(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】車両並びにその制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 60/00 20200101AFI20231024BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20231024BHJP
B60W 30/165 20200101ALI20231024BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B60W60/00
B60W40/04
B60W30/165
G08G1/16 E
(21)【出願番号】P 2022017179
(22)【出願日】2022-02-07
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小黒 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】依田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 弘文
(72)【発明者】
【氏名】樫本 涼
(72)【発明者】
【氏名】永松 洋祐
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-170364(JP,A)
【文献】特開平11-086184(JP,A)
【文献】特開2019-109666(JP,A)
【文献】特開2017-165289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制御装置であって、
前記車両の周囲の環境を認識する認識手段と、
前記認識手段によって認識された環境に基づいて前記車両の走行を制御する走行制御手段と、
前記車両の速度が低速閾値よりも低い低速状態がどの程度
の時間又は距離、継続するかを予測する予測手段と、
を備え、
前記走行制御手段は、前記予測手段による予測結果に基づいて、第1走行状態から、前記第1走行状態と比較して前記車両の運転者による関与が軽減された第2走行状態に遷移するかどうかを判定する、制御装置。
【請求項2】
前記予測手段は、前記車両の進行方向の道路構造に基づいて前記低速状態がどの程度
の時間又は距離、継続するかを予測する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記予測手段は、前記車両の進行方向の過去の交通状況に基づいて前記低速状態がどの程度
の時間又は距離、継続するかを予測する、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記予測手段による予測結果に基づいて遷移閾値を決定する閾値決定手段をさらに備え、
前記走行制御手段は、前記車両の速度が前記遷移閾値を下回ったことに基づいて、前記第1走行状態から前記第2走行状態に遷移すると判定する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記走行制御手段は、前記第2走行状態において、前記車両の前走車両を追従する、請求項1乃至4の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の制御装置を備える車両。
【請求項7】
コンピュータを請求項1乃至5の何れか1項に記載の制御装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
車両の制御方法であって、
コンピュータが、前記車両の周囲の環境を認識する認識工程と、
前記コンピュータが、前記認識工程において認識された環境に基づいて前記車両の走行を制御する走行制御工程と、
前記コンピュータが、前記車両の速度が低速閾値よりも低い低速状態がどの程度
の時間又は距離、継続するかを予測する予測工程と、
を有し、
前記走行制御工程は、前記予測工程における予測結果に基づいて、第1走行状態から、前記第1走行状態と比較して前記車両の運転者による関与が軽減された第2走行状態に遷移するかどうかを判定することを含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両並びにその制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
