(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】交通安全支援システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
G08G1/16 D
(21)【出願番号】P 2022061137
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】木俣 亮人
(72)【発明者】
【氏名】井上 茂
(72)【発明者】
【氏名】高木 悠至
(72)【発明者】
【氏名】味村 嘉崇
(72)【発明者】
【氏名】門脇 英男
(72)【発明者】
【氏名】呉橋 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】奥本 雅規
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-102453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1移動体である支援対象の運転者による運転を支援する交通安全支援システムであって、
前記支援対象の周囲の監視エリアにおける交通参加者及び交通環境を認識する認識手段と、
前記運転者が認知可能な態様で作動するマンマシンインターフェースと、
前記認識手段によって前記監視エリア内でありかつ前記支援対象を中心とする第1範囲外に第2移動体の存在が認識されている間、前記認識手段による認識結果に基づいて前記マンマシンインターフェースの通知モードを設定する通知モード設定手段と、
前記通知モードが第1モードに設定された場合、第1通知態様で前記マンマシンインターフェースを作動させ、前記通知モードが第2モードに設定された場合、前記第1通知態様よりも通知強度が高い第2通知態様で前記マンマシンインターフェースを作動させる通知制御手段と、を備え、
前記通知モード設定手段は、
前記第2移動体が前記第1範囲を包含する第2範囲外において前記支援対象の進行方向前方から前記支援対象へ接近する対向移動体又は前記支援対象の進行方向後方から前記支援対象へ接近する後続移動体である場合、前記通知モードを前記第1モードに設定し、
前記第2移動体が前記第2範囲内に存在する場合、前記通知モードを前記第2モードに設定することを特徴とする交通安全支援システム。
【請求項2】
前記通知制御手段は、前記通知モードが前記第2モードに設定されている場合、前記支援対象と前記第2移動体との間のリスク度合いに応じて前記通知強度を変化させることを特徴とする請求項1に記載の交通安全支援システム。
【請求項3】
前記通知モード設定手段は、前記支援対象及び前記対向移動体の少なくとも何れかの一部が、前記支援対象と前記対向移動体との間の車線境界線を中心とした所定幅範囲内に存在する場合、前記通知モードを前記第1モードに設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の交通安全支援システム。
【請求項4】
前記通知モード設定手段は、前記対向移動体の周辺に前記支援対象の進行方向前方から前記支援対象へ接近しかつ前記対向移動体よりも大きな周辺移動体が存在する場合、前記通知モードを前記第1モードに設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の交通安全支援システム。
【請求項5】
前記通知モード設定手段は、前記監視エリアの天候が降雨である場合又は前記監視エリアの照度が所定の照度閾値未満である場合、前記通知モードを前記第1モードに設定することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の交通安全支援システム。
【請求項6】
前記認識手段によって交通参加者として認識されている移動体の将来を予測する予測手段をさらに備え、
前記通知モード設定手段は、前記予測手段によって予測される前記支援対象の第1予測移動経路と前記第2移動体の第2予測移動経路とが重なる場合、前記通知モードを前記第2モードに設定することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の交通安全支援システム。
【請求項7】
前記第2移動体は二輪車両であることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の交通安全支援システム。
【請求項8】
前記支援対象は、前記第1範囲内に接触可能性のある移動体が存在することを条件として、制動装置及び操舵装置の少なくとも何れかを自動で操作する運転支援装置を備えることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の交通安全支援システム。
【請求項9】
第1移動体である支援対象の運転者による運転を支援する交通安全支援システムであって、
前記支援対象の周囲の監視エリアにおける交通参加者及び交通環境を認識する認識手段と、
前記運転者が認知可能な態様で作動するマンマシンインターフェースと、
前記認識手段によって前記監視エリア内でありかつ前記支援対象を中心とする第1範囲外に第2移動体の存在が認識されている間、前記認識手段による認識結果に基づいて前記マンマシンインターフェースの通知モードを設定する通知モード設定手段と、
前記通知モードが第1モードに設定された場合、第1通知態様で前記マンマシンインターフェースを作動させ、前記通知モードが第2モードに設定された場合、前記第1通知態様よりも通知強度が高い第2通知態様で前記マンマシンインターフェースを作動させる通知制御手段と、を備え、
前記通知モード設定手段は、
前記第2移動体が前記第1範囲を包含する第2範囲外に存在しかつ前記認識手段によって前記支援対象と前記第2移動体との間の距離を認識しにくい場合、前記通知モードを前記第1モードに設定し、
前記第2移動体が前記第2範囲内に存在する場合、前記通知モードを前記第2モードに設定することを特徴とする交通安全支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通安全支援システムに関する。より詳しくは、移動体である支援対象の運転者による運転を支援する交通安全支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
公共交通では、四輪自動車、自動二輪車、及び自転車等の移動体や歩行者等、様々な交通参加者が各々の意思に基づき各々異なった速度で移動する。このような公共交通における交通参加者の安全性や利便性等を向上するための技術として、例えば特許文献1には、予測された危険状態と併せて、乗員が危険を感じたときの車両の走行状態の情報及び車両の周囲環境の情報に基づいて運転支援制御を実行することによって、複数の対象物が存在する場合であっても円滑な走行を妨げることなく警告又は走行制御への介入動作を実行する運転支援装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の運転支援技術では、他の移動体が自車に対向する又は自車の後方から接近することが予測される状況において、他の移動体と自車とが衝突する可能性がある場合に自車の運転者に通知を行っていた。しかし、他の移動体の位置検出に誤差がある場合、自車の運転者への通知が正確に行われず、交通の安全性が十分に確保されていなかった。
【0005】
本発明は、他の移動体が自車に対向する又は自車の後方から接近することが予測される状況において、交通の安全性を向上できる交通安全支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る交通安全支援システム(例えば、後述の交通安全支援システム1)は、第1移動体である支援対象(例えば、後述の四輪自動車2)の運転者による運転を支援する交通安全支援システムであって、前記支援対象の周囲の監視エリアにおける交通参加者及び交通環境を認識する認識手段(例えば、後述の車載運転支援装置21、車載通信装置24、携帯情報処理端末25、車載運転支援装置31、車載通信装置34、携帯情報処理端末35、携帯情報処理端末40、信号制御装置55、インフラカメラ56、対象交通エリア認識ユニット60及び交通環境データベース67)と、前記運転者が認知可能な態様で作動するマンマシンインターフェース(例えば、後述のHMI220、HMI320及びHMI420)と、前記認識手段によって前記監視エリア内でありかつ前記支援対象を中心とする第1範囲(例えば、後述のADAS作動範囲)外に第2移動体(例えば、後述の自動二輪車3)の存在が認識されている間、前記認識手段による認識結果に基づいて前記マンマシンインターフェースの通知モードを設定する通知モード設定手段(例えば、後述のリスク通知設定ユニット64)と、前記通知モードが第1モード(例えば、後述の気配通知モード)に設定された場合、第1通知態様で前記マンマシンインターフェースを作動させ、前記通知モードが第2モード(例えば、後述のアナログ通知モード)に設定された場合、前記第1通知態様よりも通知強度が高い第2通知態様で前記マンマシンインターフェースを作動させる通知制御手段(例えば、後述のリスク通知制御装置227、リスク通知制御装置327及びHMI制御装置425)と、を備え、前記通知モード設定手段は、前記第2移動体が前記第1範囲を包含する第2範囲(例えば、後述のアナログ通知作動範囲)外において前記支援対象の進行方向前方から前記支援対象へ接近する対向移動体又は前記支援対象の進行方向後方から前記支援対象へ接近する後続移動体である場合、前記通知モードを前記第1モードに設定し、前記第2移動体が前記第2範囲内に存在する場合、前記通知モードを前記第2モードに設定することを特徴とする。
【0007】
(2)この場合、前記通知制御手段は、前記通知モードが前記第2モードに設定されている場合、前記支援対象と前記第2移動体との間のリスク度合いに応じて前記通知強度を変化させることが好ましい。
【0008】
(3)この場合、前記通知モード設定手段は、前記支援対象及び前記対向移動体の少なくとも何れかの一部が、前記支援対象と前記対向移動体との間の車線境界線を中心とした所定幅範囲内に存在する場合、前記通知モードを前記第1モードに設定することが好ましい。
【0009】
(4)この場合、前記通知モード設定手段は、前記対向移動体の周辺に前記支援対象の進行方向前方から前記支援対象へ接近しかつ前記対向移動体よりも大きな周辺移動体が存在する場合、前記通知モードを前記第1モードに設定することが好ましい。
【0010】
(5)この場合、前記通知モード設定手段は、前記監視エリアの天候が降雨である場合又は前記監視エリアの照度が所定の照度閾値未満である場合、前記通知モードを前記第1モードに設定することが好ましい。
【0011】
(6)前記交通安全支援システムは、前記認識手段によって交通参加者として認識されている移動体の将来を予測する予測手段(例えば、後述の予測ユニット62)をさらに備え、前記通知モード設定手段は、前記予測手段によって予測される前記支援対象の第1予測移動経路と前記第2移動体の第2予測移動経路とが重なる場合、前記通知モードを前記第2モードに設定することが好ましい。
【0012】
(7)この場合、前記第2移動体は二輪車両であることが好ましい。
【0013】
(8)この場合、前記支援対象は、前記第1範囲内に接触可能性のある移動体が存在することを条件として、制動装置及び操舵装置の少なくとも何れかを自動で操作する運転支援装置(例えば、後述の車載運転支援装置21及び車載運転支援装置31)を備えることが好ましい。
