(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】半導体素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20231024BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20231024BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01L27/146 F
H01L27/146 D
H04N25/70
H01L31/10 A
(21)【出願番号】P 2020553049
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 JP2019039139
(87)【国際公開番号】W WO2020080124
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2018195110
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 良輔
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-126738(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139110(WO,A1)
【文献】特開2015-115420(JP,A)
【文献】特開2009-065163(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0308888(US,A1)
【文献】特開2013-135123(JP,A)
【文献】特開2018-037611(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016181(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/017350(WO,A1)
【文献】特開2011-151375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 25/70
H01L 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元配置された複数の受光単位領域を含む中央部の素子領域および前記素子領域の外側の周辺領域が設けられた素子基板と、
前記素子基板に対向する読出回路基板とを備え、
前記素子基板は、
前記素子領域に設けられ、化合物半導体材料を含む第1半導体層と、
前記第1半導体層と前記読出回路基板との間に設けられ、前記第1半導体層と前記読出回路基板とを電気的に接続する配線層と、
前記配線層と前記第1半導体層との間に設けられた第1パッシベーション膜と、
前記第1半導体層を間にして前記第1パッシベーション膜に対向する第2パッシベーション膜と
、
前記第1半導体層の厚み以上の厚みを有すると共に、前記素子領域および前記周辺領域にわたって設けられ、前記周辺領域において前記第1半導体層を囲む埋込層とを含み、
前記素子基板の前記周辺領域は、前記読出回路基板との接合面を有する
半導体素子。
【請求項2】
前記素子基板は、更に
、
前記埋込層と前記第1半導体層との間に設けられた第3パッシベーション膜とを含む
請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記第3パッシベーション膜と前記第1パッシベーション膜とは連続して設けられている
請求項2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記第3パッシベーション膜は、前記第1パッシベーション膜に接している
請求項2に記載の半導体素子。
【請求項5】
前記埋込層は、
前記周辺領域において前記第1半導体層の端面を覆うように設けられた第1埋込層と、
前記第1埋込層と前記読出回路基板との間、および前記第1半導体層と前記配線層との間に設けられた第2埋込層とを含む
請求項2に記載の半導体素子。
【請求項6】
前記第1パッシベーション膜は、前記素子領域および前記周辺領域にわたって延在し、前記第1埋込層と前記第2埋込層との間に設けられている
請求項5に記載の半導体素子。
【請求項7】
前記素子基板は、更に、
前記第1半導体層と前記配線層との間に設けられ、前記第1半導体層に電気的に接続された第1電極と、
前記第1半導体層を間にして前記第1電極に対向する第2電極とを含む
請求項1に記載の半導体素子。
【請求項8】
前記第1パッシベーション膜と前記第1半導体層との間に前記第1電極が設けられている
請求項7に記載の半導体素子。
【請求項9】
前記第1パッシベーション膜は、前記第1電極が埋設された開口を有する
請求項7に記載の半導体素子。
【請求項10】
前記素子基板は、更に、
前記第1半導体層と前記配線層との間に設けられ、前記第1半導体層に電気的に接続された第1電極と、
前記第1半導体層を間にして前記第1電極に対向する第2電極と、
前記周辺領域に、前記第2電極と前記読出回路基板とを電気的に接続するための接続部
とを有する
請求項2に記載の半導体素子。
【請求項11】
前記接続部は、前記埋込層に設けられた溝により構成され、
前記溝は、前記素子領域を囲むように設けられている
請求項10に記載の半導体素子。
【請求項12】
前記素子基板の前記素子領域は、前記周辺領域の前記接合面と同一平面上で、前記読出回路基板に接合されている
請求項1に記載の半導体素子。
【請求項13】
前記配線層は、前記周辺領域にも設けられている
請求項1に記載の半導体素子。
【請求項14】
前記化合物半導体材料は、赤外領域の波長の光を吸収する
請求項1に記載の半導体素子。
【請求項15】
前記化合物半導体材料は、InGaAs,InAsSb,InAs,InSbおよびHgCdTeのうちのいずれか1つである
請求項1に記載の半導体素子。
【請求項16】
更に、前記第1半導体層の前記読出回路基板との対向面とは反対面側に、オンチップレンズを有する
請求項1に記載の半導体素子。
【請求項17】
更に、前記素子基板に積層して設けられるとともに、フォトダイオードを含む第2半導体層を有する
請求項1に記載の半導体素子。
【請求項18】
化合物半導体材料を含む半導体層を形成し、
前記半導体層を仮基板に接合し、
前記半導体層を前記仮基板に接合した後、前記半導体層を覆う第1パッシベーション膜を形成し、
前記半導体層と前記仮基板との段差を埋める埋込層を形成し、
前記半導体層の前記仮基板との接合面と反対面に配線層を形成し、
前記配線層を間にして前記半導体層に読出回路基板を対向させ、前記配線層を介して前記半導体層と前記読出回路基板とを電気的に接続し、
前記半導体層に接合された前記仮基板を除去した後、前記半導体層を間にして前記第1パッシベーション膜に対向する第2パッシベーション膜を形成する
半導体素子の製造方法。
【請求項19】
更に、
前記第1パッシベーション膜に複数の開口を形成し、
前記複数の開口各々に、第1電極を埋設することを含む
請求項18に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項20】
更に、前記半導体層に電気的に接続された第1電極を形成することを含み、
前記第1電極を形成した後、前記第1パッシベーション膜を形成する
請求項18に記載の半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば赤外線センサ等に用いられる半導体素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、赤外領域に感度を有するイメージセンサ(赤外線センサ)が商品化されている。例えば、特許文献1に記載されているように、この赤外線センサに用いられる半導体素子では、例えばInGaAs(インジウムガリウム砒素)等のIII-V族半導体を含む光電変換層が用いられ、この光電変換層において、赤外線が吸収されることで電荷が発生する(光電変換が行われる)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
このような半導体素子では、III-V族半導体等の化合物半導体材料が、例えば水分等の外部からの影響を受け、信頼性が低下するおそれがある。
【0005】
したがって、化合物半導体材料を保護し、信頼性の低下を抑えることが可能な半導体素子およびその製造方法を提供することが望ましい。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る半導体素子は、2次元配置された複数の受光単位領域を含む中央部の素子領域および素子領域の外側の周辺領域が設けられた素子基板と、素子基板に対向する読出回路基板とを備えたものであり、素子基板は、素子領域に設けられ、化合物半導体材料を含む第1半導体層と、第1半導体層と読出回路基板との間に設けられ、第1半導体層と読出回路基板とを電気的に接続する配線層と、配線層と第1半導体層との間に設けられた第1パッシベーション膜と、第1半導体層を間にして第1パッシベーション膜に対向する第2パッシベーション膜と、第1半導体層の厚み以上の厚みを有すると共に、素子領域および周辺領域にわたって設けられ、周辺領域において第1半導体層を囲む埋込層とを含み、素子基板の前記周辺領域は、前記読出回路基板との接合面を有する。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る半導体素子では、第1パッシベーション膜と第2パッシベーション膜との間に第1半導体層が設けられているので、少なくとも第1半導体層は、両面(配線層側の面および配線層と反対側の面)側から保護される。
【0008】
本開示の一実施の形態に係る半導体素子の製造方法は、化合物半導体材料を含む半導体層を形成し、半導体層を仮基板に接合し、半導体層を仮基板に接合した後、半導体層を覆う第1パッシベーション膜を形成し、半導体層と仮基板との段差を埋める埋込層を形成し、半導体層の仮基板との接合面と反対面に配線層を形成し、配線層を間にして半導体層に読出回路基板を対向させ、配線層を介して半導体層と読出回路基板とを電気的に接続し、半導体層に接合された仮基板を除去した後、半導体層を間にして第1パッシベーション膜に対向する第2パッシベーション膜を形成するものである。
【0009】
本開示の一実施の形態に係る半導体素子の製造方法では、第1半導体層を間にして対向する第1パッシベーション膜および第2パッシベーション膜を形成するので、少なくとも第1半導体層は、両面(配線層側の面および配線層と反対側の面)側から保護される。
【0010】
尚、上記内容は本開示の一例である。本開示の効果は、上述したものに限らず、他の異なる効果であってもよいし、更に他の効果を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本開示の第1の実施の形態に係る受光素子の概略構成を表す平面模式図である。
【
図1B】
図1AのB-B’線に沿った断面構成を表す模式図である。
【
図2】
図1Bに示した接着層の構成の他の例(1)を表す断面模式図である。
【
図3】
図1Bに示した接着層の構成の他の例(2)を表す断面模式図である。
【
図4】
図1Aに示した受光素子の平面構成の他の例を表す模式図である。
【
図5A】
図1に示した受光素子の製造方法の一工程を説明するための断面模式図である。
【
図6】
図5Cの工程の一例を表す平面模式図である。
【
図7】
図6に示した半導体層の構成の他の例(1)を表す平面模式図である。
【
図8A】
図6に示した半導体層の構成の他の例(2)を表す平面模式図である。
【
図8B】
図8Aに示したB-B線に沿った断面構成を表す模式図である。
【
図11A】
図9Aに示した工程の平面構成の他の例(1)を表す模式図である。
【
図11B】
図9Bに示した工程の平面構成の他の例(1)を表す模式図である。
【
図12A】
図9Aに示した工程の平面構成の他の例(2)を表す模式図である。
【
図12B】
図9Bに示した工程の平面構成の他の例(2)を表す模式図である。
【
図13】
図9Bに示した工程の他の例(1)を表す断面模式図である。
【
図14】
