液体を前記クロマトグラフィーカラムに前記一定流量でポンプによって送り込む工程であって、前記体積の液体が、前記自動ポンプによって前記クロマトグラフィーカラムに送り込まれる、工程、
前記ポンプによって送り込む工程の終了後、前記圧密樹脂の床高さを測定する工程、及び
前記測定された床高さからスラリー濃度を特定する工程
を含む、前記方法。
[本発明1008]
前記自動ポンプを中断し、前記クロマトグラフィーカラムを通る液体の流れを停止して前記樹脂を沈降させる工程、及び
前記ポンプによって送り込む工程の終了前に前記ポンプを再開して前記クロマトグラフィーカラムに液体を流す工程
をさらに含む、本発明1007の方法。
[本発明1009]
前記ポンプによる送り込みが、複数の期間中断される、本発明1008の方法。
[本発明1010]
前記ポンプによる送り込みが、1~60分間中断される、本発明1008または1009の方法。
[本発明1011]
前記設定する工程が、前記スラリーに使用される樹脂の種類に基づいて流量を与えることをさらに含む、本発明1007の方法。
[本発明1012]
前記流量が、約20cm/時間~約1500cm/時間の範囲である、本発明1011の方法。
[本発明1013]
前記スラリーを前記クロマトグラフィーカラムに添加する前に前記スラリーを混合する工程をさらに含む、本発明1007の方法。
[本発明1014]
前記特定されたスラリー濃度を使用して、第二のクロマトグラフィーカラムに前記樹脂を充填する工程をさらに含み、
前記第二のクロマトグラフィーカラムがある圧密速度を含み、前記流量が前記圧密速度と同等である、
本発明1007の方法。
[本発明1015]
前記液体が、脱イオン水、蒸留水、精製水、生理食塩水、または有機溶媒である、本発明1007の方法。
[本発明1016]
カラム充填時のクロマトグラフィー用樹脂スラリーのスラリー濃度を特定するための方法であって、
樹脂を含むスラリーを提供する工程、
前記スラリーを混合して前記樹脂を均一に分布させる工程、
前記スラリーをクロマトグラフィーカラムに添加する工程、
制御装置を有するポンプと前記ポンプに動作可能に結合されたシリンジとを含む自動シリンジポンプシステムを提供する工程であって、前記自動シリンジポンプシステムが、ある体積の水を、前記クロマトグラフィーカラムにポンプによって送り込むように構成され、前記制御装置が、前記体積の水の流量を、前記流量が一定時間不変であるように制御するように構成されている、工程、
圧密樹脂を形成するために、前記体積の水を前記クロマトグラフィーカラムに前記一定流量でポンプによって送り込む工程、
前記ポンプによって送り込む工程の終了後に、前記圧密樹脂の床高さを測定する工程、
前記測定された床高さからスラリー濃度を特定する工程、
第二のクロマトグラフィーカラムに前記特定されたスラリー濃度を入力する工程、及び
前記特定されたスラリー濃度を使用して前記第二のクロマトグラフィーカラムに前記樹脂を充填する工程
を含む、前記方法。
[本発明1017]
前記流量が、約30cm/時間~約60cm/時間の範囲である、本発明1016の方法。
[本発明1018]
前記第二のクロマトグラフィーカラムがある圧密速度を含み、前記流量が前記圧密速度と同等である、本発明1016の方法。
[本発明1019]
前記第二のクロマトグラフィーカラムがある圧密速度を含み、前記流量が前記圧密速度とは異なる、本発明1016の方法。
[本発明1020]
前記充填された第二のクロマトグラフィーカラムが、目標床高さの1cm以内の床高さを有する、本発明1016の方法。
【0010】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下に説明する図面に関連して提供される以下の詳細な説明から確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による樹脂スラリーの特定方法のフローチャートである。
【
図2A】本発明による
図1に関連する樹脂スラリーの特定のシステムの概略図である。
【
図2B】本発明による
図1に関連する樹脂スラリーの特定のシステムの概略図である。
【
図3】遠心分離後の樹脂の平均沈降パーセンテージを示す棒グラフである。
【
図4】様々な種類の樹脂に関する遠心分離(陰影付きバー)及び現在特許請求しているプロセス(ストライプ状バー)の樹脂スラリーの特定に関するパーセント誤差を示す棒グラフである。
【