【0014】
(9)本発明に係る交通安全支援システム(例えば、後述の交通安全支援システム1)は、第1移動体である支援対象(例えば、後述の四輪自動車2)の運転者による運転を支援する交通安全支援システムであって、前記支援対象の周囲の監視エリアにおける交通参加者及び交通環境を認識する認識手段(例えば、後述の車載運転支援装置21、車載通信装置24、携帯情報処理端末25、車載運転支援装置31、車載通信装置34、携帯情報処理端末35、携帯情報処理端末40、信号制御装置55、インフラカメラ56、対象交通エリア認識ユニット60及び交通環境データベース67)と、前記運転者が認知可能な態様で作動するマンマシンインターフェース(例えば、後述のHMI220、HMI320及びHMI420)と、前記認識手段によって前記監視エリア内でありかつ前記支援対象を中心とする第1範囲(例えば、後述のADAS作動範囲)外に第2移動体(例えば、後述の自動二輪車3)の存在が認識されている間、前記認識手段による認識結果に基づいて前記マンマシンインターフェースの通知モードを設定する通知モード設定手段(例えば、後述のリスク通知設定ユニット64)と、前記通知モードが第1モード(例えば、後述の気配通知モード)に設定された場合、第1通知態様で前記マンマシンインターフェースを作動させ、前記通知モードが第2モード(例えば、後述のアナログ通知モード)に設定された場合、前記第1通知態様よりも通知強度が高い第2通知態様で前記マンマシンインターフェースを作動させる通知制御手段(例えば、後述のリスク通知制御装置227、リスク通知制御装置327及びHMI制御装置425)と、を備え、前記通知モード設定手段は、前記第2移動体が前記第1範囲を包含する第2範囲外に存在しかつ前記認識手段によって前記支援対象と前記第2移動体との間の距離を認識しにくい場合、前記通知モードを前記第1モードに設定し、前記第2移動体が前記第2範囲内に存在する場合、前記通知モードを前記第2モードに設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
(1)本発明に係る交通安全支援システムにおいて、通知制御手段は、通知モードが第1モードに設定された場合、第1通知態様でマンマシンインターフェースを作動させ、通知モードが第2モードに設定された場合、第1通知態様よりも通知強度が高い第2通知態様でマンマシンインターフェースを作動させ、通知モード設定手段は、第2移動体が第2範囲外において支援対象の進行方向前方から支援対象へ接近する対向移動体又は支援対象の進行方向後方から支援対象へ接近する後続移動体である場合、通知モードを第1モードに設定し、第2移動体が第2範囲内に存在する場合、通知モードを第2モードに設定する。これにより、本発明に係る交通安全支援システムは、第2移動体が、第1移動体に対向する又は第1移動体の後方から接近することが予測される場合、事前に第1通知態様で通知を行うと共に、第2移動体に接近した場合、第2通知態様で通知を行うことができる。よって、本発明に係る交通安全支援システムは、事前に行われる第1通知態様の通知強度が第2通知態様より低いため、第2移動体が、第1移動体に対向する又は第1移動体の後方から接近することが予測される場合において、運転者への通知の煩わしさの抑制と、交通の安全性の確保とを両立することができる。
【0016】
(2)本発明に係る交通安全支援システムにおいて、通知モード設定手段が支援対象と第2移動体との間のリスク度合いに応じて通知強度を変化させることによって、本発明に係る交通安全支援システムは、リスク度合いが高い場合、運転者に第2移動体の接近を強く伝えることができ、リスク度合いが低い場合、運転者に第2移動体の存在を煩わしくないレベルで伝えることができる。
【0017】
(3)本発明に係る交通安全支援システムにおいて、通知モード設定手段は、支援対象及び対向移動体の少なくとも何れかの一方が所定幅範囲内に存在する、すなわち、支援対象及び対向移動体の少なくとも何れかの一方が車線境界線側に寄って走行しており、支援対象と対向移動体とがほぼ正面から接近する場合、通知モードを第1モードに設定する。これにより、本発明に係る交通安全支援システムは、支援対象と対向移動体とがほぼ正面から接近している場合に事前に運転者に通知を行うことができ、交通の安全性を確保することができる。
【0018】
(4)本発明に係る交通安全支援システムにおいて、通知モード設定手段は、対向移動体の周辺に対向移動体よりも大きな周辺移動体が存在する場合、通知モードを第1モードに設定する。これにより、本発明に係る交通安全支援システムは、対向移動体よりも大きな周辺移動体が接近している場合に事前に運転者に通知を行うことができ、交通の安全性を確保することができる。
【0019】
(5)本発明に係る交通安全支援システムにおいて、通知モード設定手段は、監視エリアの天候が降雨である場合又は監視エリアの照度が所定の照度閾値未満である場合、通知モードを第1モードに設定する。これにより、本発明に係る交通安全支援システムは、監視エリアの天候が降雨である又は照度が低い場合に事前に運転者に通知を行うことができ、交通の安全性を確保することができる。
【0020】
(6)本発明に係る交通安全支援システムにおいて、通知モード設定手段は、支援対象の第1予測移動経路と第2移動体の第2予測移動経路とが重なる、すなわち支援対象の移動ベクトルと第2移動体の移動ベクトルとが重なる場合、通知モードを第2モードに設定する。これにより、本発明に係る交通安全支援システムは、支援対象である第1移動体と第2移動体との移動ベクトルが重なる場合に第2通知を行うため、第1移動体と第2移動体とが衝突する可能性がある場合にのみ第2通知を行うことができ、運転者への通知の煩わしさの抑制と、交通の安全性の確保とを両立することができる。
【0021】
(7)本発明に係る交通安全支援システムにおいて、第2移動体は二輪車両である。これにより、本発明に係る交通安全支援システムは、第1移動体である自車両であるが右折又は直進し、第2移動体である二輪車両が右折又は直進するような状況において、運転者への通知の煩わしさの抑制と、交通の安全性の確保とを両立することができる。
【0022】
(8)本発明に係る交通安全支援システムにおいて、支援対象は、第1範囲内に接触可能性のある移動体が存在することを条件として、制動装置及び操舵装置の少なくとも何れかを自動で操作する運転支援装置を備える。これにより、本発明に係る交通安全支援システムは、運転支援装置によって第1移動体と第2移動体とが衝突する可能性を低減し、交通の安全性を確保することができる。
【0023】
(9)本発明に係る交通安全支援システムは、通知制御手段は、通知モードが第1モードに設定された場合、第1通知態様でマンマシンインターフェースを作動させ、通知モードが第2モードに設定された場合、第1通知態様よりも通知強度が高い第2通知態様でマンマシンインターフェースを作動させ、通知モード設定手段は、第2移動体が第2範囲外に存在しかつ認識手段によって支援対象と第2移動体との間の距離を認識しにくい場合、通知モードを第1モードに設定し、第2移動体が第2範囲内に存在する場合、通知モードを前記第2モードに設定する。これにより、本発明に係る交通安全支援システムは、第1移動体が、支援対象と第2移動体との間の距離を認識しにくい場合、事前に第1通知態様で通知を行うと共に、第2移動体に接近した場合、第2通知態様で通知を行うことができる。よって、本発明に係る交通安全支援システムは、事前に行われる第1通知態様の通知強度が第2通知態様より低いため、運転者への通知の煩わしさの抑制と、交通の安全性の確保とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る交通安全支援システム及びこの交通安全支援システムが支援対象とする対象交通エリアの一部の構成を示す図である。
【
図2】協調支援装置及びこの協調支援装置と通信可能に接続されている複数のエリア端末の構成を示すブロック図である。
【
図3A】四輪自動車に搭載される通知装置の構成を示すブロック図である。
【
図3B】自動二輪車に搭載される通知装置の構成を示すブロック図である。
【
図3C】歩行者が所有する携帯情報処理端末に搭載される通知装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】監視エリアとして道路の交差点付近における四輪自動車及び自動二輪車の状況を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る交通安全支援システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本実施形態に係る交通安全支援システム1及びこの交通安全支援システム1が支援対象とする交通参加者が存在する対象交通エリア9の一部の構成を模式的に示す図である。
【0027】
交通安全支援システム1は、対象交通エリア9を移動する人である歩行者4や移動体である四輪自動車2及び自動二輪車3等を個々の交通参加者として認識するとともに、この認識を介して生成した支援情報を各交通参加者へ通知し、各々の意思に基づいて移動する各交通参加者の間のコミュニケーション(具体的には、例えば各交通参加者の間の相互認識)や周囲の交通環境の認識を促すことによって対象交通エリア9における各交通参加者の安全かつ円滑な交通を支援する。
【0028】
図1には、車道51、交差点52、歩道53、及び信号機54を交通インフラ設備として含む、市街地の交差点52付近を対象交通エリア9とした場合について説明する。
図1には、車道51及び交差点52内を計7台の四輪自動車2及び計2台の自動二輪車3が移動し、また歩道53及び交差点52内を計3組の歩行者4が移動している場合を示す。また
図1には、計3台のインフラカメラ56が設置されている場合を示す。
【0029】
交通安全支援システム1は、個々の四輪自動車2とともに移動する車載装置群20(四輪自動車2に搭載された車載装置の他、四輪自動車2を運転する運転者が保有又は装着する携帯情報処理端末を含む)と、個々の自動二輪車3とともに移動する車載装置群30(自動二輪車3に搭載された車載装置の他、自動二輪車3を運転者が保有又は装着する携帯情報処理端末を含む)と、各歩行者4が保有又は装着する携帯情報処理端末40と、対象交通エリア9に設けられた複数のインフラカメラ56と、信号機54を制御する信号制御装置55と、これら車載装置群20,30、携帯情報処理端末40、インフラカメラ56、及び信号制御装置55等の対象交通エリア9に存在する複数の端末(以下、単に「エリア端末」ともいう)と通信可能に接続された協調支援装置6と、を備える。
【0030】
協調支援装置6は、上述の複数のエリア端末に対し基地局57を介して通信可能に接続された1台又は複数台のコンピュータによって構成される。より具体的には、協調支援装置6は、複数のエリア端末に対し基地局57、ネットワークコア及びインターネットを介して接続されたサーバや、複数のエリア端末に対し基地局57及びMEC(Mulch-access Edge Computing)コアを介して接続されたエッジサーバ等によって構成される。
【0031】
図2は、協調支援装置6及びこの協調支援装置6と通信可能に接続されている複数のエリア端末の構成を示すブロック図である。
【0032】
対象交通エリア9における四輪自動車2に搭載される車載装置群20は、例えば、運転者による運転を支援する車載運転支援装置21、運転者に各種情報を通知する通知装置22、運転中の運転者の状態を検出する運転主体状態センサ23、自車と協調支援装置6や自車近傍の他車との間の無線による通信を行う車載通信装置24、及び運転者が所有又は装着する携帯情報処理端末25等を含む。