図9Bに示した工程の他の例(2)を表す断面模式図である。
【
図16】変形例1に係る受光素子の概略構成を表す断面模式図である。
【
図17】
図16に示した受光素子の製造方法の一工程を説明するための断面模式図である。
【
図18】変形例2に係る受光素子の概略構成を表す断面模式図である。
【
図19】
図18に示した受光素子の他の例(1)を表す断面模式図である。
【
図20】
図18に示した受光素子の他の例(2)を表す断面模式図である。
【
図21】
図18等に示した受光素子の製造方法の一工程を説明するための断面模式図である。
【
図25】変形例3に係る受光素子の概略構成を表す断面模式図である。
【
図26】本開示の第2の実施の形態に係る受光素子の概略構成を表す断面模式図である。
【
図27】撮像素子を用いた電子機器(カメラ)の一例を表す機能ブロック図である。
【
図28】体内情報取得システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図29】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図30】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図31】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図32】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示における実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.第1の実施の形態(第1パッシベーション膜および第2パッシベーション膜を有する受光素子の例)
2.変形例1(第1パッシベーション膜が第1電極を間にして半導体層を覆う例)
3.変形例2(第1埋込層および第2埋込層を有する例)
4.変形例3(カラーフィルタおよびオンチップレンズを有する例)
4.第2の実施の形態(素子基板にシリコンを含む半導体層が積層された受光素子の例)
5.適用例1(撮像素子の例)
6.適用例2(電子機器の例)
7.応用例1(内視鏡手術システムへの応用例)
8.応用例2(移動体への応用例)
【0013】
<第1の実施の形態>
[構成]
図1A,
図1Bは、本開示の第1の実施の形態に係る半導体素子(受光素子1)の模式的な構成を表したものである。
図1Aは、受光素子1の平面構成を表し、
図1Bは、
図1AのB-B’線に沿った断面構成を表している。この受光素子1は、例えばIII-V族半導体などの化合物半導体材料を用いた赤外線センサ等に適用されるものであり、例えば、可視領域(例えば380nm以上780nm未満)~短赤外領域(例えば780nm以上2400nm未満)の波長の光に、光電変換機能を有している。この受光素子1には、例えば2次元配置された複数の受光単位領域P(画素P)が設けられている(
図1B)。
【0014】
受光素子1は、中央部の素子領域R1と、素子領域R1の外側に設けられ、素子領域R1を囲む周辺領域R2とを有している(
図1A)。受光素子1は、素子領域R1から周辺領域R2にわたって設けられた導電膜15Bを有している。この導電膜15Bは、素子領域R1の中央部に対向する領域に開口を有している。
【0015】
受光素子1は、素子基板10および読出回路基板20の積層構造を有している(
図1B)。素子基板10の一方の面は光入射面(光入射面S1)であり、光入射面S1と反対の面(他方の面)が、読出回路基板20との接合面(接合面S2)である。
【0016】
素子基板10は、読出回路基板20に近い位置にから、配線層10W、第1電極11、半導体層10S(第1半導体層)、第2電極15およびパッシベーション膜16をこの順に有している。半導体層10Sの配線層10Wとの対向面および端面(側面)は、パッシベーション膜17により覆われている。ここで、パッシベーション膜17が、本開示の「第1パッシベーション膜」および「第3パッシベーション膜」の一具体例に対応し、パッシベーション膜16が、本開示の「第2パッシベーション膜」の一具体例に対応する。
【0017】
読出回路基板20は、いわゆるROIC(Readout integrated circuit)であり、素子基板10の接合面S2に接する配線層20Wおよび多層配線層22Cと、この配線層20Wおよび多層配線層22Cを間にして素子基板10に対向する半導体基板21とを有している。
【0018】
素子基板10は素子領域R1に半導体層10Sを有している。換言すれば、半導体層10Sが設けられた領域が、受光素子1の素子領域R1である。素子領域R1のうち、導電膜15Bから露出された領域(導電膜15Bの開口に対向する領域)が、受光領域である。素子領域R1のうち、導電膜15Bで覆われた領域は、OPB(Optical Black)領域R1Bである。OPB領域R1Bは、受光領域を囲むように設けられている。OPB領域R1Bは、黒レベルの画素信号を得るために用いられる。素子基板10は、素子領域R1および周辺領域R2に、パッシベーション膜17とともに埋込層18を有している。周辺領域R2には、素子基板10を貫通し、読出回路基板20に達する穴H1,H2が設けられている。受光素子1では、素子基板10の光入射面S1から、パッシベーション膜16、第2電極15および第2コンタクト層14を介して半導体層10Sに光が入射するようになっている。半導体層10Sで光電変換された信号電荷は、第1電極11および配線層10Wを介して移動し、読出回路基板20で読みだされる。以下、各部の構成について説明する。
【0019】
配線層10Wは、素子領域R1および周辺領域R2にわたって設けられ、読出回路基板20との接合面S2を有している。受光素子1では、この素子基板10の接合面S2が素子領域R1および周辺領域R2に設けられ、例えば素子領域R1の接合面S2と周辺領域R2の接合面S2とは、同一平面を構成している。後述するように、受光素子1では、埋込層18を設けることにより周辺領域R2の接合面S2が形成される。
【0020】
配線層10Wは、例えば層間絶縁膜19A,19B中に、コンタクト電極19Eおよびダミー電極19EDを有している。例えば、読出回路基板20側に層間絶縁膜19Bが、第1コンタクト層12側に層間絶縁膜19Aが配置され、これら層間絶縁膜19A,19Bが積層して設けられている。層間絶縁膜19A,19Bは、例えば、無機絶縁材料により構成されている。この無機絶縁材料としては、例えば、窒化シリコン(SiN),酸化アルミニウム(Al2O3),酸化ケイ素(SiO2)および酸化ハフニウム(HfO2)等が挙げられる。層間絶縁膜19A,19Bを同一の無機絶縁材料により構成するようにしてもよい。
【0021】
コンタクト電極19Eは、例えば、素子領域R1に設けられている。このコンタクト電極19Eは、第1電極11と読出回路基板20とを電気的に接続するためのものであり、素子領域R1に画素P毎に設けられている。隣り合うコンタクト電極19Eは、埋込層18および層間絶縁膜19A,19Bにより電気的に分離されている。コンタクト電極19Eは、例えば銅(Cu)パッドにより構成されており、接合面S2に露出されている。ダミー電極19EDは、例えば、周辺領域R2に設けられている。このダミー電極19EDは、後述の配線層20Wのダミー電極22EDに接続されている。このダミー電極19EDおよびダミー電極22EDを設けることにより、周辺領域R2の強度を向上させることが可能となる。ダミー電極19EDは、例えば、コンタクト電極19Eと同一工程で形成されている。ダミー電極19EDは、例えば銅(Cu)パッドにより構成されており、接合面S2に露出されている。
【0022】
第1電極11は、配線層10Wと半導体層10Sとの間、より具体的には、コンタクト電極19Eと半導体層10Sとの間に設けられている。この第1電極11は、光電変換層13で発生した信号電荷(正孔または電子、以下便宜上、信号電荷が正孔であるとして説明する。)を読みだすための電圧が供給される電極(アノード)であり、素子領域R1に画素P毎に設けられている。第1電極11は、パッシベーション膜17の開口に埋設されており、半導体層10S(より具体的には、後述の拡散領域12A)に接している。第1電極11は、例えば、パッシベーション膜17の開口よりも大きく、第1電極11の一部は、埋込層18に設けられている。即ち、第1電極11の上面(半導体層10S側の面)は、拡散領域12Aに接し、第1電極11の下面および側面の一部は埋込層18に接している。隣り合う第1電極11は、パッシベーション膜17および埋込層18により電気的に分離されている。
【0023】
第1電極11は、例えば、チタン(Ti),タングステン(W),窒化チタン(TiN),白金(Pt),金(Au),ゲルマニウム(Ge),パラジウム(Pd),亜鉛(Zn),ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)のうちのいずれかの単体、またはそれらのうちの少なくとも1種を含む合金により構成されている。第1電極11は、このような構成材料の単膜であってもよく、あるいは、2種以上を組み合わせた積層膜であってもよい。例えば、第1電極11は、チタンおよびタングステンの積層膜により構成されている。第1電極11の厚みは、例えば数十nm~数百nmである。
【0024】
半導体層10Sは、例えば、配線層10Wに近い位置から、第1コンタクト層12、光電変換層13および第2コンタクト層14を含んでいる。第1コンタクト層12、光電変換層13および第2コンタクト層14は、互いに同じ平面形状を有し、各々の端面は、平面視で同じ位置に配置されている。
【0025】
第1コンタクト層12は、例えば、全ての画素Pに共通して設けられ、パッシベーション膜17と光電変換層13との間に配置されている。第1コンタクト層12は、隣り合う画素Pを電気的に分離するためのものであり、第1コンタクト層12には、例えば複数の拡散領域12Aが設けられている。第1コンタクト層12に、光電変換層13を構成する化合物半導体材料のバンドギャップよりも大きなバンドギャップの化合物半導体材料を用いることにより、暗電流を抑えることも可能となる。第1コンタクト層12には、例えばn型のInP(インジウムリン)を用いることができる。
【0026】
第1コンタクト層12に設けられた拡散領域12Aは、互いに離間して配置されている。拡散領域12Aは、画素P毎に配置され、それぞれの拡散領域12Aに第1電極11が接続されている。OPB領域R1Bにも拡散領域12Aが設けられている。拡散領域12Aは、光電変換層13で発生した信号電荷を画素P毎に読み出すためのものであり、例えば、p型不純物を含んでいる。p型不純物としては、例えばZn(亜鉛)等が挙げられる。このように、拡散領域12Aと、拡散領域12A以外の第1コンタクト層12との間にpn接合界面が形成され、隣り合う画素Pが電気的に分離されるようになっている。拡散領域12Aは、例えば第1コンタクト層12の厚み方向に設けられ、光電変換層13の厚み方向の一部にも設けられている。
【0027】
第1電極11と第2電極15との間、より具体的には、第1コンタクト層12と第2コンタクト層14との間の光電変換層13は、例えば、全ての画素Pに共通して設けられている。この光電変換層13は、所定の波長の光を吸収して、信号電荷を発生させるものであり、例えば、i型のIII-V族半導体などの化合物半導体材料により構成されている。光電変換層13を構成する化合物半導体材料としては、例えば、InGaAs(インジウムガリウム砒素),InAsSb(インジウム砒素アンチモン),InAs(インジウム砒素),InSb(インジムアンチモン)およびHgCdTe(水銀カドミウムテルル)等が挙げられる。Ge(ゲルマニウム)により光電変換層13を構成するようにしてもよい。光電変換層13では、例えば、可視領域から短赤外領域の波長の光の光電変換がなされるようになっている。
【0028】
第2コンタクト層14は、例えば、全ての画素Pに共通して設けられている。この第2コンタクト層14は、光電変換層13と第2電極15との間に設けられ、これらに接している。第2コンタクト層14は、第2電極15から排出される電荷が移動する領域であり、例えば、n型の不純物を含む化合物半導体により構成されている。第2コンタクト層14には、例えば、n型のInP(インジウムリン)を用いることができる。
