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特許7372251末梢動脈疾患、大動脈弁狭窄症についての診断および予後の方法、ならびにアウトカム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】末梢動脈疾患、大動脈弁狭窄症についての診断および予後の方法、ならびにアウトカム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20231024BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
G01N33/68
C07K14/47
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020544567
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 US2018059080
(87)【国際公開番号】W WO2019090166
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】62/580,916
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520154874
【氏名又は名称】プリベンシオ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ライン,ローンダ・フェイ
(72)【発明者】
【氏名】マーガレット,クレイグ・アガメノン
(72)【発明者】
【氏名】バーネス,グレイディ
(72)【発明者】
【氏名】ジャヌッツィ,ジェームズ・ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ストローベック,ジョン
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-006074(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0042214(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0171396(US,A1)
【文献】国際公開第2017/136464(WO,A1)
【文献】特表2008-501688(JP,A)
【文献】Zi Ye et al.,Associations of Candidate Biomarkers of Vascular Disease with the Ankle-Brachial Index and Peripheral Arterial Disease,American Journal of Hypertension,2013年01月11日,Volume 26, Issue 4,Pages 495-502
【文献】Sascha David et al.,Angiopoietin 2 and Cardiovascular Disease in Dialysis and Kidney Transplantation,American Journal of Kidney Diseases,2009年05月,Volume 53, Issue 5,Pages 770-778
【文献】Jeffrey S. Berger et al.,Peripheral artery disease, biomarkers, and darapladib,American Heart Journal,2011年05月,Volume.161, Issue.5,Pages 972-978
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
C07K 14/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における末梢動脈疾患を決定するために生物学的サンプルを分析する方法であって、
(i)末梢動脈疾患を有する疑いがある対象から得られた生物学的サンプルを提供するステップと、
(ii)生物学的サンプルを、分析用デバイスに適用して、
(a)サンプル中の少なくとも2種のタンパク質マーカーの濃度を検出し;
(b)定量化標準に対するタンパク質マーカーの前記濃度を正規化し、
(c)正規化されたタンパク質マーカー濃度をスコアに変換するステップであって、
少なくとも2種のタンパク質マーカーは、アンジオポエチン1を含み、さらにアポリポタンパク質C-I、アンギオテンシン変換酵素、癌胎児抗原関連細胞接着分子1、エオタキシン1、ENRAGE、フェチュインA、卵胞刺激ホルモン、細胞間接着分子1、インターフェロンガンマ誘導タンパク質10、インターロイキン1受容体アンタゴニスト、インターロイキン8、インターロイキン23、腎臓障害分子1、マトリックスメタロプロテアーゼ7、マトリックスメタロプロテアーゼ9、ミッドカイン、γインターフェロンにより誘導されるモノカイン、骨髄系前駆細胞抑制因子1、オステオポンチン、肺サーファクタント関連タンパク質D、レジスチン、セロトランスフェリン、タム・ホースフォール尿糖タンパク質、T細胞特異的タンパク質RANTES、チロキシン結合グロブリン、およびトランスサイレチンから選択される少なくとも1種のタンパク質マーカーを含む、ステップと;
(iii)任意選択で、対象についての少なくとも1種の臨床変数の状態を決定するステップであって、臨床変数は、年齢、高血圧の病歴、末梢経皮的血管形成術の履歴、肥満度指数(BMI)、脂質異常症の病歴、および/または末梢血管血行再建術の履歴から選択される、ステップと、
(iv)ステップ(ii)において決定されるタンパク質マーカーの正規化され、変換された濃度および任意選択で、ステップ(iii)において決定された臨床変数の状態に基づいたアルゴリズムを用いて診断スコアを算出するステップと;
(v)陽性、中間または陰性の結果として診断スコアを分類するステップとを含み、
診断スコアにより示された通り、対象における末梢動脈疾患の決定が提供される、前記方法。
【請求項2】
陽性、中間または陰性の結果に基づいて、対象における治療または診断のインターベンションの好ましいもしくは望ましいモードに関係する、医師のための指示または他の推奨を行うステップをさらに含み、前記治療が、治療的介入レジメンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サンプルが、血漿を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2種のタンパク質マーカーが、アンジオポエチン1、エオタキシン1、卵胞刺激ホルモン、インターロイキン23、腎臓障害分子1、およびミッドカインであり、任意選択のステップ(iii)が、高血圧の病歴の状態を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
対象における末梢動脈疾患の決定が、末梢動脈中の50%またはそれより多くの閉塞の決定を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
対象における陽性診断スコアによって、超音波、薬物の投与、末梢血管造影、末梢血管血行再建術、および公知の切断リスクを伴う任意の薬物の回避から選択される1つまたは複数のインターベンションの必要性を医師により決定することが容易になる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
対象における陰性診断スコアによって、継続的なモニタリングならびに末梢および冠血管リスク因子の管理、および生活様式の変更から選択される1つまたは複数のインターベンションの必要性を医師により決定することが容易になる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
対象における中間診断スコアによって、さらなる試験、足関節上腕血流比(ABI)試験、およびリスク因子についてのより頻繁なモニタリングから選択される1つまたは複数のインターベンションの必要性を医師により決定することが容易になる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
高血圧を有するおよび/または末梢動脈疾患を有する疑いがある対象における2種以上のタンパク質マーカーを検出する方法であって、
(i)高血圧を有するおよび/または末梢動脈疾患を有する疑いがある対象を選択するステップと;
(ii)対象から得られた生物学的サンプルを提供するステップと;
(iii)生物学的サンプルを、分析用デバイスに適用するステップと、
(iv)少なくとも2種のタンパク質マーカーの濃度を検出するステップであって、前記少なくとも2種のタンパク質マーカーがアンジオポエチン1を含み、さらに、アポリポタンパク質C-I、アンギオテンシン変換酵素、癌胎児抗原関連細胞接着分子1、エオタキシン1、ENRAGE、フェチュインA、卵胞刺激ホルモン、細胞間接着分子1、インターフェロンガンマ誘導タンパク質10、インターロイキン1受容体アンタゴニスト、インターロイキン8、インターロイキン23、腎臓障害分子1、マトリックスメタロプロテアーゼ7、マトリックスメタロプロテアーゼ9、ミッドカイン、γインターフェロンにより誘導されるモノカイン、骨髄系前駆細胞抑制因子1、オステオポンチン、肺サーファクタント関連タンパク質D、レジスチン、セロトランスフェリン、タム・ホースフォール尿糖タンパク質、T細胞特異的タンパク質RANTES、チロキシン結合グロブリン、およびトランスサイレチンから選択された少なくとも1種のタンパク質マーカーを含む、ステップと
を含む方法。
【請求項10】
(v)ステップ(iv)において決定されたタンパク質マーカーの濃度に基づいて診断スコアを算出するステップと;
(vi)陽性、中間または陰性の結果として診断スコアを分類するステップとをさらに含み、
診断スコアにより示された通り、対象における末梢動脈疾患の決定が提供される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2種のタンパク質マーカーが、アンジオポエチン1、エオタキシン1、卵胞刺激ホルモン、インターロイキン23、腎臓障害分子1、およびミッドカインである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
対象における末梢動脈疾患の決定が、末梢動脈中の50%またはそれより多くの閉塞の決定を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
末梢動脈中の50%またはそれより多くの閉塞の診断のためのパネルであって、アンジオポエチン1、エオタキシン1、卵胞刺激ホルモン、インターロイキン23、腎臓障害分子1、およびミッドカインについての標的結合剤ならびに高血圧の病歴の臨床変数を含む、パネル。
【請求項14】
対象における治療または診断のインターベンションの好ましいもしくは望ましいモードに関係する、医師のための指示または他の推奨をさらに含む、請求項13に記載のパネル。
【請求項15】
請求項13または14に記載のパネルを含む、診断キット。
【請求項16】
末梢動脈疾患のための治療薬および/またはインターベンションに対する対象の陽性、中間、または陰性の応答の評価における、請求項13または14に記載のパネルの使用。
【請求項17】
末梢経皮的血管形成術がステントを用いて行われたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
末梢経皮的血管形成術がステントを用いずに行われたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
末梢血管血行再建術が末梢血管形成術からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
末梢血管血行再建術がステントの留置からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
末梢血管血行再建術がバイパスからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
末梢血管血行再建術が末梢血管形成術である、請求項6に記載の方法。
【請求項23】
末梢血管血行再建術がステントの留置である、請求項6に記載の方法。
【請求項24】
末梢血管血行再建術がバイパスである、請求項6に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも2種のタンパク質マーカーが腎臓障害分子1およびオステオポンチンからなり、かつ、臨床変数が高血圧の病歴からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
対象が高血圧を有し、かつ、少なくとも2種のタンパク質マーカーが腎臓障害分子1およびオステオポンチンからなる、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、患者における心血管系疾患の診断、モニタリングおよび/または予後もしくはアウトカムを決定するための、タンパク質マーカーパネル、アッセイ、およびキットならびに方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ヒトを苦しめている、多くの心血管系疾患がある。末梢動脈疾患(PAD)の罹患率は、≧55歳の人で10%~25%であることが推定され、>80歳の地域人口においておよそ40%まで増加する[1、2]。およそ4~800万人の人が、アメリカ合衆国においてPADに罹患している[3~5]。ドイツでは、およそ180万人の人が、症候性PADを有し、毎年50,000~80,000名の患者の間で、慢性虚血肢(CLI)を発症している[6、7]。西オーストラリア州における母集団を基礎とした試験において、PADの罹患率は、75~79歳の男性においておよそ23%であることが報告された[1]。最近の報告では、PADの負荷が、過去10年間にわたって、世界的規模で増加していることが示唆されている[8~10]。アテローム動脈硬化症誘導性CLIは、発表後の最初の年において死亡率が20%~25%および5年で生存率が30%未満となる[11~14]。以前の報告から、CLI患者は、3年四肢切断率が約40%であることが示唆されている[15~17]。下肢血行再建術の失敗による再発性CLIは、予後不良を伴う[18~19]。脚の重症虚血(BASIL、n=216)におけるバイパス対血管形成試験では、経皮経管血管形成術により治療されたCLIを伴う患者216名における再介入率は、12カ月で26%であった[11]。血行再建術の失敗の理由には、再狭窄、ならびに残存および進行性アテローム動脈硬化症が含まれる。CLI患者のおよそ20%~30%は、多くの理由、例えば、閉塞性疾患の分布および患者の併存症などのために、介入的手順についての候補が理想的でない[20]。CLIを伴う患者は、総PAD母集団のごく一部を示すが;CVDイベントの高い発生率、医学的な配慮についての繰り返される要望および高い切断率によって、これら個人に関連する大幅な公共医療サービスの費用をもたらす[21~22]。
【0003】
[0003]大動脈弁狭窄症(AS)は、後天性心臓弁膜疾患の最も一般的なタイプを表す。その発生率は、年齢と共に増加し;75歳を超える成人の3%~9%は、大動脈弁狭窄症を発症する。ASの病態生理学的機序は、広範に研究されている。ASの進行は、石灰化制御、炎症/アディポカイン調節不全、プロトロンビン状態、および変更されたフォン・ヴィルブランド因子機能の多くの異常によって特徴付けられる。ASの機序の現在の理解では、複数の細胞のタイプ、特に、筋線維芽細胞およびマクロファージの複雑な役割が関わる[23]。
【0004】
[0004]したがって、末梢動脈疾患、大動脈弁狭窄症の診断および/または予後および/またはモニタリング、および四肢切断を含めた関連するアウトカムを改善する単純な、信頼性のある、さらに新規な方法についての必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]一態様では、本明細書において提供されるのは、対象における末梢動脈疾患を決定するまたはモニターする方法である。本方法は、例えば、末梢動脈疾患を有する疑いがある対象から得られた生物学的サンプルを提供するステップと、サンプル中の少なくとも2種のタンパク質マーカーの濃度を検出し、定量化標準に対して濃度を正規化し、正規化された濃度を変換するためにプログラムされる分析用デバイスに生物学的サンプルを適用するステップとを含むことができる。本方法は、少なくとも1種の臨床変数の状態を、任意選択で決定するステップと、数学的因子としての変数を、分析用デバイスに任意選択で入力するステップと、タンパク質マーカーの正規化され、変換された濃度、任意選択で、臨床変数の状態に基づいたアルゴリズムを用いて診断スコアを算出するステップと、陽性、中間または陰性の結果として診断スコアを分類するステップと、診断スコアにより示された通り、対象における末梢動脈疾患を決定するステップとをさらに含むことができる。少なくとも2種のタンパク質マーカーは、表1から選択される。任意選択の臨床変数は、表2から選択される。
【0006】
[0006]一態様では、本明細書において提供されるのは、末梢動脈疾患を有する疑いがある対象に、治療的介入を施す方法である。本方法には、(i)表1から選択される少なくとも2種のタンパク質マーカーのパネルについて対象のタンパク質マーカープロファイルを決定するステップと;(ii)任意選択で、対象についての少なくとも1種の臨床変数の状態を決定するステップであって、臨床変数は、表2から選択される、ステップと;(iii)(i)中のタンパク質マーカープロファイル、任意選択で、(ii)中の臨床値ステータスに基づいて、対象にスコアを割り当てるステップと;(iv)陽性、中間または陰性スコアに基づいて、治療的介入を対象に施すステップとを含む。本明細書中の方法において提供されるのは、スコアは、陽性、中間および陰性から選択され、スコアは、対象のサンプル中のタンパク質マーカーの正規化されたおよび数学的に変換された濃度、任意選択で、少なくとも1種の臨床変数の状態にアルゴリズム的に由来する。
【0007】
[0007]一態様では、本明細書において提供されるのは、高血圧を有するおよび/または末梢動脈疾患を有する疑いがある対象における2種以上のタンパク質マーカーを検出する方法である。本方法には、高血圧を有するおよび/または末梢動脈疾患を有する疑いがある対象を選択するステップと、対象から得られた生物学的サンプルを提供するステップと、生物学的サンプルを、分析用デバイスに適用するステップと、表1から選択される少なくとも2種のタンパク質マーカーの濃度を検出するステップとを含む。
【0008】
[0008]一態様では、本明細書において提供されるのは、末梢動脈疾患の診断、モニタリングおよび/または予後のためのパネルである。パネルには、表1から選択される少なくとも2種のタンパク質マーカーを結合する標的結合剤(target-binding agent)が含まれる。パネルには、表2から選択される少なくとも1種の臨床変数が、任意選択で含まれる。
【0009】
[0009]一態様では、本明細書において提供されるのは、末梢動脈の50%またはそれより多くの閉塞の診断のためのパネルである。パネルには、アンジオポエチン1、エオタキシン1、卵胞刺激ホルモン、インターロイキン23、腎臓障害分子(kidney injury molecule)1、およびミッドカインのためのタンパク質マーカーを結合する標的結合剤が含まれ、高血圧の病歴の臨床変数が含まれる。
【0010】
[0010]一態様では、本明細書において提供されるのは、ある期間内に対象における末梢四肢切断のリスクを決定する方法である。本方法は、末梢四肢切断のリスクを有する疑いがある対象から得られた生物学的サンプルを提供するステップと、サンプル中の少なくとも2種のタンパク質マーカーの濃度を検出し、定量化標準に対して濃度を正規化し、正規化された濃度を変換するためにプログラムされる分析用デバイスに生物学的サンプルを適用するステップとを含む。本方法は、少なくとも1種の臨床変数の状態を、任意選択で決定するステップと、タンパク質マーカーの正規化され、変換された濃度、任意選択で、臨床変数の状態に基づいたアルゴリズムを用いた予後スコアを算出するステップと、陽性、中間または陰性の結果として予後スコアを分類するステップと、予後スコアにより示された通り、対象における末梢四肢切断のリスクを決定するステップとを含む。少なくとも2種のタンパク質マーカーは、表1から選択される。任意選択の臨床変数は、表2から選択される。
【0011】
[0011]一態様では、本明細書において提供されるのは、末梢四肢切断のリスクを有する疑いがある対象に、治療的介入を施す方法である。本方法には、(i)表1から選択される少なくとも2種のタンパク質マーカーのパネルについての対象のタンパク質マーカープロファイルを決定するステップと;(ii)任意選択で、対象についての少なくとも1種の臨床変数の状態を決定するステップであって、臨床変数は、表2から選択される、ステップと;(iii)(i)中のタンパク質マーカープロファイル、任意選択で、(i)中の臨床値ステータスに基づいて、対象にスコアを割り当てるステップと;(ii)陽性、中間または陰性スコアに基づいて、治療的介入を対象に施すステップとを含む。本明細書中の方法において提供されるのは、スコアは、陽性、中間および陰性から選択され、スコアは、対象のサンプル中のタンパク質マーカーの正規化されたおよび数学的に変換された濃度、任意選択で、少なくとも1種の臨床変数の状態に基づいて、アルゴリズム的に由来する。
【0012】
[0012]一態様では、本明細書において提供されるのは、2型糖尿病を有するおよび/または末梢四肢切断のリスクを有する疑いがある対象における、2種以上のタンパク質マーカーを検出する方法である。本方法は、2型糖尿病を有するおよび/または末梢四肢切断のリスクを有する疑いがある対象を選択するステップと、対象から得られた生物学的サンプルを提供するステップと、生物学的サンプルを、分析用デバイスに適用するステップと、表1から選択される少なくとも2種のタンパク質マーカーの濃度を検出するステップとを含む。
【0013】
[0013]一態様では、本明細書において提供されるのは、末梢四肢切断の予後のためのパネルである。パネルには、表1から選択される少なくとも2種のタンパク質マーカーを結合する標的結合剤が含まれる。パネルには、表2から選択される少なくとも1種の臨床変数が、任意選択で含まれる。
【0014】
[0014]一態様では、本明細書において提供されるのは、5年以内の末梢四肢切断の予後のためのパネルである。パネルには、腎臓障害分子-1のためのタンパク質マーカーおよびビタミンD結合タンパク質を結合させる標的結合剤が含まれ、2型糖尿病の病歴の臨床変数の状態を決定することが含まれる。
【0015】