【0033】
車載運転支援装置21は、外界センサユニット、自車状態センサ、ナビゲーション装置、及び運転支援ECU等を備える。外界センサユニットは、自車の周囲を撮影する車外カメラユニットと、電磁波を用いることによって車外の対象を検出するレーダユニットやライダー(Light Detection and Ranging(LIDAR))ユニット等の自車に搭載された複数の車載外界センサと、これら車載外界センサによる検出結果に対してセンサフュージョン処理を行うことにより自車の周囲の状態に関する情報を取得する外部認識装置と、を備える。自車状態センサは、車速センサ、加速度センサ、舵角センサ、ヨーレートセンサ、位置センサ、及び方位センサ等、自車の走行状態に関する情報を取得するセンサによって構成される。ナビゲーション装置は、例えば、GNSS(Global Navigation Satelite System)衛星から受信した信号に基づいて自車の現在位置を特定するGNSS受信機や、地図情報を記憶する記憶装置等を備える。
【0034】
運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報に基づいて、車線逸脱抑制制御、車線変更制御、先行車追従制御、誤発進抑制制御、衝突軽減ブレーキ制御、及び衝突回避制御等の運転支援制御を実行する。また運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報に基づいて、運転者による安全な運転を支援するための運転支援情報を生成し、通知装置22へ送信する。
【0035】
ここで運転支援ECUは、自車を中心とした所定の衝突軽減ブレーキ作動範囲内に自車と接触可能性のある移動体が存在することを条件として、自車と他の移動体との接触による被害が軽減されるように自車の制動装置を自動で操作する衝突軽減ブレーキ制御を開始する。また運転支援ECUは、自車を中心とした所定の衝突回避操舵作動範囲内に自車と接触可能性のある移動体が存在することを条件として、自車と他の移動体との接触が回避されるように自車の操舵装置を自動で操作する衝突回避制御を開始する。以下では、衝突軽減ブレーキ作動範囲や衝突回避操舵操作範囲をまとめて「ADAS作動範囲」ともいう。
【0036】
運転主体状態センサ23は、運転中の運転者の運転能力と相関のある情報の経時データを取得する様々な装置によって構成される。運転主体状態センサ23は、例えば、運転中の運転者の視線の向きや開眼の有無等を検出する車内カメラや、運転者が装着するシートベルトに設けられ運転者の脈拍や呼吸の有無等を検出するシートベルトセンサや、運転者が把持するステアリングに設けられ運転者の皮膚電位を検出するステアリングセンサや、運転者と同乗者との間の会話の有無を検出する車内マイク等によって構成される。
【0037】
車載通信装置24は、運転支援ECUによって取得した情報(外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報や、実行中の運転支援制御に関する制御情報等を含む)や、運転主体状態センサ23によって取得した運転主体に関する情報等を協調支援装置6へ送信する機能と、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信し、受信した協調支援情報を通知装置22へ送信する機能と、を備える。
【0038】
通知装置22は、車載運転支援装置21から送信される運転支援情報や協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいて定められた態様でマンマシンインターフェース(以下、「HMI(Human Machine Interface)」との略称で表記する場合もある)を作動させることにより、運転者の聴覚、視覚、及び触覚等を通じ、運転者に各種情報を通知する様々な装置によって構成される。
【0039】
図3Aは、四輪自動車に搭載される通知装置22の構成を示すブロック図である。なお
図3Aには、通知装置22のうち、特に協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づく制御に関わるブロックのみを図示する。
【0040】
通知装置22は、運転者が認知可能な態様で作動するHMI220と、協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいてHMI220を作動させるHMI制御装置225と、を備える。
【0041】
HMI220は、運転者が聴覚によって認知可能な態様で作動する音響装置221と、運転者が視覚によって認知可能な態様で作動するヘッドアップディスプレイ222と、運転者が触覚によって認知可能な態様で作動するシートベルト制御装置223及び座席振動装置224と、を備える。
【0042】
音響装置221は、運転者が着座する運転席のヘッドレストに設けられ、指向性のあるバイノーラルサウンドを発音させることが可能なヘッドレストスピーカ221aと、運転席や助手席の近傍に設けられたメインスピーカ221bと、を備える。これらヘッドレストスピーカ221aやメインスピーカ221bは、HMI制御装置225からの指令に応じた音を発音する。ヘッドアップディスプレイ222は、運転中の運転者の視野内(例えば、フロントガラス)に、HMI制御装置225からの指令に応じた映像を表示する。シートベルト制御装置223は、HMI制御装置225からの指令に応じて運転者が装着するシートベルトの張力を変化させる。座席振動装置224は、HMI制御装置225からの指令に応じた振幅及び/又は振動数で運転者が着座する座席を振動させる。
【0043】
HMI制御装置225は、運転者の運転能力(特に、認知能力)を健全化させるために定められた態様でHMI220を作動させる健全化制御装置226と、運転者に対し身近に迫るリスクの存在を認知させるために定められた態様でHMI220を作動させるリスク通知制御装置227と、を備える。後に説明するように、協調支援装置6から四輪自動車2に送信される協調支援情報には、健全化制御装置226による健全化通知のオン/オフを設定するための健全化通知設定値に関する情報や、リスク通知制御装置227によるリスク通知のオン/オフや後述の通知モードの種類を設定するためのリスク通知設定値に関する情報や、運転者に対し身近に迫るリスクに関する情報(以下、「リスク情報」ともいう)等が含まれる。
【0044】
健全化制御装置226に入力される健全化通知設定値は、健全化制御装置226による健全化通知をオフに設定する“0”、及び健全化制御装置226による健全化通知をオンにする“1”の何れかの値に設定される。
【0045】
健全化制御装置226は、健全化通知設定値が“0”である場合、健全化通知をオフに設定する。すなわち健全化制御装置226は、健全化通知設定値が“0”である場合、HMI220を作動させない。なおこれは、リスク通知制御装置227によるHMI220の作動を妨げるものではない。
【0046】
健全化制御装置226は、健全化通知設定値が“1”である場合、健全化通知をオンに設定する。より具体的には、健全化制御装置226は、例えばヘッドレストスピーカ221aやメインスピーカ221bによって運転者が興味、関心を引く楽曲を発音させることによって運転者の運転能力を健全化させる。なおこの際、運転者の覚醒度合いを高めるため、楽曲のBPM(Beats Per Minute)を変化させたり、低音を強調させたりしてもよい。
【0047】
このように健全化制御装置226は、運転者の運転能力を健全化させるためにHMI220を作動させることから、後述のリスク通知制御装置227によるリスク通知がオンに設定されている場合(すなわち、リスク通知設定値が“1”又は“2”である場合)、運転者が煩わしく感じないように、健全化通知をオフにしてもよい。また本実施形態では、健全化制御装置226は、ヘッドレストスピーカ221aやメインスピーカ221bを作動させることにより、主に運転者の聴覚を介してその運転能力を健全化させる場合について説明するが、本発明はこれに限らない。健全化制御装置226は、例えばシートベルト制御装置223や座席振動装置224を、作動させてもよい。
【0048】
リスク通知制御装置227では、HMI220の作動対象装置及び作動態様の少なくとも何れかが異なる複数の通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。より具体的には、リスク通知制御装置227では、運転者に潜在的なリスクの存在を認知させることを目的とした気配通知モード、運転者に顕在化したリスクの存在及び/又はこのリスクの度合いを認知させることを目的としたアナログ通知モード、及び運転者に予測されるリスクを回避するために有益な情報を通知することを目的とした予測支援通知モードのうち少なくとも何れかの通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。このため、リスク通知制御装置227に入力されるリスク通知設定値は、リスク通知制御装置227によるリスク通知をオフに設定する“0”と、リスク通知制御装置227によるリスク通知をオンに設定するとともに通知モードを気配通知モード及び予測支援通知モードに設定する“1”と、リスク通知制御装置227によるリスク通知をオンに設定するとともに通知モードをアナログ通知モード及び予測支援通知モードに設定する“2”と、の何れかの値に設定される。
【0049】
リスク通知制御装置227は、リスク通知設定値が“0”である場合、リスク通知をオフに設定する。すなわちリスク通知制御装置227は、リスク通知設定値が“0”である場合、HMI220を作動させない。なおこれは、健全化制御装置226によるHMI220の作動を妨げるものではない。
【0050】
リスク通知制御装置227は、リスク通知設定値が“1”である場合、通知モードを気配通知モード及び予測支援通知モードに設定するとともに、これら設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0051】
またリスク通知制御装置227は、リスク通知設定値が“2”である場合、通知モードをアナログ通知モード及び予測支援通知モードに設定するとともに、これら設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0052】
ここでリスク通知制御装置227は、通知モードが予測支援通知モードに設定されている場合、協調支援装置6から送信されるリスク情報に基づいて、運転者に対し身近に迫るリスクを回避するために有益なリスク回避支援情報を生成するとともに、このリスク回避支援情報を運転者が聴覚や視覚によって認知可能な態様でHMI220の音響装置221やヘッドアップディスプレイ222を作動させる。ここでリスク回避支援情報には、自車と接触する可能性がある交通参加者(以下、「リスク対象」ともいう)の位置に関する情報や、運転者に対しリスク対象に対する注意を喚起する内容の情報が含まれる。
【0053】
より具体的には、リスク通知制御装置227は、運転者が運転する四輪自動車の前方に不健全な状態のライダーが運転する自動二輪車が存在する場合、この自動二輪車との接触を回避するためのリスク回避支援情報として、「二輪の危険な右折に注意して下さい」といった内容のメッセージを音響装置221によって発音したりヘッドアップディスプレイ222に表示させたりする。またこの際、リスク通知制御装置227は、この自動二輪車との接触を回避するためのリスク回避支援情報として、この自動二輪車の現在位置や予測位置を指し示す矢印の画像をヘッドアップディスプレイ222によって表示させてもよい。
