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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部材及びその製法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20231024BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021001017
(22)【出願日】2021-01-06
(65)【公開番号】P2022106181
(43)【公開日】2022-07-19
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 征樹
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 祐司
(72)【発明者】
【氏名】米本 憲司
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-057786(JP,A)
【文献】特開2013-232641(JP,A)
【文献】特開2019-212910(JP,A)
【文献】特開2018-101773(JP,A)
【文献】特開2020-145281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの前記ウエハ載置面とは反対側の面に設けられたプラグ挿入穴と、
前記セラミックプレートのうち前記プラグ挿入穴の底壁を厚み方向に貫通するガス放出孔と、
前記プラグ挿入穴に挿入されたプラグと、
前記プラグの内部に設けられ、前記ガス放出孔と連通し、前記プラグの厚み方向のガスの流通を許容するガス流路と、
を備え、
前記プラグの側面又は前記プラグ挿入穴の内面には段差が設けられ、前記段差よりも深い領域で前記プラグ挿入穴と前記プラグとは当接し、前記段差よりも浅い領域では、前記プラグ挿入穴と前記プラグとの間に隙間が形成され、前記隙間には接着材料製のプラグ支持部材が形成されており、
前記プラグは、前記プラグ挿入穴の開口部に向かって徐々に径が狭まる第1テーパ部を有している、
半導体製造装置用部材。
【請求項2】
前記プラグは、前記プラグ挿入穴の底面に向かって徐々に径が狭まる第2テーパ部を有し、
前記第2テーパ部の外面は、前記プラグ挿入穴の内面と当接し、
前記電極は、前記セラミックプレートの内部のうち前記第2テーパ部と交差する面に設けられ、前記プラグを貫通させるための貫通穴を有している、
請求項1に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項3】
前記プラグは、緻密質セラミック製であり、
前記ガス流路は、螺旋状に形成されている、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材を製造する方法であって、(a)前記セラミックプレート及び前記プラグを準備する工程と、
(b)前記プラグを前記プラグ挿入穴に挿入することにより、前記プラグの側面又は前記プラグ挿入穴の内面に設けられた段差よりも深い領域で前記プラグ挿入穴と前記プラグとが当接し、前記段差よりも浅い領域では、前記プラグ挿入穴と前記プラグとの間に隙間が形成されるようにする工程と、
(c)前記隙間に接着剤を注入し、その後前記接着剤を硬化させることにより、前記プラグ支持部材を形成する工程と、
を含む半導体製造装置用部材の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用部材及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置用部材としては、上面にウエハ載置面を有する静電チャックを備えたものが知られている。例えば、特許文献1の半導体製造装置用部材は、静電チャックの下面に中間プレートを介して冷却プレートが配置されたものである。冷却プレートは、ガス供給孔を有している。静電チャックは、下面からウエハ載置面まで貫通するガス放出孔を有している。中間プレートは、冷却プレートとともに、ガス供給孔及びガス放出孔と連通する空所を形成していて、この空所に緻密質プラグが配置されている。緻密質プラグは、上面側と下面側とを屈曲しながら貫通するガス流路を有している。この半導体製造装置用部材はチャンバー内でウエハ載置面にウエハを載置し、チャンバー内に原料ガスを導入すると共に冷却プレートにプラズマを立てるためのRF電圧を印加することにより、プラズマを発生させてウエハの処理を行う。