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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】車両用の温調システムおよび温調方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022148265
(22)【出願日】2022-09-16
【審査請求日】2023-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】足立 知康
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 徹三
(72)【発明者】
【氏名】中川 信也
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕之
(72)【発明者】
【氏名】野山 英人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 克弘
(72)【発明者】
【氏名】森下 昌俊
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-043262(JP,A)
【文献】特開2020-138637(JP,A)
【文献】特開2022-079169(JP,A)
【文献】特開2001-322421(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011016070(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の温調システムであって、
圧縮機、高圧側熱交換器、減圧部、および低圧側熱交換器を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路と、
前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路と、
前記冷媒回路の前記冷媒の圧力を制御可能に構成される制御装置と、を備え、
前記熱媒体回路は、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器と、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器と、
前記熱媒体を圧送可能に構成されるポンプと、
外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器と、
前記熱媒体により加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器と、
前記室外熱交換器から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路と、を含み、
前記制御装置は、
前記高圧側熱交換器から流出した前記熱媒体が、前記温調機器を経由して前記低圧側熱交換器に流入し、さらに前記室外バイパス経路を通り、前記高圧側熱交換器に流入する圧縮機熱源モードにおいて、前記低圧側熱交換器を流れる前記熱媒体の流量の調整により、前記冷媒回路の低圧を0.2MPa以上、1.2MPa以下に制御するように構成されている、車両用温調システム。
【請求項2】
前記冷媒は、R1234yf、またはプロパンからなる、
請求項1に記載の車両用温調システム。
【請求項3】
前記熱媒体回路は、
前記低圧側熱交換器から前記熱媒体を迂回させる低圧側バイパス経路と、
前記低圧側熱交換器と前記低圧側バイパス経路との前記熱媒体の流量比を調整可能に構成される低圧側流量調整弁と、を含み、
前記制御装置は、
前記圧縮機熱源モードにおいて、前記低圧側流量調整弁に対する制御指令に基づく前記流量比の調整により、前記低圧を制御するように構成されている、
請求項1または2に記載の車両用温調システム。
【請求項4】
前記圧縮機は、前記冷媒を圧縮する機構の回転数を可変に制御可能に構成され、
前記制御装置は、
前記圧縮機熱源モードにおいて、前記圧縮機に対する制御指令に基づく前記回転数の制御により、前記冷媒の流量を調整することで、前記冷媒回路の前記低圧および高圧のうち少なくとも前記低圧を制御するように構成されている、
請求項1または2に記載の車両用温調システム。
【請求項5】
