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特許7372315電極製造方法及び蓄電デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】電極製造方法及び蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20231024BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20231024BHJP
   H01G 11/50 20130101ALI20231024BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20231024BHJP
【FI】
H01M4/139
H01G11/06
H01G11/50
H01G11/84
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021513512
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007736
(87)【国際公開番号】W WO2020208965
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2019074791
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307037543
【氏名又は名称】武蔵エナジーソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青野 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】南坂 健二
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-272492(JP,A)
【文献】国際公開第2017/146223(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106702441(CN,A)
【文献】特開2000-200610(JP,A)
【文献】特開2018-022608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/139
H01G 11/06
H01G 11/50
H01G 11/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属がドープされた活物質を含む電極を製造する電極製造方法であって、
集電体と、前記集電体の表面に形成され、活物質を含む活物質層とを備える電極前駆体を、アルカリ金属イオン、溶媒、及び、前記溶媒の還元分解を抑制可能な添加剤を含む前処理溶液に浸漬し、
前記電極前駆体を前記前処理溶液に浸漬した後、前記電極前駆体を前記前処理溶液から取り出し、アルカリ金属イオンを含むドープ溶液を用い、前記活物質にアルカリ金属をドープする電極製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電極製造方法であって、
前記前処理溶液における前記添加剤の濃度は、0.001質量%以上10質量%以下である電極製造方法。
【請求項3】
アルカリ金属がドープされた活物質を含む電極を製造する電極製造方法であって、
集電体と、前記集電体の表面に形成され、活物質を含む活物質層とを備える電極前駆体を、アルカリ金属イオン、溶媒、及び、前記溶媒の還元分解を抑制可能な添加剤を含む前処理溶液に浸漬し、
前記電極前駆体を前記前処理溶液に浸漬した後、アルカリ金属イオンを含むドープ溶液を用い、前記活物質にアルカリ金属をドープし、
前記添加剤は、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン、スクシノニトリル、及びアジポニトリルから成る群から選択される1種以上を含み、
前記添加剤は、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ホウフッ化リチウム、リチウムビスオキサレートボラート、及びLiPFから成る群から選択される1種以上をさらに含む電極製造方法。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の電極製造方法であって、
前記溶媒は、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、ニトリル系溶媒、含硫黄系溶媒、及びアミド系溶媒から成る群から選択される1種以上である電極製造方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の電極製造方法であって、
前記溶媒は、カーボネート系溶媒である電極製造方法。
【請求項6】
アルカリ金属がドープされた活物質を含む電極を製造する電極製造方法であって、
集電体と、前記集電体の表面に形成され、活物質を含む活物質層とを備える電極前駆体を、アルカリ金属イオン、溶媒、及び、前記溶媒の還元分解を抑制可能な添加剤を含む前処理溶液に浸漬し、
前記電極前駆体を前記前処理溶液に浸漬した後、アルカリ金属イオンを含むドープ溶液を用い、前記活物質にアルカリ金属をドープし、
前記ドープ溶液における前記添加剤の濃度は、0.1質量%以下である電極製造方法。
【請求項7】
電極セルを備える蓄電デバイスの製造方法であって、
負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成され、負極活物質を含む負極活物質層とを備える負極前駆体を、アルカリ金属イオン、溶媒、及び、前記溶媒の還元分解を抑制可能な添加剤を含む前処理溶液に浸漬し、
前記負極前駆体を前記前処理溶液に浸漬した後、前記負極前駆体を前記前処理溶液から取り出し、アルカリ金属イオンを含むドープ溶液を用い、前記負極活物質にアルカリ金属をドープして負極を製造し、
前記負極と、セパレータと、前記負極とは異なる電極とを順次積層して前記電極セルを形成する蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2019年4月10日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2019-74791号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2019-74791号の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は電極製造方法及び蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、電子機器の小型化・軽量化は目覚ましく、それに伴い、当該電子機器の駆動用電源として用いられる電池に対しても小型化・軽量化の要求が一層高まっている。
【0004】
このような小型化・軽量化の要求を満足するために、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池が開発されている。また、高エネルギー密度特性及び高出力特性を必要とする用途に対応する蓄電デバイスとして、リチウムイオンキャパシタが知られている。更に、リチウムより低コストで資源的に豊富なナトリウムを用いたナトリウムイオン型の電池やキャパシタも知られている。
【0005】
