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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】端子挿入装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/20 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
H01R43/20 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021157110
(22)【出願日】2021-09-27
(65)【公開番号】P2023047916
(43)【公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 肇
(72)【発明者】
【氏名】高田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】荒木 護
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-296937(JP,A)
【文献】特開平6-84577(JP,A)
【文献】特開2018-60791(JP,A)
【文献】特開2015-30086(JP,A)
【文献】特開平9-129349(JP,A)
【文献】特開平7-240267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端部に接続された端子をハウジングのキャビティに挿入する端子挿入装置であって、
前記電線を把持する後チャック部と、
前記後チャック部よりも前記端子寄りで前記電線を把持するとともに、前記後チャック部に対して前記電線の延在方向に沿って近接及び離間方向へ移動可能な前チャック部と、
前記ハウジングに対して前記後チャック部及び前記前チャック部を進退させる駆動機構と、
前記後チャック部、前記前チャック部及び前記駆動機構の駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記前チャック部と前記後チャック部とにより前記電線を把持させる電線把持動作と、
前記後チャック部に対して、前記電線を扱きながら前記前チャック部を前記端子側へスライドさせるスライド動作と、
前記前チャック部及び前記後チャック部を、前記前チャック部が前記ハウジングに接触しない位置まで前記ハウジングへ向かって同時に移動させて前記端子を前記キャビティへ挿し込ませる挿入動作と、
前記前チャック部による前記電線の把持位置を前記後チャック部側へ移動させる掴み替え動作と、
前記前チャック部及び前記後チャック部を、前記前チャック部が前記ハウジングに接触しない位置まで前記ハウジングへ向かって同時に再び移動させて前記端子を前記キャビティへ挿し込ませる再挿入動作と、
を実行させる、
端子挿入装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記挿入動作後に、前記掴み替え動作及び前記再挿入動作を繰り返し実行させる、
請求項1に記載の端子挿入装置。
【請求項3】
前記掴み替え動作における前記前チャック部による前記電線の把持位置の移動距離は、前記前チャック部が前記電線を掴んだ状態で前記電線が座屈しない位置に設定されている、
請求項1または2に記載の端子挿入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、端子部分を挟持する端子挟持部と、端子挟持部往復動手段と、電線挟持部とを備え、端子挟持部往復動手段と電線挟持部が可動フレームに設けられた電線付端子の挿入装置が示されている。
【0003】
この挿入装置では、電線付端子の端子を端子挟持部で挟持させると共に、端子に近い部位の電線部分を電線挟持部で挟持させ、この状態で、可動フレームを前進させて端子をコネクタハウジングの端子収容室内に仮挿入する。その後、端子挟持部を斜め後外方に退避させ、可動フレームを前進させて電線挟持部で挟持した電線部分を押し込み、端子を端子収容室に本挿入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-142031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の挿入装置では、端子挟持部が端子を挟持する際に、端子が変形したり、端子の姿勢が崩れ、コネクタハウジングの端子収容室へ円滑に挿入されないおそれがある。
【0006】