図5】遠心分離、GEスラリーキット、または本発明による方法を使用して得られた、達成された床高さと理想的な床高さを示す棒グラフである。3つのバーの各セットにおいて、様々な種類の樹脂に関して、最初のバーは遠心分離を表し、中央のバーはGEスラリーキットを表し、3つのバーの最後は、本開示の方法を使用した結果を表す。水平の実線は、個々の樹脂充填物の目標床高さを表す。水平の破線は、充填物が許容される床高さの範囲外になる前の床高さの限界(±1cm)を表す。X軸は、樹脂スラリーの種類を表し、Y軸は、床高さ(cm)を表す。
【
図6】様々な樹脂の種類に対して、GEキットを使用して異なる操作者によって達成された理論上の床高さを示す棒グラフである。3つのバーの各セットにおいて、様々な種類の樹脂に関して、最初のバーは遠心分離を表し、中央のバーはGEスラリーキットを表し、3つのバーの最後は、本開示の方法を使用した結果を表す。3つのバーの各セットにおいて、最初のバーは、最初の理論上の最終床高さを表し、中央のバーは、中断を含めた理論上の最終床高さを表し、最後のバーは、可変力での理論上の最終床高さを表す。水平の実線は、個々の樹脂充填物の理想的な床高さを表す。水平の破線は、充填物が許容される床高さの範囲外になる前の床高さの限界(±1cm)を表す。X軸は、樹脂スラリーの種類を表し、Y軸は、床高さ(cm)を表す。
【
図7】非制御流動のGEキットを使用した場合に経験し得る異なる流量でのMabSelect SuRe樹脂の理論上の床高さを示す棒グラフである。2つのバーの各セットにおいて、中実のバーは、最初の流動後の理論上の床高さを表し、白いバーは、第二の流動後の理論上の床高さを表す。X軸は、流量(ml/分)を表し、Y軸は、理論上の床高さ(cm)を表す。水平の実線は、個々の樹脂充填物の理想的な床高さを表す。水平の破線は、充填物が許容される床高さの範囲外になる前の床高さの限界(±1cm)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、クロマトグラフィーカラムのスラリー用の樹脂スラリーのパーセンテージまたはスラリー濃度を特定するための方法に関する。より具体的には、本発明は、自動ポンプシステムを使用して、樹脂サンプルを圧密するための制御流量を提供する。圧密樹脂サンプルに基づいて、スラリー濃度を特定することができ、これを使用して第二のクロマトグラフィーカラムに同じ樹脂を充填することができる。樹脂を充填するクロマトグラフィーカラムが採用する圧密速度と一致するように供給流量を制御することにより、第二のクロマトグラフィーカラムの正確な充填に必要なスラリー濃度に相当する再現性の高いスラリー濃度が、補正係数を必要とせずに達成されることが分かった。
【0013】
本発明は、遠心分離、重力沈降、及び手動のシリンジ法を含めた従来のスラリー特定方法に優る多くの利点を提供する。本発明の方法及びシステムは、従来のスラリー特定方法のいずれよりも短時間で組み立て、実行、及び分解が可能である。さらに、本発明の方法は、従来のスラリー特定方法の結果よりも反復測定間で一貫性及び再現性が高いスラリー濃度の結果を、より低い標準偏差にて生成することが示された。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による樹脂スラリーの特定方法のフローチャートを示す。ステップ101で、カラム及びポンプの配置が組み立てられる。
図2A及び2Bは、本発明による樹脂スラリーのパーセンテージを特定するためのシステムの様々な配置を示す。
図2Aに示すように、システム200は、カラム201、制御装置206を有するポンプ203を含む自動ポンプシステム204、及びフロースルー回収容器205を含む。ポンプ203は、カラム201への液体の流れを提供する。この態様において、カラム201は垂直に配向され、ポンプ203は、ポンプ203からカラム201へ液体が流れるように、カラム201の頂部に動作可能に接続される。液体の流れは、自動ポンプ203の使用を介して提供される。ポンプ203は制御装置206を含み、これがポンプ203を開始及び停止、ならびにポンプ203から出る液体の流量を規定するように動作可能である。本発明のシステムはまた、カラム201の底部に動作可能に接続されたフロースルー回収容器205を含む。フロースルー回収容器205は、カラム201を通って流れる液体を回収するように設計されている。
【0015】
別の実施形態では、