前記ポンプは、前記熱媒体を圧送する機構の回転数、または前記ポンプから吐出される前記熱媒体の吐出流量を可変に制御可能に構成され、
前記制御装置は、
前記圧縮機熱源モードにおいて、前記ポンプに対する制御指令に基づく前記回転数または前記吐出流量の制御により、前記冷媒回路の前記低圧および高圧のうち少なくとも前記低圧を制御するように構成されている、
請求項1または2に記載の車両用温調システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記圧縮機熱源モードにおいて、熱負荷または前記圧縮機の回転数に応じて前記冷媒回路の前記低圧および高圧のうち少なくとも前記低圧を制御するように構成されている、
請求項1または2に記載の車両用温調システム。
【請求項7】
前記熱媒体回路は、
前記高圧側熱交換器から前記熱媒体を迂回させる高圧側バイパス経路と、
前記高圧側熱交換器と前記高圧側バイパス経路との前記熱媒体の流量比を調整可能に構成される高圧側流量調整弁と、を含み、
前記制御装置は、
前記圧縮機熱源モードにおいて、前記高圧側流量調整弁に対する制御指令に基づく前記流量比の調整により、前記冷媒回路の高圧を制御するように構成される、
請求項1または2に記載の車両用温調システム。
【請求項8】
車両用の温調システムを用いる温調方法であって、
前記温調システムは、
圧縮機、高圧側熱交換器、減圧部、および低圧側熱交換器を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路と、
前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路と、を備え、
前記熱媒体回路は、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器と、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器と、
前記熱媒体を圧送可能に構成されるポンプと、
外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器と、
前記熱媒体により加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器と、
前記室外熱交換器から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路と、を含み、
前記温調方法は、
前記高圧側熱交換器から流出した前記熱媒体が、前記温調機器を経由して前記低圧側熱交換器に流入し、さらに前記室外バイパス経路を通り、前記高圧側熱交換器に流入する圧縮機熱源モードにおいて、前記低圧側熱交換器を流れる前記熱媒体の流量を調整することで、前記冷媒回路の低圧を0.2MPa以上、1.2MPa以下に制御する、
車両用温調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に装備される温調システム、およびそれを用いる温調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や、エンジンおよび電動機から車両走行用の駆動力を得る所謂ハイブリッド自動車等の車両においては、熱源が不足しがちな中、冷暖房、除湿、換気等の車両に要求される空調機能の他、バッテリー等の車載機器の熱管理や排熱利用が要求される。そうした要求に対して、従来、ヒートポンプシステムに加え、バッテリーを冷却するチラーやバッテリーを加温するヒータを含むシステム、あるいは、ラジエーターの排熱により加温された水をポンプで温調対象に搬送するシステム等の複数のシステムが用いられてきた。
【0003】
空調および機器の熱管理を統合可能な車両用熱管理システムとしては、冷媒が冷凍サイクルに従って循環する一次ループと、一次ループの冷媒に対して熱を授受する熱媒体(水等)をポンプにより車載機器に搬送する二次ループとを備えたシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載の熱管理システムは、冷媒回路の蒸発器および熱媒体外気熱交換器が配置される第1熱媒体回路と、冷媒回路の凝縮器および車室空調ユニットのヒータコアが配置される第2熱媒体回路とを備えている。第1熱媒体回路と第2熱媒体回路とは、第1切替手段および第2切替手段による流路の切り替えにより、非連結の状態(非連結モード)と、低外気温を想定した連結の状態(連結モード)とに切り替えられる。