【0029】
第2電極15は、例えば各画素Pに共通の電極として、第2コンタクト層14上(光入射側)に、第2コンタクト層14に接するように設けられている。第2電極15は、光電変換層13で発生した電荷のうち、信号電荷として用いられない電荷を排出するためのものである(カソード)。例えば、正孔が、信号電荷として第1電極11から読み出される場合には、この第2電極15を通じて例えば電子を排出することができる。第2電極15は、例えば赤外線などの入射光を透過可能な導電膜により構成されている。第2電極15には、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)またはITiO(In2O3-TiO2)等を用いることができる。このような第2電極15がパッシベーション機能を有していてもよい。パッシベーション機能とは、外部から半導体層10Sへの影響を抑える保護機能であり、例えば、外部から半導体層10Sへの水分の浸入を抑える機能(防湿機能)を含む。第2電極15は、例えば、隣り合う画素Pを仕切るように、格子状に設けられていてもよい。この第2電極15には、光透過性の低い導電材料を用いることが可能である。
【0030】
パッシベーション膜16は、第2電極15を光入射面S1側から覆っており、半導体層10Sを間にしてパッシベーション膜17に対向している。このパッシベーション膜16は、パッシベーション機能とともに、反射防止機能を有していてもよい。パッシベーション膜16には、例えば窒化シリコン(SiN),酸化アルミニウム(Al
2O
3),酸化シリコン(SiO
2)および酸化タンタル(Ta
2O
3)等を用いることができる。パッシベーション膜16の厚みは、例えば、100nm~200nm程度である。パッシベーション膜16は、OPB領域R1Bに開口16Hを有している。開口16Hは、例えば、受光領域を囲む額縁状に設けられている(
図1A)。開口16Hは、例えば平面視で四角形状または円状の孔であってもよい。このパッシベーション膜16の開口16Hにより、第2電極15に導電膜15Bが電気的に接続されている。
【0031】
パッシベーション膜17は、例えば、半導体層10Sに接して設けられている。このパッシベーション膜17は、素子領域R1において第1コンタクト層12(半導体層10S)と配線層10Wとの間に設けられるとともに、周辺領域R2の埋込層18と半導体層10Sとの間に設けられている。パッシベーション膜17は、例えば、半導体層10Sの配線層10Wとの対向面と、半導体層10S各層の端面とを連続して覆っている。半導体層10S各層の端面は、全周にわたって(素子領域R1の縁全部にわたって)パッシベーション膜17におおわれている。このパッシベーション膜17は、素子領域R1および周辺領域R2にわたって設けられ、周辺領域R2では、パッシベーション膜16に接している。
【0032】
本実施の形態では、このように、パッシベーション膜17とパッシベーション膜16との間に半導体層10Sが設けられている。したがって、半導体層10Sの接合面S2側の面は、パッシベーション膜17に保護され、半導体層10Sの光入射面S1側の面がパッシベーション膜16に保護される。これにより、例えば、水分の浸入等、外部から半導体層10Sへの影響が抑えられる。また、パッシベーション膜17が、半導体層10Sの配線層10Wとの対向面から連続して、半導体層10S各層の端面を覆っているので、より効果的に半導体層10Sを保護することができる。更に、このパッシベーション膜17が、周辺領域R2でパッシベーション膜16に接することにより、より半導体層10Sの保護機能を高めることができる。
【0033】
上記のように、パッシベーション膜17は、第1コンタクト層12と対向する領域に、第1電極11が埋設された複数の開口を有している。このパッシベーション膜17の開口では、第1電極11により半導体層10Sへの水分の浸入が抑えられる。
【0034】
パッシベーション膜17は、バッシベーション機能を有しており、例えば、窒化シリコン(SiN)等により構成されている。パッシベーション膜17は、酸化シリコン(SiOX)または酸化アルミニウム(Al2O3)等の酸化物を含んで構成されていてもよい。複数の膜からなる積層構造によりパッシベーション膜17を構成するようにしてもよい。パッシベーション膜17は、例えば酸窒化シリコン(SiON),炭素含有酸化シリコン(SiOC)およびシリコンカーバイド(SiC)などのシリコン(Si)系絶縁材料により構成するようにしてもよい。パッシベーション膜17の厚みは、例えば100nm~200nm程度である。
【0035】
導電膜15Bは、OPB領域R1Bから周辺領域R2の穴H1にわたって設けられている。この導電膜15Bは、OPB領域R1Bに設けられたパッシベーション膜16の開口16Hで第2電極15に接するとともに、穴H1を介して読出回路基板20の配線(後述の配線22CB)に接している。これにより、読出回路基板20から導電膜15Bを介して第2電極15に電圧が供給されるようになっている。導電膜15Bは、このような第2電極15への電圧供給経路として機能するとともに、遮光膜としての機能を有し、OPB領域R1Bを形成する。導電膜15Bは、例えば、タングステン(W),アルミニウム(Al),チタン(Ti),窒化チタン(TiN),モリブデン(Mo),タンタル(Ta)または銅(Cu)を含む金属材料により構成されている。このような導電膜15Bがパッシベーション機能を有していてもよく、あるいは、導電膜15B上にパッシベーション膜が設けられていてもよい。
【0036】
第2コンタクト層14の端部と第2電極15との間に、接着層Bが設けられていてもよい。この接着層Bは、後述するように、受光素子1を形成する際に用いられるものであり、半導体層10Sを仮基板(後述の
図5Cの仮基板33)に接合する役割を担っている。接着層Bは、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)または酸化シリコン(SiO
2)等により構成されている。接着層Bは、例えば、半導体層10Sの端面よりも拡幅して設けられ、半導体層10Sとともに、埋込層18に覆われている。接着層Bと埋込層18との間には、パッシベーション膜17が設けられている。
【0037】
図2および
図3は、接着層Bの構成の他の例を表している。接着層Bは、周辺領域R2の広い領域にわたって設けられていてもよく、例えば、半導体層10S(素子領域R1)の縁近傍から、穴H1と穴H2との間まで延在していてもよい(
図2)。あるいは、接着層Bは、半導体層10S(素子領域R1)の縁近傍から、チップ端(チップ端E)まで延在していてもよい。
【0038】
埋込層18は、受光素子1の製造工程で、仮基板(後述の
図5Cの仮基板33)と半導体層10Sとの段差を埋めるためのものである。詳細は後述するが、本実施の形態では、この埋込層18を形成するので、半導体層10Sと仮基板33との段差に起因した製造工程の不具合の発生が抑えられる。
【0039】
周辺領域R2の埋込層18は、配線層10Wとパッシベーション膜17との間、および配線層10Wとパッシベーション膜16との間に設けられ、例えば、半導体層10Sの厚み以上の厚みを有している。ここでは、この埋込層18が半導体層10Sを囲んで設けられているので、半導体層10Sの周囲の領域(周辺領域R2)が形成される。これにより、この周辺領域R2に読出回路基板20との接合面S2を設けることができるようになっている。周辺領域R2に接合面S2が形成されていれば、埋込層18の厚みを小さくしてもよいが、埋込層18が半導体層10Sを厚み方向にわたって覆い、半導体層10Sの端面全面が埋込層18に覆われていることが好ましい。埋込層18が、パッシベーション膜17を介して半導体層10Sの端面全面を覆うことにより、半導体層10Sへの水分の浸入を効果的に抑えることができる。素子領域R1の埋込層18は、第1電極11を覆うように、半導体層10Sと配線層10Wとの間に設けられている。
【0040】
接合面S2側の埋込層18の面は平坦化されており、周辺領域R2では、この平坦化された埋込層18の面に配線層10Wが設けられている。埋込層18には、例えば、酸化シリコン(SiOX),窒化シリコン(SiN),酸窒化シリコン(SiON),炭素含有酸化シリコン(SiOC)およびシリコンカーバイド(SiC)等の無機絶縁材料を用いることができる。
【0041】
後述するように、受光素子1を製造する工程では、埋込層18を形成した後、埋込層18の上方に、層間絶縁膜19A,19Bとコンタクト電極19Eとを含む配線層10Wが形成される(後述の
図15D)。この配線層10Wを含む素子基板10に、配線層20Wを含む読出回路基板20が貼り合わされて(後述の
図15E)受光素子1が形成される。このとき、配線層10Wのコンタクト電極19Eと、配線層20Wのコンタクト電極22Eとが接続される。コンタクト電極19E,22Eは、例えばCuパッドを有しており、このCuパッドの直接接合により、コンタクト電極19E,22E接続されるようになっている。コンタクト電極19EをCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて形成するとき、研磨対象の銅膜の下方に配置された埋込層18には、研磨時の応力に耐え得る硬度が求められる。また、コンタクト電極19E,22EのCuパッド同士を直接接合させるためには、素子基板10および読出回路基板20を極めて平坦に形成することが必要である。このため、銅膜の下方に配置される埋込層18は、研磨時の応力に耐え得る硬度を有していることが好ましい。具体的には、埋込層18の構成材料は、一般的な半導体パッケージにおいてダイの周囲に配置される封止剤や有機材料よりも硬度が高い材料であることが好ましい。このような高い硬度を有する材料としては、例えば、無機絶縁材料が挙げられる。この無機絶縁材料を、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタ法あるいはコーティング法で成膜することにより、埋込層18を形成することができる。
【0042】
周辺領域R2には、埋込層18を貫通する穴H1,H2が設けられている。この穴H1,H2は、埋込層18とともに、配線層10Wを貫通し、読出回路基板20に達している。穴H1,H2は、例えば、四角形状の平面形状を有し、素子領域R1を囲むように、各々複数の穴H1,H2が設けられている(
図1A)。穴H1は、穴H2よりも素子領域R1に近い位置に設けられており、穴H1の側壁および底面は、導電膜15Bに覆われている。この穴H1は、第2電極15(導電膜15B)と読出回路基板20の配線(後述の配線22CB)とを接続するためのものであり、パッシベーション膜16、埋込層18および配線層10Wを貫通して設けられている。穴H1に代えて、周辺領域R2に設けた溝(例えば、後述の
図4の溝G)により、導電膜15Bと読出回路基板20の配線とを電気的に接続するようにしてもよい。
【0043】
図4は、導電膜15Bと読出回路基板20の配線とを電気的に接続するための溝Gの平面構成の一例を表している。この溝Gは、素子領域R1を囲むように設けられている。即ち、溝Gは、お堀状に設けられている。溝Gは、穴H1と同様に、例えば、パッシベーション膜16、埋込層18および配線層10Wを貫通して設けられ、溝Gの側面および底面には導電膜15Bが設けられている。お堀状の溝Gを設けることにより、外部から半導体層10Sへの影響をより効果的に抑えることができる。溝Gまたは穴H1が、本開示の「接続部」の一具体例に対応する。
【0044】
穴H2は、例えば、穴H1(または溝G)よりもチップ端Eに近い位置に設けられている。この穴H2は、パッシベーション膜16、埋込層18および配線層10Wを貫通し、読出回路基板20のパッド電極(後述のパッド電極22P)に達している。この穴H2を介して、外部と受光素子1との電気的な接続が行われるようになっている。穴H1,H2は、読出回路基板20に達していなくてもよい。例えば、穴H1,H2が、配線層10Wの配線に達し、この配線が読出回路基板20の配線22CB、パッド電極22Pに接続されていてもよい。穴H1,H2は、接着層Bを貫通していてもよい(
図2,
図3)。
【0045】