このような電池やキャパシタにおいては、様々な目的のために、予めアルカリ金属を電極にドープするプロセス(一般にプレドープと呼ばれている)が採用されている。アルカリ金属を電極にプレドープする方法として、例えば、枚葉式の方法、連続式の方法がある。枚葉式の方法及び連続式の方法では、蓄電デバイスの外(以下では系外とする)でプレドープを行う。枚葉式の方法では、切り取られた電極板とアルカリ金属板とを、セパレータを介してドープ溶液中に配置した状態でプレドープを行う。連続式の方法では、帯状の電極板をドープ溶液中で移送させながらプレドープを行う。枚葉式の方法は、特許文献1、2に開示されている。連続式の方法は、特許文献3~6に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-293499号公報
【文献】特開2012-69894号公報
【文献】特開平10-308212号公報
【文献】特開2008-77963号公報
【文献】特開2012-49543号公報
【文献】特開2012-49544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の方法で系外にてプレドープを行った電極を蓄電デバイスに適用すると、フロート特性が充分でなく、電極から発生するガスが多かった。また、従来の方法で系外にて高レートでプレドープを行うと、リチウムが析出して充電効率が低いという課題があった。
【0008】
本開示の一局面では、蓄電デバイスのフロート特性を向上させることができ、電極からのガス発生を抑制でき、充電効率を高めることができる電極製造方法及び蓄電デバイスの製造方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一局面は、アルカリ金属がドープされた活物質を含む電極を製造する電極製造方法であって、集電体と、前記集電体の表面に形成され、活物質を含む活物質層とを備える電極前駆体を、アルカリ金属イオン、溶媒、及び、前記溶媒の還元分解を抑制可能な添加剤を含む前処理溶液に浸漬し、前記電極前駆体を前記前処理溶液に浸漬した後、アルカリ金属イオンを含むドープ溶液を用い、前記活物質にアルカリ金属をドープする電極製造方法である。
【0010】
本開示の一局面である電極製造方法により製造した電極を備える蓄電デバイスは、フロート特性において優れている。また、本開示の一局面である電極製造方法により製造した電極は、ガスが発生し難く、さらに充電効率が高い。
【0011】
本開示の別の局面は、電極セルを備える蓄電デバイスの製造方法であって、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成され、負極活物質を含む負極活物質層とを備える負極前駆体を、アルカリ金属イオン、溶媒、及び、前記溶媒の還元分解を抑制可能な添加剤を含む前処理溶液に浸漬し、前記負極前駆体を前記前処理溶液に浸漬した後、アルカリ金属イオンを含むドープ溶液を用い、前記負極活物質にアルカリ金属をドープして負極を製造し、前記負極と、セパレータと、前記負極とは異なる電極とを順次積層して前記電極セルを形成する蓄電デバイスの製造方法である。
【0012】
本開示の別の局面である蓄電デバイスの製造方法により製造した蓄電デバイスは、フロート特性において優れている。また、本開示の別の局面である蓄電デバイスの製造方法により製造した蓄電デバイスでは、電極からガスが発生し難く、さらに充電効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電極製造装置の構成を表す説明図である。
図2】電解液槽を下方に移動させた状態を表す説明図である。
図3】電極製造装置の電気的構成を表す説明図である。
図4】対極ユニット及び多孔質絶縁部材の構成を表す側断面図である。
図5】電極前駆体の構成を表す平面図である。
図6図5におけるVI-VI断面での断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1…電極製造装置、7、203、205、207…電解液槽、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、305、307、109、311、313、315、317、119、321、323、33、35、37、39、41、43、45…搬送ローラ、47…供給ロール、49…巻取ロール、51、52、54…対極ユニット、53…多孔質絶縁部材、55…支持台、57…循環濾過ユニット、61、62、64…直流電源、63…ブロア、66…電源制御ユニット、67、68、70…支持棒、69…仕切り板、71…空間、73…電極前駆体、75…電極、77…導電性基材、79…アルカリ金属含有板、81…フィルタ、83…ポンプ、85…配管、87、89、91、94、97、99…ケーブル、93…集電体、95…活物質層、101…CPU、103…洗浄槽、105…メモリ
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
1.電極製造装置1の構成
電極製造装置1の構成を、図1図4に基づき説明する。図1に示すように、電極製造装置1は、電解液槽203、205、7、207と、洗浄槽103と、搬送ローラ9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、305、307、109、311、313、315、317、119、321、323、33、35、37、39、41、43、45(以下ではこれらをまとめて搬送ローラ群と呼ぶこともある)と、供給ロール47と、巻取ロール49と、対極ユニット51、52、54と、多孔質絶縁部材53と、支持台55と、循環濾過ユニット57と、3つの直流電源61、62、64と、ブロア63と、電源制御ユニット66と、を備える。
【0016】
電解液槽205は、図1及び図2に示すように、上方が開口した角型の槽である。電解液槽205の底面は、略U字型の断面形状を有する。電解液槽205内には、仕切り板69と、4個の対極ユニット51と、4個の多孔質絶縁部材53と、搬送ローラ27とが存在する。図2に示すように、4個の多孔質絶縁部材53には、53a、53b、53c、53dが含まれる。
【0017】
仕切り板69は、その上端を貫く支持棒67により支持されている。支持棒67は図示しない壁等に固定されている。仕切り板69のうち、上端を除く部分は、電解液槽205内にある。仕切り板69は上下方向に延び、電解液槽205の内部を2つの空間に分割している。仕切り板69の下端に、搬送ローラ27が取り付けられている。仕切り板69と搬送ローラ27とは、それらを貫く支持棒68により支持されている。なお、仕切り板69の下端付近は、搬送ローラ27と接触しないように切り欠かれている。搬送ローラ27と、電解液槽205の底面との間には空間が存在する。
【0018】
4個の対極ユニット51は、それぞれ、それらの上端を貫く支持棒70により支持され、上下方向に延びている。支持棒70は図示しない壁等に固定されている。対極ユニット51のうち、上端を除く部分は、電解液槽205内にある。4個の対極ユニット51のうち、2個は、仕切り板69を両側から挟むように配置されている。残りの2個の対極ユニット51は、電解液槽205の内側面に沿って配置されている。
【0019】
図1に示すように、仕切り板69側に配置された対極ユニット51と、電解液槽205の内側面に沿って配置された対極ユニット51との間には空間71が存在する。対極ユニット51は、直流電源61のプラス極に接続される。対極ユニット51の詳しい構成は後述する。
【0020】
それぞれの対極ユニット51における空間71側の表面に、多孔質絶縁部材53が取り付けられている。多孔質絶縁部材53の詳しい構成は後述する。電解液槽205にはドープ溶液が収容される。ドープ溶液については後述する。
【0021】
電解液槽203は、基本的には電解液槽205と同様の構成を有する。ただし、電解液槽203は、対極ユニット51及び多孔質絶縁部材53を備えない。また、電解液槽203は、搬送ローラ27に代えて、搬送ローラ17を備える。搬送ローラ17は、搬送ローラ27と同様のものである。電解液槽203には、前処理溶液が収容される。前処理溶液については後述する。
【0022】