[0015]一態様では、本明細書において提供されるのは、対象における大動脈弁狭窄症を決定する方法である。本方法は、大動脈弁狭窄症を有する疑いがある対象から得られた生物学的サンプルを提供するステップと、サンプル中の少なくとも2種のタンパク質マーカーの濃度を検出し、定量化標準に対して濃度を正規化し、正規化された濃度をスコアに変換するためにプログラムされる分析用デバイスに生物学的サンプルを適用するステップとを含む。本方法は、少なくとも1種の臨床変数の状態を、任意選択で決定するステップと、タンパク質マーカーの正規化され、変換された濃度、任意選択で、臨床変数の状態に基づいたアルゴリズムを用いて診断スコアを算出するステップと、陽性、中間または陰性の結果として診断スコアを分類するステップと、診断スコアにより示された通り、対象における大動脈弁狭窄症を決定するステップとを含む。少なくとも2種のタンパク質マーカーは、表1から選択される。任意選択の臨床変数は、表2から選択される。
【0016】
[0016]一態様では、本明細書において提供されるのは、大動脈弁狭窄症を有する疑いがある対象に、治療的介入を施す方法である。本方法には、(i)表1から選択される少なくとも2種のタンパク質マーカーのパネルについて対象のタンパク質マーカープロファイルを決定するステップと;(ii)任意選択で、対象についての少なくとも1種の臨床変数の状態を決定するステップであって、臨床変数は、表2から選択される、ステップと;(iii)(i)中のタンパク質マーカープロファイル、任意選択で、(ii)中の臨床値ステータスに基づいて、対象にスコアを割り当てるステップと;(iv)陽性、中間または陰性スコアに基づいて、治療的介入を対象に施すステップとを含む。実施形態では、スコアは、陽性、中間および陰性から選択され、スコアは、対象のサンプル中のタンパク質マーカーの正規化されたおよび数学的に変換された濃度、任意選択で、少なくとも1種の臨床変数の状態に基づいて、アルゴリズム的に由来する。
【0017】
[0017]一態様では、本明細書において提供されるのは、大動脈弁狭窄症の診断および/またはモニタリングのためのパネルであって、表1に示すものから選択される少なくとも2種のタンパク質マーカーを含み、任意選択で、表2に記載のものから選択される少なくとも1種の臨床変数を含む、パネルである。
【0018】
[0018]一態様では、本明細書において提供されるのは、大動脈弁狭窄症の診断のためのパネルであって、フェチュインA、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン、ならびにフォン・ヴィルブランド因子および年齢の臨床変数を含む、パネルである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】[0019]PADの存在(任意の末梢血管中の≧50%の閉塞)を診断する、および/またはPADの進行もしくは治療効果をモニターするための、Prevencio PADパネルPAD158(実施例1に記載の通り)(N=353)についての受診者動作特性曲線を示す図である。パネルは、頑健な交差検証された曲線下面積(AUC)が0.84であり(未掲載)、サンプル中のAUCが0.85であった(図1に示す)。
図2】[0020]PADの存在(任意の末梢血管中の≧50%の閉塞)を診断する、および/またはPADの進行もしくは治療効果をモニターするための、Prevencio PADパネルPAD076(実施例2に記載の通り)(N=258)についての受診者動作特性曲線を示す図である。パネルは、頑健な交差検証された曲線下面積(AUC)が0.72であり(未掲載)、サンプル中のAUCが0.76であった(図2に示す)。
図3】[0021]末梢四肢切断リスクの予後についてのPrevencioパネルAMPU018(実施例3に記載の通り)(N=353)についての受診者動作特性曲線を示す図である。パネルは、頑健な交差検証された曲線下面積(AUC)が0.84であり(未掲載)、サンプル中のAUCが0.87であった(図3に示す)。
図4】[0022]重症大動脈弁狭窄症を診断し、モニターするためのPrevencioパネルASR025(実施例4に記載の通り)(N=1244)についての受診者動作特性曲線を示す図である。パネルは、頑健な交差検証された曲線下面積(AUC)が0.74であり(未掲載)、サンプル中のAUCが0.76であった(図4に示す)。
図5】[0023]末梢動脈疾患の診断および/またはPADの進行もしくはPrevencio PADパネルPAD158(実施例1に記載の通り)についての治療効果のモニタリングについての5点スコアを示す図である。
図6】[0024]末梢動脈疾患の診断および/またはPADの進行もしくはPrevencio PADパネルPAD076(実施例2に記載の通り)についての治療効果のモニタリングについての10点スコアを示す図である。スコアが、低リスク(スコア≦3/10)群および高リスク(スコア≧7/10)群に分けられたとき、本発明者らは、各サブグループの閉塞性PADの場合、それぞれ、NPVが67%であり、PPVが100%であることを見出した。
図7】[0025]Prevencio PADパネルPAD158についてのフォローアップの1年以内に血行再建術を予測するためのカプラン・マイヤー曲線(年齢および性別を調整した)を示す図であり;かかるリスクは、少なくとも5年まで延長された(p<0.001)(実施例1に記載の通り)。
図8】[0026]Prevencio PADパネルPAD076についてのフォローアップの1年以内に血行再建術を予測するためのカプラン・マイヤー曲線(年齢および性別を調整した)を示す図であり;かかるリスクは、少なくとも5年まで延長された(p=0.002)(実施例2に記載の通り)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0027]本明細書に記載した技術の実行は、別に詳細に示されない限り、当技術分野の範囲内である化学、生化学、有機化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、遺伝学、免疫学、および細胞生物学の従来の方法を使用し、その多くは、例示の目的のために以下に記載する。かかる技法は、文献中で十分に説明される。[24~33]。
【0021】
[0028]前述および下記の、本明細書において言及したすべての特許、特許出願、論文および刊行物は、その全体を参照により本明細書に明確に組み込む。
[0029]本明細書で別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示に属する当業者によって普通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に含まれる用語を含む様々な科学辞書は、周知であり、本技術分野においてそれが利用可能である。本明細書中に記載のものと類似のまたは等価の任意の方法および材料が、本開示の実行または試験における使用を見出しているが、いくつかの好ましい方法および材料は、記載される。したがって、以下に直ちに定義される用語は、全体として、本明細書への参照により、より十分に記載される。本開示は、これらが、当業者により用いられる文脈に応じて変わり得るため、記載される詳細な方法論、プロトコール、および試薬に限定されないことを理解するものとする。
【0022】
[0030]本明細書では、単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」には、別段文脈で明らかに示されない限り、複数形の参照を含む。
[0031]本明細書を通した参照、例えば、「一実施形態」、「実施形態」、「別の実施形態」、「詳細な実施形態」、「関連する実施形態」、「特定の実施形態」、「追加の実施形態」、または「さらなる実施形態」またはそれらの組合せには、実施形態に関連して記載される詳細な特徴、構造または特性が、本明細書に記載される少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通した様々な場所における前述の語句の出現は、必ずしも、すべて、同じ実施形態を参照する必要はない。さらに、詳細な特徴、構造、または特性は、1種もしくは複数の実施形態において、任意の適した方式で組み合わせることができる。
【0023】
[0032]本明細書では、用語「約」または「およそ」とは、参照含量、レベル、値、濃度、大きさ、数、頻度、百分率、次元、サイズ、量、重量または長さに対して、30、25、20、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%と同じ量により変わる含量、レベル、値、数、頻度、百分率、次元、サイズ、量、重量または長さを意味する。詳細な実施形態では、用語「約」または「およそ」とは、数値に先行する場合、15%、10%、5%、または1%の範囲で加えたまたは引いた値を示す。
【0024】
[0033]本明細書を通して、別段文脈で必要とされない限り、単語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」とは、定まったステップもしくは要素またはステップの群もしくは要素を含有することを意味するが、任意の他のステップもしくは要素またはステップの群もしくは要素を除外しないことを意味することが理解される。「からなる」とは、語句「からなる」に続くいかなるものをも含み制限することを意味する。したがって、語句「からなる」は、記載した要素が、必要とされるまたは必須であるということおよび他の要素が全く存在し得ないということを示す。「本質的にからなる」とは、語句の後に記載した任意の要素を含み、記載した要素についての開示に指定される活性または作用を干渉しないまたはそれに寄与しない他の要素を限定することを意味する。したがって、語句「本質的にからなる」は、記載した要素が、必要とされるまたは必須であるが、他の要素が、任意選択でなく、記載した要素の活性または作用に影響を与えるか否かに応じて存在することができるまたは存在することができないということが示される。
【0025】
[0034]用語「疾患」または「状態」とは、本明細書で提供される化合物または方法により治療することが可能な患者または対象の状態または健康状態を意味する。疾患は、心血管系疾患であり得る。疾患は、炎症性疾患であり得る。いくつかの場合では、疾患は、末梢動脈疾患である。いくつかの場合では、状態は、末梢四肢切断である。いくつかの場合では、疾患は、大動脈弁狭窄症である。いくつかの場合では、疾患は、2型糖尿病である。いくつかの場合では、疾患は、高血圧である。
【0026】
[0035]本明細書では、用語「診断」とは、心血管系疾患の存在の同定もしくは可能性または対象におけるアウトカムを意味する。
[0036]本明細書では、用語「予後」とは、特定のアウトカムまたは特定のイベントを発生する対象の可能性またはリスクを意味する。
【0027】
[0037]本明細書では、「生物学的サンプル」は、本明細書に記載された診断または予後方法において用いることができる本質的に任意のサンプルタイプを包含する。生物学的サンプルは、任意の体液、組織または任意の他のサンプルであり得、それから、臨床的に関連性のあるタンパク質マーカーレベルは、決定することができる。この定義は、生物学的起源の血液および他の液体サンプル、固形組織サンプル、例えば、生検検体または組織培養またはそれに由来する細胞およびその子孫を包含する。この定義にはまた、例えば、試薬による処置、可溶化、またはいくつかの構成成分、例えば、ポリペプチドまたはタンパク質などの濃縮による、これらの獲得後、任意の方法で操作されている、サンプルも含まれる。用語「生物学的サンプル」は、臨床サンプルを包含するが、いくつかの場合では、培養中の細胞、細胞上清、細胞ライセート、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、生体液、および組織サンプルをも含む。サンプルは、望むなら、必要に応じ、適切な緩衝液中の希釈により前処理するまたは濃縮することができる。好ましくは、生理的pHで、様々な緩衝液、例えば、リン酸、トリスなどのうちの1種を使用して、多くの標準の水性緩衝液のいずれかを、用いることができる。
【0028】
[0038]「治療する」または「治療」は、本明細書では(および同様に当技術分野において理解される通り)、臨床結果を含めた、対象の状態において有益なまたは所望の結果を得るための任意のアプローチを広範に含む。有益なまたは所望の臨床結果は、それだけに限らないが、1種もしくは複数の症候または状態の軽減または寛解、疾患の程度の減弱、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化でない)、疾患の伝染または伝播の予防、疾患の進行の遅延または緩徐化、疾患の状態の寛解または緩和、疾患の再発の減弱、および軽快、部分的か全体かおよび検出可能か検出不可能かを含むことができる。換言すれば、本明細書では、「治療」には、疾患の任意の治癒、寛解、または予防が含まれる。治療によって、疾患を発生させないようにすること;疾患の伝播を抑制すること;疾患の症候を軽減すること、疾患の根底にある原因を完全にまたは部分的に取り除くこと、疾患の期間を短縮すること、またはこれらのことの組合せを行うことができる。
【0029】
[0039]本明細書では、「治療する」および「治療」には、予防的治療が含まれる。治療方法には、有効な薬剤の治療有効量を対象に投与するステップが含まれる。投与ステップは、単回投与からなっても、一連の投与を含んでもよい。治療期間の長さは、様々な因子、例えば、リスクもしくは状態の重大性、患者の年齢、有効な薬剤の濃度、治療において用いられる組成物の活性、またはその組合せなどに依存する。治療または予防のために用いられる薬剤の有効用量は、ある特定の治療または予防レジメンの経過にわたって増やすことも減らすこともできることもやはり理解される。用量の変化は、当技術分野で公知の標準の診断アッセイによりもたらされ、明らかにすることができる。いくつかの場合では、長期的な投与は、必要とされ得る。例えば、本組成物は、患者を治療するのに十分な量でおよび期間、対象に投与される。
【0030】
[0040]用語「予防する」とは、患者において疾患の症候の発生を減少させることを意味する。予防は、おそらく治療を行わないよりも、より少なく症候が観察されるように、完全であっても(症候が検出できない)、部分的であってもよい。
【0031】
[0041]「患者」または「それを必要とする対象」とは、医薬組成物の投与により治療することができる疾患もしくは状態に罹患しているまたはそれらの傾向がある生物体を意味する。限定されない例には、ヒト、他の哺乳動物、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、雌ウシ、シカ、および他の非哺乳動物が含まれる。いくつかの実施形態では、患者は、ヒトである。
【0032】
[0042]「対照」または「対照実験」は、その平易なおよび通常の意味に従って用いられ、実験の対象または試薬が、実験の手順、試薬、または変数の省略を除く平行実験などで処理される実験を意味する。いくつかの場合では、対照は、実験効果を評価することにおいて比較の標準として用いられる。いくつかの実施形態では、対照は、(実施形態および実施例を含めて)本明細書に記載される化合物の非存在下で、タンパク質の活性の測定である。いくつかの場合では、対照は、アッセイの測定についての参照として用いられる定量化標準である。定量化標準は、合成タンパク質、組換えにより発現した精製タンパク質、その自然環境から単離された精製タンパク質、タンパク質フラグメント、合成ポリペプチドなどであり得る。
【0033】
[0043]用語「心血管系疾患」とは、心臓または血管に関与する疾患のクラスを意味する。心血管系疾患には、それだけに限らないが、冠動脈疾患(CAD)、(心発作として一般に知られている)心筋梗塞、脳卒中、高血圧性心疾患、リウマチ性心疾患、心筋症、うっ血性心不全、不整脈(すなわち、心房細動、心室頻拍など)、脳血管疾患、末梢動脈疾患、大動脈弁狭窄症、他の心臓弁膜疾患、および動脈血栓症が含まれる。
【0034】
[0044]本明細書では、用語「心血管イベント」とは、心血管系に関連する様々な有害事象を意味する。これらのイベントには、それだけに限らないが、末梢四肢切断、末梢血管血行再建術、冠血行再建、心筋梗塞症、心不全、脳卒中、および心血管死が含まれる。
【0035】
[0045]用語「末梢動脈疾患」または「PAD」とは、心血管系疾患のある特定のタイプを意味する。PADは、心臓および脳の外側で、動脈の狭小化または封鎖を特徴とし、それだけに限らないが、血液を、下肢、腕、および腎臓に供給することが含まれる。かかる閉塞は、50%もしくはそれより多く、60%もしくはそれより多く、70%もしくはそれより多く、80%もしくはそれより多く、90%もしくはそれより多く、または100%のレベルで、臨床的に関連性があり得る。PADは、主として、アテローム血栓症により引き起こされる。PADは、随伴性の機能低下および四肢欠損による罹患率の主な原因である。無症候性および症候性PADは、心血管系疾患(CVD)イベントおよび死亡率の重要な予測因子である[34]。現在のエビデンスでは、PADは、積極的な医学的管理を要する冠動脈疾患に相当するまたはそれよりもさらに悪いCVDリスクを表すことが示唆されている。PADの主な認識された臨床像は、間欠性跛行(IC)および重症虚血肢(CLI)である。ICは、身体活動によりもたらされる下肢の筋肉の疼痛の症候を表しており、休息により速やかに軽減する。重症虚血肢(CLI)は、PADのより重症な所見であり、休息痛、虚血性潰瘍形成または足の壊疽として表れる。
【0036】
[0046]本明細書では、用語「末梢血管血行再建術」は、「経皮的末梢血管インターベンション」、「末梢血管血行再建インターベンション」、「経皮的末梢血管血行再建術」または「末梢血管バイパス移植片」とも称され、それだけに限らないが、虚血に罹患している脚を含めた、末梢動脈の灌流の修復を意味する。これは、(バルーンおよび/またはステントの留置による)末梢血管形成術または末梢血管バイパス移植片によって一般的に達成される。
【0037】
[0047]本明細書では、用語「末梢四肢切断リスク」とは、重症PADのための四肢切断のリスクの予後を意味する。重症虚血肢(CLI)を伴う患者は、四肢欠損および致死性もしくは非致死性の血管イベント、例えば、心筋梗塞(MI)および脳卒中などのリスクが高い[35]。急性肢虚血(ALI)は、一般に塞栓症または血栓症により、血流の肢への突然の中断がある場合に起こる[36]。ICによりしばしば先行される長期にわたって、一般に発生するCLIと対照的に、ALIを伴う患者は、症候が先行しないおそれがある。ALIは、通常、おそらく、肢への確立された側副の血液の供給が存在しないことにより、CLIよりより緊急に肢のバイアビリティーが脅かされる。
【0038】
[0048]本明細書では、「大動脈狭窄症」または「AS」または「AoS」は、「大動脈弁狭窄症」とも称され、問題が生じるような、心臓の左心室の出口(大動脈が開始する場所)の狭小化を意味する。これは、大動脈弁でならびにこのレベルを超えておよび下回って生じ得る。これは、一般に、経時的に悪化する。運動する能力の低下がしばしば最初に起こると共に、次第に症候が生じることが多い。心不全の場合、意識の喪失、または心臓に関連する胸痛は、ASにより生じ、アウトカムは悪い。意識の喪失は、一般に、起立または運動で生じる。心不全の徴候は、特に、臥床時の、夜間の、または運動を伴う息切れ、および脚の腫脹が含まれる。
【0039】
[0049]ASの早期では、初期のASプラークは、冠動脈疾患(CAD)のプラークと似ている。その後の試験では、CADおよびASは、類似のリスク因子を共有することが見出された(37)。石灰沈着性ASをもたらすリスク因子およびメディエーター、例えば、高齢、男性、高コレステロール血症、動脈性高血圧、喫煙、および糖尿病などは、血管性アテローム動脈硬化症についての古典的なリスク因子として認識されるものとやはり類似している。
【0040】
[0050]しかしながら、血管性アテローム動脈硬化症(より不安定なプロセス)と大動脈弁(弁膜)石灰化(より安定したプロセス)との間に有意差がある。CADの進行において、プラーク破綻は、臨床的に関連性のあるイベントをもたらす主なイベントであり、ASにおいて、これは、弁膜の不動を引き起こす層板骨の形成をさらに伴う進行性の石灰化である(38)。さらに、CADとASとの間のいくつかの生物学的および臨床的な差の有意性は、除外することができない。
【0041】
[0051]本明細書に記載した通り、用語「マーカー」、「タンパク質マーカー」、「ポリペプチドマーカー」、および「バイオマーカー」は、本開示を通して、同義的に用いられる。本明細書では、タンパク質マーカーは、一般に、タンパク質またはポリペプチドを意味し、そのレベルまたは濃度は、ある特定の生物学的状態、特に、心血管系疾患、イベントまたはアウトカムを伴う状態と関連する。本明細書中に記載のパネル、アッセイ、キットおよび方法は、抗体、それらの結合フラグメントまたは標的結合剤の他のタイプを含むことができ、これらは、本明細書中に記載のタンパク質マーカーに特異的である。
【0042】
[0052]本明細書中で同義的に用いられる用語「ポリペプチド」および「タンパク質」とは、任意の長さのアミノ酸のポリマー形を意味し、これは、コードされたおよびコードされないアミノ酸、化学的もしくは生化学的に修飾されたまたは誘導体化されたアミノ酸、および修飾されたペプチド主鎖を有するポリペプチドを含むことができる。様々な実施形態では、生物学的サンプル中の天然に存在するタンパク質マーカータンパク質のレベルの検出は、本明細書に開示される診断、予後、またはモニタリング方法の範囲内の使用のために考慮されている。本用語はまた、それだけに限らないが、異種性アミノ酸配列を有する天然に存在する融合タンパク質、N-末端メチオニン残基を有するまたは有さない異種性および相同性のリーダー配列を有する融合を含めた、融合タンパク質;免疫学的にタグ付けされたタンパク質などが含まれる。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを意味するために、本明細書中で同義的に用いられ、ポリマーは、アミノ酸からならない部分に結合することができる。これらの用語は、1つもしくは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用する。「融合タンパク質」とは、単一部分として組換えにより発現される2種以上の別々のタンパク質配列をコードするキメラタンパク質を意味する。
【0043】
