(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】脳の状態の意図的および非意図的な変化と脳信号との関連付け
(51)【国際特許分類】
A61B 5/374 20210101AFI20231024BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
A61B5/374
G06F3/01 515
(21)【出願番号】P 2022002028
(22)【出願日】2022-01-11
(62)【分割の表示】P 2019194883の分割
【原出願日】2013-01-24
【審査請求日】2022-02-09
(32)【優先日】2013-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514185943
【氏名又は名称】ニューロビジル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ロウ フィリップ スティーブン
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/057119(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2010/0016752(US,A1)
【文献】特開2002-000577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24 - 5/398
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の期間にわたって非侵襲的センサにより収集された、対象の脳活動を示す時間領域信号データにアクセスする工程
であって、該時間領域信号データが該対象によって想像され又は生成された意図的な脳信号に関連する、工程;
該時間領域信号データを変換して周波数領域信号表現を生成する工程;
該周波数領域信号表現に基づき、第1の周波数帯域に対応する第1のパワーを決定する工程;
該周波数領域信号表現に基づき、該第1の周波数帯域と重複しない第2の周波数帯域に対応する第2のパワーを決定する工程;
該第1のパワー及び該第2のパワーに基づき、統計値を決定する工程;
該統計値に基づき、該対象からの高次認知機能の活動状態を予測する工程
であって、該高次認知機能が、意図、発語、想起、計画された動作、思考及び想像からなる群から選択される、工程;および
該対象の該高次認知機能の活動状態を示す第1の出力を生成する工程
を含む、コンピュータで実行される方法。
【請求項2】
別の期間にわたって非侵襲的センサにより収集された、対象の脳活動を示す追加の時間領域信号データにアクセスする工程;
該追加の時間領域信号データを変換して該別の期間の別の周波数領域信号表現を生成する工程;
該別の周波数領域信号表現に基づき、第1の周波数帯域に対応する第3のパワーを特定する工程;
該別の周波数領域信号表現に基づき、第2の周波数帯域に対応する第4のパワーを特定する工程;
該第3のパワー及び該第4のパワーに基づき、別の統計値を決定する工程;
該別の統計値に基づき、該別の期間における該対象からの高次認知機能の別の活動状態を予測する工程;および
該対象の該高次認知機能の別の活動状態を示す第2の出力を生成する工程
をさらに含む、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項3】
高次認知機能の活動状態が、対象が該高次認知機能に携わっていることを特定し;かつ
該高次認知機能の別の活動状態が、該対象が該高次認知機能から離れていることを特定する、
請求項2に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項4】
統計値に基づき、対象からの別の高次認知機能の活動状態を予測する工程;および
該対象の高次認知機能の活動状態および該別の高次認知機能の活動状態を示す第3の出力を生成する工程
をさらに含む、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項5】
第1のパワーが、周波数領域信号表現を周波数方向に時間にわたって正規化することにより決定される、請求項1-4のいずれか一項に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項6】
第1の出力が処理されて、ディスプレイ上で発語をシミュレートすること、音声合成装置により発語をシミュレートすること、および人工補綴を動かすことからなる群より選択される、高次認知機能と関連するタスクを実施する、請求項1-5のいずれか一項に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項7】
時間領域信号データが複数のチャネルのうちの単一のチャネルで検出された電気信号を含む、請求項1-6のいずれか一項に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項8】
時間領域信号データが、脳波図(EEG)信号を含む、請求項1-7のいずれか一項に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項9】
第1の周波数帯域がアルファ波またはデルタ波に対応し;かつ
第2の周波数帯域がガンマ波または非常に高いガンマ波に対応する、
請求項1-8のいずれか一項に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項10】
統計値が第1のパワーと第2のパワーとの比率を含む、請求項1-9のいずれか一項に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項11】
プロセッサにより実行されたときに、請求項1-10のいずれか一項に記載の方法を実行するコンピュータプログラムコードを保存する、コンピュータで読み取り可能な媒体。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータで読み取り可能な媒体を含むコンピュータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2012年1月24日に出願された米国仮特許出願第61/590,235号および2013年1月24日に出願された米国特許出願第13/749,619号の優先権を主張し、これらの内容はその全体において本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、意図的な脳信号ならびに非意図的な脳信号および他の予期しない脳信号を検出するために、ヒトを含む対象動物から収集された脳データを抽出および評価するための分析方法に関する。これらの信号は、高次脳認知機能または脳卒中もしくは発作などの非意図的な潜在的有害事象と関連付けられ、かつ、規定の誘因事象またはタスクへのこれらの信号の変換と関連付けられる。より具体的には、本発明は、EEG、EMG、EOG、MEG、ECoG、iEEG、fMRI、LFP、または対象の脳活動により調節されるかもしくは脳活動を調節する周辺チャネルから取得される他の信号、からの生理学的データの取得に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
脳波図(EEG)は、脳により生じる電気活動を測定するために用いられるツールである。脳の機能活動は、頭皮に配置された電極により収集される。EEGは、従来より、患者の脳の機能についての重要な情報を提供してきた。頭皮のEEGは、神経伝達物質により結びつけられている樹状突起からのまたは樹状突起へのイオンの流れによりもたらされる、細胞外空間におけるポストシナプスに存在する電流の集合を測定すると考えられている。従って、EEGおよび同様のモダリティは主に、てんかんの診断ツールとして神経内科において使用されているが、その技術は、睡眠障害を含む他の病的状態の研究で用いることができる。
【0004】