【0005】
非連結モード時には、外気の熱を第2熱媒体回路の熱媒体へ汲み上げるヒートポンプ運転が行われる。連結モード時には、蒸発器から流出した熱媒体を熱媒体外気熱交換器へ流入させることなく、凝縮器から流出した熱媒体と合流させ、蒸発器および凝縮器に対して熱媒体を並列に流入させる。このとき第1熱媒体回路と第2熱媒体回路とが、蒸発器および凝縮器を介して連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6083304号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の連結モード時には、蒸発器および凝縮器に対して熱媒体を並列に流入させており、蒸発器から流出した熱媒体と、凝縮器から流出した熱媒体とが混合されることで、混合前のそれぞれの熱媒体の温度の中間の温度となって蒸発器および凝縮器に流入する。そのため、非連結モードと比べて、凝縮器より流出する熱媒体の温度上昇に時間がかかる。また、室内熱交換器に流入する熱媒体の流量が低下するので、加熱能力には改善の余地がある。
【0008】
本開示は、外気温が低いため熱源の確保が難しい状況であっても加熱能力を担保することが可能な車両用の温調システムおよび温調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、車両用の温調システムであって、圧縮機、高圧側熱交換器、減圧部、および低圧側熱交換器を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路と、冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路と、冷媒回路の冷媒の圧力を制御可能に構成される制御装置と、を備える。
熱媒体回路は、冷媒と熱媒体とを熱交換させる高圧側熱交換器と、冷媒と熱媒体とを熱交換させる低圧側熱交換器と、熱媒体を圧送可能に構成されるポンプと、外気と熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器と、熱媒体により加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器と、室外熱交換器から熱媒体を迂回させる室外バイパス経路と、を含む。
制御装置は、高圧側熱交換器から流出した熱媒体が、温調機器を経由して低圧側熱交換器に流入し、さらに室外バイパス経路を通り、高圧側熱交換器に流入する圧縮機熱源モードにおいて、低圧側熱交換器を流れる熱媒体の流量の調整により、冷媒回路の低圧を0.2MPa以上、1.2MPa以下に制御するように構成されている。
【0010】
また、本開示は、車両用の温調方法にも展開することができる。
【発明の効果】
【0011】
圧縮機熱源モード時の低圧-圧縮機動力特性に基づき、冷媒回路の低圧が0.2MPa以上、1.2MPa以下に制御されることにより、外気温が0℃を大幅に下回る状況であっても、圧縮機熱源モードにより加熱能力を担保することができる。
【0012】
圧縮機熱源モードのとき、高圧側熱交換器と低圧側熱交換器とは直列に接続されているので、高圧側熱交換器と低圧側熱交換器とに対して熱媒体を並列に流入させる場合と比べて、高圧側熱交換器から流出した熱媒体の温度を早く上昇させることができる。また、温調機器の熱媒体循環量が大きいため、熱媒体と温調対象との熱交換量が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施形態に係る車両用温調システムを示す回路図である(ヒートポンプモード)。
図2図1に記載のシステムのヒータモードによる運転状態を示す図である。
図3】(a)は、制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。(b)は、制御装置のコンピュータ・プログラムのモジュールを示すブロック図である。
図4】低外気温時のp-h線図の略図である。
図5】ヒータモード時の冷媒回路の低圧と圧縮機動力との関係(低圧-圧縮機動力特性)を示すグラフである。
図6】本開示の第5変形例に係る車両用温調システムを示す回路図である(起動時ヒータモード)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について説明する。
