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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ピストン-シリンダユニット
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/122 20060101AFI20231024BHJP
   F16K 51/02 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
F16K31/122
F16K51/02 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020536611
(86)(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2019050519
(87)【国際公開番号】W WO2019154579
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】A33/2018
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593030945
【氏名又は名称】バット ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マルティン キーンライヒ
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0006114(US,A1)
【文献】特開2012-112522(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0008306(US,A1)
【文献】特開昭53-147178(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011086823(DE,A1)
【文献】西独国特許出願公開第03148377(DE,A1)
【文献】国際公開第2017/155404(WO,A1)
【文献】中国実用新案第201347917(CN,Y)
【文献】米国特許第03695149(US,A)
【文献】特開2010-276096(JP,A)
【文献】特開2008-002511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
F16J 1/00 - 1/24
F16J 7/00 - 10/04
F16K 31/122- 31/124
F16K 51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内部空間(2)を有するシリンダハウジング(1)と、前記シリンダ内部空間(2)に配置されているピストン(3)と、を備え、ピストンロッド(4)が前記ピストン(3)から延在し、前記シリンダハウジング(1)の開口部から導出され、かつ、前記シリンダハウジング(1)に配置されたピストンロッド封止部材(12)により前記シリンダハウジング(1)に対して封止されているピストン-シリンダユニットであって、
前記ピストンロッド(4)に連動する合成樹脂製のスライドスリーブ(11)が、前記ピストンロッド封止部材(12)の当接箇所において前記ピストンロッド(4)に配置され、
前記ピストン(3)および前記ピストンロッド(4)が合成樹脂材料を含み、相互に一体的に形成され、
前記ピストンロッド(4)が、前記ピストン(3)の合成樹脂材料と一体的に形成された合成樹脂材料を有する第1部分(4a)と、金属からなる第2部分(4b)と、を備え、金属からなる突出部(4c)が前記第2部分(4b)から突出し、前記第1部分(4a)の合成樹脂材料に埋設されていることを特徴とするピストン-シリンダユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のピストン-シリンダユニットにおいて、
スライドスリーブ(11)が、前記ピストンロッド封止部材(12)が前記スライドスリーブ(11)に当接する領域において封止部(11a)を備え、かつ、前記スライドスリーブ(11)および前記シリンダハウジング(1)の間にスライドガイドが形成されている領域において案内部(11b)を備え、