[0053]本明細書中の用語「抗体」は、最も広い意味で用いられ、これらが、所望の生物学的特異性を示す限り、それだけに限らないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2種の未変化抗体から形成される多特異的抗体(例えば、二重特異性抗体)、単鎖抗体(例えば、scFv)、および抗体フラグメントまたは他の誘導体を特に包含する。用語「抗体」とは、免疫グロブリン遺伝子または抗原を特異的に結合させ、認識するそれらの機能性フラグメントによりコードされるポリペプチドを意味する。認識される免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、ε、およびμ定常部遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変部遺伝子が含まれる。軽鎖は、κまたはλとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεとして分類され、これは、それぞれ、免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを定義する。
【0044】
[0054]本明細書では用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に同種の抗体の母集団から得られた抗体を意味し、すなわち、母集団を含む個別の抗体は、少量で存在することができる、あり得る天然に存在する突然変異を除き、同一である。いくつかの特異的な実施形態では、モノクローナル抗体は、本明細書中に記載のタンパク質マーカーに特異的な抗体である。
【0045】
[0055]モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原部位に対して方向づけられる。さらに、一般に、異なる決定因子(エピトープ)に対して方向づける異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体の調製と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定因子に対して方向づけられる。これらの特異性の他に、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンにより汚染されていないハイブリドーマ培養により合成されるという点で、有利である。修飾因子「モノクローナル」は、抗体の実質的に同種の母集団から得られるものとして抗体の性質を示し、任意の特定の方法により抗体の産生を必要するものと解釈すべきでない。例えば、本明細書に記載した通り用いられるモノクローナル抗体は、Kohlerら[39]により最初に記載されたハイブリドーマ法により作製することができる、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)、または当業者に公知のおよび利用可能な任意の他の適した方法論により作製することができる。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clacksonら[41]およびMarksら[42]において記載された技法を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離することができる。
【0046】
[0056]本明細書中のモノクローナル抗体には、「キメラ」抗体が特に含まれ、これは、重鎖および/または軽鎖の一部が、ある特定の種に由来するまたはある特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一でありまたはそれと相同性であり、鎖の残部は、これらが、所望の生物学的活性および/または特異性を示す限り、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにかかる抗体のフラグメントにおける対応する配列と同一であるまたはそれと相同性である[43~44]。キメラ抗体を作製する方法は、当技術分野で公知である。
【0047】
[0057]「単離された」抗体は、同定され、分離され、かつ/またはその自然環境の構成成分から回収されたものである。その自然環境の混入構成成分は、抗体についての診断または予後の使用を妨害するはずである物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非-タンパク質性溶質を含むことができる。詳細な実施形態では、抗体は、例えば、ローリー法により決定される通り、抗体95重量%以上に精製され、最も好ましくは、99重量%を超える。
【0048】
[0058]用語「検出できるほど標識された抗体」とは、本明細書中に記載のタンパク質マーカーについての結合特異性を保持し、付着した検出可能な標識を有する抗体(または抗体フラグメント)を意味する。検出可能な標識は、任意の適した手段により、例えば、化学的結合(chemical conjugation)または遺伝子工学技法により、付着させることができる。検出できるほどに標識されたタンパク質の産生のための方法は、当技術分野で周知である。検出可能な標識は、それだけに限らないが、ハプテン、放射性同位元素、フルオロフォア、常磁性標識、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、または他の部分もしくは検出可能なシグナル(例えば、放射能、蛍光、色)を放射するまたはその基質への標識の曝露後に検出可能なシグナルを放射する化合物を含めた、当技術分野で公知の様々なかかる標識から選択することができる。様々な検出可能な標識/基質対(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ/ジアミノベンジジン、アビジン/ストレプトアビジン、およびルシフェラーゼ/ルシフェリン))、抗体を標識するための方法、および標識された抗体を用いるための方法は、当技術分野で周知である(例えば、45を参照のこと)。
【0049】
[0059]タンパク質またはペプチドを参照する場合、語句抗体に「特異的に(または選択的に)結合する」または抗体「と特異的に(または選択的に)免疫反応性の」とは、しばしばタンパク質および他の生物製剤の不均一な母集団において、タンパク質の存在を決定する結合反応を意味する。したがって、設計されたイムノアッセイ条件下で、指定された抗体は、基礎環境で少なくとも2回ある特定のタンパク質に結合し、さらに一般には、基礎環境で10~100回以上結合する。かかる条件下での抗体への特異的な結合は、ある特定のタンパク質についてのその特異性のために選択される抗体を必要とする。例えば、ポリクローナル抗体は、選択された抗原と特異的に免疫反応性であり、他のタンパク質と特異的に免疫反応性でない抗体の唯一のサブセットを得るために選択することができる。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を取り除くことにより達成することができる。様々なイムノアッセイフォーマットを用いて、ある特定のタンパク質と特異的に免疫反応性の抗体を選択することができる。例えば、イムノアッセイは、ルーチン的に用いて、タンパク質と特異的に免疫反応性の抗体を選択する。
【0050】
[0060]免疫グロブリン(抗体)構造単位の一例は、四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の2本の同一の対からなり、各対は、1本の「軽」鎖(約25kDa)および1本の「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のN-末端は、主として抗原認識を担う、約100~110またはそれより多くのアミノ酸の可変部を定義する。用語「重鎖可変領域」、「V」、または「VH」とは、Fv、scFv、dsFvまたはFabを含めた免疫グロブリン重鎖の可変領域を意味し、用語「軽鎖可変領域」、「V」または「VL」とは、Fv、scFv、dsFvまたはFabを含めた免疫グロブリン軽鎖の可変領域を意味する。
【0051】
[0061]抗体の「機能的フラグメント」はやはり用いることができ、タンパク質マーカーについての十分な結合親和性および特異性を保持して、生物学的サンプル中のタンパク質マーカーのレベルの決定を可能にするフラグメントを含む。いくつかの場合では、機能的フラグメントは、派生するかもしれない未変化の完全な鎖分子として、実質的に同じ親和性および/または特異性を有するタンパク質マーカーに結合する。抗体機能的フラグメントの例には、それだけに限らないが、完全な抗体分子、抗体フラグメント、例えば、Fvなど、単鎖Fv(scFv)、相補性決定領域(CDRs)、VL(軽鎖可変領域)、VH(重鎖可変領域)、Fab、F(ab)2’およびその任意の組合せまたは標的抗原に結合することが可能な免疫グロブリンペプチドの任意の他の機能的部分が含まれる。当業者により理解される通り、様々な抗体フラグメントは、様々な方法、例えば、酵素、例えば、ペプシンによる未変化抗体の消化、または新規合成により得ることができる。抗体フラグメントは、しばしば、化学的にまたは組換えDNA方法論を用いることにより、新規に合成される。したがって、本明細書では、用語抗体には、全抗体の修飾、または組換えDNA方法論(例えば、単鎖Fv)を用いた新規に合成されたものまたはファージディスプレイペプチドライブラリーを用いて同定したものにより生成した抗体フラグメントが含まれる。
【0052】
[0062]「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変部)が、異なるもしくは変更されたクラス、エフェクター機能および/または種の定常部、または新たな特性をキメラ抗体に与える完全に異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物などに連結されるように、定常部、またはその部分が、変更される、置き換えられるまたは交換される;または(b)可変領域、もしくはその部分が、異なるもしくは変更された抗原特異性を有する可変部で、変更される、置き換えられるまたは交換される抗体分子である。本明細書中に記載の使用のおよび使用のための好ましい抗体は、ヒト化および/またはキメラモノクローナル抗体が含まれる。
【0053】
[0063]本明細書に記載される特異的タンパク質について、名付けられたタンパク質には、タンパク質の天然に存在する形態、変異体または(例えば、天然タンパク質と比較して、少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性の範囲内で)タンパク質転写因子活性を維持する相同体のいずれかが含まれる。いくつかの実施形態では、変異体または相同体は、天然に存在する形態と比較して、全配列または配列の一部(例えば、50、100、150もしくは200個の連続的なアミノ酸部分)にわたって、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列相同性を有する。
【0054】
[0064]「実質的に単離された」または「単離された」物質は、性質上その関連した周囲の材料が実質的にないものである。実質的にないとは、性質上関連する材料が、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも80%、さらにより好ましくは、少なくとも90%ないことを意味する。本明細書では、「単離された」は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、細胞、サンプルなどを意味することができる。
【0055】
[0065]本明細書では、「アディポネクチン」とは、グルコースの調節ならびに脂肪酸分解に関与するタンパク質を意味する。これは、GBP-28、apM1、AdipoQ、およびAcrp30とも称される。アディポネクチンは、脂肪組織により分泌される244個のアミノ酸ペプチドであり、この役割には、グルコースの調節および脂肪酸代謝が含まれる。
【0056】
[0066]本明細書では、「アンジオポエチン1」とは、アンジオポエチンのタイプであり、遺伝子ANGPT1によりコードされることを意味する。アンジオポエチンは、血管発生および血管新生において重要な役割を有するタンパク質である。すべてのアンジオポエチンは、内皮細胞特異的チロシンタンパク質キナーゼ受容体に対して、類似の親和性により結合する。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、そのチロシンリン酸化を誘導することにより受容体を活性化させる、分泌される糖タンパク質である。これは、内皮および周囲のマトリックスおよび間充織間の相互作用を媒介することにおいて、決定的な役割を果たす。タンパク質はまた、血管の成熟および安定性に寄与し、心臓の初期発生に関与し得る。
【0057】
[0067]本明細書では、「アポ(a)」とも称される「アポリポタンパク質(a)」は、リポタンパク質(a)(Lp(a))の主な構成物である。アポリポタンパク質(a)は、セリンプロテアーゼ活性を有し、自己タンパク分解を可能にする。アポリポタンパク質(a)は、組織型プラスミノーゲン活性化因子1を阻害する。アポリポタンパク質(a)は、タンパク分解により切断され、いわゆる、ミニ-Lp(a)の形成をもたらすことが知られている。アポリポタンパク質(a)フラグメントは、動脈硬化性病変に蓄積し、これらは、血栓形成を促進することができる。
【0058】
[0068]本明細書では、「アポリポタンパク質A-II」とは、血漿中の高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールにおいて見出されるアポリポタンパク質を意味する。アポリポタンパク質(アポ)A-IIは、高密度リポタンパク質の第2の主なアポである。結果から、その正確な機序は不明であるが、高密度リポタンパク質粒子中のアポA-IIの濃縮は、アテローム-保護性効果を有し得ることが示唆される。アポA-IIは、アテローム動脈硬化症の治療についての標的になり得る。
【0059】
[0069]本明細書では、「アポリポタンパク質C-I」は、血漿中で普通は見出され、エステル化レシチンコレステロールの活性化を担い、組織からのコレステロールの除去において見出されるリポタンパク質のタンパク質構成成分である。
【0060】
[0070]本明細書では、「アンギオテンシン変換酵素」または「ACE」とは、レニン-アンギオテンシン系(RAS)の中心的な構成成分を意味し、これは、体液の体積を調節することにより血圧を制御する。これは、ホルモンアンギオテンシンIを、活性の血管収縮薬アンギオテンシンIIに変換する。
【0061】
[0071]本明細書では、「血中尿素窒素」または「BUN」とは、血液中で見出される尿素窒素の量を測定する医学的な検査を意味する。肝臓は、タンパク質の消化の老廃物として尿素サイクルにおいて尿素を生成する。
【0062】
[0072]本明細書では、「クレアチニン」とは、毎日の筋肉収縮の副生物を意味し、血中尿素窒素は、血液中でアミノ酸を分解する尿素サイクルの副生物である、尿素窒素の量を測定する。
【0063】
[0073]本明細書では、「血中尿素窒素対クレアチニン比」または「BCR」は、一般の臨床検査である。
[0074]本明細書では、「CD5抗原様」または「CD5L」は、「マクロファージのアポトーシス阻害物質」としても知られ、炎症組織において発現するタンパク質である。
【0064】
[0075]本明細書では、「C反応性タンパク質」または「CRP」は、炎症に速やかに応答する急性相反応物質タンパク質である。
[0076]本明細書では、「癌胎児抗原関連細胞接着分子1」または「胆汁糖タンパク質」または「CEACAM1」は、「CD66a」(分化66aのクラスター)としても知られ、サブグループの他のタンパク質への同種親和性ならびにヘテロ親和性結合によって細胞接着を媒介するヒト糖タンパク質である。
【0065】
[0077]本明細書では、「シスタチン」は、「シスタチンC」または「シスタチン3」(以前に、「ガンマトレース(gamma trace)」、「ガンマグロブリン後(post-gamma-globulin)」、または「神経内分泌塩基性ポリペプチド」)としても知られ、CST3遺伝子によってコードされるタンパク質であり、腎機能のバイオマーカーとして主に用いられる。最近では、初発のまたは悪化する心血管系疾患を予測することにおいて、その役割について研究されている。シスタチンは、2型シスタチン遺伝子ファミリーに属する。
【0066】
[0078]本明細書では、「デコリン」は、「PG40」および「PGS2」としても知られ、小分子ロイシンリッチプロテオグリカンファミリーに属するタンパク質である。これは、細胞外コラーゲンマトリックスの会合を調節する。
【0067】
[0079]本明細書では、「エオタキシン1」は、「C-Cモチーフケモカイン11」および「好酸球走化性タンパク質」としても知られ、CCケモカインファミリーに属する小型のサイトカインである。
【0068】
[0080]本明細書では、「ENRAGE」は、「終末糖化産物結合タンパク質について細胞外で新たに同定された受容体」としても知られ、心血管系疾患を含めた状態を含めた様々な炎症性疾患および/または状態に結びつけられている。
【0069】
[0081]本明細書では、「第VII因子」は、「血液凝固第VIIa因子」、「活性化血液凝固第VII因子」または「プロコンバーチン」としても知られ、凝固カスケードにおいて血液を凝固させるタンパク質の1つである。これは、セリンプロテアーゼクラスの酵素である。
【0070】
[0082]本明細書では、「フェリチン」は、鉄を貯蔵し、制御されたやり方でそれを放出する普遍的な細胞内タンパク質である。
[0083]本明細書では、フェチュインAは、「α-2-HS-糖タンパク質」または「AHSG」としても知られ、血漿結合タンパク質のフェチュインクラスに属し、成人の血液よりも胎児において豊富であるタンパク質である。
【0071】
[0084]本明細書では、「卵胞刺激ホルモン」または「FSH」は、ゴナドトロピン、糖タンパク質ポリペプチドホルモンである。FSHは、脳下垂体前葉の性腺刺激細胞により合成され分泌され、身体の発生、成長、思春期の成熟、および生殖過程を調節する。
【0072】
[0085]本明細書では、「成長ホルモン」は、そのヒトの形態で「ソマトトロピン」または「ヒト成長ホルモン」または「hGH」としても知られ、ヒトおよび他の動物において、成長、細胞の再生、および細胞の再分化を促進するペプチドホルモンである。したがって、これは、ヒトの発生において重要である。これは、細胞のいくつかの種類にのみ特異的なマイトジェンのタイプである。GHは、グルコースおよび遊離脂肪酸の濃度を上昇させるストレスホルモンである。
【0073】
[0086]本明細書では、「免疫グロブリンM」または「IgM」は、脊椎動物により産生される抗体のいくつかの形態のうちの1つである。IgMは、最も大型の抗体であり、IgMは、抗原への最初の曝露に対する応答において出現する第1の抗体である。
【0074】
[0087]本明細書では、「細胞間接着分子1」は、「ICAM-1」および「CD54」または「分化54のクラスター」としても知られ、内皮細胞および免疫系の細胞で一般に発現される細胞表面糖タンパク質である。これは、CD11a/CD18、またはCD11b/CD18タイプのインテグリンに結合する。
【0075】
[0088]本明細書では、「インターフェロンガンマ誘導タンパク質10」は、「CXCL10」、「IP-10」および「10kDaインターフェロン-ガンマ-誘導タンパク質」としても知られ、CXCケモカインのメンバーと考えられ、IFN-γに応答して様々な細胞において誘導される。心不全および左心室機能不全を含めた、心血管系疾患の発症のための妥当なタンパク質マーカーであることが証明されており、有害な心臓リモデリングの発生との強調する病態生理学的な関係が示唆されている。
【0076】
[0089]本明細書では、「インターロイキン-1受容体アンタゴニスト」または「IL-RA」は、「インターロイキン1阻害剤」または「IL-1阻害剤」としても知られ、インターロイキン1サイトカインファミリーのメンバーであるタンパク質を意味する。IL-RAは、免疫細胞、上皮細胞、および脂肪細胞を含めた、細胞の様々なタイプにより分泌され、IL1βの炎症促進効果の自然の阻害剤である。このタンパク質は、インターロイキン1α(IL1A)およびインターロイキン1β(IL1B)の活性を阻害し、様々なインターロイキン1に関連する免疫および炎症応答を調節する。
【0077】
[0090]本明細書では、「インターロイキン-8」は、「IL8」、「好中球走化性因子」、「ケモカインリガンド8」、および「CXCL8」としても知られ、マクロファージならびに他の細胞タイプ、例えば、上皮細胞、気道平滑筋細胞、および内皮細胞によって産生されるケモカインである。これは、標的細胞、主に、好中球であるが、他の顆粒球においても化学走性を誘導し、感染の部位に向かってこれが遊走される。IL-8はまた、これらが到着した後、食作用を誘導する。IL-8は、血管新生の強力なプロモーターであることも知られている。標的細胞中で、Il-8は、遊走および食作用のために要する一連の生理応答、例えば、細胞内のCa2+の増加、開口分泌(例えば、ヒスタミン放出)、および呼吸性バーストなどを誘導する。
【0078】
[0091]本明細書では、「インターロイキン-18」は、「IL-18」としても知られ、マクロファージおよび他の細胞により産生される炎症性サイトカインである。IL-18は、インターロイキン-18受容体への結合によりおよびIL-12と共に働き、これは、リポ多糖類(LPS)のような微生物の産物による感染後、細胞によって媒介される免疫を誘導する。IL-18による刺激後、ナチュラルキラー(NK)細胞およびいくつかのT細胞は、マクロファージまたは他の細胞を活性化する重要な役割を果たすインターフェロン-γ(IFN-γ)またはII型インターフェロンと称する別の重要なサイトカインを放出する。
【0079】
[0092]本明細書では、「インターロイキン-23」は、「IL-23」としても知られ、(IL12と共有される)IL12B(IL-12p40)サブユニットおよびIL23A(IL-23p19)サブユニットからなるヘテロ二量体サイトカインである。免疫疾患の多数の他のモデルにおける炎症の発生を容易にすることが示されており、IL-12は、関節炎、小腸炎および乾癬のモデルを含めて、以前に関係づけられてきた。
【0080】
[0093]本明細書では、「腎臓障害分子1」は、「腎臓障害分子-1」および「KIM-1」としても知られ、酸化リポタンパク質のための受容体として作用するI型細胞膜糖タンパク質であり、腎臓において機能的な役割を果たす。KIM-1は、急性腎障害に関連付けられている濃度である、近位腎尿細管マーカーである。
【0081】
[0094]本明細書では、「リポタンパク質(a)」は、「Lp(a)」としても知られ、リポタンパク質のサブクラスである。これは、LDL-様粒子および特異的アポリポタンパク質(a)(アポ(a))からなり、これは、LDL様粒子のアポリポタンパク質Bに共有結合される。アテローム動脈硬化性心血管疾患についてのリスク因子としてのLp(a)。
【0082】
[0095]本明細書では、「マトリックスメタロプロテアーゼ7」は、「MMP-7」、「マトリライシン」、「pump-1プロテアーゼ(PUMP-1)」または「子宮メタロプロテアーゼ」としても知られ、細胞外マトリックスを分解する第1の役割を有する酵素である。