[実施形態]
図1に示す車両用の温調システム1は、例えば、エンジンを備えておらず走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車、あるいは、エンジンおよび電動機から車両走行用の駆動力を得る所謂ハイブリッド自動車等の図示しない車両に装備されている。温調システム1は、乗員が搭乗する車室8の冷暖房、除湿、換気等の空調の他、車両に搭載されているバッテリー装置(電源装置)、走行用モータ、発熱する電子機器等の車載装置の熱管理、排熱回収等を担う。適切な温度や湿度に空調したり、車載装置を適温に管理したりすることを「熱管理」と総称するものとする。
温調システム1およびその他の車載装置に備わる電動機器や電子機器には、車載のバッテリー装置に蓄えられた電力が供給される。車載のバッテリー装置は、車両停止時に外部電源から充電される。
【0015】
〔全体構成〕
温調システム1は、冷媒が循環可能に構成される冷媒回路10と、冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路20と、温調システム1を所定の運転モードに設定し、運転モードに応じて温調システム1の運転状態を制御する制御装置5とを備えている。
また、温調システム1は、例えば、外気温度を検知する外気温センサ61、車室8に吹き出される空調空気の温度を検知する温度センサ62、冷媒回路10の低圧pLを検知する低圧用圧力センサ63、冷媒回路10の高圧pHを検知する高圧用圧力センサ64等のセンサを含む。
【0016】
温調システム1は、乗員によりあるいは制御装置5により選択される複数の運転モードを備えている。温調システム1は、後述するヒータモードHT(図2)における冷媒圧力の制御に特徴を有する。本実施形態は、温調システム1の運転モードとして、ヒータモードHTの他、ヒートポンプモードHP(図1)を例示する。ヒータモードHTは、ヒートポンプモードHPと比べて外気温が低い場合に適する。
【0017】
〔冷媒回路の構成〕
冷媒回路10は、図1に構成の一例を示すように、圧縮機11と、凝縮器12と、膨張弁13と、蒸発器14とを備えている。冷媒回路10には、冷凍サイクルに従って冷媒が循環する。
冷媒回路10に封入される冷媒としては、公知の適宜な単一冷媒あるいは混合冷媒を用いることができる。例えば、本実施形態の冷媒として、R1234ze、R1234yf等のHFO(Hydro Fluoro Olefin)冷媒、あるいは、プロパン、イソブタン等の炭化水素(HC)系冷媒を用いることが可能である。特に、R1234yfまたはプロパンを用いることが好ましい。
上記に列挙したフロン系または炭化水素系の冷媒を用いる場合は、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルが構成される。
【0018】
圧縮機11は、図示しないバッテリー装置から供給される電力により駆動されるモータを備えた電動圧縮機に相当する。圧縮機11は、図示しないハウジング内に吸入される冷媒を圧縮機構により断熱圧縮して吐出する。
圧縮機11としては、例えば、容積型圧縮機、特に、モータの出力トルクにより回転駆動されるロータリー式、スクロール式、スクリュー式等の圧縮機構を備えた圧縮機が採用されることが好ましい。その他、圧縮機11として、インペラを備えた遠心圧縮機や、ピストンをストロークの範囲で往復動作させる圧縮機を採用することもできる。
【0019】
圧縮機11のハウジングには潤滑油が封入される。圧縮機11の潤滑は、ミスト状の潤滑油を含む冷媒が摺動部に流通することで行われる。潤滑油は、冷媒と共に冷媒回路10を循環する。冷媒回路10を循環する潤滑油を圧縮機11に確実に戻すために、圧縮機11の回転数は所定値以上に維持される。
【0020】
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された冷媒ガスを熱媒体と熱交換させる。
膨張弁13(減圧部)は、凝縮器12から流出した冷媒を減圧させることで断熱膨張させる。膨張弁13としては、制御装置5からの指令に基づき開度を制御可能な電子膨張弁の他、温度式膨張弁を採用することができる。あるいは、膨張弁13の代わりにキャピラリーチューブを採用することができる。
【0021】