EEGおよび他の信号の検出における近年の進歩は、脳活動データの正規化および他の操作により、睡眠状態および覚醒状態におけるリアルタイムでの自動検出を可能とした。さらに、そのような適用および方法は、病気の状態および薬物治療の効果に自動的にアクセスすることにも用いることができる。関連技術は、単一のチャネルの検出器を用いてそのようなデータにリアルタイムでアクセスすることを可能にした。今度はこのことが、REMと熟睡状態との区別を明確にすることを含む、睡眠状態と覚醒状態をさらに精査する機会を提供した。このようなデータの効率的な収集を補助するために、単一のチャネルのワイヤレスデータ送信を用いる、ヘッドアンドハーネスシステムが開発された。これらの開示はその全体において参照により本明細書に組み込まれる、例えば、国際出願第2006/018120号(特許文献1);国際出願第2009/064632号(特許文献2);国際出願第2010/054346号(特許文献3);米国特許出願第8,073,574号(特許文献4);およびLow, Philip Steven (2007). "A new way to look at sleep: separation and convergence". Published Thesis, University of California San Diego Electronic Theses and Dissertations (Identified: b6635681)(非特許文献1)参照。現在まで、この技術は、睡眠関連の診断アプリケーションならびに病的状態および薬物治療の影響に主として適用されている。
【0005】
開発は、対麻痺患者が再び歩行すること、および、現在行うことができない他のタスクを行うことを可能にするという保証を支える、エクソスケルトンおよび関連する補綴の領域で継続している。さらにそのようなデバイスは、戦場の兵士、ファーストレスポンダー、建設作業員のような健常人にも有用であり得る。Esko Bionics、Parker HannifanおよびArgo Medical Technologies等の会社は、そのような技術を一貫して進めている。例えば、米国特許第8,096,965号(特許文献5)、国際出願公開第2010101595号(特許文献6)、および2006年11月15日に出願された米国特許出願第11/600,291号(特許文献7)を参照のこと。さらに、ALS、MS等により重度に障害された個人が音声合成装置等を用いてコミュニケーションを行うことを可能とするために、他のデバイスが利用されている。このようなデバイスは、典型的には、頬筋の動き、アイトラッカー(Eye Tracker)を用いる目の動き等により作動する。
【0006】
したがって、脳の状態におけるこれらの変化の生理学的な意味合いについて、それを評価して場合によってはそれに応答するか、またはその準備をするために、障害のある個人を含む対象からの意図的および非意図的なコミュニケーションを検出するための非侵襲的な方法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際出願第2006/018120号
【文献】国際出願第2009/064632号
【文献】国際出願第2010/054346号
【文献】米国特許出願第8,073,574号
【文献】米国特許第8,096,965号
【文献】国際出願公開第2010101595号
【文献】米国特許出願第11/600,291号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Low, Philip Steven (2007). "A new way to look at sleep: separation and convergence". Published Thesis, University of California San Diego Electronic Theses and Dissertations (Identified: b6635681)
【発明の概要】
【0009】
本発明は、健常対象および病気のある対象(ALS、MS等のような神経性疾患により障害のある個人を含む)からの意図的および非意図的なコミュニケーションを、例えば、EEG、EMG、EOG、MEG、ECoG、iEEG、fMRI、LFP等による生理学的データの形態で非侵襲的に検出するための方法、ならびに、これらの意図的および非意図的な信号を、高次認知機能を含む脳の状態の変化と関連付けるための方法を提供する。また、このような意図的なコミュニケーションを、例えば、発語をシミュレートするため、または、人工補綴を動かすために利用するニーズがある。さらに、病的状態と関連付けるために、および任意にアラームを起動させることおよび/または非意図的な事象に関する変更、抑制、または準備に介在することに使用されるために、てんかん(または脳活動に変化を生じさせる身体の病気)のような病的状態を有する対象からの非意図的な信号にアクセスするニーズがある。
【0010】
本発明の好ましい方法においては、対象に対して少なくとも単一のセンサを取り付けること、脳活動を示すデータを取得すること、脳活動を示す前記データを分析すること、および分析されたデータを対象からの意図的な高次認知機能と関連付けることにより、対象からの意図的な脳信号が検出される。好ましくは、前記データは、対象に少なくとも単一のセンサを適用することにより、より好ましくは、少なくとも単一のドライセンサまたは少なくとも単一のウェットセンサを適用することにより、非侵襲的に取得される。さらに、前記データは、EEG、EMG、EOG、MEG、ECoG、iEEG、fMRI、LFP、または対象の意図により調節される周辺チャネル、の少なくとも単一のチャネルから受信されることが好ましい。代替の実施形態では、前記データは多チャネル検出器を通じて受信される。さらに、データはワイヤレスで通信および受信されることが好ましい。
【0011】
別の好ましい実施形態では、データのスペクトログラム(正規化されたスペクトログラムを含む)を少なくとも1回、周波数にわたって時間で正規化すること、および、同じデータのスペクトログラム(正規化されたスペクトログラムを含む)を少なくとも1回、時間にわたって周波数で正規化することによってデータが分析され、両方の正規化はどちらの順序で行ってもよいし繰り返してもよい。さらに好ましい実施形態では、データは、該データのスペクトログラムを算出すること、スペクトログラムを正規化すること、正規化されたスペクトログラムの独立成分分析または主成分分析を行うこと、および、クラスターを識別すること、により分析される。さらに、分析する工程はまた、一時的なフラグメンテーションの分析、好ましい周波数の分析、繰り返し(好ましくは2回以上)行われる好ましい周波数の分析、および/またはスペクトルのフラグメンテーションの分析を行うことを含み得る。
【0012】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法は、分析されたデータを変換して、意図、発語、想起、思考、想像、および(動作を含むがこれらに限定されない)計画を含むがこれらに限定されない高次認知機能に関連するタスクを実施することをさらに含む。重要なことに、分析されたデータを変換することによりもたらされるタスクは、ディスプレイ上で発語をシミュレートすること、音声合成装置により発語をシミュレートすること、または人工補綴もしくはエクソスケルトン等を動かすことを含む。
【0013】
本発明の方法のさらに好ましい別の実施形態では、対象に少なくとも単一のセンサを取り付けること、脳波活動を示すデータを取得すること、脳活動を示すデータを分析すること、分析されたデータを少なくとも1つの非意図的な事象と関連付けることにより、対象からの脳信号が少なくとも1つの非意図的な事象と関連付けられる。さらなる実施形態では、非意図的な事象とデータを関連付けた後に、アラームが起動される。あるいは、非意図的な事象とデータを関連付けた後に、非意図的な事象に関して変更、抑制、または準備することを含み得る(また、アラームを起動させることであり得る)、非意図的な事象の作用を改善するための応答を開始し得る。この応答は特に、非意図的な事象、高いフラグメンテーション事象、事象のフラグメンテーションの変化、驚愕、振戦、けいれん、損傷、または、てんかん性発作、片頭痛、脳卒中、心臓発作、もしくは梗塞を含むがこれらに限定されない病的状態の場合に効果的であろう。
【0014】
別の好ましい実施形態では、本発明の方法は、意図的な信号を検出可能な少なくとも1つの検出器を対象に取り付けること、EEG、EMG、EOG、MEG、ECG、ECoG、iEEG、LFP、fMRI、または対象からの意図的な信号により調節される周辺チャネルを用いて、検出された活動を示すデータを取得すること、検出された活動を示すデータを分析すること、分析されたデータを対象からの意図的な高次認知機能と関連付けることにより、対象から意図的な信号を検出する。本明細書に記載されるあらゆる方法、システム、または情報が、本明細書に記載されるあらゆる他の方法、システム、または情報に関して実施され得ることが企図される。
【0015】
別途の定義がない限り、本明細書の全ての用語は、本発明が属する分野の当業者により通常理解されているものと同じ意味を有する。方法および材料が、本発明の使用に関して本明細書に記載され、当該分野で知られる他の適切な方法および材料もまた使用され得る。材料および方法、ならびに実施例は単なる例示であり、限定を意図しない。本明細書で言及される全ての出版物、特許出願、特許、および他の参照は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾がある場合、定義を含み、本明細書が優先される。