【0083】
[0096]本明細書では、「マトリックスメタロプロテアーゼ9」は、「MMP-9」、「92kDa IV型コラゲナーゼ」、「92kDaゼラチナーゼ」、および「ゼラチナーゼB」または「GELB」としても知られ、細胞外マトリックスの分解に関与する亜鉛-メタロプロテイナーゼファミリーに属する酵素のクラスである、マトリックスメタロプロテアーゼ(matrixin)である。マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリーのタンパク質は、正常な生理過程、例えば、胚発生、生殖、血管新生、骨発生、創傷治癒、細胞遊走、学習および記憶などにおける、ならびに病理過程、例えば、関節炎、脳出血、および転移などにおける細胞外マトリックスの分解に関与する。
【0084】
[0097]本明細書では、「全マトリックスメタロプロテアーゼ9」は、「全MMP-9」としても知られ、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP9)および組織メタロプロテアーゼ阻害物質1(TIMP-1)の組合せおよび/または比を意味する。マトリックスメタロプロテアーゼ9は、MMP-9、92kDaIV型コラゲナーゼ、92-kDaゼラチナーゼ、およびゼラチナーゼBまたはGELBとしても知られ、細胞外マトリックスの分解に関与する亜鉛-メタロプロテイナーゼファミリーに属する酵素のクラスである、マトリックスメタロプロテアーゼである。マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリーのタンパク質は、正常な生理過程、例えば、胚発生、生殖、血管新生、骨発生、創傷治癒、細胞遊走、学習および記憶などにおける、ならびに病理過程、例えば、関節炎、脳出血、および転移などにおける細胞外マトリックスの分解に関与する。TIMP-1は、いくつかの組織から発現される糖タンパク質である。これは、TIMPファミリーのメンバーであり、細胞外マトリックスの分解に関与するペプチダーゼの群であるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)の自然の阻害剤である。公知のMMPsのほとんどに対するその阻害性の役割の他に、コードされたタンパク質は、広範囲の細胞タイプにおいて細胞増殖を促進することが可能であり、抗アポトーシス機能をも有し得る。TIMP-1は、プラーク破綻および有害な心血管イベントに関連している。
【0085】
[0098]本明細書では、「ミッドカイン」は、「神経突起成長促進因子(neurite growth-promoting factor)2」または「NEGF2」としても知られ、低分子量の塩基性ヘパリン-結合成長因子を意味し、プレイオトロフィンを有するファミリーを形成する。ミッドカインは、分子量が13kDaであるヘパリン-結合サイトカイン/成長因子である。
【0086】
[0099]本明細書では、「γインターフェロンにより誘導されるモノカイン」は、「MIG」または「CXCL9」としても知られ、CXCケモカインのファミリーに属する小型のサイトカインである。これは、T-細胞化学誘引物質であり、左心室機能不全および症候性心血管系疾患の悪化と関連している。
【0087】
[0100]本明細書では、「骨髄系前駆細胞抑制因子1」は、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド23、「CCL23」、「マクロファージ炎症性タンパク質3」、および「MIP-3」としても知られ、CCケモカインファミリーに属する小型のサイトカインである。これは、肺および肝組織に主として発現するが、骨髄および胎盤においても見出される。これは、骨髄球性起源のいくつかの細胞株でやはり発現される。
【0088】
[0101]本明細書では、「ミエロペルオキシダーゼ」は、「MPO」としても知られ、動脈壁の管腔の面から疾患の活性を測定する白血球細胞由来炎症性酵素である。動脈壁が損傷される、または炎症を起こす場合、ミエロペルオキシダーゼは、マクロファージを侵入させることにより放出され、これが、蓄積する。ミエロペルオキシダーゼは、プラーク形成を増やすおよびプラークの脆弱性に関連するプロテアーゼカスケードを活性化する血管の炎症を媒介する。
【0089】
[0102]本明細書では、「ミオグロビン」は、一般に脊椎動物の筋組織でおよびほぼすべての哺乳動物で見出される鉄-および酸素-結合タンパク質である。ミオグロビンは、損傷した筋組織(横紋筋融解)から放出され、これは、ミオグロビンの濃度が非常に高い。放出されたミオグロビンは、腎臓によりろ過されるが、腎尿細管上皮に毒性があり、そのため、急性腎障害を引き起こすおそれがある。これは、毒性がある(これはプロトキシンである)ミオグロビン自体でなく、酸性環境(例えば、酸性尿、リソソーム)においてミオグロビンから解離されるフェリヘメート(ferrihemate)部分である。ミオグロビンは、筋損傷のための高感度マーカーであり、それが、胸痛を伴う患者において心発作の潜在的なマーカーになる。
【0090】
[0103]本明細書では、「脳性ナトリウム利尿ペプチドのN-末端プロホルモン」または「NT-PBNP」は、「NT-proBNP」または「BNPT」としても知られ、proBNPから切断されて、脳性ナトリウム利尿ペプチドを放出するN-末端不活性タンパク質を意味する。
【0091】
[0104]本明細書では、「オステオポンチン」は、「骨シアロタンパク質I」、「BSP-1」、「BNSP」、「早期T-リンパ球活性化」、「ETA-1」、「分泌型リン酸化タンパク質1」、「SPP1」、「2ar」、「リケッチア抵抗性」または「Ric」としても知られ、骨芽細胞中で最初に同定された糖タンパク質(小型のインテグリン結合リガンドN-結合型糖タンパク質)を意味する。これには、すべてのアイソフォームおよび翻訳後修飾が含まれる。
【0092】
[0105]本明細書では、「肺サーファクタント関連タンパク質(pulmonary surfactant associated protein)D」はまた、サーファクタント肺関連タンパク質(surfactant、pulmonary-associated protein)D、またはSP-DまたはSFTPDとも称され、吸入された微生物、有機抗原および毒素に対する肺の防御に寄与するタンパク質である。
【0093】
[0106]本明細書では、「レジスチン」は、「脂肪組織特異的分泌」因子または「ADSF」または「C/EBP-ε-調節ミエロイド-特異的分泌型システインリッチタンパク質」または「XCP1」としても知られ、システインリッチ脂肪由来ペプチドホルモンである。レジスチンは、ヒト肝細胞中のLDLの産生を増加させ、肝臓中のLDL受容体を分解する。結果として、肝臓は、身体から「悪玉」コレステロールを取り除くことができなくなる。レジスチンは、動脈中のLDLの蓄積を加速し、心疾患のリスクを高める。レジスチンは、心血管系疾患の治療および予防において用いられる主なコレステロール-低下薬であるスタチンの効果に悪影響を与える。
【0094】
[0107]本明細書では、「セロトランスフェリン」は、「トランスフェリン」としても知られ、身体全体に鉄を結合させ運搬する主な機能を有する豊富な血漿糖タンパク質である。心血管系疾患を伴う患者では、低レベルのセロトランスフェリンは、鉄欠乏を引き起こし、これは、運動能力の低下および生活の質の低下と相関し、アウトカムの悪化を予測する。
【0095】
[0108]本明細書では、「幹細胞因子」は、SCF、KIT-リガンド、KL、および造血幹細胞因子としても知られ、c-KIT受容体(CD117)に結合するサイトカインである。SCFは、膜貫通タンパク質および可溶性タンパク質として存在することができる。このサイトカインは、血球新生(血液細胞の形成)、精子形成、およびメラニン形成において重要な役割を果たす。
【0096】
[0109]本明細書では、「タム・ホースフォール尿糖タンパク質(Tamm Horsfall Urinary Glycoprotein)」または「THP」は、「ウロモジュリン」としても知られ、通常の尿中に排出される最も豊富なタンパク質である糖タンパク質である。
【0097】
[0110]本明細書では、「組織メタロプロテアーゼ阻害物質1」は、「TIMP-1」または「TIMPメタロペプチダーゼ阻害物質1」としても知られ、いくつかの組織中で発現される糖タンパク質である。これは、TIMPファミリーのメンバーであり、細胞外マトリックスの分解に関与するペプチダーゼの群であるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)の自然の阻害剤である。公知のMMPsのほとんどに対するその阻害性の役割の他に、コードされたタンパク質は、広範囲の細胞タイプにおいて細胞増殖を促進することが可能であり、抗アポトーシス機能を有し得る。TIMP-1は、プラーク破綻および有害な心血管イベントに関連している。
【0098】
[0111]本明細書では、「T細胞特異的タンパク質RANTES」は、「RANTES」、「ランテス(regulated on activation, normal T cell expressed and secreted)」、「ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5」または「CCL5」としても知られ、T細胞、好酸球、および好塩基球についての走化性のタンパク質であり、白血球を炎症部位に動員することにおいて積極的な役割を果たす。T細胞により放出される特定のサイトカイン(すなわち、IL-2およびIFN-γ)の助けにより、CCL5はまた、いくつかのナチュラルキラー(NK)細胞の増殖および活性化を誘導して、CHAK(CC-ケモカイン活性化キラー)細胞を形成する。
【0099】
[0112]本明細書では、「チロキシン結合グロブリン」、または「TBG」は、循環中に甲状腺ホルモンを結合するグロブリンである。これは、血流中で甲状腺ホルモンチロキシン(T)およびトリヨードチロニン(T)の輸送を担う、(トランスサイレチンおよび血清アルブミンと共に)3種の輸送タンパク質のうちの1種である。
【0100】
[0113]本明細書では、「トランスサイレチン」または「TTR」は、甲状腺ホルモンチロキシン(T)およびレチノールに結合されるレチノール結合タンパク質を輸送する、血清および脳脊髄液中の輸送タンパク質である。
【0101】
[0114]本明細書では、「トロポニン」は、トロポニン複合体としても知られ、骨格筋および心筋中の筋収縮に不可欠であるが、平滑筋には不可欠でない3種の調節タンパク質(トロポニンC、トロポニンI、およびトロポニンT)の複合体である。本明細書では、トロポニンタンパク質マーカーは、個別に、または組み合わせてこれらのタンパク質のそれぞれを同定することができ、感受性の任意のレベルであり得る。血液中で循環しているトロポニンの心臓タンパク質アイソフォームのレベルの増加は、心臓障害および心臓のストレスのタンパク質マーカーであることが示され、その中で最も重要なのは、心筋梗塞である。トロポニンレベルの上昇によって、心筋細胞死または分子としての損傷が、心臓への傷害後、血液に放出されることが示される。
【0102】
[0115]本明細書では、「血管細胞接着分子」は、VCAM-1、VCAM、分化106のクラスター、およびCD106としても知られ、細胞接着分子である。VCAM-1タンパク質は、リンパ球、単球、好酸球、および好塩基球の血管内皮への接着を媒介する。これはやはり、白血球-内皮細胞シグナル伝達において機能し、これは、アテローム動脈硬化症および関節リウマチの発症においてある役割を果たし得る。
【0103】
[0116]本明細書では、「ビタミンD結合タンパク質」は、「gc-グロブリン」または「群特異的構成成分(group-specific component)」としても知られ、ヒト血清アルブミンおよびα-フェトプロテインと共に、アルブミン遺伝子ファミリーに属する。これは、血漿、腹水(ascetic fluid)、および脳脊髄液中のならびに多くの細胞タイプの表面における多機能タンパク質である。これは、エルゴカルシフェロール(ビタミンD)およびコレカルシフェロール(ビタミンD)、25-ヒドロキシル化された形態(カルシフェジオール)、および活性ホルモン物質、1,25-ジヒドロキシビタミンD(カルシトリオール)を含めた、ビタミンDの様々な形態を結合することができる。血液中のビタミンDの主な比率は、このタンパク質に結合される。これは、皮膚、肝臓および腎臓の間で、次いで、様々な標的組織に、ビタミンD代謝物を輸送する。
【0104】
[0117]本明細書では、「フォン・ヴィルブランド因子」または「vWF」は、止血に関与する血液糖タンパク質である。その主要な機能は、他のタンパク質、特に、第VIII因子、細胞、および分子への結合である。これは、創傷部位への血小板接着において重要であり、したがって、血液凝固において主な役割を果たしている。これは、酵素でなく、したがって、触媒活性がない。
【0105】
[0118]本明細書に開示されるこれらおよび他のタンパク質マーカー(例えば、表1に記載のもの)が、容易に同定し、作製し、本明細書において提供される情報に照らして本開示の文脈で使用することができるということが、当業者により理解される。
【0106】
[0119]本明細書では、用語「スコア」とは、診断または予後の決定に関係するような2つの、マルチレベルの、または連続的な結果を意味する。スコアは、陽性、中間、または陰性の診断スコアであり得る。スコアは、陽性、中間、または陰性の予後のスコアであり得る。1重または多重のカットオフは、スコアと共に用いて、リスクの特異的なレベルを決定することができる。実施形態では、スコアは、正規化されたおよび/または数学的に変換された値、例えば、タンパク質濃度、臨床的因子の存在/非存在、人口動態統計、または異なる因子の比に基づいて、アルゴリズム的に由来する。スコアを生成するアルゴリズムは、意志決定樹図またはルールに基づくモデルを含めた、比ベース、カット-オフベース、線形または非線形であり得る。
【0107】
[0120]本明細書では、用語「パネル」とは、心血管系疾患の診断もしくは予後または対象におけるアウトカムを決定するために用いられるタンパク質マーカーおよび臨床マーカーの特異的な組合せを意味する。用語「パネル」は、心血管系疾患の診断もしくは予後または対象におけるアウトカムを決定するために用いられる1組のタンパク質マーカーを含む、アッセイをも意味することができる。
【0108】
[0121]本明細書にさらに記載される通り、「訓練セット」は、最終の診断または予後モデルを訓練する(すなわち、開発する、評価するおよび構築する)プロセスにおいて用いられる患者または患者サンプルのセットである。「バリデーションセット」は、訓練プロセスから保留され、最終の診断または予後モデルの性能をバリデートするために用いるにすぎない患者または患者サンプルのセットである。患者または患者サンプルのセットが、数的に制限される場合、すべての利用可能なデータは、訓練セットとして、または「サンプル中の」バリデーションセットとして用いることができる。
【0109】
[0122]本明細書では、用語「正規化された」とは、変換のタイプを意味し、これらの値は、一般に、これらが、他の変数の分布に類似するように、ある特定の分布を適合するために設計される。例えば、仮説上のタンパク質AおよびBの場合、タンパク質Aの未処理の濃度は、0~500に及び、タンパク質Bの未処理の濃度は、0~20,000に及び、決定するために3つの未加工の値を見ることは自明でなく、この1つは「より高値」である。例えば、タンパク質A400は、タンパク質B15,000より高い。正規化プロセスを行うことにより、これらが同じスケール上にある、すなわち、0を中心とし、分散が1であるように、濃度は、再スケールされる。したがって、これは、決定するためのルーチンの演習になり、正規化された濃度が比較可能であるため、この1つが、より高い。多くの学習アルゴリズムは、正規化されるデータ上でより良く動作し;別の場合では、本例において、例えば、経験的に「より高く」なかった場合でも値がより高いため、タンパク質Bは、アルゴリズムでより重みが増し得る。
【0110】
[0123]本明細書では、用語「変換された」とは、入力値または出力値に関わらず、数値に適用される数学的プロセスを意味する。タンパク質濃度を取ること、および元の値から10を底とする対数を算出すること、「対数変換」を示すことを含み得る。
タンパク質マーカー
[0124]本明細書において提供されるいくつかの例示的なタンパク質マーカーは、表1に記載のものを見出すことができる。その中の情報に基づいて、当業者は、本明細書において提供される方法に従って、タンパク質マーカーまたはタンパク質マーカーの組合せを容易に同定し、選択し、実行することができる。
【0111】
[0125]実施形態では、表1から得られた少なくとも2種、少なくとも3種または少なくとも4種のタンパク質マーカーは、本明細書において提供される方法およびパネルにおいて用いられる。一実施形態では、表1から得られた2種のタンパク質が、選択される。一実施形態では、表1から得られた3種のタンパク質が、選択される。一実施形態では、表1から得られた4種のタンパク質が、選択される。一実施形態では、表1から得られた5種のタンパク質が、選択される。一実施形態では、表1から得られた6種のタンパク質が、選択される。他の実施形態では、使用したタンパク質マーカーの数は、変わることができ、少なくとも5、6、7、8、9、10種、またはそれより多くを含むことができる。さらなる他の実施形態では、タンパク質マーカーの数は、少なくとも15、20、25もしくは50種、またはそれより多くを含むことができる。やはり、いくつかの実施形態では、表1から得られたタンパク質マーカーのうちの1つまたは複数は、特に除外することができる。例えば、特異的なタンパク質マーカーのうちの1、2、3、4、5、6、7種またはそれより多くは、いくつかの組合せで、いくつかの実施形態から除外することができる。
【0112】
[0126]いくつかの特異的な実施形態では、本明細書中で用いられるタンパク質マーカーには、表1に示すもの、特に、p値0.1未満、0.05未満、0.01未満または0.001未満と関連するものが含まれる。
【0113】
[0127]実施形態では、本明細書中で用いられるタンパク質マーカーは、アディポネクチン、アンジオポエチン1、アポリポタンパク質(a)、アポリポタンパク質C-I、アンギオテンシン変換酵素、癌胎児抗原関連細胞接着分子1、エオタキシン1、ENRAGE、第VII因子、フェリチン、フェチュインA、卵胞刺激ホルモン、成長ホルモン、免疫グロブリンM、細胞間接着分子1、インターフェロンガンマ誘導タンパク質10、インターロイキン1受容体アンタゴニスト、インターロイキン8、インターロイキン18、インターロイキン23、腎臓障害分子1、マトリックスメタロプロテアーゼ7、全マトリックスメタロプロテアーゼ9、ミッドカイン、γインターフェロンにより誘導されるモノカイン、骨髄系前駆細胞抑制因子1、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン、オステオポンチン、肺サーファクタント関連タンパク質D、レジスチン、セロトランスフェリン、タム・ホースフォール尿糖タンパク質、T細胞特異的タンパク質RANTES、チロキシン結合グロブリン、トランスサイレチン、ビタミンD結合タンパク質、およびフォン・ヴィルブランド因子から選択される。いくつかの実施形態では、上記に記載したタンパク質マーカーのうちの1種または複数(任意の組合せ)は、本明細書中に記載の実施形態および態様のいずれかから特に除外することができる。
【0114】
[0128]実施形態では、本開示に従って用いられるタンパク質マーカーは、アンジオポエチン1、アポリポタンパク質C-I、アンギオテンシン変換酵素、癌胎児抗原関連細胞接着分子1、エオタキシン1、ENRAGE、フェチュインA、卵胞刺激ホルモン、細胞間接着分子1、インターフェロンガンマ誘導タンパク質10、インターロイキン1受容体アンタゴニスト、インターロイキン8、インターロイキン23、腎臓障害分子1、マトリックスメタロプロテアーゼ7、全マトリックスメタロプロテアーゼ9、ミッドカイン、γインターフェロンにより誘導されるモノカイン、骨髄系前駆細胞抑制因子1、オステオポンチン、肺サーファクタント関連タンパク質D、レジスチン、セロトランスフェリン、タム・ホースフォール尿糖タンパク質、T細胞特異的タンパク質RANTES、チロキシン結合グロブリン、およびトランスサイレチンから選択される。いくつかの実施形態では、上記に記載したタンパク質マーカーのうちの1種または複数(任意の組合せ)は、本明細書中に記載の実施形態および態様のいずれかから特に除外することができる。
【0115】
[0129]さらなる他の実施形態では、本開示に従って用いられるタンパク質マーカーは、第VII因子、フェリチン、成長ホルモン、免疫グロブリンM、腎臓障害分子1、およびビタミンD結合タンパク質から選択される。いくつかの実施形態では、上記に記載したタンパク質マーカーのうちの1種または複数(任意の組合せ)は、本明細書中に記載の実施形態および態様のいずれかから特に除外することができる。
【0116】
[0130]さらなる他の実施形態では、本開示に従って用いられるタンパク質マーカーは、アディポネクチン、アポリポタンパク質(a)、フェチュインA、インターロイキン18、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン、オステオポンチン、レジスチン、およびフォン・ヴィルブランド因子から選択される。いくつかの実施形態では、上記に記載したタンパク質マーカーのうちの1種または複数(任意の組合せ)は、本明細書中に記載の実施形態および態様のいずれかから特に除外することができる。
【0117】
[0131]実施形態では、本明細書中の他で示した通り、表1に列挙されるタンパク質は、本明細書中に記載の方法またはパネルから特に除外することができる。
[0132]表1は、レベルが、心血管系疾患またはイベント、特に、末梢動脈疾患、四肢切断、および大動脈弁狭窄症の診断、モニタリング、および/または予後に相関する113種のタンパク質のリストである。
【0118】
【表1-1】
【0119】
【表1-2】
【0120】
[0133]実施形態では、濃度が、心血管系疾患またはイベント、特に、末梢動脈疾患、四肢切断、および大動脈弁狭窄症の診断、モニタリング、および/または予後に相関するタンパク質ならびにそのタンパク質濃度が、健常な個体と比較して、増加する、減少するまたは同じであるかどうかの性質の組合せによって、対象のタンパク質プロファイルが提供される。
臨床変数
[0134]本明細書にさらに記載される通り、本明細書中に記載のタンパク質マーカーは、対象における心血管系疾患またはイベントの診断および/または予後の改善を提供するために、いくつかの臨床変数と組み合わせて、任意選択で用いることができる。本明細書では、「任意選択で」とは、臨床変数因子と組み合わせた場合、タンパク質マーカーと心血管系疾患またはアウトカムのそれらの予測値の組合せに基づいて包含することを意味する。例えば、本開示の文脈で有用な例示的な臨床変数は、表2に記載のものを見出すことができる。
