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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
B62D25/20 D
B62D25/20 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021010497
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114268
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 聡
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-101217(JP,A)
【文献】特開2018-140711(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0140179(US,A1)
【文献】実開昭64-028379(JP,U)
【文献】特開2019-018732(JP,A)
【文献】特開2016-016701(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102010049427(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用モータを有する車両であって、
フロアパネルを有する車体と、
前記フロアパネルの下方に配置されており、前記走行用モータに電力を供給するバッテリパックと、を備え、
前記車体は、
前記フロアパネルの前端に位置するダッシュパネルと、
前記ダッシュパネルに沿って前記車両の左右方向に延びており、その内部に閉空間を形成している第1ダッシュクロスメンバ及び第2ダッシュクロスメンバと、
前記ダッシュパネルから前記フロアパネルに沿って前記車両の後方へ延びるセンタートンネルと、をさらに有し、
前記第1ダッシュクロスメンバは、前記センタートンネルの右側面から前記ダッシュパネルの右端へ前記閉空間を形成しながら延びる右側部分と、前記センタートンネルの左側面から前記ダッシュパネルの左端へ前記閉空間を形成しながら延びる左側部分とに分断されており、
前記第2ダッシュクロスメンバは、前記第1ダッシュクロスメンバよりも上方において、前記ダッシュパネルの前記右端から前記左端まで前記閉空間を形成しながら連続して延びており、
前記第2ダッシュクロスメンバの中間部分は、前記センタートンネルの前記右側面、上面及び前記左側面に沿って、湾曲しながら伸びている、
車両。
【請求項2】
前記第1ダッシュクロスメンバの前記右側部分及び前記左側部分は、それぞれ前記センタートンネルに向かうにつれて幅寸法が拡大している、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第2ダッシュクロスメンバは、前記幅寸法が変化する前記第1ダッシュクロスメンバの上縁に合わせて湾曲しながら延びている、請求項2に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、車両に関し、特に、車体の下部構造に関する。
【0002】
特許文献1に、車体の下部構造が記載されている。この車体は、フロアパネルと、フロアパネルの前端に位置するダッシュパネルと、ダッシュパネルに沿って左右方向に延びるダッシュクロスメンバと、ダッシュパネルからフロアパネルに沿って後方へ延びるセンタートンネルとを有する。ダッシュクロスメンバは、センタートンネルによって左右に分割されている。そして、センタートンネルの両側では、ダッシュクロスメンバから後方へ延びるリインフォースメントが、フロアパネルに沿って設けられている。このような構成によると、例えば前面衝突における衝突荷重が、センタートンネル及び複数のリインフォースメントに分散されることで、車体の意図しない変形を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-101218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行用モータを有する車両、いわゆる電動車両の普及が進められている。この種の車両では、比較的に大型のバッテリパックが必要とされることから、そのような大型なバッテリパックを、フロアパネルの下方に配置するレイアウトが有効である。このようなレイアウトを採用する場合、例えばフロアパネルの低床化という観点において、フロアパネルは平坦であることが望ましい。従って、上述のようなリインフォースメントを、フロアパネルに沿って設けることは難しい。しかしながら、リインフォースメントを省略した場合、前面衝突等による衝突荷重が、主にセンタートンネルへ負荷されることになるので、ダッシュクロスメンバとセンタートンネルとの間を、強固に結合する必要がある。