また、端子挟持部が退避した後に、電線挟持部で挟持した電線部分を押し込む際に、電線が座屈しやすいため、電線挟持部における電線の挟持部分の長手方向の寸法を長くする必要があり、装置の大型化を招いてしまう。特に、近年は車両に配索される電線として電線径が小さいものに対する要求が高まっており、電線径が小さくなるほど電線が座屈しやすくなるという問題が生じやすくなる。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化を図りつつハウジングのキャビティへ端子を円滑に挿入させることが可能な端子挿入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0009】
電線の端部に接続された端子をハウジングのキャビティに挿入する端子挿入装置であって、
前記電線を把持する後チャック部と、
前記後チャック部よりも前記端子寄りで前記電線を把持するとともに、前記後チャック部に対して前記電線の延在方向に沿って近接及び離間方向へ移動可能な前チャック部と、
前記ハウジングに対して前記後チャック部及び前記前チャック部を進退させる駆動機構と、
前記後チャック部、前記前チャック部及び前記駆動機構の駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記前チャック部と前記後チャック部とにより前記電線を把持させる電線把持動作と、
前記後チャック部に対して、前記電線を扱きながら前記前チャック部を前記端子側へスライドさせるスライド動作と、
前記前チャック部及び前記後チャック部を、前記前チャック部が前記ハウジングに接触しない位置まで前記ハウジングへ向かって同時に移動させて前記端子を前記キャビティへ挿し込ませる挿入動作と、
前記前チャック部による前記電線の把持位置を前記後チャック部側へ移動させる掴み替え動作と、
前記前チャック部及び前記後チャック部を、前記前チャック部が前記ハウジングに接触しない位置まで前記ハウジングへ向かって同時に再び移動させて前記端子を前記キャビティへ挿し込ませる再挿入動作と、
を実行させる、
端子挿入装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小型化を図りつつハウジングのキャビティへ端子を円滑に挿入させることが可能な端子挿入装置を提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態に係る端子挿入装置の概略斜視図である。
図2図2は、端子挿入装置の一部の側面図である。
図3図3は、スライド動作を説明する端子挿入装置の一部の側面図である。
図4図4は、挿入動作を説明する端子挿入装置の一部の側面図である。
図5図5は、掴み替え動作を説明する端子挿入装置の一部の側面図である。
図6図6は、再挿入動作を説明する端子挿入装置の一部の側面図である。
図7図7は、掴み替え動作を説明する端子挿入装置の一部の側面図である。
図8図8は、再挿入動作を説明する端子挿入装置の一部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る端子挿入装置の概略斜視図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る端子挿入装置100は、端子1に接続された電線2を把持するチャック10と、ハウジング5を保持するハウジングホルダ20と、チャック10を移動させる駆動機構30と、制御部50とを備えている。この端子挿入装置100は、端子1を、ハウジングホルダ20に保持されたハウジング5のキャビティ6に挿入する装置である。端子1は、導電性金属材料から形成されたもので、電線2の端部に接続されている。端子1は、ハウジング5のキャビティ6に挿入されて収容される。
【0016】
ハウジングホルダ20は、ハウジング5を保持する。ハウジング5は、合成樹脂から成形されたもので、端子1を収容する複数のキャビティ6を有している。ハウジングホルダ20は、複数のキャビティ6の後部側の開口部分をチャック10側へ向けてハウジング5を把持する。
【0017】
駆動機構30は、チャック10を水平面内(X方向及びY方向)で移動させるとともに、上下方向(Z方向)へ移動させる。駆動機構30は、電線2を把持したチャック10を移動させることにより、電線2に接続された端子1をハウジングホルダ20に保持されたハウジング5のキャビティ6へ挿入させる。
【0018】
制御部50は、チャック10、ハウジングホルダ20及び駆動機構30に接続されており、これらのチャック10、ハウジングホルダ20及び駆動機構30の駆動部を制御する。
【0019】
図2は、端子挿入装置の一部の側面図である。