【0121】
[0135]実施形態では、表2から得られた少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つの臨床変数は、本明細書において提供される方法およびパネルにおいて用いられる。一実施形態では、表2から得られた1つの臨床変数が、選択される。一実施形態では、表2から得られた2つの臨床変数が、選択される。一実施形態では、表2から得られた3つの臨床変数が、選択される。一実施形態では、表2から得られた4つの臨床変数が、選択される。一実施形態では、表2から得られた5つの臨床変数が、選択される。他の実施形態では、使用した臨床変数の数は、変わることができ、少なくとも5、6、7、8、9、10個、またはそれより多くを含むことができる。
【0122】
[0136]実施形態では、本開示に従って用いられる臨床変数は、年齢、高血圧の病歴、2型糖尿病の病歴、喫煙者、脂質異常症の病歴、肥満度指数(BMI)、(ステントを用いたまたは用いない)末梢経皮的血管形成術の履歴、末梢血管血行再建術の履歴、および冠血行再建の履歴から選択される。実施形態では、本開示に従って用いられる臨床変数は、年齢である。実施形態では、本開示に従って用いられる臨床変数は、高血圧の病歴である。実施形態では、本開示に従って用いられる臨床変数は、(ステントを用いたまたは用いない)経皮的末梢血管形成術の履歴である。実施形態では、本開示に従って用いられる臨床変数は、末梢血管血行再建インターベンション(末梢血管形成術、ステントまたはバイパス術)の履歴である。実施形態では、本開示に従って用いられる臨床変数は、2型糖尿病である。実施形態では、本開示に従って用いられる臨床変数は、末梢血管血行再建インターベンション(末梢血管形成術、ステントまたはバイパス術)の履歴および高血圧の病歴である。実施形態では、本開示に従って用いられる臨床変数は、肥満度指数および高血圧の病歴である。実施形態では、本開示に従って用いられる臨床変数は、脂質異常症の病歴および高血圧の病歴である。実施形態では、本開示に従って用いられる臨床変数は、2型糖尿病の病歴および喫煙者である。実施形態では、本開示に従って用いられる臨床変数は、年齢および冠血行再建インターベンション(冠動脈形成術、ステントまたはバイパス術)の履歴である。いくつかの実施形態では、上記に記載した臨床変数のうちの1種または複数(任意の組合せ)は、本明細書に記載される実施形態および態様のいずれかから特に除外することができる。
【0123】
[0137]実施形態では、2つの形態で表される臨床的因子(例えば、性別)、および/または定量的な形態の臨床的因子(例えば、BMI、年齢)の存在/非存在では、ソフトウェアにより提供される診断モデルに入力される値を提供し、この結果を、1つまたは複数のカットオフに対して評価して、診断または予後を決定する。
【0124】
[0138]実施形態では、表2において列挙した臨床的特徴の1つまたは複数(任意の組合せ)は、本明細書中に記載の方法および他の実施形態から特に除外することができる。
[0139]表2は、心血管系疾患またはイベント、特に、末梢動脈疾患、四肢切断、および大動脈弁狭窄症の診断または予後に相関した臨床変数および研究室の測定のリストである。
【0125】
【表2-1】
【0126】
【表2-2】
【0127】
【表2-3】
【0128】
末梢動脈疾患
[0140]一態様では、本明細書において提供されるのは、対象における末梢動脈疾患を決定する方法である。本方法には、末梢動脈疾患を有する疑いがある対象から得られた生物学的サンプルを提供するステップと、サンプル中の少なくとも2種のタンパク質マーカーの濃度を検出し、定量化標準に対して濃度を算出し、正規化された濃度を変換し、アルゴリズムを用いてスコアを算出するためにプログラムされる分析用デバイスに、生物学的サンプルを適用するステップが含まれる。本方法には、少なくとも1種の臨床変数の状態を、任意選択で決定するステップと、タンパク質マーカーの変換され、正規化された濃度、任意選択で、臨床変数の状態に基づいたアルゴリズムを用いて診断スコアを算出するステップと、陽性、中間または陰性の結果として診断スコアを分類するステップと、診断スコアにより示された通り、対象における末梢動脈疾患を決定するステップが含まれる。少なくとも2種のタンパク質マーカーは、表1から選択される。任意選択の臨床変数は、表2から選択される。
【0129】
[0141]一態様では、本明細書において提供されるのは、末梢動脈疾患を有する疑いがある対象に、治療的介入を施す方法である。本方法には、(i)表1から選択される少なくとも2種のタンパク質マーカーのパネルについて対象のタンパク質マーカープロファイルを決定するステップと;(ii)任意選択で、対象についての少なくとも1種の臨床変数の状態を決定するステップであって、臨床変数は、表2から選択される、ステップと;(iii)(i)中のタンパク質マーカープロファイル、任意選択で、(ii)中の臨床値ステータスに基づいて、対象にスコアを割り当てるステップと;(iv)陽性、中間または陰性スコアに基づいて、治療的介入を対象に施すステップとを含む。本明細書中の方法において提供されるのは、スコアは、陽性、中間および陰性から選択され、スコアは、対象のサンプル中のタンパク質マーカーの正規化されたおよび数学的に変換された濃度、任意選択で、少なくとも1種の臨床変数の状態に基づいて、アルゴリズム的に由来する。
【0130】
[0142]一態様では、本明細書において提供されるのは、高血圧を有するおよび/または末梢動脈疾患を有する疑いがある対象における、2種以上のタンパク質マーカーを検出する方法である。本方法には、高血圧を有するおよび/または末梢動脈疾患を有する疑いがある対象を選択するステップと、対象から得られた生物学的サンプルを提供するステップと、生物学的サンプルを、分析用デバイスに適用するステップと、表1から選択される少なくとも2種のタンパク質マーカーの濃度を検出するステップが含まれる。
【0131】
[0143]実施形態では、陽性スコアによって、末梢動脈疾患の強い可能性または存在が示される。実施形態では、陽性スコアによって、末梢動脈における>50%の閉塞の強い可能性または存在が示される。実施形態では、中間スコアによって、末梢動脈疾患のあり得る存在または可能性が示される。実施形態では、中間スコアによって、末梢動脈における>50%の閉塞のあり得る存在または可能性が示される。実施形態では、陰性スコアによって、末梢動脈疾患の非存在または弱い可能性が示される。実施形態では、陰性スコアによって、末梢動脈における>50%の閉塞の非存在または弱い可能性が示される。
末梢四肢切断リスク
[0144]一態様では、本明細書において提供されるのは、ある時点内に対象における末梢四肢切断のリスクを決定する方法である。本方法には、末梢四肢切断のリスクを有する疑いがある対象から得られた生物学的サンプルを提供するステップと、サンプル中の少なくとも2種のタンパク質マーカーの濃度を検出するためにプログラムされる分析用デバイスに、生物学的サンプルを適用するステップとを含む。濃度は、定量化標準に対して正規化され、数学的に変換される。本方法には、少なくとも1種の臨床変数の状態を、任意選択で決定するステップと、タンパク質マーカーの正規化され、変換された濃度、任意選択で、臨床変数の状態に基づいたアルゴリズムを用いた予後スコアを算出するステップと、陽性、中間または陰性の結果として予後スコアを分類するステップと、予後スコアにより示された通り、対象における末梢四肢切断のリスクを決定するステップとを含む。少なくとも2種のタンパク質マーカーは、表1から選択される。任意選択の臨床変数は、表2から選択される。
【0132】
[0145]一態様では、本明細書において提供されるのは、末梢四肢切断のリスクを有する疑いがある対象に、治療的介入を施す方法である。本方法には、(i)表1から選択される少なくとも2種のタンパク質マーカーのパネルについての対象のタンパク質マーカープロファイルを決定するステップと;(ii)任意選択で、対象についての少なくとも1種の臨床変数の状態を決定するステップであって、臨床変数は、表2から選択される、ステップと;(iii)(i)中のタンパク質マーカープロファイル、任意選択で、(i)中の臨床値ステータスに基づいて、対象にスコアを割り当てるステップと;(ii)陽性、中間または陰性スコアに基づいて、治療的介入を対象に施すステップとを含む。本明細書中の方法において提供されるのは、スコアは、陽性、中間および陰性から選択され、スコアは、対象のサンプル中のタンパク質マーカーの正規化され、数学的に変換された濃度、任意選択で、少なくとも1種の臨床変数の状態に基づいて、アルゴリズム的に由来する。
【0133】
[0146]一態様では、本明細書において提供されるのは、2型糖尿病を有するおよび/または末梢四肢切断のリスクを有する疑いがある対象における、2種以上のタンパク質マーカーを検出する方法である。本方法は、2型糖尿病を有するおよび/または末梢四肢切断のリスクを有する疑いがある対象を選択するステップと、対象から得られた生物学的サンプルを提供するステップと、生物学的サンプルを、分析用デバイスに適用するステップと、表1から選択される少なくとも2種のタンパク質マーカーの濃度を検出するステップとを含む。
【0134】
[0147]実施形態では、陽性スコアによって、末梢四肢切断についてのリスクの強い可能性が示される。実施形態では、中間スコアによって、末梢四肢切断についてのリスクのあり得る可能性が示される。実施形態では、陰性スコアによって、末梢四肢切断についてのリスクの非存在または弱い可能性が示される。
大動脈弁狭窄症
[0148]一態様では、本明細書において提供されるのは、対象における大動脈弁狭窄症を決定する方法である。本方法は、大動脈弁狭窄症を有する疑いがある対象から得られた生物学的サンプルを提供するステップと、サンプル中の少なくとも2種のタンパク質マーカーの濃度を検出し、定量化標準に対して濃度を正規化し、正規化された濃度を変換するためにプログラムされる分析用デバイスに生物学的サンプルを適用するステップとを含む。本方法は、少なくとも1種の臨床変数の状態を、任意選択で決定するステップと、タンパク質マーカーの正規化され、変換された濃度、任意選択で、臨床変数の状態に基づいたアルゴリズムを用いて診断スコアを算出するステップと、陽性、中間または陰性の結果として診断スコアを分類するステップと、診断スコアにより示された通り、対象における大動脈弁狭窄症を決定するステップとを含む。少なくとも2種のタンパク質マーカーは、表1から選択される。任意選択の臨床変数は、表2から選択される。
【0135】
[0149]一態様では、本明細書において提供されるのは、大動脈弁狭窄症を有する疑いがある対象に、治療的介入を施す方法である。本方法には、(i)表1から選択される少なくとも2種のタンパク質マーカーのパネルについて対象のタンパク質マーカープロファイルを決定するステップと;(ii)任意選択で、対象についての少なくとも1種の臨床変数の状態を決定するステップであって、臨床変数は、表2から選択される、ステップと;(iii)(i)中のタンパク質マーカープロファイル、任意選択で、(ii)中の臨床値ステータスに基づいて、対象にスコアを割り当てるステップと;(iv)陽性、中間または陰性スコアに基づいて、治療的介入を対象に施すステップとを含む。本明細書中の方法において提供されるのは、スコアは、陽性、中間および陰性から選択され、スコアは、対象のサンプル中のタンパク質マーカーの正規化され、数学的に変換された濃度、任意選択で、少なくとも1種の臨床変数の状態に基づいて、アルゴリズム的に由来する。
【0136】
[0150]実施形態では、陽性スコアによって、大動脈弁狭窄症の強い可能性または存在が示される。実施形態では、中間スコアによって、大動脈弁狭窄症のあり得る存在または可能性が示される。実施形態では、陰性スコアによって、大動脈弁狭窄症の非存在または弱い可能性が示される。
【0137】
[0151]実施形態
いくつかの特異的な実施形態では、任意選択で、臨床変数と併せて用いるタンパク質マーカーは、末梢動脈疾患の診断、および/または末梢血管インターベンションの予後および/またはPADの進行もしくは治療効果のモニタリングおよび/または末梢四肢切断リスクのための予後のための方法において用いることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質マーカーは、アンジオポエチン1、アポリポタンパク質C-I、アンギオテンシン変換酵素、癌胎児抗原関連細胞接着分子1、エオタキシン1、ENRAGE、フェチュインA、卵胞刺激ホルモン、細胞間接着分子1、インターフェロンガンマ誘導タンパク質10、インターロイキン1受容体アンタゴニスト、インターロイキン8、インターロイキン23、腎臓障害分子1、マトリックスメタロプロテアーゼ7、全マトリックスメタロプロテアーゼ9、ミッドカイン、γインターフェロンにより誘導されるモノカイン、骨髄系前駆細胞抑制因子1、オステオポンチン、肺サーファクタント関連タンパク質D、レジスチン、セロトランスフェリン、タム・ホースフォール尿糖タンパク質、T細胞特異的タンパク質RANTES、チロキシン結合グロブリン、およびトランスサイレチンから選択される。実施形態では、本方法には、年齢の臨床変数、高血圧の病歴、(ステントを用いたまたは用いない)末梢経皮的血管形成術の履歴、肥満度指数(BMI)、脂質異常症の病歴、および/または末梢血管血行再建術(末梢血管形成術、ステントまたはバイパス術)の履歴を決定するステップが含まれる。いくつかの実施形態では、タンパク質マーカーは、アンジオポエチン1、エオタキシン1、卵胞刺激ホルモン、インターロイキン23、腎臓障害分子1、ミッドカインであり、臨床変数には、高血圧の病歴がある。いくつかの実施形態では、上記に記載したタンパク質マーカーのうちの1種または複数(任意の組合せ)は、本明細書中に記載の実施形態および態様のいずれかから特に除外することができる。
【0138】
[0152]いくつかの特異的な実施形態では、任意選択で、臨床変数と併せて用いるタンパク質マーカーは、それだけに限らないが、四肢切断のリスクを含めた、心血管アウトカムの予後において用いることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質マーカーは、第VII因子、フェリチン、成長ホルモン、免疫グロブリンM、腎臓障害分子1、およびビタミンD結合タンパク質から選択される。実施形態では、本方法には、2型糖尿病の病歴および/または喫煙者の臨床変数を決定するステップが含まれる。いくつかの実施形態では、タンパク質マーカーは、腎臓障害分子-1およびビタミンD結合タンパク質であり、臨床変数には、2型糖尿病の病歴の状態を決定するステップが含まれる。いくつかの実施形態では、上記に記載した変数の1つまたは複数(任意の組合せ)は、本明細書に記載される実施形態および態様のいずれかから特に除外することができる。
【0139】
[0153]いくつかの特異的な実施形態では、任意選択で、臨床変数と併せて用いるタンパク質マーカーは、大動脈弁狭窄症の診断についての本明細書に記載される方法において用いることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質マーカーは、アディポネクチン、アポリポタンパク質(a)、フェチュインA、インターロイキン18、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン、オステオポンチン、レジスチン、およびフォン・ヴィルブランド因子から選択される。実施形態では、本方法には、年齢の臨床変数および/または冠血行再建インターベンション(冠動脈形成術、ステントまたはバイパス術)の履歴を決定するステップが含まれる。いくつかの実施形態では、タンパク質マーカーは、フェチュインA、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン、およびフォン・ヴィルブランド因子であり、臨床変数には、年齢を決定するステップが含まれる。
アッセイ
[0154]実施形態では、生物学的サンプルには、全血、血漿、血清、尿、脳脊髄液、生体液、および/または組織サンプルが含まれる。いくつかの実施形態では、サンプルは、全血である。いくつかの実施形態では、サンプルは、血漿である。他の実施形態では、サンプルは、血清または尿である。
【0140】
[0155]対象から採取されたサンプルにおいてタンパク質マーカーの濃度を決定するステップは、当業者に公知のおよび利用可能な標準的な技法に従って達成することができる。多くの場合では、これは、タンパク質の検出方法を行うものであり、これは、生物学的サンプル中に存在するタンパク質マーカーの定量的測度を提供する。
【0141】
[0156]実施形態では、本明細書中に記載のタンパク質マーカーに特異的に結合する標的結合剤によって、生物学的サンプル中のタンパク質マーカーの濃度の決定が可能になる。様々な結合剤のいずれかは、例えば、抗体、ポリペプチド、糖類、アプタマー、および核酸を含めて用いることができる。
【0142】
[0157]実施形態では、結合剤は、抗体または本明細書において提供されるタンパク質マーカーに特異的に結合する、および生物学的サンプル中で結合するタンパク質マーカーの濃度を決定するために有効であるそのフラグメントである。
【0143】
[0158]2分子間の結合相互作用と関連して用語「特異的に結合する(specifically binds)」または「特異的に結合する(binds specifically)」とは、抗体(もしくは他の結合剤)の、タンパク質マーカーの特異的なポリペプチドサブシークエンスまたはエピトープへの高結合活性および/または高親和性結合を意味する。(本明細書中で「エピトープ」とも称される)特異的なタンパク質マーカー配列上のエピトープの抗体結合は、任意の他のエピトープ、特に、目的の特異的なタンパク質マーカーと同じサンプルと関連した、またはそのサンプル中の分子中で存在することができるものへの同じ抗体の結合よりも、好ましくは、強い。目的のタンパク質マーカーに特異的に結合する抗体は、弱く、いまだ検出可能なレベル(例えば、目的のポリペプチドに示される結合の10%またはそれ未満、5%またはそれ未満、1%またはそれ未満)で、他のポリペプチドを結合することが可能であり得る。かかる弱い結合、またはバックグラウンド結合は、例えば、適切な対照の使用により、化合物または目的のポリペプチドへの特異的な抗体結合から容易に識別可能である。一般に、結合親和性が、10モル/Lまたはそれより高く、好ましくは、10モル/Lまたはそれより高く特異的なタンパク質マーカータンパク質を結合する、本明細書に記載される組成物および方法において用いられる抗体は、特異的なタンパク質マーカータンパク質に特異的に結合するといわれている。
【0144】
[0159]実施形態では、抗体または他の結合剤のタンパク質マーカーへの特異的な結合の親和性は、バックグラウンド結合よりも約2倍大きく、バックグラウンド結合よりも約5倍大きく、バックグラウンド結合よりも約10倍大きく、バックグラウンド結合よりも約20倍大きく、バックグラウンド結合よりも約50倍大きく、バックグラウンド結合よりも約100倍大きく、もしくはバックグラウンド結合よりも約1000倍大きく、またはそれ以上である。
【0145】
[0160]実施形態では、抗体または他の結合剤のタンパク質マーカーへの特異的な結合の親和性は、バックグラウンド結合よりも約2~約1000倍大きく、バックグラウンド結合よりも約2~500倍大きく、バックグラウンド結合よりも約2~約100倍大きく、バックグラウンド結合よりも約2~約50倍大きく、バックグラウンド結合よりも約2~約20倍大きく、バックグラウンド結合よりも約2~約10倍大きく、または親和性の任意の介在する範囲である。
【0146】
[0161]実施形態では、タンパク質マーカーの濃度は、それだけに限らないが、例えば、イムノアッセイ、ELISAサンドイッチ型アッセイ、側方流動アッセイ、フローサイトメトリー、質量分析検出、熱量測定アッセイ、プロテインアレイ(例えば、抗体アレイ)への結合、単一分子検出法、ナノテクノロジーに基づいた検出法、または蛍光活性化細胞ソーティング(FACS:fluorescent activated cell sorting)を含めた、アッセイまたはフォーマットを用いて決定される。いくつかの実施形態では、アプローチには、イムノアッセイ、ELISA、抗体-標識化蛍光ビーズアッセイ、抗体アレイ、またはFACSスクリーンにおいて、1種または複数のタンパク質マーカータンパク質のエピトープを認識する、標識された親和性試薬(例えば、抗体、小分子など)の使用を含む。既述のように、本明細書中のタンパク質マーカーを検出するおよび定量化するために、抗体を生成する、評価するおよび/または用いるための多くの例示的な方法のいずれかは、当業者に周知であり利用可能である。本明細書に記載される方法によるタンパク質の検出および定量化は、単一のアッセイフォーマット、複数のフォーマット、または他の公知のフォーマットで行うことができるということがやはり理解される。
【0147】
[0162]実施形態では、所与のタンパク質の濃度は、定量化標準に正規化される。実施形態では、定量化標準は、合成である。多くの正規化法は、当技術分野で公知である。実施形態では、正規化されたタンパク質濃度は、数学的に変換される。数学的な変換は、対数変換であり得る。
【0148】
[0163]多くの適したハイスループットな多重フォーマットは、開示されたタンパク質マーカーを評価するために存在する。一般に、用語「ハイスループット」とは、1日当たり多数のアッセイ、例えば、1日当たり少なくとも100個のアッセイ、1000個のアッセイ、10,000個ものアッセイまたはそれより多くまで行うフォーマットを意味する。アッセイを数え上げる場合、アッセイされるサンプルの数またはマーカーの数は、考慮することができる。
【0149】
[0164]いくつかの実施形態では、サンプルは、アッセイ系または分析用デバイスで分析される。例えば、アッセイ系または分析用デバイスは、単一のマイクロプレートウェル中で、複数の分析物、例えば、タンパク質を同時に測定する、マルチプレックス分析機器であり得る。アッセイフォーマットは、受容体-リガンドアッセイ、イムノアッセイ、および酵素試験であり得る。そのような分析機器の一例は、3つのxMAP(登録商標)技術の組合せであるLuminex(登録商標)100/200システムである。第1は、アッセイを構築するために識別子および固体面として働く蛍光染色されたミクロン-サイズのポリスチレンミクロスフェアのファミリーである、xMAPミクロスフェアである。第2は、重要なxMAP(登録商標)検出コンポーネント、例えば、レーザー、光学、流体、および高速デジタルシグナルプロセッサを組み込むフローサイトメトリーに基づいた装置、Luminex(登録商標)100/200分析機器である。第3のコンポーネントは、頑健なデータ回帰分析によるプロトコールに基づいたデータ収得のために設計される、xPONENT(登録商標)ソフトウェアである。