【0005】
上記を鑑み、本明細書は、フロアパネルの下方にバッテリパックが配置される車両において、ダッシュクロスメンバとセンタートンネルとの間を、強固に結合するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は、走行用モータを有する車両に具現化される。この車両は、フロアパネルを有する車体と、フロアパネルの下方に配置されており、走行用モータに電力を供給するバッテリパックとを備える。車体は、フロアパネルの前端に位置するダッシュパネルと、ダッシュパネルに沿って車両の左右方向に延びる第1ダッシュクロスメンバ及び第2ダッシュクロスメンバと、ダッシュパネルからフロアパネルに沿って車両の後方へ延びるセンタートンネルとをさらに有する。
【0007】
第1ダッシュクロスメンバは、センタートンネルの右側面から前記ダッシュパネルの右端へ延びる右側部分と、センタートンネルの左側面からダッシュパネルの左端へ延びる左側部分とに分断されている。第2ダッシュクロスメンバは、第1ダッシュクロスメンバよりも上方において、ダッシュパネルの右端から左端まで連続している。そして、第2ダッシュクロスメンバの中間部分は、センタートンネルの右側面、上面及び左側面に沿って、湾曲しながら伸びている。
【0008】
上記した構造では、ダッシュパネルに沿って、二つのダッシュクロスメンバが設けられている。下方に位置する第1ダッシュクロスメンバは、センタートンネルによって左右に分割されており、右側部分と左側部分とのそれぞれが、センタートンネルの側面に接続されている。一方、上方に位置する第2ダッシュクロスメンバは、センタートンネルを跨いで連続しており、センタートンネルに隣接する中間部分では、センタートンネルの形状に沿って湾曲しながら伸びている。このような構成によると、二つのダッシュクロスメンバが、センタートンネルに対して長い距離で接続されることから、ダッシュクロスメンバとセンタートンネルとの間が強固に結合される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両10の左側面図である。
図2】車体12の構造を模式的に示す平面図である。
図3】ダッシュクロスメンバ32、34とセンタートンネル36との結合部分を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本技術の一実施形態において、第1ダッシュクロスメンバの右側部分及び左側部分は、それぞれ前記センタートンネルに向かうにつれて幅寸法が拡大してもよい。このような構成によると、第1ダッシュクロスメンバの右側部分及び左側部分が、それぞれセンタートンネルに接続される位置で大きな断面を有することから、センタートンネルに対してより強固に結合される。
【0011】
上記した実施形態では、第2ダッシュクロスメンバが、前記した幅寸法の変化する第1ダッシュクロスメンバの上縁に合わせて、湾曲しながら延びていてもよい。このような構成によると、第1ダッシュクロスメンバと第2ダッシュクロスメンバとの一体性を向上することができる。
【実施例
【0012】
図面を参照して、実施例の車両10について説明する。本実施例の車両10は、いわゆる自動車であって、路面を走行する車両である。ここで、図面における方向FRは、車両10の前後方向(車長方向)における前方を示し、方向RRは車両10の前後方向における後方を示す。また、方向LHは車両10の左右方向(車幅方向)における左方を示し、方向RHは車両10の左右方向における右方を示す。そして、方向UPは車両10の上下方向(車高方向)における上方を示し、方向DNは車両10の上下方向における下方を示す。なお、本明細書では、車両10の前後方向、左右方向及び上下方向を、それぞれ単に前後方向、左右方向及び上下方向と称することがある。
【0013】
図1図2に示すように、車両10は、車体12と、複数の車輪14f、14rとを備える。車体12は、特に限定されないが、主に金属材料を用いて構成されている。複数の車輪14f、14rは、車体12に対して回転可能に取り付けられている。複数の車輪14f、14rには、一対の前車輪14fと、一対の後車輪14rとが含まれる。なお、車輪14f、14rの数については、四つに限定されない。車体12は、主に、ユーザが乗車するキャビン12cと、キャビン12cの前方に位置するフロント部12fと、キャビン12cの後方に位置するリア部12rとに区分することができる。