【0054】
またリスク通知制御装置227は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、運転者に煩わしさを感じさせない態様でHMI220を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象の存在を運転者に自然に認知させる。このように気配通知モードでは、リスク対象の存在を運転者に煩わしさを感じさせないよう自然に認知させるため、リスク通知制御装置227は、HMI220に含まれる複数の装置のうち、特に運転者の聴覚に訴えるヘッドレストスピーカ221aを作動させることが好ましい。より具体的には、リスク通知制御装置227は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、ヘッドレストスピーカ221aによって、運転者の視線がリスク対象の位置へ自然に向けられるように設定されたバイノーラルサウンドによる耳慣れた効果音を小音量で発音させる。
【0055】
またリスク通知制御装置227は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、上述の気配通知モードとは異なる態様でHMI220を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象の存在及びこのリスク対象に対するリスク度合いを運転者に強く認知させる。このようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在を運転者に強く認知させるため、リスク通知制御装置227は、気配通知モードで定められる態様よりも通知強度が高い態様でHMI220を作動させる。ここで通知強度とは、運転者の関心や注意を引き付ける強さをいう。より具体的には、リスク通知制御装置227は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、ヘッドレストスピーカ221aやメインスピーカ221bによって、気配通知モードの下で発音される効果音よりも大きな音量のブザー音やパルス音を発音させる。これらブザー音やパルス音は、気配通知モードの下で発音される効果音と比較して運転者にとって耳慣れない音でありかつ大音量であるため、気配通知モードの下で発音される効果音よりも通知強度が高い。
【0056】
またリスク通知制御装置227は、このようにリスク度合いに応じて通知強度を変化させる場合、上述の運転支援ECUによる衝突軽減ブレーキ制御や衝突回避操舵制御の実行が開始される時点、換言すればリスク対象が自車のADAS作動範囲に侵入する時点において、通知強度が最大になるようにHMI220を作動させることが好ましい。
【0057】
なお本実施形態では、リスク通知制御装置227は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、音響装置221を作動させる場合について説明するが、本発明はこれに限らない。リスク通知制御装置227は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、音響装置221を作動させる代わりに、シートベルト制御装置223を作動させ、シートベルトの張力を変化させたり、座席振動装置224を作動させ、座席を振動させたりしてもよい。このようにシートベルト制御装置223や座席振動装置224は、運転者の触覚に訴える態様で作動することから、気配通知モードの下で発音される効果音よりも通知強度が高い。またリスク通知制御装置227は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、音響装置221、シートベルト制御装置223、及び座席振動装置224を組み合わせて作動させてもよい。
【0058】
また上述のようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在に加えて、このリスク対象に対するリスク度合いを運転者に強く認知させるため、リスク通知制御装置227は、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象に対するリスク度合い(例えば、リスク対象に対する衝突予測時間)に応じて通知強度を変化させることが好ましい。具体的には、リスク通知制御装置227は、リスク度合いが高くなるほど(すなわち、衝突予測時間が短くなるほど)、ブザー音の音量を大きくしたり、パルス音の音量を大きくしたり、パルス音の間隔を短くしたりしてもよい。上述のようにシートベルト制御装置223を作動させる場合、リスク通知制御装置227は、リスク度合いが高くなるほどシートベルトの張力を大きくしてもよい。また上述のように座席振動装置224を作動させる場合、リスク通知制御装置227は、リスク度合いが高くなるほど座席の振動の振幅を大きくしてもよい。
【0059】
図2に戻り、携帯情報処理端末25は、例えば、四輪自動車2の運転者が装着するウェアラブル端末や、運転者が保有するスマートフォン等によって構成される。ウェアラブル端末は、心拍数、血圧及び血中酸素飽和度等の運転者の生体情報を測定し、この生体情報の測定データを協調支援装置6へ送信する機能や、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信し、この協調支援情報に応じたメッセージを、画像、音声、警告音、及び振動等によって運転者に通知する機能を備える。またスマートフォンは、運転者の位置情報、移動加速度、及びスケジュール情報等の運転者に関する情報を協調支援装置6へ送信する機能や、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信し、この協調支援情報に応じたメッセージを、画像、音声、警告音、メロディ、及び振動等によって運転者に通知する機能を備える。
【0060】
対象交通エリア9における自動二輪車3に搭載される車載装置群30は、例えば、ライダーによる運転を支援する車載運転支援装置31、ライダーに各種情報を通知する通知装置32、運転中のライダーの状態を検出するライダー状態センサ33、及びライダーが所有又は装着する携帯情報処理端末35等を含む。
【0061】
車載運転支援装置31は、外界センサユニット、自車状態センサ、ナビゲーション装置、及び運転支援ECU等を備える。外界センサユニットは、自車の周囲を撮影する車外カメラユニットと、電磁波を用いることによって車外の対象を検出するレーダユニットやライダーユニット等の自車に搭載された複数の車載外界センサと、これら車載外界センサによる検出結果に対してセンサフュージョン処理を行うことにより自車の周囲の状態に関する情報を取得する外部認識装置と、を備える。自車状態センサは、車速センサ、及び5軸又は6軸の慣性計測装置等、自車の走行状態に関する情報を取得するセンサによって構成される。ナビゲーション装置は、例えば、GNSS衛星から受信した信号に基づいて現在位置を特定するGNSS受信機や、地図情報を記憶する記憶装置等を備える。
【0062】
運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報に基づいて、車線維持制御、車線逸脱抑制制御、車線変更制御、先行車追従制御、誤発進抑制制御、及び衝突軽減ブレーキ制御等の運転支援制御を実行する。また運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報に基づいて、ライダーによる安全な運転を支援するための運転支援情報を生成し、通知装置32へ送信する。
【0063】
ここで運転支援ECUは、自車を中心とした所定の衝突軽減ブレーキ作動範囲内に自車と接触可能性のある移動体が存在することを条件として、自車と他の移動体との接触による被害が軽減されるように自車の制動装置を自動で操作する衝突軽減ブレーキ制御を開始する。また運転支援ECUは、自車を中心とした所定の衝突回避操舵作動範囲内に自車と接触可能性のある移動体が存在することを条件として、自車と他の移動体との接触が回避されるように自車の操舵装置を自動で操作する衝突回避制御を開始する。以下では、衝突軽減ブレーキ作動範囲や衝突回避操舵操作範囲をまとめて「ADAS作動範囲」ともいう。
【0064】
ライダー状態センサ33は、運転中のライダーの運転能力と相関のある情報を取得する様々な装置によって構成される。ライダー状態センサ33は、例えば、ライダーが着座するシートに設けられライダーの脈拍や呼吸の有無等を検出するシートセンサや、ライダーが装着するヘルメットに設けられ、ライダーの脈拍、呼吸の有無、及び皮膚電位等を検出するヘルメットセンサ等によって構成される。
【0065】
車載通信装置34は、運転支援ECUによって取得した情報(外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報や、実行中の運転支援制御に関する制御情報等を含む)や、ライダー状態センサ33によって取得したライダーに関する情報等を協調支援装置6へ送信する機能と、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信し、受信した協調支援情報を通知装置32へ送信する機能と、を備える。
【0066】
通知装置32は、車載運転支援装置21から送信される運転支援情報や協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいて定められた態様でHMIを作動させることにより、ライダーの聴覚、視覚、及び触覚等を通じ、ライダーに各種情報を通知する様々な装置によって構成される。
【0067】
図3Bは、自動二輪車に搭載される通知装置32の構成を示すブロック図である。なお
図3Bには、通知装置32のうち、特に協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づく制御に関わるブロックのみを図示する。
【0068】
通知装置32は、ライダーが認知可能な態様で作動するHMI320と、協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいてHMI320を作動させるHMI制御装置325と、を備える。
【0069】
HMI320は、ライダーが聴覚によって認知可能な態様で作動するヘッドマウントスピーカ321と、ライダーが視覚によって認知可能な態様で作動するヘッドアップディスプレイ322と、を備える。
【0070】
ヘッドマウントスピーカ321は、ライダーが装着するヘルメットに設けられ、指向性のあるバイノーラルサウンドを発音させることが可能となっている。ヘッドマウントスピーカ321は、HMI制御装置325からの指令に応じた音を発音する。ヘッドアップディスプレイ322は、運転中のライダーの視野内(例えば、ヘルメットのシールド)に、HMI制御装置325からの指令に応じた映像を表示する。
【0071】
HMI制御装置325は、ライダーの運転能力(特に、認知能力)を健全化させるために定められた態様でHMI320を作動させる健全化制御装置326と、ライダーに対し身近に迫るリスクの存在を認知させるために定められた態様でHMI320を作動させるリスク通知制御装置327と、を備える。後に説明するように、協調支援装置6から自動二輪車3に送信される協調支援情報には、健全化制御装置326による健全化通知のオン/オフを設定するための健全化通知設定値に関する情報や、リスク通知制御装置327によるリスク通知のオン/オフや通知モードの種類を設定するためのリスク通知設定値に関する情報や、ライダーに対し身近に迫るリスクに関するリスク情報等が含まれる。