蒸発器14は、膨張弁13から流出した冷媒を熱媒体と熱交換させる。蒸発器14により蒸発した冷媒は、圧縮機11により吸入される。
蒸発器14と圧縮機11との間には、図示しないアキュムレータ(気液分離器)を設けることができる。
【0022】
凝縮器12には相対的に高い冷媒圧力(高圧pH)が与えられ、蒸発器14には相対的に低い冷媒圧力(低圧pL)が与えられる。冷媒は、高圧pHと低圧pLとの圧力差に基づき冷媒回路10を循環する。
図1において、低圧側の冷媒の流れは太い実線により示され、高圧側の冷媒の流れは太い破線により示されている。図2も同様である。
【0023】
〔熱媒体回路の構成〕
熱媒体回路20は、凝縮器12および蒸発器14により冷媒と熱を授受可能な熱媒体が循環可能に構成されている。熱媒体は、少なくとも1つ以上の温調対象の冷却または加熱に用いられる。本実施形態における温調対象の一つは、車室8内の空気に相当する。
熱媒体回路20に封入される熱媒体は、液相の状態を維持して熱媒体回路20を循環する水やブライン等の液体である。ブラインとしては、例えば、水およびプロピレングリコールの混合液、あるいは、水およびエチレングリコールの混合液を例示することができる。
【0024】
熱媒体回路20は、図1に構成の一例を示すように、凝縮器12と、蒸発器14と、第1ポンプ21および第2ポンプ22と、室外熱交換器23と、室外バイパス経路24と、室内熱交換器25と、複数の流路切替弁としての第1切替弁31、第2切替弁32、および第3切替弁33とを備えている。
【0025】
本実施形態において、第1切替弁31および第2切替弁32は四方弁であり、第3切替弁33は三方弁に相当する。図1に示すヒートポンプモードHPにおいて、第1切替弁31には、蒸発器14から流出した熱媒体と、凝縮器12から流出した熱媒体との両方が流通する。
【0026】
熱媒体回路20は、凝縮器12から熱媒体を迂回させる凝縮器バイパス経路12Aと、凝縮器流量調整弁12Vとを備えることが好ましい。
凝縮器流量調整弁12Vは、高圧側流量指令源12Cから発せられる流量指令SHに基づき、凝縮器12と凝縮器バイパス経路12Aとの熱媒体の流量比を調整する。
【0027】
図1に示す例では、凝縮器流量調整弁12Vによる流量調整により、第1切替弁31から凝縮器12に向けて流れる熱媒体の全量が、凝縮器バイパス経路12Aへは流入せずに凝縮器12へと流入する。
【0028】
また、熱媒体回路20は、蒸発器14から熱媒体を迂回させる蒸発器バイパス経路14Aと、蒸発器14と蒸発器バイパス経路14Aとの熱媒体の流量比を調整可能に構成される蒸発器流量調整弁14Vとを備えることが好ましい。
蒸発器流量調整弁14Vは、低圧側流量指令源14Cから発せられる流量指令SLに基づき、蒸発器14と蒸発器バイパス経路14Aとの熱媒体の流量比を調整する。
【0029】
図1に示す例では、蒸発器流量調整弁14Vによる流量調整により、第1切替弁31から蒸発器14に向けて流れる熱媒体の全量が、蒸発器バイパス経路14Aへは流入せずに蒸発器14へと流入する。
【0030】
本実施形態の三方弁としての凝縮器流量調整弁12Vは、いずれも流量調整可能な2つの二方弁、または流量調整可能な単一の二方弁に置き換えることができる。例えば、一方の二方弁を凝縮器バイパス経路12Aに配置し、他方の二方弁を凝縮器流量調整弁12Vと凝縮器12との間の配管に配置することができる。あるいは、単一の二方弁を凝縮器バイパス経路12Aおよび当該配管の一方に配置することができる。
蒸発器流量調整弁14Vも上記と同様であり、いずれも流量調整可能な2つの二方弁、または流量調整可能な単一の二方弁に置き換えることができる。
【0031】
第1ポンプ21および第2ポンプ22はいずれも、図示しないモータにより駆動される電動のポンプに相当する。第1ポンプ21は、蒸発器14から流出した熱媒体を吸入して吐出することで熱媒体を圧送する。第2ポンプ22は、凝縮器12から流出した熱媒体を吸入して吐出することで熱媒体を圧送する。
【0032】
ポンプ21,22としては、公知の遠心ポンプや容積型ポンプを適宜に採用することができる。
【0033】
第1ポンプ21および第2ポンプ22のそれぞれの位置は、図示する例には限らず、各運転モードの熱媒体の経路を考慮し、第1ポンプ21および第2ポンプ22の少なくとも一方により熱媒体を圧送することができる範囲で、適宜に定めることができる。
【0034】