このとき、ガス供給孔には、ヘリウム等のバックサイドガスが導入される。バックサイドガスは、ガス供給孔から緻密質プラグのガス流路を経てガス放出孔を通ってウエハの裏面に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0243726号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、空所に緻密質プラグを配置するだけであるため、緻密質プラグと空所の内面との間に隙間が生じることがあった。こうした隙間も絶縁破壊の一因となるため好ましくない。また、仮に空所に緻密質プラグを樹脂製の接着剤を介して接着して隙間が生じるのを抑制しようとしても、接着剤がガス放出孔に流れ込んでガス放出孔を塞ぐおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、プラグを支持する接着材料によってガス放出孔が塞がれないようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体製造装置用部材は、
ウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの前記ウエハ載置面とは反対側の面に設けられたプラグ挿入穴と、
前記セラミックプレートのうち前記プラグ挿入穴の底壁を厚み方向に貫通するガス放出孔と、
前記プラグ挿入穴に挿入されたプラグと、
前記プラグの内部に設けられ、前記ガス放出孔と連通し、前記プラグの厚み方向のガスの流通を許容するガス流路と、
を備え、
前記プラグの側面又は前記プラグ挿入穴の内面には段差が設けられ、前記段差よりも深い領域で前記プラグ挿入穴と前記プラグとは当接し、前記段差よりも浅い領域では、前記プラグ挿入穴と前記プラグとの間に隙間が形成され、前記隙間には接着材料製のプラグ支持部材が形成されている、
ものである。
【0007】
この半導体製造装置用部材では、プラグの側面又はプラグ挿入穴の内面に設けられた段差よりも深い領域でプラグ挿入穴とプラグとは当接し、段差よりも浅い領域では、プラグ挿入穴とプラグとの間に隙間が形成され、その隙間には接着材料製のプラグ支持部材が形成されている。この半導体製造装置用部材を製造する際に、プラグとプラグ挿入穴との隙間に接着剤を注入したとしても、接着剤は段差よりも奥に流れ込むことが抑制され、ひいては接着剤がガス放出孔に入り込むことが抑制される。したがって、プラグを支持する接着材料すなわちプラグ支持部材によってガス放出孔が塞がれることがない。
【0008】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記プラグは、前記プラグ挿入穴の開口部に向かって徐々に径が狭まる第1テーパ部を有していてもよい。こうすれば、プラグ支持部材はプラグの第1テーパ部を下から受ける形状になるため、プラグがプラグ挿入穴から抜け落ちるのを防止することができる。
【0009】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記プラグは、前記プラグ挿入穴の底面に向かって徐々に径が狭まる第2テーパ部を有していてもよく、前記第2テーパ部の外面は、前記プラグ挿入穴の内面と当接し、前記電極は、前記セラミックプレートの内部のうち前記第2テーパ部と交差する面に設けられ、前記プラグを貫通させるための貫通穴を有していてもよい。こうすれば、プラグは第2テーパ部を有しているため、第2テーパ部を有さない場合に比べて貫通穴の直径を小さくすることができる。
【0010】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記プラグは、緻密質セラミック製であってもよく、前記ガス流路は、螺旋状に形成されていてもよい。こうすれば、ガス流路を経由してプラズマが放電するのを防止することができる。
【0011】
本発明の半導体製造装置用部材の製法は、
上述したいずれかの半導体製造装置用部材を製造する方法であって、
(a)前記セラミックプレート及び前記プラグを準備する工程と、
(b)前記プラグを前記プラグ挿入穴に挿入することにより、前記プラグの側面又は前記プラグ挿入穴の内面に設けられた段差よりも深い領域で前記プラグ挿入穴と前記プラグとが当接し、前記段差よりも浅い領域では、前記プラグ挿入穴と前記プラグとの間に隙間が形成されるようにする工程と、
