(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】見積システム、見積方法、及び見積プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20231024BHJP
G06Q 30/0283 20230101ALI20231024BHJP
G06Q 30/0601 20230101ALI20231024BHJP
【FI】
G06F30/10
G06Q30/0283
G06Q30/0601 310
(21)【出願番号】P 2022072073
(22)【出願日】2022-04-26
(62)【分割の表示】P 2020091638の分割
【原出願日】2020-05-26
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】505191168
【氏名又は名称】株式会社ミスミ
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100161090
【氏名又は名称】小田原 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【氏名又は名称】内田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】大輪 健太
(72)【発明者】
【氏名】横田 知明
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-158740(JP,A)
【文献】特開2008-243192(JP,A)
【文献】特開2012-79094(JP,A)
【文献】特開2011-165183(JP,A)
【文献】池田亮 ほか,機能フィーチャの提案とそれに基づく加工属性情報の活用,2007年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集,日本,公益社団法人精密工学会,2007年09月01日,pages 927-928,<DOI: https://doi.org/10.11522/pscjspe.2007S.0.927.0>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
G06Q 30/0283
G06Q 30/0601
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の要素から構成される物品の形状データをクライアント端末から受け入れて当該物品の見積情報を提供する見積システムであって、
前記形状データと、前記要素に関する複数種類の公差情報が互いに関連付けられた公差データとを記憶する記憶手段と、
前記複数種類の公差情報のうちの一の種類の公差情報が前記要素に対して設定されている場合に、当該一の種類の公差情報の公差域が所定条件を満たすか否かを判定する判定手段と、
前記公差域が前記所定条件を満たすと判定された場合に、前記複数種類の公差情報のうちの
他の種類の公差情報であって、前記一の種類の公差情報に対して少なくとも情報の一部が異なっている他の種類の公差情報の設定を補助する補助処理を行う補助手段
と
を備える、見積システム。
【請求項2】
前記判定手段は、前記一の種類の公差情報の前記公差域が基準よりも高精度である場合に、前記所定条件を満たす
と判定する
、請求項1に記載の見積システム。
【請求項3】
前記補助手段は、前記所定条件を満たすと判定された場合に、前記要素に対して設定可能な前記
他の種類の公差情報を、ユーザに通知するか又は前記形状データに設定する、請求項
1又は2に記載の見積システム。
【請求項4】
前記複数種類の公差情報は、前記形状データに設定された原点と、前記要素とは異なる他の要素との少なくとも一方からの前記要素の距離の公差を含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の見積システム。
【請求項5】
前記複数種類の公差情報は、幾何学的基準から前記要素の中心軸までの距離の公差を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の見積システム。
【請求項6】
前記複数種類の公差情報は、前記要素に関する公差域クラスを含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の見積システム。
【請求項7】
複数の要素から構成される物品の形状データをクライアント端末から受け入れて当該物品の見積情報を提供し、かつコンピュータを備える見積システムにおける見積方法であって、
前記形状データと、前記要素に関する複数種類の公差情報が互いに関連付けられた公差データとを記憶し、
前記複数種類の公差情報のうちの一の種類の公差情報が前記要素に対して設定されている場合に、当該一の種類の公差情報の公差域が所定条件を満たすか否かを判定し、
前記公差域が前記所定条件を満たすと判定された場合に、前記複数種類の公差情報のうちの
他の種類の公差情報であって、前記一の種類の公差情報に対して少なくとも情報の一部が異なっている他の種類の公差情報の設定を補助する補助処理を行う
、
見積方法。
【請求項8】
複数の要素から構成される物品の形状データをクライアント端末から受け入れて当該物品の見積情報を提供し、かつ前記形状データと、前記要素に関する複数種類の公差情報が互いに関連付けられた公差データとを記憶する記憶手段、及びコンピュータを備える見積システムの見積プログラムであって、
前記コンピュータを、
前記複数種類の公差情報のうちの一の種類の公差情報が前記要素に対して設定されている場合に、当該一の種類の公差情報の公差域が所定条件を満たすか否かを判定する判定手段、及び
前記公差域が前記所定条件を満たすと判定された場合に、前記複数種類の公差情報のうちの
他の種類の公差情報であって、前記一の種類の公差情報に対して少なくとも情報の一部が異なっている他の種類の公差情報の設定を補助する補助処理を行う補助手段として機能させる
、
見積プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公差情報の設定を補助する見積システム、見積方法、及び見積プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動見積りシステムが開示されている。この自動見積りシステムにおいては、形状認識処理部が、ユーザが入力した形状データに記載されたアイテムの形状を認識する。そして、表示情報処理部は、ユーザが入力したアイテムの種類及び認識されたアイテムの形状に基づいて、選択し得る製造条件を取得する。さらに、表示処理部が、表示画面中のアイテム形状表示部に、認識したアイテムの概形を表示し、かつ製造条件選択部に製造条件を表示する。ユーザは、製造条件選択部に表示された製造条件のうちから任意の製造条件を選択する。そして、ユーザは、表示部に表示されている見積開始部を選択し、自動見積りシステムに見積もり処理を開始させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザが発注する物品においては、高い精度を要する加工個所、すなわち厳しい公差が要求される加工個所が存在することがある。例えば、一の物品に対する他の物品の位置を正確に位置決めする場合、位置決めピンを使用する。そして、位置決めピンを取り付ける取り付け穴の加工には高い精度を要する。すなわち、取り付け穴を加工する際には、厳しい公差が要求される。
【0005】
そのため、取り付け穴を含む物品を設計する場合には、取り付け穴の位置の公差(加工位置の公差)と、取り付け穴の穴径の公差とを設定する必要がある。従来のシステムにおいては、これらの公差を、ユーザが自身の経験に基づいて入力していた。そして、この入力作業は非常に手間がかかるため、物品の見積りに伴う設計処理に要する処理時間が長くなってしまう。
【0006】
また、公差の値と、公差の入力対象とには、複数の候補が存在する場合がある。その一方、ユーザは、複数の候補の中から自身の経験に基づいて入力する公差を決定している。そのため、ユーザが誤った公差の値を入力してしまうミス、又は誤った対象に公差を入力してしまうミスが発生する可能性がある。さらに、ユーザが手動で入力するため、入力されるべき対象に公差の入力が漏れてしまうミスが発生する可能性もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る見積システムは、複数の要素から構成される物品の形状データをクライアント端末から受け入れて当該物品の見積情報を提供する見積システムであって、前記形状データと、前記要素に関する複数種類の公差情報が互いに関連付けられた公差データとを記憶する記憶手段と、前記公差データに基づいて、前記複数種類の公差情報のうちの少なくとも一種の設定を補助する補助処理を行う補助手段とを備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係る見積方法は、複数の要素から構成される物品の形状データをクライアント端末から受け入れて当該物品の見積情報を提供し、かつコンピュータを備える見積システムにおける見積方法であって、前記形状データと、前記要素に関する複数種類の公差情報が互いに関連付けられた公差データとを記憶し、前記公差データに基づいて、前記複数種類の公差情報のうちの少なくとも一種の設定を補助する補助処理を行う。
【0009】
また、本発明の一態様に係る見積プログラムは、複数の要素から構成される物品の形状データをクライアント端末から受け入れて当該物品の見積情報を提供し、かつ前記形状データと、前記要素に関する複数種類の公差情報が互いに関連付けられた公差データとを記憶する記憶手段、及びコンピュータを備える見積システムの見積プログラムであって、前記コンピュータを、前記公差データに基づいて、前記複数種類の公差情報のうちの少なくとも一種の設定を補助する補助処理を行う補助手段として機能させる。
【0010】
これにより、本発明によれば、物品を構成する要素に対する公差情報の設定を補助し、物品の見積りに伴う設計処理に要する処理時間を短くすることができる。また、本発明によれば、公差情報の設定に伴うミスの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図6】第1実施形態に係る設定画面の一例を示す図。
【
図7】第1実施形態に係る設定画面の他の例を示す図。
【
図8】第2実施形態に係る設定画面の一例を示す図。
【
図9】第2実施形態に係る設定画面の他の例を示す図。
【
図10】第3実施形態に係る設定画面の一例を示す図。
