(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】燃料タンク装置
(51)【国際特許分類】
B62J 35/00 20060101AFI20231024BHJP
B62J 9/18 20200101ALI20231024BHJP
【FI】
B62J35/00 Z
B62J9/18
(21)【出願番号】P 2021135777
(22)【出願日】2021-08-23
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】清治 達也
(72)【発明者】
【氏名】三浦 将平
(72)【発明者】
【氏名】山口 大輔
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3151514(JP,U)
【文献】特開2011-073610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 35/00
B62J 9/00 - 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(16)の外観面(16a)を形成し、かつ前記外観面(16a)を切り欠く凹部(27)によって物品配置スペース(S1)を形成するタンク本体(21)と、
前記タンク本体(21)の上面部(23a)に配置され、給油筒(24)の上端部が接続される給油トレー(26)と、
前記凹部(27)に配置され、前記凹部(27)が切り欠いた前記外観面(16a)を形成する物品収納装置(31)と、
を備え
、
前記給油筒(24)の下端中心の高さ(Z2)を貯留燃料の液面の上限ライン(FL)とし、
前記タンク本体(21)は、車両上下方向で前記凹部(27)の底面部(27b)の前端の高さを前記上限ライン(FL)と略同一高さとし、
前記タンク本体(21)の前記凹部(27)の底面部(27b)上に、前記物品収納装置(31)が配置されていることを特徴とする燃料タンク装置。
【請求項2】
前記凹部(27)は、前記タンク本体(21)の上面側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク装置。
【請求項3】
前記タンク本体(21)の上面側で前記凹部(27)を避けた位置に給油口(22)を備えていることを特徴とする請求項2に記載の燃料タンク装置。
【請求項4】
前記燃料タンク(16)は、鞍乗り型車両(1)におけるシート(17)の前方に配置され、
前記凹部(27)は、前記給油口(22)よりも後方に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の燃料タンク装置。
【請求項5】
前記凹部(27)は、底面部(27b)の外周の少なくとも一部を前記外観面(16a)に至らしめ、
前記底面部(27b)は、前記外観面(16a)に至った部位の少なくとも一箇所に向けて下向きに傾斜していることを特徴とする
請求項1から4の何れか一項に記載の燃料タンク装置。
【請求項6】
前記燃料タンク(16)は、鞍乗り型車両(1)においてシート(17)の前方に配置され、
前記物品収納装置(31)は、ヒンジ軸(35c)を中心に回動してボックス開口(32c1)を開閉するリッド(33)を備え、
前記ヒンジ軸(35c)は、前記リッド(33)の後方側に配置されていることを特徴とする
請求項1から5の何れか一項に記載の燃料タンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車の燃料タンクにおいて、下面側に凹部を形成し、この凹部にエアクリーナ装置等の車両部品を配置したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構成では、燃料タンクの外観がタンク容量に比して大型になる。このため、重量を抑えつつ大型のタンク外観を得たいという要望には好適である。
しかし、タンク下面側のスペースには外部から容易にアクセスすることができないという課題がある。
【0005】