(c)前記隙間に接着剤を注入し、その後前記接着剤を硬化させることにより、前記プラグ支持部材を形成する工程と、
を含むものである。
【0012】
この半導体製造装置用部材の製法によれば、隙間に接着剤を充填する際、接着剤は段差よりも奥に流れ込むことがない。そのため、接着剤がガス放出孔に入り込むことがない。したがって、プラグを支持する接着材料すなわちプラグ支持部材によってガス放出孔が塞がれることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】半導体製造装置用部材10の縦断面図。
図2】セラミックプレート20の平面図。
図3図1の部分拡大図。
図4】プラグ40の斜視図。
図5】プラグ挿入穴30にプラグ40を取り付ける工程の説明図。
図6】プラグ挿入穴30にプラグ40を取り付ける工程の説明図。
図7】プラグ挿入穴30にプラグ40を取り付ける工程の説明図。
図8】半導体製造装置用部材110の縦断面の部分拡大図。
図9】半導体製造装置用部材210の縦断面の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。図1は半導体製造装置用部材10の縦断面図、図2はセラミックプレート20の平面図、図3図1の部分拡大図、図4はプラグ40の斜視図である。
【0015】
半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20と、プラグ挿入穴30と、ガス放出孔28と、プラグ40と、ガス流路46と、冷却プレート60とを備えている。
【0016】
セラミックプレート20は、アルミナ焼結体や窒化アルミニウム焼結体などのセラミック製の円板(例えば直径300mm、厚さ5mm)である。セラミックプレート20の一方の面は、ウエハ載置面20aとなっている。セラミックプレート20は、電極22を内蔵している。セラミックプレート20のウエハ載置面20aには、図2に示すように、外縁に沿ってシールバンド21aが形成され、全面に複数の円形突起21bが形成されている。シールバンド21a及び円形突起21bは同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。電極22は、静電電極として用いられる平面状のメッシュ電極であり、直流電圧を印加可能となっている。この電極22に直流電圧が印加されるとウエハWは静電吸着力によりウエハ載置面20aに吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置面20aへの吸着固定が解除される。この電極22は、RF電極としても用いられる。具体的には、ウエハ載置面20aの上方には上部電極(図示せず)が配置され、その平板電極とセラミックプレート20に内蔵された電極22とからなる平行平板電極間に高周波電力を印加するとプラズマが発生する。電極22にはプラグ40を挿通するための貫通穴22a(図3参照)が設けられており、電極22の貫通穴22aとプラグ40との間は、所定の絶縁距離が確保されている。
【0017】
プラグ挿入穴30は、セラミックプレート20のウエハ載置面20aとは反対側の面20bの複数箇所(例えば周方向に沿って等間隔に設けられた12箇所とか24箇所)に設けられた有底筒状の穴である。プラグ挿入穴30は、略円筒形(例えば開口径8mm、全長4mm)であるが、図3に示すように、底面31と側面32との境界は傾斜面33となっている。
【0018】
ガス放出孔28は、セラミックプレート20のうちプラグ挿入穴30の底壁に相当する部分を厚み方向に貫通するように設けられた小径(例えば直径0.1mm)の穴である。ガス放出孔28は、一つのプラグ挿入穴30に対して複数設けられている。
【0019】
プラグ40は、緻密質セラミック製の部材(例えば最大外径8mm、全長4mm)であり、プラグ挿入穴30に挿入されている。プラグ40は、セラミックプレート20と同種のセラミックで形成されていることが好ましい。プラグ40の側面には、プラグ40の周方向に沿って段差44が設けられている。プラグ挿入穴30のうち、プラグ40の段差44よりも深くガス放出孔28と対向する位置に設けられた円形凹部48に至る手前までの領域でプラグ挿入穴30とプラグ40とは当接している。プラグ挿入穴30のうち、段差44よりも浅い領域では、プラグ挿入穴30とプラグ40との間に隙間Gが形成されている。この隙間Gには接着材料製のプラグ支持部材50が形成されている。接着材料としては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などが挙げられるが、シリコーン樹脂が好ましい。プラグ40は、プラグ挿入穴30の開口部30aに向かって徐々に径が狭まる第1テーパ部41を有している。そのため、第1テーパ部41とプラグ挿入穴30との隙間Gは、プラグ挿入穴30の開口部30aに向かって徐々に広くなっている。プラグ支持部材50は、プラグ40の第1テーパ部41を下から受ける形状になっている。プラグ40は、プラグ挿入穴30の底面31に向かって徐々に径が狭まる第2テーパ部42を有している。第2テーパ部42はプラグ挿入穴30の傾斜面33と当接している。プラグ40は、内部にガス流路46を有している。