渋滞追従制御を実行可能な車両が提案されている。渋滞追従制御とは、所定の車速以下の範囲で、前走車両と安全な車間距離を保ちながら前走車両に自動追従するように、車両の制御装置が車両の走行を制御する動作のことである。特許文献1では、前走車両の速度に応じて渋滞追従制御を自動的に開始する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の速度が低下する場合は、車両の進行方向に渋滞が発生した場合に限られず、例えば信号待ちによって一時的に車速が低下した場合もありうる。このように一時的に車速が低下した場合に渋滞追従制御を開始すると、車速が向上したことに応じて、すぐに渋滞追従制御を終了することになる。このように車両が制御する走行状態が頻繁に切り替わると、運転者が煩わしく感じることがある。本発明の一部の側面は、車両の走行状態の過度な変更を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて、車両の制御装置であって、前記車両の周囲の環境を認識する認識手段と、前記認識手段によって認識された環境に基づいて前記車両の走行を制御する走行制御手段と、前記車両の速度が低速閾値よりも低い低速状態がどの程度の時間又は距離、継続するかを予測する予測手段と、を備え、前記走行制御手段は、前記予測手段による予測結果に基づいて、第1走行状態から、前記第1走行状態と比較して前記車両の運転者による関与が軽減された第2走行状態に遷移するかどうかを判定する、制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
上記手段により、車両の走行状態の過度な変更を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一部の実施形態による車両のハードウェア構成例を説明するブロック図。
【
図2】一部の実施形態による車両の機能構成例を説明するブロック図。
【
図3】一部の実施形態による低速状態の発生要因を説明する模式図。
【
図4】一部の実施形態による遷移閾値の決定方法例を説明するグラフ。
【
図5】一部の実施形態による車両の制御方法例を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両1のブロック図である。
図1において、車両1はその概略が平面図と側面図とで示されている。車両1は一例としてセダンタイプの四輪の乗用車である。車両1はこのような四輪車両であってもよいし、二輪車両や他のタイプの車両であってもよい。
【0010】
車両1は、車両1を制御する車両用制御装置2(以下、単に制御装置2と呼ぶ)を含む。制御装置2は車内ネットワークにより通信可能に接続された複数のECU(Electronic Control Unit)20~29を含む。各ECUは、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ、半導体メモリ等のメモリ、外部デバイスとのインタフェース等を含む。メモリにはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。各ECUはプロセッサ、メモリおよびインタフェース等を複数備えていてもよい。例えば、ECU20は、プロセッサ20aとメモリ20bとを備える。メモリ20bに格納されたプログラムが含む命令をプロセッサ20aが実行することによって、ECU20による処理が実行される。これに代えて、ECU20は、ECU20による処理を実行するためのASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の専用の集積回路を備えてもよい。他のECUについても同様である。
【0011】
以下、各ECU20~29が担当する機能等について説明する。なお、ECUの数や、担当する機能については適宜設計可能であり、本実施形態よりも細分化したり、統合したりすることが可能である。
【0012】
ECU20は、車両1の自動走行に関わる制御を実行する。自動運転においては、車両1の操舵と、加減速の少なくとも一方を自動制御する。ECU20による自動走行は、車両1の運転者(以下、単に運転者と表す)による走行操作を必要としない自動走行(自動運転とも呼ばれうる)と、運転者による走行操作を支援するための自動走行(運転支援とも呼ばれうる)とを含んでもよい。
【0013】
ECU21は、電動パワーステアリング装置3を制御する。電動パワーステアリング装置3は、ステアリングホイール31に対する運転者の運転操作(操舵操作)に応じて前輪を操舵する機構を含む。また、電動パワーステアリング装置3は操舵操作をアシストしたり、前輪を自動操舵したりするための駆動力を発揮するモータや、操舵角を検知するセンサ等を含む。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU21は、ECU20からの指示に対応して電動パワーステアリング装置3を自動制御し、車両1の進行方向を制御する。
【0014】
ECU22および23は、車両1の周囲状況を検知する検知ユニット41~43の制御および検知結果の情報処理を行う。検知ユニット41は、車両1の前方を撮影するカメラであり(以下、カメラ41と表記する場合がある。)、本実施形態の場合、車両1のルーフの前側でフロントウィンドウの車室内側に取り付けられる。カメラ41が撮影した画像の解析により、物標の輪郭や、道路上の車線の区画線(白線等)を抽出可能である。
【0015】
検知ユニット42は、ライダ(Light Detection and Ranging)であり(以下、ライダ42と表記する場合がある)、車両1の周囲の物標を検知したり、物標との距離を測定したりする。本実施形態の場合、ライダ42は5つ設けられており、車両1の前部の各隅部に1つずつ、後部中央に1つ、後部各側方に1つずつ設けられている。検知ユニット43は、ミリ波レーダであり(以下、レーダ43と表記する場合がある)、車両1の周囲の物標を検知したり、物標との距離を測定したりする。本実施形態の場合、レーダ43は5つ設けられており、車両1の前部中央に1つ、前部各隅部に1つずつ、後部各隅部に一つずつ設けられている。