【0072】
健全化制御装置326に入力される健全化通知設定値は、健全化制御装置326による健全化通知をオフに設定する“0”、及び健全化制御装置326による健全化通知をオンにする“1”の何れかの値に設定される。
【0073】
健全化制御装置326は、健全化通知設定値が“0”である場合、健全化通知をオフに設定する。すなわち健全化制御装置326は、健全化通知設定値が“0”である場合、HMI320を作動させない。なおこれは、リスク通知制御装置327によるHMI320の作動を妨げるものではない。
【0074】
健全化制御装置326は、健全化通知設定値が“1”である場合、健全化通知をオンに設定する。より具体的には、健全化制御装置326は、例えばヘッドマウントスピーカ321によってライダーが興味、関心を引く楽曲を発音させることによってライダーの運転能力を健全化させる。なおこの際、ライダーの覚醒度合いを高めるため、楽曲のBPMを変化させたり、低音を強調させたりしてもよい。
【0075】
このように健全化制御装置326は、ライダーの運転能力を健全化させるためにHMI320を作動させることから、後述のリスク通知制御装置327によるリスク通知がオンに設定されている場合(すなわち、リスク通知設定値が“1”又は“2”である場合)、ライダーが煩わしく感じないように、健全化通知をオフにしてもよい。
【0076】
リスク通知制御装置327では、HMI320の作動対象装置及び作動態様の少なくとも何れかが異なる複数の通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。より具体的には、リスク通知制御装置327では、ライダーに潜在的なリスクの存在を認知させることを目的とした気配通知モード、ライダーに顕在化したリスクの存在及び/又はこのリスクの度合いを認知させることを目的としたアナログ通知モード、及びライダーに予測されるリスクを回避するために有益な情報を通知することを目的とした予測支援通知モードのうち少なくとも何れかの通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。このため、リスク通知制御装置327に入力されるリスク通知設定値は、リスク通知制御装置327によるリスク通知をオフに設定する“0”と、リスク通知制御装置327によるリスク通知をオンに設定するとともに通知モードを気配通知モード及び予測支援通知モードに設定する“1”と、リスク通知制御装置327によるリスク通知をオンに設定するとともに通知モードをアナログ通知モード及び予測支援通知モードに設定する“2”と、の何れかの値に設定される。
【0077】
リスク通知制御装置327は、リスク通知設定値が“0”である場合、リスク通知をオフに設定する。すなわちリスク通知制御装置327は、リスク通知設定値が“0”である場合、HMI320を作動させない。なおこれは、健全化制御装置326によるHMI320の作動を妨げるものではない。
【0078】
リスク通知制御装置327は、リスク通知設定値が“1”である場合、通知モードを気配通知モード及び予測支援通知モードに設定するとともに、これら設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0079】
またリスク通知制御装置327は、リスク通知設定値が“2”である場合、通知モードをアナログ通知モード及び予測支援通知モードに設定するとともに、これら設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0080】
ここでリスク通知制御装置327は、通知モードが予測支援通知モードに設定されている場合、協調支援装置6から送信されるリスク情報に基づいて、ライダーに対し身近に迫るリスクを回避するために有益なリスク回避支援情報を生成するとともに、このリスク回避支援情報をライダーが聴覚や視覚によって認知可能な態様でHMI320のヘッドマウントスピーカ321やヘッドアップディスプレイ322を作動させる。ここでリスク回避支援情報には、自車と接触する可能性があるリスク対象の位置に関する情報や、ライダーに対しリスク対象に対する注意を喚起する内容の情報が含まれる。
【0081】
より具体的には、リスク通知制御装置327は、ライダーが運転する自動二輪車の前方に不健全な状態の運転者が運転する四輪自動車が存在する場合、この四輪自動車との接触を回避するためのリスク回避支援情報として、「四輪の危険な右折に注意して下さい」といった内容のメッセージをヘッドマウントスピーカ321によって発音したりヘッドアップディスプレイ322に表示させたりする。またこの際、リスク通知制御装置327は、この四輪自動車との接触を回避するためのリスク回避支援情報として、この四輪自動車の現在位置や予測位置を指し示す矢印の画像をヘッドアップディスプレイ322によって表示させてもよい。
【0082】
またリスク通知制御装置327は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、ライダーに煩わしさを感じさせない態様でHMI320を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象の存在をライダーに自然に認知させる。このように気配通知モードでは、リスク対象の存在をライダーに煩わしさを感じさせないよう自然に認知させるため、リスク通知制御装置327は、HMI320に含まれる複数の装置のうち、特にライダーの聴覚に訴えるヘッドマウントスピーカ321を作動させることが好ましい。より具体的には、リスク通知制御装置327は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、ヘッドマウントスピーカ321によって、ライダーの視線がリスク対象の位置へ自然に向けられるように設定されたバイノーラルサウンドによる耳慣れた効果音を小音量で発音させる。
【0083】
またリスク通知制御装置327は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、上述の気配通知モードとは異なる態様でHMI320を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象の存在及びこのリスク対象に対するリスク度合いをライダーに強く認知させる。このようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在をライダーに強く認知させるため、リスク通知制御装置327は、気配通知モードで定められる態様よりも通知強度が高い態様でHMI320を作動させる。より具体的には、リスク通知制御装置327は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、ヘッドマウントスピーカ321によって、気配通知モードの下で発音される効果音よりも大きな音量のブザー音やパルス音を発音させる。これらブザー音やパルス音は、気配通知モードの下で発音される効果音と比較してライダーにとって耳慣れない音でありかつ大音量であるため、気配通知モードの下で発音される効果音よりも通知強度が高い。
【0084】
また上述のようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在に加えて、このリスク対象に対するリスク度合いをライダーに強く認知させるため、リスク通知制御装置327は、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象に対するリスク度合い(例えば、リスク対象に対する衝突予測時間)に応じて通知強度を変化させることが好ましい。具体的には、リスク通知制御装置327は、リスク度合いが高くなるほど(すなわち、衝突予測時間が短くなるほど)、ブザー音の音量を大きくしたり、パルス音の音量を大きくしたり、パルス音の間隔を短くしたりしてもよい。
【0085】
またリスク通知制御装置327は、このようにリスク度合いに応じて通知強度を変化させる場合、上述の運転支援ECUによる衝突軽減ブレーキ制御の実行が開始される時点、換言すればリスク対象が自車のADAS作動範囲に侵入する時点において、通知強度が最大になるようにHMI320を作動させることが好ましい。
【0086】
図2に戻り、対象交通エリア9における歩行者4が所有又は装着する携帯情報処理端末40は、例えば、歩行者4が装着するウェアラブル端末や、歩行者4が保有するスマートフォン等によって構成される。ウェアラブル端末は、心拍数、血圧及び血中酸素飽和度等の歩行者4の生体情報を測定し、この生体情報の測定データを協調支援装置6へ送信したり、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信したりする機能を備える。またスマートフォンは、歩行者4の位置情報、移動加速度、及びスケジュール情報等の歩行者4に関する歩行者情報を協調支援装置6へ送信したり、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信したりする機能を備える。
【0087】
また携帯情報処理端末40は、受信した協調支援情報に基づいて定められた態様でHMIを作動させることにより、歩行者の聴覚、視覚、及び触覚等を通じ、歩行者に各種情報を通知する通知装置42を備える。
【0088】
図3Cは、携帯情報処理端末40に搭載される通知装置42の構成を示すブロック図である。なお
図3Cには、通知装置42のうち、特に協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づく制御に関わるブロックのみを図示する。
【0089】
通知装置42は、歩行者が認知可能な態様で作動するHMI420と、協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいてHMI420を作動させるHMI制御装置425と、を備える。
【0090】
HMI420は、歩行者が聴覚によって認知可能な態様で作動するスピーカ421と、歩行者が触覚によって認知可能な態様で作動する加振装置424と、を備える。
【0091】
スピーカ421は、HMI制御装置425からの指令に応じた音を発音する。加振装置424は、HMI制御装置425からの指令に応じた態様で振幅及び/又は振動数で携帯情報処理端末40の本体を振動させる。
【0092】
後に説明するように、協調支援装置6から歩行者が所有する携帯情報処理端末40に送信される協調支援情報には、HMI制御装置425によるリスク通知のオン/オフや通知モードの種類を設定するためのリスク通知設定値に関する情報や、歩行者に対し身近に迫るリスクに関するリスク情報等が含まれる。
【0093】