【
図11】第3実施形態に係る設定画面の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態において説明する寸法、材料、形状及び構成要素の相対的な位置は任意に設定でき、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されない。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、複数の要素から構成される物品の価格の見積りに用いられる見積システム100を示している。当該見積システム100は、物品の形状データを、クライアント端末40から受け入れて当該物品の見積情報を提供する。例えば、見積システム100のサーバ20は、ユーザがクライアント端末40から送信した形状データを受信して記憶する。一例として、要素とは、穴、軸、段差、切り欠き、角、面、及び稜線等の物品を構成する部分のことであり、加工されることによって得られる形状を含む。また、形状データは、物品の形状を含む3DCADデータであり、各要素の寸法及び位置等の情報を含んでいてもよい。なお、形状データは、物品の形状を含むデータであればよく、2DCADデータであってもよい。
【0014】
形状データには、各要素に要求される公差等の属性情報が対応付けられている。当該属性情報は、要素間の距離に対する公差に関する第1公差情報と、要素内の寸法に対する公差に関する第2公差情報とを含んでいる。また、属性情報は、形状データに含まれていてもよく、形状データと属性情報とが別のデータであってもよい。形状データと属性情報とが別のデータである場合、例えば、物品の要素と対応付けられた属性情報を含むテーブルが用いられる。
【0015】
第1公差情報は、形状データに設定された原点を基準とする原点から要素までの距離の公差を含む。また、第1公差情報は、補助対象となる要素と他の要素との間の距離の公差を含む。また、第1公差情報は、幾何学的基準に対する要素の距離の公差、例えば加工位置の公差を含む。さらに、第1公差情報は、他の例として幾何学的基準から要素の中心軸までの距離の公差、例えば同軸度又は同心度を含む。また、第1公差情報は、幾何学的基準となる対象を特定する情報を含む。
【0016】
第2公差情報は、一例として要素のサイズ、例えば穴径、軸径、幅、長さ、深さ又は外径に対する公差である。具体的に、第2公差情報は、要素に関する公差域クラスを含む。
【0017】
その他に、属性情報は、顧客注文番号、数量、材質、表面処理、コメント(追加指示)の内容、穴の種類(穴タイプ)、穴径の公差、有効深さ(完全ねじ部長さ)、長穴幅の公差、外形寸法の公差、設計原点、同一グループの穴(グループ穴分割)、体裁面(物品の外観となる面)、(寸法表記などの)フォントサイズ、幾何公差、データム(幾何公差の基準)、及び表面粗さ等を示す情報であって、見積り及びその後の製造に用いられる各種情報を含んでいる。そして、属性情報には、物品の要素に対応付けられる情報と、形状データに対応付けられる情報とがある。
【0018】
各要素の寸法及び位置等の情報、並びに属性情報は、クライアント端末40のCADソフトウェアにおいて設定できる。また、各要素の寸法及び位置等の情報、並びに属性情報は、サーバ20が提供する画面上で設定することができるように見積システム100を構成してもよい。
【0019】
物品(アイテム)は、物品自体が一つのまとまった機能を有する完成品であってもよいし、完成品に組み込まれる一つの物品、又は複数の部品からなる組立体であってもよい。さらに、物品は、複数の部品が組み合わさったユニット、治具、装置、及び設備を含む。また、同一グループの穴とは、例えば同一平面上に存在する同じ径及び同じ深さを有する複数の穴のことである。ただし、同一グループの穴の中から、穴の種類ごとに異なるグループを分割することもでき、本明細書では分割したグループに属することを示す情報を「グループ穴分割」という。また、穴の種類には、一例として、キリ穴(以下、ストレートともいう)、タップ穴、及びはめ合いに高精度を要する穴(以下、精度穴ともいう)等が含まれる。
【0020】
見積システム100は、見積サーバとしてのサーバ20を備えたネットワークシステム、又はクライアントサーバシステムとして構成されている。サーバ20は、サーバ装置として機能し、例えば複数のコンピュータとしてのサーバユニット21が組み合わされることにより一台の論理的なサーバ装置として構成されている。ただし、単一のサーバユニット21によりサーバ20が構成されてもよい。あるいは、クラウドコンピューティングを利用して論理的にサーバ20が構成されてもよい。サーバ20は、クライアント端末40に対して、又はクライアント端末40のユーザに対して、物品の見積サービスを含む各種サービスを提供する。これらのサービスは、ネットワーク50を介してクライアント端末40に対してプログラム或いはデータを配信する配信サービスと、クライアント端末40から受信したデータを保管する保管サービスとを含んでいる。配信サービスは、例えば、アップデート用のデータを配信するサービスである。
【0021】
クライアント端末40は、ネットワーク接続が可能であるコンピュータ装置である。例えば、クライアント端末40は、据置型又はブック型のパーソナルコンピュータ41、及び携帯型タブレット端末装置42等を含む。その他に、携帯電話(スマートフォンを含む)のようなモバイル端末装置が、クライアント端末40に含まれる。クライアント端末40は、各種のコンピュータソフトウェアを実装することにより、サーバ20が提供する種々のサービスをユーザに享受させることが可能である。また、クライアント端末40は、サーバ20に所定のネットワーク50を介して接続可能である。以下では、クライアント端末40がパーソナルコンピュータ41である場合について説明する。
【0022】
ネットワーク50は、サーバ20に対してクライアント端末40をそれぞれ接続できるように構成されている。一例として、ネットワーク50は、TCP/IPプロトコルを利用してネットワーク通信を実現するように構成されている。具体的には、LAN(Local Area Network)52が、サーバ20とインターネット51とを接続している。そして、WAN(Wide Area Network)としてのインターネット51と、LAN52とが、ルータ53を介して接続されている。クライアント端末40も、インターネット51に接続されるように構成されている。サーバ20のサーバユニット21は、LAN52に代えて又は加えてインターネット51により、相互に接続されていてもよい。
【0023】
サーバ20は、ユーザが物品の価格を見積もるために必要な各種の手順を、クライアント端末40を介してユーザに案内する。すなわち、サーバ20は、クライアント端末40からのアクセスに応じて各種のウェブページをクライアント端末40の表示部(後述する表示装置46)に表示させるウェブサーバとして機能する。また、サーバ20は、ユーザによる発注に対応して、発注された物品の手配、配送指示、及び購入代金の請求といった処理を実行してもよい。
【0024】
図2を参照して、本発明の概要を説明する。なお、
図2においては、位置決めピン61を仮想的に破線によって図示している。
図2は、二つの物品A及び物品Bを位置合わせして組み立てた組立体を示している。下側の物品Aに対して上側の物品Bを正確に位置決めする場合、物品Aに取り付けられた位置決めピン61を使用する。一例として、物品Aに形成された精度穴71A,71Bには、段付き位置決めピン61が挿入される。そして、物品Bの二つの辺がそれぞれ位置決めピン61に当接するように、物品Bが物品Aの上に載置される。この状態で、物品Bに形成されたざぐり穴、及び物品Aに形成されたタップ穴にボルトを挿入することにより、物品Bが物品Aに正確に固定される。例えば、物品Bに形成されたざぐり穴は、上段・下段ともストレート穴である。そして、物品Bにざぐり穴が形成され、かつ物品Aにタップ穴が形成されている状態で、ボルトをさぐり穴及びタップ穴に挿入する。そして、物品Aはボルトとタップ穴によって、ねじ部により締結される。また、物品Bは、ボルトの頭部とざぐり穴の上段底面とによって、固定される。
【0025】
ここで、物品Aの形状データには、物品Aを構成する要素の一つである精度穴71A,71Bを形成する位置を特定する情報が含められる。具体的には、精度穴71Aを形成する位置の基準となる設計原点O又は他の精度穴71Bに対する精度穴71Aの距離(基準に対する穴の加工位置の距離)と、その距離の公差とが設定され、形状データに含められている。さらに、精度穴71A,71Bの寸法である穴径と、穴径の公差とが設定され、形状データに含められている。
【0026】
図2の例では、精度穴71Aに対して、基準となる設計原点Oに対する短辺側における距離40.0mmと、設計原点Oに対する長辺側における距離37.5mmとが設定されている。また、精度穴71Bに対して、設計原点Oに対する短辺側における距離17.5mmと、設計原点Oに対する長辺側における距離70.0mmとが設定されている。さらに、これらの距離の公差として、プラス0.02mmからマイナス0.02mmの範囲が設定されている。また、精度穴71A,71Bのそれぞれには、穴の寸法である穴径としてφ4mmと、穴径の公差(以下、穴径公差ともいう)として、プラス0.012mmから0mmの範囲が設定されている。特に、
図2の例では、穴径公差を示す情報として公差域クラス「H7」が設定されており、当該穴径公差は形状データに含められている。
【0027】
このように、精度穴71A,71Bには、第1公差情報として、位置の基準となる対象及び基準に対する距離の公差を設定し、かつ第2公差情報として、穴径の公差を設定する必要がある。ここで、位置の基準となる対象は、設計原点Oに代えて、他の要素、例えば、精度穴、ストレート穴、タップ穴、外形面、及び加工面等を基準とすることができる。
図2の例では、精度穴71Aの位置の基準を精度穴71Bの中心に設定することができる。そして、従来は各公差の値、及び位置の基準となる対象は、複数の選択肢からユーザが経験に基づいて決定して設定していた。そのため、ユーザが決定した対象に値を入力する必要があり、設計作業が長くなる原因となっていた。また、ユーザが入力するため、入力漏れ又は入力間違い等のミスが発生する可能性もあった。
【0028】