【0150】
[0165]タンパク質マーカーレベル、任意選択で、対象についての臨床変数ステータスを決定することにより、データセットを、生成し、(本明細書にさらに記載される通り)用いて、対象の心血管状態のリスク層別化、予後、診断、およびモニタリングのうちの1つまたは複数に生物学的サンプルを分類し、それにより、本明細書に記載した通り、心血管系疾患の診断および/または予後ならびに/またはアウトカムを確立するために、陽性、中間、もしくは陰性診断、アウトカム、または対象への心血管状態の1つまたは複数のさらなる変化の可能性をさらに割り当てることができる。データセットは、自動化または手動法により得ることができる。
統計解析
[0166]タンパク質マーカーおよび本明細書に記載した任意選択の臨床変数の組合せを分析することにより、本明細書に記載される方法は、異なるエンドポイント間で識別することが可能である。エンドポイントには、例えば、末梢動脈疾患(PAD)、四肢切断、および/または大動脈弁狭窄症(AS)を含むことができる。マーカーおよびこれらの対応する特徴(例えば、濃度、定量的なレベル)の同一性は、分析プロセス、または患者の臨床的に関連性のあるクラス間で識別する複数の分析プロセスを開発するおよび実行することにおいて用いられる。
【0151】
[0167]本明細書に記載される方法は、機械学習を利用することができる。機械学習は、統計およびコンピューターサイエンスの分野であり、アルゴリズムは、予測、回帰、または分類の目的のために、データから得られたモデルを生成する。機械学習アルゴリズムは、1組の「特徴」を一般に要し、これは、「アウトカム」または「クラス」を予測するために用いられる変数である。本明細書中の実施形態では、これらの特徴は、正規化され、対数-変換されたタンパク質濃度および臨床的因子であり、クラスまたはアウトカムは、本発明者らが予測することを試みている医学的アウトカムである。学習モデルの正確さは、モデルが、予測することを試みている(例えば、異なる測定基準が、3次のまたは連続的な数値アウトカム(所与の動脈に存在する閉塞の量)の場合よりも、2次のアウトカム(例えば、「陽性」対「陰性」)の場合に用いられる)クラスのタイプに応じた、多くの異なる測定基準により評価することができる。機械学習は、コンピューターに、明示的にプログラムされずに学習する能力を与える。機械学習は、データから学習し、データ上で予測することができるアルゴリズムの研究および構成を探索し、-かかるアルゴリズムは、サンプル入力からモデルを構築することによって、データ駆動型の予測または決定をすることにより、厳密に静的なプログラムの指示後、克服する。機械学習は、コンピューターのタスクの範囲で使用され、性能が良い陽的アルゴリズムを設計するおよびプログラムすることは、難しいまたは実行不可能である。科学的な努力として、機械学習は、人工知能(AI)についての探索から離れて成長し、人工知能のサブセットが考慮される。AIの初期にすでに、一部の研究者は、データから機械を学習させることに関心があった。研究者らは、様々な演算子法による問題、ならびにその後「ニューラルネットワーク」と名付けられたものをアプローチすることを試みた。確率的な推論は、特に、自動化された医学的診断においてやはり使用された。
【0152】
[0168]タンパク質マーカーおよび臨床変数データセットは、アッセイ系により生成されたアッセイの結果を相関させる、任意選択で、対象の心血管状態に臨床変数ステータスを相関させるための分析プロセスにおいて用いることができ、前記相関ステップは、アッセイの結果をリスク層別化、予後、診断のうちの1つまたは複数に相関させるステップと、対象の心血管状態を分類しモニターするステップと、薬理学的作用物質の心血管効果をモニターするステップと、臨床試験の強化とも称される臨床試験の登録のための高リスク患者を同定するステップと含み、または薬理学的作用物質についてのコンパニオン診断もしくは補完診断としての、末梢動脈疾患、末梢四肢切断リスク、または大動脈弁狭窄症としても知られる、または疑いがある患者における医療機器もしくは他の治療の使用を含み、前記相関ステップは、陽性、中間、もしくは陰性診断の可能性、またはアッセイの結果に基づいて、対象への心血管状態の1つもしくは複数の特徴の変化を割り当てるステップを含む。
【0153】
[0169]タンパク質マーカーおよび臨床変数データセットは、診断および/または予後の結果もしくはスコアを生成するための分析プロセスにおいて用いることができる。例えば、例示的な分析プロセスは、各構成成分(タンパク質レベルまたは臨床的因子)についてのある期間の線形モデルを含むことができる。モデルの結果は、診断および/または予後を生成する数である。本モデルによって、特異的なタンパク質マーカーおよび/または臨床変数データセットについてのアルゴリズムの確立が可能になり、次いで、スコアを生成するために用いられる。結果は、マルチ-レベルもしくは連続的スコアを提供することもでき、より高い数字は、疾患またはイベントのリスクの可能性がより高いことを表し、より低い数字は、疾患またはイベントのリスクの可能性がより低いことを表し、中間の数字は、疾患またはイベントのリスクの可能性が中間であることを表す。
【0154】
[0170]以下の例は、いかにデータ分析アルゴリズムが、多くのかかる分析プロセスを構成するために用いることができるかを例示している。これらの例に記載したデータ分析アルゴリズムのそれぞれは、訓練母集団にわたって、本明細書中で同定されたマーカーのサブセットの特徴(例えば、正規化されたおよび変換された定量的なタンパク質レベルおよび/または臨床的因子)を用いる。本明細書に開示される対象間で識別する、1種または複数の分析プロセスを構築するための特定のデータ分析アルゴリズムは、以下のサブセクションに記載される。分析プロセスが、これらの例データ分析アルゴリズムまたは当技術分野で公知の、他の技法を用いて構築された後、分析プロセスを用いて、2つ以上の表現型クラスのうちの1つに試験対象を分類するおよび/または生存/死亡率もしくは血液検査が得られた後のある特定の期間内の重症の医学的イベントを予測することができる。これは、1つまたは複数の分析プロセスを、試験対象から得られた、1つまたは複数のマーカープロファイルに適用することにより、達成される。したがって、かかる分析プロセスは、診断もしくは予後の指標として莫大な値を有する。
【0155】
[0171]実施形態では、本方法は、前述した通り、タンパク質マーカーのパネルの濃度の正規化および変換、ならびに患者が、閉塞性末梢動脈疾患または大動脈弁狭窄症と診断されるまたはそれだけに限らないが、末梢四肢切断および末梢血管血行再建術を含めた、有害な心血管イベントを発症するリスクの予後を有するか否かを決定するために用いることができるスコアに、正規化され、変換された濃度データを変換するためのアルゴリズムのその後の使用を提供する。
【0156】
[0172]本データは、分析プロセス前に処理される。各データセット中のデータは、通常、2回または3回または複数回、各マーカーの値を測定することにより収集される。本データは、操作することができ;例えば、生データは、検量線、ならびに各患者についての平均および標準偏差を算出するために用いる複製の測定の平均を用いて変換することができる。これらの値は、例えば、対数-変換された、標準スケールに正規化された、ウィンザー化されたなどのモデルにおいて用いられる前に、変換することができる。本データは、コンピューターソフトウェアを介して変換される。次いで、本データは、定義されたパラメータを用いて分析プロセスに入力することができる。
【0157】
[0173](対数変換および正規化後の)タンパク質の直接的な濃度、2つの形態(例えば、性別)において表される臨床的因子の存在/非存在、および/または定量的な形態(例えば、BMI、年齢)での臨床的因子は、ソフトウェアにより生成されたアルゴリズム的に重み付けされた診断および/または予後モデルに入力される値を提供し、この結果は、診断または予後を決定するために、1つまたは複数のカットオフに対して評価される。
【0158】
[0174]次のものは、開示された方法、パネル、アッセイ、およびキットの実行を助けるために、当業者に利用可能である統計解析法のタイプの例である。統計解析は、次の2つのタスクのうちの1つまたはその両方に適用することができる。(1)これらのおよび他の統計方法は、マーカーおよび好ましいデータセットを形成する他の指標の好ましいサブセットを同定するために用いることができ;(2)これらのおよび他の統計方法は、データセットと共に用いて、結果を生成する分析プロセスを生成するために用いることができる。本明細書中に示されるいくつかの統計方法または当技術分野で利用可能な別の方法は、これらのタスクのいずれも行い、本明細書に開示される方法の実行のための分析プロセスとしての使用に適しているモデルを生成する。
【0159】
[0175]分析前に、データは、訓練セットおよびバリデーションセットに分配される。訓練セットは、最終の診断または予後モデルを訓練する、評価するおよび構築するために用いられる。バリデーションセットは、訓練プロセス中全く用いられず、最終の診断または予後モデルをバリデートするために用いられるにすぎない。
【0160】
[0176]訓練およびバリデーションセットの作成は、ランダムな選択によって、または経時的な選択によって(すなわち、訓練セットが、患者の第1の時系列のセットであり、バリデーションセットが、患者の第2の/最終の時系列のセットである場合)行うことができる。これらのセットが決定された後、様々なアウトカムの平衡(例えば、50%またはそれより多くの閉塞、末梢四肢切断のリスクなどの存在)は、目的のアウトカムが、各データセットにおいて適切に表されることを確認することが考慮される。
【0161】
[0177]サンプルサイズが小さい場合には、患者の母集団全体は、診断または予後パネルを訓練する、評価するおよび開発するために用いられる。以下のすべての方法は、明示的に言及される場合を除き、母集団全体の使用が含まれる。
【0162】
[0178]診断および/または予後モデルの特徴(例えば、タンパク質および/または臨床的因子)は、最小角回帰(LARS;段階的な変数増減に基づいた手順)、統計的な学習方法の縮小、例えば、最小絶対値縮小および選択演算子(LASSO:least absolute shrinkage and selection operator)、有意性検定、および専門家の意見などを含めた、分析プロセスの組合せを用いた各アウトカムのために選択される。
【0163】
[0179]結果(分類、診断、および/または疾患/指定された時間内のアウトカムリスクなど)を生成するために用いられる統計学習方法は、サンプル(例えば、線形モデル、確率モデル、意志決定樹図アルゴリズム、または得られたデータセットの参照データセットとの比較)を分類するために有用な結果を示すことが可能な方法のいずれかのタイプであり得る。
【0164】
[0180]特徴における診断または予後シグナルは、交差検証手順を用いた、これらの統計的な学習方法により評価される。各交差検証の倍率の場合、データ(サンプルサイズに応じた、訓練セットまたはすべての患者)は、訓練およびバリデーションセット(これにより、CV-訓練およびCV-バリデーションデータセットと呼ばれる)にさらに分割される。
【0165】
[0181]交差検証の各倍率について、診断もしくは予後モデルは、CV-訓練データを用いて構築され、CV-検証データで評価される。
[0182]交差検証プロセス中のモデルは、分類の正確さの標準的な測定基準、例えば、ROC曲線下面積(AUC)、感受性(Sn)、特異性(Sp)、陽性的中度(PPV)、および陰性的中度(NPV)で評価される。
【0166】
[0183]1組の特徴(例えば、定量的なタンパク質レベル、任意選択で、臨床的因子)が、最終の診断または予後パネルを構成するために選択された後、最終の予測モデルは、訓練データのすべてを用いて構築される。
【0167】
[0184]患者データ(例えば、変換されたおよび正規化された定量的なタンパク質レベルおよび/または臨床的因子)を最終の予測モデルに適用することによって、分類の結果が生成される。これらの結果は、いくつかのクラス(例えば、陽性、中間、もしくは陰性診断および/または予後、または重症度/尤度スコア)内で、サンプルを分類するための閾値に対して比較することができる。
【0168】
[0185]小さい母集団の場合、最終モデルは、母集団全体を用いて創出され、次いで、本モデルは、母集団を用いて再度評価されて、サンプル中の診断または予後結果を決定する。
【0169】
[0186]訓練およびバリデーションセットに分けることを保証するための十分なサイズの母集団の場合、最終モデルは、バリデーションデータセットを用いて評価される。バリデーションデータセットの権限を尊重するために、これは、訓練プロセスに情報をフィードバックするために反復のやり方で用いられない。これは、分析的なパイプラインの最終ステップとして用いられるにすぎない。
【0170】
[0187]モデルは、AUC、感受性、特異性、陽性的中率および/または陰性的中率を含めた、診断の正確さの測定基準を用いた、(より小さな母集団の場合)母集団全体により評価されるまたは(訓練およびバリデーションセットに分けることを保証するための十分なサイズの母集団の場合)バリデーションデータセットにより評価される。正確さの他の測定基準、例えば、ハザード比、相対リスク、および純再分類改善度(net reclassification index)は、目的のモデルについて別々に考慮される。
【0171】
[0188]本最終モデルまたは特異的なタンパク質マーカープラットホームのために最適化されたモデルは、臨床セッティングにおいて用いられる場合、ソフトウェア系として実行することができ、アッセイハードウェアプラットホーム上でまたは独立の系で直接行う。本モデルは、アッセイプラットホームまたはデータ転送の他の手段から直接、タンパク質レベルまたは濃度データを受信することができ、患者の臨床データは、患者の診療記録の電子、手動、または他のクエリーによってまたは操作者による対話型入力によって受信することができる。この患者データは、処理され、最終モデルに通すことができ、これは、決定の支援の目的のために、臨床医および医療従事者に結果を提供する。
【0172】
[0189]実施形態では、タンパク質マーカーおよび/または臨床変数には、表1に示すもの、特に、p値0.1未満、0.05未満、0.01未満または0.001未満と関連するものが含まれる。
【0173】
[0190]いくつかの実施形態では、少なくとも2種、少なくとも3種または少なくとも4種のタンパク質マーカーは、本明細書において提供される方法において用いられる。他の実施形態では、使用したタンパク質マーカーの数は、変わることができ、少なくとも5、6、7、8、9、10種、またはそれより多くを含むことができる。さらなる他の実施形態では、タンパク質マーカーの数は、少なくとも15、20、25もしくは50種、またはそれより多くを含むことができる。
【0174】
[0191]実施形態では、本明細書において提供される方法には、表1から選択される少なくとも2種のタンパク質マーカーの濃度を測定するステップが含まれる。実施形態では、本明細書において提供される方法には、表1から選択される2種のタンパク質マーカーの濃度を測定するステップが含まれる。実施形態では、本明細書において提供される方法には、表1から選択される3種のタンパク質マーカーの濃度を測定するステップが含まれる。実施形態では、本明細書において提供される方法には、表1から選択される4種のタンパク質マーカーの濃度を測定するステップが含まれる。実施形態では、本明細書において提供される方法には、表1から選択される5種のタンパク質マーカーの濃度を測定するステップが含まれる。実施形態では、本明細書において提供される方法には、表1から選択される6種のタンパク質マーカーの濃度を測定するステップが含まれる。かかる決定は、当技術分野で公知のおよび本明細書に記載される標準の方法によりなされ得る。実施形態では、表1から選択されるタンパク質マーカーの濃度の大きさによって、対象のタンパク質プロファイルが決定される。
【0175】
[0192]実施形態では、タンパク質マーカーの濃度を測定するための分析用デバイスは、イムノアッセイデバイスである。デバイスは、数学的計算の可能な、例えば、定量化標準に対して検出されたタンパク質マーカー濃度を正規化する、ソフトウェア制御および分析プログラムによって構成することができる。定量化標準は、タンパク質検出アッセイの一部であっても別々に含まれてもよい。ソフトウェア制御および分析プログラムは、数学的因子として入力される臨床変数を受信するおよび次いで、予め入力されたアルゴリズムならびにタンパク質マーカー濃度および任意選択の臨床変数を許容するモデルに基づいて、スコアに変換される値に、正規化されたタンパク質濃度を対数-変換することがさらに可能であり得る。数学的な対数変換ならびに診断および/または予後スコアを生成するアルゴリズムの使用は、分析用デバイス、コンピューター内で、クラウド・コンピューティングセッティングなどの中で達成することができる。
【0176】
[0193]実施形態では、表2から選択される少なくとも1種の臨床変数の状態または大きさは、決定される。実施形態では、本明細書において提供される方法には、表2から選択される1つの臨床変数の状態を決定するステップが含まれる。実施形態では、本明細書において提供される方法には、表2から選択される2つの臨床変数の状態を決定するステップが含まれる。実施形態では、本明細書において提供される方法には、表2から選択される3つの臨床変数の状態を決定するステップが含まれる。実施形態では、本明細書において提供される方法には、表2から選択される4つの臨床変数の状態を決定するステップが含まれる。かかる決定は、当技術分野で公知の標準的な方法、例えば、治療歴のレビューなどにより、またはそれだけに限らないが、電子健康記録(EHR)または他の情報システム、または臨床検査を含めた、他の手段から臨床変数を検索する分析用デバイスからなされ得る。
【0177】
[0194]実施形態では、タンパク質マーカープロファイル、任意選択で、臨床値ステータスに基づいた、対象のスコアの割り当ては、前述した数学的計算の可能なソフトウェア制御および分析プログラムで構成されたデバイスを用いて、達成することができる。スコアは、陽性、中間、または陰性診断結果として分類することができる。スコアは、陽性、中間、または陰性の予後結果として分類することができる。
スコアリングおよび治療
[0195]いくつかの実施形態では、診断または予後を算出することによって、例えば、それだけに限らないが、陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)、感受性(Sn)、または特異性(Sp)、および/または特定の期間内で発生する心血管イベントのリスクを含めた、PADの可能性の患者のレベルに関連する数値またはカテゴリースコアがもたらされる。診断モデルにより用いられたレベルの数は、わずか2種(「陽性」対「陰性」)でも臨床的に関連性があるとみなされるほど多くであってもよく、例えば、PADについての診断モデルは、5段階スコアになり得、より高いスコアは、疾患の可能性がより高いことを示す。詳細には、スコア1は、PADの可能性が低いことまたは陰性の結果(試験のNPVまたはSnにより決定される)において、強い信頼度を示し、スコア5は、PADの可能性が高いことまたは陽性の結果(試験のPPVまたはSpにより決定される)において、強い信頼度を示し、スコア3は、中間またはPADについての中等度の可能性を示す。
【0178】
[0196]実施形態では、本明細書において提供される方法には、末梢動脈疾患についての陽性、中間または陰性の診断スコアに基づいて、対象を治療するステップがさらに含まれる。対象の治療には、治療レジメンを提供することが含まれる。治療レジメンは、治療薬の投与、さらなる診断検査、生活様式の変更、外科的処置などを含むことができる。実施形態では、対象における陽性診断スコアによって、超音波、薬物の投与、末梢血管造影、末梢血管血行再建術(末梢血管形成術、ステントまたはバイパス術)、および公知の切断リスクを伴う任意の薬物の回避から選択される1つまたは複数のインターベンションの必要性を医師により決定することが容易になる。実施形態では、対象における陰性診断スコアによって、継続的なモニタリングならびに末梢および冠血管リスク因子の管理、および生活様式の変更から選択される1つまたは複数のインターベンションの必要性を医師により決定することが容易になる。実施形態では、対象における中間診断スコアによって、さらなる試験、足関節上腕血流比(ABI:arterial brachial index)試験、およびリスク因子についてのより頻繁なモニタリングから選択される1つまたは複数のインターベンションの必要性を医師により決定することが容易になる。
【0179】
[0197]実施形態では、本明細書において提供される方法には、末梢四肢切断のリスクについての陽性、中間もしくは陰性の予後スコアに基づいて、対象を治療するステップがさらに含まれる。対象の治療には、治療レジメンを提供することが含まれる。治療レジメンは、治療薬の投与、公知の切断リスクによる任意の薬理学的作用物質の回避、切断のリスクを有するおそれがあるまたはおそれがない他の疾患の状態に役立ち得る薬理学的作用物質の選択、さらなる診断検査、補完診断またはコンパニオン診断検査、生活様式の変更、末梢血管造影、末梢血管血行再建術(バルーン、ステントもしくはバイパス術)を含めた外科的処置、超音波、リスク因子についてのより頻繁なモニタリング、例えば、糖尿病および高コレステロールなどを含むことができる。実施形態では、対象における陽性予後スコアによって、超音波、薬物の投与、公知の切断リスクによる任意の薬理学的作用物質の回避、末梢血管造影、末梢血管血行再建術(バルーン、ステントもしくはバイパス術)、補完診断またはコンパニオン診断検査、および生活様式の変更から選択される1つまたは複数のインターベンションの必要性を医師により決定することが容易になる。実施形態では、対象における陰性予後スコアによって、継続的なモニタリングならびに高血圧、糖尿病、および喫煙を含めた末梢および冠血管リスク因子の管理、切断のリスクを有するおそれがあるまたはおそれがない他の疾患の状態に役立ち得る薬理学的作用物質の選択、および生活様式の変更のうちの1つまたは複数から選択される1つまたは複数のインターベンションの必要性を医師により決定することが容易になる。実施形態では、対象における中間予後スコアによって、足関節上腕血流比(ABI)試験、切断のリスクを有するおそれがあるまたはおそれがない薬理学的作用物質の選択、およびリスク因子についてのより頻繁なモニタリング、例えば、糖尿病および高コレステロールなどのうちの1つまたは複数から選択される1つまたは複数のインターベンションの必要性を医師により決定することが容易になる。
【0180】