図2に示すように、チャック10は、前チャック部11と、後チャック部12とを有している。チャック10は、前チャック部11及び後チャック部12が、それぞれ端子1に接続された電線2を把持する。前チャック部11は、一対の把持爪11aを有しており、これらの把持爪11aによって電線2を挟持して把持する。後チャック部12は、一対の把持爪12aを有しており、これらの把持爪12aによって電線2を挟持して把持する。前チャック部11は、後チャック部12よりも端子1寄りで電線2を把持する。チャック10は、アクチュエータ15などの駆動部を有している。アクチュエータ15は、後チャック部12に対して前チャック部11を進退させる。
【0020】
端子1は、電線2に圧着されて接続される電線接続部3と、電線2との接続側と反対側である先端側に設けられた角筒状の電気接続部4とを有している。端子1には、電気接続部4に対して、先端側から相手端子のタブ(図示略)が挿し込まれる。これにより、端子1が相手端子と電気的に接続される。
【0021】
次に、上記端子挿入装置100の制御部50がチャック10、ハウジングホルダ20及び駆動機構30を駆動してハウジング5のキャビティ6へ端子1を挿入する場合について説明する。
【0022】
図3図8は、制御部によって端子をハウジングのキャビティへ挿入する動作を説明する端子挿入装置の一部の側面図である。
【0023】
(電線把持動作)
まず、チャック10の前チャック部11と後チャック部12とにより、端子1に接続された電線2を把持させる。そして、駆動機構30を駆動させてチャック10を移動させ、電線2の端部に接続された端子1をハウジングホルダ20に保持されているハウジング5の後方に配置させる(図1参照)。
【0024】
(スライド動作)
図3に示すように、アクチュエータ15によって後チャック部12に対して、電線2を扱きながら前チャック部11を端子1側へ向かって(図3中矢印A方向へ)スライドさせる。これにより、前チャック部11と後チャック部12との間における電線2の弛みがなくされる。
【0025】
(挿入動作)
図4に示すように、チャック10の前チャック部11及び後チャック部12を、ハウジング5へ向かって(図4中矢印B方向へ)同時に移動させる。これにより、前チャック部11及び後チャック部12によって電線2が把持された端子1をハウジング5のキャビティ6へ挿し込ませる。このとき、前チャック部11がハウジング5に接触しない位置まで移動させる。
【0026】
(掴み替え動作)
図5に示すように、前チャック部11による電線2の把持を解除し、前チャック部11を後チャック部12側へ向かって(図5中矢印C方向へ)スライドさせ、さらに、前チャック部11によって電線2を把持させる。これにより、前チャック部11による電線2の把持位置を後チャック部12側へ移動させる。
【0027】
(再挿入動作)
図6に示すように、チャック10の前チャック部11及び後チャック部12を、ハウジング5へ向かって(図6中矢印D方向へ)同時に移動させる。これにより、前チャック部11及び後チャック部12によって電線2が把持された端子1をハウジング5のキャビティ6へさらに挿し込ませる。このときも、前チャック部11がハウジング5に接触しない位置まで移動させる。
【0028】
(掴み替え動作)
図7に示すように、前チャック部11による電線2の把持を解除し、前チャック部11を後チャック部12側へ向かって(図7中矢印E方向へ)スライドさせ、さらに、前チャック部11によって電線2を把持させる。これにより、前チャック部11による電線2の把持位置を後チャック部12側へ移動させる。
【0029】
(再挿入動作)
図8に示すように、チャック10の前チャック部11及び後チャック部12を、ハウジング5へ向かって(図8中矢印F方向へ)同時に移動させる。これにより、前チャック部11及び後チャック部12によって電線2が把持された端子1をハウジング5のキャビティ6へさらに挿し込ませる。このときも、前チャック部11がハウジング5に接触しない位置まで移動させる。
【0030】
上記動作を制御部50が実行させることにより、ハウジング5のキャビティ6へ電線2の端部に接続された端子1を円滑に挿入させることができる。
【0031】
なお、上記掴み替え動作(図5及び図7参照)における前チャック部11による電線2の把持位置の移動距離Lは、前チャック部11が電線2を掴んだ状態で電線2が座屈しない位置に設定する。これにより、再挿入動作時における電線2の座屈を抑え、ハウジング5のキャビティ6へ端子1を円滑に挿入させることができる。
【0032】