そこで、第1実施形態に係る見積システム100は、複数種類の公差情報のうちの少なくとも一種の設定を補助する補助処理を行う。具体的に、見積システム100は、ユーザが第1公差情報又は第2公差情報を入力又は選択して設定した要素に対して、設定された第1公差情報又は第2公差情報の公差域が所定条件を満たす場合に、設定されていない第1公差情報又は第2公差情報の設定を補助する。例えば、見積システム100は、設定された第1公差情報の公差域が所定条件を満たす場合には、第2公差情報の設定が必要であると判断して、第2公差情報の候補をユーザに通知する。また、見積システム100は、設定された第2公差情報の公差域が所定条件を満たす場合には、第1公差情報の設定が必要であると判断して、第2公差情報の候補をユーザに通知する。ここで、ユーザに対する通知は、画面の表示による通知及び音声による通知等を含む。なお、複数種類の公差情報は、一の種類の公差情報と、当該一の種類の公差情報に対して、少なくとも情報の一部が異なっている他の種類の公差情報とを含む。
【0029】
さらに、見積システム100は、設定された第1公差情報の公差域が所定条件を満たす場合には、第2公差情報の設定が必要であると判断して、第2公差情報を自動的に設定してもよい。または、見積システム100は、設定された第2公差情報の公差域が所定条件を満たす場合には、第1公差情報の設定が必要であると判断して、第1公差情報を自動的に設定してもよい。このようにして、見積システム100が複数種類の公差情報(例えば第1公差情報及び第2公差情報)のうちの少なくとも一種の設定を補助するため、設定処理に要する時間を減らして、設計作業を短くすることができる。また、見積システム100が公差情報の設定を補助するため、ユーザによる入力漏れ又は入力間違い等のミスが発生する可能性を低減できる。代替的に、見積システム100は、第1公差情報を入力又は選択して設定した要素に対して、設定されていない第1公差情報の設定を補助してもよい。さらに、見積システム100は、第2公差情報を入力又は選択して設定した要素に対して、設定されていない第2公差情報の設定を補助してもよい。
【0030】
次に、
図3を参照して、見積システム100の制御系の概略構成について説明する。サーバ20は、制御手段としてのサーバ制御部22と、記憶手段としてのサーバメモリ23とを備えている。サーバ制御部22は、所定のプログラムに従って各種の演算処理及び動作制御を実行するプロセッサと、プロセッサの動作に必要な内部メモリと、その他の周辺装置とを組み合わせたコンピュータとして構成されている。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)、又はMPU(Micro-Processing Unit)であり、サーバメモリ23に記憶された制御プログラムに基づいて、装置全体を制御すると共に、各種処理についても統括的に制御する。さらに、サーバ制御部22は、サーバメモリ23に記憶された見積プログラムPGに基づいて、物品の価格の見積りに伴う各種処理を実行する。
【0031】
サーバメモリ23は、プロセッサが動作するためのシステムワークメモリであるRAM(Random Access Memory)、並びにプログラム及びシステムソフトウェアを格納するROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disc Drive)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶装置を含む。ただし、サーバメモリ23は、サーバ20の一部として設けられる例に限らず、サーバ20と協働するデータベースサーバとして設けられてもよい。本実施形態では、CPUが、ROM又はHDDに記憶された制御プログラムに従って、種々の演算、制御、及び判別等の処理動作を実行する。
【0032】
また、サーバメモリ23は、物品の形状データD1と、公差データD2とを記憶している。そして、公差データD2においては、要素に関する複数種類の公差情報が互いに関連付けられている。具体的に、公差データD2においては、第1公差情報と、第2公差情報とが、互いに関連付けられている。さらに、公差データD2においては、複数種類の第1公差情報同士が互いに関連付けられていてもよく、複数種類の第2公差情報同士が互いに関連付けられていてもよい。一例として、公差データD2は、第1公差情報と第2公差情報とが関連付けられたテーブル又はリストである。当該テーブル又はリストは、ユーザが作成してもよい。例えば、ユーザは、補助部26がユーザに通知するか又は自動的に設定する第1公差情報又は第2公差情報の設定対象若しくは値等を予め設定できる。また、テーブル又はリストは、事前に記録された形状データD1に基づいて、サーバ20が作成してもよい。代替的に、公差データD2は、ユーザが予め作成したテーブル又はリストであってもよく、若しくはユーザが過去に設定した第1公差情報及び第2公差情報の履歴に基づいてサーバ20が決定してもよい。さらに、公差データD2は、他の形状データの要素に設定された第1公差情報及び第2公差情報であってもよい。この場合、サーバ20の補助部26は、当該他の形状データを参照して第1公差情報又は第2公差情報を取得する。
【0033】
また、サーバ制御部22には、所定の指令及びデータを入力するキーボード若しくは各種スイッチを含む不図示の操作部が、有線接続又は無線接続されている。また、サーバ制御部22には、サーバ装置の入力状態、設定状態、計測結果、及び各種情報を表示する不図示の表示部が、有線接続又は無線接続されている。なお、サーバ制御部22は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、CF(Compact Flash)カード、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬記録媒体、又はインターネット上のクラウドサーバ等の外部記憶媒体に記憶されたプログラムに従って制御を行うこともできる。
【0034】
見積プログラムPGは、コンピュータを、データ取得手段であるデータ取得部24、判定手段である判定部25、補助手段である補助部26、見積手段である見積部27、及び発注手段である発注部28として機能させる。すなわち、サーバ制御部22は、コンピュータハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって実現される論理的装置として、データ取得部24、判定部25、補助部26、見積部27、及び発注部28を有している。この見積プログラムPGは、コンピュータ読み取り可能な非一時的記憶媒体に記憶させることができる。
【0035】
なお、サーバ制御部22は、上記論理的装置以外にも、クライアント端末40の操作に応じてウェブページの表示の切り替え等を制御する不図示の論理的装置等を有している。また、サーバメモリ23は、ウェブページを表示するために用いられる画像データ、及び製品又は物品の型番、名称若しくは特徴等の情報を含むデータ等の不図示の各種のデータを記録している。
【0036】
データ取得部24は、ユーザがアップロードした物品の形状データD1を、サーバメモリ23から取得する。一例として、ユーザによるアップロードに伴い、サーバ制御部22は、複数の要素から構成される物品の形状データD1をクライアント端末40から受信する。そして、サーバ制御部22は、ユーザがアップロードした形状データD1を、サーバメモリ23に記憶させる。具体的に形状データD1においては、要素(一例として穴又は軸)に対する第2公差情報として、要素に対する公差域クラスが設定されている。または、形状データD1においては、要素に対する第1公差情報が設定されている。代替的に、データ取得部24は、クライアント端末40の端末メモリ44から形状データD1を取得してもよい。
【0037】
判定部25は、形状データD1の少なくとも一つの要素に対して設定されている第1公差情報又は第2公差情報の公差域が所定条件を満たすか否かを判定する。具体的に、要素に対して第1公差情報が設定されている場合、判定部25は、第1公差情報の公差域が所定条件を満たすか否かを判定する。また、要素に対して第2公差情報が設定されている場合、判定部25は、第2公差情報の公差域が所定条件を満たすか否かを判定する。なお、判定部25は、JIS及びISO等の規格によって定められた公差域に基づいて、公差域が所定条件を満たすか否かを判定してもよい。
【0038】
一例として、判定部25は、一つの要素である穴に対して設計原点Oからの距離の公差が設定されている場合に、当該公差の公差域が所定条件を満たすか否かを判定する。また、判定部25は、穴径の公差が設定されている場合に、当該公差の公差域が所定条件を満たすか否かを判定する。例えば、判定部25は、穴の第2公差情報の公差域クラスが「H8」よりも高精度である場合、すなわち公差が「H8」よりも厳しい場合に、第2公差情報の公差域が所定条件を満たすと判断する。さらに他の例として、判定部25は、軸の第2公差情報の公差域クラスが「h8」よりも高精度である場合、すなわち公差が「h8」よりも厳しい場合に、第2公差情報の公差域が所定条件を満たすと判断する。
【0039】
なお、一般的に、高精度を示す第2公差情報又は第1公差情報が設定される要素には、第1公差情報又は第2公差情報が設定される。そのため、判定部25は、当該要素に第2公差情報又は第1公差情報が設定されている場合には、公差域が所定条件を満たすと判定してもよい。例えば、判定部25は、穴に対して第1公差情報が設定されている場合、第1公差情報の公差域が所定条件を満たすと判定してもよい。若しくは、判定部25は、穴に対して第2公差情報が設定されている場合、第2公差情報の公差域が所定条件を満たすと判定してもよい。
【0040】
補助部26は、公差域が所定条件を満たすと判定された場合に、公差データD2に基づいて、物品の要素に対する第1公差情報及び第2公差情報の少なくとも一方の設定を補助する補助処理を行う。具体的に、要素に対して第2公差情報が設定されている場合、補助部26は、判定部25が所定条件を満たすと判定すると、当該要素に対して設定可能な第1公差情報を、ユーザに通知するか又は形状データD1に自動的に設定する。また、要素に対して第1公差情報が設定されている場合、補助部26は、判定部25が所定条件を満たすと判定すると、当該要素に対して設定可能な第2公差情報を、ユーザに通知するか又は形状データD1に自動的に設定する。さらに、補助部26は、要素に対して一の種類の第1公差情報が設定されている場合、判定部25が所定条件を満たすと判定すると、当該要素に対して設定可能な他の種類の第1公差情報を、ユーザに通知するか又は形状データD1に自動的に設定してもよい。また、補助部26は、要素に対して一の種類の第2公差情報が設定されている場合、判定部25が所定条件を満たすと判定すると、当該要素に対して設定可能な他の種類の第2公差情報を、ユーザに通知するか又は形状データD1に自動的に設定してもよい。
【0041】