HMI制御装置425では、HMI420の作動対象装置及び作動態様の少なくとも何れかが異なる複数の通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。より具体的には、HMI制御装置425では、歩行者に潜在的なリスクの存在を認知させることを目的とした気配通知モード、及び歩行者に顕在化したリスクの存在及び/又はこのリスクの度合いを認知させることを目的としたアナログ通知モードのうち少なくとも何れかの通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。このため、HMI制御装置425に入力されるリスク通知設定値は、HMI制御装置425によるリスク通知をオフに設定する“0”と、HMI制御装置425によるリスク通知をオンに設定するとともに通知モードを気配通知モードに設定する“1”と、HMI制御装置425によるリスク通知をオンに設定するとともに通知モードをアナログ通知モードに設定する“2”と、の何れかの値に設定される。
【0094】
HMI制御装置425は、リスク通知設定値が“0”である場合、リスク通知をオフに設定する。すなわちHMI制御装置425、リスク通知設定値が“0”である場合、HMI420を作動させない。
【0095】
HMI制御装置425は、リスク通知設定値が“1”である場合、通知モードを気配通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でリスク通知をオンにする。
【0096】
またHMI制御装置425は、リスク通知設定値が“2”である場合、通知モードをアナログ通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0097】
ここでHMI制御装置425は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、歩行者に煩わしさを感じさせない態様でHMI420を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象の存在を歩行者に自然に認知させる。より具体的には、HMI制御装置425は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、加振装置424を作動させることにより、携帯情報処理端末40の本体を所定の振幅及び周波数の下で振動させる。
【0098】
またHMI制御装置425は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、上述の気配通知モードとは異なる態様でHMI420を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク態様の存在及びこのリスク対象に対するリスク度合いを歩行者に強く認知させる。このようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在を歩行者に強く認知させるため、HMI制御装置425は、気配通知モードで定められる態様よりも通知強度が高い態様でHMI420を作動させる。より具体的には、HMI制御装置425は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、スピーカ421によってブザー音、パルス音、及びリスクが存在する旨のメッセージ等を発音させる。
【0099】
また上述のようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在に加えて、このリスク対象に対するリスク度合いを歩行者に強く認知させるため、HMI制御装置425は、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象に対するリスク度合い(例えば、リスク対象に対する衝突予測時間)に応じて通知強度を変化させることが好ましい。具体的には、HMI制御装置425は、リスク度合いが高くなるほど(すなわち、衝突予測時間が短くなるほど)、ブザー音の音量を大きくしたり、パルス音の音量を大きくしたり、パルス音の間隔を短くしたり、メッセージの音量を大きくしたり、メッセージの内容を変化させたりしてもよい。
【0100】
図2に戻り、インフラカメラ56は、対象交通エリアにおける車道、交差点、及び歩道を含む交通インフラ設備や、これら車道、交差点、及び歩道等を移動する移動体や歩行者の画像を撮影し、得られた画像情報を協調支援装置6へ送信する。
【0101】
信号制御装置55は、信号機を制御するとともに、対象交通エリアに設けられた信号機の現在の点灯色や点灯色を切り替えるタイミング等に関する信号機状態情報を協調支援装置6へ送信する。
【0102】
協調支援装置6は、上述のような対象交通エリアに存在する複数のエリア端末から取得した情報に基づいて、各交通参加者の間のコミュニケーションや周囲の交通環境の認識を促すための協調支援情報を支援対象とする交通参加者毎に生成し、各交通参加者に通知することにより、対象交通エリアにおける交通参加者の安全かつ円滑な交通を支援するコンピュータである。なお本実施形態では、対象交通エリアに存在する複数の交通参加者のうち、協調支援装置6において生成した協調支援情報を受信し、受信した協調支援情報に基づいて定められた態様でHMIを作動させる手段(例えば、通知装置22,32,42)を備える交通参加者を協調支援装置6の支援対象とする。
【0103】
協調支援装置6は、対象交通エリアにおける人及び移動体を個々の交通参加者として認識する対象交通エリア認識ユニット60と、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている移動体の運転主体の運転能力と相関のある運転主体状態情報を取得する運転主体情報取得ユニット61と、対象交通エリアにおける交通参加者の将来を予測する予測ユニット62と、対象交通エリア認識ユニット60により支援対象として認識されている個々の交通参加者毎に健全化通知のオン/オフを設定する健全化通知設定ユニット63と、対象交通エリア認識ユニット60により支援対象として認識されている個々の交通参加者毎にリスク通知の通知モードを設定するリスク通知設定ユニット64と、対象交通エリア認識ユニット60により支援対象として認識されている個々の交通参加者毎に生成した協調支援情報を送信する協調支援情報通知ユニット65と、対象交通エリアの交通環境に関する情報が蓄積された交通環境データベース67と、予め登録された運転主体による過去の運転履歴に関する情報が蓄積された運転履歴データベース68と、を備える。
【0104】
交通環境データベース67には、予め登録された対象交通エリアの地図情報(例えば、車道の幅、車線数、制限速度、歩道の幅、車道と歩道との間のガードレールの有無、及び横断歩道の位置等)や、対象交通エリアのうち特にリスクの高いハイリスクエリアに関するリスクエリア情報等、対象交通エリアにおける交通参加者の交通環境に関する情報が記憶されている。以下では、交通環境データベース67に記憶されている情報を登録交通環境情報ともいう。
【0105】
運転履歴データベース68には、予め登録された運転主体の過去の運転履歴に関する情報が、この運転主体が所有する移動体の登録ナンバーと関連付けられた状態で記憶されている。このため、後述の対象交通エリア認識ユニット60により、認識している移動体の登録ナンバーを特定することができれば、この登録ナンバーに基づいて運転履歴データベース68を検索することにより、認識している移動体の運転主体の過去の運転履歴を取得することができる。以下では、運転履歴データベース68に記憶されている情報を登録運転履歴情報ともいう。
【0106】
対象交通エリア認識ユニット60は、対象交通エリアにおける上記エリア端末(車載装置群20,30、携帯情報処理端末40、インフラカメラ56、及び信号制御装置55)から送信される情報、及び交通環境データベース67から読み込んだ登録交通環境情報に基づいて、対象交通エリアにおける人又は移動体である各交通参加者及びこの対象交通エリアにおける各交通参加者の交通環境を含む認識対象を認識するとともに、これら認識対象に関する認識情報を取得する。
【0107】
ここで車載装置群20に含まれる車載運転支援装置21及び車載通信装置24から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される情報や、車載装置群30に含まれる車載運転支援装置31及び車載通信装置34から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される情報には、外界センサユニットによって取得した自車の周囲の交通参加者や交通環境に関する状態に関する情報や、自車状態センサやナビゲーション装置等によって取得した一交通参加者としての自車の状態に関する情報等が含まれている。また携帯情報処理端末40から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される情報には、位置や移動加速度等の一交通参加者としての歩行者の状態に関する情報が含まれている。またインフラカメラ56から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される画像情報には、対象交通エリアにおける車道、交差点、及び歩道等の交通インフラ設備の外観や、この対象交通エリアを移動する交通参加者の外観等、各交通参加者やその交通環境に関する情報が含まれる。また信号制御装置55から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される信号機状態情報には、信号機の現在の点灯色や点灯色を切り替えるタイミング等の各交通参加者の交通環境に関する情報が含まれる。また対象交通エリア認識ユニット60が交通環境データベース67から読み込む登録交通環境情報には、対象交通エリアの地図情報やリスクエリア情報等の各交通参加者の交通環境に関する情報が含まれる。
【0108】
したがって対象交通エリア認識ユニット60では、これらエリア端末から送信される情報に基づいて、対象交通エリアにおける各交通参加者の対象交通エリアにおける位置、移動速度、移動加速度、移動の向き、移動体の車種、移動体の車格、移動体の登録ナンバー、歩行者の構成人数、及び歩行者の年齢層等の各交通参加者の認識情報(以下、「交通参加者認識情報」ともいう)を取得することができる。また対象交通エリア認識ユニット60では、これらエリア端末から送信される情報に基づいて、車道の幅、車線数、制限速度、歩道の幅、車道と歩道との間のガードレールの有無、信号機の点灯色及びその切り替えタイミング、並びにリスクエリア情報等の対象交通エリアにおける各交通参加者の交通環境の認識情報(以下、「交通環境認識情報」ともいう)を取得することができる。
【0109】
従って本実施形態において、対象交通エリアにおける交通参加者及び交通環境を認識する認識手段は、対象交通エリア認識ユニット60と、四輪自動車2の車載装置群20に含まれる車載運転支援装置21、車載通信装置24及び携帯情報処理端末25と、自動二輪車3の車載装置群30に含まれる車載運転支援装置31、車載通信装置34及び携帯情報処理端末35と、歩行者4の携帯情報処理端末40と、インフラカメラ56と、信号制御装置55と、交通環境データベース67と、によって構成される。
【0110】
対象交通エリア認識ユニット60は、以上のようにして取得した交通参加者認識情報及び交通環境認識情報を、運転主体情報取得ユニット61、予測ユニット62、健全化通知設定ユニット63、リスク通知設定ユニット64、及び協調支援情報通知ユニット65等へ送信する。
【0111】
運転主体情報取得ユニット61は、対象交通エリアにおける上記エリア端末(特に、車載装置群20,30)から送信される情報及び運転履歴データベース68から読み込んだ登録運転履歴情報に基づいて、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている移動体の運転主体の現在の運転能力と相関のある運転主体状態情報及び運転主体特性情報を取得する。