【0016】
本発明のこれらのおよび他の実施形態は、以下の記載および添付の図面とあわせて考慮する場合により認識されおよび理解されるであろう。しかしながら、以下の記載は、本発明の種々の実施形態およびその多くの特定の詳細を示しているが、それは例示であって限定ではないことが理解されるべきである。多くの置換、変更、追加、および/または組み換えが、本発明の範囲内で、その精神を逸脱せずになされ得、本発明は、そのような置換、変更、追加、および/または組み換えを全て含む。
[本発明1001]
以下の工程を含む、対象から意図的な脳信号を検出する方法:
(a)該対象に少なくとも単一のセンサを取り付ける工程;
(b)脳活動を示すデータを取得する工程;
(c)脳活動を示す該データを分析する工程;および
(d)分析された該データを該対象からの意図的な高次認知機能と関連付ける工程。
[本発明1002]
前記取得データが、前記対象に前記少なくとも単一のセンサを適用することにより非侵襲的に受信される、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記少なくとも単一のセンサが、単一のドライセンサまたは単一のウェットセンサからなる群より選択される、本発明1002の方法。
[本発明1004]
前記取得データが、EEG、EMG、EOG、MEG、ECoG、iEEG、fMRI、LFP、または対象の意図により調節される周辺チャネルの少なくとも単一のチャネルから受信される、本発明1002の方法。
[本発明1005]
前記取得データが、EEGの少なくとも単一のチャネルから受信される、本発明1004の方法。
[本発明1006]
前記取得データが、EEG、EMG、EOG、MEG、ECoG、iEEG、fMRI、LFP、または対象の意図により調節される周辺チャネルの少なくとも単一のチャネルを含む多チャネル検出器から受信される、本発明1005の方法。
[本発明1007]
前記取得データがワイヤレスで受信される、本発明1002の方法。
[本発明1008]
前記分析する工程が、
(a)正規化されたスペクトログラムを含む、前記データのスペクトログラムを、少なくとも1回、周波数にわたって時間で正規化する工程;および
(b)正規化されたスペクトログラムを含む、同じデータのスペクトログラムを、少なくとも1回、時間にわたって周波数で正規化する工程
を含む、本発明1001の方法。
[本発明1009]
前記分析する工程が、
(a)前記データの前記スペクトログラムを算出する工程;
(b)前記スペクトログラムを1回または複数回、正規化する工程;ならびに
(c)正規化された前記スペクトログラムの主成分分析および/または独立成分分析を行う工程
を含む、本発明1008の方法。
[本発明1010]
前記分析する工程が、一時的なフラグメンテーションの分析を行う工程を含む、本発明1001の方法。
[本発明1011]
前記分析する工程が、好ましい周波数の分析を行う工程を含む、本発明1001の方法。
[本発明1012]
前記好ましい周波数の分析が、少なくとも2回正規化されているスペクトログラムについて行われる、本発明1011の方法。
[本発明1013]
前記分析する工程が、スペクトルのフラグメンテーションの分析を行う工程を含む、本発明1001の方法。
[本発明1014]
前記関連付ける工程の後に、分析された前記データを変換して、高次認知機能と関連するタスクを実施する工程をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1015]
前記の高次認知機能が、意図、発語、想起、計画された動作、思考、および想像からなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1016]
前記タスクが、ディスプレイで発語をシミュレートすること、音声合成装置により発語をシミュレートすること、および人工補綴を動かすことからなる群より選択される、本発明1011の方法。
[本発明1017]
以下の工程を含む、対象から少なくとも1つの非意図的な事象と関連する脳信号を検出する方法:
(a)該対象に少なくとも単一のセンサを取り付ける工程;
(b)脳波活動を示すデータを取得する工程;
(c)脳活動を示す該データを分析する工程;および
(d)分析された該データを少なくとも1つの非意図的な事象と関連付ける工程。
[本発明1018]
前記関連付ける工程の後に、アラームを起動させる工程をさらに含む、本発明1017の方法。
[本発明1019]
前記関連付ける工程の後に、前記非意図的な事象に対して、その作用を改善するために応答する工程をさらに含む、本発明1017の方法。
[本発明1020]
前記非意図的な事象に対する前記応答が、前記非意図的な事象に関して変更、抑制、または準備するために介在することを含む、本発明1019の方法。
[本発明1021]
前記非意図的な事象が、高いフラグメンテーション事象、事象のフラグメンテーションの変化、驚愕、振戦、けいれん、損傷、または、てんかん性発作、片頭痛、脳卒中、心臓発作、もしくは梗塞を含むがこれらに限定されない病的状態からなる群より選択される、本発明1017の方法。
[本発明1022]
前記非意図的な事象に対する応答が、ポリグラフテストを高めるかまたはポリグラフテストに取って代わる、本発明1017の方法。
[本発明1023]
前記分析する工程が、一時的なフラグメンテーションの分析を行う工程を含む、本発明1017の方法。
[本発明1024]
前記分析する工程が、好ましい周波数の分析を行う工程を含む、本発明1017の方法。
[本発明1025]
前記好ましい周波数の分析が、少なくとも2回正規化されているスペクトログラムに対して行われる、本発明1024の方法。
[本発明1026]
前記分析する工程が、スペクトルのフラグメンテーションの分析を行う工程を含む、本発明1017の方法。
[本発明1027]
前記分析する工程が、
(a)正規化されたスペクトログラムを含む、前記データのスペクトログラムを、少なくとも1回、周波数にわたって時間で正規化する工程;および
(b)正規化されたスペクトログラムを含む、同じデータのスペクトログラムを、少なくとも1回、時間にわたって周波数で正規化する工程
を含む、本発明1017の方法。
[本発明1028]
前記分析する工程が、
(a)前記データの前記スペクトログラムを算出する工程;
(b)前記スペクトログラムを1回または複数回、正規化する工程;ならびに
(c)正規化された前記スペクトログラムの主成分分析および/または独立成分分析を行う工程
を含む、本発明1027の方法。
[本発明1029]
以下の工程を含む、対象から意図的な信号を検出する方法:
(a)該対象に、意図的な信号を検出することが可能な少なくとも1つの検出器を取り付ける工程;
(b)EEG、EMG、EOG、MEG、ECG、ECoG、iEEG、LFP、fMRI、または対象の意図により調節される周辺チャネルを用いて、検出された活動を示すデータを取得する工程;
(c)検出された活動を示す該データを分析する工程;および
(d)分析された該データを該対象からの意図的な高次認知機能と関連付ける工程。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明が明確に理解され、容易に実施されるように、本発明は、以下の図面と合わせて記載され、同様の参照符号は同じまたは類似の要素を示し、その図面は本明細書に組み込まれてその一部を構成する。
【0018】
特許または出願ファイルは、カラーで仕上げられた少なくとも1つの図面を含む。カラーの図面を含む本特許または特許出願の公開公報の写しは、請求および必要な料金の支払いで庁より提供される。
【0019】
【
図1-1】脳信号分析の実施例を示す一連のグラフである。目を閉じる(A)、左手を握る(B)、右手を握る(C)、左足を握る(D)、右足を握る(E)ことに関して、左欄は従来の分析を示し、右欄は本発明の方法を用いた分析を示す。最後の2つのグラフ(F)は、安静状態での対象における、従来の分析を左欄に、本発明の方法を用いた分析を右欄に示す。
【
図2】A~Eは、本発明の方法によって分析された、
図1のA~Eで示されたものと同じタスクに関するデータである(
図1のFの安静状態はない)。緑色の線は、2または4秒間のタスクを開始するための言葉による合図のタイミングを示し、赤色の線は、タスクを停止して10秒間リラックスするための言葉による合図の時間を示す。
【
図3】A~Eは、本発明の方法を用いて、一時的なフラグメンテーションを用いて分析された、
図1のA~Eで示されたものと同じタスクに関するデータである(