前記封止部(11a)および前記案内部(11b)が、前記スライドスリーブ(11)の長手延在方向の異なる領域に延在していることを特徴とするピストン-シリンダユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のピストン-シリンダユニットにおいて、
前記封止部(11a)の領域における前記スライドスリーブ(11)の外径が、前記案内部(11b)の領域における前記スライドスリーブ(11)の外径よりも小さいことを特徴とするピストン-シリンダユニット。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか1項に記載のピストン-シリンダユニットにおいて、
前記シリンダハウジング(1)が、前記ピストンロッド(4)が前記シリンダ内部空間(2)から導出される開口部を形成し、かつ、前記スライドスリーブ(11)のラジアル軸受を形成する、外側に突出する筒状部(9a)を備え、
前記シリンダハウジング(1)および前記筒状部(9a)が合成樹脂材料を含み、かつ、前記シリンダハウジング(1)の少なくとも一部および前記筒状部(9a)が相互に一体的に形成されていることを特徴とするピストン-シリンダユニット。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか1項に記載のピストン-シリンダユニットにおいて、
前記シリンダハウジング(1)が、基体(6)と、前記基体(6)の内側に配置されている合成樹脂製のスライドブッシュ(7)と、を備え、 前記ピストン(3)と前記シリンダハウジング(1)の間を封止するために、前記ピストン(3)に配置されたピストン封止部材(5)が前記スライドブッシュ(7)に当接することを特徴とするピストン-シリンダユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のピストン-シリンダユニットにおいて、
前記ピストン(3)の後退端位置において、前記ピストン封止部材(5)の一部または前記ピストン(3)に配置された付加的な封止部材(29)が、前記シリンダハウジング(1)の封止面(7b、30)に当接し、前記ピストン(3)が前進端位置に向かって変位した場合には前記シリンダハウジング(1)の封止面(7b、30)から離間し、
前記封止面(7b、30)が、前記シリンダハウジング(1)の縦中心軸線(8)に対して少なくとも45°だけ傾斜していることを特徴とするピストン-シリンダユニット。
【請求項7】
請求項6に記載のピストン-シリンダユニットにおいて、
前記封止面(7b)が、前記シリンダハウジング(1)の縦中心軸線(8)の方向に向かって突出する前記スライドブッシュ(7)の端部(7a)によって形成されていることを特徴とするピストン-シリンダユニット。
【請求項8】
シリンダ内部空間(2)を有するシリンダハウジング(1)と、前記シリンダ内部空間(2)に配置されているピストン(3)と、を備え、ピストンロッド(4)が前記ピストン(3)から延在し、前記シリンダハウジング(1)の開口部から導出され、かつ、前記シリンダハウジング(1)に配置されたピストンロッド封止部材(12)により前記シリンダハウジング(1)に対して封止されているピストン-シリンダユニットであって、
前記ピストンロッド(4)に連動する合成樹脂製のスライドスリーブ(11)が、前記ピストンロッド封止部材(12)の当接箇所において前記ピストンロッド(4)に配置され、
スライドスリーブ(11)が、前記ピストンロッド封止部材(12)が前記スライドスリーブ(11)に当接する領域において封止部(11a)を備え、かつ、前記スライドスリーブ(11)および前記シリンダハウジング(1)の間にスライドガイドが形成されている領域において案内部(11b)を備え、
前記封止部(11a)および前記案内部(11b)が、前記スライドスリーブ(11)の長手延在方向の異なる領域に延在しており、
前記封止部(11a)の領域における前記スライドスリーブ(11)の外径が、前記案内部(11b)の領域における前記スライドスリーブ(11)の外径よりも小さいことを特徴とするピストン-シリンダユニット。
【請求項9】
シリンダ内部空間(2)を有するシリンダハウジング(1)と、前記シリンダ内部空間(2)に配置されているピストン(3)と、を備え、
ピストンロッド(4)が前記ピストン(3)から延在し、前記シリンダハウジング(1)の開口部から導出され、かつ、前記シリンダハウジング(1)に配置されたピストンロッド封止部材(12)により前記シリンダハウジング(1)に対して封止されているピストン-シリンダユニットであって、