図2Bに示すように、自動ポンプシステム204はさらに、ポンプ203に動作可能に結合されたシリンジ202を含んでもよい。シリンジ202は、自動ポンプ203の使用を介してカラム201へ液体の流れを提供し得る。1つの実施形態では、ポンプ203の制御装置206は、シリンジ202を出る液体の流量を規定するように動作可能である。この態様において、カラム201は垂直に配向され、シリンジ202は、シリンジ202からカラム201へ液体が流れるように、カラム201の頂部に動作可能に接続される。
【0016】
液体をポンプ203またはシリンジ202からカラム201へ、及びカラム201から外に向かってフロースルー回収容器205へと流す任意の接続手段によって、カラム201は、ポンプ203またはシリンジ202及びフロースルー回収容器205に動作可能に接続され得る。例えば、カラム201は、配管によって、ポンプ203またはシリンジ202及びフロースルー回収容器205に動作可能に接続され得る。この態様において、配管の一部がポンプ203またはシリンジ202をカラム201の頂部に接続し、別の配管の一部が、カラム201の底部をフロースルー回収容器205に接続してもよい。
【0017】
カラム201の種類及びサイズは多様でよい。1つの実施形態では、カラム201はクロマトグラフィーカラムである。別の実施形態では、カラム201は、分析規模のクロマトグラフィーカラムである。例えば、カラム201は、1cm×25cmのクロマトグラフィーカラムでよい。分析規模のクロマトグラフィーカラムは、かかるカラムが小さく、容易に輸送可能でかつ正確なスラリー比の読み取りを行うのに十分な垂直分離を与えるため、本発明での使用に有利である。
【0018】
ポンプシステム204の種類及びサイズもまた、ポンプ203がカラム201に一定流量の液体を提供することが可能である限り、多様でよい。1つの実施形態では、ポンプ203は、0.2mL/分からの正確な流れを送る任意の自動または機械式ポンプを含み得る。例えば、ポンプ203は、完全に自動化されたシステムを有する任意の種類の自動注入器を含み得る。別の実施形態では、上述のように、ポンプ203は、カラム201に液体の流れを提供するシリンジ202を含み得る。この態様において、シリンジ202は、少なくとも20mLの容積を有するべきである。別の実施形態では、シリンジ202は、少なくとも30mLの容積を有し得る。さらに別の実施形態では、シリンジ202は、20mL~60mLの容積を有し得る。フロースルー回収容器205は、カラム201からのフロースルーを受けるように動作可能な任意の容器でよい。適切なフロースルー回収容器205としては、ビーカー、フラスコ、メスシリンダー、試験管、ボトル、及びジャーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0019】
システム200の組み立て後、樹脂を含むスラリーがカラム201に添加される(ステップ102)。クロマトグラフィーカラムでの使用に適した任意の樹脂が本発明によって企図される。いくつかの実施形態では、本発明は、タンパク質精製に適した樹脂の使用を企図する。本発明が企図する樹脂の例としては、rProtein A Sepharose(登録商標)Fast Flow、MabSelect(商標)Xtra、MabSelect SuRe(商標)、Capto(商標)Phenyl、Q Sepharose(登録商標)Fast Flow、Phenyl Sepharose(登録商標)HP、POROS(登録商標)50 HS、Fractogel(登録商標)EMD Hicap SE、Capto(商標)Q、及びSuperdex(登録商標)200 HRが挙げられるがこれらに限定されない。
【0020】
カラム201に添加する前に、該樹脂が均一に分布するように、該樹脂を該スラリーに完全に混合するべきである。混合された樹脂スラリーは、当技術分野で既知の任意の技術を使用してカラム201に添加され得る。1つの実施形態では、該樹脂スラリーは、カラム201に、例えば、ピペット制御装置を使用して、ピペットで添加され得る。添加される樹脂スラリーの量は、所望の沈降樹脂床の体積に依存する。1つの実施形態では、該スラリーは、カラム201に、メニスカスが約23cm~約25cmの高さになるまで添加され得る。例えば、該スラリーは、カラム201に、メニスカスが約25cmの高さになるまで添加され得る。