そこで本発明は、あたかも大型のタンク外観を得ながら、外部から利用可能な物品収納機能を有する燃料タンク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、燃料タンク(16)の外観面(16a)を形成し、かつ前記外観面(16a)を切り欠く凹部(27)によって物品配置スペース(S1)を形成するタンク本体(21)と、前記タンク本体(21)の上面部(23a)に配置され、給油筒(24)の上端部が接続される給油トレー(26)と、前記凹部(27)に配置され、前記凹部(27)が切り欠いた前記外観面(16a)を形成する物品収納装置(31)と、を備え、前記給油筒(24)の下端中心の高さ(Z2)を貯留燃料の液面の上限ライン(FL)とし、前記タンク本体(21)は、車両上下方向で前記凹部(27)の底面部(27b)の前端の高さを前記上限ライン(FL)と略同一高さとし、前記タンク本体(21)の前記凹部(27)の底面部(27b)上に、前記物品収納装置(31)が配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、タンク本体に外観面を切り欠く凹部を形成し、この凹部に物品収納装置を配置するとともに、凹部によって切り欠かれた外観面を物品収納装置が形成するので、あたかも大型のタンク外観を得ながら、外部から利用可能な物品収納機能を得ることができる。また、タンク容量を制限して軽量化(および燃費向上)を図りながら、燃料タンクを大きく見せることができる。
また、燃料タンクの外観を大型化しながら、凹部の高さ分のタンク容量を制限することができる。
【0007】
請求項2に記載した発明は、前記凹部(27)は、前記タンク本体(21)の上面側に配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、物品収納装置へのアクセスを良好にすることができる。また、鞍乗り型車両の燃料タンク装置において、燃料タンクがシートの前方かつシートと同等高さにある構成であれば、シートに着座した乗員から物品収納装置へのアクセスが極めて良好となり、商品性を向上させることができる。
【0008】
請求項3に記載した発明は、前記タンク本体(21)の上面側で前記凹部(27)を避けた位置に給油口(22)を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、物品収納装置とともに給油口へのアクセスも良好になり、燃料タンクの使い勝手を向上させることができる。
【0009】
請求項4に記載した発明は、前記燃料タンク(16)は、鞍乗り型車両(1)におけるシート(17)の前方に配置され、前記凹部(27)は、前記給油口(22)よりも後方に配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、シートの着座した乗員から物品収納装置へのアクセスを良好にすることができる。
【0011】
請求項5に記載した発明は、前記凹部(27)は、底面部(27b)の外周の少なくとも一部を前記外観面(16a)に至らしめ、前記底面部(27b)は、前記外観面(16a)に至った部位の少なくとも一箇所に向けて下向きに傾斜していることを特徴とする。 この構成によれば、凹部の底面部が外観面に向けて下向きに傾斜するので、凹部の底面部上の水や泥砂等は、底面部の傾斜によって外観面側(凹部外側)に排出される。このため、凹部内(底面部上)に水や泥砂等が溜まることを抑えることができる。
【0012】
請求項6に記載した発明は、前記燃料タンク(16)は、鞍乗り型車両(1)においてシート(17)の前方に配置され、前記物品収納装置(31)は、ヒンジ軸(35c)を中心に回動してボックス開口(32c1)を開閉するリッド(33)を備え、前記ヒンジ軸(35c)は、前記リッド(33)の後方側に配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、鞍乗り型車両の燃料タンク装置において、燃料タンクがシートの前方にあり、物品収納装置のリッドが後方側のヒンジ軸を中心に回動するので、前突時等に乗員が離脱する(シートから離れる)場合に、乗員が離脱する方向に向けてリッドが閉じることとなり、乗員離脱性を良好にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、あたかも大型のタンク外観を得ながら、外部から利用可能な物品収納機能を有する燃料タンク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態における自動二輪車の右側面図である。
【
図2】上記自動二輪車の燃料タンク装置の左側面図である。
【
図3】上記燃料タンク装置の車体左右中心面に沿う断面図である。
【
図4】