前記ピストンロッド(4)に連動する合成樹脂製のスライドスリーブ(11)が、前記ピストンロッド封止部材(12)の当接箇所において前記ピストンロッド(4)に配置され、
前記シリンダハウジング(1)が、基体(6)と、前記基体(6)の内側に配置されている合成樹脂製のスライドブッシュ(7)と、を備え、
前記ピストン(3)と前記シリンダハウジング(1)の間を封止するために、前記ピストン(3)に配置されたピストン封止部材(5)が前記スライドブッシュ(7)に当接し、
前記ピストン(3)の後退端位置において、前記ピストン封止部材(5)の一部または前記ピストン(3)に配置された付加的な封止部材(29)が、前記シリンダハウジング(1)の封止面(7b、30)に当接し、前記ピストン(3)が前進端位置に向かって変位した場合には前記シリンダハウジング(1)の封止面(7b、30)から離間し、
前記封止面(7b、30)が、前記シリンダハウジング(1)の縦中心軸線(8)に対して少なくとも45°だけ傾斜しており、
前記封止面(7b)が、前記シリンダハウジング(1)の縦中心軸線(8)の方向に向かって突出する前記スライドブッシュ(7)の端部(7a)によって形成されていることを特徴とするピストン-シリンダユニット。
【請求項10】
バルブ開口部(18)と、前記バルブ開口部(18)を開放する開位置および前記バルブ開口部(18)を閉塞する閉位置の間で変位可能な閉塞部材(17)と、を備えている真空バルブであって、
前記閉塞部材(17)を開位置および閉位置の間で変位させるための駆動装置を備え、 前記駆動装置が、請求項1~9のうちいずれか1項に記載のピストン-シリンダユニットを備えていることを特徴とする真空バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ内部空間を有するシリンダハウジングと、前記シリンダ内部空間に配置されているピストンと、を備え、ピストンロッドが前記ピストンから延在し、前記シリンダハウジングの開口部から導出され、かつ、前記シリンダハウジングに配置されたピストンロッド封止部材により前記シリンダハウジングに対して封止されているピストン-シリンダユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、真空バルブ用の駆動装置として機能する合成樹脂製の空気圧ピストン-シリンダユニットが知られている。通常、連続運転にはグリースまたはオイルによる潤滑が必要である。ここでの不利な点は、実際には潤滑剤が漏れる可能性があることであり、これは特にクリーンルーム条件下などの敏感な環境では問題になる可能性がある。導入される潤滑剤の量は常に重要であり、正確に塗布することは容易ではなく、非常にコストがかかる。
【0003】
潤滑剤なしで作動するピストン-シリンダユニットが知られている(例えば、特許文献1および2参照)。この目的のため、少なくとも1つの固体潤滑剤を含む材料がシリンダの壁領域において使用されている。例えば、シリンダジャケットは、二硫化モリブデン、黒鉛、二硫化タングステン、二硫化テルル、二硫化セレン、二硫化チタンまたはそれらの混合物から形成できる固体潤滑剤を含む内側層を備えている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第3703125号明細書
【文献】米国特許第3286737号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、周囲での粒子の発生が少なく、特にクリーンルーム条件下で優位性がある、前記タイプの優れたピストン-シリンダユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を備えたピストン-シリンダユニットによって達成される。
【0007】
本発明に係る、特に空気圧式のピストン-シリンダユニットによれば、ピストンロッドと共に運動する合成樹脂製のスライドスリーブが当該ピストンロッドに配置され、ピストンロッド封止部材がスライドスリーブに当接し、これによりピストンロッドがシリンダハウジングに対して封止または遮断される。ピストンロッドにスライドスリーブが配置されることで、ピストンロッドが変位した際のパーティクルの発生が大幅に低減される。スライドスリーブは、シリンダハウジングに対してピストンロッドを軸線方向に変位可能に案内するために機能する。この目的のため、スライドスリーブは、スライドスリーブとシリンダハウジングとの間にスライドガイドが形成される領域に案内部を有していてもよい。スライドスリーブが、ピストンロッド封止部材がスライドスリーブに配置されている領域において封止部材を有し、スライドスリーブの長手延在方向について異なる領域において案内部を有することが特に好ましい。すなわち、封止部および案内部は、ピストンロッドの軸線方向について重なっていない。したがって、案内機能と密封機能とを互いに分離することができる。