【0016】
ECU22は、一方のカメラ41と、各ライダ42の制御および検知結果の情報処理を行う。ECU23は、他方のカメラ41と、各レーダ43の制御および検知結果の情報処理を行う。車両1の周囲状況を検知する装置を二組備えたことで、検知結果の信頼性を向上でき、また、カメラ、ライダ、レーダといった種類の異なる検知ユニットを備えたことで、車両1の周辺環境の解析を多面的に行うことができる。
【0017】
ECU24は、ジャイロセンサ5、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサ24b、通信装置24cの制御および検知結果あるいは通信結果の情報処理を行う。ジャイロセンサ5は車両1の回転運動を検知する。ジャイロセンサ5の検知結果や、車輪速等により車両1の進路を判定することができる。GNSSセンサ24bは、車両1の現在位置を検知する。通信装置24cは、地図情報や交通情報を提供するサーバと無線通信を行い、これらの情報を取得する。ECU24は、地図情報を格納したデータベース24aにアクセス可能であり、ECU24は現在地から目的地へのルート探索等を行う。ECU24、データベース24a、GNSSセンサ24bは、いわゆるナビゲーション装置を構成している。
【0018】
ECU25は、車車間通信用の通信装置25aを備える。通信装置25aは、周辺の他車両と無線通信を行い、車両間での情報交換を行う。
【0019】
ECU26は、パワープラント6を制御する。パワープラント6は車両1の駆動輪を回転させる駆動力を出力する機構であり、例えば、エンジンと変速機とを含む。ECU26は、例えば、アクセルペダル7Aに設けた操作検知センサ7aにより検知した運転者の運転操作(アクセル操作あるいは加速操作)に対応してエンジンの出力を制御したり、車速センサ7cが検知した車速等の情報に基づいて変速機の変速段を切り替えたりする。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU26は、ECU20からの指示に対応してパワープラント6を自動制御し、車両1の加減速を制御する。
【0020】
ECU27は、方向指示器8(ウィンカ)を含む灯火器(ヘッドライト、テールライト等)を制御する。
図1の例の場合、方向指示器8は車両1の前部、ドアミラーおよび後部に設けられている。
【0021】
ECU28は、入出力装置9の制御を行う。入出力装置9は運転者に対する情報の出力と、運転者からの情報の入力の受け付けを行う。音声出力装置91は運転者に対して音声により情報を報知する。表示装置92は運転者に対して画像の表示により情報を報知する。表示装置92は例えば運転席表面に配置され、インストルメントパネル等を構成する。なお、ここでは、音声と表示を例示したが振動や光により情報を報知してもよい。また、音声、表示、振動または光のうちの複数を組み合わせて情報を報知してもよい。更に、報知すべき情報のレベル(例えば緊急度)に応じて、組み合わせを異ならせたり、報知態様を異ならせたりしてもよい。入力装置93は運転者が操作可能な位置に配置され、車両1に対する指示を行うスイッチ群であるが、音声入力装置も含まれてもよい。
【0022】
ECU29は、ブレーキ装置10やパーキングブレーキ(不図示)を制御する。ブレーキ装置10は例えばディスクブレーキ装置であり、車両1の各車輪に設けられ、車輪の回転に抵抗を加えることで車両1を減速あるいは停止させる。ECU29は、例えば、ブレーキペダル7Bに設けた操作検知センサ7bにより検知した運転者の運転操作(ブレーキ操作)に対応してブレーキ装置10の作動を制御する。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU29は、ECU20からの指示に対応してブレーキ装置10を自動制御し、車両1の減速および停止を制御する。ブレーキ装置10やパーキングブレーキは車両1の停止状態を維持するために作動することもできる。また、パワープラント6の変速機がパーキングロック機構を備える場合、これを車両1の停止状態を維持するために作動することもできる。
【0023】
図2を参照して、車両1の制御装置2の機能構成例について説明する。制御装置2は、
図2に示される複数の機能ブロックを有する。
図2は、本発明の様々な実施形態の説明に使用される機能ブロックのみを示す。制御装置2は、
図2に示されない他の機能ブロックを有してもよい。また、実施形態によっては、制御装置2は、
図2に示される機能ブロックの一部を有しなくてもよい。制御装置2の機能ブロックによる動作は、メモリ20bに読み込まれたプログラムをプロセッサ20aが実行することによって実現されてもよい。これに代えて、制御装置2の一部又は全部の機能ブロックの動作は、ASICやFPGAのような専用回路によって実現されてもよい。
【0024】