【0020】
ガス流路46は、ガス放出孔28と連通し、プラグ40の厚さ方向のガスの流通を許容する。本実施形態では、ガス流路46は、プラグ40を厚さ方向に貫通する螺旋状に形成されている。プラグ40のうちプラグ挿入穴30の底面31に対向する面には、円形凹部48が設けられている。円形凹部48は、ガス流路46と複数のガス放出孔28とを連通する役割を果たす。
【0021】
プラグ40は、例えば、3Dプリンターを用いて成形した成形体を焼成して製造してもよいし、モールドキャスト成形した成形体を焼成して製造してもよい。モールドキャスト成形の詳細は、例えば特許第5458050号公報などに開示されている。モールドキャスト成形では、成形型の成形空間に、セラミック粉体、溶媒、分散剤及びゲル化剤を含むセラミックスラリーを注入し、ゲル化剤を化学反応させてセラミックスラリーをゲル化させることにより、成形型内に成形体を形成する。モールドキャスト成形では、ワックスなどの融点の低い材料で形成された外型及び中子(ガス流路46と同形状の型)を成形型として用いて成形型内に成形体を形成し、その後、成形型の融点以上の温度に加熱して成形型を溶融除去又は消失させて、成形体を製造してもよい。
【0022】
冷却プレート60は、金属アルミニウムやアルミニウム合金などの金属製の円板(セラミックプレート20と同じ直径かそれよりも大きな直径の円板)である。冷却プレート60の内部には、冷媒が循環する冷媒流路62やバックサイドガスをプラグ40へ供給するガス供給通路64が形成されている。ガス供給通路64は、平面視で冷却プレート60と同心円の環状のガス集合部64aと、冷却プレート60の裏面からガス集合部64aへガスを導入するガス導入部64bと、ガス集合部64aから各プラグ40へガスを分配するガス分配部64cとを備える。冷却プレート60とセラミックプレート20とは、樹脂製のボンディングシート70を介して接着されている。ボンディングシート70には、プラグ挿入穴30と対向する位置に、プラグ挿入穴30の開口径と同じかやや大きい径の穴72が設けられている。なお、冷却プレート60とセラミックプレート20とは、ボンディングシート70ではなくろう材を介して接合されていてもよい。
【0023】
次に、こうして構成された半導体製造装置用部材10の使用例について説明する。まず、図示しないチャンバー内に半導体製造装置用部材10を設置した状態で、ウエハWをウエハ載置面に載置する。そして、チャンバー内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、セラミックプレート20の電極22に直流電圧をかけて静電吸着力を発生させ、ウエハWをウエハ載置面に吸着固定する。次に、チャンバー内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とし、この状態で、チャンバー内の天井部分に設けた図示しない上部電極と半導体製造装置用部材10の電極22との間に高周波電圧を印加させてプラズマを発生させる。なお、上部電極と電極22との間に高周波電圧を印加する代わりに、上部電極と冷却プレート60との間に高周波電圧を印加してもよい。ウエハWの表面は、発生したプラズマによってエッチングされる。もしプラグ40の内部に厚み方向に直線的に貫通するガス流路が設けられていたならば、発生したプラズマは、そのガス流路を介してウエハWと冷却プレート60との間で放電を起こすことがある。しかし、本実施形態では、プラグ40のガス流路46は螺旋状のため、そのような放電が起きるのを防止することができる。冷却プレート60の冷媒流路62には、冷媒が循環される。ガス供給通路64には、図示しないガスボンベからヘリウム等のバックサイドガスが導入される。バックサイドガスは、ガス供給通路64、ガス流路46及びガス放出孔28を通って、ウエハWの裏面とウエハ載置面20aのうちシールバンド21aや円形突起21bが設けられていない部分との間の空間に放出され封入される。このバックサイドガスの存在により、ウエハWとセラミックプレート20との熱伝導が効率よく行われる。