【0008】
スライドスリーブは、固体潤滑剤を含んでいてもよい。例えば、二硫化モリブデン、グラファイト、セラミック粒子(ガラスビーズなど)、細かく破砕された軟質金属(アルミニウム、銅、鉛など)、またはPTFEなどの合成樹脂、またはこれらの組み合わせが採用される。
【0009】
スライドスリーブを軸方向に案内するため、シリンダハウジングは、ピストンロッドがシリンダ内部空間から導出される開口部を形成する筒状部を有し、筒状部はスライドスリーブを軸線方向に変位可能に案内し、かつ、スライドスリーブのラジアル軸受を形成する。特に、筒状部は、シリンダハウジングの蓋部から外側に突出していてもよい。
【0010】
本発明の有利な実施形態では、シリンダハウジングは、基体と、当該基体の内側に配置された合成樹脂製のスライドブッシュと、を有し、ピストンとシリンダハウジングとの間を封止するため、ピストンに配置されたピストン封止部材が、このスライドブッシュに対して当接する。このように、シリンダハウジングに対する静的な要件とピストン封止部材との接触面の要件が互いに分離されうる。スライドブッシュは、固体潤滑剤を含んでいてもよい。例えば、二硫化モリブデン、グラファイト、セラミック粒子(ガラスビーズなど)、細かく分割された軟質金属(アルミニウム、銅、鉛など)、またはPTFEなどの合成樹脂、またはそれらの組み合わせが採用される。
【0011】
本発明の可能な実施形態では、ピストンの後退端位置において、ピストン封止部材の一部またはピストンに配置された付加的な封止部材が、シリンダハウジングの封止面に当接する。封止面は、シリンダハウジングの縦中心軸線(=軸線方向)に対して少なくとも45°だけ傾斜し、好ましくはシリンダハウジングの縦中心軸線に対して垂直である。ピストンが前進位置に向かって変位した際、ピストン封止部材の当該部分またはピストンに配置された付加的な封止部材が封止面から離間する。これにより、ピストンの後退端位置において、シリンダ内部空間に導入される圧縮空気のための付加的な封止が実現され、その結果、圧縮空気の消費量の低減が図られる。
【0012】
本発明によるピストン-シリンダユニットは、駆動される異なる装置と連携して使用されう。特に、バルブ開口部を開く開位置とバルブ開口部を閉じる閉位置との間で真空バルブの閉塞部材を変位させるため、真空バルブの駆動装置または駆動装置の少なくとも一部を構成するピストン-シリンダユニットを備えている真空バルブにおいて用いられる。
【0013】
本発明のさらなる利点および詳細は、添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るピストン-シリンダユニットの一の斜視図。
図2】本発明の実施形態に係るピストン-シリンダユニットの他の斜視図。
図3】ピストン-シリンダユニットの側面図。
図4】(ピストンが前進端位置にある)図3の線分A-Aに沿った断面図。
図5】ピストンが後退位置にある状態の図4に対応する断面図。
図6】ピストン-シリンダユニットを備えている真空バルブの斜視図。
図7】真空バルブの側面図。
図8】(閉塞部材が閉位置にある)図7の線分B-Bに沿った断面図。
図9】(閉塞部材が開位置にある際の図8と同様の断面図。
図10】(2つの反対側にある固定ねじを通る)対角線方向の断面図。
図11】本発明の他の実施形態に係るピストン-シリンダユニットの部分的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
圧縮空気によって駆動される本発明に係るピストン-シリンダユニットの一実施形態が図1図5に示されている。ピストン-シリンダユニットは、シリンダ内部空間2を有するシリンダハウジング1を備えている。シリンダ内部2空間には、ピストン3が配置されている。ピストンロッド4は、ピストン3から延在し、開口部を通じてシリンダハウジング1の外部に案内されている。
【0016】
シリンダハウジング1は縦中心軸線8(または長手延在方向の中心軸線)を有している。シリンダハウジング1の縦中心軸線8およびピストンロッド4の縦中心軸線は、共通の直線上に延在している(または、換言すると一致している)。