光電変換層13で発生した正孔および電子は、第1電極11および第2電極15から読み出される。この読出し動作を高速に行うためには、第1電極11と第2電極15との間の距離を、光電変換するに足る距離であってかつ離間し過ぎない距離にすることが好ましい。即ち、素子基板10の厚みを小さくすることが好ましい。例えば、第1電極11と第2電極15との間の距離または素子基板10の厚みは、10μm以下、さらには、7μm以下、さらには5μm以下である。
【0046】
読出回路基板20の半導体基板21は、配線層20Wおよび多層配線層22Cを間にして、素子基板10に対向している。この半導体基板21は、例えば、シリコン(Si)により構成されている。半導体基板21の表面(配線層20W側の面)近傍には、複数のトランジスタが設けられている。例えば、この複数のトランジスタを用いて、画素P毎に、読出回路(Read Out Circuit)が構成されている。配線層20Wは、例えば、素子基板10側から、層間絶縁膜22Aおよび層間絶縁膜22Bをこの順に有しており、これら層間絶縁膜22A,22Bは積層して設けられている。例えば、層間絶縁膜22A中に、コンタクト電極22Eおよびダミー電極22EDが設けられている。多層配線層22Cは、配線層20Wを間にして素子基板10に対向して設けられている。例えば、この多層配線層22C中に、パッド電極22Pおよび複数の配線22CBが設けられている。層間絶縁膜22A,22Bは、例えば、無機絶縁材料により構成されている。この無機絶縁材料としては、例えば、窒化シリコン(SiN),酸化アルミニウム(Al2O3),酸化ケイ素(SiO2)および酸化ハフニウム(HfO2)等が挙げられる。
【0047】
コンタクト電極22Eは、第1電極11と配線22CBとを電気的に接続するためのものであり、素子領域R1に、画素P毎に設けられている。このコンタクト電極22Eは、素子基板10の接合面S2でコンタクト電極19Eに接している。隣り合うコンタクト電極22Eは、層間絶縁膜22Aにより電気的に分離されている。
【0048】
周辺領域R2に設けられたダミー電極22EDは、素子基板10の接合面S2でダミー電極19EDに接している。このダミー電極22EDは、例えば、コンタクト電極22Eと同一工程で形成されている。コンタクト電極22Eおよびダミー電極22EDは、例えば銅(Cu)パッドにより構成されており、読出回路基板20の素子基板10との対向面に露出されている。即ち、コンタクト電極19Eとコンタクト電極22Eとの間、および、ダミー電極19EDとダミー電極22EDとの間で例えばCuCu接合がなされている。詳細は後述するが、これにより、画素Pを微細化することが可能となる。
【0049】
コンタクト電極19Eに接続された配線22CBは、半導体基板21の表面近傍に設けられたトランジスタに接続されており、画素P毎に、第1電極11と読出回路とが接続されるようになっている。穴H1を介して導電膜15Bに接続された配線22CBは、例えば所定の電位に接続されている。このように、光電変換層13で発生した電荷の一方(例えば、正孔)は、第1電極11から、コンタクト電極19E,22Eを介して読出回路に読み出され、光電変換層13で発生した電荷の他方(例えば、電子)は、第2電極15から、導電膜15Bを介して、所定の電位に排出されるようになっている。
【0050】
周辺領域R2に設けられたパッド電極22Pは、外部と電気的な接続を行うためのものである。受光素子1のチップ端E近傍には、素子基板10を貫通し、パッド電極22Pに達する穴H2が設けられ、この穴H2を介して外部と電気的な接続がなされるようになっている。接続は、例えば、ワイヤーボンドまたはバンプ等の方法によりなされる。例えば、穴H2内に配置された外部端子から、第2電極15に、穴H2読出回路基板20の配線22CBおよび導電膜15Bを介して所定の電位が供給されるようになっていてもよい。光電変換層13での光電変換の結果、第1電極11から読み出された信号電圧が、コンタクト電極19E,22Eを介して、半導体基板21の読出回路に読み出され、この読出回路を経由して穴H2内に配置された外部端子に出力されるようになっていてもよい。信号電圧は、読出回路とともに、例えば、読出回路基板20に含まれる他の回路を経由して外部端子に出力されるようになっていてもよい。他の回路とは、例えば、信号処理回路および出力回路等である。
【0051】
読出回路基板20の厚みは、素子基板10の厚みよりも大きいことが好ましい。例えば、読出回路基板20の厚みは、素子基板10の厚みよりも、2倍以上、さらには、5倍以上、さらには、10倍以上大きいことが好ましい。あるいは、読出回路基板20の厚みは、例えば、100μm以上、あるいは、150μm以上、あるいは、200μm以上である。このような大きな厚みを有する読出回路基板20により、受光素子1の機械強度が確保される。なお、この読出回路基板20は、回路を形成する半導体基板21を1層のみ含むものであってもよいし、回路を形成する半導体基板21の他に、支持基板などの基板をさらに備えていてもよい。
【0052】
[受光素子1の製造方法]
受光素子1は、例えば次のようにして製造することができる。
図5A~
図15Jは、受光素子1の製造工程を工程順に表したものである。
【0053】
まず、
図5Aに示したように、例えばInPからなる成長基板31上に、半導体層10Sをエピタキシャル成長させる。成長基板31の厚みは、例えば、数百μmであり、半導体層10Sの厚みは、例えば、数μmである。この後、
図5Bに示したように、半導体層10S上に接着層Bを成膜する。成長基板31の口径は、例えば、6インチ以下である。半導体層10Sの形成は、例えば、第1コンタクト層12を構成するn型のInP、光電変換層13を構成するi型のInGaAsおよび第2コンタクト層14を構成するn型のInPをこの順にエピタキシャル成長させて行う。成長基板31上に、例えばバッファ層およびストッパ層を形成した後に、半導体層10Sを形成するようにしてもよい。
【0054】
次に、
図5Cに示したように、接着層Bを間にして、仮基板33に、半導体層10Sを形成した成長基板31を接合する。仮基板33は、例えば、絶縁層(絶縁層33IA)と、基板33Sを有している。絶縁層33IAは、例えば、接着層Bと基板33Sとの間に配置されている。仮基板33には、成長基板31よりも大きな口径のものを用い、基板33Sには例えば、シリコン(Si)基板を用いる。仮基板33の口径は、例えば8インチ~12インチである。小口径の成長基板31を大口径の仮基板33に接合させることにより、素子基板10を形成する際に大口径の基板用の種々の装置を用いることが可能となる。これにより、例えば、読出回路基板20と素子基板10との接合をCuCu接合にし、画素Pを微細化することができる。仮基板33への成長基板31の接合は、プラズマ活性化接合,常温接合または接着剤を使用した接合(接着剤接合)等により行うようにしてもよい。このように、例えばウェハ状の半導体層10Sを仮基板33に接合する。仮基板33の厚みは、例えば、数百μmである。
【0055】
図6および
図7は、仮基板33および半導体層10S(成長基板31)の平面構成の一例を表している。ウェハ状態の仮基板33に、仮基板33よりも小さいウェハ状態の半導体層10Sを接合するようにしてもよく(
図6)、ウェハ状態の仮基板33に、チップ状態の半導体層10Sを互いに離間した状態で複数接合するようにしてもよい(
図7)。
【0056】
あるいは、
図8A,
図8Bに示したように、ウェハ状態の仮基板33に、仮基板33と同じ大きさのウェハ状態の半導体層10Sを接合するようにしてもよい。
図8Aは、仮基板33および半導体層10S(成長基板31)の平面構成を表し、
図8Bは、
図8AのB-B線に沿った断面構成を表している。
【0057】
半導体層10Sを形成した成長基板31を仮基板33に接合した後、
図9Aに示したように、成長基板31を除去する。成長基板31の除去は、機械研削,CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨),ウェットエッチングまたはドライエッチング等により行うことができる。このとき、成長基板31が一部残っていてもよい。また、半導体層10Sが一部エッチングされてもよい。
【0058】
続いて、
図9Bに示したように、例えば、仮基板33のマークに合わせて半導体層10Sを所定の大きさにエッチングする。これにより、複数のチップ状態の半導体層10Sが形成される。
図9B以降は、複数のチップ状態の半導体層10Sのうち、2つの半導体層10Sを図示する。
【0059】
図10Aは、成形前の半導体層10Sの平面構成の一例を表し、
図10Bは、
図10Aに続く成形後の半導体層10Sの平面構成の一例を表している。
図11Aは、成形前の半導体層10Sの平面構成の他の例を表し、
図11Bは、
図11Aに続く成形後の半導体層10Sの平面構成の他の例を表している。このように、仮基板33よりも小さい(
図10A)あるいは仮基板33と同じ大きさ(
図11A)のウェハ状態の半導体層10Sが、複数のチップ状態の半導体層10Sに成形される。
【0060】
あるいは、
図12A,
図12Bに示したように、チップ状態の複数の半導体層10Sが、より小さいチップ状態の複数の半導体層10Sに成形されてもよい。
【0061】
この半導体層10Sのエッチングの際、接着層Bは例えば、半導体層10Sとともに、エッチングされる。接着層Bは、半導体層10Sよりも拡幅して残存し、半導体層10Sの周囲に接着層Bが広がっていてもよい(
図9B)。
【0062】
あるいは、
図13に示したように、接着層Bが、半導体層10Sよりも狭まり、半導体層10Sと仮基板33との間に空隙が生じていてもよい。接着層Bは、半導体層10Sと同じ大きさにエッチングされてもよい。
【0063】
図14に示したように、半導体層10Sのエッチングの際に、接着層Bはエッチングされなくてもよい。
【0064】
半導体層10Sを成形した後、
図15Aに示したように、半導体層10Sに、画素P毎に拡散領域12Aを形成する。これにより、素子分離がなされる。拡散領域12Aの形成には、例えば、パッシベーション膜17をハードマスクとして用いる。具体的には、半導体層10Sの上面(仮基板33との接合面と反対の面)および側面を覆うようにパッシベーション膜17を成膜した後、半導体層10Sの上面を覆うパッシベーション膜17にエッチングにより開口を形成する。その後、パッシベーション膜17をハードマスクとしてp型不純物の気相拡散を行う。これにより選択的な領域に拡散領域12Aが形成される。拡散深さは、例えば、数百nmであり、略等方拡散される。拡散領域12Aは、レジストマスクを用いてイオンインプラテーション等により形成するようにしてもよい。ここでは、大口径の仮基板33上に設けられた半導体層10Sに拡散領域12Aを形成するので、画素Pを微細化することが可能となる。
【0065】
半導体層10Sに拡散領域12Aを設けた後、
図15Bに示したように、半導体層10S上に、第1電極11を形成する。例えば、第1電極11は、パッシベーション膜17に設けた開口に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法,PVD(Physical Vapor Deposition)法,ALD(Atomic Layer Deposition)法または蒸着法等によりチタン(Ti)/タングステン(W)の積層膜を成膜した後、この積層膜をフォトリソグラフィおよびエッチングを用いてパターニングすることにより形成する。
【0066】
第1電極11を形成した後、
図15Cに示したように、仮基板33の全面に埋込層18を形成する。埋込層18は、例えば、仮基板33の全面に半導体層10Sを埋め込むように絶縁材料を成膜した後、これをCMP(Chemical Mechanical Polishing)により平坦化して形成する。これにより、半導体層10Sの周囲(周辺領域R2)および、半導体層10Sの上面(仮基板33から最も離れた面)を覆う埋込層18が形成される。詳細は後述するが、本実施の形態では、このように半導体層10Sと仮基板33との段差を埋める埋込層18が形成されるので、これらの段差に起因した製造工程の不具合の発生が抑えられる。
【0067】
埋込層18を形成した後、