この態様において、カラム内の利用可能なスペースをより多く使用した場合に精度が向上する。カラムへスラリーを添加した後、該スラリーの最終的な高さを後の使用のために測定し、記録するべきである。樹脂スラリーをカラム201に添加し、該樹脂スラリーの高さを測定した後、精製水をカラム201に、水がカラム201の頂部に近づくまで添加してもよい。これにより、カラム201に頂部アダプターまたはピストンを設置すること及び空気の排出が可能になり、これが層流にとって重要である。該樹脂スラリーをその後、一定時間沈降させてもよい。1つの実施形態では、該スラリーを約5分~約1時間沈降させてもよい。別の実施形態では、該スラリーを約20分~約45分間沈降させてもよい。例えば、該スラリーを約30分間沈降させてもよい。
【0021】
ステップ103において、ポンプシステム204は、液体の流れを一定流量で提供するように設定される。この態様において、ポンプ203の制御装置206は、ポンプ203から流出する液体の流量を規定するように設定され得る。該液体の流量は、当該スラリーに使用される特定の樹脂(例えば、その物理的特性、例えば、ビーズサイズ、ビーズ基材のマトリックス、及び基材のマトリックスの密度)に基づいて、ならびに該使用される樹脂をクロマトグラフィー操作のため充填する第二のカラム、例えば、自動充填カラムが採用する圧密速度に基づいて選択される。1つの実施形態では、該液体の流量は、該流量が該第二のカラム、例えば、自動充填カラムの圧密速度に等しくなるように選択され得る。実際、該液体の流量を制御して、該樹脂の充填を行うカラムが採用する圧密速度に一致させることにより、該第二のカラムの正確な充填に必要なスラリー濃度に相当する再現性の高いスラリー濃度が、補正係数を必要とすることなく達成され得る。しかしながら、再現性の高いスラリー濃度は、該液体の流量が圧密速度と同じではない場合でも達成される場合がある。従って、いくつかの実施形態では、該液体の流量は、第二のカラムの圧密速度と同等でなくてもよい。
【0022】
該液体の流量は、使用されるカラム、樹脂、及び充填技術によって異なり得る。1つの実施形態では、該液体の流量は、約20cm/時間~約1500cm/時間の範囲でよい。別の実施形態では、該液体の流量は、約30cm/時間~約1000cm/時間の範囲でよい。さらに別の実施形態では、該液体の流量は、約50cm/時間~約600cm/時間の範囲でよい。さらに別の実施形態では、該液体の流量は、約60cm/時間~約200cm/時間の範囲でよい。いくつかの実施形態では、該液体の流量は、約30cm/時間でよい。他の実施形態では、該液体の流量は、約60cm/時間でよい。
【0023】
ステップ104において、ポンプシステム204は、液体の流れがポンプ203からカラム201にポンプによって送り込まれるように開始される。1つの実施形態では、カラム201にポンプによって送り込まれる液体は水である。例えば、該水は、蒸留、脱イオン化、及び/または精製されたものであり得る。別の実施形態では、カラム201にポンプによって送り込まれる液体は生理食塩水でよい。さらに別の実施形態では、カラム201にポンプによって送り込まれる液体は任意の有機溶媒でよい。例えば、該液体はアルコールでよい。適切なアルコールとしては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、及びオクタノールが挙げられるがこれらに限定されない。この態様において、より普遍的で一貫した結果を提供するため、カラム201にポンプによって送り込まれる液体は、選択された樹脂の製造充填操作の過程で使用されるものと同じ液体であるべきである。
【0024】
ポンプ203の制御装置206は、ポンプ203からカラム201への該液体の自動流動を開始するのに使用され得る。上述のように、液体の流れは、ポンプ203からカラム201を通して、ステップ104で常に一定のままの選択された流量にて、ポンプで送り込まれる。ポンプによる液体の流れの送り込みは、樹脂の沈降が止まるまで継続するべきである。1つの実施形態では、該液体は、カラム201に約10分~約50分間ポンプで送り込まれ得る。別の実施形態では、該液体は、カラム201に約15分~約40分間ポンプで送り込まれ得る。さらに別の実施形態では、該液体は、カラム201に約15分~約30分間ポンプで送り込まれ得る。例えば、いくつかの実施形態では、該液体の流量が約30cm/時間の場合、該液体は、カラム201に約30分間ポンプで送り込まれ得る。