【0017】
ピストン3は、合成樹脂、特に熱可塑性樹脂により構成されている。例えば、ピストン3はPA(ポリアミド樹脂)により形成されていてもよい。ピストン3がPOM(ポリアセタール樹脂)により形成されていてもよい。ピストン3を構成する合成樹脂が繊維により強化されていてもよい。
【0018】
ピストン3を環状に取り囲み、それによってピストン3がシリンダハウジング1に対して封止または密封されるピストン封止部材5がピストン3に配置されている。本実施形態では、ピストン封止部材5は、封止リップ5aを有するリップ封止部材として設計されている。
【0019】
ピストン封止部材5は、通常、例えば熱可塑性エラストマーなどのエラストマー材料により形成されている。例えば、ピストン封止部材5はTPU(ポリウレタン系熱可塑性エラストマー)により形成されていてもよい。本実施形態では、ピストン封止部材5は、ピストン3の上に射出成形されている。例えば、ピストン3に、Oリングが挿入される溝が形成されていてもよい。
【0020】
シリンダハウジング1は、合成樹脂、特に熱可塑性物質からなる鉢状の基体6を有している。例えば、基体6はPAにより形成されていてもよい。基体6がPOMにより形成されていてもよい。基体6を構成する合成樹脂が繊維により強化されていてもよい。
【0021】
鉢状の基体6は蓋部9により閉じられている。蓋部9は、ピストンロッド4がシリンダ内部空間2から導出される開口部を有している。シリンダハウジング1の残りの部分から蓋部9を封止するために環状の封止部材10が使用されている。本実施形態では、スライドブッシュ7によって形成される封止面に対して当接する蓋部9の溝に配置されるOリングにより封止部材10が構成されている。
【0022】
蓋部9を固定し、かつ、封止部材10を押圧するため、(図1図5には示されていない)固定ねじが用いられてもよい。特に、以下に真空バルブに関連して説明されるように、ピストン-シリンダユニットが駆動装置として使用される装置に対してピストン-シリンダユニットを取り付けるために固定ねじが用いられてもよい。
【0023】
蓋部9は、基体6と同じ合成樹脂材料により形成されていてもよい。
【0024】
シリンダハウジング1は、基体6の内部に配置され、基体6に当接し、かつ、シリンダ内部空間2を径方向に画定するスライドブッシュ7をさらに備えている。ピストン封止部材5はスライドブッシュ7の上に配置されている。スライドブッシュ7は、例えばPAまたはPOMなどの合成樹脂により形成されている。スライドブッシュ7には、例えばガラスビーズのような固体潤滑剤が提供されている。
【0025】
したがって、シリンダハウジング1の外套部1bは、基体1aの外套部およびスライドブッシュ7により構成されている。
【0026】
縦中心軸線8に面するスライドブッシュ7の内側面は、ピストン封止部材5の封止リップ5a、および本実施形態ではピストン封止部材5の封止面を構成している。スライドブッシュ7は、好ましくは基体6の上に射出成形される。
【0027】
ピストン3は、シリンダ内部空間2において後退端位置(図5参照)と前進端位置(図4参照)との間で変位可能である。本実施形態では、ポート13を通じて蓋部9とピストン3との間に存在する圧力室に導入される圧縮空気により、ピストン3が前進端位置から後退端位置に駆動される。図6図10に関連して説明されるように、ピストン-シリンダユニットによって駆動される装置に組み込まれたばねにより、ピストン3が後退端位置と前進端位置との間で駆動される。ピストン3と底部1aとの間の空間は、底部1aの通気口14を通じて外部に連通している。
【0028】
圧縮空気による2つの端位置の間の位置調節、または圧縮空気による後退端位置と前進端位置との間の位置調節、およびばねによる反対方向への位置調節が可能である。
【0029】
スライドブッシュ7は、縦中心軸線8の方向に突出し、シリンダハウジング1の底部1aの領域で基体6に当接する端部領域7aを有している。端部領域7aは、ピストン3の後退端位置において、ピストン封止部材5の指定部分5bが当接する封止面7bを構成している(図5参照)。本実施形態では、ピストン封止部材5の指定部分5bのための当該封止面7bは、シリンダハウジング1の軸線方向に対して垂直(=縦中心軸線8に対して垂直)である。他の実施形態では、封止面7bは、当該方向に対して傾斜していてもよく、縦中心軸線8に平行な方向に対して少なくとも45°だけ傾斜している。
【0030】