図3に相当する断面図であり、物品収納装置のリッドが開いた状態を示す。
【
図6】
図5に相当する斜視図であり、物品収納装置のリッドが開いた状態を示す。
【
図7】上記燃料タンク装置のタンク後部カバーを取り外した状態の斜視図である。
【
図8】
図7からさらに収納ボックスを取り外した状態の斜視図である。
【
図9】
図8からさらにリッド本体を取り外した状態のタンク本体の斜視図である。
【
図10】
図9のタンク本体を異なる方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UP、車体左右中央を示す線CLが示されている。
【0016】
<車両全体>
図1に示すように、本実施形態は、鞍乗り型車両の一例としての自動二輪車1に適用されている。自動二輪車1の前輪2は、左右一対のフロントフォーク3の下端部に支持されている。左右フロントフォーク3の上部は、ステアリングステム4を介して、車体フレーム5の前端部のヘッドパイプ6に支持されている。ステアリングステム4のトップブリッジ上には、バータイプの操向ハンドル4aが取り付けられている。
【0017】
車体フレーム5は、ヘッドパイプ6と、ヘッドパイプ6から後方へ後下がりに延びるメインフレーム7と、メインフレーム7の後端部から下方へ延びるピボットフレーム8と、メインフレーム7およびピボットフレーム8の後部から後方へ後上がりに延びるシートフレーム9と、を備えている。
左右ピボットフレーム8には、スイングアーム11の前端部が揺動可能に枢支されている。スイングアーム11の後端部には、自動二輪車1の後輪12が支持されている。
【0018】
メインフレーム7の下方には、自動二輪車1の原動機であるエンジン(内燃機関)13を含むパワーユニットPUが搭載されている。パワーユニットPUは、前部に位置するエンジン13と後部に位置する変速機14とを一体に有している。変速機14ひいてはパワーユニットPUの出力軸は、後輪12と例えばチェーン式伝動機構を介して連結されている。
【0019】
メインフレーム7の上方には、燃料タンク16が支持されている。燃料タンク16の後方でシートフレーム9の上方には、前シート17および後シート18が前後に並んで支持されている。シートフレーム9の周囲は、リヤボディカバー23に覆われている。
【0020】
後部同乗者が着座する後シート18は、運転者が着座する前シート17よりも上方に位置している。前後シート17,18の周辺(メインフレーム7およびピボットフレーム8よりも後方の部位、車体後部)は、後上がりのシートフレーム9に支持されている。車体後部の各部品は、全体的に後上がりの態様をなしている。
【0021】
<燃料タンク>
図2~
図4を併せて参照し、燃料タンク16は、前シート17に着座した運転者の両膝間に位置するように配置されている。燃料タンク16は、前シート17と車両上下方向の位置が重なるように(前シート17と同等の高さに)配置されている。燃料タンク16は、例えば左右対称に構成されている。燃料タンク16は、燃料を貯留する中空のタンク本体21を備えている。タンク本体21の外観面16a側には、物品収納装置31が一体的に設けられている。
【0022】
図9~
図11を併せて参照し、タンク本体21は、例えばプレス成型された鋼板部品を溶接等により一体に結合して構成されている。タンク本体21は、車両搭載状態で車両外観に露出する外観面16aを形成している。タンク本体21ひいては燃料タンク16は、自動二輪車1の外観に露出する部品である。
【0023】
タンク本体21は、前部上端において側面視で前下がりに傾斜した平坦状の上面部23aと、上面部23aの前端から下方に屈曲して延びる前面部23bと、上面部23aの左右側方に肩部23cを介して連なり、肩部23cから下方に向けて垂下する左右側面部23dと、左右側面部23dの後方に連なり、運転者の両膝を整合させるように凹状に湾曲した左右ニーグリップ部23eと、上面部23aの後方に形成される凹部27と、凹部27の後下方に屈曲して延びる後面部23fと、を備えている。
【0024】
前面部23bには、車体フレーム5のメインチューブを避けるトンネル部23b1の前端が開口している。左右の肩部23cは、例えば凹状に湾曲した断面形状を有して上面部23aの側縁に沿って延びている。タンク本体21ひいては燃料タンク16の後部(ニーグリップ部23eが形成される範囲)は、平面視で後側ほど左右幅が狭まるように形成されている。