【0024】
次に、半導体製造装置用部材10の製造例について説明する。図5図7は、半導体製造装置用部材10の製造工程のうち、セラミックプレート20のプラグ挿入穴30にプラグ40を取り付ける工程の説明図である。
【0025】
まず、セラミックプレート20及びプラグ40を準備する(工程(a))。セラミックプレート20及びプラグ40は既に説明した通りのものである。
【0026】
次に、プラグ40をセラミックプレート20のプラグ挿入穴30に挿入する(工程(b)、図5参照)。具体的には、セラミックプレート20を、プラグ挿入穴30の開口部30aが上を向くように配置する。そして、プラグ40を、円形凹部48が下を向くような姿勢で掴み、プラグ挿入穴30に挿入する。すると、図6に示すように、プラグ挿入穴30のうちプラグ40の段差44よりも深くガス放出孔28に至る手前(円形凹部48の手前)までの領域でプラグ挿入穴30とプラグ40とが当接する。このとき、プラグ40の円形凹部48が設けられた面がプラグ挿入穴30の底面31に位置し、第2テーパ部42が傾斜面33と当接する。また、プラグ挿入穴30のうちプラグ40の段差44よりも浅い領域では、プラグ挿入穴30とプラグ40との間に隙間Gが形成される。
【0027】
次に、この隙間Gに接着剤80をディスペンサ82を使用して注入し、その後、その接着剤を硬化させる(工程(c)、図6及び図7参照)。接着剤80としては、シリコーン系、エポキシ系、アクリル系などが挙げられるが、シリコーン系が好ましい。接着剤80は、段差44で堰き止められる。そのため、接着剤80をプラグ挿入穴30の開口部30aまで注入することにより、定量の接着剤80を注入することができる。また、接着剤80は、段差44を超えてガス放出孔28や円形凹部48に到達することを抑制できる。更に、隙間Gはプラグ挿入穴30の開口部30aに近いほど広くなっているため、接着剤80を注入しやすい。接着剤80が硬化するとプラグ支持部材50になる。その後、セラミックプレート20のうちウエハ載置面20aとは反対側の面20bと冷却プレート60のうちガス分配部64cが開口している面とをボンディングシート70を介して接合する。これにより、半導体製造装置用部材10が得られる。
【0028】
なお、プラグ40の側面に段差が形成されていない場合、接着剤80をプラグ40の側面に塗布してからプラグ挿入穴30に挿入する方法が考えられるが、そうすると、挿入時に接着剤80がプラグ挿入穴30の側面と接触することによりはぎとられることがある。これに対して、上述したように隙間Gに接着剤80を注入する方法では、接着剤80がはぎ取られることがないため、確実に接着層を設けることができる。このため、プラグ40の周りに空隙が発生することがなく、接着層の耐久性が向上する。
【0029】
以上詳述した半導体製造装置用部材10では、プラグ40の側面に設けられた段差44よりも深い領域でプラグ挿入穴30とプラグ40とは当接し、段差44よりも浅い領域では、プラグ挿入穴30とプラグ40との間に隙間Gが形成され、その隙間Gには接着材料製のプラグ支持部材50が形成されている。この半導体製造装置用部材10を製造する際に、プラグ挿入穴30とプラグ40との隙間Gに接着剤80を注入したとしても、接着剤80は段差44よりも奥に流れ込むことが抑制され、ひいては接着剤80がガス放出孔28に入り込むことが抑制される。したがって、プラグ40を支持する接着材料すなわちプラグ支持部材50によってガス放出孔28が塞がれることがない。
【0030】
このように段差44を設けることにより隙間Gがプラグ40の周りで途切れることなく形成されるため、接着剤80によりプラグ40の周りを確実に接着することができ、プラズマの回り込みを抑制することができる。さらに、段差44を設けることによりプラズマが接着層であるプラグ支持部材50に与える影響を低減することができる。
【0031】
更に、プラグ40は、第1テーパ部41を有している。そのため、プラグ支持部材50は、プラグ40の第1テーパ部41を下から受ける形状になり、プラグ40がプラグ挿入穴30から抜け落ちるのを防止することができる。
【0032】