[0198]いくつかの実施形態では、診断または予後モデルによって、例えば、それだけに限らないが、陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)、感受性(Sn)、または特異性(Sp)、または特定の時間内で発生する心血管イベントのリスクを含めた、大動脈弁狭窄症(AS)の可能性の患者のレベルに関連する数値またはカテゴリースコアがもたらされる。診断モデルにより用いられたレベルの数は、わずか2種(「陽性」対「陰性」)でも臨床的に関連性があるとみなされるほど多くであってもよく、例えば、ASについての診断モデルは、5段階スコアになり得、より高いスコアは、疾患の可能性がより高いことを示す。詳細には、スコア1は、ASの可能性が低いことまたは陰性の結果(試験のNPVまたはSnにより決定される)において、強い信頼度を示し、スコア5は、ASの可能性が高いことまたは陽性の結果(試験のPPVまたはSpにより決定される)において、強い信頼度を示し、スコア3は、中間またはASについての中等度の可能性を示す。
【0181】
[0199]実施形態では、本明細書において提供される方法には、大動脈弁狭窄症についての陽性、中間または陰性の診断スコアに基づいて、対象を治療するステップがさらに含まれる。対象の治療には、治療レジメンを提供することが含まれる。治療レジメンは、それだけに限らないが、心エコー図、心電図(ECG)、胸部x線、心臓コンピューター断層撮影(CT)、心臓磁気共鳴画像法(MRI)、運動負荷試験(exercise stress testing)、大動脈弁修復術または置換術を含めた外科的処置、継続的なモニタリング、教育症候学(education symptomatology)、生活様式の変更ならびに糖尿病、高コレステロールおよび高血圧の治療、およびより頻回なモニタリングおよび/または医師の診察を含めた、さらなる診断検査の投与を含むことができる。
【0182】
[0200]実施形態では、対象における陽性診断スコアによって、心エコー図、心電図(ECG)、胸部x線、心臓コンピューター断層撮影(CT)、心臓磁気共鳴画像法(MRI)、外科的大動脈弁修復術または置換術から選択される1つまたは複数のインターベンションの必要性を医師により決定することが容易になる。実施形態では、対象における陰性診断スコアによって、継続的なモニタリング、教育症候学、それだけに限らないが、健康食、健康的な体重の維持、定期的な身体活動、禁煙、ストレスの管理を含めた、生活様式の変更から選択される1つまたは複数のインターベンションの必要性を医師により決定することが容易になる。実施形態では、対象における中間診断スコアによって、運動負荷試験、さらなる試験、リスク因子についてのより頻繁なモニタリングおよび/または医師の診察から選択される1つまたは複数のインターベンションの必要性を医師により決定することが容易になる。
パネル、アッセイ、およびキット
[0201]本開示は、本開示による診断または予後の発見を助けるまたは容易にするために、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種もしくは4種を超えるタンパク質マーカーを結合する標的結合剤を含み、任意選択で、臨床変数を含む、パネル、アッセイ、およびキットをさらに提供する。例えば、いくつかの実施形態では、診断または予後パネルまたはキットは、表1に記載のタンパク質マーカーのうちの1種または複数を含み、任意選択で、表2に記載の適用可能な臨床変数のうちの1つまたは複数を含む。
【0183】
[0202]本明細書に記載される多くの実施形態、パネル、アッセイ、およびキットが、抗体、それらの結合フラグメントおよび/または表1のタンパク質マーカーに特異的である、および本明細書に記載の方法による生物学的サンプル中の対応するタンパク質マーカーの濃度を決定するのに有用である結合剤の他のタイプを含むということが理解される。したがって、パネル、アッセイ、またはタンパク質マーカーの1種もしくは複数を含むキットの本明細書中の各説明において、全く同じパネル、アッセイ、またはキットが、他にまたはその代わりに、抗体、それらの結合フラグメントまたは標的結合剤の他のタイプ、例えば、アプタマーのうち1種または複数を有利には含むことができ、これらは、表1に記載のタンパク質マーカーに特異的であることが理解される。もちろん、パネル、アッセイ、およびキットは、表2に記載の適用可能な臨床変数のうちの1つまたは複数の決定をさらに含む、含めるまたは推奨することができる。
【0184】
[0203]いくつかの特異的な実施形態では、パネル、アッセイ、またはキットと組み合わせて用いられるタンパク質マーカーおよび/または臨床変数には、それぞれ、表1および表2に示すもの、特に、p値0.1未満、0.05未満、0.01未満または0.001未満と関連するものが含まれる。
【0185】
[0204]いくつかの実施形態では、パネル、アッセイ、およびキットは、本明細書に記載したタンパク質マーカーに特異的な、少なくとも2種、少なくとも3種または少なくとも4種の標的結合剤を含むことができる。実施形態では、パネル、アッセイ、およびキットは、2種のタンパク質マーカーのための標的結合剤を含むことができる。実施形態では、パネル、アッセイ、およびキットは、3種のタンパク質マーカーのための標的結合剤を含むことができる。実施形態では、パネル、アッセイ、およびキットは、4種のタンパク質マーカーのための標的結合剤を含むことができる。実施形態では、パネル、アッセイ、およびキットは、5種のタンパク質マーカーのための標的結合剤を含むことができる。他の実施形態では、使用したタンパク質マーカーの数は、少なくとも5、6、7、8、9もしくは10種またはそれより多くを含むことができる。さらなる他の実施形態では、使用したタンパク質マーカーの数は、少なくとも15、20、25もしくは50種、またはそれ多くを含むことができる。
【0186】
[0205]本明細書に記載した通り、本開示のパネル、アッセイ、およびキットは、対象における心血管系疾患の存在、特に、閉塞性末梢動脈疾患の存在を同定するおよび/または心血管イベントを予測するために用いることができる。いくつかの実施形態では、診断パネル、アッセイ、またはキットは、対象における末梢動脈中の50%またはそれより多くの閉塞の存在を同定する。
【0187】
[0206]他の実施形態では、予後パネル、アッセイ、またはキットは、サンプルが取り出される日付から1年以内、約1年以内、約2年以内、約3年以内、約4年以内、約5年以内、またはそれより長い期間以内で、心血管系疾患またはイベントのリスクを予測するために用いられる。時間エンドポイントは、サンプルの取り出しからと定義され、1年未満、1年、および1年以上が含まれる。1年未満または1年以内は、サンプルの引き出しの時間から365日までのおよび365日を含む任意の時間であり得る。例えば、パネルの結果は、サンプルの引き出しの時間から30日まで、60日まで、90日まで、120日まで、150日まで、180日まで、210日まで、240日まで、270日まで、300日まで、330日まで、360日まで、365日まで心血管系疾患またはイベントのリスクを予測することができる。さらなる他の実施形態では、時間エンドポイントは、サンプル取り出しの3日~30日後、3日~60日後、3日~90日後、3日~120日後、3日~150日後、3日~180日後、3日~210日後、3日~240日後、3日~270日後、3日~300日後、3日~330日後、3日~360日後、3日~365日後と定義される。適した時間枠には、エンドポイントを含めた、列挙した範囲内の任意の値または部分範囲が含まれる。
【0188】
[0207]詳細な実施形態では、末梢動脈疾患の診断(PAD)および/または末梢血管血行再建術の予後および/またはPADの進行もしくは治療効果のモニタリングおよび/または末梢四肢切断の予後のためのパネル、アッセイ、およびキットは、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種のまたは4種を超えるタンパク質マーカー、または抗体、それらの結合フラグメントもしくは結合剤の他のタイプを含み、これらは、タンパク質マーカーに特異的であり、タンパク質マーカーは、アンジオポエチン1、アポリポタンパク質C-I、アンギオテンシン変換酵素、癌胎児抗原関連細胞接着分子1、エオタキシン1、ENRAGE、フェチュインA、卵胞刺激ホルモン、細胞間接着分子1、インターフェロンガンマ誘導タンパク質10、インターロイキン1受容体アンタゴニスト、インターロイキン8、インターロイキン23、腎臓障害分子1、マトリックスメタロプロテアーゼ7、全マトリックスメタロプロテアーゼ9、ミッドカイン、γインターフェロンにより誘導されるモノカイン、骨髄系前駆細胞抑制因子1、オステオポンチン、肺サーファクタント関連タンパク質D、レジスチン、セロトランスフェリン、タム・ホースフォール尿糖タンパク質、T細胞特異的タンパク質RANTES、チロキシン結合グロブリン、およびトランスサイレチンから選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される少なくとも1種の臨床変数は、決定されるタンパク質マーカーレベルと組み合わせて用いられる。他の実施形態では、臨床変数は、年齢、高血圧の病歴、(ステントを用いたまたは用いない)末梢経皮的血管形成術の履歴、肥満度指数(BMI)、脂質異常症の病歴、および/または末梢血管血行再建術の履歴(末梢血管形成術、ステントまたはバイパス術から選択される。
【0189】
[0208]詳細な実施形態では、末梢動脈中の50%またはそれより多くの閉塞の診断および/またはPADの進行もしくは治療効果のモニタリングのためのパネル、アッセイ、またはキットは、アンジオポエチン1、エオタキシン1、卵胞刺激ホルモン、インターロイキン23、腎臓障害分子1、およびミッドカインのためのタンパク質マーカーならびに高血圧の病歴の臨床変数を含む。タンパク質マーカーおよび臨床変数のこの組合せは、表3、実施例1、図1、5、および7中のパネルPAD158により表される。
【0190】
[0209]詳細な実施形態では、末梢動脈中の50%またはそれより多くの閉塞の診断および/またはPADの進行もしくは治療効果のモニタリングのためのパネル、アッセイ、またはキットは、タンパク質マーカー腎臓障害分子1、インターロイキン1受容体アンタゴニスト、肺サーファクタント関連タンパク質D、ならびに(ステントを用いたまたは用いない)経皮的末梢血管形成術の履歴の臨床変数を含む。タンパク質マーカーのこの組合せは、表3中のパネルPAD027VAにより表される。
【0191】
[0210]詳細な実施形態では、末梢動脈中の50%またはそれより多くの閉塞の診断および/またはPADの進行もしくは治療効果のモニタリングのためのパネル、アッセイ、またはキットは、セロトランスフェリン、T細胞特異的タンパク質RANTES、チロキシン結合グロブリン、およびトランスサイレチンのためのタンパク質マーカーを含む。タンパク質マーカーのこの組合せは、表3中のパネルPAD104により表される。
【0192】
[0211]別の実施形態では、末梢動脈中の50%またはそれより多くの閉塞の診断および/またはPADの進行もしくは治療効果のモニタリングのためのパネル、アッセイ、またはキットは、セロトランスフェリン、T細胞特異的タンパク質RANTES、チロキシン結合グロブリン、およびトランスサイレチンのためのタンパク質マーカーならびに高血圧の病歴の臨床変数を含む。タンパク質マーカーおよび臨床変数のこの組合せは、表3中のパネルPAD103により表される。
【0193】
[0212]別の実施形態では、末梢動脈中の50%またはそれより多くの閉塞の診断および/またはPADの進行もしくは治療効果のモニタリングのためのパネル、アッセイ、またはキットは、タンパク質マーカーフェチュインA、インターロイキン8、腎臓障害分子1、オステオポンチン、T細胞特異的タンパク質RANTES、およびタム・ホースフォール尿糖タンパク質ならびに肥満度指数および高血圧の病歴の臨床変数を含む。タンパク質マーカーのこの組合せは、表3、実施例2、および図2、6、および8中のパネルPAD076により表される。
【0194】
[0213]別の実施形態では、末梢動脈中の50%またはそれより多くの閉塞の診断および/またはPADの進行もしくは治療効果のモニタリングのためのパネル、アッセイ、またはキットは、アンジオポエチン1、エオタキシン1、卵胞刺激ホルモン、インターロイキン23、腎臓障害分子1、およびミッドカインのためのタンパク質マーカー、ならびに脂質異常症の病歴および高血圧の病歴の臨床変数を含む。タンパク質マーカーおよび臨床変数のこの組合せは、表3中のパネルPAD157により表される。
【0195】
[0214]別の実施形態では、末梢動脈中の50%またはそれより多くの閉塞の診断および/またはPADの進行もしくは治療効果のモニタリングのためのパネル、アッセイ、またはキットは、アンジオポエチン1、アポリポタンパク質C1、エオタキシン1、卵胞刺激ホルモン、インターロイキン23、腎臓障害分子1、マトリックスメタロプロテアーゼ7、ミッドカイン、およびタム・ホースフォール尿糖タンパク質のためのタンパク質マーカーならびに脂質異常症の病歴および高血圧の病歴の臨床変数を含む。タンパク質マーカーおよび臨床変数のこの組合せは、表3中のパネルPAD154により表される。
【0196】
[0215]別の実施形態では、末梢動脈中の50%またはそれより多くの閉塞の診断および/またはPADの進行もしくは治療効果のモニタリングのためのパネル、アッセイ、またはキットは、アンジオポエチン1、エオタキシン1、フェチュインA、インターロイキン23、および腎臓障害分子のためのタンパク質マーカー1、ならびに高血圧の病歴の臨床変数を含む。タンパク質マーカーおよび臨床変数のこの組合せは、表3中のパネルPAD145により表される。
【0197】
[0216]本開示の実施形態は、末梢動脈中の50%またはそれより多くの閉塞の診断および/またはPAD切断の予後または末梢血管インターベンション(バルーン、ステントもしくはバイパス術)のための必要性および/または少なくとも1種のタンパク質マーカーおよび1つまたは複数の臨床変数を含む治療効果のモニタリングのためのパネル、アッセイ、およびキットを含む。
【0198】
[0217]詳細な実施形態では、末梢動脈中の50%またはそれより多くの閉塞の診断および/または末梢血管インターベンションのための必要性および/またはPADの進行もしくは治療薬のモニタリングおよび/または末梢四肢切断リスクの予後のためのパネル、アッセイ、またはキットは、アンギオテンシン変換酵素、癌胎児抗原関連細胞接着分子1、インターフェロンガンマ誘導タンパク質10、オステオポンチン、肺サーファクタント関連タンパク質D、T細胞特異的タンパク質RANTES、およびタム・ホースフォール尿糖タンパク質のためのタンパク質マーカーならびに末梢血管血行再建インターベンション(末梢血管形成術、ステントまたはバイパス術)の履歴および高血圧の病歴の臨床変数を含む。タンパク質マーカーおよび臨床変数のこの組合せは、表3中のパネルPAD001により表される。
【0199】
[0218]詳細な実施形態では、末梢動脈中の50%またはそれより多くの閉塞の診断および/または末梢血管インターベンションのための必要性および/またはPADの進行もしくは治療効果のモニタリングおよび/または末梢四肢切断リスクの予後のためのパネル、アッセイ、またはキットは、アンギオテンシン変換酵素、腎臓障害分子1、オステオポンチン、および肺サーファクタント関連タンパク質Dのためのタンパク質マーカーならびに末梢血管血行再建インターベンション(末梢血管形成術、ステントまたはバイパス術)の履歴の臨床変数を含む。タンパク質マーカーおよび臨床変数のこの組合せは、表3中のパネルPAD010により表される。
【0200】
[0219]詳細な実施形態では、末梢血管血行再建術の予後(バルーン、ステントもしくはバイパス術)または末梢四肢切断リスクのためのパネル、アッセイ、またはキットは、アンギオテンシン変換酵素、ENRAGE、細胞間接着分子1、γインターフェロンにより誘導されるモノカイン、骨髄系前駆細胞抑制因子1、肺サーファクタント関連タンパク質Dおよびレジスチンのためのタンパク質マーカー、ならびに年齢の臨床変数を含む。タンパク質マーカーおよび臨床変数のこの組合せは、表3中のパネルPAD026により表される。
【0201】
[0220]詳細な実施形態では、末梢血管血行再建術の予後(バルーン、ステントもしくはバイパス術)または末梢四肢切断リスクのためのパネル、アッセイ、またはキットは、マトリックスメタロプロテアーゼ7、全マトリックスメタロプロテアーゼ9、骨髄系前駆細胞抑制因子1、肺サーファクタント関連タンパク質D、およびレジスチンのためのタンパク質マーカーならびに末梢血管血行再建インターベンション(末梢血管形成術、ステントまたはバイパス術)の履歴の臨床変数を含む。タンパク質マーカーおよび臨床変数のこの組合せは、表3中のパネルPAD018により表される。
【0202】
[0221]本開示の実施形態はまた、末梢四肢切断の予後のためのパネル、アッセイ、およびキットを提供し、パネルは、1つまたは複数のタンパク質マーカーまたは抗体、それらの結合フラグメントもしくは結合剤の他のタイプを含み、これらは、本明細書に開示されるタンパク質マーカーに特異的である。かかるパネル、アッセイ、およびキットは、例えば、対象において、指定された時間内に、例えば、1年以内に、または3年以内に、または5年以内に末梢四肢切断のリスクの予後を決定するために、用いることができる。いくつかの実施形態では、時間エンドポイントは、サンプル取り出しからの開始と定義される。詳細な実施形態では、末梢四肢切断の予後のためのパネル、アッセイ、およびキットは、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種または4種を超えるタンパク質マーカー、または抗体、それらの結合フラグメントもしくは結合剤の他のタイプを含み、これらは、タンパク質マーカーに特異的であり、タンパク質マーカーは、第VII因子、フェリチン、成長ホルモン、免疫グロブリンM、腎臓障害分子1、およびビタミンD結合タンパク質から選択される。実施形態では、本方法には、2型糖尿病の病歴および/または喫煙者の臨床変数を決定するステップが含まれる。
【0203】
[0222]いくつかの特異的な実施形態では、末梢四肢切断の予後のためのパネル、アッセイ、またはキットは、タンパク質マーカー腎臓障害分子-1およびビタミンD結合タンパク質、ならびに2型糖尿病の病歴の臨床変数を含む。タンパク質マーカーおよび臨床変数のこの組合せは、表3、実施例3、および図3中のパネルAMPU018により表される。
【0204】
[0223]いくつかの特異的な実施形態では、末梢四肢切断の予後のためのパネル、アッセイ、またはキットは、タンパク質マーカー第VII因子およびビタミンD結合タンパク質ならびに2型糖尿病の病歴および喫煙者の臨床変数を含む。タンパク質マーカーおよび臨床変数のこの組合せは、表3中のパネルAMPU010により表される。
【0205】
[0224]いくつかの特異的な実施形態では、末梢四肢切断の予後のためのパネル、アッセイ、またはキットは、タンパク質マーカー第VII因子、成長ホルモンおよびビタミンD結合タンパク質ならびに2型糖尿病の病歴および喫煙者の臨床変数を含む。タンパク質マーカーおよび臨床変数のこの組合せは、表3中のパネルAMPU008により表される。
【0206】
[0225]いくつかの特異的な実施形態では、末梢四肢切断の予後のためのパネル、アッセイ、またはキットは、タンパク質マーカー第VII因子、フェリチン、成長ホルモン、免疫グロブリンM、およびビタミンD結合タンパク質ならびに2型糖尿病の病歴の臨床変数を含む。タンパク質マーカーおよび臨床変数のこの組合せは、表3中のパネルAMPU013により表される。
【0207】
[0226]本開示の実施形態はまた、大動脈弁狭窄症の診断のためのパネル、アッセイ、およびキットを提供し、パネルは、1つまたは複数のタンパク質マーカーまたは抗体、それらの結合フラグメントもしくは結合剤の他のタイプを含み、これらは、本明細書に開示されるタンパク質マーカーに特異的である。詳細な実施形態では、大動脈弁狭窄症の診断のためのパネル、アッセイ、およびキットは、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種または4種を超えるタンパク質マーカー、または抗体、それらの結合フラグメントもしくは結合剤の他のタイプを含み、これらは、タンパク質マーカーに特異的であり、タンパク質マーカーは、アディポネクチン、アポリポタンパク質(a)、フェチュインA、インターロイキン18、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン、オステオポンチン、レジスチン、およびフォン・ヴィルブランド因子から選択される。実施形態では、本方法には、年齢の臨床変数および/または冠血行再建インターベンション(冠動脈形成術、ステントまたはバイパス術)の履歴を決定するステップが含まれる。
【0208】
[0227]いくつかの特異的な実施形態では、大動脈弁狭窄症の診断のためのパネル、アッセイ、またはキットは、フェチュインA、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン、およびフォン・ヴィルブランド因子のためのタンパク質マーカーならびに年齢の臨床変数を含む。タンパク質マーカーのこの組合せは、表3、実施例4および図4中のパネルASR025により表される。
【0209】
[0228]詳細な一実施形態では、大動脈弁狭窄症の診断のためのパネル、アッセイ、またはキットは、アディポネクチン、アポリポタンパク質(a)、インターロイキン18、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン、レジスチン、およびフォン・ヴィルブランド因子のためのタンパク質マーカーならびに年齢および冠血行再建インターベンション(冠動脈形成術、ステントまたはバイパス術)の履歴の臨床変数を含む。タンパク質マーカーのこの組合せは、表3中のパネルASR001により表される。
【0210】
[0229]詳細な一実施形態では、大動脈弁狭窄症の診断のためのパネル、アッセイ、またはキットは、アディポネクチン、アポリポタンパク質(a)、インターロイキン18、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン、レジスチン、およびフォン・ヴィルブランド因子のためのタンパク質マーカーおよび年齢の臨床変数を含む。タンパク質マーカーのこの組合せは、表3中のパネルASR002により表される。
【0211】
[0230]詳細な一実施形態では、大動脈弁狭窄症の診断のためのパネル、アッセイ、またはキットは、アポリポタンパク質(a)、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン、レジスチン、およびフォン・ヴィルブランド因子のためのタンパク質マーカーならびに年齢の臨床変数を含む。タンパク質マーカーのこの組合せは、表3中のパネルASR003により表される。