【0025】
図3、
図4を参照し、上面部23aの左右中央部の下方(タンク内側)には、上下方向に延びる円筒状の給油筒24が設けられている。給油筒24の軸方向は、車両上下方向に対して、上側ほど前側に位置するように傾斜(前傾)している。給油筒24は、タンク本体21における前下がりの上面部23aと直交するように配置されている。
給油筒24の上端開口は、タンク本体21の給油口22を構成している。給油筒24および給油口22の中心軸線C1は、車体左右中央に位置している。
【0026】
タンク本体21の上面部23aには、給油トレー26が配置されたタンク開口形成部25を備えている。給油トレー26には、給油筒24の上端部が接続されている。給油トレー26内には、給油口22を開閉するタンクキャップ29(
図2参照)が取り付けられている。タンクキャップ29は、給油口22を閉じた状態で、タンク本体21の上面部23aと面一状に配置されている。
【0027】
図9、
図10を参照し、タンク本体21は、上面部23aの後方において、外観面16aを切り欠くように凹む凹部27を形成している。これにより、タンク本体21の外観面16a側に凹状の物品配置スペースS1が形成されている。凹部27は、タンク本体21の上面側で給油口22を後方に避けた位置に形成されている。凹部27は、外観面16a側からタンク内側に向けて凹み、タンク容量を減少させている。凹部27には、物品収納装置31が配置されている。
【0028】
ここで、自動二輪車1等の鞍乗り型車両において、燃料タンクが車両外観に露出する場合、燃料タンクの形状や大きさが車両外観性に影響する。そして、大型の燃料タンクを好む要望もある。しかし、本出願人が調査した結果、大きな外観の燃料タンクを採用しても、重量や燃費を考慮し、満タンにする機会が少ないことが分かった。
【0029】
そこで、実施形態では、大きな外観の燃料タンク16を採用しながら、給油筒24を下方に長く設定することで、満タン時の油面(満タンライン、上限ライン)FLを低く抑えている。一方、タンク上部には大きなエアボリューム(デッドスペース)が生じるので、このスペースを物品配置スペースS1として有効活用している。
【0030】
図3、
図4、
図9、
図10を参照し、凹部27は、給油口22の後方でタンク本体21の上面部23aの後端から下方に屈曲して延びる前面部27aと、前面部27aの下端から後方に屈曲して延びる底面部27bと、を備えている。凹部27は、前面部27aおよび底面部27bによって略L字状の断面形状を形成している。凹部27は、前記断面形状を一定に有して車幅方向に延びている。凹部27は、左右方向に沿う前面部27aおよび底面部27bの左右両端を、タンク本体21の両側面に至らしめる。前面部27aは、下端側ほど後方に位置するように傾斜している。底面部27bは、後端側ほど下方に位置するように傾斜している。底面部27bの後端は、タンク本体21の後端面(後面部23fの外観面)に至っている。
【0031】
凹部27において、底面部27bの周囲にある突起物は、前面部27aのみである。このため、凹部27内(底面部27b上)に水や泥砂等の異物が浸入した場合、この異物を凹部27の左右側方や後方へ容易に排出することが可能である。特に、底面部27bは後下がりに傾斜しているので、凹部27内の異物は凹部27後方へ自然に排出される。
【0032】
底面部27bの車両上下方向の高さ(例えば底面部27bの前端の高さZ1)は、給油筒24の下端の車両上下方向の高さ(例えば下端中心の高さZ2)と略同一高さにある。これらの高さ位置は、貯留燃料の液面の上限高さ(タンク本体21の実質的な満タンラインFL)に相当する。実施形態では、給油筒24の後方で貯留燃料の液面の上限高さとタンク本体21の上面部23aとの間の空間を、物品配置スペースS1として利用している。
【0033】
図3~
図7を参照し、物品収納装置31は、収納ボックス32と、収納ボックス32の開口を開閉するリッド33と、収納ボックス32の周囲を覆うタンク後部カバー38と、を備えている。
【0034】