【0014】
車体12は、フロアパネル20と、一対のロッカ22と、一対のフロントサイドメンバ24と、一対のリアサイドメンバ26とを備える。フロアパネル20は、前後方向及び左右方向に広がる板状の部材であって、キャビン12cのフロアを構成している。フロアパネル20の上面には、複数のフロアクロスメンバ28が設けられている。各々のフロアクロスメンバ28は、概して筒状構造を有しており、車体12の骨格の一部を構成している。
【0015】
一対のロッカ22(サイドシルとも称される)は、フロアパネル20の左右の側縁に沿って、それぞれ前後方向に延びている。各々のロッカ22は、概して筒状構造を有しており、車体12の骨格の一部を構成している。ロッカ22の前端は、後述するダッシュクロスメンバ32、34を介して、フロントサイドメンバ24に接続されている。ロッカ22の後端は、リアサイドメンバ26に接続されている。各々のロッカ22の内部には、ロッカ22の強度や剛性を高めるために、一又は複数のバルクヘッド(隔壁)が設けられていてもよい。
【0016】
一対のフロントサイドメンバ24は、フロント部12fに位置しており、それぞれ前方に向けて延びている。一対のフロントサイドメンバ24は、概して前後方向に延びる筒状構造を有しており、車体12の骨格の一部を構成している。図示省略するが、一対のフロントサイドメンバ24の前端には、フロントバンパリインフォースメントが取り付けられている。一対のリアサイドメンバ26は、リア部12rに位置しており、一対のロッカ22から連続して後方に延びている。一対のリアサイドメンバ26は、概して前後方向に延びる筒状構造を有しており、車体12の骨格の一部を構成している。図示省略するが、一対のリアサイドメンバ26の後端には、リアバンパリインフォースメントが取り付けられている。
【0017】
車体12はさらに、ダッシュパネル30と、二つのダッシュクロスメンバ32、34と、センタートンネル36とを有する。ダッシュパネル30は、フロアパネル20の前端に位置しており、フロント部12fとキャビン12cとを区分する隔壁を構成している。二つのダッシュクロスメンバ32、34は、ダッシュパネル30に沿って、左右方向に延びている。二つのダッシュクロスメンバ32、34には、第1ダッシュクロスメンバ32と、第2ダッシュクロスメンバ34とが含まれる。各々のダッシュクロスメンバ32、34は、概して筒状構造を有しており、車体12の骨格の一部を構成している。第1ダッシュクロスメンバ32及び第2ダッシュクロスメンバ34の具体的な構成については、後段において詳細に説明する。センタートンネル36は、ダッシュパネル30からフロアパネル20に沿って後方へ延びている。センタートンネル36は、フロアパネル20の左右方向における中央に位置しており、フロアパネル20に対して上方へ突出している。
【0018】
車両10は、走行用モータ16と、バッテリパック18とをさらに備える。特に限定されないが、走行用モータ16は、フロント部12fに配置されている。走行用モータ16は、一対の前車輪14fに接続されており、一対の前車輪14fを駆動する。なお、車両10は、一対の前車輪14fを駆動する走行用モータ16に加えて、又は代えて、一対の後車輪14rを駆動する第2の走行用モータを備えてもよい。また、車両10は、走行用モータ16に加えて、エンジンといった他の原動機を備えてもよい。
【0019】
バッテリパック18は、フロアパネル20の下方に配置され、一対のロッカ22の間に位置している。バッテリパック18は、走行用モータ16のための電源であって、走行用モータ16へ供給される電力を蓄える。バッテリパック18は、DC-DCコンバータやインバータといった電力供給回路(図示省略)を介して、走行用モータ16へ電気的に接続されている。特に限定されないが、本実施例におけるバッテリパック18は、複数のセルスタック18aを有する。各々のセルスタック18aは、複数のリチウムイオンバッテリセル(又は、その他の二次バッテリセル)を含み、再充電可能に構成されている。なお、車両10は、バッテリパック18に加えて、燃料電池ユニットや太陽電池パネルといった他の電源を備えてもよい。
【0020】