環境認識部201は、車両1の周囲の環境を認識する。車両1の周囲とは、走行制御部202及び低速継続予測部203が後述する処理において使用する情報を与える物体が存在する範囲のことであってもよい。例えば、車両1の周囲は、検知ユニット41~43が検出可能な範囲を含んでもよい。また、車両1の周囲は、車両1が通信装置25aを用いて車車間通信が可能な範囲を含んでもよい。車両1の周囲の環境とは、走行制御部202及び低速継続予測部203が後述する処理において使用する情報を与える物体の状態のことであってもよい。例えば、車両1の周囲の環境は、車両1の周囲の道路構造(区画線の位置、交差点の位置、信号機の位置、車線数等)、車両1以外の交通参加者(例えば、他の車両や歩行者)の状態(位置、大きさ、移動速度、移動方向等)を含んでもよい。
【0025】
環境認識部201は、車両1の周囲の環境を認識するために様々な情報を使用してもよい。環境認識部201によって使用される情報は、検知ユニット41~43による検出結果(例えば、車両1の周囲の画像)を含んでもよい。また、環境認識部201によって使用される情報は、GNSSセンサ24bによって測定された車両1の現在位置と、データベース24aから読み出された地図情報とを含んでもよい。さらに、環境認識部201によって使用される情報は、通信装置25aを用いて他の車両から受信した情報(例えば、他の車両の位置、速度、移動方向等)を含んでもよい。さらに、環境認識部201によって使用される情報は、サーバから配信された車両1の周囲の交通情報を含んでもよい。
【0026】
走行制御部202は、環境認識部201によって認識された車両1の周囲の環境に基づいて、車両1の走行を制御する。例えば、走行制御部202は、車両1の駆動、制動及び操舵を自動的に(すなわち、運転者の操作によらず)制御することによって、運転者による操作を必要とせずに、車両1の走行を制御してもよい。このように運転者の操作を必要とせずに車両1の走行を制御することを、以下では自動走行制御と称する。
【0027】
走行制御部202は、複数の走行状態を切り替えて自動走行制御を実行可能であってもよい。例えば、走行制御部202が実行可能な走行状態は、運転者がステアリングホイール31の把持及び周辺監視を行う必要がある走行状態と、運転者がステアリングホイール31の把持を行う必要がないが、周辺監視を行う必要がある走行状態とを含んでもよい。運転者がステアリングホイール31の把持及び周辺監視を行う必要がある走行状態を、以下ではハンズオン走行状態と称する。運転者がステアリングホイール31の把持を行う必要がないが、周辺監視を行う必要がある走行状態を、以下ではハンズオフ走行状態と称する。ハンズオフ走行状態は、ハンズオン走行状態と比較して、車両1の走行に関する運転者による関与が軽減されている。言い換えると、ハンズオフ走行状態は、ハンズオン走行状態と比較して、自動化率が高い。
【0028】
走行制御部202がハンズオフ走行状態を実行するための条件は、車両1が車両1の前走車両を追従可能であることを含んでもよい。例えば、走行制御部202は、車両1と同じ車線を車両1の前方で走行している車両との距離が閾値距離以内(例えば、30m以内)である場合に、車両1が当該前走車両を追従可能であると判定してもよい。このような条件が課されている場合に、ハンズオフ走行状態を実行中の走行制御部202は、車両1の前走車両を追従する。走行制御部202は、車両1の前走車両を追従できなくなった場合に、ハンズオフ走行状態からハンズオン走行状態に遷移してもよい。
【0029】
走行制御部202が実行可能な走行状態は、運転者がステアリングホイール31の把持及び周辺監視を行う必要がない走行状態を含んでもよい。運転者がステアリングホイール31の把持及び周辺監視を行う必要がない走行状態を、以下ではアイズオフ走行状態と称する。アイズオフ走行状態は、ハンズオフ走行状態と比較して、車両1の走行に関する運転者による関与が軽減されている。
【0030】
走行制御部202は、自動走行制御を実行中に、車両1の周囲の環境に基づいて、複数の走行状態から実行可能な走行状態を選択し、選択した走行状態で車両1の走行を制御する。例えば、走行制御部202は、ハンズオン走行状態で動作中に、ハンズオフ走行状態で動作可能な環境となったことに基づいて、ハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移してもよい。また、走行制御部202は、ハンズオフ走行状態で動作中に、ハンズオフ走行状態で動作可能でない環境となったことに基づいて、ハンズオフ走行状態からハンズオン走行状態に遷移してもよい。
【0031】
ハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移するための条件について説明する。走行制御部202は、車速が特定の閾値を下回ったことに基づいて、ハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移してもよい。このような閾値を、以下では遷移閾値と称する。車速と遷移閾値との比較だけに基づいてハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態への遷移を行うと、以下に説明するような状況が発生しうる。