収納ボックス32は、例えば樹脂ブロー成型品であり、凹部27内に整合するように形成されている。収納ボックス32は、凹部27の前面部27aに後方から対向するボックス前面部32aと、凹部27の底面部27bに上方から対向するボックス底面部32bと、タンク本体21の上面部23aの後方に連なるように設けられるボックス上面部32cと、タンク本体21の左右肩部23cの後方に連なるように設けられる左右のボックス湾曲部32dと、タンク本体21の左右ニーグリップ部23eの後方に連なるように設けられる左右のボックス側面凹部32eと、を備えている。左右のボックス湾曲部32dは、例えば凸状に湾曲した断面形状を有してボックス上面部32cの側縁に沿って延びている。収納ボックス32は、例えばボックス前面部32aおよびボックス底面部32bにおいてタンク本体21に固定されている。
【0035】
ボックス上面部32cは、側面視で後下がりに傾斜している。ボックス上面部32cは、側面視で後上方に向けて凸の湾曲状に形成されている。ボックス上面部32cは、平面視で後側ほど左右幅が狭まるように形成されている。ボックス上面部32cには、ボックス内部を上方に開放するボックス開口32c1が形成されている。ボックス開口32c1は、ボックス上面部32cの法線方向から見て、後側ほど左右幅が狭い逆台形状に形成されている。収納ボックス32は、ボックス上面部32cの左右側方にボックス湾曲部32dおよびボックス側面凹部32eを備えるので、ボックス上面部32cのボックス開口32c1の左右幅は、収納ボックス32の左右全幅よりも狭まっている。収納ボックス32におけるボックス開口32c1の後方には、リッド33のヒンジ35を避けるための後凹部32fが形成されている。
【0036】
リッド33は、ボックス開口32c1よりも一回り大きい逆台形状のリッド本体34と、リッド本体34を例えばタンク本体21に支持するヒンジ35と、を備えている。
【0037】
リッド本体34は、ボックス開口32c1を閉じた閉状態において、燃料タンク16の上面部23aの後方に連なる後部上面部36を構成している。後部上面部36は、閉状態のリッド本体34とその周囲を覆うタンク後部カバー38とで構成されている。閉状態のリッド本体34は、タンク後部カバー38とともに、燃料タンク16の後部上側の外観面16a(凹部27によって切り欠かれた外観面)を形成している。リッド本体34およびタンク後部カバー38の各々は、例えば樹脂射出成型品である。リッド本体34には、開操作時に手指を掛けるための凹部が形成されている。実施形態のリッド33は施錠機能を有していないが、施錠機能を有してもよい。
【0038】
図8を併せて参照し、ヒンジ35は、タンク本体21の凹部27の底面部27bに固定されるヒンジベース35aと、ヒンジベース35aに対して左右方向に沿うヒンジ軸35cを介して回動可能に連結されるヒンジアーム35bと、を備えている。ヒンジ35の各部品は、例えば金属製である。ヒンジ35は、タンク本体21ではなく収納ボックス32に取り付けられてもよい。すなわち、ヒンジ35は、リッド本体34を収納ボックス32に支持してもよい。
【0039】
ヒンジ軸35cは、リッド33の後方側に配置されている。このため、リッド33が開状態にあるときに自動二輪車1が障害物に衝突した場合等に、乗員の身体の離脱を阻害することはない。すなわち、自動二輪車1の前突時等、乗員の身体が乗車位置から斜め前上方に離脱するような状況において、乗員の身体が開状態のリッド33に振れても、リッド33には閉じ方向に回動可能であり、乗員の離脱を阻害することはない。
【0040】
図5、
図6を参照し、タンク後部カバー38は、燃料タンク16の後部上面部36を構成するカバー上面部38aと、左右肩部23cの後方に連なる左右のカバー湾曲部38bと、左右ニーグリップ部23eの後方に連なる左右のカバー側面凹部38cと、を備えている。
カバー上面部38aは、閉状態のリッド本体34を整合させる逆台形状のカバー開口38a1を形成している。
左右カバー湾曲部38bおよび左右カバー側面凹部38cの各々は、左右ボックス湾曲部32dおよび左右ボックス側面凹部32eにタンク外側から被さるように配置されてこれらを覆っている。
【0041】
以上説明したように、上記実施形態における燃料タンク装置は、燃料タンク16の外観面16aを形成し、かつ外観面16aを切り欠く凹部27によって物品配置スペースS1を形成するタンク本体21と、凹部27に配置され、凹部27が切り欠いた外観面16aを形成する物品収納装置31と、を備えている。
この構成によれば、タンク本体21に外観面16aを切り欠く凹部27を形成し、この凹部27に物品収納装置31を配置するとともに、凹部27によって切り欠かれた外観面16aを物品収納装置31が形成するので、あたかも大型のタンク外観を得ながら、外部から利用可能な物品収納機能を有する燃料タンク装置を提供することができる。また、タンク容量を制限して軽量化(および燃費向上)を図りながら、燃料タンク16を大きく見せることができる。