電解液槽7は、基本的には電解液槽205と同様の構成を有する。ただし、電解液槽7は、4個の対極ユニット51及び搬送ローラ27に代えて、4個の対極ユニット54及び搬送ローラ109を備える。4個の対極ユニット54は、4個の対極ユニット51と同様のものである。搬送ローラ109は、搬送ローラ27と同様のものである。対極ユニット54は、直流電源62のプラス極に接続される。電解液槽7にはドープ溶液が収容される。
【0023】
電解液槽207は、電解液槽205と同様の構成を有する。ただし、電解液槽207は、4個の対極ユニット51及び搬送ローラ27に代えて、4個の対極ユニット52及び搬送ローラ119を備える。4個の対極ユニット52は、4個の対極ユニット51と同様のものである。搬送ローラ119は、搬送ローラ27と同様のものである。対極ユニット52は、直流電源64のプラス極に接続される。電解液槽207にはドープ溶液が収容される。
【0024】
洗浄槽103は、基本的には電解液槽205と同様の構成を有する。ただし、洗浄槽103は、対極ユニット51及び多孔質絶縁部材53を備えない。また、洗浄槽103は、搬送ローラ27に代えて、搬送ローラ37を備える。搬送ローラ37は、搬送ローラ27と同様のものである。洗浄槽103には洗浄液が収容される。
【0025】
搬送ローラ25、29、307、311、317、321は、導電性の材料から成る。搬送ローラ群のうち、その他の搬送ローラは、軸受部分を除き、エラストマーから成る。搬送ローラ群は、後述する電極前駆体73を一定の経路に沿って搬送する。搬送ローラ群が電極前駆体73を搬送する経路は、供給ロール47から、電解液槽203の中、電解液槽205の中、電解液槽7の中、電解液槽207の中、及び洗浄槽103の中を順次通り、巻取ロール49に至る経路である。
【0026】
その経路のうち、電解液槽203の中を通る部分は、まず、電解液槽203の内側面と、仕切り板69との間を下方に移動し、次に、搬送ローラ17により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽203の内側面と、それに対向する仕切り板69との間を上方に移動するという経路である。
【0027】
また、上記の経路のうち、電解液槽205の中を通る部分は、まず、電解液槽205の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を下方に移動し、次に、搬送ローラ27により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽205の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を上方に移動するという経路である。
【0028】
また、上記の経路のうち、電解液槽7の中を通る部分は、まず、電解液槽7の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を下方に移動し、次に、搬送ローラ109により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽7の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を上方に移動するという経路である。
【0029】
また、上記の経路のうち、電解液槽207の中を通る部分は、まず、電解液槽207の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を下方に移動し、次に、搬送ローラ119により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽207の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を上方に移動するという経路である。
【0030】
また、上記の経路のうち、洗浄槽103の中を通る部分は、まず、洗浄槽103の内側面と、仕切り板69との間を下方に移動し、次に、搬送ローラ37により移動方向を上向きに変えられ、最後に、洗浄槽103の内側面と、仕切り板69との間を上方に移動するという経路である。
【0031】
供給ロール47は、その外周に電極前駆体73を巻き回している。すなわち、供給ロール47は、巻き取られた状態の電極前駆体73を保持している。搬送ローラ群は、供給ロール47に保持された電極前駆体73を引き出し、搬送する。
【0032】
巻取ロール49は、搬送ローラ群により搬送されてきた電極75を巻き取り、保管する。なお、電極75は、電極前駆体73に対し、電解液槽205、7、207においてアルカリ金属のプレドープを行うことで製造されたものである。
【0033】
対極ユニット51、52、54は、板状の形状を有する。図4に示すように、対極ユニット51、52、54は、導電性基材77と、アルカリ金属含有板79とを積層した構成を有する。導電性基材77の材質としては、例えば、銅、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。アルカリ金属含有板79の形態は特に限定されず、例えば、アルカリ金属板、アルカリ金属の合金板等が挙げられる。アルカリ金属含有板79の厚さは、例えば、0.03~3mmとすることができる。
【0034】
多孔質絶縁部材53は、板状の形状を有する。多孔質絶縁部材53は、図4に示すように、アルカリ金属含有板79の上に積層され、対極ユニット51、52、54の表面に取り付けられている。多孔質絶縁部材53が有する板状の形状とは、多孔質絶縁部材53が対極ユニット51、52、54の表面に取り付けられている際の形状である。多孔質絶縁部材53は、それ自体で一定の形状を保つ部材であってもよいし、例えばネット等のように、容易に変形可能な部材であってもよい。
【0035】
図4に示すように、多孔質絶縁部材53と、搬送ローラ群により搬送される電極前駆体73とは非接触である。多孔質絶縁部材53の表面から、電極前駆体73までの最短距離dは、0.5~100mmの範囲内であることが好ましく、1~10mmの範囲内であることが特に好ましい。最短距離dとは、多孔質絶縁部材53の表面のうち、電極前駆体73に最も近い点と、電極前駆体73との距離である。
【0036】
多孔質絶縁部材53は多孔質である。そのため、後述するドープ溶液は、多孔質絶縁部材53を通過することができる。そのことにより、対極ユニット51、52、54は、ドープ溶液に接触することができる。
【0037】
多孔質絶縁部材53としては、例えば、樹脂製のメッシュ等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。メッシュの目開きは適宜設定でき、例えば、0.1μm~10mmとすることができるが、0.1~5mmの範囲内にあることが好ましい。メッシュの厚みは適宜設定でき、例えば、1μm~10mmとすることができるが、30μm~1mmの範囲内にあることが好ましい。メッシュの目開き率は適宜設定でき、例えば、5~98%とすることができるが、5~95%であることが好ましく、50~95%の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0038】
多孔質絶縁部材53は、その全体が絶縁性の材料から成っていてもよいし、その一部に絶縁性の層を備えていてもよい。
【0039】
支持台55は、電解液槽203、205、7、207及び洗浄槽103を下方から支持する。支持台55は、その高さを変えることができる。仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53の上下方向における位置を維持したまま、電解液槽205を支持する支持台55を低くすると、図2に示すように、仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53に対し、電解液槽205を相対的に下方に移動させることができる。また、支持台55高くすると、仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53に対し、電解液槽205を相対的に上方に移動させることができる。電解液槽203、7、207及び洗浄槽103を支持する支持台55も同様の機能を有する。