例えば、補助部26は、設定可能な第1公差情報として、幾何学的基準の対象となる原点又は要素、幾何学的基準からの距離の公差、幾何学的基準の対象となる円筒、及び同軸度を、ユーザに通知するか又は形状データD1に設定する。または、補助部26は、設定可能な第2公差情報として、要素に関する公差域クラスを、ユーザに通知するか又は形状データD1に設定する。特に補助部26は、第1公差情報又は第2公差情報を、サーバ制御部22によってクライアント端末40の表示装置46に表示させる。これによって、補助部26は、第1公差情報又は第2公差情報をユーザに通知する。
【0042】
すなわち、補助部26は、第1公差情報又は第2公差情報の値の候補、若しくは第1公差情報又は第2公差情報の設定対象の候補を、サーバ制御部22によって画面に表示させる。これによって、補助部26は、各候補をユーザに通知する。または、補助部26は、第1公差情報又は第2公差情報の値、若しくは幾何学的基準の設定対象を、要素に関連付けてサーバメモリ23が記憶する形状データD1に含めることによって、自動的な設定を行う。ここで、幾何学的基準の設定対象は、各要素に設定されたユニークな識別情報(例えば要素ID)に基づいて特定できる。
【0043】
発注部28は、形状データD1に対応する物品の発注処理を行う。発注処理において、例えば、発注部28は、物品の型番を特定して、特定した型番に対応する物品を注文するためのウェブページとしての注文画面を作成し、サーバ制御部22が当該注文画面をクライアント端末40の表示装置46に表示させる。そして、ユーザが物品を注文すると、発注部28は、特定された型番と購入数量とを物品の加工業者に送信する。この注文画面の前段階のウェブページである見積画面の一例を
図4に示す。
【0044】
図4は、クライアント端末40の表示装置46に表示される見積画面の一例であり、見積部27が当該見積画面を作成する。この見積画面がクライアント端末40の表示装置46に表示されることにより、見積システム100は、物品の見積情報をクライアント端末40のユーザに提供する。
図4に示すように、見積画面には基本情報タブ11とツリービュータブ12とが含まれている。基本情報タブ11を選択して表示される基本情報ビューには、例えば、材質及び表面処理の方法等の製造に必要な情報と、購入数量とが表示される。
図4の例では、ツリービュータブ12を選択して表示されるツリービュー13が図示されている。ツリービュー13には、例えば、物品の外形寸法と、物品の各面(上面、底面、正面、背面、左面及び右面)毎の加工内容が表示される。なお、
図4は参考図であり、ツリービュー13に示された寸法等の情報は、本実施形態に係る物品Aに対して設定された情報とは異なるものである。
【0045】
図4の例では、物品Aの外形寸法を示す情報として、X方向の寸法「100mm」と、Y方向の寸法「60mm」と、Z方向の寸法「20mm」が表示されている。また、物品Aの上面(Top)にJIS規格で定められた「M10」に対応するタップ穴が四個所に加工されることを示す情報として、「4×M10」が表示されている。また、Y方向における幅が30mmである長穴が加工されることを示す情報として、「Y 30mm」が表示されている。また、一個の物品Aの価格として「4,980円」が表示されている。さらに、出荷までに要する実働日の日数として「6日間」が表示されている。
【0046】
また、見積画面の下部には、見積もりの確定ボタン14が表示されており、ユーザが当該確定ボタン14を選択すると確定ボタン14の下方に合計金額、出荷日、及び出荷までに要する実働日の日数が表示される。このとき、物品の価格に購入数量を乗じて得られた金額が、合計金額として見積画面に表示される。さらに、表示されている物品に対応する型番が、型番欄15に表示される。また、確定ボタン14の下方には、印刷ボタン16が表示されており、ユーザが当該印刷ボタン16を選択すると見積結果を印刷することができる。さらに、印刷ボタン16に並んで、出力ボタン17と注文ボタン18とが表示されている。
【0047】
ユーザが出力ボタン17を選択すると、注文リストの電子データを出力することができる。また、ユーザが注文ボタン18を選択すると、注文を行うための注文画面(不図示)が、クライアント端末40の表示装置46に表示される。ユーザは、当該注文画面において、型番によって特定される物品を注文することができる。ユーザが物品を注文すると、発注部28は、特定された型番と購入数量とを物品の加工業者に送信する。さらに発注部28は、加工業者に物品の配送指示を送信する処理、及びユーザに購入代金を請求する処理を実行してもよい。代替的に、見積画面においてユーザが注文ボタン18を選択すると、発注部28は、更なる操作画面を表示させずに特定された型番と購入数量とを物品の加工業者に送信してもよい。
【0048】
図3に戻って、クライアント端末40の構成について説明する。クライアント端末40は、クライアント端末40を制御する端末制御部45と、制御プログラムを記憶した端末メモリ44とを備えている。当該端末制御部45は、所定のプログラムに従って各種の演算処理及び動作制御を実行するプロセッサと、その他の周辺装置とを組み合わせたコンピュータである。また、クライアント端末40は、表示装置46及び入力装置47を備えている。
【0049】
一例として、端末制御部45のプロセッサは、例えばCPU、又はMPUであり、端末メモリ44に記憶された制御プログラムに基づいて、装置全体を制御すると共に、各種処理についても統括的に制御する。また、端末メモリ44は、プロセッサが動作するためのシステムワークメモリであるRAM、並びにプログラム及びシステムソフトウェアを格納するROM、HDD及びSSD等の記憶装置を含む。本実施形態では、CPUが、ROM又はHDDに記憶された制御プログラムに従って、種々の演算、制御、及び判別等の処理動作を実行する。また、端末制御部45は、CD、DVD、CFカード、及びUSBメモリ等の可搬記録媒体、又はインターネット上のクラウドサーバ等の外部記憶媒体に記憶されたプログラムに従って制御を行うこともできる。
【0050】
端末メモリ44は、ハードディスク及び半導体記憶装置等の不揮発性記憶媒体(コンピュータ読み取り可能な非一時的記憶媒体)を含んだ外部記憶装置である。さらに、端末メモリ44は、制御プログラムに加えて、CADソフト等の形状データD1を作成するための設計プログラム、及びウェブブラウザ等の各種プログラムを記憶している。
【0051】
入力装置47は、キーボード、テンキー及びタッチパネル等であり、ユーザは入力装置47を用いて形状データD1を作成又は変更する。そして、入力装置47を用いて作成された形状データD1は、端末メモリ44に記録される。また、サーバ20から形状データD1に対応する物品画像を受信すると、表示装置46が物品画像を表示する。さらに、表示装置46は、設定画面、見積画面及び注文画面等のウェブページを表示させる。ユーザは、表示装置46に表示されたウェブページに従って物品を注文する。
【0052】
続いて、
図5及び
図6を参照して、第1実施形態における設計処理について説明する。この設計処理は、形状データD1のアップロードから発注処理までに行われる各処理を含む。まず、ユーザがクライアント端末40から形状データD1をアップロードすると、サーバ20のサーバ制御部22は、形状データD1をサーバメモリ23に記憶させる。そして、サーバ制御部22は、クライアント端末40の表示装置46に、物品画像を表示するウェブページである設定画面を表示させる。ユーザは、クライアント端末40の表示装置46に表示される設定画面において、穴情報等の各種情報を入力して設定する。当該設定画面の一例を
図6A,B、Cに示す。
【0053】
例えば、
図6Aに示す設定画面において、サーバ制御部22は、要素である穴71Aに設定されている個数及び穴径を形状データD1から取得して表示させている。ユーザが設定対象の穴71Aを選択すると、サーバ制御部22は、穴情報指示画面81をポップアップ表示させる。そして、ユーザは、穴情報指示画面81において穴情報を選択して入力する。具体的に、ユーザは、タップ加工されない穴タイプである「ストレート」を選択している。また、ユーザは、穴径の公差タイプとして、位置決めピン61などの他の部材と穴とがはめ合う場合の公差である「はめ合い公差」を選択している。さらに、ユーザは、第2公差情報として、穴の公差域クラスである「H7」を選択している。穴情報指示画面81においてユーザが穴71Aに対して入力された穴情報は、穴71Bに対しても設定される。代替的に、ユーザは、穴71Bを選択して、穴情報の選択及び入力を実行してもよい。例えば、穴71Aと同様に、ユーザは、穴71Bを選択すると表示される穴情報指示画面81において、穴71Bに対する穴情報を選択して入力してもよい。なお、
図6Aにおいては、穴71Bが穴情報指示画面81の下に隠れている。
【0054】
また、ユーザは、精度穴71Aの有効深さとして、加工対象である物品全体の長さ(例えば20mm)に対応する「全長」を選択している。さらに、ユーザは、精度穴71Aの内面の表面粗さとして、算術平均粗さである「Ra1.6」を選択している。また、各種情報の選択欄の下方には、更新ボタンとキャンセルボタンとが表示されている。ユーザが更新ボタンを選択すると、サーバ制御部22は、選択された各種情報を形状データD1に設定する。一方、ユーザがキャンセルボタンを選択すると、サーバ制御部22は穴情報指示画面81を消す。
【0055】
サーバ制御部22は、各種情報が含められるように形状データD1を変更してサーバメモリ23に記憶させる。そして、データ取得部24は、各種情報が設定された形状データD1をサーバメモリ23から取得する。ここで、第2公差情報が高精度を示す精度穴71Aにおいては、一般的に第1公差情報が設定される。そこで、第1公差情報の設定を補助するための補助処理が行われる。そのために、サーバメモリ23は、穴の位置に関する第1公差情報と穴の寸法に関する第2公差情報とが互いに関連付けられた公差データD2を記憶している。また、サーバ20の判定部25は、形状データD1の精度穴71Aに対して設定されている公差域が所定条件を満たすか否かを判定する。
図6Aの例では、精度穴71Aに対して、高精度の公差域クラスである「H7」が設定されている。そのため、判定部25は、精度穴71Aの公差域が所定条件を満たし、第1公差情報の設定が必要であると判定する。
【0056】
公差域が所定条件を満たすと判定された場合に、サーバ20の補助部26は、公差データD2に基づいて第1公差情報の設定を補助する補助処理を行う。