他の実施形態では、該液体の流量が約60cm/時間の場合、該液体は、カラム201に約15分間ポンプで送り込まれ得る。いくつかの実施形態では、該流量は、1つ以上の期間、停止または中断される。例えば、該流量は、1~5分間、5~10分間、10~20分間、20~30分間、40~50分間、または1時間以上中断することができる。該流量は、各中断後に再開することができる。いくつかの実施形態では、液体の流れの停止は、正確な読み取りのために必須というわけではない。例えば、該システムは、1時間を超える継続的な圧密流動の状態でよい。これは、自動流動のさらなる利点であり、GEキットでは不可能である。制御装置206は、ポンプ203からカラム201への該液体の自動流動を停止するのに使用され得る。
【0025】
1つの実施形態では、該方法は、該自動ポンプが、該クロマトグラフィーカラムを通る液体の流れを停止して樹脂を沈降させ、その後、ポンプによって送り込む工程の終了前にポンプを再開して該クロマトグラフィーカラムに液体を流すようにプログラムされることを含む。該ポンプによる送り込みは、2つ以上の期間、中断することができる。1つの実施形態では、該ポンプによる送り込みは、1~60分間中断される。いくつかの実施形態では、該ポンプは、断続的に送り込むようにプログラムされる。1つの実施形態では、60cm/時間の圧密速度の樹脂のすべてに関して、当該サイクルは、15分間流動>5分間中断>5分間の追加流動である。30cm/時間の圧密は、流動の時間を2倍にする必要がある。いくつかの実施形態では、結果の読み取りは、最後の流動の操作の終了直前または直後に行われる。
【0026】
液体の流れが停止された後、当該樹脂床を、一定時間流すことなく安定させてもよい。1つの実施形態では、液体の流れが停止された後、当該樹脂床を、約10分~約45分間安定させてもよい。例えば、該樹脂床を約30分間安定させてもよい。別の実施形態では、液体の流れが中断された後、該樹脂床を5~10分間安定させ、その後シリンジポンプシステム204を同じ流量でさらに5分間再開することができる。この態様において、流れの順次圧密を行うことで、変動性を最小限に抑えることができる。ステップ105では、沈降/圧密樹脂床の高さが測定され得る。該測定ステップは、該床高さの正確な読み取りが可能な任意の測定装置で行われ得る。いくつかの実施形態では、カラム201は、外面に垂直に配置された定規を含み得る。圧密樹脂の床高さの測定後、スラリー濃度は、測定された床高さから特定され得る(ステップ106)。測定されたパーセント単位のスラリー濃度は、センチメートル単位の床高さにより直接与えられる。
【0027】
使用された樹脂のスラリー濃度の特定後、該スラリー濃度が第二のカラムを充填するために使用され得る。該第二のカラムは、自動充填カラムを含めた任意のクロマトグラフィーカラムでよい。例えば、該自動充填カラムは、AxiChrom(登録商標)カラムでよい。この態様において、該スラリー濃度は、自動充填カラムに入力され得る。いくつかの実施形態では、操作者が、特定されたスラリー濃度を充填カラムに手動で入力してもよい。他の実施形態では、特定されたスラリー濃度は、システム200を自動充填カラムに接続するネットワークまたはハードウェア回路の使用を介して該充填カラムに自動的に入力され得る。樹脂の充填に使用されるカラムの種類に関係なく、特定されたスラリー濃度は、再現性が高く、第二のカラムを正確に充填するために必要なスラリー濃度に相当する。
【0028】
本発明の方法は、樹脂をクロマトグラフィーカラムに充填する際に正確な目標床高さを与える、非常に正確なスラリー濃度を提供する。1つの実施形態では、本発明に従って特定されるスラリー濃度を使用するカラム充填は、目標床高さの2cm以内の床高さを達成する。別の実施形態では、本発明に従って特定されるスラリー濃度を使用するカラム充填は、目標床高さの1cm以内の床高さを達成する。さらに別の実施形態では、本発明に従って特定されるスラリー濃度を使用するカラム充填は、目標床高さの0.75cm以内の床高さを達成する。さらに別の実施形態では、本発明に従って特定されるスラリー濃度を使用するカラム充填は、目標床高さの0.50cm以内の床高さを達成する。例えば、本発明に従って特定されるスラリー濃度を使用するカラム充填は、目標床高さの0.10cm以内の床高さを達成する。
【0029】