図15Dに示したように、埋込層18を間にして半導体層10Sに対向する配線層10Wを形成する。例えば、埋込層18上に、層間絶縁膜19Aおよび層間絶縁膜19Bをこの順に成膜した後、層間絶縁膜19A,19Bの第1電極11に対向する領域に開口を形成する。この層間絶縁膜19A,19Bの開口に、蒸着法,PVD法またはメッキ法等により銅(Cu)膜を成膜した後、例えばCMP法を用いて銅膜の表面を研磨することによりコンタクト電極19Eを形成する。例えば、このコンタクト電極19Eの形成工程と同一工程で、周辺領域R2にはダミー電極19ED(
図1B)を形成する。ここでは、大口径の仮基板33上に配線層10Wを形成するので、大口径の基板用の種々の装置を用いることが可能となる。
【0068】
配線層10Wを形成した後、
図15Eに示したように、配線層10Wを間にして、仮基板33に読出回路基板20を貼り合わせる。このとき、読出回路基板20には、予め配線層20Wを形成しておく。読出回路基板20の配線層20Wは、コンタクト電極22E、ダミー電極22EDを有しており、読出回路基板20を仮基板33に貼り合わせる際には、例えば、配線層20Wのコンタクト電極22E、ダミー電極22EDと配線層10Wのコンタクト電極19E、ダミー電極19EDとがCuCu接合される。より具体的には、素子領域R1では、コンタクト電極19Eとコンタクト電極22Eとが接合された接合面S2が形成され、周辺領域R2ではダミー電極19EDとダミー電極22EDとが接合された接合面S2が形成される。ここでは、素子基板10の周辺領域R2も、読出回路基板20に接合される。
【0069】
仮基板33に読出回路基板20を貼り合わせた後、
図15Fに示したように、仮基板33を除去する。仮基板33は、例えば、機械研削,ウェットエッチングまたはドライエッチング等を用いることにより除去することができる。
【0070】
仮基板33を除去した後、
図15Gに示したように、接着層B等も除去し、半導体層10Sの表面を露出させる。このとき、半導体層10Sの不要な層を除去するようにしてもよい。また、半導体層10S開口部以外の絶縁層33IAまたはパッシベーション膜17を一部残すようにしてもよく、あるいは、埋込層18を途中まで掘り込んでもよい。
【0071】
続いて、
図15Hに示したように、仮基板33が除去されることにより露出された半導体層10Sの面(配線層10Wが設けられた面と反対の面)上に第2電極15およびパッシベーション膜16をこの順に形成する。その後、
図15Iに示したように、穴H1および導電膜15Bを形成する。これにより、第2電極15と読出回路基板20とが電気的に接続される。
【0072】
最後に、
図15Jに示したように、素子基板10を貫通し、読出回路基板20のパッド電極22Pに達する穴H2を形成する。これにより、
図1A,
図1Bに示した受光素子1が完成する。
【0073】
[受光素子1の動作]
受光素子1では、パッシベーション膜16、第2電極15および第2コンタクト層14を介して、光電変換層13へ光(例えば可視領域および赤外領域の波長の光)が入射すると、この光が光電変換層13において吸収される。これにより、光電変換層13では正孔(ホール)および電子の対が発生する(光電変換される)。このとき、例えば第1電極11に所定の電圧が印加されると、光電変換層13に電位勾配が生じ、発生した電荷のうち一方の電荷(例えば正孔)が、信号電荷として拡散領域12Aに移動し、拡散領域12Aから第1電極11へ収集される。この信号電荷が、コンタクト電極19E,22Eを通じて半導体基板21に移動し、画素P毎に読み出される。
【0074】
[受光素子1の作用・効果]
本実施の形態の受光素子1は、半導体層10Sと配線層10Wとの間に設けられたパッシベーション膜17と、半導体層10Sを間にしてパッシベーション膜17に対向するパッシベーション膜16とを含んでいる。
【0075】
仮に、半導体層10Sと配線層10Wとの間には、パッシベーション機能を有さない絶縁膜を設け、半導体層10Sの光入射面S1側のみをパッシベーション膜16で覆った場合には、半導体層10Sを十分に保護することができないおそれがある。例えば、外部から半導体層10Sに水分が侵入すると、受光素子の信頼性が低下する。
【0076】
これに対し、本実施の形態では、半導体層10Sの両面(接合面S2側の面および光入射面S1側の面)が、パッシベーション膜16,17により覆われるので、半導体層10Sが効果的に保護される。したがって、半導体層10Sへの外部からの影響を抑え、受光素子1の信頼性の低下を抑えることができる。
【0077】
また、受光素子1では、パッシベーション膜17が、半導体層10Sの接合面S2側の面から連続して、半導体層10S各層の端面を覆っているので、より効果的に半導体層10Sを保護することができる。更に、パッシベーション膜17は、周辺領域R2でパッシベーション膜16に接しているので、半導体層10Sのほぼ全面がパッシベーション膜16,17で覆われる。よって、半導体層10Sを更に効果的に保護することができる。
【0078】
また、本実施の形態の受光素子1は、素子基板10の周辺領域R2に埋込層18を有しており、周辺領域R2にも読出回路基板20との接合面S2が設けられている。この埋込層18は、受光素子1を形成する際に半導体層10Sと仮基板33との段差を埋めるためのものであり、この埋込層18を形成することにより、半導体層10Sと仮基板33との段差に起因した製造工程の不具合の発生を抑えることができる。以下、これについて説明する。
【0079】
半導体層10Sをエピタキシャル成長させるための成長基板31は、その種類が制限されている。例えばInGaAsからなる光電変換層13を成長させるための成長基板31には、大口径のものが存在しない。この小口径の成長基板31を用いて画素P毎に拡散領域12Aを形成し、あるいは配線層10Wを形成する場合、装置の制約等から、画素Pの微細化を行うことが困難である。このため、大口径の仮基板33を用いて受光素子を製造する方法が考え得る。
【0080】
しかしながら、埋込層(
図15Cの埋込層18)を形成せずに受光素子を製造すると、仮基板33と半導体層10Sとの段差が大きい状態で半導体層10S上に配線層10Wが形成される。このため、配線層10Wを形成する際のフォトリソグラフィでデフォーカスが生じるおそれがある。また、銅膜のCMPを行ってコンタクト電極19Eを形成する際に、銅が段差部分に残るおそれがある。更に、段差があるため、仮基板33に読出回路基板20を貼り合わせる際に、接合不良が生じるおそれがある。
【0081】
これに対し、受光素子1では、埋込層18を形成することにより、半導体層10Sと仮基板33との段差を小さく、もしくは段差を無くしてから、配線層10Wを形成するので、上記した受光素子を製造する際の段差に起因した不具合の発生を抑えることができる。よって、成長基板31の大きさに影響されることなく、大口径の基板用の種々の装置を用いて製造し、画素の微細化等を行うことができる。
【0082】
また、受光素子1では、第2電極15と読出回路基板20とを接続するための穴H1(または溝G)を周辺領域R2の埋込層18に形成することが可能となる。このため半導体層10Sに穴H1を設けることなく、第2電極15と読出回路基板20とを電気的に接続することができる。また、絶縁材料からなる埋込層18には、既存の技術を用いて、容易に穴H1を形成することができる。
【0083】
更に、埋込層18により、半導体層10Sの端面を十分な厚みで覆うことができるので、半導体層10Sへの水分の浸入が抑えされる。したがって、半導体層10Sの劣化を抑えることが可能となる。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態の受光素子1では、半導体層10Sを間にして対向するパッシベーション膜17およびパッシベーション膜16を設けるようにしたので、半導体層10Sを効果的に保護することができる。よって、半導体層10Sを保護し、信頼性の低下を抑えることが可能となる。
【0085】
また、受光素子1では、埋込層18を形成するようにしたので、半導体層10Sと仮基板33との段差に起因した製造工程の不具合の発生を抑えることができる。よって、半導体層10Sを形成するための成長基板31の大きさに影響されることなく製造し、例えば画素Pの微細化を行うことが可能となる。この受光素子1では、埋込層18を設けることにより、素子基板10の周辺領域R2にも、読出回路基板20との接合面S2が形成される。
【0086】
また、埋込層18を形成する前に、仮基板33上で半導体層10Sを所定の大きさのチップ形状に成形ことにより、後の工程での合わせずれの発生を抑えて、所望の構造の受光素子1を容易に形成することが可能となる。
【0087】
更に、素子基板10と読出回路基板20とを、コンタクト電極19E,22EのCuCu接合により接続することにより、画素Pを微細化することができる。以下、これについて説明する。
【0088】
化合物半導体を含む素子基板と、読出回路を含む読出回路基板とを半田バンプあるいはインジウムビードなどを用いて接続する方法が提案されている。これらの接続手段を用いる場合、半導体装置の組立工程にて形成されるバンプやビードの直径、および、これらを接触させる電極パッドの一辺の長さは、例えば数十μmあるいは100μm以上である。一方、CuCu接合を用いるとき、半導体装置のウェハ工程にて形成されるCuパッドの一辺の長さは数μmである。したがって、受光素子1では、画素P毎に設けられたコンタクト電極19E,22Eの大きさが、半田バンプ等の1/10程度に縮小される。これにより、画素Pの大きさを小さくすることが可能となる
【0089】
以下、上記実施の形態の変形例および他の実施の形態について説明するが、以降の説明において上記実施の形態と同一構成部分については同一符号を付してその説明は適宜省略する。
【0090】
<変形例1>
図16は、上記第1の実施の形態の変形例1に係る受光素子(受光素子1A)の要部の断面構成を表したものである。この受光素子1Aは、第1電極11および半導体層10Sを覆うパッシベーション膜(パッシベーション膜17A)を有している。換言すれば、半導体層10Sとパッシベーション膜17Aとの間に第1電極11が設けられている。この点を除き、受光素子1Aは受光素子1と同様の構成および効果を有している。
【0091】
この受光素子1Aは、受光素子1のパッシベーション膜17に代えて、絶縁膜117を有している。この絶縁膜117が半導体層10Sに接し、半導体層10Sの接合面S2側の面および半導体層10S各層の端面を覆っている。絶縁膜117は、パッシベーション機能を有していなくてもよい。
【0092】
パッシベーション膜17Aは、例えば、第1電極11および絶縁膜117に接して設けられている。このパッシベーション膜17Aは、素子領域R1において第1電極11または絶縁膜117と配線層10Wとの間に設けられるとともに、周辺領域R2の埋込層18と絶縁膜117との間に設けられている。即ち、パッシベーション膜17Aは、第1電極11および絶縁膜117を間にして、半導体層10Sの配線層10Wとの対向面および半導体層10S各層の端面を覆っている。このパッシベーション膜17Aは、例えば、半導体層10Sの配線層10Wとの対向面と、半導体層10S各層の端面とを連続して覆っている。半導体層10S各層の端面は、全周にわたってパッシベーション膜17Aにおおわれている。このパッシベーション膜17Aは、素子領域R1および周辺領域R2にわたって設けられ、周辺領域R2では、パッシベーション膜16に接している。ここではパッベーション膜17Aが、本開示の「第1パッシベーション膜」および「第3パッシベーション膜」の一具体例に対応する。
【0093】
パッシベーション膜17Aは、第1電極11と対向する領域に開口を有しており、このパッシベーション膜17Aの開口には、コンタクト電極19Eと第1電極11とを接続するための配線が埋設されている。配線は、例えば、導電性の金属材料により構成されている。パッシベーション膜17Aの開口では、この配線により半導体層10Sへの水分の浸入が抑えられる。
【0094】
パッシベーション膜17Aは、バッシベーション機能を有しており、例えば、上記パッシベーション膜17で説明したのと同様の材料により構成されている。パッシベーション膜17Aの厚みは、例えば100nm~200nm程度である。
【0095】
このようなパッシベーション膜17Aは、例えば、以下のように形成する。まず、上記第1の実施の形態で説明したのと同様に、半導体層10S、絶縁膜117および第1電極11を形成する(