【0040】
循環濾過ユニット57は、電解液槽203、205、7、207にそれぞれ設けられている。循環濾過ユニット57は、フィルタ81と、ポンプ83と、配管85と、を備える。
【0041】
電解液槽203に設けられた循環濾過ユニット57において、配管85は、電解液槽203から出て、ポンプ83、及びフィルタ81を順次通り、電解液槽203に戻る循環配管である。
【0042】
電解液槽203内の前処理溶液は、ポンプ83の駆動力により、配管85、及びフィルタ81内を循環し、再び電解液槽203に戻る。このとき、前処理溶液中の異物等は、フィルタ81により濾過される。異物としては、前処理溶液から析出した異物や、電極前駆体73から発生する異物等が挙げられる。フィルタ81の材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂とすることができる。フィルタ81の孔径は適宜設定でき、例えば、30~50μmとすることができる。
【0043】
電解液槽205、7、207に設けられた循環濾過ユニット57も、同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。ただし、電解液槽205、7、207に設けられた循環濾過ユニット57は、ドープ溶液を濾過する。なお、図1図2において、ドープ溶液及び前処理溶液の記載は便宜上省略している。
【0044】
図3に示すように、直流電源61におけるマイナス端子は、ケーブル87を介して、搬送ローラ25、29とそれぞれ接続する。また、直流電源61のプラス端子は、ケーブル89を介して、合計4個の対極ユニット51にそれぞれ接続する。電極前駆体73は、導電性の搬送ローラ25、29と接触する。電極前駆体73と対極ユニット51とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、電極前駆体73と対極ユニット51とは電気的に接続する。直流電源61は、ケーブル87、89、及び搬送ローラ25、29を介して対極ユニット51に電流を流す。
【0045】
図3に示すように、直流電源62におけるマイナス端子は、ケーブル91を介して、搬送ローラ307、311とそれぞれ接続する。また、直流電源62のプラス端子は、ケーブル94を介して、合計4個の対極ユニット54にそれぞれ接続する。電極前駆体73は、導電性の搬送ローラ307、311と接触する。電極前駆体73と対極ユニット54とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、電極前駆体73と対極ユニット54とは電気的に接続する。直流電源62は、ケーブル91、93、及び搬送ローラ307、311を介して対極ユニット54に電流を流す。
【0046】
図3に示すように、直流電源64におけるマイナス端子は、ケーブル97を介して、搬送ローラ317、321とそれぞれ接続する。また、直流電源64のプラス端子は、ケーブル99を介して、合計4個の対極ユニット52にそれぞれ接続する。電極前駆体73は、導電性の搬送ローラ317、321と接触する。電極前駆体73と対極ユニット52とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、電極前駆体73と対極ユニット52とは電気的に接続する。直流電源64は、ケーブル97、99、及び搬送ローラ317、321を介して対極ユニット52に電流を流す。
【0047】
ブロア63は、洗浄槽103から出てきた電極75にガスを吹きつけて洗浄液を気化させ、電極75を乾燥させる。使用するガスは、アルカリ金属がプレドープされた活物質に対して不活性なガスであることが好ましい。そのようなガスとして、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、水分が除去された除湿空気等が挙げられる。
【0048】
図3に示すように、電源制御ユニット66は、直流電源61、62、64と電気的に接続している。電源制御ユニット66は、CPU101と、例えば、RAM又はROM等の半導体メモリ(以下、メモリ105とする)と、を有するマイクロコンピュータである。
【0049】
2.電極前駆体73の構成
電極前駆体73の構成を図5及び図6に基づき説明する。電極前駆体73は、図5に示すように、帯状の形状を有する。電極前駆体73は、図6に示すように、帯状の集電体93と、その両側に形成された活物質層95とを備える。
【0050】
集電体93としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス等の金属箔が好ましい。また、集電体93は、上記金属箔上に炭素材料を主成分とする導電層が形成されたものであってもよい。集電体93の厚みは、例えば、5~50μmとすることができる。
【0051】
活物質層95は、例えば、アルカリ金属をドープする前の活物質及びバインダー等を含有するスラリーを調製し、このスラリーを集電体93上に塗布し、乾燥させることにより作製できる。
【0052】
上記バインダーとしては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、NBR等のゴム系バインダー;ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、特開2009-246137号公報に開示されているようなフッ素変性(メタ)アクリル系バインダー等が挙げられる。
【0053】
上記スラリーは、活物質及びバインダーに加えて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、気相成長炭素繊維、金属粉末等の導電剤;カルボキシルメチルセルロース、そのNa塩又はアンモニウム塩、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等の増粘剤が挙げられる。
【0054】
活物質層95の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、5~500μm、好ましくは10~200μm、特に好ましくは10~100μmである。
【0055】
活物質層95に含まれる活物質は、アルカリ金属イオンの挿入/脱離を利用する電池又はキャパシタに適用可能な電極活物質であれば特に限定されるものではなく、負極活物質であってもよいし、正極活物質であってもよい。
【0056】
負極活物質は、特に限定されるものではないが、例えば、黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、黒鉛粒子をピッチや樹脂の炭化物で被覆した複合炭素材料等の炭素材料;リチウムと合金化が可能なSi、Sn等の金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料等が挙げられる。炭素材料の具体例としては、特開2013-258392号公報に記載の炭素材料が挙げられる。リチウムと合金化が可能な金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料の具体例としては、特開2005-123175号公報、特開2006-107795号公報に記載の材料が挙げられる。
【0057】
正極活物質としては、例えば、コバルト酸化物、ニッケル酸化物、マンガン酸化物、バナジウム酸化物等の遷移金属酸化物;硫黄単体、金属硫化物等の硫黄系活物質が挙げられる。
【0058】