室外熱交換器23は、車室8の外側の外気と、熱媒体とを熱交換させる。室外熱交換器23は、例えば、車両の空気導入口の付近に配置されるラジエーターに相当する。車両の走行と、室外送風機23Aの動作とによって室外熱交換器23に供給される外気は、外気と熱媒体との温度差に基づいて、放熱または吸熱する。
【0035】
室外バイパス経路24は、室外熱交換器23から熱媒体を迂回させる。
【0036】
室内熱交換器25は、室内送風機25Aにより送られる空気と熱媒体とを熱交換させることで車室8内に空調空気を与える。室内送風機25Aは、モータにより駆動され、車室8内の空気(内気)または外気、あるいは内気と外気との混合気体を室内熱交換器25に向けて吹き付ける。室内送風機25Aは、回転数が可変に制御可能に構成されることが好ましい。
HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)ユニットUは、室内熱交換器25と、室内送風機25Aと、室内送風機25Aにより送られる空気が流れる図示しないダクトとを含んで構成されている。
【0037】
第1~第3切替弁31,32,33の少なくとも1つにより熱媒体の流れが切り替えられることで、熱媒体回路20は、低圧側回路C1および高圧側回路C2を並列的に設定可能に構成されるとともに(図1)、直列回路CCを設定可能に構成される(図2)。
【0038】
凝縮器12から流出して凝縮器12に戻る熱媒体の高圧側回路C2と、蒸発器14から流出して蒸発器14に戻る低圧側回路C1とは、互いに分離している。以下において、低圧側回路C1および高圧側回路C2のことを並列回路C1,C2と称する場合がある。
凝縮器12を含む高圧側回路C2の熱媒体と、蒸発器14を含む低圧側回路C1の熱媒体とは相互に混合されない。
【0039】
並列回路C1,C2を示す図1において、低圧側回路C1を循環する相対的に低温の熱媒体(低温熱媒体)の流れが実線で示され、高圧側回路C2を循環する相対的に高温の熱媒体(高温熱媒体)の流れが一点鎖線で示されている。低温熱媒体および高温熱媒体のいずれも圧送されていない経路は、破線で示されている。
【0040】
一方、直列回路CCは、直列に配置される蒸発器14および凝縮器12を含む一つの連続した回路に相当する。直列回路CCが設定されるとき、例えば、図2に示すように、凝縮器12から流出した熱媒体が蒸発器14に流入し、さらに凝縮器12に流入する。
直列回路CCを示す図2においても、相対的に低温の熱媒体の流れが実線で示され、相対的に高温の熱媒体の流れが一点鎖線により示されている。図2を参照すると、並列回路C1,C2が設定される場合とは異なり、蒸発器14から流出し、凝縮器12に流入するまでの熱媒体の流れが実線で示され、凝縮器12から流出し、蒸発器14に流入するまでの熱媒体の流れが一点鎖線で示されている。これは、熱媒体が蒸発器14に流入すると、冷媒への放熱により熱媒体の温度が低下することを表し、熱媒体が凝縮器12に流入すると、冷媒からの吸熱により熱媒体の温度が上昇することを表している。
【0041】
直列回路CCが設定されるとき、熱媒体は、凝縮器12による温度上昇および蒸発器14による温度低下を繰り返しながら、凝縮器12と蒸発器14とを循環する。このとき、熱媒体回路20には、一つの連続した回路が形成されるので、第1ポンプ21および第2ポンプ22の少なくとも一方のみによって、熱媒体を圧送することができる。
但し、直列回路CCを用いる運転モードでも、2つのポンプ21,22を作動させることで、熱媒体回路20における熱媒体の循環流量を十分に得ることができる。
【0042】
第1~第3切替弁31~33のいずれも、制御装置5からの指令に基づき開閉制御が可能な電動弁であり、各運転モードに応じて熱媒体の流路を切り替え可能に構成される。
第1~第3切替弁31~33は、必要な運転モードの実現に必要な経路を熱媒体回路20に設定するために、適宜な構造の適宜な数の電動弁に代替可能である。
【0043】
〔制御装置の構成〕
制御装置5は、図3(a)に示すように、メモリ501、演算部502、記憶部503、および入出力部504を含むコンピュータに相当する。「コンピュータ」には、プログラマブルロジックコントローラ(PLC;programmable logic controller)も含まれる。
【0044】