図15B)。このとき、絶縁膜117をハードマスクとして用い、拡散領域12Aを形成する。
【0096】
次いで、
図17に示したように、第1電極11および絶縁膜117を間にして半導体層10Sの上面および側面を覆うように、パッシベーション膜17Aを形成する。この後、上記第1の実施の形態で説明したのと同様の方法を用いて、埋込層18および配線層10W等を形成することにより、受光素子1Aを形成することができる。
【0097】
ここでは、埋込層18の平坦化処理を行う際に、埋込層18と第1電極11との間にパッシベーション膜17Aが設けられているので、パッシベーション膜17Aが平坦化処理のストッパとして機能し、過度の研磨を防ぐことができる。また、第1電極11にコンタクト電極19Eを接続する際のビア(via)加工においてもストッパとして機能する。
【0098】
本変形例のように、半導体層10Sの接合面S2側に設けられたパッシベーション膜17Aが、第1電極11および半導体層10Sを覆っていてもよい。この場合にも、上記第1の実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0099】
<変形例2>
図18、
図19および
図20は各々、上記第1の実施の形態の変形例2に係る受光素子(受光素子1B)の要部の断面構成を表したものである。この受光素子1Bは、埋込層18が、積層された第1埋込層18Aおよび第2埋込層18Bを含んでいる。この点を除き、受光素子1Bは受光素子1と同様の構成および効果を有している。
【0100】
第1埋込層18Aは、周辺領域R2に配置され、第2埋込層18Bよりも光入射面S1側に設けられている。具体的には、第1埋込層18Aは、第2埋込層18Bとパッシベーション膜16との間に配置され、半導体層10Sの端面を覆っている。
【0101】
第2埋込層18Bは、素子領域R1および周辺領域R2にわたって設けられている。素子領域R1の第2埋込層18Bは、配線層10Wと半導体層10Sとの間に配置され、第1電極11の下面および側面とともに、半導体層10Sの下面(接合面S2側の面)を覆っている。周辺領域R2の第2埋込層18Bは、配線層10Wと第1埋込層18Aとの間に配置されている。第1埋込層18Aの構成材料および第2埋込層18Bの構成材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1埋込層18Aの厚みと第2埋込層18Bの厚みとは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0102】
第1埋込層18Aと第2埋込層18Bとの間には、
図18に示したように、例えば、パッシベーション膜(パッシベーション膜17B)が設けられている。
【0103】
パッシベーション膜17Bは、素子領域R1および周辺領域R2にわたって略同一平面上に設けられている。このパッシベーション膜17Bは、素子領域R1の半導体層10Sと第2埋込層18Bとの間に配置されるとともに、周辺領域R2の第1埋込層18Aと第2埋込層18Bとの配置されている。パッシベーション膜17Bは、第1コンタクト層12に接しており、半導体層10Sの配線層10Wとの対向面を覆っている。パッシベーション膜17Bは、第1コンタクト層12と対向する領域に複数の開口を有しており、この複数の開口各々に第1電極11が埋設されている。
【0104】
パッシベーション膜17Bは、バッシベーション機能を有しており、例えば、上記パッシベーション膜17で説明したのと同様の材料により構成されている。パッシベーション膜17Bの厚みは、例えば100nm~200nm程度である。
【0105】
半導体層10Sの接合面S2側の面は、このようなパッシベーション膜17Bに覆われ、半導体層10S各層の端面は、例えば、パッシベーション膜17に覆われている。受光素子1と同様に、パッシベーション膜17は、例えば、半導体層10Sに接して設けられ、周辺領域R2でパッシベーション膜16に接している。パッシベーション膜17Bとパッシベーション膜17とは接しており、半導体層10Sの接合面S2側の面および半導体層10S各層の端面は、隙間なくパッシベーション膜17,17Bに覆われている。ここでは、パッシベーション膜17Bが、本開示の「第1パッシベーション膜」の一具体例に対応し、パッシベーション膜17が、本開示の「第3パッシベーション膜」の一具体例に対応する。
【0106】
図19に示したように、半導体層10Sの接合面S2側の面および半導体層10S各層の端面が、パッシベーション膜17に覆われていてもよい。受光素子1と同様に、パッシベーション膜17は、連続して半導体層10Sの接合面S2側の面および半導体層10S各層の端面を覆っている。
【0107】
図20に示したように、半導体層10Sの接合面S2側の面が、第1電極11とともに、パッシベーション膜17Aにより覆われていてもよい。受光素子1Bと同様に、パッシベーション膜17Aは、例えば、第1電極11および絶縁膜117に接して設けられている。パッシベーション膜17Aは、例えば、絶縁膜117とともに、第1埋込層18Aと第2埋込層18Bとの間に設けられ、素子領域R1から周辺領域R2に延在している。半導体層10S各層の端面は、例えば、パッシベーション膜17に覆われている。
【0108】
このような受光素子1Bは、例えば次のようにして製造することができる。
【0109】
まず、上記第1の実施の形態で説明したのと同様にして、仮基板33上の半導体層10Sを複数のチップ形状に成形する(
図9B)。
【0110】
次いで、
図21に示したように、仮基板33の全面に、パッシベーション膜17および第1埋込層18Aをこの順に形成する。パッシベーション膜17は、半導体層10Sの上面および側面を覆うように、仮基板33の全面に形成する。第1埋込層18Aは、例えば、仮基板33の全面に半導体層10Sを埋め込むように、絶縁材料を成膜した後、これをCMPにより平坦化して形成する。平坦化は、半導体層10Sの直上に第1埋込層18Aが残るように行ってもよく、あるいは、半導体層10S上のパッシベーション膜17が露出されるまで行ってもよい。これにより、半導体層10Sの上面および側面を覆うパッシベーション膜17と、このパッシベーション膜17を間にして半導体層10Sの周囲を覆う第1埋込層18Aが形成される。
【0111】
例えば、第1埋込層18Aの平坦化処理を行う際に、ここでは第1埋込層18Aと半導体層10Sとの間にパッシベーション膜17が設けられているので、パッシベーション膜17が平坦化処理のストッパとして機能し、過度の研磨を防ぐことができる。
【0112】
第1埋込層18Aを形成した後、
図22,
図23に示したように、拡散領域12Aを形成する。拡散領域12Aは、
図22に示したように、例えば、パッシベーション膜17Bまたは絶縁膜117により形成したマスクを用いて形成する。パッシベーション膜17Bまたは絶縁膜117は、半導体層10Sの直上の第1埋込層18Aを除去し、半導体層10S(第1コンタクト層12)を露出させた後、半導体層10Sを覆うように形成する。あるいは、
図23に示したように、パッシベーション膜17により形成したマスクを用いて拡散領域12Aを形成してもよい。
【0113】
半導体層10Sに拡散領域12Aを形成した後、
図24Aに示したように、パッシベーション膜17Bまたは絶縁膜117の開口に第1電極11を形成する。図示は省略するが、パッシベーション膜17の開口(
図23)に第1電極11を形成してもよい。
【0114】
第1電極11を形成した後、
図24Bに示したように、第1電極11を覆うようにして、第1埋込層18A上に、第2埋込層18Bを形成する。第2埋込層18Bは、仮基板33の全面に絶縁材料を成膜した後、これをCMPにより平坦化して形成する。
【0115】
第2埋込層18Bの形成前に、パッシベーション膜17Aを形成するようにしてもよい(
図17参照)。パッシベーション膜17Aは、上記変形例1で説明したのと同様に、第2埋込層18Bの平坦化処理等の際にストッパとして機能する。
【0116】
第2埋込層18Bの形成後、上記第1の実施の形態で説明したのと同様の工程を経て(
図15D~
図15J)、受光素子1Bを完成させることができる。
【0117】
本変形例のように、埋込層18を第1埋込層18Aおよび第2埋込層18Bの積層構造により構成するようにしてもよい。この場合にも、上記第1の実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0118】
<変形例3>
図25は、上記第1の実施の形態の変形例3に係る受光素子(受光素子1C)の要部の断面構成を表したものである。この受光素子1Cは、素子基板10の光入射面S1(読出回路基板20との対向面と反対面)にカラーフィルタ層41およびオンチップレンズ(集光レンズ)42を有している。この点を除き、受光素子1Cは受光素子1と同様の構成および効果を有している。受光素子1A,受光素子1Bがカラーフィルタ層41およびオンチップレンズ42を有していてもよい。
【0119】
例えば、受光素子1Cでは、素子基板10のパッシベーション膜16上に、平坦化膜16Aを間にして、カラーフィルタ層41およびオンチップレンズ42がこの順に設けられている。カラーフィルタ層41は、IR(Infrared)フィルタを含んでいてもよい。カラーフィルタ層41を設けることにより、画素P毎に対応する波長の受光データを得ることができる。
【0120】
オンチップレンズ42は、受光素子1Cに入射した光を光電変換層13に集めるためのものである。オンチップレンズ42は、例えば有機材料または酸化シリコン(SiO2)等により構成されている。受光素子1Cでは、周辺領域R2に埋込層18が設けられているので、素子基板10の素子領域R1と周辺領域R2との間の段差が小さくなり、あるいは、無くなり、平坦な光入射面S1が形成される。これにより、例えばフォトリソグラフィ工程を用いて、高い精度でオンチップレンズ42を形成することが可能となる。例えば、カラーフィルタ層41およびオンチップレンズ42は、素子領域R1内で終端している。パッシベーション膜16とカラーフィルタ層41との間に配置された平坦化膜16Aは、例えば、素子領域R1から周辺領域R2にわたって設けられており、周辺領域R2内で終端されている。カラーフィルタ層41、オンチップレンズ42および平坦化膜16Aは、各々、素子領域R1内、または周辺領域R2内のいずれの位置で終端されていてもよい。
【0121】
本変形例のように、素子基板10の光入射面S1にカラーフィルタ層41およびオンチップレンズ42を設けるようにしてもよい。この場合にも、上記第1の実施の形態と同等の効果を得ることができる。また、埋込層18により平坦化された光入射面S1には、高い精度で容易にオンチップレンズ42を形成することができる。
【0122】
<第2の実施の形態>
図26は、第2の実施の形態に係る受光素子(受光素子2)の断面構成を模式的に表したものである。この受光素子2は、化合物半導体材料を含む素子基板10とシリコン(Si)を含む半導体層(半導体層51S、第2半導体層)との積層構造を有している。この点を除き、受光素子2は、受光素子1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。受光素子1A,1Bが、半導体層51Sを有していてもよい。
【0123】
受光素子2は、素子基板10の光入射面S1に、半導体層51Sに電気的に接続された配線層51W、半導体層51S、カラーフィルタ層41およびオンチップレンズをこの順に有している。
【0124】
半導体層51Sには、画素P毎にpn接合を有するフォトダイオードPDが設けられている。配線層51Wは複数の配線を含んでおり、例えばフォトダイオードPDで生成した信号電荷が、この配線層51Wにより画素P毎に読出回路基板20に移動するようになっている。
【0125】
受光素子2では、例えば、可視領域および赤外領域の波長の光の光電変換がなされる。例えば、可視領域の波長の光は、オンチップレンズ42およびカラーフィルタ層41を介して半導体層51Sに入射し、フォトダイオードPDで光電変換される。一方、赤外領域の波長の光は、半導体層51Sを透過して、素子基板10の光電変換層13で光電変換される。フォトダイオードPDで発生した信号電荷および光電変換層13で発生した信号電荷は、読出回路基板20で読みだされる。