ピストン3が後退端位置(図5参照)から前進端位置(図4参照)に向かって変位する際、ピストンシール5の指定部分5bがスライドブッシュ7の封止面7bから離間する。
【0031】
ピストンロッド4には、スライドスリーブ11が配置されている。これは、ピストンロッド4に対して変位不可能に接続されているため、ピストンロッド4と共に動かされるまたは連動する。スライドスリーブ11を環状に取り囲むピストンロッド封止部材12が、当該スライドスリーブ11に当接し、ピストンハウジング4をシリンダハウジング1に対して封止する機能を発揮する。ピストンロッド封止部材12は、ピストンロッド4がシリンダ内部空間2から導出される開口部を取り囲んでいる。本実施形態では、ピストンロッド封止部材12は蓋部9に配置され、好ましくは射出成形されている。蓋部9の溝にピストンロッド封止部材12が保持されていてもよい。
【0032】
ピストンロッド封止部材12は、熱可塑性エラストマーなどのエラストマー材料により形成されている。例えば、ピストンロッド封止部材12は、TPUから形成されていてもよい。
【0033】
ピストンロッド封止部材12は、好ましくは、スライドスリーブ11の外側面に当接する封止リップ12aを有するリップ封止部材として構成されている。
【0034】
ピストンロッド封止部材12は、スライドスリーブ11の封止部11aの領域で当該スライドスリーブ11に当接し、それによりピストン3が前進端位置と後退端位置との間で変位するのに伴って変位する。スライドスリーブ11はさらに、ピストンロッド4の軸方向で封止部11aに隣接する案内部11bを有している。案内部11bにより、ピストンロッド4はその軸線方向についてシリンダハウジング1に対して変位可能に案内される。この目的のため、蓋部9は、シリンダ内部空間2から離れる方向について蓋部9から突出し、ピストンロッド4がシリンダ内部空間2から外部空間に案内される開口部を形成する筒状部9aを有している。筒状部9aは、蓋部9と同じ合成樹脂材料から形成されていてもよく、蓋部9と一体的に形成されていてもよい。
【0035】
筒状部9aの内側面は、案内部11bの内部でスライドスリーブ11の外側面と相互作用する案内面を形成し、その結果としてスライドスリーブ11に対してラジアル軸受が形成される。
【0036】
スライドスリーブ11の外径は、案内部11bの領域よりも封止部11aの領域で小さくなっている。これにより、封止機能および案内機能が明確に分離されている。
【0037】
スライドスリーブ11は、PAまたはPOMなどの合成樹脂により形成されている。スライドスリーブ11を構成する合成樹脂は、ガラスビーズなどの固体潤滑剤を備えている。
【0038】
スライドスリーブ11は、好ましくは、ピストンロッド4の上に射出成型される。例えば、押圧、または、スライドスリーブ11がピストンロッド4に接着されることによる保持も可能である。
【0039】
シリンダ内部空間2に向けられたスライドスリーブ11の端部に連続して、封止材料15が、ピストンロッド4の外側面または外表面に射出成型等により設けられている。封止材料15はピストン3の表面に連続していてもよい。封止材料15により、ピストンロッド4とスライディングスリーブ11との間の隙間を通る圧縮空気の通過に対する付加的な安全性が確保される。スライドスリーブ11に対してピストンロッド4が隙間なく当接することが好ましい。
【0040】
ピストン3に隣接するピストンロッド4の第1部分4aは、好ましくはピストン3の合成樹脂材料と一体的に(=同一材料で一体的に)形成される合成樹脂材料を有している。この合成樹脂材料には、ピストンロッドの第2部分4bの突出部4cが埋設されている。突出部4cおよび第2部分4bは金属により形成され、好ましくは相互に一体的に形成されている。第2部分4bは、ピストン-シリンダユニットによって駆動される装置の一部に対してピストン3を接続する役割を果たす。その結果、連続運転に際して安定した接続が実現される。
【0041】
前述のピストン-シリンダユニットによって構成される駆動装置を備えている真空バルブの一実施形態が図6図10に示されている。真空バルブは、バルブハウジング16と、当該バルブハウジング16の内部に配置されている閉塞部材17と、を備えている。閉塞部材17は、バルブハウジング16のバルブ開口部18を閉じる閉位置(図8参照)と、バルブ開口部18を開く開位置(図9参照)との間で変位可能である。本実施形態では、真空バルブは、コーナーバルブの形態で設計されている。バルブハウジング16は、バルブ開口部18を有する第1接続部16aと、それに対して垂直なさらなる開口部を有する第2接続部16bと、を有している。