【0112】
より具体的には、運転主体情報取得ユニット61は、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている四輪自動車の運転主体が人である場合、この四輪自動車に搭載される車載装置群20から送信される情報を運転者の運転主体状態情報として取得する。また運転主体情報取得ユニット61は、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている自動二輪車の運転主体が人である場合、この自動二輪車に搭載される車載装置群30から送信される情報をライダーの運転主体状態情報として取得する。
【0113】
ここで車載装置群20に含まれる運転主体状態センサ23及び車載通信装置24から運転主体情報取得ユニット61へ送信される情報には、運転中の運転者の視線の向き及び開眼の有無等の外観情報や、脈拍、呼吸の有無、及び皮膚電位等の生体情報や、会話の有無等の音声情報等に関する経時データであって、運転中の運転者の運転能力と相関のある情報が含まれる。また車載装置群30に含まれるライダー状態センサ33及び車載通信装置34から運転主体情報取得ユニット61へ送信される情報には、ライダーの脈拍、呼吸の有無、及び皮膚電位等の生体情報に関する経時データであって、運転中のライダーの運転能力と相関のある情報が含まれる。また車載装置群20,30に含まれる携帯情報処理端末25,35から運転主体情報取得ユニット61へ送信される情報には、運転者やライダー個人のスケジュール情報が含まれる。運転者やライダーは、例えば逼迫したスケジュールの下で移動体を運転している場合、焦りが生じてしまい、運転能力が低下する場合がある。このため運転者やライダー個人のスケジュール情報は、自身の運転能力と相関のある情報であるといえる。
【0114】
運転主体情報取得ユニット61は、以上の手順によって取得した運転主体に対する運転主体状態情報及び運転履歴データベース68から読み込んだ登録運転履歴情報の両方又は何れかを用いることにより、運転中の運転主体の現在の運転能力と相関のある運転主体の運転に関する特性(例えば、急な車線変更の過多、及び急な加減速の過多等)に関する運転主体特性情報を取得する。
【0115】
運転主体情報取得ユニット61は、以上のようにして取得した運転主体の運転主体状態情報及び運転主体特性情報を、予測ユニット62、健全化通知設定ユニット63、リスク通知設定ユニット64、及び協調支援情報通知ユニット65等へ送信する。
【0116】
予測ユニット62は、対象交通エリアの中の一部の交通エリアを監視エリアとして抽出し、この監視エリアにおける複数の交通参加者の将来を、対象交通エリア認識ユニット60によって取得された交通参加者認識情報及び交通環境認識情報と、運転主体情報取得ユニット61によって取得された運転主体状態情報及び運転主体特性情報と、に基づいて予測する。より具体的には、予測ユニット62は、対象交通エリア認識ユニット60によって取得した交通参加者認識情報及び交通環境認識情報に基づいて監視エリアを模擬した仮想空間を構築するとともに、交通参加者認識情報、交通環境認識情報、運転主体状態情報、及び運転主体特性情報に基づく仮想空間上でのシミュレーションを行うことによって監視エリアにおける各交通参加者の将来を予測する。なお予測ユニット62によって監視エリアにおける各交通参加者の将来を予測する具体的な手順については、詳細な説明を省略する。
【0117】
ここで対象交通エリアは、例えば市町村単位で定められる比較的広範囲の交通エリアである。これに対し、監視エリアは、例えば交差点や特定施設の近傍等、四輪自動車が法定速度で移動した場合に数十秒程度で通過し得る交通エリアである。すなわち、監視エリアは、対象交通エリアより狭いが、各移動体に搭載される運転支援ECUによるADAS作動範囲よりも広い。
【0118】
健全化通知設定ユニット63は、対象交通エリアに存在する複数の交通参加者のうち、対象交通エリア認識ユニット60によって支援対象かつ移動体として認識されている交通参加者を設定対象とし、個々の設定対象毎に健全化通知のオン/オフを設定する。
【0119】
より具体的には、始めに健全化通知設定ユニット63は、運転主体情報取得ユニット61から移動体である各設定対象の運転主体と関連付けられた運転主体状態情報及び運転主体特性情報を取得する。また健全化通知設定ユニット63は、取得した運転主体状態情報及び運転主体特性情報に基づいて、個々の設定対象毎にその運転主体の現在の健全度を算出する。また健全化通知設定ユニット63は、各設定対象に対して算出した健全度が所定の健全度閾値未満である場合、その設定対象の運転主体は不健全な状態であると判断し、その設定対象の健全化通知をオンに設定するべく、その設定対象に対する健全化通知設定値を“1”に設定する。また健全化通知設定ユニット63は、各設定対象に対して算出した健全度が健全度閾値以上である場合、その設定対象の運転主体は健全な状態であると判断し、その設定対象の健全化通知をオフに設定するべく、その設定対象に対する健全化通知設定値を“0”に設定する。
【0120】
健全化通知設定ユニット63は、以上のような手順によって対象交通エリア内における複数の設定対象に対する健全化通知をオン又はオフに設定する。健全化通知設定ユニット63によって各設定対象に対して設定された健全化通知設定値に関する情報は、協調支援情報通知ユニット65へ送信される。
【0121】
リスク通知設定ユニット64は、予測ユニット62により対象交通エリアの中から抽出された監視エリアに存在する複数の交通参加者のうち、対象交通エリア認識ユニット60によって支援対象として認識されている交通参加者を設定対象とし、個々の設定対象毎にリスク通知のオン/オフ及び通知モードを設定する。
【0122】
より具体的には、リスク通知設定ユニット64は、対象交通エリア認識ユニット60によって取得された交通参加者認識情報及び交通環境認識情報のうち監視エリアと関連する情報と、運転主体情報取得ユニット61によって取得された運転主体状態情報及び運転主体特性情報のうち監視エリアと関連する情報と、予測ユニット62による監視エリアに対する予測結果と、に基づいて、監視エリアに存在する個々の設定対象のリスク通知のオン/オフ及び通知モードを設定する。
【0123】
なお以下では、リスク通知設定ユニット64によって各設定対象に対するリスク通知のオン/オフ及び通知モードを設定する具体的な手順について、例えば
図4に示すような道路R1を監視エリアとした場合について説明する。
【0124】
図4は、監視エリアとして道路R1の交差点付近における四輪自動車2及び自動二輪車3の状況を説明するための模式図である。
図4に示す例では、監視エリアとしての道路R1は、片側一車線の道路及び当該道路と交差点で交わる道路を含み、四輪自動車2は、道路の一方の車線を走行し、自動二輪車3は、四輪自動車2とは反対側の車線を走行している。そして、四輪自動車2は、監視エリアの交差点を直進しようとしており、自動二輪車3は、交差点を右折しようとしている。
【0125】
図4に示す例では、道路R1は、片側一車線の道路及び当該道路と交差点で交わる道路を含み、支援対象である四輪自動車2は、道路の一方の車線を走行し、第2移動体である自動二輪車3は、四輪自動車2とは反対側の車線を走行している。そして、四輪自動車2は、監視エリアの交差点を直進しようとしており、自動二輪車3は、交差点を右折しようとしている。このような状況において、四輪自動車2の運転者は、自動二輪車3と四輪自動車2との間の距離を認識しにくいため、右折する四輪自動車2と直進する自動二輪車3とが衝突する可能性がある。
【0126】
図4に示す例では、リスク通知設定ユニット64は、自動二輪車3が、ADAS作動範囲を包含するアナログ通知作動範囲外において四輪自動車2の進行方向前方から四輪自動車2へ接近する対向移動体である場合、四輪自動車2のリスク通知制御装置227の通知モードを気配通知モードに設定する。また、リスク通知設定ユニット64は、自動二輪車3が、四輪自動車2と自動二輪車3とが更に接近し、アナログ通知作動範囲内に存在する場合、リスク通知制御装置227の通知モードをアナログ通知モードに設定する。
【0127】
ここでアナログ通知作動範囲は、ADAS作動範囲を包含しており、自動二輪車3と四輪自動車2との距離が接近した場合、通知モードをアナログ通知モードに設定し、アナログ通知モードでリスク通知を行うための作動範囲である。すなわち、アナログ通知作動範囲は、ADAS作動範囲よりも広い範囲である。
【0128】
また、上述したように、リスク通知設定ユニット64は、リスク通知制御装置227及びリスク通知制御装置327のそれぞれに入力されるリスク通知設定値を“1”に設定することによって、リスク通知制御装置227及びリスク通知制御装置327のそれぞれの通知モードを気配通知モードに設定し、リスク通知制御装置227及びリスク通知制御装置327のそれぞれに入力されるリスク通知設定値を“2”に設定することによって、リスク通知制御装置227及びリスク通知制御装置327のそれぞれの通知モードをアナログ通知モードに設定する。
【0129】
また、上述した例に加えて、リスク通知設定ユニット64は、自動二輪車3が、四輪自動車2の進行方向後方から支援対象へ接近する後続移動体である場合、リスク通知制御装置227の通知モードを気配通知モードに設定し、自動二輪車3が、アナログ通知作動範囲内に存在する場合、リスク通知制御装置227の通知モードをアナログ通知モードに設定してもよい。
【0130】
また、リスク通知設定ユニット64は、四輪自動車2及び自動二輪車3の少なくとも何れかの一方が、四輪自動車2と自動二輪車3との間の車線境界線を中心とした所定幅範囲内に存在する場合、リスク通知制御装置227の通知モードを気配通知モードに設定する。
【0131】
ここで所定幅範囲は、四輪自動車2及び自動二輪車3の少なくとも何れかの一方が、車線境界線側に寄って走行しており、四輪自動車2と自動二輪車3とがほぼ正面から接近している状態を判定するための範囲である。すなわち、四輪自動車2及び自動二輪車3の少なくとも何れかの一方が、所定幅範囲内に存在する場合、四輪自動車2と自動二輪車3とがほぼ正面から接近している状態であり、所定幅範囲内に存在しない場合、四輪自動車2と自動二輪車3とが正面から接近していない(すなわちオフセットしていない)状態である。
【0132】
また、リスク通知設定ユニット64は、自動二輪車3の周辺に四輪自動車2の進行方向前方から四輪自動車2へ接近しかつ自動二輪車3よりも大きな周辺移動体が存在する場合、リスク通知制御装置227の通知モードを気配通知モードに設定する。ここで自動二輪車3よりも大きな周辺移動体は、例えば、トラック、ダンプカー、バス、タンクローリー等のような自動二輪車3よりも車高の高い車両である。
【0133】
また、リスク通知設定ユニット64は、車載運転支援装置21の外界センサユニットによって監視エリアの天候が降雨、降雪等の悪天候であることを検出した場合、リスク通知制御装置227の通知モードを気配通知モードに設定する。また、リスク通知設定ユニット64は、車載運転支援装置21の外界センサユニットによって検出した監視エリアの照度が所定の照度閾値未満である場合、リスク通知制御装置227の通知モードを気配通知モードに設定する。ここで所定の照度閾値は、例えば、四輪自動車2の運転者が周囲の視界を認識しにくい程度の照度に設定される。
【0134】