正極活物質、及び負極活物質のいずれにおいても、単一の物質から成るものであってもよいし、2種以上の物質を混合して成るものであってもよい。本開示の電極製造装置1は、負極活物質にアルカリ金属をプレドープする場合に適しており、特に、負極活物質が炭素材料又はSi若しくはその酸化物を含む材料であることが好ましい。
【0059】
活物質にプレドープするアルカリ金属としては、リチウム又はナトリウムが好ましく、特にリチウムが好ましい。電極前駆体73を、リチウムイオン二次電池の電極の製造に用いる場合、活物質層95の密度は、好ましくは1.50~2.00g/ccであり、特に好ましくは1.60~1.90g/ccである。
【0060】
3.ドープ溶液の組成
電極製造装置1を使用するとき、電解液槽205、7、207に、アルカリ金属イオンを含む溶液(以下ではドープ溶液とする)を収容する。
【0061】
ドープ溶液は、アルカリ金属イオンと、溶媒とを含む。溶媒として、例えば、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、非プロトン性の有機溶媒が好ましい。非プロトン性の有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)等が挙げられる。
【0062】
また、上記有機溶媒として、第4級イミダゾリウム塩、第4級ピリジニウム塩、第4級ピロリジニウム塩、第4級ピペリジニウム塩等のイオン液体を使用することもできる。上記有機溶媒は、単一の成分から成るものであってもよいし、2種以上の成分の混合溶媒であってもよい。有機溶媒は、単一の成分から成るものであってもよいし、2種以上の成分の混合溶媒であってもよい。
【0063】
上記ドープ溶液に含まれるアルカリ金属イオンは、アルカリ金属塩を構成するイオンである。アルカリ金属塩は、好ましくはリチウム塩又はナトリウム塩である。アルカリ金属塩を構成するアニオン部としては、例えば、PF6 -、PF3(C253 -、PF3(CF33 -等のフルオロ基を有するリンアニオン;BF4 -、BF2(CF)2 -、BF3(CF3-、B(CN)4 -等のフルオロ基又はシアノ基を有するホウ素アニオン;N(FSO22 -、N(CF3SO22 -、N(C25SO22 -等のフルオロ基を有するスルホニルイミドアニオン;CF3SO3 -等のフルオロ基を有する有機スルホン酸アニオンが挙げられる。
【0064】
上記ドープ溶液におけるアルカリ金属塩の濃度は、好ましくは0.1モル/L以上であり、より好ましくは0.5~1.5モル/Lの範囲内である。この範囲内である場合、アルカリ金属のプレドープが効率よく進行する。
【0065】
上記ドープ溶液は、ホスファゼン化合物等の難燃剤をさらに含有することができる。難燃剤の添加量は、アルカリ金属をドープする際の熱暴走反応を効果的に制御する観点から、ドープ溶液100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。また、難燃剤の添加量は、高品質のドープ電極を得る観点から、ドープ溶液100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
【0066】
ドープ溶液は、溶媒の還元分解を抑制可能な添加剤(以下では特定添加剤とする)をさらに含む。特定添加剤として、例えば、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート等の環状炭酸エステル化合物、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン等の環状スルホン酸エステル化合物、スクシノニトリル、アジポニトリル等のニトリル化合物、並びにリン酸(トリストリメチルシリル)等のリン酸エステル化合物から成る群から選択される1種以上が挙げられる。
【0067】
また、他の特定添加剤として、例えば、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ホウフッ化リチウム、リチウムビスオキサレートボラート、LiPF248等のリチウム塩が挙げられる。
【0068】
ドープ溶液における特定添加剤の濃度は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。ドープ溶液における特定添加剤の濃度は、0質量%以上であることが好ましい。ドープ溶液における特定添加剤の濃度を上記の範囲とすることで、蓄電デバイスのフロート特性を向上させることができ、電極からのガス発生を低減する効果が得られる。
【0069】
4.前処理溶液の組成
前処理溶液は、アルカリ金属イオン、溶媒、及び、特定添加剤を含む。アルカリ金属イオン、及び溶媒として、ドープ溶液と同様のものを用いることができる。溶媒として、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、ニトリル系溶媒、含硫黄系溶媒、及びアミド系溶媒から成る群から選択される1種以上が好ましい。溶媒がこれらのものである場合、蓄電デバイスのフロート特性、サイクル特性、充放電効率及び抵抗に関する初期特性、並びに、低温での充放電特性が一層向上する。
【0070】
溶媒として、カーボネート系溶媒が特に好ましい。カーボネート系溶媒として、例えば、環状カーボネート、鎖状カーボネート等が挙げられる。環状カーボネートとして、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状カーボネートとして、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等が挙げられる。
【0071】
カーボネート系溶媒は、1種のみのカーボネート系溶媒から成っていてもよいし、2種以上のカーボネート系溶媒の混合溶媒であってもよい。2種以上のカーボネート系溶媒の混合溶媒は、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒であることが好ましい。溶媒が、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒である場合、蓄電デバイスのフロート特性、サイクル特性、充放電効率及び抵抗に関する初期特性、並びに、低温での充放電特性が一層向上する場合がある。
【0072】
特定添加剤として、第1の特定添加剤がある。第1の特定添加剤として、例えば、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート等の環状炭酸エステル化合物、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン等の環状スルホン酸エステル化合物、スクシノニトリル、アジポニトリル等のニトリル化合物、並びにリン酸(トリストリメチルシリル)等のリン酸エステル化合物から成る群から選択される1種以上が挙げられる。
【0073】
また、他の特定添加剤として、第2の特定添加剤がある。第2の特定添加剤として、例えば、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ホウフッ化リチウム、リチウムビスオキサレートボラート、LiPF248等のリチウム塩が挙げられる。特定添加剤がこれらのものである場合、蓄電デバイスのフロート特性、サイクル特性、充放電効率及び抵抗に関する初期特性、並びに、低温での充放電特性が一層向上する。
【0074】
特定添加剤は、第1の特定添加剤と、第2の特定添加剤とを含む混合物であることが好ましい。特定添加剤が、第1の特定添加剤と、第2の特定添加剤とを含む混合物である場合、蓄電デバイスのフロート特性、サイクル特性、充放電効率及び抵抗に関する初期特性、並びに、低温での充放電特性が一層向上する場合がある。
【0075】