さらに、本発明に従って特定されるスラリー濃度を使用するカラム充填は、樹脂をクロマトグラフィーカラムに充填する際に非常に正確な充填率を達成する。例えば、本発明に従って特定されるスラリー濃度を使用するカラム充填は、理想的な充填率の5%以内の充填率を達成する。さらに別の実施形態では、本発明に従って特定されるスラリー濃度を使用するカラム充填は、理想的な充填率の3%以内の充填率を達成する。
【実施例】
【0030】
以下の非限定的な実施例は、本発明によるスラリー濃度の特定方法を示す。これら実施例は、本発明の好ましい実施形態の単なる例示であり、本発明を限定するものと解釈されるべきでなく、その範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0031】
本発明の実施例1
スラリー濃度の特定方法を本発明に従って実行した。この方法は、1cm×25cmのクロマトグラフィーSNAPカラムで実行した。KD Scientific製シリンジポンプを使用し、樹脂サンプルの圧密のための制御流量を提供した。次の樹脂を調べた:MabSelect SuRe(商標)、POROS(登録商標)50 HQ、及びCapto(商標)Phenyl。
【0032】
表1は、本発明に従って行った方法の結果を示す。
(表1)本発明の方法の結果
【0033】
表1のデータから分かるように、本発明の方法は、反復測定間の標準偏差が低い一貫した再現性のある結果を示している。本発明に従って得られたスラリー濃度は、目標床高さと0.4cm以下異なる平均床高さをもたらした。この低い標準偏差は、結果の再現性が高いことを示している。
【0034】
比較実施例2
遠心分離
Allegra(登録商標)6KR遠心分離機と13mLの遠心分離管を使用した。スラリーを遠心分離の前に上清を除去することで50%の比に調整した。10mLのスラリーサンプルの遠心分離を1000rpmで5分間及び3500rpmで15分間行った。以下に示す表2は、使用した樹脂を示す。
(表2)試験樹脂
*樹脂は適切に圧密しなかった。
【0035】
図3は、遠心分離法の結果を示す。より具体的には、
図3は、1000rpmで5分間及び3500rpmで15分間の遠心分離に対する平均沈降パーセンテージを示す。
図3から分かるように、遠心分離の結果は、樹脂間で変動し、50%であることが分かっている樹脂の体積を一貫して過剰に評価した。これは、遠心分離が満足な沈降方法ではないことを示している。
【0036】
流動圧密
AKTA Avantクロマトグラフィーシステム(2.5cm×50cmのクロマトグラフィーSNAPカラムを含む)を使用し、AxiChrom(登録商標)技術の圧密効果を模倣した。すべての樹脂を60cm/時間で圧密化させた。表2に示す樹脂をこの流動圧密試験にも使用した。これらの樹脂を一夜重力沈降させた。スラリーは、流動圧密を行う前に上清を除去することで50%の比に調整した。
【0037】
以下に示す表3は、ラン1とラン2間の平均流動圧密の結果を示す。
(表3)平均流動圧密の結果
【0038】
表3から分かるように、圧密の結果は、樹脂間で変動し、元の50%の比に圧密化されたものはなかった。これは、重力が満足な沈降方法ではないことを示している。
【0039】
遠心分離法と圧密法の結果の比較
以下に示す表4は、遠心分離法と流動圧密法の各々の結果を比較する。
(表4)遠心分離及び圧密の結果の比較
【0040】
上記の表から分かるように、圧密の結果及び遠心分離の結果は大きく異なる。8種の樹脂のうちの6種で、圧密と最初の遠心分離の読み取り値の差が5%を超えた。この差は、2時間の延長期間を与えた後でも解消されなかった。実際には、2時間後、これら8種の樹脂のうちの3種で、圧密と沈降した遠心分離の読み取り値の差がなお5%を超えていた。これは、圧密及び遠心分離が、試験の変動性、長い沈降時間、及び樹脂間の変動のため、スラリー濃度の特定には十分ではなかったことを示している。
【0041】
さらに、これら読み取り値のいくつかは、目標充填率を達成しなかった。目標充填率を計算する目的として、20cm(目標の床高さ)の5%は1cmであり、これが最大許容床高さ範囲である。5%を超える差は、その読み取り値が目標充填率を達成しなかったことを意味する。上記のデータから分かるように、読み取り値のいくつかは、目標充填率を達成しなかった。
【0042】
比較実施例3
以下に示す表5は、遠心分離法とGEキット間の遠心分離スラリーパーセントと最終床高さの比較を示す。