図6Bの例では、補助部26が、補助処理として、精度穴71A,71Bに対して設定可能な第1公差情報をユーザに通知している。すなわち、補助部26は、設定可能な第1公差情報として、公差の値の値候補と、基準の設定対象の候補である位置候補とを、サーバ制御部22によって設定画面に表示させている。例えば、補助部26は、公差データD2から、第2公差情報である公差域クラス「H7」に関連付けられた第1公差情報を取得する。そして、補助部26は、得られた第1公差情報を位置候補及び値候補として、サーバ制御部22によって表示装置46に表示させる。なお、
図6Bの例では、精度穴71Aに設定される穴情報が精度穴71Bにも設定されているため、精度穴71Bに対する候補も表示されている。代替的に、補助部26は、精度穴71A,71Bのいずれかの候補のみを、サーバ制御部22によって表示させてもよい。
【0057】
ここで、第1公差情報における基準は、形状データD1に設定された原点である設計原点Oと、要素である精度穴71Aとは異なる他の要素である精度穴71Bとの少なくとも一方である。
図6Bの例においては、公差データD2においては、第2公差情報「H7」に対応する第1公差情報として、設計原点Oを基準とする四つの距離と、精度穴71Bを基準とする二つの距離と、それぞれの距離の公差の値とが、第2公差情報に関連付けられている。そこで、補助部26は、設計原点Oを基準とする位置候補として、二点鎖線で示す四つの候補を、サーバ制御部22によって表示させている。また、補助部26は、他の要素である精度穴71Bを基準とする位置候補として、一点鎖線で示す二つの候補を、サーバ制御部22によって表示させている。さらに、補助部26は、それぞれの値候補としてプラスマイナス「0.02」を、サーバ制御部22によって表示させている。
【0058】
そして、ユーザは、位置候補及び値候補の中から、所望の候補を選択する。例えば、ユーザは、カーソルを所望の候補に合わせてクリックすることによって、各候補を選択することができる。サーバ制御部22は、選択された候補を形状データD1に設定して、設定した第1公差情報を表示装置46に表示させる。
図6Cは、ユーザが、設計原点Oを基準とする位置候補を選択し、かつプラスマイナス「0.02」の値候補を選択した例を示している。なお、ユーザは、所望の候補が無い場合には、公差の基準を変更できる。例えば、ユーザは、設計原点Oをクリックしてその位置を変更できる。さらに、ユーザは、所望の公差の値が無い場合、表示されている値候補を変更して公差値を入力できる。
【0059】
なお、
図6Aでは、各種情報をユーザが選択可能なように、穴の種類、穴径公差タイプ、公差選択、有効深さ、及び表面粗さの選択欄が表示されている。また、
図6Bでは、各種情報をユーザが選択可能なように、複数の位置候補及び値候補が表示されている。ただし、
図6A及びBにおいては、ユーザが各種情報を入力する入力欄を表示してもよい。さらに、補助部26は、複数の候補(例えば、複数の値候補)が存在する場合、いずれかの候補を選択できるように、サーバ制御部22によって候補を表示装置46に表示させる。例えば、対応する候補が複数存在する場合、補助部26は、複数の候補の中から少なくとも一つを、サーバ制御部22によって表示させる。また、補助部26は、複数の候補の全てをサーバ制御部22によって表示させてもよく、ドロップダウンメニューの形式で複数の候補をサーバ制御部22によって表示させてもよい。なお、補助部26は、対応する候補が存在しない場合に、第1公差情報又は第2公差情報の入力欄をサーバ制御部22によって表示させてもよい。
【0060】
また、
図6A,B,Cには、精度穴以外の穴72に対して、JIS規格で定められた「M5」に対応するタップ穴が四個所に加工されることを示す情報として、「4×M5」の文字列と、有効深さが10mmであることを示す情報とが表示されている。さらに、
図6A,B,Cには、物品AのX方向寸法が100mmであり、かつ物品AのY方向寸法が60mmであることを示す情報が表示されている。
【0061】
図5に戻ってさらに説明すると、サーバ制御部22が表示装置46に設定画面(
図6A)を表示させてユーザが第2公差情報を選択して入力すると、データ取得部24は形状データD1を取得する。そして、補助部26は、公差データD2に基づいて、要素である穴に対する第1公差情報の設定を補助する補助処理として、第1公差情報の候補をユーザに通知する(
図6B)。続いて、ユーザが第1公差情報を選択すると、サーバ制御部22は、選択された各種情報を形状データD1に設定する。そして、サーバ制御部22は、設定した第1公差情報をユーザに通知するために、表示装置46に表示させる。その後、ユーザは、表示された内容を確認して、見積もりを確定する。これを受けて、サーバ制御部22は、型番、出荷日、及び実働日等の見積確定情報を表示装置46に表示させる。そして、ユーザが注文ボタン18を選択して注文に進むと、サーバ20の発注部28が発注処理を行い、サーバ制御部22は注文画面を表示装置46に表示させる。そして、ユーザが物品を注文すると、発注部28は、特定された型番と購入数量とを物品の加工業者に送信する。
【0062】
以上説明した第1実施形態によれば、ユーザに対して設定可能な公差情報の候補を通知することができる。そのため、ユーザによる入力処理の時間を短縮して、物品の見積りに伴う設計処理に要する処理時間を短くすることができる。さらに、設定可能な公差情報の候補が自動的にユーザに通知されるので、公差情報の設定に伴うミスの発生を抑制できる。
【0063】
[変形形態]
変形形態の一例として、補助部26は、要素に対して設定可能な第1公差情報を形状データD1に自動的に設定してもよい。この場合、公差域が所定条件を満たすと判定されると、補助部26は、公差データD2に基づく補助処理として、精度穴71A,71Bに対して設定可能な第1公差情報の中からいずれかを選択する。一例として、補助部26は、ユーザがアップロードした過去の形状データ、又はユーザの公差設定履歴を公差データD2として参照する。そして、補助部26は、設定可能な第1公差情報の中から最も近い時期に設定された第1公差情報を選択する。または、補助部26は、ユーザがアップロードした過去の形状データ、又はユーザの公差設定履歴を公差データD2として参照する。そして、補助部26は、設定可能な第1公差情報の中から最も多く用いられた第1公差情報を選択する。
【0064】
そして、補助部26は、
図6Bに示すような候補を、サーバ制御部22によって表示させずに、
図6Cに示すように選択した第1公差情報を形状データD1に設定する。さらに、補助部26は、設定した第1公差情報を、サーバ制御部22によって表示装置46に表示させる。ユーザは、所望の第1公差情報でない場合、表示されている第1公差情報を変更できる。これにより、ユーザが設定可能な公差情報を自動的に設定することができる。そのため、ユーザによる入力処理の時間を短縮して、物品の見積りに伴う設計処理に要する処理時間を短くすることができる。さらに、設定可能な公差情報が自動的に設定されるので、公差情報の設定に伴うミスの発生を抑制できる。
【0065】
変形形態の他の例として、補助部26は、要素に対して設定可能な第1公差情報及び第2公差情報の両方をユーザに通知又は形状データD1に自動的に設定してもよい。例えば、ユーザは、材質及び穴径に対応する第1公差情報及び第2公差情報が互いに関連付けられた公差データD2を、予め作成する。当該公差データは、さらに穴の種類、穴径の公差タイプ、有効深さ、及び表面粗さを含んでいてもよい。一例として、ユーザは、下記表1に記載のように公差データD2を作成する。
【0066】
【0067】
補助部26は、公差データD2に設定された材質及び穴径を含む穴が設定された形状データD1がアップロードされると、補助処理を行う。この場合、補助部26は、公差データD2に基づく補助処理として、穴に対して予め定められた第1公差情報及び第2公差情報を特定する。そして、補助部26は、特定した第1公差情報及び第2公差情報を候補として、
図6Bに示す態様と同様に、サーバ制御部22によって表示装置46に表示させる。その後、ユーザは、位置候補及び値候補の中から、所望の候補を選択する。サーバ制御部22は、選択された候補を形状データD1に設定して、設定した第1公差情報及び第2公差情報を表示装置46に表示させる。
【0068】
代替的に、補助部26は、
図6Bに示すような候補を、サーバ制御部22によって表示させずに、
図6Cに示すように特定した第1公差情報及び第2公差情報を形状データD1に自動的に設定してもよい。この場合、補助部26は、設定した第1公差情報をサーバ制御部22によって表示装置46に表示させる。ユーザは、所望の第1公差情報及び第2公差情報でない場合、表示されている第1公差情報及び第2公差情報を変更できる。さらに、補助部26は、ユーザがアップロードした過去の形状データ、又はユーザの公差設定履歴を公差データD2として参照して、第1公差情報及び第2公差情報の両方をユーザに通知又は形状データD1に自動的に設定してもよい。
【0069】
これにより、ユーザが形状データD1をアップロードするのみで、設定可能な公差情報をユーザに通知又は自動的に設定することができる。そのため、ユーザによる入力処理の時間を短縮して、物品の見積りに伴う設計処理に要する処理時間を短くすることができる。さらに、設定可能な公差情報がユーザに通知又は自動的に設定されるので、公差情報の設定に伴うミスの発生を抑制できる。
【0070】
変形形態のさらに他の例を、
図7A,B,Cを参照して説明する。
図7A,B,Cの例では、ユーザが穴71A,71Bに対して第1公差情報を入力している。まず、サーバ制御部22は、クライアント端末40の表示装置46に設定画面を表示させる。そして、ユーザは、設定画面において、第1公差情報を入力して設定する。
【0071】
例えば、
図7Aに示す、クライアント端末40の表示装置46に表示される設定画面において、サーバ制御部22は、穴71Aに設定されている個数及び穴径を形状データD1から取得して表示させている。ユーザが設定対象の穴71Aを選択すると、サーバ制御部22は、第1公差情報指示画面82をポップアップ表示させる。そして、ユーザは、第1公差情報指示画面82において第1公差情報を選択して入力する。具体的に、ユーザは、プラス0.02mmからマイナス0.02mmの範囲を入力している。すなわち、ユーザは、設計原点Oを基準とする穴71Aの第1公差情報として、プラス0.02mmからマイナス0.02mmの範囲を選択している。
【0072】
ユーザが第1公差情報を選択すると、サーバ制御部22は、第1公差情報が含められるように形状データD1を変更してサーバメモリ23に記憶させる。さらに、サーバ制御部22は、