図1のFの安静状態はない)。緑色の線は、2または4秒間のタスクを開始するための言葉による合図のタイミングを示し、赤色の線は、タスクを停止して10秒間リラックスするための言葉による合図の時間を示す。
【
図4】A~Eは、1回または複数回の正規化を用いて分析された、
図1のA~Eで示されたものと同じタスクに関するデータである(
図1のFの安静状態はない)。具体的には、グラフは、ガンマおよび非常に高いガンマ(hgamma)の範囲における、合計された高い周波数パワーをプロットしている。緑色の線は、2または4秒間のタスクを開始するための言葉による合図のタイミングを示し、赤色の線は、タスクを停止して10秒間リラックスするための言葉による合図の時間を示す。
【
図5】A~Eは、1回または複数回の正規化を用いて分析された、
図1のA~Eで示されたものと同じタスクに関するデータである(
図1のFの安静状態はない)。具体的には、グラフは、
図5のA~Dに関しては、ガンマ周波数パワーの合計に対するアルファ周波数パワーの合計をプロットし、一方、
図5F(目を閉じる)に関しては、デルタ周波数を用いた。緑色の線は、2または4秒間のタスクを開始するための言葉による合図のタイミングを示し、赤色の線は、タスクを停止して10秒間リラックスするための言葉による合図の時間を示す。
【
図6】意図的な信号に対する、本発明の方法の適用を示すフローチャートである。
【
図7】例えばてんかんにおける非意図的な信号に対する、本発明の方法の適用を示すフローチャートである。
【
図8】ガンマ周波数パワー(A)、アルファ周波数パワー(B)、アルファおよびガンマ周波数パワーの合計(C)、ならびにアルファおよび非常に高いガンマ周波数パワーの合計の比率について、1回または複数回の正規化を用いること、フットボールを蹴ることとベッドルームを見ることとを思い浮かべること、およびそれらを交互に行うことにより、データが分析される。緑色の線は、開始するための言葉による合図のタイミングを示し、赤色の線は、10秒間のインターバルを停止するための言葉による合図の時間を示す。
【
図9】
図9は、本発明の方法を用いる、コンピュータのインターフェイスのスクリーンショットである。
【
図10】2標本コルモゴロフ・スミルノフ(KS)検定であり、運動不能なALS対象により行われた
図1のA~Eに列挙された各タスクに由来する、交差する軸方向に反復して10重に正規化された好ましい周波数スペクトログラムは、複数の意図的な事象が識別され得るということを示す。各スペクトログラムは、あらゆる他のタスクのそれとは異なる分布由来である(この対象におけるこの特定の試験である左手を握ることと、右足を握ることについては、それほどではないが)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本発明の図面および記載は、明確性の目的のために、よく知られている他の要素を除いて、本発明の明確な理解に関して関連する要素を示すために簡略化されることが理解されるであろう。詳細な説明は、添付された図面への参照により、本明細書において、以下に提供される。
【0021】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細な説明が、本発明の原理を示す添付の図面とともに以下に提供される。本発明はそのような実施形態に関連して説明されるが、本発明はいかなる実施形態にも限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定され、本発明は多数の代替、変更、および同等物を包含する。多数の具体的な詳細が、本発明の完全な理解を提供するために、以下の明細書で述べられる。これらの詳細は例示の目的のために提供され、本発明は、これらの具体的な詳細のいくつかまたは全てを有することなく、特許請求の範囲に従って実施され得る。明確性の目的のために、本発明に関連する技術分野で知られる技術内容は、本発明が不必要に不明瞭にならないように、詳細には記載されていない。
【0022】
本出願における、「対象」という用語は、動物およびヒトの両方を指す。ここで
図6を参照すると、本方法の好ましい実施形態を示すフローチャート100が開示されている。具体的には、対象は、想像し、本発明に係る少なくとも単一のセンサ101により受信される意図的な脳信号を生成する。好ましくは、このセンサは、単一のウェット電極または単一のドライ電極を含む。入力信号は、コンピュータなどの計算装置へと中継され、そこで解析されて(102)、規定の非意図的な事象が起きたかどうかを決定される(103)。好ましくは、これは、対象からの、高次認知機能と関連する脳活動を示す。コンピュータは次いで、周辺装置における1つまたは複数のレシーバ105へと中継される信号を生成する(104)。周辺装置の例は、音声合成装置、エクソスケルトンを含む補綴装置等を含み得る。
図6に示すように、これらの方法は、好ましくはリアルタイムで行われ、かつ、対象の意図的な信号と、対象の意図により制御される周辺装置に関連するコマンドへのこれらの信号の変換との間の連続的な応答およびフィードバックルックを提供する。特に好ましい実施形態において、対象からのデータ信号は、EEG、EMG、EOG、MEG、ECoG、iEEG、fMRI、LFP、または対象の意図により制御される周辺チャネルの少なくとも単一のチャネルから受信される。好ましい代替形態においては、データは、計算装置および周辺装置とワイヤレスで接続する多チャネル検出器を通じて受信される。
【0023】
ここで
図7を参照すると、本方法の代替的な好ましい実施形態を示す他のフローチャート106が開示されている。具体的には、対象は、本発明に係る少なくとも単一のセンサ107により受信される脳信号を介して、非意図的な事象(例えば、脳卒中または発作)の存在に関してモニタリングされる。好ましくは、このセンサは単一のウェット電極または単一のドライ電極を含む。入力信号は、コンピュータのような計算装置へと中継され、そこで解析されて(108)、規定の非意図的な事象が起きたかどうかを決定される(109)。驚愕、振戦、けいれん、損傷を含むがこれらに限定されない非意図的な潜在的有害事象、または、てんかん性発作、片頭痛、脳卒中、心臓発作、もしくは梗塞を含むがこれらに限定されない病的状態の多くの例がある。
【0024】
コンピュータは次いで、周辺装置の1つまたは複数のレシーバへと中継される信号を生成する(110)。この例において、周辺装置は、対象の脳領域112を刺激することにより、てんかん患者における危険な発作の作用を改善するために使用される刺激装置111である。また、当業者により認識されるように、周辺装置111は、対象112を抑制しまたは変化させ(または影響を与え)ないこととしてもよい。例えば、対象または介護者に警告するためのアラームの起動である。特に好ましい実施形態では、対象からのデータ信号は、EEG、EMG、EOG、MEG、ECoG、iEEG、fMRI、LFP、またはモニタリングされる非意図的な事象の非意図的な発生により調節される周辺チャネルの少なくとも単一のチャネルから受信される。好ましい代替形態においては、データは、計算装置および周辺装置とワイヤレスで接続する多チャネル検出器を通じて受信される。
【0025】
図6および
図7の両方に示される方法の別の好ましい実施形態では、データのスペクトログラム(正規化されたスペクトログラムを含む)を少なくとも1回、周波数にわたって時間で正規化すること、および、同じデータのスペクトログラム(正規化されたスペクトログラムを含む)を少なくとも1回、時間にわたって周波数で正規化することによってデータが分析され、両方の正規化はどちらの順序でも行ってもよいし繰り返してもよい。さらに好ましい実施形態では、データのスペクトログラムを算出すること、スペクトログラムを正規化すること、正規化されたスペクトログラムの独立成分分析または主成分分析を行うこと、および、クラスターを識別することによって、データが分析される。さらに、前記分析は、また、一時的なフラグメンテーションの分析、好ましい周波数の分析、繰り返される(好ましくは2回以上)好ましい周波数の分析、および/またはスペクトルのフラグメンテーションの分析を行うことを含み得る。
【0026】