(表5)遠心分離及びGEキットの結果の比較
【0043】
表5から分かるように、遠心分離法及びGEキットの両方が、調べたいくつかの樹脂の種類で目標床高さに達せず、これらの方法に一貫性がないことを示した。
【0044】
遠心分離、GEキット、及び本開示の方法の結果の比較
図4は、遠心分離法及び本開示の方法に関するスラリー濃度のパーセント誤差を比較している。MabSelect SuRe、POROS 50 HQ、Capto Phenyl、Q Sepharose FF、及びMabSelect SuRe PCCを含めたいくつかの異なる種類の樹脂を調べた。これら樹脂の種類のすべてに関して、本開示の方法は、遠心分離法と比較して誤差の有意な減少を示した。さらに、調べた樹脂の種類のいくつかに関しては、遠心分離法は誤差限界の5%に達する誤差パーセンテージを有し、これは、その充填物が、使用のために許容される最低高さ要件を達成するために理想的な充填率を落とすことを示している。低い充填率は、カラムの劣化及びカラムの再利用の回数を減らすことにつながり得る。いくつかの実施形態では、カラムは、所望の高さ及び充填率を含めた最終的な所望の測定基準を満たす必要がある。カラムが圧密化すると、高さは下がり、充填率は上がる。1つの実施形態では、カラムは高さ19~21cmを達成し、圧縮を目標とする。
【0045】
図5は、遠心分離法、GEキット、及び本開示の方法を使用して達成された床高さの直接の比較を示す。
図5が示すように、本開示の方法は、調べた他の方法より優れていた。本開示の方法で達成された床高さは、調べた他の方法よりも、理想的な床高さに近かった。さらに、遠心分離法及びGEキットは、誤差限界の床高さまたはそれを超える床高さになり、その床充填物が、許容される床高さ範囲から外れ、再充填が必要であることを示している。
【0046】
GEキットの操作者変動性試験及び限界評価
現在市販されているGEキットの操作者変動性を得るため、操作者にシステムの使用方法に関する段階的な指示及び経験を与え、各段階後にバルク溶液からの測定が実施された。
図6は、操作者変動性試験の結果を示す。データは、GEキットが、操作者間の変動性、慣れと経験のレベルによる変動性、及び測定する材料による変動性を経験していることを示している。これはまた、GEキットが、動的な製造環境で一貫した結果をもたらすのに十分な制御を有さないこと示している。
【0047】
現在市販されているGEキットで使用される非制御流動の影響を評価するため、サンプルの処理中、潜在的な操作者の能力に基づいて流れを変化させる実験を行った。
図7は、最初に水をカラムに流し、床高さの測定値を記録した実験の結果を示す。次いで、二度目、水をこのカラムに流し、二度目の床高さの測定値を記録した。
図7は、推奨範囲外の流れが、床高さの潜在的に許容できない変化をもたらしたことを示している。
【0048】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるが、具体的な実施例に示される数値はできる限り正確に報告されている。任意の数値はしかしながら、それぞれの試験測定値で見られる標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を本質的に含んでいる。さらに、様々な範囲の数値範囲が本明細書に示される場合、列挙された値を含めたこれらの値の任意の組み合わせが使用され得ることが企図される。実際、本明細書に開示されるすべての範囲は、包括的かつ組み合わせ可能である。例えば、すべての範囲は、当該範囲の端点及び全中間値を含める。
【0049】
本明細書に開示される特定の実施形態は、本発明のいくつかの態様の例示を目的としているため、本明細書に記載され、特許請求される本発明は、これら実施形態によって範囲を限定されるものではない。任意の同等の実施形態は、本発明の範囲内にあるものとする。実際、本明細書に示され、説明されたものに加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明から当業者には明らかになるであろう。かかる修正もまた、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。前述の本文に引用されるすべての特許及び特許出願は、参照することによりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。