【0032】
例えば、
図3(a)に示すように、車両1の進行方向の信号機301が赤信号であることに応じて、車両1が停止したとする。この場合に、車速は遷移閾値(例えば、30km/h)を下回る。これに応じて、走行制御部202がハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移したとする。その後、信号機301が青信号になったことに応じて、車両1が走行を再開し、車速が遷移閾値(例えば、30km/h)を上回ったとする。これに応じて、走行制御部202は、ハンズオフ走行状態からハンズオン走行状態に遷移する。このように短時間でハンズオフ走行状態とハンズオン走行状態とが切り替わると、運転者が煩わしく感じる恐れがある。
【0033】
一方、
図3(b)に示すように、車両1の進行方向に位置する地点302で車線数が減少するとする。この場合に、車両1が低速となったことは、車両1の進行方向で渋滞が発生していることに起因する可能性が高い。この場合には、ハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移したとしても、短時間でハンズオン走行状態に戻る可能性は低い。そこで、一部の実施形態において、走行制御部202は、車両1が低速になったことだけではなく、低速である状態がどの程度継続するかに関する予測結果に基づいて、ハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移するかどうかを判定する。これによって、ハンズオン走行状態とハンズオフ走行状態との間の過度な変更が抑制される。
【0034】
低速継続予測部203が、車両1が低速になった後に、車両1が低速である状態がどの程度継続するかを予測する。車両1が低速であるとは、車両1の速度(以下、単に車速と称する)が閾値よりも低いことであってもよい。この閾値を、低速閾値と称する。また、車両1が低速である状態を、低速状態と称する。低速状態がどの程度継続するかの予測結果は、時間で表されてもよいし、距離で表されてもよい。例えば、低速継続予測部203による予測結果は、低速状態が特定の時間(例えば、15分)継続するという予測であってもよいし、低速状態が特定の距離(例えば、2km)継続するという予測であってもよい。以下では、低速継続予測部203による予測結果が時間で表される場合について説明する。しかし、以下の説明は、低速継続予測部203による予測結果が距離で表される場合についても同様に当てはまる。
【0035】
低速継続予測部203による予測結果は、2段階(すなわち、低速状態が比較的長く継続するか、比較的短く継続するか)で表されてもよいし、3段階以上で表されてもよいし、具体的な時間(例えば、15分)で表されてもよい。
【0036】
低速継続予測部203は、様々な情報に基づいて、低速状態の継続時間を予測してもよい。低速継続予測部203によって使用される情報は、例えば車両1の進行方向の道路構造(例えば、車線数、道路の曲率、信号機の頻度、交通標識)を含んでもよい。例えば、車両1の進行方向で車線数が減少したり、道路の曲率が増加したり、信号が頻繁に出現したり、交通標識によって速度制限が課されていたりする場合には、車両1の前方で渋滞が発生している可能性がある。そのため、低速継続予測部203は、車両1の進行方向の道路構造がこのような条件を満たす場合に、低速状態が比較的長く継続すると判定してもよい。一方、低速継続予測部203は、車両1の進行方向の道路構造に渋滞の誘因となる構造がない場合に、低速状態が比較的短く継続すると判定してもよい。
【0037】
低速継続予測部203によって使用される情報は、車両1の進行方向の過去の交通情報を含んでもよい。このような交通情報は、例えば外部のサーバから受信することによって取得されてもよい。例えば、車両1の進行方向に位置する区画で過去に頻繁に渋滞が発生していたとする。このような場合に、低速継続予測部203は、低速状態が比較的長く継続すると判定してもよい。一方、車両1の進行方向に位置する区画で過去にほとんど渋滞が発生していなかった場合に、低速継続予測部203は、低速状態が比較的短く継続すると判定してもよい。
【0038】
低速継続予測部203は、時刻を考慮して過去の交通状態を使用してもよい。例えば、車両1の進行方向に位置する区画が、特定の時間帯(例えば、17時から18時)に渋滞しやすく、それ以外の時間帯に渋滞しにくいとする。このような場合に、低速継続予測部203は、当該区画を通過すると予測される時刻がこの特定の時間帯に含まれる場合に、低速状態が比較的長く継続すると判定し、それ以外の場合に低速状態が比較的短く継続すると判定してもよい。
【0039】
低速継続予測部203によって使用される情報は、実際の渋滞の発生状況を含んでもよい。低速継続予測部203は、車車間通信によって受信された情報や、サーバから受信された交通情報に基づいて、車両1の進行方向で渋滞が発生しているかどうかを判定してもよい。低速継続予測部203は、渋滞が発生している場合に、低速状態が比較的長く継続すると判定し、それ以外の場合に低速状態が比較的短く継続すると判定してもよい。
【0040】