好ましい実施形態では、脳信号(例えば、脳から検出された高周波数信号)を検出すること、および、検出された信号を高次認知機能と関連付けることが開示される。高次認知機能の例は、とりわけ、意図、発語、想起、思考、想像、および(動作を含むがこれに限定されない)計画、ならびに想像および他の認知の処理および機能を含む指示されたタスクを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、対象の脳信号は発語に変換される。例えば、対象が、文字、数字、言葉、または記号を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の言語要素を想像すると、この言語要素または複数の言語要素に関連する脳信号が検出され、この言語要素または複数の言語要素が決定される。別の例では、発語能力に障害のある対象は、画像、記号、言葉、文字、または数字を想像上の動作と関連付けることを教えられる。対象が想像上の動作を想像すると、当該想像上の動作に関連する脳信号が検出され、当該想像上の動作に関連する言葉、文字、または数字が決定される。一実施形態では、対象の想像上の動作は、対象が使用を意図する画像、記号、言葉、文字、または数字を選択するディスプレイ上のカーソルを制御する。いくつかの実施形態では、決定された画像、記号、言葉、文字、または数字は、文法的に正しい発語を構成するように、1つまたは複数の他の決定された画像、記号、言葉、文字、または数字とともに使用される。いくつかの実施形態では、決定された画像、記号、言葉、文字、または数字は、音声合成装置を用いて伝達されかつ/または表示される。いくつかの実施形態では、脳信号および/または出力は、トーン、一連のトーン、微小ピッチ、色、画像、電気的刺激、一次元的または多次元的なグラフィックを含むがこれらに限定されない非言語的値を割り当てられる。いくつかの実施形態では、脳信号および/または出力は、ある脳信号に割り当てられる。いくつかの実施形態では、脳信号は、(病的かつ/または異常な事象および/または状態を含むがこれに限定されない)1つまたは複数の内在性および/または外因性の事象および/または状態に続き、かつ/または先行し、かつ/または同時に発生する。
【0028】
いくつかの実施形態では、対象の脳信号は、人工補綴の動きに変換される。例えば、想像上の動作に関連する検出された脳信号は、少なくとも部分的に人工補綴を制御するために用いられる。
【0029】
いくつかの実施形態では、EEG、EMG、EOG、MEG、ECoG、iEEG、fMRI、LFP、または対象の意図により調節される周辺チャネルを含むがこれらに限定されない1つまたは複数の生理学的記録、または非意図的な事象に関する非意図的な信号の読み取りが、1つまたは複数の脳信号を検出するために使用される。例えば、言葉による合図(左および右の手および足)の後に四肢の1つを動かすことを試みている高機能の70歳ALS患者において、単一のチャネルのiBrain(登録商標) EEG記録が行われる。脳信号を検出可能にするために、SPEARSアルゴリズムを含むアルゴリズムでEEG信号が分析される。同時のビデオ記録が取得されてもよい。動作を試みている間、対象の脳活動は、ガンマおよび非常に高いガンマの範囲におよぶ広いスペクトルパルスを示す。そのようなパルスが、実際の動作がなくても存在し、対象が動作を試みていない場合には存在しない。アルファの範囲における活動は、対象が目を閉じると検出される。そのような高帯域のバイオマーカーは、意図的な動作を言葉のライブラリーに結び付けてそれらを発語に変換する可能性を開き、脳信号を利用するコミュニケーションツールをALS患者に提供する。
【0030】
いくつかの実施形態では、実際の動作または想像上の動作について、安静状態についての異なるパターンと比較して、多くの周波数にわたる明確で幅広い活動スペクトルパターンが検出され得る。これらのパターンは、対象の実際の動作または想像上の動作のタイミングと一致する。従来のスペクトル分析は、このようなパターンを明らかにしない。対象の実際の動作または想像上の動作とタイミングが合って関連する脳信号を検出するために、生理学的データの分析が用いられ得る。いくつかの実施形態では、脳ベースのコミュニケーションに関してさらなる自由度を提供するために、これらの信号がリアルタイムで送信され解析される。
【0031】
本明細書に記載される方法は、その全体において開示が参照により本明細書に組み込まれる、国際出願第2006/018120号;国際出願第2009/064632号;国際出願第2010/054346号;米国特許出願第8,073,574号;およびLow, Philip Steven (2007). "A new way to look at sleep: separation and convergence". Published Thesis, University of California San Diego Electronic Theses and Dissertations (Identified: b6635681)に詳細が開示されている。
【0032】
本発明は、動物およびヒトの両方におけるEEGデータを取得して分類するシステムおよび方法を利用する。取得されるEEG信号は低パワーの周波数信号でありかつ1/f分布に従い、これにより信号におけるパワーが逆相関し、例えば、周波数に反比例する。
【0033】
EEG信号は多くの場合、エポックと呼ばれる連続する時間ごとに調査されてきた。エポックは、異なるセクションの時系列単位を規定するスキャニングウィンドウを用いて、異なるセクションにセグメント化され得る。スキャニングウィンドウはスライディングウィンドウを介して移動し得、スライディングウィンドウのセクションは、重複する時系列の配列を有する。あるいは、エポックは、例えば時系列全体にわたり得る。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、単一のチャネルのEEGは、意図的な(または非意図的なもしくは他の予期しない)脳活動を示すデータを取得するのに十分であった。
【0035】
典型的には、本発明の方法により取得されたソースデータは、ソースデータの周波数スペクトルのうち少なくとも1つの低パワーの周波数範囲内のパワーに関するダイナミックレンジを、より高パワーの第2の周波数範囲と比較して増大させるように調節される。正規化および周波数重みづけを含む、本明細書に記載の多くの調節技術が用いられ得る。
【0036】
一実施形態では、高パワーの低周波数範囲のデータと比較して、低パワーのより高い周波数範囲のデータを増加させるように脳波記録のソースデータが正規化され、より一般的には、信号の異なる部分のパワーが正規化される。
【0037】
ソースデータが調節された後に、種々の他の処理が行われ得る。例えば、調節されたソースデータの視覚化が提示され得る。さらに、調節されたソースデータから低パワーの周波数情報が抽出され得る。例えば、調節された脳波記録ソースデータから低パワーの周波数情報が抽出され得る。また、調節されたソースデータから高パワー周波数情報が抽出され得る。
【0038】
この例または他の例のいずれかに記載の方法は、1つまたは複数のコンピュータで読み取り可能な媒体におけるコンピュータで実行可能な命令を介して行われる、コンピュータで実行される方法であり得る。示されるいかなるアクションも、信号処理システムまたは任意の他の信号データ分析システム内に組み込まれたソフトウェアにより行われ得る。例えば、本発明は、装置;システム;構成体;コンピュータで読み取り可能なストレージ媒体で具体化されるコンピュータプログラム製品;ならびに/またはプロセッサ(例えば、当該プロセッサに接続されたメモリに保存された命令および/もしくは当該メモリにより提供される命令を実行するように構成されたプロセッサ)をプロセスとして含む種々の方法で実行され得る。この点について、
図9は、本発明の方法および出力を利用するコンピュータインターフェイスのスクリーンショットである。本明細書では、これらの実施形態または本発明がとり得るいかなる他の形態も技術と称され得る。一般的に、開示されるプロセスの工程の順序は、本発明の範囲内で変更され得る。別途の記載がない限り、タスクを行うような構成と記載されたプロセッサまたはメモリなどの構成要素は、所与の時間に当該タスクを行うように一時的に構成される一般的な構成要素として、あるいは当該タスクを行うために製造された特定の構成要素として実装され得る。本明細書で用いられる「プロセッサ」という用語は、コンピュータプログラム命令のようなデータを処理するために構成される、1つまたは複数のデバイス、回路、および/または処理コアを指す。
【0039】
別の実施形態は、さらなるダイナミックレンジの増大のために複数回の正規化を用いる。正規化は、周波数を時間方向に正規化するか、または時間を周波数方向に正規化することにより行われ得る。
【0040】