前処理溶液における特定添加剤の濃度は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。前処理液における特定添加剤の濃度は0.001質量%以上であることが好ましく、0.003質量%以上であることがより好ましく、0.005質量%以上であることがさらに好ましい。前処理溶液における特定添加剤の濃度が上記の範囲内である場合、蓄電デバイスのフロート特性、サイクル特性、充放電効率及び抵抗に関する初期特性、並びに、低温での充放電特性が一層向上する。
【0076】
5.電極製造装置1を用いた電極75の製造方法
まず、電極75を製造するための準備として、以下のことを行う。電極前駆体73を供給ロール47に巻き回す。次に、搬送ローラ群により、電極前駆体73を供給ロール47から引き出し、上述した経路に沿って巻取ロール49まで通紙する。そして、電解液槽203、205、7、207、及び洗浄槽103を上昇させ、図1に示す定位置へセットする。電解液槽203に前処理溶液を収容する。前処理溶液は、上記「4.前処理溶液の組成」で述べたものである。また、電解液槽205、7、207にドープ溶液を収容する。ドープ溶液は、上記「3.ドープ溶液の組成」で述べたものである。洗浄槽103に洗浄液を収容する。洗浄液は有機溶剤である。その結果、電解液槽203の空間71は前処理溶液で満たされる。電解液槽205、7、207の空間71はドープ溶液で満たされる。洗浄槽103の空間71は洗浄液で満たされる。
【0077】
次に、搬送ローラ群により、供給ロール47から巻取ロール49まで通紙された電極前駆体73を供給ロール47から巻取ロール49に向かって、引き出し、上述した経路に沿って搬送する。電極前駆体73が電解液槽203内を通過するとき、電極前駆体73が前処理溶液に浸漬される。また、電極前駆体73が電解液槽205、7、207内を通過するとき、活物質層95に含まれる活物質にアルカリ金属がプレドープされる。
【0078】
活物質にアルカリ金属がプレドープされることにより、電極前駆体73が電極75となる。電極75は搬送ローラ群により搬送されながら、洗浄槽103で洗浄される。最後に、電極75は、巻取ロール49に巻き取られる。
【0079】
電極製造装置1を用いて製造する電極75は、正極であってもよいし、負極であってもよい。正極を製造する場合、電極製造装置1は、正極活物質にアルカリ金属をドープし、負極を製造する場合、電極製造装置1は、負極活物質にアルカリ金属をドープする。
【0080】
アルカリ金属のドープ量は、リチウムイオンキャパシタの負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは70~95%であり、リチウムイオン二次電池の負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは10~30%である。
【0081】
6.蓄電デバイスの製造方法
蓄電デバイスは電極セルを備える。蓄電デバイスとして、例えば、キャパシタ、電池等が挙げられる。キャパシタとしては、アルカリ金属イオンの挿入/脱離を利用するキャパシタであれば特に限定されるものではないが、例えば、リチウムイオンキャパシタ、ナトリウムイオンキャパシタ等が挙げられる。その中でもリチウムイオンキャパシタが好ましい。
【0082】
キャパシタを構成する正極の基本的な構成は、一般的な構成とすることができる。正極活物質としては活性炭を使用することが好ましい。
【0083】
キャパシタを構成する電解質の形態は、通常、液状の電解液である。電解液の基本的な構成は、上述したドープ溶液の構成と同様である。また、電解質におけるアルカリ金属イオン(アルカリ金属塩)の濃度は、好ましくは0.1モル/L以上であり、より好ましくは0.5~1.5モル/Lの範囲内である。電解質は、漏液を防止する目的で、ゲル状又は固体状の形態を有していてもよい。
【0084】
キャパシタは、正極と負極との間に、それらの物理的な接触を抑制するためのセパレータを備えることができる。セパレータとしては、例えば、セルロースレーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド等を原料とする不織布又は多孔質フィルムを挙げることができる。
【0085】
キャパシタの構造としては、例えば、正極及び負極と、それらを介するセパレータとから成る板状の構成単位が、3単位以上積層されて積層体を形成し、その積層体が外装フィルム内に封入された積層型セルが挙げられる。
【0086】
また、キャパシタの構造としては、例えば、正極及び負極と、それらを介するセパレータとから成る帯状の構成単位が捲回されて積層体を形成し、その積層体が角型又は円筒型の容器に収納された捲回型セル等が挙げられる。
【0087】
キャパシタは、例えば、少なくとも負極及び正極を含む基本構造を形成し、その基本構造に電解質を注入することにより製造できる。
【0088】
リチウムイオンキャパシタの場合、その活物質層の密度は、好ましくは0.50~1.50g/ccであり、特に好ましくは0.70~1.20g/ccである。
【0089】
電池としては、アルカリ金属イオンの挿入/脱離を利用する電池であれば特に限定されるものではなく、一次電池であっても二次電池であってもよい。電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、空気電池等が挙げられる。その中でもリチウムイオン二次電池が好ましい。
【0090】
電池を構成する正極の基本的な構成は、一般的な構成とすることができる。正極活物質としては、既に例示したものの他、ニトロキシラジカル化合物等の有機活物質や酸素を使用することもできる。
【0091】
電池を構成する電解質の構成、電池自体の構成については、キャパシタの場合と同様である。電池は、例えば、少なくとも負極及び正極を含む基本構造を形成し、その基本構造に電解質を注入することにより製造できる。
【0092】
本開示の蓄電デバイスの製造方法では、まず、前記「5.電極製造装置1を用いた電極75の製造方法」に記載の方法で負極を製造する。次に、負極と、セパレータと、負極とは異なる電極とを順次積層して電極セルを形成する。
【0093】
7.電極製造方法及び蓄電デバイスの製造方法が奏する効果
(1A)本開示の電極製造方法では、電極前駆体73を前処理溶液に浸漬する。前処理溶液は、アルカリ金属イオン、溶媒、及び、特定添加剤を含む。特定添加剤は、溶媒の還元分解を抑制できる。本開示の電極製造方法では、次に、ドープ溶液を用い、活物質にアルカリ金属をドープする。本開示の電極製造方法により製造した電極を備える蓄電デバイスは、フロート特性、サイクル特性、充放電効率及び抵抗に関する初期特性、並びに、低温での充放電特性において優れている。
【0094】
(1B)本開示の電極製造方法により製造した電極は、ガスを発生させ難い。
【0095】
(1C)本開示の蓄電デバイスの製造方法では、電極前駆体73を前処理溶液に浸漬する。本開示の蓄電デバイスの製造方法では、次に、ドープ溶液を用い、活物質にアルカリ金属をドープすることで、電極75を製造する。本開示の蓄電デバイスの製造方法では、次に、負極である電極75と、セパレータと、正極とを順次積層して電極セルを形成する。本開示の蓄電デバイスの製造方法により製造した蓄電デバイスは、フロート特性、サイクル特性、充放電効率及び抵抗に関する初期特性、並びに、低温での充放電特性において優れている。
【0096】
8.実施例
本開示を以下の実施例及び比較例を用いてさらに詳細に説明する。
【0097】
(8-1)特定添加剤による溶媒の還元分解抑制の確認
以下の参考例1、2により、特定添加剤が溶媒の還元分解を抑制することを確認した。(参考例1)プロペンスルトンによる溶媒の還元分解抑制