以上、説明したように、後チャック部12と前チャック部11とで電線2を把持し、電線2の端部に接続された端子1をハウジング5のキャビティ6に挿入するので、端子1を把持することによる端子1の変形や姿勢の崩れを回避できる。また、細径化され座屈しやすい電線を扱う場合にも、電線を座屈させることなく端子をハウジングのキャビティに挿入できる。また、後チャック部12に対して前チャック部11を近接及び離間方向へ移動させて電線2の把持位置を変更させながら端子1をキャビティ6に挿入することができるので、後チャック部12及び前チャック部11の長さを短くして装置の小型化を図りつつ、一度の挿入動作における端子1の挿入量を大きくして効率的に端子1を挿入することができる。
【0033】
また、挿入動作後に、掴み替え動作及び再挿入動作を繰り返し実行することにより、端子1の挿入量をさらに大きくして効率的に端子1を挿入することができる。
【0034】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0035】
ここで、上述した本発明に係る端子挿入装置の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 電線(2)の端部に接続された端子(1)をハウジング(5)のキャビティ(6)に挿入する端子挿入装置(100)であって、
前記電線(2)を把持する後チャック部(12)と、
前記後チャック部(12)よりも前記端子(1)寄りで前記電線(2)を把持するとともに、前記後チャック部(12)に対して前記電線(2)の延在方向に沿って近接及び離間方向へ移動可能な前チャック部(11)と、
前記ハウジング(5)に対して前記後チャック部(12)及び前記前チャック部(11)を進退させる駆動機構(30)と、
前記後チャック部(12)、前記前チャック部(11)及び前記駆動機構(30)の駆動を制御する制御部(50)と、
を備え、
前記制御部(50)は、
前記前チャック部(11)と前記後チャック部(12)とにより前記電線(2)を把持させる電線把持動作と、
前記後チャック部(12)に対して、前記電線(2)を扱きながら前記前チャック部(11)を前記端子(1)側へスライドさせるスライド動作と、
前記前チャック部(11)及び前記後チャック部(12)を、前記前チャック部(11)が前記ハウジング(5)に接触しない位置まで前記ハウジング(5)へ向かって同時に移動させて前記端子(1)を前記キャビティ(6)へ挿し込ませる挿入動作と、
前記前チャック部(11)による前記電線(2)の把持位置を前記後チャック部(12)側へ移動させる掴み替え動作と、
前記前チャック部(11)及び前記後チャック部(12)を、前記前チャック部(11)が前記ハウジング(5)に接触しない位置まで前記ハウジング(5)へ向かって同時に再び移動させて前記端子(1)を前記キャビティ(6)へ挿し込ませる再挿入動作と、
を実行させる、
端子挿入装置。
【0036】
上記[1]の構成の端子挿入装置によれば、後チャック部と前チャック部とで電線を把持し、電線の端部に接続された端子をハウジングのキャビティに挿入するので、端子を把持することによる端子の変形や姿勢の崩れを回避できる。また、細径化され座屈しやすい電線を扱う場合にも、電線を座屈させることなく端子をハウジングのキャビティに挿入できる。また、後チャック部に対して前チャック部を近接及び離間方向へ移動させて電線の把持位置を変更させながら端子をキャビティに挿入することができるので、後チャック部及び前チャック部の長さを短くして装置の小型化を図りつつ、一度の挿入動作における端子の挿入量を大きくして効率的に端子を挿入することができる。
【0037】
[2] 前記制御部(50)は、前記挿入動作後に、前記掴み替え動作及び前記再挿入動作を繰り返し実行させる、
上記[1]に記載の端子挿入装置。
【0038】
上記[2]の構成の端子挿入装置によれば、挿入動作後に、掴み替え動作及び再挿入動作が繰り返し実行されることにより、端子の挿入量をさらに大きくして効率的に端子を挿入することができる。
【0039】
[3] 前記掴み替え動作における前記前チャック部(11)による前記電線(2)の把持位置の移動距離(L)は、前記前チャック部(11)が前記電線(2)を掴んだ状態で前記電線(2)が座屈しない位置に設定されている、
上記[1]または[2]に記載の端子挿入装置。
【0040】
上記[3]の構成の端子挿入装置によれば、再挿入動作時における電線の座屈を確実に抑え、ハウジングのキャビティへ端子を円滑に挿入させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 端子
2 電線
5 ハウジング
6 キャビティ
11 前チャック部
12 後チャック部
30 駆動機構
50 制御部
100 端子挿入装置
L 移動距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8