【0126】
本実施の形態の受光素子2も、上記受光素子1で説明したのと同様に、埋込層18を形成するので、半導体層10Sと仮基板33との段差に起因した製造工程の不具合の発生を抑えることができる。また、素子基板10に半導体層51Sが積層されているので、1つの画素Pで、可視領域および赤外領域の波長の光を光電変換することができる。よって、1つの画素Pから取得可能な情報量を増やすことが可能となる。
【0127】
<適用例1>
上記実施の形態等において説明した受光素子1(または、受光素子1A,1B,1C,2。以下、まとめて受光素子1という)は、例えば、撮像素子に適用される。この撮像素子は、例えば赤外線イメージセンサである。
【0128】
<適用例2>
上述の撮像素子は、例えば赤外領域を撮像可能なカメラなど、様々なタイプの電子機器に適用することができる。
図27に、その一例として、電子機器5(カメラ)の概略構成を示す。この電子機器5は、例えば静止画または動画を撮影可能なカメラであり、受光素子1により構成された撮像素子4と、光学系(光学レンズ)310と、シャッタ装置311と、撮像素子4およびシャッタ装置311を駆動する駆動部313と、信号処理部312とを有する。
【0129】
光学系310は、被写体からの像光(入射光)を撮像素子4へ導くものである。この光学系310は、複数の光学レンズから構成されていてもよい。シャッタ装置311は、撮像素子4への光照射期間および遮光期間を制御するものである。駆動部313は、撮像素子4の転送動作およびシャッタ装置311のシャッタ動作を制御するものである。信号処理部312は、撮像素子4から出力された信号に対し、各種の信号処理を行うものである。信号処理後の映像信号Doutは、メモリなどの記憶媒体に記憶されるか、あるいは、モニタ等に出力される。
【0130】
<体内情報取得システムへの応用例>
更に、本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0131】
図28は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る、カプセル型内視鏡を用いた患者の体内情報取得システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【0132】
体内情報取得システム10001は、カプセル型内視鏡10100と、外部制御装置10200とから構成される。
【0133】
カプセル型内視鏡10100は、検査時に、患者によって飲み込まれる。カプセル型内視鏡10100は、撮像機能及び無線通信機能を有し、患者から自然排出されるまでの間、胃や腸等の臓器の内部を蠕動運動等によって移動しつつ、当該臓器の内部の画像(以下、体内画像ともいう)を所定の間隔で順次撮像し、その体内画像についての情報を体外の外部制御装置10200に順次無線送信する。
【0134】
外部制御装置10200は、体内情報取得システム10001の動作を統括的に制御する。また、外部制御装置10200は、カプセル型内視鏡10100から送信されてくる体内画像についての情報を受信し、受信した体内画像についての情報に基づいて、表示装置(図示せず)に当該体内画像を表示するための画像データを生成する。
【0135】
体内情報取得システム10001では、このようにして、カプセル型内視鏡10100が飲み込まれてから排出されるまでの間、患者の体内の様子を撮像した体内画像を随時得ることができる。
【0136】
カプセル型内視鏡10100と外部制御装置10200の構成及び機能についてより詳細に説明する。
【0137】
カプセル型内視鏡10100は、カプセル型の筐体10101を有し、その筐体10101内には、光源部10111、撮像部10112、画像処理部10113、無線通信部10114、給電部10115、電源部10116、及び制御部10117が収納されている。
【0138】
光源部10111は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、撮像部10112の撮像視野に対して光を照射する。
【0139】
撮像部10112は、撮像素子、及び当該撮像素子の前段に設けられる複数のレンズからなる光学系から構成される。観察対象である体組織に照射された光の反射光(以下、観察光という)は、当該光学系によって集光され、当該撮像素子に入射する。撮像部10112では、撮像素子において、そこに入射した観察光が光電変換され、その観察光に対応する画像信号が生成される。撮像部10112によって生成された画像信号は、画像処理部10113に提供される。
【0140】
画像処理部10113は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサによって構成され、撮像部10112によって生成された画像信号に対して各種の信号処理を行う。画像処理部10113は、信号処理を施した画像信号を、RAWデータとして無線通信部10114に提供する。
【0141】
無線通信部10114は、画像処理部10113によって信号処理が施された画像信号に対して変調処理等の所定の処理を行い、その画像信号を、アンテナ10114Aを介して外部制御装置10200に送信する。また、無線通信部10114は、外部制御装置10200から、カプセル型内視鏡10100の駆動制御に関する制御信号を、アンテナ10114Aを介して受信する。無線通信部10114は、外部制御装置10200から受信した制御信号を制御部10117に提供する。
【0142】
給電部10115は、受電用のアンテナコイル、当該アンテナコイルに発生した電流から電力を再生する電力再生回路、及び昇圧回路等から構成される。給電部10115では、いわゆる非接触充電の原理を用いて電力が生成される。
【0143】
電源部10116は、二次電池によって構成され、給電部10115によって生成された電力を蓄電する。
図28では、図面が煩雑になることを避けるために、電源部10116からの電力の供給先を示す矢印等の図示を省略しているが、電源部10116に蓄電された電力は、光源部10111、撮像部10112、画像処理部10113、無線通信部10114、及び制御部10117に供給され、これらの駆動に用いられ得る。
【0144】
制御部10117は、CPU等のプロセッサによって構成され、光源部10111、撮像部10112、画像処理部10113、無線通信部10114、及び、給電部10115の駆動を、外部制御装置10200から送信される制御信号に従って適宜制御する。
【0145】
外部制御装置10200は、CPU,GPU等のプロセッサ、又はプロセッサとメモリ等の記憶素子が混載されたマイクロコンピュータ若しくは制御基板等で構成される。外部制御装置10200は、カプセル型内視鏡10100の制御部10117に対して制御信号を、アンテナ10200Aを介して送信することにより、カプセル型内視鏡10100の動作を制御する。カプセル型内視鏡10100では、例えば、外部制御装置10200からの制御信号により、光源部10111における観察対象に対する光の照射条件が変更され得る。また、外部制御装置10200からの制御信号により、撮像条件(例えば、撮像部10112におけるフレームレート、露出値等)が変更され得る。また、外部制御装置10200からの制御信号により、画像処理部10113における処理の内容や、無線通信部10114が画像信号を送信する条件(例えば、送信間隔、送信画像数等)が変更されてもよい。
【0146】
また、外部制御装置10200は、カプセル型内視鏡10100から送信される画像信号に対して、各種の画像処理を施し、撮像された体内画像を表示装置に表示するための画像データを生成する。当該画像処理としては、例えば現像処理(デモザイク処理)、高画質化処理(帯域強調処理、超解像処理、NR(Noise reduction)処理及び/又は手ブレ補正処理等)、並びに/又は拡大処理(電子ズーム処理)等、各種の信号処理を行うことができる。外部制御装置10200は、表示装置の駆動を制御して、生成した画像データに基づいて撮像された体内画像を表示させる。あるいは、外部制御装置10200は、生成した画像データを記録装置(図示せず)に記録させたり、印刷装置(図示せず)に印刷出力させてもよい。
【0147】
以上、本開示に係る技術が適用され得る体内情報取得システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、撮像部10112に適用され得る。これにより、検出精度が向上する。
【0148】
<内視鏡手術システムへの応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0149】
図29は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0150】
図29では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0151】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0152】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0153】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0154】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0155】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0156】
光源装置11203は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0157】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0158】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0159】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0160】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0161】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0162】
図30は、
図29に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0163】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0164】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0165】
撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0166】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0167】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0168】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0169】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0170】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0171】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0172】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0173】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0174】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0175】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0176】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0177】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0178】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0179】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部11402に適用され得る。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、検出精度が向上する。