還元電位は、リニアスイープボルタンメトリーにより得られる。具体的には、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートとを、3:4:3の体積比で含む混合液に、電解質塩としてLiPF6を溶解して電解液を調製した。電解液におけるLiPF6の濃度は1.2Mであった。次に、該電解液100質量部に対して、特定添加剤として1質量部のプロペンスルトンを加えた電解液(以下では添加剤入りの電解液とする)を作成した。
【0098】
次に、黒鉛負極を作用極とし、リチウム金属を対極及び参照極とした三極式セルに上記の添加剤入りの電解液を加えて電気化学セルを作成した。作用極の電位を、開回路電位から卑な電位に5mV/secの走査速度で変化させたときの電流値を測定した。測定の結果、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートとのそれぞれについて、還元分解ピークが小さくなっていた。この測定結果から、プロペンスルトンが溶媒の分解を抑制したことが確認できた。
(参考例2)ジフルオロリン酸リチウムによる溶媒の還元分解抑制
プロペンスルトンをジフルオロリン酸リチウムに変更した点以外は(参考例1)と同様の操作を行った。その結果、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートとのそれぞれについて、還元分解ピークが小さくなっていた。この測定結果から、ジフルオロリン酸リチウムが溶媒の分解を抑制したことが確認できた。
【0099】
(8-2)実施例1
(8-2-1)蓄電デバイス用負極の製造
長尺の帯状の負極集電体を用意した。負極集電体のサイズは、幅150mm、長さ100m、厚さ8μmであった。負極集電体の表面粗さRaは0.1μmであった。負極集電体は銅箔から成っていた。
【0100】
図6に示すように、集電体93の両面に、それぞれ活物質層95を形成し、電極前駆体73を得た。集電体93は負極集電体である。活物質層95は負極活物質層である。活物質層95の厚みは80μmであった。活物質層95は、集電体93の長手方向に沿って形成されていた。活物質層95は、集電体93の幅方向における中央部に、幅120mmにわたって形成されていた。集電体93の幅方向における両端に、負極活物質層未形成部が存在していた。負極活物質層未形成部とは、活物質層95が形成されていない部分である。集電体93の幅方向における両端において、負極活物質層未形成部の幅はそれぞれ15mmであった。
【0101】
活物質層95は、黒鉛、カルボキシメチルセルロース、アセチレンブラック、バインダ及び分散剤を、質量比で88:5:3:4の比率で含んでいた。黒鉛は負極活物質に対応し、炭素系材料に対応する。アセチレンブラックは導電剤に対応する。
【0102】
次に、以下のようにしてリチウム極を製造した。まず、厚さ2mmの長尺の銅板を用意した。この銅板上に、リチウム金属板を貼り付けた。リチウム金属板の大きさは、幅120mm×長さ800mm、厚さ1mmであった。リチウム金属板は、銅板の長手方向に沿って貼り付けられていた。このようにリチウム金属板を貼り付けた銅板を、対極ユニット51とした。同じ対極ユニット51を8枚製造した。
【0103】
図1に示す電極製造装置1を用意し、電極前駆体73及び対極ユニット51を設置した。次に、電解液槽203に電解液A-1を供給した。電解液A-1は、有機溶媒、LiPF6(六フッ化リン酸リチウム)を含み、さらに特定添加剤としてジフルオロリン酸リチウム及びプロペンスルトンを含んでいた。電解液A-1におけるジフルオロリン酸リチウムの濃度は0.5質量%であった。電解液A-1におけるプロペンスルトンの濃度は0.05質量%であった。電解液A-1に含まれる有機溶媒は、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートとを、3:4:3の体積比で含む混合溶媒であった。
【0104】
また、電解液槽205、7、207に電解液Bを供給した。電解液Bは有機溶媒とLiPF6(六フッ化リン酸リチウム)とを含んでいた。電解液BにおけるLiPF6の濃度は1.2mol/Lであった。電解液Bの有機溶媒は、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートとを、3:4:3の体積比で含む混合溶媒であった。
【0105】
次に、電極製造装置1に設置した電極前駆体73及び対極ユニット51を電流・電圧モニター付き直流電源に接続し、電極前駆体73を0.32m/minの速度で搬送しながら、80Aの電流を通電した。この工程により、活物質層95中の負極活物質にリチウムがドープされ、電極前駆体73は電極75となった。
【0106】
電極75を、25℃でDMC(ジメチルカーボネート)を収容した洗浄槽103を通過させた後、巻き取った。以上のようにして、電極75を製造した。なお、本実施例及び後述する各実施例及び各比較例において電極75はリチウムイオンキャパシタ用負極であり、蓄電デバイス用負極である。
【0107】
(8-2-2)蓄電デバイス用負極のリチウム析出確認方法と確認結果
上記(8-2-1)で得られた電極75の外観を観察して、リチウム析出の有無を確認した。リチウム析出有の場合は「あり」と評価し、リチウム析出なしの場合は「なし」と評価した。結果を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
(8-2-3)負極充放電効率の確認方法と確認結果
上記(8-2-1)で得られた電極75から打ち抜くことで、4.0cm×2.6cmの大きさ(ただし端子溶接部を除く)の負極を作成した。次に、前記のように作成した負極を作用極とし、リチウム金属を対極及び参照極とする3極セルを組み立てた。この3極セルに電解液を注液した。電解液は、1.2MのLiPF6を含む溶液であった。電解液の溶媒は、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートとを、3:4:3の体積比で含む混合溶媒であった。以上の工程により、3極セルが完成した。
【0110】
作成した3極セルを、電流密度0.1mA/cm2の定電流で負極電位が3.0V vs. Li/Li+になるまで放電し、放電容量を測定した。次に、下記式(1)を用いて、充放電効率を求めた。充放電効率を表1に示す。
【0111】
式(1) 充放電効率(%)=(放電容量/充電容量)×100
(8-2-4)蓄電デバイス用正極
正極集電体はアルミニウム箔から成っていた。正極集電体の厚みは12μmであった。正極集電体開口率は0%であった。正極集電体の両面に、それぞれ正極下塗り層を形成した。正極下塗り層の上に、さらに正極活物質層を形成した。正極活物質層の厚みは144μmであった。正極活物質層は、正極集電体の長手方向に沿って形成されていた。正極活物質層は、活性炭、アセチレンブラック、バインダー及び分散剤を、質量比で88:5:3:3の比率で含んでいた。以上の工程により、蓄電デバイス用正極が得られた。
【0112】
(8-2-5)評価用セルの作製
上記(8-2-1)で得られた蓄電デバイスタ用負極から、10.0cm×13.0cmの大きさ(ただし端子溶接部を除く)の負極を15枚切り出した。また、上記(8-2-4)で得られた蓄電デバイス用正極から、9.7cm×12.5cmの大きさ(ただし端子溶接部を除く)の正極を14枚切り出した。
【0113】
次に、厚さ35μmのポリエチレン製不織布からなるセパレータを介して、正極と負極とを交互に積層し、電極積層ユニットを作製した。このとき、正極集電体の端子溶接部と、負極集電体の端子溶接部とが反対側になるようにした。また、電極積層ユニットの最外部に負極が配置されるようにした。
【0114】
次に、電極積層ユニットの最上部及び最下部にそれぞれセパレータを配置し、電極積層ユニットの4辺をテープ留めした。次に、14枚の正極集電体のそれぞれについて、端子溶接部をアルミニウム製の正極端子に超音波溶接した。また、15枚の負極集電体のそれぞれについて、端子溶接部をニッケル製の負極端子に抵抗溶接した。