【0042】
上記燃料タンク装置において、凹部27は、タンク本体21の上面側に配置されているので、物品収納装置31へのアクセスを良好にすることができる。また、鞍乗り型車両の燃料タンク装置において、燃料タンク16が前シート17の前方かつ前シート17と同等高さにある構成であれば、前シート17に着座した乗員から物品収納装置31へのアクセスが極めて良好となり、商品性を向上させることができる。
【0043】
上記燃料タンク装置において、タンク本体21の上面側で凹部27を避けた位置に給油口22を備えているので、物品収納装置31とともに給油口22へのアクセスも良好になり、燃料タンク16の使い勝手を向上させることができる。
【0044】
上記燃料タンク装置において、燃料タンク16は、自動二輪車1における前シート17の前方に配置され、凹部27は、給油口22よりも後方に配置されているので、前シート17の着座した乗員から物品収納装置31へのアクセスを良好にすることができる。
【0045】
上記燃料タンク装置において、タンク本体21は、車両上下方向で凹部27の底面部27bの高さを貯留燃料の液面の上限ラインFLとし、車両上下方向でタンク本体21の上面部23aと凹部27の底面部27bとの間に、物品収納装置31が配置されているので、燃料タンク16の外観を大型化しながら、凹部27の高さ分のタンク容量を制限することができる。
【0046】
上記燃料タンク装置において、凹部27は、底面部27bの外周の少なくとも一部を外観面16aに至らしめ、底面部27bは、外観面16aに至った部位の少なくとも一箇所に向けて下向きに傾斜している。
この構成によれば、凹部27の底面部が外観面16aに向けて下向きに傾斜するので、凹部27の底面部上の水や泥砂等は、底面部の傾斜によって外観面16a側(凹部27外側)に排出される。このため、凹部27内(底面部上)に水や泥砂等が溜まることを抑えることができる。
【0047】
上記燃料タンク装置において、燃料タンク16は、自動二輪車1における前シート17の前方に配置され、物品収納装置31は、ヒンジ軸35cを中心に回動してボックス開口32c1を開閉するリッド33を備え、ヒンジ軸35cは、リッド33の後方側に配置されている。
この構成によれば、鞍乗り型車両の燃料タンク装置において、燃料タンク16が前シート17の前方にあり、物品収納装置31のリッド33が後方側のヒンジ軸35cを中心に回動するので、前突時等に乗員が離脱する(前シート17から離れる)場合に、乗員が離脱する方向に向けてリッド33が閉じることとなり、乗員離脱性を良好にすることができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、タンク本体21の凹部27は、左右側方および後方に開放するものに限らず、底面部の周囲を前面部以外の突起部に囲まれる構成でもよい。給油口22よりも前方側に凹部27が配置されてもよい。リッド33の後方側にヒンジ軸が配置されてもよい。凹部27の底面部が後下がりの傾斜ではなくタンク外観面に至る左右端や前端に向けて低くなる傾斜でもよい。
本実施形態の燃料タンク装置は、自動二輪車以外の鞍乗り型車両に適用してもよい。前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪(四輪バギー等)の車両も含まれる。また、原動機に電気モータを含む車両に適用してもよい。また、鞍乗り型車両以外の車両(乗用車、バス、トラック等)に適用してもよい。
本実施形態の燃料タンク装置は、車両に適用されるものであるが、本発明は車両への適用に限らず、航空機や船舶等の種々輸送機器、ならびに建設機械や産業機械等、様々な乗物や移動体に適用してもよい。さらに、本発明は、乗物以外でも燃料タンクを備える機器であれば、例えば手押しの芝刈り機や清掃機等に広く適用可能である。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
16 燃料タンク
16a 外観面
17 前シート(シート)
21 タンク本体
22 給油口
23a 上面部
27 凹部
27b 底面部
31 物品収納装置
32c1 ボックス開口
33 リッド
35 ヒンジ
35c ヒンジ軸
FL 上限ライン
S1 物品配置スペース