【0180】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0181】
<移動体への応用例>
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0182】
図31は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0183】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図31に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0184】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0185】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0186】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0187】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0188】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0189】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0190】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0191】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0192】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図31の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0193】
図32は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0194】
図32では、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0195】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0196】
なお、
図32には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0197】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0198】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0199】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0200】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0201】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部12031に適用され得る。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、より見やすい撮影画像を得ることができるため、ドライバの疲労を軽減することが可能になる。
【0202】
更に、本実施の形態等において説明した受光素子1は、監視カメラ,生体認証システムおよびサーモグラフィ等の電子機器にも適用することが可能である。監視カメラは、例えばナイトビジョンシステム(暗視)のものである。受光素子1を監視カメラに適用することにより、夜間の歩行者および動物等を遠くから認識することが可能となる。また、受光素子1を車載カメラとして適用すると、ヘッドライトや天候の影響を受けにくい。例えば、煙および霧等の影響を受けずに、撮影画像を得ることができる。更に、物体の形状の認識も可能となる。また、サーモグラフィでは、非接触温度測定が可能となる。サーモグラフィでは、温度分布や発熱も検出可能である。加えて、受光素子1は、炎,水分またはガス等を検知する電子機器にも適用可能である。
【0203】
以上、実施の形態および適用例を挙げて説明したが、本開示内容は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態において説明した受光素子の層構成は一例であり、更に他の層を備えていてもよい。また、各層の材料や厚みも一例であって、上述のものに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態等では、第1コンタクト層12、光電変換層13および第2コンタクト層14により半導体層10Sを構成する場合について説明したが、半導体層10Sは光電変換層13を含んでいればよい。例えば、第1コンタクト層12および第2コンタクト層14を設けなくてもよく、あるいは、他の層を含んでいてもよい。
【0204】
更に、上記実施の形態等では、便宜上、信号電荷が正孔である場合について説明したが、信号電荷は電子であってもよい。例えば、拡散領域がn型の不純物を含んでいてもよい。
【0205】
加えて、上記実施の形態等では、本技術の半導体素子の一具体例の受光素子を説明したが、本技術の半導体素子は受光素子以外であってもよい。例えば、本技術の半導体素子は、発光素子であってもよい。
【0206】
また、上記実施の形態等において説明した効果は一例であり、他の効果であってもよいし、更に他の効果を含んでいてもよい。
【0207】
尚、本開示は、以下のような構成であってもよい。以下の構成を有する本開示の半導体素子およびその製造方法によれば、(第1)半導体層を間にして対向する第1パッシベーション膜および第2パッシベーション膜を設けるようにしたので、半導体層を効果的に保護することができる。よって、化合物半導体材料を保護し、信頼性の低下を抑えることが可能となる。
(1)
2次元配置された複数の受光単位領域を含む中央部の素子領域および前記素子領域の外側の周辺領域が設けられた素子基板と、
前記素子基板に対向する読出回路基板とを備え、
前記素子基板は、
前記素子領域に設けられ、化合物半導体材料を含む第1半導体層と、
前記第1半導体層と前記読出回路基板との間に設けられ、前記第1半導体層と前記読出回路基板とを電気的に接続する配線層と、
前記配線層と前記第1半導体層との間に設けられた第1パッシベーション膜と、
前記第1半導体層を間にして前記第1パッシベーション膜に対向する第2パッシベーション膜と、
前記第1半導体層の厚み以上の厚みを有すると共に、前記素子領域および前記周辺領域にわたって設けられ、前記周辺領域において前記第1半導体層を囲む埋込層とを含み、
前記素子基板の前記周辺領域は、前記読出回路基板との接合面を有する
半導体素子。
(2)
前記素子基板は、更に、
前記埋込層と前記第1半導体層との間に設けられた第3パッシベーション膜とを含む
前記(1)に記載の半導体素子。
(3)
前記第3パッシベーション膜と前記第1パッシベーション膜とは連続して設けられている
前記(2)に記載の半導体素子。
(4)
前記第3パッシベーション膜は、前記第1パッシベーション膜に接している
前記(2)に記載の半導体素子。
(5)
前記埋込層は、
前記周辺領域において前記第1半導体層の端面を覆うように設けられた第1埋込層と、
前記第1埋込層と前記読出回路基板との間、および前記第1半導体層と前記配線層との間に設けられた第2埋込層とを含む
前記(2)ないし(4)のうちのいずれか1つに記載の半導体素子。
(6)
前記第1パッシベーション膜は、前記素子領域および前記周辺領域にわたって延在し、前記第1埋込層と前記第2埋込層との間に設けられている
前記(5)に記載の半導体素子。
(7)
前記素子基板は、更に、
前記第1半導体層と前記配線層との間に設けられ、前記第1半導体層に電気的に接続された第1電極と、
前記第1半導体層を間にして前記第1電極に対向する第2電極とを含む
前記(1)ないし(6)のうちのいずれか1つに記載の半導体素子。
(8)
前記第1パッシベーション膜と前記第1半導体層との間に前記第1電極が設けられている
前記(7)に記載の半導体素子。
(9)
前記第1パッシベーション膜は、前記第1電極が埋設された開口を有する
前記(7)に記載の半導体素子。
(10)
前記素子基板は、更に、
前記第1半導体層と前記配線層との間に設けられ、前記第1半導体層に電気的に接続された第1電極と、
前記第1半導体層を間にして前記第1電極に対向する第2電極と、
前記周辺領域に、前記第2電極と前記読出回路基板とを電気的に接続するための接続部とを有する
前記(2)に記載の半導体素子。
(11)
前記接続部は、前記埋込層に設けられた溝により構成され、
前記溝は、前記素子領域を囲むように設けられている
前記(10)に記載の半導体素子。
(12)
前記素子基板の前記素子領域は、前記周辺領域の前記接合面と同一平面上で、前記読出回路基板に接合されている
前記(1)ないし(11)のうちのいずれか1つに記載の半導体素子。
(13)
前記配線層は、前記周辺領域にも設けられている
前記(1)ないし(12)のうちのいずれか1つに記載の半導体素子。
(14)
前記化合物半導体材料は、赤外領域の波長の光を吸収する
前記(1)ないし(13)のうちのいずれか1つに記載の半導体素子。
(15)
前記化合物半導体材料は、InGaAs,InAsSb,InAs,InSbおよびHgCdTeのうちのいずれか1つである
前記(1)ないし(14)のうちのいずれか1つに記載の半導体素子。
(16)
更に、前記第1半導体層の前記読出回路基板との対向面とは反対面側に、オンチップレンズを有する
前記(1)ないし(15)のうちのいずれか1つに記載の半導体素子。
(17)
更に、前記素子基板に積層して設けられるとともに、フォトダイオードを含む第2半導体層を有する
前記(1)ないし(16)のうちのいずれか1つに記載の半導体素子。
(18)
化合物半導体材料を含む半導体層を形成し、
前記半導体層を仮基板に接合し、
前記半導体層を前記仮基板に接合した後、前記半導体層を覆う第1パッシベーション膜を形成し、
前記半導体層と前記仮基板との段差を埋める埋込層を形成し、
前記半導体層の前記仮基板との接合面と反対面に配線層を形成し、
前記配線層を間にして前記半導体層に読出回路基板を対向させ、前記配線層を介して前記半導体層と前記読出回路基板とを電気的に接続し、
前記半導体層に接合された前記仮基板を除去した後、前記半導体層を間にして前記第1パッシベーション膜に対向する第2パッシベーション膜を形成する
半導体素子の製造方法。
(19)
更に、
前記第1パッシベーション膜に複数の開口を形成し、
前記複数の開口各々に、第1電極を埋設することを含む
前記(18)に記載の半導体素子の製造方法。
(20)
更に、前記半導体層に電気的に接続された第1電極を形成することを含み、
前記第1電極を形成した後、前記第1パッシベーション膜を形成する
前記(18)に記載の半導体素子の製造方法。
【0208】
本出願は、日本国特許庁において2018年10月16日に出願された日本特許出願番号第2018-195110号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願の全ての内容を参照によって本出願に援用する。
【0209】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。