例えば、少なくとも1つの低パワーの周波数範囲の脳波記録データが受信され得る。データにおけるアーティファクトがソースデータから除かれ得る。アーティファクトのデータは、例えば、ソースデータから手動で、またはフィルタリング(例えば、DCフィルタリング)もしくはデータの平滑化技術を介してソースデータから自動的に除去され得る。また、ソースデータは、成因分析(例えば、主成分分析または独立成分分析)により前処理され得る。ソースデータは、1つまたは複数のエポックにセグメント化され、ここで各エポックは、一連のデータからのデータの一部である。例えば、ソースデータは、種々の分離技術を介して複数の時間セグメントにセグメント化され得る。ソースデータを時系列単位で分離するために、スキャニングウィンドウおよびスライディングウィンドウが使用され得る。1つまたは複数のエポックは、当該1つまたは複数のエポックにおけるパワーの差について時間方向に正規化される。例えば、1つまたは複数の周波数での各エポックにおけるパワーは、情報を抽出するために適切な周波数ウィンドウを決定するために時間方向に正規化され得る。このような正規化は、1つまたは複数の周波数(例えば、デルタ、ガンマ、アルファ等)における、低パワーの、統計的に有意なパワーのシフトを明らかにし得る。分析に関して任意の周波数範囲が明らかにされかつ利用され得る。適切な周波数ウィンドウが確立された後に、1つまたは複数のエポックのそれぞれについて情報が算出される。そのような情報は、低周波数パワー(例えば、デルタパワー)、高周波数パワー(例えば、ガンマパワー)、標準偏差、最大振幅(例えば、ピークの絶対値の最大値)等を含み得る。1つまたは複数のエポックのそれぞれについて算出された情報にさらなる計算を行い、ガンマパワー/デルタパワー、デルタの時間微分、ガンマパワー/デルタパワーの時間微分等として情報を生成することができる。時間微分は、先行するエポックおよび後続のエポックをまたいで算出されてもよい。情報を算出した後、続いて、1つまたは複数のエポックにわたって当該情報が正規化されてもよい。zスコア化および他の類似の技術を含む種々のデータ正規化技術が行われ得る。
【0041】
時間にわたる周波数のスペクトルにわたるパワーにおける差異を説明するためのソースデータの調節の結果を、1つまたは複数のエポックのデータとして示すことができる。例えば、周波数で重みづけされたエポックは、調節されたソースデータとして示され得る。
【0042】
対象の脳波記録データが取得および入力されて、当該データが1つまたは複数のエポックにセグメント化される。実際には、エポックは類似の(例えば、同じ)長さである。エポックの長さは、設定可能なパラメータを介して調節され得る。次いで、当該1つまたは複数のエポックが入力されて、当該1つまたは複数のエポックにおける周波数データが時間全体にわたって正規化され、これにより、当該1つまたは複数のエポックの脳波記録データが周波数で重みづけされる。次に、周波数で重みづけされた1つまたは複数のエポックが分類器に入力され、意図の状態とリラックスまたは非意図の状態とにデータが分類される。
【0043】
例えば、対象に関する脳波記録(EEG)データが受信される。例えば、周波数スペクトルにおける少なくとも1つの低パワーの第1の周波数範囲でのパワーについてのダイナミックレンジが、当該周波数スペクトルにおける第2の周波数範囲と比較して低い、脳波記録のデータが受信され得る。対象に関する脳波記録データが、1つまたは複数のエポックにセグメント化される。例えば、種々の分離技術を介して、EEGデータが1つまたは複数のエポックにセグメント化され得る。EEGデータを1つまたは複数のエポックに分離するために、スキャニングウィンドウおよびスライディングウィンドウを使用することができる。また、ソースデータは、セグメント化中、セグメント化前、またはセグメント化後に、直流でアクティブにフィルタリングされ得る。また、ソースデータは、成因分析(例えば、主成分分析または独立成分分析)により前処理される。夜中全体のEEGデータにおいて、より高い周波数(例えば、ガンマ)は、丸一晩のEEGデータにおけるより低い周波数(例えば、アルファ、デルタ、シータ等)よりも低いパワーを示す。1つまたは複数のエポックの周波数パワーは、時間方向に重みづけされる。例えば、情報を抽出するための適切な周波数ウィンドウを決定するために、1つまたは複数の周波数における各エポックのパワーが時間方向に正規化され得る。このような正規化によって、1つまたは複数の周波数(例えば、アルファ、デルタ、ガンマ等)における低パワーの統計的に有意なパワーのシフトが明らかになり得る。さらに、各エポックは、情報を抽出するための適切な周波数ウィンドウを決定するために、全時間で最も高い相対パワーを有する周波数により表され得る。代替的に、情報を抽出するための適切な周波数ウィンドウをさらに決定するために、正規化の後に成因分析(例えば、主成分分析(PCA)または独立成分分析(ICA))が利用され得る。あらゆる周波数の範囲が明らかにされ、分析に利用され得る。
【0044】
適切な周波数ウィンドウが確立された後(例えば、周波数の重みづけの後)に、1つまたは複数のエポックのそれぞれに関して情報が算出され得る。そのような情報は、低周波数パワー(例えば、アルファパワー)、高周波数パワー(例えば、ガンマパワー)、標準偏差、最大振幅(例えば、ピークの絶対値の最大)等を含み得る。1つまたは複数のエポックのそれぞれに関して算出された情報について、さらなる計算を行い、ガンマパワー/アルファパワー、デルタの時間微分、ガンマパワー/アルファパワーの時間微分等のような情報を生成することができる。時間微分は、先行するエポックおよび後続のエポックをまたいで算出されてもよい。情報を算出した後、続いて、1つまたは複数のエポックにわたって当該情報が正規化されてもよい。zスコア化等を含む種々のデータ正規化技術が実施され得る。ここで、より高い周波数のデータがより明確に見える。
【0045】
対象における意図状態は、周波数で重みづけされた1つまたは複数のエポックに基づいて分類される。例えば、周波数で重みづけされた1つまたは複数のエポックは、K平均クラスタリングを含む任意の種々のクラスタリング技術によりクラスター化され得る。クラスタリングは、エポックから算出された情報(例えば、アルファパワー、ガンマパワー、標準偏差、最大振幅(ガンマ/アルファ)、デルタの時間微分、ガンマ/アルファの時間微分、等)に基づいてなされ得る。クラスタリングにおけるパラメータ空間(例えば、使用される情報のタイプ)を決定するために成因分析(例えば、PCAまたはICA)が使用され得る。
【0046】
クラスタリングに続いて、エポックに意図状態の指定が割り当てられ得る。意図状態と指定されたエポックは、その後、エポックにより示された期間の対象における意図状態およびリラックス(非意図)状態の表示として示され得る。また、分類は、手動で決定された意図状態(例えば、手動で決定された「意図的活動」状態対「リラックス」状態)を組み込み得る。さらに、アーティファクトの情報が分類に利用され得る。
【0047】
アーティファクトのデータは、意図状態の分類においても用いられ得る。例えば、最初に意図状態の指定が割り当てられたエポックが、隣接するアーティファクトのデータに起因して、新しい意図状態の指定を再度割り当てられるかどうかを分析するために、アーティファクトが用いられ得る。このように、例えば、アーティファクトのデータは、データの平滑化技術に利用され得る。
【0048】
任意の種々のデータ平滑化技術を、意図状態の割り当ての間に用いることができる。指定された意図状態を表すために、例えば番号(例えば、0および1)を用いることができる。隣接するエポックの脳の状態の指定番号は、その後、エポックの1つが誤って意図状態の指定に割り当てられているかどうかを決定するために平均化され得る。よって、脳の状態の急激な変動を示す意図状態の指定が一群のエポックに割り当てられている場合には、割り当ての正確性を向上させるために、平滑化技術が適用され得る。
【0049】
これまでの実施形態は、例えば、zスコア化を用いて、どのように正規化して、脳活動の信号からのより多くの情報の分析を可能にするのかを示した。これまで行われた分析は、パワー情報を周波数方向に正規化した。正規化は好ましくはzスコア化を用いたが、あらゆる他の種類のデータ正規化が用いられ得る。用いられる正規化は、zスコア化のように無単位であることが好ましい。当該技術分野でよく知られているように、zスコア化は、分布の包絡線の形状を変化させることなく、分布を正規化するために用いられ得る。zスコアは、本質的に標準偏差の単位に変更される。各々のzスコアで正規化した単位は、信号の平均に対する、信号におけるパワーの量を反映する。各スコアから平均を差し引くことにより、スコアは平均偏差の形態に換算される。次いで、当該スコアは、標準偏差を基準として正規化される。全てのzスコア化された正規化された単位は、単一に等しい標準偏差を有する。
【0050】
上記はZスコアを用いる正規化を記載しているが、Tスコア化等を含む他の正規化も行われ得ることが理解されるべきである。複数回の正規化も用いられ得る。正規化は、周波数を時間方向に正規化するかまたは時間を周波数方向に正規化することにより行われ得る。
【0051】