更にまた、プラグ40は、第2テーパ部42を有し、第2テーパ部42の外面は、プラグ挿入穴30の傾斜面33と当接し、電極22は、セラミックプレート20の内部のうち第2テーパ部42と交差する面に設けられ、プラグ40を貫通するための貫通穴22aを有している。このように、プラグ40は第2テーパ部42を有しているため、第2テーパ部42を有さない場合(後述する図8参照)に比べて、貫通穴22aの直径D1(図3参照)を小さくすることができる。また、プラグ40を貫通穴22aに合わせて全長にわたり細くする場合に比べてプラグ40の内部に設けられた螺旋状のガス流路46を長くすることができる。
【0033】
そしてまた、プラグ40は、緻密質セラミック製であり、ガス流路46は、螺旋状に形成されているため、ガス流路46を経由してプラズマが放電するのを防止することができる。
【0034】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0035】
例えば、上述した実施形態において、緻密質セラミック製のプラグ40の代わりに、プラグ40と外観形状が同じである多孔質プラグを用いてもよい。多孔質プラグは、内部に細孔を有しているため、バックサイドガスが厚み方向に流れるのを許容する。そのため、多孔質プラグの内部に螺旋状のガス流路46を設ける必要はない。こうした多孔質プラグを用いる場合、外面を緻密質セラミックでコーティングするのが好ましい。こうすれば、接着剤が多孔質プラグの内部に浸透するのを防止することができる。
【0036】
上述した実施形態において、セラミックプレート20の内部に抵抗発熱体を埋設してもよい。こうすれば、ウエハWの温度をより精度よく制御することができる。
【0037】
上述した実施形態では、プラグ40の内部のガス流路46を螺旋状としたが、特にこれに限定されない。例えばガス流路を折り返し部の多い形状(ジグザグ形状など)としてもよい。このようにしても、ガス流路を介して放電が起きるのを効果的に防止することができる。
【0038】
上述した実施形態において、プラグ40に第1テーパ部41を設けなくてもよい。その場合、隙間G及びプラグ支持部材50は一様な幅(厚み)を持つようになる。
【0039】
上述した実施形態では、プラグ40に第2テーパ部42を設け、プラグ挿入穴30に傾斜面33を設けたが、図8に示した半導体製造装置用部材110のように、第2テーパ部42や傾斜面33を設けなくてもよい。図8では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。この場合、電極22の貫通穴22aとプラグ40とは所定の絶縁距離だけ離す必要があるため、電極22の貫通穴22aの直径D2は上述した実施形態の直径D1よりも大きくなる。
【0040】
上述した実施形態では、プラグ40の側面に段差44を設けたが、図9に示した半導体製造装置用部材210のように、プラグ40の側面に段差44を設ける代わりに、プラグ挿入穴30の側面32に段差34を設けてもよい。図9では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。半導体製造装置用部材210では、プラグ挿入穴30のうち段差34よりも深くガス放出孔28に至る手前までの領域でプラグ挿入穴30とプラグ40とは当接している。また、プラグ挿入穴30のうち段差34よりも浅い領域では、プラグ挿入穴30とプラグ40との間に隙間Gが形成され、その隙間Gにはプラグ支持部材50が形成されている。この半導体製造装置用部材210を製造する際に、プラグ挿入穴30とプラグ40との隙間Gに接着剤を注入したとしても、接着剤は段差34よりも奥に流れ込むことが抑制され、ひいては接着剤がガス放出孔28に入り込むことが抑制される。したがって、プラグ40を支持する接着材料すなわちプラグ支持部材50によってガス放出孔28が塞がれることがない。
【符号の説明】
【0041】
10,110,210 半導体製造装置用部材、20 セラミックプレート、20a ウエハ載置面、21a シールバンド、21b 円形突起、22 電極、22a 貫通穴、28 ガス放出孔、30 プラグ挿入穴、30a 開口部、31 底面、32 側面、33 傾斜面、34 段差、40 プラグ、41 第1テーパ部、42 第2テーパ部、44 段差、46 ガス流路、48 円形凹部、50 プラグ支持部材、60 冷却プレート、62 冷媒流路、64 ガス供給通路、64a ガス集合部、64b ガス導入部、64c ガス分配部、70 ボンディングシート、72 穴、80 接着剤、82 ディスペンサ、G 隙間、W ウエハ。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9