図7Bに示すように、入力された第1公差情報を表示装置46に表示させる。そして、データ取得部24は、第1公差情報が設定された形状データD1をサーバメモリ23から取得する。ここで、第1公差情報が設定された穴においては、一般的に第2公差情報が設定される。そこで、第2公差情報の設定を補助するための補助処理が行われる。そのために、判定部25は、公差域が所定条件を満たすか否かを判定する。
【0073】
具体的に、判定部25は、第1公差情報が設定された場合には、公差域が所定条件を満たすと判定する。代替的に、判定部25は、所定値より小さい公差値が設定されているか否かを判定してもよい。
図7Bの例では、穴71Aに対して第1公差情報が設定されている。そのため、判定部25は、穴71Aの公差域が所定条件を満たし、第2公差情報の設定が必要であると判定する。
【0074】
公差域が所定条件を満たすと判定された場合に、補助部26は、公差データD2に基づいて第2公差情報の設定を補助する補助処理を行う。そのために、サーバ制御部22は、穴情報指示画面81をポップアップ表示させる。そして、
図7Bに示すように、補助部26が、補助処理として、穴71Aに対して設定可能な第2公差情報「H7」をユーザに通知する。表示された穴情報指示画面81において、ユーザは、上述した内容と同様に穴情報及び第2公差情報を選択する。そして、ユーザが更新ボタンを選択すると、サーバ制御部22は、各種情報が含められるように形状データD1を変更してサーバメモリ23に記憶させる。
【0075】
サーバ制御部22は、選択された穴情報及び第2公差情報を表示装置46に表示させる。
図7Cは、ユーザが、第2公差情報「H7」を選択した例を示している。さらに、ユーザは、所望の第2公差情報が無い場合、表示されている値候補を変更して公差値を入力できる。その後、ユーザは、精度穴71Aと同様に、精度穴71Bの第1公差情報を入力して、第2公差情報を選択して設定する。なお、補助部26は、精度穴71Aに対して設定された第2公差情報を、精度穴71Bの第2公差情報としてユーザに通知してもよい。
【0076】
代替的に、補助部26は、要素に対して設定可能な第2公差情報を形状データD1に自動的に設定してもよい。この場合、公差域が所定条件を満たすと判定されると、補助部26は、公差データD2に基づく補助処理として、穴71A,71Bに対して設定可能な第2公差情報の中からいずれかを選択する。そして、補助部26は、
図7Bに示すような候補をサーバ制御部22によって表示させずに、
図7Cに示す態様と同様に、選択した第2公差情報を形状データD1に設定する。さらに、補助部26は、設定した第2公差情報をサーバ制御部22によって表示装置46に表示させる。ユーザは、所望の第2公差情報でない場合、表示されている第2公差情報を変更できる。
【0077】
これにより、ユーザが設定可能な公差情報をユーザに通知又は自動的に設定することができる。そのため、ユーザによる入力処理の時間を短縮して、物品の見積りに伴う設計処理に要する処理時間を短くすることができる。さらに、設定可能な公差情報がユーザに通知又は自動的に設定されるので、公差情報の設定に伴うミスの発生を抑制できる。なお、
図7A,B,Cにおいては、穴71Aに対してX方向の第1公差情報のみが設定されているが、ユーザはY方向の第1公差情報も選択して入力できる。
【0078】
[第2実施形態]
図8及び
図9を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態は、物品の要素として長穴(長丸穴)が含まれる点において、第1実施形態と異なる。当該長穴(以下精度長穴ともいう)は、加工に高精度を要する要素である。なお、第2実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、既に説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0079】
ユーザがクライアント端末40から長穴73を含む物品の形状データD1をアップロードすると、サーバ制御部22は、形状データD1をサーバメモリ23に記憶させる。そして、サーバ制御部22は、表示装置46に設定画面を表示させる。ユーザは、設定画面において、長穴情報等の各種情報を入力して設定する。当該設定画面の一例を
図8A,B、Cに示す。
【0080】
例えば、
図8Aに示す、クライアント端末40の表示装置46に表示される設定画面において、サーバ制御部22は、長穴73に設定されている長手方向における長さ、すなわち両端の円弧の中心間距離14mmを形状データD1から取得して表示させている。また、サーバ制御部22は、短手方向における幅7mmを形状データD1から取得して表示させている。ユーザが設定対象の長穴73を選択すると、サーバ制御部22は、長穴情報指示画面83をポップアップ表示させる。なお、長穴73には、長穴の寸法を特定する他の情報が設定されていてもよい。一例として、当該他の情報は、長穴の外寸又は長穴の両端の円弧の半径を示す情報を含む。
【0081】
そして、ユーザは、長穴情報指示画面83において長穴情報を選択して入力する。具体的に、ユーザは、長穴幅の公差タイプとして、位置決めピン61などの他の部材と長穴とがはめ合う場合の公差である「はめ合い公差」を選択している。さらに、ユーザは、長穴73の公差として、公差域クラスである「H7」を選択している。また、ユーザは、長穴73の内面の表面粗さとして、算術平均粗さである「Ra1.6」を選択している。また、各種情報の選択欄の下方には、更新ボタンとキャンセルボタンとが表示されている。ユーザが更新ボタンを選択すると、サーバ制御部22は、選択された各種情報を形状データD1に設定する。一方、ユーザがキャンセルボタンを選択すると、サーバ制御部22は長穴情報指示画面83を消す。
【0082】
ユーザが長穴情報を選択して入力すると、サーバ制御部22は、各種情報が含められるように形状データD1を変更してサーバメモリ23に記憶させる。そして、データ取得部24は、各種情報が設定された形状データD1をサーバメモリ23から取得する。ここで、第2公差情報が高精度を示す精度長穴73においては、一般的に第1公差情報が設定される。そこで、第1公差情報の設定を補助するための補助処理が行われる。そのために、サーバメモリ23は、長穴の位置に関する第1公差情報と長穴の寸法に関する第2公差情報とが互いに関連付けられた公差データD2を記憶している。また、判定部25は、形状データD1の精度長穴73に対して設定されている公差域が所定条件を満たすか否かを判定する。
図8Aの例では、精度長穴73に対して、高精度の公差域クラスである「H7」が設定されている。そのため、判定部25は、精度長穴73の公差域が所定条件を満たし、第1公差情報の設定が必要であると判定する。
【0083】
公差域が所定条件を満たすと判定された場合に、補助部26は、公差データD2に基づいて第1公差情報の設定を補助する補助処理を行う。
図8Bの例では、補助部26が、補助処理として、精度長穴73に対して設定可能な第1公差情報をユーザに通知している。すなわち、補助部26は、設定可能な第1公差情報として、公差値の値候補と、基準の設定対象の候補である位置候補とを、サーバ制御部22によって設定画面に表示させている。例えば、補助部26は、公差データD2から、第2公差情報である公差域クラス「H7」に関連付けられた第1公差情報を取得する。そして、補助部26は、得られた第1公差情報を位置候補及び値候補として、サーバ制御部22によって表示装置46に表示させる。
【0084】
ここで、第1公差情報における基準は、形状データD1に設定された原点である設計原点Oと、要素である精度長穴73とは異なる他の要素である精度穴74との少なくとも一方である。
図8Bの例においては、公差データD2において、第2公差情報「H7」に対応する第1公差情報として、設計原点Oを基準とする二つの距離と、精度穴74の一方を基準とする二つの距離と、それぞれの距離の公差の値とが、第2公差情報に関連付けられている。そこで、補助部26は、設計原点Oを基準とする位置候補として、二点鎖線で示す二つの候補を、サーバ制御部22によって表示させている。また、補助部26は、他の要素である精度穴74の一方を基準とする位置候補として、一点鎖線で示す二つの候補を、サーバ制御部22によって表示させている。さらに、補助部26は、それぞれの値候補としてプラスマイナス「0.02」を、サーバ制御部22によって表示させている。
【0085】
そして、ユーザは、位置候補及び値候補の中から、所望の候補を選択する。サーバ制御部22は、選択された候補を形状データD1に設定して、設定した第1公差情報を表示装置46に表示させる。
図8Cは、ユーザが、設計原点Oを基準とする位置候補を選択し、プラスマイナス「0.02」の値候補を選択した例を示している。続いて、ユーザは、第1実施形態で説明したように、精度穴74に対して第1公差情報を入力して設定する。
【0086】
また、
図8A,B,Cには、精度長穴及び精度穴以外の穴75に対して、穴径6mmの穴が四個所に加工されることを示す情報として、「4×φ6」が表示されている。さらに、
図8A,B,Cには、物品AのX方向寸法が150mmであり、かつ物品AのY方向寸法が75mmであることを示す情報が表示されている。
【0087】
以上説明した第2実施形態によれば、ユーザに対して設定可能な公差情報の候補を通知することができる。そのため、ユーザによる入力処理の時間を短縮して、物品の見積りに伴う設計処理に要する処理時間を短くすることができる。さらに、設定可能な公差情報の候補が自動的にユーザに通知されるので、公差情報の設定に伴うミスの発生を抑制できる。
【0088】
[変形形態]
変形形態の一例として、補助部26は、要素に対して設定可能な第1公差情報を形状データD1に自動的に設定してもよい。この場合、公差域が所定条件を満たすと判定されると、補助部26は、公差データD2に基づく補助処理として、精度長穴73に対して設定可能な第1公差情報の中からいずれかを選択する。そして、補助部26は、
図8Bに示すような候補をサーバ制御部22によって表示させずに、
図8Cに示すように選択した第1公差情報を形状データD1に設定する。さらに、補助部26は、設定した第1公差情報を、サーバ制御部22によって表示装置46に表示させる。これにより、ユーザが設定可能な公差情報を自動的に設定することができる。そのため、ユーザによる入力処理の時間を短縮して、物品の見積りに伴う設計処理に要する処理時間を短くすることができる。さらに、設定可能な公差情報が自動的に設定されるので、公差情報の設定に伴うミスの発生を抑制できる。
【0089】