上記実施形態は、特定の範囲内の各周波数におけるパワーを正規化することを記載している。当該範囲は、0から100hzまで、または128hzまで、または500hzまでであり得る。周波数の範囲は、サンプリングレートによってのみ制限される。典型的な30KHzのサンプリングレートで、15KHzまでの分析がなされ得る。
【0052】
本実施形態によれば、各周波数に関してパワーを時間方向に正規化する追加の正規化が行われる。それによって、周波数方向および時間方向に正規化された情報がもたらされ、これらは正規化されたスペクトログラムを作成するために使用される。この実施形態は、脳波データから追加の情報を取得し得、当該実施形態は、分析されたデータから意図およびリラックスの異なる期間を自動的に検出することを記載する。重要な特徴によれば、(ヒト頭蓋の単一の位置から取得される)単一のチャネルの脳波活動を分析に用いる。上記のように、取得されたデータは、ヒトまたは他の対象からの1つのチャネルのEEG情報であってもよい。取得されたEEGデータは、例えば、256Hzサンプリングレートを用いて収集され得、または、より高いレートでサンプリングされ得る。データは、エポック、例えば、30秒間のエポックに分割され、周波数に従って特徴づけられる。
【0053】
第1の周波数正規化が行われる。各周波数ビンでzスコア化技術を用いてパワー情報が正規化される。本実施形態では、当該ビンは1から100Hzにわたり得、1ヘルツあたり30ビンであり得る。当該正規化は時間方向に行われる。それによって、信号由来の各周波数帯域が略同じ重みづけを有する、正規化されたスペクトログラムまたはNSが作成される。本実施形態では、30秒間の各エポックが、そのエポック内で最も大きなzスコアを有する周波数である「好ましい周波数」によって表される。
【0054】
このことによって、好ましい周波数空間とよばれる特定の周波数空間が生成される。これらのパターンがどのように形成されるかの分析およびパターンの特徴の分析がなされ得る。よって、異なる脳の状態は判別関数に従って規定され得、当該判別関数は、ある領域における活動性と、他の領域における非活動性とを探索する。当該関数は、領域におけるどの周波数が活動性を有しかつどの周波数が活動性を有しないかに従って、脳の状態を評価し得る。
【0055】
しかしながら、より一般的には、いかなる形態の動的スペクトルのスコア化も、補正されたデータで行われ得る。判別関数は、特性値を必要とし得、または、単に、ある量の活動が、複数の周波数範囲のそれぞれにおいて存在するまたは存在しないことを必要とし得る。判別関数は、単に、周波数反応の包絡線をマッチさせることであり得る。また、判別関数は、スペクトルのフラグメンテーションおよび一時的なフラグメンテーションを見得る。
【0056】
周波数方向に行われる第2の正規化。第2の正規化は、二重に正規化されたスペクトログラムを生成する。これにより、帯域がさらにより明白となる新たな周波数空間が生成される。二重に正規化されたスペクトログラムの値は、空間内で値を最大限に分離するフィルタを生成するために使用され得る。
【0057】
二重に正規化された周波数で行われるクラスタリング技術。例えば、当該クラスタリング技術は、これまでの実施形態で記載されたようなK平均技術であってもよい。各クラスターは意図状態を表し得る。
【0058】
クラスターは、実際には多次元のクラスターであり、追加の情報を見つけるためにそれら自身をグラフ化し得る。次元の数は、クラスタリング変数の数に依存し得る。このことは、二重に正規化されたスペクトログラムが、どのようにして、より多くの測定特性をも可能にするのかを示す。
【0059】
スペクトルのフラグメンテーションを示す周波数方向に正規化されたパワーにおいて広がった平均の測定も可能である。代替的に、フラグメンテーション値は、異なる状態に関する一時的なフラグメンテーションに基づき得、判別関数の一部としても用いられ得る。
【0060】
これらの2つの関数は、二重に正規化されたスペクトルで評価され、全ての周波数でのゲインにおける均一な増加に依存し、一重に正規化されたスペクトルでは動きアーティファクトを引き起こしかつ異常に上昇したフラグメンテーション値をもたらすであろう。これらのフラグメンテーション値は、判別関数の一部として用いられ得る。重要なことに、上記のように、この判別関数は典型的には、従来の手動の技術を含むいかなるこれまでの分析技術からも明らかではない。
【0061】
計算は、セグメント化により特徴づけられ得、または、時間合わせを増加させるために重なりウィンドウまたはスライディングウィンドウを用い得る。これは、以前は可能ではなかった多くの技術を可能にする。オンザフライで特徴づけを行うことにより、このことは、動的スペクトルのスコア化を用い、脳波サインのみを用いてリラックス状態と意図状態とを区別することを可能にする。
【0062】
上記のデータ解析に関する例示的な方法を、ヒトに関する標準的な非侵襲的EEG方法と組み合わせた。その結果は、動物における弱められたリズムを非侵襲的に抽出し、単一のチャネルのEEGから脳活動を自動的に分析し、かつ当該動物の脳状態パラメータを十分に分類する能力である。
【実施例1】
【0063】
言葉による合図(左および右の手および足)の後に四肢の1つを動かすことを試みている高機能の70歳ALS患者において、単一のチャネルのiBrain(登録商標) EEG記録を行った。高周波数/低スペクトルパワー信号を検出可能にするために、部分的に、未処理のEEG信号をSPEARSアルゴリズムで分析した。同時にビデオ記録を取得した。動作を試みている間、対象の脳活動は、ガンマおよび非常に高いガンマの範囲に及ぶ明確で広範なスペクトルパルスを示した。そのようなパルスは、実際の動作がなくても存在し、対象が動作を試みていないときには存在しなかった。予期されたように、対象が目を閉じたときには、アルファの範囲における活動が検出された。言葉のライブラリーに対する意図的な動作に基づく、そのような高い帯域のバイオマーカーを使用することによって、信号を発語に変換することが可能になり、したがって、身体よりも脳に依存するコミュニケーションツールがALS患者に提供される。
【0064】
具体的には、本発明の方法を適用することによって、対象の実際の動作、想像上の動作、または意図した動作のタイミングに一致する高い周波数のパターンが明らかになる。例となる適用においては、時系列データから周波数スペクトルが生成され、正規化されて、標準的な方法では明らかにされないこれらのより高い周波数を明らかにする。脳のEEGデータに対するこの適用を
図1に示す。この例では、ALS患者であって動くことができない高機能の70歳の対象が、目を閉じること、安静にすること、または手もしくは足を想像することを依頼された。これらのタスクのそれぞれに関し、タスクを開始するための言葉による合図と、停止するための4秒後の別の合図とが対象に与えられた。6秒後にタスクが繰り返され、1つのタスクあたり合計で12回の試みおよび120秒の時間であった。
図1は、これらのタスクを行う間のALS対象の、標準的な周波数パワースペクトルを(i)に、増強された周波数パワースペクトルを(ii)に示している。より強い信号がより赤く現れ、一方、より弱い信号は橙色、黄色、青色の色合いで強度が減少している。タスクの開始と終了に対する合図のタイミングと近似する、高い周波数の活動の明確なバンドが、増強されたスペクトルにおいて高い強度で現れている。
図1のAは、4秒間目を閉じるタスクに関してこれを表している。
図1のBは、4秒間左手を握ることおよび6秒間リラックスすることを想像または試みるタスクに関してこれを示している。
図1のC、D、およびEは、同様であるが、それぞれ右手、左足、および右足を握ることを想像または試みるタスクに関するものを示している。全ての場合において、本出願で作成されたスペクトログラムは、指示されたタスクを行おうとする対象による試みのタイミングと近似する高い周波数のスペクトルの内容を明確に明らかにしている。
図1のFは、同じ対象であるが安静時の同じスペクトル分析を示しており、全く異なるタイミングでの高い周波数の内容を表示しており、これは環境ノイズ、バックグラウンドトーク、および/またはベースラインの電気活動を表し得る。
【実施例2】
【0065】
実施例1に記載されたALS患者における本発明の方法の適用によって、事象の時間に近似するデータの成分が明らかになる。
図2は、関連性のない独立したデータ成分を明らかにするための、本発明の方法の1つのそのような適用(ここでは二重に正規化されたスペクトログラムにおける単一のチャネルの成因分析による)を示している。
図2のA~Eは、