【0115】
次に、電極積層ユニットを、第1のラミネートフィルムと第2のラミネートフィルムとで挟んだ。次に、第1のラミネートフィルム及び第2のラミネートフィルムの3辺を融着した。その結果、1辺のみが開口したラミネートフィルムの袋が形成された。電極積層ユニットは、ラミネートフィルムの袋の内部に収容されていた。
【0116】
次に、ラミネートフィルムの袋の内部に電解液を真空含浸させた。電解液は、1.2MのLiPF6と溶媒とを含んでいた。溶媒は、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートとを、3:4:3の体積比で含む混合液であった。次に、開口していたラミネートフィルムの袋の一辺を融着した。以上の工程により、評価用セルが完成した。作成した評価用セルを用いて、以下の(8-2-6)~(8-2―9)の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0117】
(8-2-6)初期特性の評価方法と評価結果
作製した評価用セルを、10Aの定電流でセル電圧が3.8Vになるまで充電した。次に、3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を30分間行った。次に、10Aの定電流でセル電圧が2.2Vになるまで放電した際の静電容量を測定した。測定値を初期静電容量とした。また、放電開始直前の電圧と放電開始0.1秒後の電圧との電圧差を放電電流で除した値を算出した。算出した値を初期抵抗とした。初期抵抗は評価用セルの直流内部抵抗である。
【0118】
(8-2-7)高温負荷試験(フロート試験)方法と試験結果
後述する高温負荷試験の前に、作成した評価用セルの体積、直流内部抵抗及び静電容量を測定した。次に、高温負荷試験を行った。高温負荷試験とは、70℃に保持した恒温槽(ヤマト科学社製、恒温槽DKN812)中で、作製した評価用セルを、テクシオ製直流電源装置(PW8-3AQP)を用いて、3.8Vで1000時間保持することである。
【0119】
次に、高温負荷試験の前と同様に、評価用セルのセル体積、直流内部抵抗及び静電容量を測定した。なお、直流内部抵抗と静電容量は、上記(8-2-6)と同様の方法で測定した。また、評価用セルの体積は、下記の方法で測定した。
【0120】
(評価用セルの体積の測定方法)
水の入った容器を秤の上に置いた。水の密度は1g/cm3である。次に、ワイヤーで吊した評価用セルを降下させ、評価用セルを、容器内の水中に沈めた。なお、ワイヤーの体積は、無視できるほど小さかった。評価用セルの全体が水中に没した。評価用セルは、容器の底面に接触しなかった。この状態で、秤を用いて質量を測定した。質量の測定値に基づき、アルキメデスの原理を用いて、評価用セルの体積を算出した。
【0121】
次に、以下の式(2)を用いて、静電容量維持率を算出した。また、以下の式(3)を用いて、セル体積維持率を算出した。また、以下の式(4)を用いて、抵抗維持率を算出した。
【0122】
式(2) 静電容量維持率(%)=(高温負荷試験後の静電容量/初期静電容量)×100
式(3) セル体積維持率(%)=(高温負荷試験後のセル体積/初期セル体積)×100
式(4) 抵抗維持率(%)=(高温負荷試験後の直流内部抵抗/初期抵抗)×100
式(2)における「初期静電容量」とは、高温負荷試験の前における静電容量である。式(3)における「初期セル体積」とは、高温負荷試験の前における評価用セルの体積である。式(4)における「初期抵抗」とは、高温負荷試験の前における評価用セルの直流内部抵抗である。
【0123】
(8-2-8)サイクル特性の評価方法と評価結果
評価用セルを、100Aの定電流で3.8Vになるまで充電した。次に、100Aの定電流でセル電圧が2.2Vになるまで放電した。以上のサイクルを10万サイクル繰り返した。
【0124】
次に、評価用セルを、10Aの定電流でセル電圧が3.8Vになるまで充電した。次に、3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を30分間行った。次に、10Aの定電流でセル電圧が2.2Vになるまで放電した際の静電容量を10万サイクル後の静電容量とした。静電容量維持率(%)を、下記式(5)に基づき算出した。また、10万サイクル前後のセル体積を、上記(8-2-7)の項で述べた方法で測定した。そして、下記式(6)に基づきセル体積維持率を算出した。また、以下の式(7)を用いて、抵抗維持率を算出した。
【0125】
式(5) 静電容量維持率(%)=(10万サイクル後の静電容量/初期静電容量)×100
式(6) セル体積維持率(%)=(10万サイクル後のセル体積/初期セル体積)×100
式(7) 抵抗維持率(%)=(10万サイクル後の直流内部抵抗/初期抵抗)×100
式(5)における「初期静電容量」とは、上記のサイクルを10万サイクル繰り返す前における静電容量である。式(6)における「初期セル体積」とは、上記のサイクルを10万サイクル繰り返す前における評価用セルの体積である。式(7)における「初期抵抗」とは、上記のサイクルを10万サイクル繰り返す前における評価用セルの直流内部抵抗である。
【0126】
(8-2-9)低温での充放電特性の評価方法と評価結果
作製した評価用セルを用いて-30℃の条件下で以下の評価を行った。
(放電特性)
10Aの定電流でセル電圧が3.8Vになるまで充電した。次に、3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を30分間行った。次に、10Aの定電流でセル電圧が2.2Vになるまで放電した際の放電容量を測定した。この測定値を放電容量とした。また、放電開始直前の電圧と放電開始0.1秒後の電圧との電圧差を放電電流で除した値を算出した。算出した値を抵抗とした。抵抗は、評価用セルの直流内部抵抗である。
(充電特性)
10Aの定電流でセル電圧が2.2Vになるまで放電した。次に、2.2Vの定電圧を印加する定電圧充電を30分間行った。次に、10Aの定電流でセル電圧が3.8Vになるまで充電した際の充電容量を測定した。この測定値を充電容量とした。また、放電開始直前の電圧と放電開始0.1秒後の電圧との電圧差を放電電流で除した値を算出した。算出した値を抵抗とした。抵抗は、評価用セルの直流内部抵抗である。
【0127】
(8-3)実施例2
電解液槽205、7、207に、電解液Bの代わりに電解液A-1を供給した点以外は実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0128】
(8-4)比較例1
電解液槽203に、電解液A-1の代わりに電解液Bを供給した点以外は実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1に示す。
【0129】
(8-5)比較例2
電解液槽203に、電解液A-1の代わりに電解液Bを供給し、電解液槽205、7、207に電解液Bの代わりに電解液A-1を供給した点以外は実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表1に示す。
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0130】
(1)第1実施形態において、枚葉式の方法でプレドープを行ってもよい。枚葉式とは、切り取られた電極板とアルカリ金属板とを、セパレータを介して電解液中に配置した状態でプレドープを行う方法である。
【0131】
(2)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0132】
(3)上述した電極製造方法の他、電極製造装置、当該電極製造装置を構成要素とするシステム、プレドープ方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6