遷移閾値決定部204は、車両1の走行状態を遷移するための閾値を決定する。低速状態の予測継続時間に基づいてハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移するかどうかを判定することは、低速状態の予測継続時間に基づいて遷移閾値を決定することを含んでもよい。例えば、遷移閾値決定部204は、
図4に示されるグラフ401に従って遷移閾値を決定してもよい。グラフ401の横軸は、低速継続予測部203によって予測された低速状態の継続時間を示す。グラフ401の縦軸は、遷移閾値を示す。
【0041】
グラフ401に示されるように、予測継続時間が比較的短い(例えば、5分以下)の場合に、遷移閾値決定部204は、遷移閾値を0km/hに設定する。この場合に、車速が遷移閾値を下回ることがないため、走行制御部202がハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移することはない。一方、予測継続時間が比較的長い(例えば、10分以上)の場合に、遷移閾値決定部204は、遷移閾値を正の値(例えば、30km/h)に設定する。この場合に、走行制御部202は、車速が遷移閾値(30km/h)を下回ったことに基づいて、ハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移する。一方、走行制御部202は、車速が遷移閾値(30km/h)を下回っていないことに基づいて、ハンズオン走行状態を維持する。予測継続時間が中程度(例えば、5分~10分)の場合に、遷移閾値は連続的に変化してもよい。グラフ401は、非減少関数である。そのため、予測継続時間が長いほど、ハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移しやすくなる。
【0042】
図5を参照して、制御装置2による車両1の制御方法例について説明する。この方法は、制御装置2がハンズオン走行制御を開始したことによって開始されてもよい。この方法の各工程は、メモリ20bに読み込まれたプログラムをプロセッサ20aが実行することによって実行されてもよい。
【0043】
ステップS501で、制御装置2(例えば、走行制御部202)は、車速を取得する。車速は、車両1の車輪速センサを用いて取得されてもよい。
【0044】
ステップS502で、制御装置2(例えば、走行制御部202)は、車速が低速閾値よりも低いかどうかを判定する。制御装置2は、車速が低速閾値よりも低いと判定された場合(ステップS502で「YES」)に、処理をステップS503に遷移し、それ以外の場合(ステップS502で「NO」)に、処理をステップS501に戻す。低速閾値は事前に設定され、車両1の記憶装置(例えば、メモリ20b)に記憶されていてもよい。低速閾値は、例えば30km/hであってもよい。低速閾値は、車両1の周囲の環境に応じて変更されてもよい。低速閾値は、グラフ401に示される遷移閾値の上限と同じ値であってもよい。
【0045】
ステップS503で、制御装置2(例えば、走行制御部202)は、車両1の前方に前走車両が存在するかどうかを判定する。制御装置2は、前走車両が存在すると判定された場合(ステップS503で「YES」)に、処理をステップS504に遷移し、それ以外の場合(ステップS503で「NO」)に、処理をステップS501に戻す。例えば、車両1の前方を他の車両が走行中であり、当該車両との距離が閾値距離(例えば、30m)以内である場合に、前走車両が存在すると判定されてもよい。
【0046】
ステップS504で、制御装置2(例えば、低速継続予測部203)は、低速状態がどの程度継続するかを予測する。この予測処理の詳細は上述したため、重複する説明を省略する。ステップS505で、制御装置2(例えば、遷移閾値決定部204)は、ステップS504における予測結果に基づいて、遷移閾値を決定する。この決定処理の詳細は上述したため、重複する説明を省略する。
【0047】
ステップS506で、制御装置2(例えば、走行制御部202)は、車速が遷移閾値よりも低いかどうかを判定する。制御装置2は、車速が遷移閾値よりも低いと判定された場合(ステップS506で「YES」)に、処理をステップS507に遷移し、それ以外の場合(ステップS506で「NO」)に、処理をステップS501に戻す。ステップS507で、制御装置2(例えば、走行制御部202)は、ハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移する。
【0048】
上述の方法では、ステップS502、S503及びS506の条件をすべて満たす場合に、制御装置2は、ハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移する。ハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移するための条件は、ステップS502、S503及びS506の条件以外の条件を含んでもよい。
【0049】