変形形態の他の例として、補助部26は、要素に対して設定可能な第1公差情報及び第2公差情報の両方をユーザに通知又は形状データD1に自動的に設定してもよい。例えば、ユーザは、材質と、長穴の長さ及び幅とに対応する第1公差情報及び第2公差情報が互いに関連付けられた公差データD2を、予め作成する。補助部26は、公差データD2に設定された材質と、長さ及び幅とを含む長穴が設定された形状データD1がアップロードされると、補助処理を行う。この場合、補助部26は、公差データD2に基づく補助処理として、長穴に対して予め定められた第1公差情報及び第2公差情報を特定する。そして、補助部26は、特定した第1公差情報及び第2公差情報を候補として、
図8Bに示す態様と同様に、サーバ制御部22によって表示装置46に表示させる。その後、ユーザは、位置候補及び値候補の中から、所望の候補を選択する。サーバ制御部22は、選択された候補を形状データD1に設定して、設定した第1公差情報及び第2公差情報を表示装置46に表示させる。
【0090】
代替的に、補助部26は、
図8Bに示すような候補を、サーバ制御部22によって表示させずに、
図8Cに示すように特定した第1公差情報及び第2公差情報を形状データD1に自動的に設定してもよい。この場合、補助部26は、設定した第1公差情報を、サーバ制御部22によって表示装置46に表示させる。ユーザは、所望の第1公差情報及び第2公差情報でない場合、表示されている第1公差情報及び第2公差情報を変更できる。これにより、ユーザが形状データD1をアップロードするのみで、設定可能な公差情報をユーザに通知又は自動的に設定することができる。そのため、ユーザによる入力処理の時間を短縮して、物品の見積りに伴う設計処理に要する処理時間を短くすることができる。さらに、設定可能な公差情報がユーザに通知又は自動的に設定されるので、公差情報の設定に伴うミスの発生を抑制できる。
【0091】
変形形態のさらに他の例を、
図9A,B,Cを参照して説明する。
図9A,B,Cの例では、ユーザが長穴73に対して第1公差情報を入力している。まず、サーバ制御部22は、クライアント端末40の表示装置46に設定画面を表示させる。そして、ユーザは、設定画面において、第1公差情報を入力して設定する。
【0092】
例えば、
図9Aに示す、クライアント端末40の表示装置46に表示される設定画面において、サーバ制御部22は、長穴73に設定されている長さ及び幅を形状データD1から取得して表示させている。ユーザが設定対象の長穴73を選択すると、サーバ制御部22は、第1公差情報指示画面82をポップアップ表示させる。そして、ユーザは、第1公差情報指示画面82において第1公差情報を選択して入力する。具体的に、ユーザは、プラス0.02mmからマイナス0.02mmの範囲を入力している。すなわち、ユーザは、設計原点Oを基準とする長穴73の第1公差情報として、プラス0.02mmからマイナス0.02mmの範囲を入力している。
【0093】
ユーザが第1公差情報を選択して入力すると、サーバ制御部22は、第1公差情報が含められるように形状データD1を変更してサーバメモリ23に記憶させる。さらに、サーバ制御部22は、入力された第1公差情報を、
図9Bに示すように表示装置46に表示させる。そして、データ取得部24は、第1公差情報が設定された形状データD1をサーバメモリ23から取得する。ここで、第1公差情報が設定された長穴においては、一般的に第2公差情報が設定される。そこで、第2公差情報の設定を補助するための補助処理が行われる。そのために、判定部25は、公差域が所定条件を満たすか否かを判定する。
【0094】
具体的に、判定部25は、第1公差情報が設定された場合には、公差域が所定条件を満たすと判定する。代替的に、判定部25は、所定値より小さい公差値が設定されているか否かを判定してもよい。
図9Bの例では、長穴73に対して第1公差情報が設定されている。そのため、判定部25は、長穴73の公差域が所定条件を満たし、第2公差情報の設定が必要であると判定する。
【0095】
公差域が所定条件を満たすと判定された場合に、補助部26は、公差データD2に基づいて第2公差情報の設定を補助する補助処理を行う。そのために、サーバ制御部22は、長穴情報指示画面83をポップアップ表示させる。そして、
図9Bに示すように、補助部26が、補助処理として、長穴73に対して設定可能な第2公差情報「H7」をユーザに通知する。表示された長穴情報指示画面83において、ユーザは、上述した内容と同様に長穴情報及び第2公差情報を選択する。そして、ユーザが更新ボタンを選択すると、サーバ制御部22は、各種情報が含められるように形状データD1を変更してサーバメモリ23に記憶させる。サーバ制御部22は、選択された長穴情報及び第2公差情報を表示装置46に表示させる。
図9Cは、ユーザが、第2公差情報「H7」を選択した例を示している。さらに、ユーザは、所望の第2公差情報が無い場合、表示されている値候補を変更して公差値を入力できる。
【0096】
代替的に、補助部26は、要素に対して設定可能な第2公差情報を形状データD1に自動的に設定してもよい。この場合、公差域が所定条件を満たすと判定されると、補助部26は、公差データD2に基づく補助処理として、長穴73に対して設定可能な第2公差情報の中からいずれかを選択する。そして、補助部26は、
図9Bに示すような候補を、サーバ制御部22によって表示させずに、
図9Cに示すように選択した第2公差情報を形状データD1に設定する。さらに、補助部26は、設定した第2公差情報を、サーバ制御部22によって表示装置46に表示させる。ユーザは、所望の第2公差情報でない場合、表示されている第2公差情報を変更できる。
【0097】
これにより、ユーザが設定可能な公差情報をユーザに通知又は自動的に設定することができる。そのため、ユーザによる入力処理の時間を短縮して、物品の見積りに伴う設計処理に要する処理時間を短くすることができる。さらに、設定可能な公差情報がユーザに通知又は自動的に設定されるので、公差情報の設定に伴うミスの発生を抑制できる。なお、
図9A,B,Cにおいては、長穴73に対してX方向の第1公差情報のみが設定されているが、ユーザはY方向の第1公差情報も選択して入力できる。
【0098】
[第3実施形態]
図10及び
図11を参照して第3実施形態について説明する。第3実施形態は、物品の要素として軸が含まれる点において、第1及び第2実施形態と異なる。当該軸は、加工に高精度を要する要素である。なお、第3実施形態の説明においては、第1及び第2実施形態との相違点について説明し、既に説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0099】
ユーザがクライアント端末40から軸76を含む物品の形状データD1をアップロードすると、サーバ制御部22は、形状データD1をサーバメモリ23に記憶させる。そして、サーバ制御部22は、表示装置46に設定画面を表示させる。ユーザは、設定画面において、軸情報等の各種情報を入力して設定する。当該設定画面の一例を
図10A,B、Cに示す。
【0100】
例えば、
図10Aに示す設定画面において、サーバ制御部22は、軸76に設定されている小径部の軸径8mmと、大径部の軸径12mmとを形状データD1から取得して表示させている。なお、軸76には、軸の寸法を特定する他の情報が設定されていてもよい。当該他の情報は、一例として、小径部の長さ及び大径部の長さを示す情報を含む。ユーザが設定対象の軸76を選択すると、サーバ制御部22は、小径部の軸情報指示画面84Aと、大径部の軸情報指示画面84Bをポップアップ表示させる。
【0101】
そして、ユーザは、軸情報指示画面84A,84Bにおいて軸情報を選択して入力する。具体的に、ユーザは、軸76の小径部の第2公差情報として、軸の公差域クラスである「h7」を選択している。また、ユーザは、軸76の大径部の第2公差情報として、マイナス0.05mmからマイナス0.15mmの範囲を選択している。また、各種情報の選択欄の下方には、更新ボタンとキャンセルボタンとが表示されている。ユーザが更新ボタンを選択すると、サーバ制御部22は、選択された各種情報を形状データD1に設定する。一方、ユーザがキャンセルボタンを選択すると、サーバ制御部22は軸情報指示画面84A,84Bを消す。
【0102】
ユーザが軸情報を選択して入力すると、サーバ制御部22は、各種情報が含められるように形状データD1を変更してサーバメモリ23に記憶させる。そして、データ取得部24は、各種情報が設定された形状データD1をサーバメモリ23から取得する。ここで、第2公差情報が高精度を示す軸76においては、一般的に第1公差情報が設定される。そこで、第1公差情報の設定を補助するための補助処理が行われる。そのために、サーバメモリ23は、軸の位置に関する第1公差情報と、当該第1公差情報に対する第2公差情報とが互いに関連付けられた公差データD2を記憶している。
【0103】
一例として、幾何学的基準は、小径部又は大径部の中心軸、又は小径部又は大径部の円中心とすることができる。幾何学的基準が中心軸である場合には、第1公差情報は、基準となる中心軸の軸線から要素の中心軸までの距離の公差、例えば同軸度を含んでいる。また、幾何学的基準が円中心である場合には、第1公差情報は、当該円中心にある中心軸を中心点とする円内における、基準となる中心軸から要素の中心軸までの距離の公差、例えば同心度を含んでいる。以下の例では、幾何学的基準が小径部の中心軸である場合について説明する。
【0104】
判定部25は、形状データD1の軸76に対して設定されている公差域が所定条件を満たすか否かを判定する。
図10Aの例では、軸76の小径部に対して、高精度の公差域クラスである「h7」が設定されている。また、軸76の大径部に対しても、高精度の公差域であるマイナス0.05mmからマイナス0.15mmの範囲が設定されている。そのため、判定部25は、軸76の公差域が所定条件を満たし、第1公差情報の設定が必要であると判定する。なお、判定部25は、軸76に対して、公差域クラス及び軸径の公差の少なくとも一方が設定されている場合に、公差域が所定条件を満たすと判定してもよい。
【0105】
公差域が所定条件を満たすと判定された場合に、補助部26は、公差データD2に基づいて第1公差情報の設定を補助する補助処理を行う。
図10Bの例では、補助部26が、補助処理として、軸76に対して設定可能な第1公差情報をユーザに通知している。すなわち、補助部26は、設定可能な第1公差情報として、同軸度の値の値候補と、幾何学的基準(以下、データムともいう)の位置候補とを、サーバ制御部22によって設定画面に表示させている。例えば、補助部26は、公差データD2から、第2公差情報である公差域クラス「h7」に関連付けられた第1公差情報を取得して、得られた第1公差情報を位置候補及び値候補として、サーバ制御部22によって表示装置46に表示させる。