【0212】
[0231]詳細な一実施形態では、大動脈弁狭窄症の診断のためのパネル、アッセイ、またはキットは、アポリポタンパク質(a)、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン、およびフォン・ヴィルブランド因子のためのタンパク質マーカーならびに年齢の臨床変数を含む。タンパク質マーカーのこの組合せは、表3中のパネルASR016により表される。
【0213】
[0232]詳細な一実施形態では、大動脈弁狭窄症の診断のためのパネル、アッセイ、またはキットは、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン、レジスチン、およびフォン・ヴィルブランド因子のためのタンパク質マーカーならびに年齢の臨床変数を含む。タンパク質マーカーのこの組合せは、表3中のパネルASR004により表される。
【0214】
[0233]詳細な一実施形態では、大動脈弁狭窄症の診断のためのパネル、アッセイ、またはキットは、アディポネクチン、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン、およびフォン・ヴィルブランド因子のためのタンパク質マーカーならびに年齢の臨床変数を含む。タンパク質マーカーのこの組合せは、表3中のパネルASR013により表される。
【0215】
[0234]詳細な一実施形態では、大動脈弁狭窄症の診断のためのパネル、アッセイ、またはキットは、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン、オステオポンチン、およびフォン・ヴィルブランド因子のためのタンパク質マーカーならびに年齢の臨床変数を含む。タンパク質マーカーのこの組合せは、表3中のパネルASR006により表される。
【0216】
[0235]特定の実施形態では、パネル、アッセイ、またはキットは、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種もしくは4種を超える抗体またはそれらの結合フラグメント、または結合剤の他のタイプを含み、抗体、結合フラグメントまたは他の結合剤は、表1についてのタンパク質マーカーに特異的である。
【0217】
[0236]本開示のパネル、アッセイ、およびキットは、本開示による診断または予後の決定を容易にする上で必要であり得るまたは望まれ得る、実質的に任意の他の化合物、組成物、構成成分、指示などをさらに含むことができるということが理解される。これらは、パネル、アッセイ、またはキットを用いるための指示、(例えば,診断または予後スコアを算出することにより)診断または予後の決定をするための指示、診断もしくは予後の決定、および/または治療効果のモニタリングなどに照らして、対象における治療または診断のインターベンションの好ましいもしくは望ましいモードに関係して、医師のための指示または他の推奨を含むことができる。
【0218】
[0237]いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のパネル、アッセイ、およびキットによって、本明細書中で論じられるタンパク質マーカーを検出することが容易になる。かかる血液、血漿および/または血清濃度を測定するための手段は、当技術分野で公知であり、例えば、イムノアッセイの使用を含む。
【0219】
[0238]前述した方法の他に、サンプル中のタンパク質のレベルを定量的に測定するための当技術分野で公知の任意の方法、例えば、非抗体に基づいた方法は、本明細書に記載した方法およびキットにおいて用いることができる。例えば、質量分析に基づいた(例えば、多重反応モニタリング(MRM)質量分析)またはHPLCに基づいた方法は、用いることができる。タンパク質定量化の方法[46~51に記載]。
【0220】
[0239]さらに、技術、例えば、プロテオミクスの分野および他の領域において用いられるものはまた、本明細書中に記載の方法、キットおよび他の態様で具体的に示すことができる。かかる技術には、例えば、マイクロおよびナノ流体チップ、バイオセンサーならびに、例えば、米国特許出願第2008/0202927号;米国特許出願第2014/0256573号;米国特許出願第2016/0153980号;国際公開第2016/001795号;米国特許出願第2008/0185295号;米国特許出願第2010/0047901号;米国特許出願第2010/0231242号;米国特許出願第2011/0154648号;米国特許出願第2013/0306491号;米国特許出願第2010/0329929号;米国特許出願第2013/0261009号;[63~70]に記載の他の技術の使用が含まれ、そのそれぞれは、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【実施例
【0221】
実施例1:末梢動脈疾患(PAD)を診断する臨床およびタンパク質マーカースコアリング系、パネルPAD158
[0240]2008年から2011年の間にインターベンションしたまたはしなかった冠動脈および/または末梢血管造影を行っている患者1251名の便宜的標本集団(convenience sample)を、前向きに登録した。最終の患者171名の経時的なサブセットを、これらのモデルのさらなるバリデーションにおいてこれらを潜在的に使用するために、本分析から差し引いた。さらに、(a)末梢カテーテル法を受け、冠動脈カテーテル法を受けなかった患者、または(b)末梢カテーテル法および冠動脈カテーテル法を受けたが、最大冠動脈閉塞が30%未満であった、または(c)冠動脈カテーテル法のみを受け、最大冠動脈閉塞が30%未満であり、PADの病歴がなかった患者のみを、本分析に組み入れて(n=353)、冠動脈疾患に関連する交絡タンパク質マーカーシグナルを最小限にした。カテゴリー(c)における患者は、末梢閉塞の代わりとしてPADの病歴のこれらの欠如を用いて、PAD閉塞が陰性であると仮定した。患者を、多数の理由のためにこれらの手順について参照し、これには、PADおよび/または冠動脈疾患を示す症候または、心臓弁膜手術の前の手術前に示す症候を追う血管造影が含まれる。
【0222】
[0241]インフォームドコンセントが得られた後、詳細な臨床および既存の変数ならびに血管造影についての照会の理由を、本手順の期間で記録した。冠動脈および/または末梢血管造影の結果を、各主要な動脈またはこれらの分枝内の最も高いパーセントの狭窄でやはり記録した。本分析の目的で、有意な末梢狭窄を、≧50%の管腔閉塞として特徴付けた。
【0223】
[0242]登録の期間からフォローアップの終了期間までの診療記録レビューを行った。臨床エンドポイントの同定のために、診療記録のレビューならびに患者による電話のフォローアップおよび/または内科医による管理を行った。社会保険死亡届(Social Security Death Index)および/または死亡通知の記帳を用いて、生命状態を確認した。次の臨床エンドイベントが、試験研究者により同定され、宣告され、記録された。すなわち、死亡、非致死性MI、HF、脳卒中、一過性脳虚血発作、末梢四肢切断を含めた末梢動脈合併症および/または冠動脈もしくは末梢血管血行再建術および不整脈の必要性である。任意の再発イベントの場合、それぞれ別々のイベントが、記録された。さらに、死亡が、心血管系の原因の存在/非存在について宣告された。
【0224】
[0243]血液15(15)ミリリットル(mL)を、中央に配置された血管アクセスシース(centrally-placed vascular access sheath)を通した血管造影手順の直前および直後に得た。血液を、直ちに15分間遠心し、血清および血漿を氷上でアリコートし、タンパク質マーカーの測定まで、-80℃で凍結した。本手順の直前に得られた血液のみを、本分析用に用いた。
【0225】
[0244]単回の凍結融解サイクル後、血漿200マイクロリットル(μl)を、Luminex 100/200 xMAPテクノロジープラットホームにおいて、100種を超えるタンパク質マーカーについて分析した。この技術は、単一の反応槽中でマルチプレックスな、ミクロスフェアに基づいたアッセイを利用する。これは、光学分類スキーム、生化学的アッセイ、フローサイトメトリーならびに高度なデジタル信号処理ハードウェアおよびソフトウェアを組み合わせる。マルチプレックス化は、特有の蛍光符号で標識したミクロスフェアセットに各タンパク質特異的アッセイを割り当てることにより達成される。アッセイ特異的キャプチャー抗体を、ミクロスフェアの各特有のセットに共有結合させる。各ミクロスフェア上のアッセイ特異的キャプチャー抗体は、目的のタンパク質を結合する。アッセイ-特異的な、ビオチン化検出抗体のカクテルを、ミクロスフェア混合物と反応させ、その後、ストレプトアビジン-標識蛍光「レポーター」分子と反応させる。フローサイトメーターと類似して、各個別のミクロスフェアが、一連の励起ビームを通るため、これを、サイズについて分析し、コードされる蛍光符号および生成された蛍光の量は、タンパク質レベルに比例する。各特有のセットから得られた、100個の個別のミクロスフェアの最小値を、分析し、タンパク質-特異的蛍光の中央値を記録する。公知の含量の内部対照を用いて、感受性のおよび定量的な結果は、データポイント当たり100個のミクロスフェアの分析により強化された精度により達成される。
【0226】
[0245]分析のために選択された患者は、冠動脈および/または末梢血管造影図を受けた、経時的に初回の患者1073名からなり、このうち、上記に記載されるPADの組み入れ基準をやはり通った最終の患者353名を、選択した。
【0227】
[0246]有効な患者が相対的に少数であるため、患者全員を選択して、分析のために用いた。(すなわち、患者を、訓練およびバリデーションセットに分割しなかった。)ベースライン臨床的特徴および少なくとも1つの主要な末梢動脈中の≧50%の末梢閉塞があるおよびない患者間のタンパク質濃度を比較し;二分類の変数を、両側Fisherの正確検定法を用いて比較し、連続変数を両側2サンプルT検定を用いて比較した。比較したタンパク質マーカーを、これらの濃度が通常分布しなかったため、ウィルコクソン順位和検定を用いて試験した。測定不可能であった任意のマーカーの結果の場合、本発明者らは、検出限界を50%下回る濃度を補完する標準的なアプローチを利用した。
【0228】
[0247]タンパク質マーカーの選択および診断モデルの開発のためのすべての作業を、分析に適格であった患者353名のうちのすべてに行った。すべてのタンパク質についてのレベルまたは濃度の値は、次の変換を行って、予測的な分析を容易にした。(a)これらを、対数-変換して、正規分布を達成し;(b)外れ値を、中央値絶対偏差を3回の値で切り;(c)これらの値を、ゼロ平均および単位分散による分布にスケール変更し直した。機械学習統計的手法、人工知能のサブセットを利用した。表1から得られたタンパク質の候補パネルおよび表2から得られた臨床特性を、最小角回帰(LARS)によって選択し、モデルを、400回繰り返すモンテカルロ交差検証を用いた、ロジスティック回帰分析による最小絶対値縮小および選択演算子(LASSO)を用いて、生成した。候補は、赤池情報量基準またはベイズ赤池情報量基準(AIC、BIC)の最小化法およびホスマー・レメショウ検定における適合度によってそれらの追加から得られたキャリブレーションの改善の評価と共に、ベースモデルにタンパク質マーカーを加えた曲線下面積(AUC)の変化を評価する反復モデルの構築によって、判別のさらなる評価を受けた。
【0229】
[0248]タンパク質マーカーおよび/または臨床変数の最終の組合せを選択した後、最終モデルを、母集団全体から得られたデータで構築した。多変量ロジスティック回帰分析によって、全体として母集団におけるならびにいくつかの関連するサブグループにおけるモデルの性能を評価して、いかに良くモデルが、男性対女性において行われ、年齢について補正するかを決定した。95%信頼区間(CI)を有する診断オッズ比(OR)を生成した。本発明者らは、母集団内のスコア分布を生成し、その後、AUCの関数としてスコアの大胆さを有する受信者動作特性(ROC)試験により生成した。スコアの動作特性を、感受性(Sn)、特異性(Sp)、生成された陽性および陰性的中率(PPV、NPV)によって算出した。本発明者らはまた、可能性のレベル(例えば、5段階スコアであり、スコア1は、患者が、PADの結果を有する可能性が極めて低いことまたは陰性を意味し、スコア3は、患者が、PADの結果を有する可能性が中間であることまたは陽性を意味し、スコア5は、患者が、PADの結果を有する可能性が極めて高いことまたは陽性を意味する)に、単一の診断スコアを変換するための方法に注目し、上記の動作特性(図5、実施例1)を有するこれらのレベルのそれぞれを評価した。本発明者らはまた、可能性のレベル(例えば、10段階スコアであり、スコア1は、患者が、PADの結果を有する可能性が極めて低いことまたは陰性を意味し、スコア5は、患者が、PADの結果を有する可能性が中間であることまたは陽性を意味し、スコア10は、患者が、PADの結果を有する可能性が極めて高いことまたは陽性を意味する)に、単一の診断スコアを変換するための方法に注目し、上記の動作特性(図6、実施例2)を有するこれらのレベルのそれぞれを評価した。最後に、PADが上昇したスコアの関数として最初の末梢血管血行再建術(バルーン、ステントもしくはバイパス術)イベントまでの時間を算出し、カプラン・マイヤー生存曲線として示し、ログランク検定を用いて比較した(図7、実施例1;図8、実施例2)。
【0230】
[0249]すべての統計を、Rソフトウェア、バージョン3.3またはより最近のもの(R Foundation for Statistical Computing、Vienna、AT)を用いて行い;p値は、両側であり、値<0.05は、有意であると考えられる。
【0231】
[0250]記載された方法の後、任意の1本の血管におけるPAD≧50%の閉塞の独立の予測因子には、6種のタンパク質マーカー(アンジオポエチン1、エオタキシン1、卵胞刺激ホルモン、インターロイキン23、腎臓障害分子1、およびミッドカイン)および1つの臨床変数(高血圧の病歴)が含まれた。タンパク質マーカーおよび臨床変数のこの組合せは、表3および図1、5および7中に示す通り、実施例1のパネルPAD158により表される。
【0232】
[0251]多変量ロジスティック回帰分析において、本発明者らのスコアは、すべての対象において重症PADが強く予測的であった(OR=13.79、95%CI8.06~23.58;p<0.001)。
【0233】
[0252]本発明者らは、個別のスコアを算出し、PADの存在の関数としての結果を表した。そうする上で、二峰性スコア分布が明らかになり、スコアがより高い患者における重症PADの罹患率はより高く、スコアがより低い患者の間で罹患率はより低かった。本発明者らはまた、末梢動脈疾患の診断および/またはPADの進行もしくは治療効果のモニタリングについての5点スコアを算出し、これは、それぞれスコアが高くなると共に狭窄が増加することが実証された(図5)。ROC試験では、任意の主要な末梢動脈の≧50%の閉塞の金標準の診断の場合、生成されたスコアは、サンプルAUCにおいて0.85であった(図1;p<0.001)。
【0234】
[0253]本明細書に開示される臨床およびタンパク質マーカースコアリング戦略によって、末梢動脈疾患(PAD)の存在を確実に診断することができる。PADの存在を診断するための信頼性のある臨床およびタンパク質マーカースコアの利点には、そのような技術が、対費用効果の高いやり方で広範に散在し、容易に解釈することができ、治療ステップの十分に定義された配列と関係するという事実が含まれる。
【0235】
[0254]実施例2:末梢動脈疾患(PAD)を診断する臨床およびタンパク質マーカースコアリング系、パネルPAD076
[0255]心血管系疾患試験においてカテーテルによって採取された血液記録(Catheter Sampled Blood Archive in Cardiovascular Diseases Study)[71~72]に登録された診断的末梢血管造影について参照される患者258名の前向きコホートにおいて、少なくとも1本の末梢血管中の≧50%の閉塞の予測因子を、50個を超える臨床変数および血管造影前に得られた血液中で測定した(血管疾患に妥当とみなせる関連により選択された)113種のタンパク質マーカーから同定し;タンパク質マーカーを、Luminex 100/200 xMAPテクノロジープラットホーム(Myriad RBM社、Austin、TX)を用いて測定した。候補の予測パネルを、最小角回帰(LARS)で創出し、予測モデルを、LASSOをロジスティック回帰分析と共に用いて生成した。タンパク質マーカーおよび/または臨床変数の最終の組合せを選択した後、最終モデルに由来するアルゴリズムを、母集団全体で構築し、同じ母集団内で評価して、PADを予測した。
【0236】
[0256]最終パネルは、2つの臨床変数(肥満度指数、高血圧の病歴)および6種のタンパク質マーカー(フェチュインA、インターロイキン8、腎臓障害分子1、オステオポンチン、T細胞特異的タンパク質RANTES、およびタム・ホースフォール尿糖タンパク質)からなった。特に、各タンパク質マーカーの類似の傾向は、心血管系疾患の発生、血管石灰化および/またはリスクと個別に関係している。[73~75]。最終は、受診者動作特性曲線(AUC)下サンプル面積中で閉塞性PADが0.76であった(図2、実施例2)。最適なカット-オフで、スコアは、閉塞性PADでは、感受性が63%、特異性が75%、陽性的中率(PPV)が84%、および陰性的中率(NPV)が50%であった。スコアが、低リスク(スコア≦3/10)群および高リスク(スコア≧7/10)群に分けられたとき、本発明者らは、各サブグループの閉塞性PADの場合、それぞれ、NPVが67%であり、PPVが100%であることを見出した(図6、実施例2)。スコアの上昇は、フォローアップ1年以内に血行再建術が予測され(年齢および性別が調整されたハザード比:2.1;p=0.00249);かかるリスクは、少なくとも5年まで延長した(図8、実施例2)。
【0237】
[0257]臨床情報プラスプロテオミクススクリーニングを利用するアプローチを用いて、本発明者らは、血管造影的に重要なPADを予測し、血行再建術の必要性に関する潜在的な予後情報を与える新規な方法を記載している。本モデルにおけるタンパク質マーカーはすべて、アテローム動脈硬化症および/または血管石灰化への妥当とみなせる生物学的な関連を有する。臨床的に、こうしたものなどのツールの使用は、画像診断または侵襲的試験前の門番役として働き得る。これは、血管合併症のリスクについてのリスクがある患者を評価するために用いることができ;それ自体として、PAD-関連イベントを高めるためにまたは薬物療法の有害作用についてのリスクがある患者を同定するために、臨床試験におけるある役割は、妥当とみなせる。
【0238】
[0258]実施例3:末梢四肢切断の予後についての臨床およびタンパク質マーカースコアリング系、パネルAMPU018
[0259]本実施例によって、他のものの中でもとりわけ、四肢切断の予後を示す上で、高い正確さを示す臨床およびタンパク質マーカースコアリング系を使用するさらに別の非侵襲的な方法が実証される。本実施例は、実施例1と同じ記載された方法(試験デザインおよび参加者、データ収得、フォローアップ、タンパク質マーカー試験、統計および結果(表1、2、および3ならびに図3)を利用した。実施例1と実施例3との間の主な差は、対象、臨床変数および利用されたタンパク質であり、アウトカムは、末梢四肢切断の予後であった。
【0239】
[0260]実施例4:大動脈弁狭窄症(AS)を診断する臨床およびタンパク質マーカースコアリング系、パネルASR025
[0261]本実施例によって、他のものの中でもとりわけ、重症大動脈弁狭窄症を診断する上で、高い正確さを示す臨床およびタンパク質マーカースコアリング系を使用するさらに別の非侵襲的な方法が実証される。
【0240】
[0262]本実施例は、対象、臨床変数、および利用したタンパク質を除いて、実施例1、2、および3(試験デザイン、データ収得、フォローアップ、タンパク質マーカー試験、統計および結果)と同じ記載された方法を利用し、アウトカムは、大動脈弁狭窄症の診断および/またはモニタリング(表1、2、および3ならびに図4、実施例4)であった。
【0241】
[0263]実施例5:心血管系疾患の診断用に臨床およびタンパク質マーカー分析を使用する方法のさらなる実証
[0264]表3は、タンパク質マーカー、任意選択で、所与のアウトカムについての対応するAUCを有する臨床変数を含む、異なるパネルのチャートである。これらは、前述の実施例1から4、ならびに本明細書において提供される方法および分析を用いて生成される追加のパネルを示す。
【0242】
[0265]表3-タンパク質マーカー、任意選択で、対応するAUCを有する臨床変数および図を含む、様々なアウトカムについての異なるパネルの性能
【0243】
【表3-1】
【0244】
【表3-2】
【0245】
【表3-3】
【0246】
【表3-4】
【0247】
[0266]実施例6:数学的な決定
[0267]線形モデルの形態における診断または予後アルゴリズムを、次の形態における数式により表す。
【0248】
[0268]診断スコア=a+b+b+…+b
式中、xからxまでは、モデル入力(例えば、タンパク質濃度または臨床情報など)であり、bからbは、モデルの係数であり、aは、「切片」項である。
【0249】
[0269]ここに、入力として3種のタンパク質濃度を含む、線形モデルの形態の診断アルゴリズムの一例がある。
[0270]診断スコア=3.5+1.8x+2.9x-1.3x
[0271]この場合では、タンパク質1および2は、係数が、(係数に先行するモデルにおいてプラス記号により示される通り)正であるため、疾患リスクに対する陽性効果を有する(より高い濃度は、より高いリスクになる)。タンパク質3は、係数が、(係数に先行するマイナス記号により示される通り)負であるため、疾患リスクに対して逆効果である(より低い濃度は、より高いリスクになる)。
【0250】
[0272]患者が、濃度0.5(タンパク質1)、2.5(タンパク質2)および1.5(タンパク質3)である場合、その場合、これらの濃度は、モデルに入力され、次が得られる。
【0251】
[0273]診断スコア=3.5+(1.80.5)+(2.92.5)-(1.31.5)=9.7
[0274]本モデルは、1つが、陽性、中間または陰性の結果として9.7を配置することが可能であり、アウトカムまたはイベントの診断(もしくは予後)の決定が可能になるカット-オフを有するはずである。
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上記参照文献のそれぞれを、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8