次に、二つのダッシュクロスメンバ32、34の構成について説明する。図2図3に示すように、第1ダッシュクロスメンバ32は、第2ダッシュクロスメンバ34よりも下方に位置しており、センタートンネル36によって左右に分断されている。第1ダッシュクロスメンバ32の右側部分32aは、センタートンネル36の右側面36aから、ダッシュパネル30の右端へ延びている。第1ダッシュクロスメンバ32の左側部分32bは、センタートンネル36の左側面36bからダッシュパネル30の左端へ延びている。
【0021】
第2ダッシュクロスメンバ34は、第1ダッシュクロスメンバ32よりも上方において、ダッシュパネル30の右端から左端まで連続して延びている。そして、第2ダッシュクロスメンバ34の中間部分34aは、センタートンネル36の右側面36a、上面36c及び左側面36bに沿って、湾曲しながら伸びている。即ち、第2ダッシュクロスメンバ34は、センタートンネル36によって分断されておらず、センタートンネル36を上方へ迂回するように延びている。
【0022】
以上のように、本実施例の車両10では、ダッシュパネル30に沿って、二つのダッシュクロスメンバ32、34が設けられている。下方に位置する第1ダッシュクロスメンバ32は、センタートンネル36によって左右に分割されており、右側部分32aと左側部分32bとのそれぞれが、センタートンネル36の側面36a、36bに接続されている。一方、上方に位置する第2ダッシュクロスメンバ34は、センタートンネル36を跨いで連続しており、センタートンネル36に隣接する中間部分34aでは、センタートンネル36の形状に沿って湾曲しながら伸びている。このような構成によると、二つのダッシュクロスメンバ32、34が、センタートンネル36に対して長い距離で接続されることから、ダッシュクロスメンバ32、34とセンタートンネル36との間が強固に結合される。
【0023】
ダッシュクロスメンバ32、34とセンタートンネル36との間が強固に結合されることで、例えば前面衝突等による衝突荷重を、主にセンタートンネル36で受け止めることができる。従って、フロアパネル20に多くのリインフォースメントを設ける必要がなく、フロアパネル20の形状を比較的に平坦にすることができる。これにより、フロアパネル20の下方にバッテリパック18を配置するレイアウトにおいても、フロアパネル20の位置が上昇することを避けることができ、車両10の低床化を図ることができる。
【0024】
特に限定されないが、本実施例の車両10では、第1ダッシュクロスメンバ32の右側部分32a及び左側部分32bが、それぞれセンタートンネル36に向かうにつれて幅寸法Wが拡大していく形状を有する(図3参照)。このような構成によると、第1ダッシュクロスメンバ32の右側部分32a及び左側部分32bが、それぞれセンタートンネル36に接続される位置で大きな断面を有することから、第1ダッシュクロスメンバ32とセンタートンネル36との間の結合がより強固なものとなる。加えて、第2ダッシュクロスメンバ34は、幅寸法Wが変化する第1ダッシュクロスメンバ32の上縁32cに合わせて、湾曲しながら延びている。このような構成によると、第1ダッシュクロスメンバ32と第2ダッシュクロスメンバ34との一体性を向上することができ、車体12に必要とされる強度や剛性を実現しやすい。
【0025】
本実施例の車両10において、二つのダッシュクロスメンバ32、34の具体的な構成については、適宜変更することができる。前述したように、各々のダッシュクロスメンバ32、34は、筒状構造を有する骨格部材であって、左右方向に延びる閉空間を形成している。この点に関して、各々のダッシュクロスメンバ32、34が形成する閉空間の形状(即ち、ダッシュクロスメンバ32、34の断面形状)は、特に限定されない。また、二つのダッシュクロスメンバ32の一方又は両方が、左右方向に延びる二以上の閉空間を形成する形状を有してもよい。さらに、各々のダッシュクロスメンバ32、34が形成する閉空間は、各々のダッシュクロスメンバ32、34のみによって形成されてもよいし、ダッシュパネルやその他の部材と共に形成されてもよい。
【0026】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0027】
10:車両
12:車体
14f、14r:車輪
16:走行用モータ
18:バッテリパック
20:フロアパネル
22:ロッカ
24:フロントサイドメンバ
26:リアサイドメンバ
28:フロアクロスメンバ
30:ダッシュパネル
32:第1ダッシュクロスメンバ
34:第2ダッシュクロスメンバ
36:センタートンネル
図1
図2
図3