上述の方法では、ハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移するための条件が、S503の条件(すなわち、前走車両が存在すること)を含む。制御装置2が前走車両の存在なしにハンズオフ走行状態を実行可能である場合に、ハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移するための条件は、S503の条件を含まなくてもよい。
【0050】
上述の方法では、ステップS502で車速が低速閾値よりも低くなったことに基づいてステップS503以降の処理が実行される。これに代えて又はこれに加えて、運転者からの指示に応じてステップS503以降の処理が実行されてもよい。
【0051】
上述の実施形態では、低速状態がどの程度継続するかに関する予測結果に基づいて遷移閾値を変化させることによって、ハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移するかどうかが判定される。これに代えて、低速状態がどの程度継続するかに関する予測結果によらず、同じ値の遷移閾値が使用されてもよい。この場合に、制御装置2は、
図5のS505及びS506を実行する代わりに、低速状態がどの程度継続するかに関する予測結果が、所定の閾値を上回ったことに基づいて、ハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移すると判定されてもよい。予測結果が所定の閾値を上回ることは、低速状態の予測継続時間が所定の閾値時間(例えば、15分)を上回ることであってもよいし、低速状態の予測継続距離が所定の閾値距離(例えば、2km)を上回ることであってもよい。
【0052】
上述の実施形態では、低速状態がどの程度継続するかに関する予測結果に基づいて、ハンズオン走行状態からハンズオフ走行状態に遷移するかどうかが判定される。これに代えて又はこれに加えて、ハンズオフ走行状態からアイズオフ走行状態に遷移するかどうかも、低速状態がどの程度継続するかに関する予測結果に基づいて判定されてもよい。
【0053】
<実施形態のまとめ>
<項目1>
車両(1)の制御装置(2)であって、
前記車両の周囲の環境を認識する認識手段(201)と、
前記認識手段によって認識された環境に基づいて前記車両の走行を制御する走行制御手段(202)と、
前記車両の速度が低速閾値よりも低い低速状態がどの程度継続するかを予測する予測手段(203)と、
を備え、
前記走行制御手段は、前記予測手段による予測結果に基づいて、第1走行状態から、前記第1走行状態と比較して前記車両の運転者による関与が軽減された第2走行状態に遷移するかどうかを判定する、制御装置。
この項目によれば、低速状態が短時間しか続かない場合に第2走行状態に遷移しないことができるため、車両の走行状態の過度な変更を抑制できる。
<項目2>
前記予測手段は、前記車両の進行方向の道路構造(302)に基づいて前記低速状態がどの程度継続するかを予測する、項目1に記載の制御装置。
この項目によれば、道路構造に基づいて低速状態の継続の程度を判定できる。
<項目3>
前記予測手段は、前記車両の進行方向の過去の交通状況に基づいて前記低速状態がどの程度継続するかを予測する、項目1又は2に記載の制御装置。
この項目によれば、過去の交通状況に基づいて低速状態の継続の程度を判定できる。
<項目4>
前記制御装置は、前記予測手段による予測結果に基づいて遷移閾値を決定する閾値決定手段(204)をさらに備え、
前記走行制御手段は、前記車両の速度が前記遷移閾値を下回ったことに基づいて、前記第1走行状態から前記第2走行状態に遷移すると判定する、項目1乃至3の何れか1項に記載の制御装置。
この項目によれば、走行状態を遷移するかどうかを車速に関連付けて判定できる。
<項目5>
前記走行制御手段は、前記第2走行状態において、前記車両の前走車両を追従する、項目1乃至4の何れか1項に記載の制御装置。
この項目によれば、前走車両に合わせて低速状態の継続を予測できる。
<項目6>
項目1乃至5の何れか1項に記載の制御装置(2)を備える車両(1)。
この項目によれば、車両の形態で上記項目を実現できる。
<項目7>
コンピュータを項目1乃至5の何れか1項に記載の制御装置の各手段として機能させるためのプログラム。
この項目によれば、プログラムの形態で上記項目を実現できる。
<項目8>
車両(1)の制御方法であって、
前記車両の周囲の環境を認識する認識工程と、
前記認識工程において認識された環境に基づいて前記車両の走行を制御する走行制御工程と、
前記車両の速度が低速閾値よりも低い低速状態がどの程度継続するかを予測する予測工程と、
を有し、
前記走行制御工程は、前記予測工程における予測結果に基づいて、第1走行状態から、前記第1走行状態と比較して前記車両の運転者による関与が軽減された第2走行状態に遷移するかどうかを判定することを含む、制御方法。
この項目によれば、低速状態が短時間しか続かない場合に第2走行状態に遷移しないことができるため、車両の走行状態の過度な変更を抑制できる。
【0054】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 車両、2 制御装置、201 環境認識部、202 走行制御部、203 低速継続予測部、204 遷移閾値決定部