図1のA~Eで示されているのと同じタスクからのデータである。各プロットは、記載された全ての分析後の、対象が試みた個々のタスクに近似しているピークを有する、結果としてもたらされた、抽出された独立の成分を示している。緑色の線は、4秒間のタスクを開始するための言葉による合図のタイミングを示し、赤色の線は、タスクを停止して6秒間リラックスするための言葉による合図の時間を示している。各成分におけるピークは、行われるタスクの開始と概ねそろっている(緑色の線における、緑色の線上の、または緑色の線の直後のピーク点により示されている)。また、事象の検出およびタイミングを強化または補強するために、この分析を、実施例1における分析と組み合わせてもよい。
【実施例3】
【0066】
実施例1に記載されたALS患者における、データの安定性を評価するため、および意図する活動を示すデータの安定性における変化を明らかにするための、単一のチャネルの脳EEGデータへの本発明の方法の適用を提供する。具体的には、一時的なフラグメンテーションを生成するために本発明の方法を適用することによって、意図的な活動のタイミングと持続時間に近似する、安定性の変化が明らかになる。
図3のAからEは、
図1のAからEに示されているものと同じタスクの一時的なフラグメンテーションを示している。各プロットにおいて、負から正へのポイントのシフトは、安定性の減少を表している。これらのシフトは、安定性が減少し始めて正へのシフトが始まる、タスクを開始するための言葉による合図(緑色の線)と、データが安定し始めて正へのシフトが終了する、タスクを終了するための言葉による合図(赤色の線)との両方に近似している。ゼロラインの交差(紫色の点)は、不安定な期間が増加し(タスクの間または直後)、安定な期間のカウントが減少する(各タスクの前または後のリラックス期間)。また、事象の検出およびタイミングを強化または補強するために、これらのシフトおよびラインの交差を、実施例1の方法と組み合わせてもよい。
【実施例4】
【0067】
実施例1のALS患者における低周波数の事象と関連する高周波数の事象および事象のタイミングの検出。スペクトログラムの生成、その後の1つまたは両方のデータ軸にわたる1回または複数回の正規化、その後の二重に正規化されたスペクトログラムを用いる特徴の尖鋭化、その後の標準的な既知の周波数、周波数範囲、それらの合計、それらの比率、および/または他の周波数関係の抽出によって、事象のタイミング、間隔、および/または持続時間が明らかになる。
図4のA~Eは、
図1のA~Bにおけるタスクを示し、ガンマおよび非常に高いガンマ(hgamma)の範囲の周波数(全てのものが30Hzより大きい)における高い周波数パワーの合計をプロットしている。脳のEEGにおいて、これらの周波数における増加したパワーは、肢を動かすことを想像するときに生じるような高められた集中力と関連している。高い周波数パワーの合計におけるピークは、緑色(タスク開始)および赤色(タスク終了)の線のカラムにより示されるタスクのタイミングと近似している。
図5のA~Dは、それぞれ右手、左手、右足、および左足を握ることに関する、
図1におけるタスクを示し、ガンマ周波数パワー(30~50Hz)の合計に対する、アルファ周波数(8~13Hz)パワーの合計の比率をプロットしている。脳EEGにおけるアルファ周波数における増加したパワーは、肢を握ることを試みる期間の後のような、精神的努力のリラックスと関連している。このように、アルファ周波数パワーとガンマ周波数パワーとは、これらのタスクに関して逆に関連し、ガンマに対するアルファの比率におけるピークがタスク間(停止を示す赤色の線と再度の開始を示す緑色の線との間)に現れている。
図5Eは、目を閉じるタスクの間のデルタ周波数(<5Hz)の分析を示している。デルタ周波数パワーは、目を開けた状態または閉じた状態での変化と関連し、対象が目を閉じる(緑色の線)および開く(赤色の線)タイミングと近似している。事象の検出とタイミングを強化または補強するため、ならびに、分析された周波数により示される既知の関連する脳の状態で事象を特徴づけるために、これらの周波数分析および他の周波数分析を、互いに組み合わせてもよいし、実施例1、2、および3における方法と組み合せてもよい。
【実施例5】
【0068】
第2のALS患者に関する、同時に生じる複数の事象の同時検出。スペクトログラムの生成、その後の1つまたは両方のデータ軸にわたる1回または複数回の正規化、その後の特徴の尖鋭化、その後の標準的な既知の周波数、周波数範囲、それらの合計、それらの比率、および/または他の周波数関係の抽出によって、1つの分析で複数の事象が明らかになる。
図8は、集中の増加(ガンマ周波数パワーの増加)と、リラックスの減少および増加を示す思考のシフト(アルファ周波数パワーの変化)の増加とを両方誘発するように設計されたタスクからのデータを示している。運動不能なALS患者対象は、2種の10秒間の想像(フットボールを蹴る:緑色の線、およびベッドルームを見る:赤色の線)を交互に5回繰り返すよう指示された。
図8のAは、正規化されかつ増強されたガンマ周波数パワーをプロットし、交互シーケンスの開始時の急な増加(最初の緑色の線、13秒の時点)およびその後の全てのシーケンスの最後の時点の減少(最後の赤色の線、103秒時点)を表示している。
図8のBは、正規化されかつ増強されたアルファ周波数パワーをプロットし、2種の異なる想像の間のリラックス状態における変化(色をつけた線の間のピーク)を示している。
図8のCは、正規化されかつ増強されたアルファおよびガンマパワーをプロットし、1つの分析で検出された2つの固有の信号として、一連の想像中のガンマ周波数パワーの平坦部と、想像を変更するときのアルファのピークの両方の同時検出を示している。
図8のDは、正規化されかつ増強された、非常に高いガンマ(hgamma)に対するアルファの比率をプロットし、シーケンスの開始時の比率の急降下、各想像時の個々のピーク、およびシーケンス後の比率の上昇を伴っている。
【実施例6】
【0069】
複数のタイプの意図的事象を区別して特徴づけするための繰り返し正規化されたスペクトログラムの使用。SPEARSアルゴリズムの適用と、その後の、任意の2つのスペクトログラム間の同じ分布でのサンプリングに関する2標本コルモゴロフ・スミルノフ(KS)検定とを含む分析によって、区別可能な想像上の運動動作が明らかになる。本出願によって、他と区別可能である少なくとも1つの事象タイプに基づいて多自由度が可能になる。運動不能なALS対象により行われた
図1のA~Eに列挙された各タスクに由来する、交差する軸方向に10重に正規化されたスペクトログラムについてのKS検定のp値は、各スペクトログラムが安静時とは異なる分布由来であり(P<0.01)(表1)、かつほとんどの任意の他のタスクの分布由来であり(P<0.05)(
図10)、この特定の試行における左手および右足についてはそれほどではないにせよ、検出時の同じまたは複数の事象の特徴づけのために効果的な適用となることを示している。
【0070】
(表1)安静時に対する想像上のタスクのKS検定のp値
【0071】
本出願を通して、本発明が属する分野の状態をより十分に記載するために、種々の出版物、特許、および/または特許出願が参照される。これらの出版物、特許、および/または特許出願の開示内容は、その全体において参照により、および同一の、または前の文でで具体的に参照される主題内容に関して、それぞれの個々の出版物、特許、および/または特許出願が、参照により組み込まれるように、具体的にかつ個々に示されるのと同じ程度に、本明細書に組み込まれる。
【0072】
いくつかの実施形態のみを上記に詳細に開示したが、他の実施形態が可能であり、発明者は、これらが本明細書内に包含されることを意図する。本明細書は、別の方法で達成され得る、より一般的な目標を達成するための具体例を記載する。本開示は、例示的であることが意図され、特許請求の範囲は、当業者にとって予測可能であると考えられるあらゆる変更または代替にわたることが意図される。例えば、他の適用が可能であり、他の形態の判別関数および特徴づけが可能である。上記は、周波数を、その「好ましい周波数」の観点から特徴づけることを広範にわたって記載したが、情報のより厳密な特徴づけが可能であることとしてもよいことが理解されるべきである。また、上記は、EEGデータから意図状態を決定することのみ言及し、少数のみの異なる種類の意図状態の決定のみに言及しているが、他の適用が考えられることが理解されるべきである。
【0073】
例示的な実施形態において本発明の原理を示して述べてきたが、記載された実施例は例示説明的な実施形態であり、そのような原理から逸脱することなく、配置および詳細が変更され得ることは当業者にとって明らかであろう。いかなる実施例からの技術も、1つまたは複数の任意の他の実施例に組み込まれ得る。明細および実施例は単なる例示とされ、本発明の真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲により示されることが意図される。