また、予測ユニット62は、監視エリアにおける四輪自動車2及び自動二輪車3の将来を、対象交通エリア認識ユニット60によって取得された交通参加者認識情報及び交通環境認識情報と、運転主体情報取得ユニット61によって取得された運転主体状態情報及び運転主体特性情報と、に基づいて予測する。
【0135】
より具体的には、予測ユニット62は、監視エリアにおける四輪自動車2が将来移動すると想定される第1予測移動経路及び自動二輪車3が将来移動すると想定される第2予測移動経路を、交通参加者認識情報及び交通環境認識情報と運転主体状態情報及び運転主体特性情報と、に基づいて予測する。
【0136】
そして、リスク通知設定ユニット64は、予測ユニット62によって予測される四輪自動車2の第1予測移動経路と自動二輪車3の第2予測移動経路とが重なる場合、リスク通知制御装置227の通知モードをアナログ通知モードに設定する。例えば、
図4に示す例では、直進する四輪自動車2の第1予測移動経路と右折する自動二輪車3の第2予測移動経路とが重なる場合、リスク通知設定ユニット64は、リスク通知制御装置227の通知モードをアナログ通知モードに設定する。
【0137】
なお、上述した例では、リスク通知設定ユニット64は、リスク通知制御装置227の通知モードを気配通知モード又はアナログ通知モードに設定したが、これに限定されず、リスク通知設定ユニット64は、リスク通知制御装置227及びリスク通知制御装置327を気配通知モード又はアナログ通知モードに設定してもよい。
【0138】
図2に戻り、協調支援情報通知ユニット65は、対象交通エリア認識ユニット60によって取得された交通参加者認識情報及び交通環境認識情報と、運転主体情報取得ユニット61によって取得された運転主体状態情報及び運転主体特性情報と、予測ユニット62による予測結果と、健全化通知設定ユニット63によって設定された健全化設定値に関する情報と、リスク通知設定ユニット64によって設定されたリスク通知設定値に関する情報と、に基づいて、対象交通エリア認識ユニット60によって支援対象として認識されている個々の交通参加者に対し、周囲の交通参加者との間のコミュニケーションや周囲の交通環境の認識を促すための協調支援情報を生成し、生成した協調支援情報を各交通参加者へ送信する。
【0139】
ここで協調支援情報通知ユニット65から各支援対象へ送信される協調支援情報には、健全化設定値に関する情報と、リスク通知設定値に関する情報と、各支援対象に対し身近に迫るリスクに関するリスク情報と、が含まれる。ここでリスク情報には、例えば予測ユニット62による予測結果や、各交通参加者の周囲に存在する交通参加者の位置に関する情報等が含まれる。
【0140】
本実施形態に係る交通安全支援システム1によれば、以下の効果を奏する。
(1)交通安全支援システム1において、リスク通知制御装置227は、通知モードが気配通知モードに設定された場合、第1通知態様でHMI220を作動させ、通知モードがアナログ通知モードに設定された場合、第1通知態様よりも通知強度が高い第2通知態様でHMI220を作動させ、リスク通知設定ユニット64は、自動二輪車3がアナログ通知作動範囲外において四輪自動車2の進行方向前方から四輪自動車2へ接近する対向移動体又は四輪自動車2の進行方向後方から四輪自動車2へ接近する後続移動体である場合、リスク通知制御装置227の通知モードを気配通知モードに設定し、自動二輪車3がアナログ通知作動範囲内に存在する場合、リスク通知制御装置227の通知モードをアナログ通知モードに設定する。これにより、交通安全支援システム1は、自動二輪車3が、四輪自動車2に対向する又は四輪自動車2の後方から接近することが予測される場合、事前に第1通知態様で通知を行うと共に、自動二輪車3に接近した場合、第2通知態様で通知を行うことができる。よって、交通安全支援システム1は、事前に行われる第1通知態様の通知強度が第2通知態様より低いため、自動二輪車3が、四輪自動車2に対向する又は四輪自動車2の後方から接近することが予測される場合において、四輪自動車2の運転者への通知の煩わしさの抑制と、交通の安全性の確保とを両立することができる。
【0141】
(2)交通安全支援システム1において、リスク通知設定ユニット64は、リスク通知制御装置227の通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、四輪自動車2と自動二輪車3との間のリスク度合いに応じて通知強度を変化させる。これにより、交通安全支援システム1は、リスク度合いが高い場合、四輪自動車2の運転者に第2移動体である自動二輪車3の接近を強く伝えることができ、リスク度合いが低い場合、運転者に第2移動体の存在を煩わしくないレベルで伝えることができる。
【0142】
(3)交通安全支援システム1において、リスク通知設定ユニット64は、四輪自動車2及び自動二輪車3の少なくとも何れかの一方が所定幅範囲内に存在する、すなわち四輪自動車2及び自動二輪車3の少なくとも何れかの一方が車線境界線側に寄って走行しており、四輪自動車2と自動二輪車3とがほぼ正面から接近する場合、リスク通知制御装置227の通知モードを気配通知モードに設定する。これにより、本発明に係る交通安全支援システムは、四輪自動車2と自動二輪車3とがほぼ正面から接近している場合に事前に運転者に通知を行うことができ、交通の安全性を確保することができる。
【0143】
(4)交通安全支援システム1において、リスク通知設定ユニット64は、自動二輪車3の周辺に四輪自動車2の進行方向前方から四輪自動車2へ接近しかつ対向移動体である自動二輪車3よりも大きな周辺移動体が存在する場合、リスク通知制御装置227の通知モードを気配通知モードに設定する。これにより、本発明に係る交通安全支援システムは、対向移動体である自動二輪車3よりも大きな周辺移動体が接近している場合に事前に運転者に通知を行うことができ、交通の安全性を確保することができる。
【0144】
(5)交通安全支援システム1において、リスク通知設定ユニット64は、監視エリアの天候が降雨である場合又は監視エリアの照度が所定の照度閾値未満である場合、リスク通知制御装置227の通知モードを気配通知モードに設定する。これにより、交通安全支援システム1は、監視エリアの天候が降雨である又は照度が低い場合に事前に運転者に通知を行うことができ、交通の安全性を確保することができる。
【0145】
(6)交通安全支援システム1は、認識手段によって交通参加者として認識されている移動体の将来を予測する予測ユニット62をさらに備え、リスク通知設定ユニット64は、予測手段によって予測される四輪自動車2の第1予測移動経路と四輪自動車2の第2予測移動経路とが重なる場合、リスク通知制御装置227の通知モードをアナログ通知モードに設定する。リスク通知設定ユニット64は、四輪自動車2の第1予測移動経路と自動二輪車3の第2予測移動経路とが重なる、すなわち四輪自動車2の移動ベクトルと自動二輪車3の移動ベクトルとが重なる場合、リスク通知制御装置227の通知モードを前記第2モードに設定する。これにより、交通安全支援システム1は、支援対象である四輪自動車2と自動二輪車3との移動ベクトルが重なる場合にアナログ通知モードで通知を行うため、四輪自動車2と自動二輪車3とが衝突する可能性がある場合にアナログ通知モードで通知を行うことができ、運転者への通知の煩わしさの抑制と、交通の安全性の確保とを両立することができる。
【0146】
(7)交通安全支援システム1において、第2移動体は、自動二輪車3のような二輪車両である。これにより、交通安全支援システム1は、第1移動体である自車両が右折又は直進し、第2移動体である自動二輪車3が右折又は直進するような状況において、運転者への通知の煩わしさの抑制と、交通の安全性の確保とを両立することができる。
【0147】
(8)交通安全支援システム1において、支援対象である四輪自動車2は、ADAS範囲内に接触可能性のある移動体が存在することを条件として、制動装置及び操舵装置の少なくとも何れかを自動で操作する車載運転支援装置21を備える。これにより、交通安全支援システム1は、車載運転支援装置21によって四輪自動車2と自動二輪車3とが衝突する可能性を低減し、交通の安全性を確保することができる。
【0148】
(9)交通安全支援システム1において、リスク通知設定ユニット64は、自動二輪車3がADAS範囲を包含するアナログ通知作動範囲外に存在しかつ認識手段によって四輪自動車2と自動二輪車3との間の距離を認識しにくい場合、リスク通知制御装置227の通知モードを気配通知モードに設定し、自動二輪車3がアナログ通知作動範囲内に存在する場合、リスク通知制御装置227の通知モードをアナログ通知モードに設定する。これにより、交通安全支援システム1は、四輪自動車2が、四輪自動車2と自動二輪車3との間の距離を認識しにくい場合、事前に第1通知態様で通知を行うと共に、自動二輪車3に接近した場合、第2通知態様で通知を行うことができる。よって、交通安全支援システム1は、事前に行われる第1通知態様の通知強度が第2通知態様より低いため、運転者への通知の煩わしさの抑制と、交通の安全性の確保とを両立することができる。
【0149】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。例えば上記実施形態では、移動体である支援対象の周囲の監視エリアにおける交通参加者及び交通環境を認識する認識手段及び支援対象の通知モードを設定する通知モード設定手段を、それぞれ対象交通エリア認識ユニット60及びリスク通知設定ユニット64として、支援対象と無線通信可能な協調支援装置6に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らない。認識手段及び通知モード設定手段は、支援対象に搭載される車載装置によって構成してもよい。この場合、認識手段によって認識される監視エリアの範囲は、支援対象に搭載される外界センサによって認識可能な範囲に限られるが、通信による遅れが小さいというメリットがある。
【符号の説明】
【0150】
1…交通安全支援システム
9…対象交通エリア
2…四輪自動車(第1移動体、交通参加者)
20…車載装置群
21…車載運転支援装置(認識手段、運転支援装置)
22…通知装置
23…運転主体状態センサ
24…車載通信装置(認識手段)
25…携帯情報処理端末(認識手段)
3…自動二輪車(第2移動体、交通参加者)
30…車載装置群
31…車載運転支援装置(認識手段、運転支援装置)
32…通知装置
33…ライダー状態センサ
34…車載通信装置(認識手段)
35…携帯情報処理端末(認識手段)
4…歩行者(人、交通参加者)
40…携帯情報処理端末(認識手段)
51…車道(交通環境)
52…交差点(交通環境)
53…歩道(交通環境)
54…信号機(交通環境)
55…信号制御装置(認識手段)
56…インフラカメラ(認識手段)
6…協調支援装置
60…対象交通エリア認識ユニット(認識手段)
61…運転主体情報取得ユニット
62…予測ユニット(予測手段)
63…健全化通知設定ユニット
64…リスク通知設定ユニット(通知モード設定手段)
65…協調支援情報通知ユニット
67…交通環境データベース(認識手段)
68…運転履歴データベース
220 HMI(マンマシンインターフェース)
225 HMI制御装置
226 健全化制御装置
227 リスク通知制御装置(通知制御手段)
320 HMI(マンマシンインターフェース)
325 HMI制御装置
326 健全化制御装置
327 リスク通知制御装置(通知制御手段)
420 HMI(マンマシンインターフェース)
425 HMI制御装置