【0106】
ここで、データムは、小径部の中心軸と、大径部の中心軸との少なくとも一方である。
図10Bの例においては、公差データD2において、第2公差情報「h7」に対応する第1公差情報として、データムとされる小径部の中心軸と、同軸度の値とが、第2公差情報に関連付けられている。そこで、補助部26は、位置候補を示すために、小径部の中心軸に対してデータムであることを示す記号を、サーバ制御部22によって表示させている。また、補助部26は、同軸度の値候補として「φ0.03」を、サーバ制御部22によって表示させている。
【0107】
そして、ユーザは、位置候補及び値候補の中から、所望の候補を選択する。サーバ制御部22は、選択された候補を形状データD1に設定して、設定した第1公差情報を表示装置46に表示させる。
図10Cは、ユーザが、位置候補である小径部の中心軸をデータムとして選択し、値候補である同軸度「φ0.03」を選択した例を示している。なお、ユーザは、データムとして大径部の中心軸を選択してもよく、同軸度として他の値を選択してもよい。
【0108】
以上説明した第3実施形態によれば、ユーザに対して設定可能な公差情報の候補を通知することができる。そのため、ユーザによる入力処理の時間を短縮して、物品の見積りに伴う設計処理に要する処理時間を短くすることができる。さらに、設定可能な公差情報の候補が自動的にユーザに通知されるので、公差情報の設定に伴うミスの発生を抑制できる。
【0109】
[変形形態]
変形形態の一例として、補助部26は、要素に対して設定可能な第1公差情報を形状データD1に自動的に設定してもよい。この場合、公差域が所定条件を満たすと判定されると、補助部26は、公差データD2に基づく補助処理として、軸76に対して設定可能な第1公差情報の中からいずれかを選択する。そして、補助部26は、
図10Bに示すような候補を、サーバ制御部22によって表示させずに、
図10Cに示すように選択した第1公差情報を形状データD1に設定する。さらに、補助部26は、設定した第1公差情報を、サーバ制御部22によって表示装置46に表示させる。これにより、ユーザが設定可能な公差情報を自動的に設定することができる。そのため、ユーザによる入力処理の時間を短縮して、物品の見積りに伴う設計処理に要する処理時間を短くすることができる。さらに、設定可能な公差情報が自動的に設定されるので、公差情報の設定に伴うミスの発生を抑制できる。
【0110】
変形形態の他の例として、補助部26は、要素に対して設定可能な第1公差情報及び第2公差情報の両方をユーザに通知又は形状データD1に自動的に設定してもよい。例えば、ユーザは、材質及び軸径に対応する第1公差情報及び第2公差情報が互いに関連付けられた公差データD2を、予め作成する。補助部26は、公差データD2に設定された材質及び軸径が設定された形状データD1がアップロードされると、補助処理を行う。この場合、補助部26は、公差データD2に基づく補助処理として、軸に対して予め定められた第1公差情報及び第2公差情報を特定する。そして、補助部26は、特定した第1公差情報及び第2公差情報を候補として、
図10Bに示す態様と同様に、サーバ制御部22によって表示装置46に表示させる。その後、ユーザは、位置候補及び値候補の中から、所望の候補を選択する。サーバ制御部22は、選択された候補を形状データD1に設定して、設定した第1公差情報及び第2公差情報を表示装置46に表示させる。
【0111】
代替的に、補助部26は、
図10Bに示すような候補を、サーバ制御部22によって表示させずに、
図10Cに示すように特定した第1公差情報及び第2公差情報を形状データD1に自動的に設定してもよい。この場合、補助部26は、設定した第1公差情報を、サーバ制御部22によって表示装置46に表示させる。ユーザは、所望の第1公差情報及び第2公差情報でない場合、表示されている第1公差情報及び第2公差情報を変更できる。これにより、ユーザが形状データD1をアップロードするのみで、設定可能な公差情報をユーザに通知又は自動的に設定することができる。そのため、ユーザによる入力処理の時間を短縮して、物品の見積りに伴う設計処理に要する処理時間を短くすることができる。さらに、設定可能な公差情報がユーザに通知又は自動的に設定されるので、公差情報の設定に伴うミスの発生を抑制できる。
【0112】
変形形態のさらに他の例を、
図11A,B,Cを参照して説明する。
図11A,B,Cの例では、ユーザが軸76に対して第1公差情報を入力している。まず、サーバ制御部22は、クライアント端末40の表示装置46に設定画面を表示させる。そして、ユーザは、設定画面の情報指示画面において、第1公差情報を入力して設定する。
【0113】
例えば、ユーザが設定対象の軸76を選択すると、サーバ制御部22は、情報指示画面(不図示)をポップアップ表示させる。そして、ユーザは、情報指示画面において第1公差情報を選択して入力する。具体的に、
図11Aに示す設定画面において、ユーザは、データムとして小径部の中心軸を選択し、同軸度の値として「φ0.03」を選択して入力している。ユーザが第1公差情報を選択して入力すると、サーバ制御部22は、第1公差情報が含められるように形状データD1を変更してサーバメモリ23に記憶させる。そして、サーバ制御部22は、形状データD1から取得した第1公差情報に基づいて、小径部の中心軸に対してデータムであることを示す記号を表示させる。また、サーバ制御部22は、同軸度の値として「φ0.03」を表示させる。
【0114】
そして、データ取得部24は、第1公差情報が設定された形状データD1をサーバメモリ23から取得する。ここで、第1公差情報が設定された軸においては、一般的に第2公差情報が設定される。そこで、第2公差情報の設定を補助するための補助処理が行われる。そのために、判定部25は、公差域が所定条件を満たすか否かを判定する。
【0115】
具体的に、判定部25は、第1公差情報、例えば同軸度が設定された場合には、公差域が所定条件を満たすと判定する。代替的に、判定部25は、所定値より小さい同軸度が設定されているか否かを判定してもよい。
図11Bの例では、軸76に対して同軸度が設定されている。そのため、判定部25は、軸76の公差域が所定条件を満たし、第2公差情報の設定が必要であると判定する。
【0116】
公差域が所定条件を満たすと判定された場合に、補助部26は、公差データD2に基づいて第2公差情報の設定を補助する補助処理を行う。そのために、サーバ制御部22は、軸情報指示画面84A,84Bをポップアップ表示させる。そして、
図11Bに示すように、補助部26が、補助処理として、軸76に対して設定可能な第2公差情報としての公差域クラス「h7」と、公差の値「-0.05」及び「-0.15」をユーザに通知する。表示された軸情報指示画面84A,84Bにおいて、ユーザは、上述した内容と同様に軸情報を選択する。そして、ユーザが更新ボタンを選択すると、サーバ制御部22は、各種情報が含められるように形状データD1を変更してサーバメモリ23に記憶させる。サーバ制御部22は、選択された軸情報を表示装置46に表示させる。
図11Cは、ユーザが、第2公差情報として「h7」、「-0.05」及び「-0.15」を選択した例を示している。さらに、ユーザは、所望の第2公差情報が無い場合、表示されている第2公差情報を変更して入力できる。
【0117】
代替的に、補助部26は、要素に対して設定可能な第2公差情報を形状データD1に自動的に設定してもよい。この場合、公差域が所定条件を満たすと判定されると、補助部26は、公差データD2に基づく補助処理として、軸76に対して設定可能な第2公差情報の中からいずれかを選択する。そして、補助部26は、
図11Bに示すような候補を、サーバ制御部22によって表示させずに、
図11Cに示すように選択した第2公差情報を形状データD1に設定する。さらに、補助部26は、設定した第2公差情報を、サーバ制御部22によって表示装置46に表示させる。ユーザは、所望の第2公差情報でない場合、表示されている第2公差情報を変更できる。
【0118】
これにより、ユーザが設定可能な公差情報をユーザに通知又は自動的に設定することができる。そのため、ユーザによる入力処理の時間を短縮して、物品の見積りに伴う設計処理に要する処理時間を短くすることができる。さらに、設定可能な公差情報がユーザに通知又は自動的に設定されるので、公差情報の設定に伴うミスの発生を抑制できる。
【0119】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、各実施形態及び各変形形態は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0120】
例えば、サーバ20を備えるシステムは、見積り以外の用途に用いることもできる。一例として、サーバ20を備えるシステムは、物品の設計に用いられてもよい。この場合であっても、設計処理に要する処理時間を短くすることができ、また設計時に公差情報の設定に伴うミスの発生を抑制することもできる。
【0121】
また、見積システム100がクライアント端末40を含んでいてもよい。この場合、サーバ制御部22が有する各手段の少なくとも一部は、クライアント端末40の端末制御部45に設けられていてもよい。一例として、データ取得部24、判定部25、及び補助部26の少なくとも一つが、端末制御部45に設けられていてもよい。例えば、クライアント端末40は、ユーザが入力した形状データD1を受け入れて端末メモリ44に記憶する。そして、端末制御部45のデータ取得部24は、端末メモリ44から形状データD1を取得する。さらに、端末制御部45の補助部26は、端末メモリ44が記憶する公差データD2に基づいて、第1公差情報及び第2公差情報の少なくとも一方の設定を補助する補助処理を行う。
【0122】
また、サーバ制御部22が提供するウェブページ上にて、ユーザが物品Aの形状又は寸法を変更できてもよい。この場合、サーバ制御部22は、ユーザによる変更を形状データD1に反映させて、サーバメモリ23に記憶させる。そして、データ取得部24は、サーバメモリ23から変更が反映された形状データD1を取得する。
【符号の説明】
【0123】
22 :サーバ制御部(コンピュータ)
23 :サーバメモリ(記憶手段)
24 :データ取得部(データ取得手段)
25 :判定部(判定手段)
26 :補助部(補助手段)
27 :見積部(見積手段)
28 :発注部(発注手段)
40 :クライアント端末
46 :表示装置
71 :精度穴(要素)
73 :精度長穴(要素)
76 :軸(要素)
100 :見積システム
D1 :形状データ
D2 :公差データ
O :設計原点(原点)
PG :見積プログラム