【0042】
図1図5に示されているピストン-シリンダユニットは、閉塞部材17を閉位置と開位置との間で駆動する役割を果たす。この目的のため、閉塞部材17は、例えば、閉塞部材17の雌ねじに螺合するピストンロッド4の端部に配置された雄ねじによって、ピストンロッド4に対して取り付けられている。
【0043】
ピストンロッド4のバルブハウジング1への導入をさらに封止するため(ピストンロッド封止部材12だけでは十分ではない)、メンブレンベローズ19が用いられる。メンブレンベローズ19の一端は、例えば溶接によって閉塞部材17に対して真空密閉された状態で連結されている。メンブレンベローズ19の他端には、例えば溶接によって末端部材20が取り付けられている。板状の末端部材20は、バルブハウジング16の挿入口21を閉じる。末端部材20とバルブハウジング16との間には、真空密封状態の接続のために密封リング22が配置されている。封止リング22は、ねじ23によって末端部材20とバルブハウジング16との間で押し付けられる。ねじ23は、シリンダハウジング1および蓋部9の孔を貫通し、バルブハウジング16のねじ穴にねじ込まれる。したがって、ねじ23は、ピストン-シリンダユニットをバルブハウジング16に連結するためにも使用され、蓋部9は封止部材10を押圧しながらシリンダハウジング1と一緒に保持される。
【0044】
閉塞部材17が整備目的でバルブハウジング16から取り外される場合、ねじ23が緩められてもよい。
【0045】
支持部25がクランプリング24によってピストンロッド4に保持されている。コイルばね26が支持部25と筒状部9aの段部との間に配置されている。ピストン3と蓋部9の間の空間が減圧されると、閉塞部材17に配置された封止リング27がバルブ開口部18を取り囲む封止面28に対して押し付けられるようにコイルばね26によって閉塞部材17が押圧され、真空バルブが閉じられる(=閉塞部材17の封止状態)。
【0046】
ピストン3と蓋部9との間の空間が加圧されることにより、閉塞部材17が封止面28から離間して、その開位置に変位する。
【0047】
図11には、本発明に係るピストン-シリンダユニットの若干変更された実施形態が示されている。前記実施形態との相違点は、特に、ピストン3の後退端位置において、シリンダハウジング1の封止面30に当接する付加的な封止部材29がピストン3に配置されていることである。これにより、ピストン3の後退端位置において、通気口14を介した圧縮空気の漏れに対する付加的な封止が実現される。
【0048】
本発明の前記実施形態は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で変更されてもよい。
【0049】
本発明に係るピストン-シリンダユニットによって駆動される真空バルブは、コーナーバルブの形態とは異なる形態で設計されてもよい。例えば、L-バルブのように、閉塞部材が開位置と閉位置との間で位置調節される。本発明にしたがって設計される単一のピストン-シリンダユニットによって(公知の相応の案内要素と同様に)閉塞部材が両方向に駆動されてもよく、または、閉塞部材を両方向に駆動するために2つの個別の本発明にしたがって設計されるピストン-シリンダユニットが設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1‥シリンダハウジング、1a‥底部、1b‥外套部、2‥シリンダ内部空間、3‥ピストン、4‥ピストンロッド、4a‥第1部分、4b‥第2部分、4c‥突出部、5‥ピストン封止部材、5a‥封止リップ、5b‥指定部分、6‥基体、7‥スライドブッシュ、7a‥端部、7b‥封止面、8‥縦中心軸線、9‥蓋部、9a‥筒状部、10‥封止部材、11‥スライドスリーブ、11a‥封止部、11b‥案内部、12‥ピストンロッド封止部材、12a‥封止リップ、13‥ポート、14‥通気口、15‥封止材、16‥バルブハウジング、16a‥第1接続部、16b‥第2接続部、17‥閉塞部材、18‥バルブ開口部、19‥メンブレンベローズ、20‥末端部材、21‥挿入口、22‥封止リング、23‥ねじ、24‥クランプリング、25‥支持部、26‥コイルスプリング、27‥シールリング、28‥封止面、29‥封止部材、30‥封止面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11