制御装置5は、図3(b)に示すように、上述の高圧側流量指令源12Cおよび低圧側流量指令源14Cの他、圧縮機11等の駆動制御により温調対象を冷却または加熱する温調制御部51と、冷媒回路10の低圧pLを制御する低圧制御部52と、冷媒回路10の高圧pHを制御する高圧制御部53と、低圧pLおよび高圧pHを制御する低圧・高圧制御部54とを含むことができる。
高圧側流量指令源12C、低圧側流量指令源14C、温調制御部51、低圧制御部52、高圧制御部53、および低圧・高圧制御部54のいずれも、記憶部503から読み出されて実行されるコンピュータ・プログラムのモジュールであってよい。ヒータモードHT時には、特に、低圧制御部52または低圧・高圧制御部54により低圧Lの制御が実施されることで、暖房能力が担保される。
【0045】
各運転モードにおいて、温調制御部51は、圧縮機11の駆動制御を行い、冷媒の循環流量を増減させることで、冷房能力または暖房能力をそれぞれ増減させることができる。
温調制御部51は、例えば、外気温、空調空気の吹き出し温度、あるいは、熱媒体温度や冷媒の温度等、室温に相関する物理量をセンサ61,62等により検知し、検知された値と目標値との偏差を解消させるように、例えば圧縮機11の回転数を制御するフィードバック制御を行うことにより、室温を目標温度に調整することができる。
【0046】
温調制御部51によるフィードバック制御の操作量は、圧縮機11の回転数、室内送風機25Aの回転数、およびポンプ21,22の回転数のうちの1つ以上であってよい。
圧縮機11、室内送風機25A、およびポンプ21,22のそれぞれの回転数は、例えば、駆動回路部によりモータに印加される駆動電流の周波数やデューティ比を増減させることで制御することができる。
【0047】
低圧制御部52は、ヒータモードHTにおいて、蒸発器14を流れる熱媒体の流量の調整により、低圧pLを0.2MPa以上、1.2MPa以下に制御する。
高圧制御部53は、少なくともヒータモードHTにおいて、凝縮器12を流れる熱媒体の流量の調整により、高圧pHを2.8MPa以下に制御することが好ましい。
【0048】
〔運転モードの説明〕
まず、図1に示すヒートポンプモードHPについて簡単に説明する。
ヒートポンプモードHP(図1):
ヒートポンプモードHPは、車室8内を暖房するモードに相当し、熱源としての外気から、外気温よりも温度が高い高温熱媒体に熱を汲み上げて車室8まで搬送することで、車室8内を暖房する。
【0049】
ヒートポンプモードHP時に温調システム1は並列回路C1,C2を使用して運転される。蒸発器14から流出した低温熱媒体は、実線の矢印で示すように、第2切替弁32を経由して室外熱交換器23へと流入する。外気から吸熱した熱媒体は、第1切替弁31および蒸発器流量調整弁14Vを経由して蒸発器14へと戻る。
蒸発器14に流入した熱媒体からの吸熱により冷媒は蒸発し、圧縮機11へと吸入される。圧縮機11から吐出された冷媒は、凝縮器12で熱媒体への放熱により凝縮し、これに伴い熱媒体は昇温する。
【0050】
凝縮器12から流出した高温熱媒体は、一点鎖線の矢印で示すように、第3切替弁33を経由して室内熱交換器25へと流入する。車室8内を温めた熱媒体は、第1切替弁31および凝縮器流量調整弁12Vを経由して凝縮器12へと戻る。
【0051】
ヒートポンプモードHPは、外気を熱源の一部として利用することにより、圧縮機11やポンプ21,22等の動力増加を抑えつつ、暖房能力を担保することができる。
【0052】
ヒータモードHT(図2):
次に、図2を参照し、直列回路CCを用いる運転モードであるヒータモードHTについて説明する。外気温が0℃を大幅に下回る場合、例えば-20℃以下にまで外気温が低下した場合は、上述のヒートポンプモードHPにより外気から熱媒体に吸熱することができる熱量が少なくなるとともに、圧縮機11の吸入冷媒密度が低下し、圧縮機11の動力が小さくなる。そうした場合でも、ヒータモードHTにより、圧縮機11を熱源として、温調対象を加熱することができる。
【0053】
ヒータモードHTは、例えば抵抗加熱式の電気ヒータと同様に、供給電力に相応の熱量の熱が温調対象に供給される。そのため、「ヒータ」モードと称するが、ヒータモードHTの名称は、必ずしもこれに限られない。
なお、後述する起動時ヒータモードHT0は、ヒータモードHTへの移行を前提とするモードであるため、ヒータモードHTと同様の名称を使用するが、起動時ヒータモードHT0の名称も、必ずしもこれに限られない。
【0054】
ヒータモードHT時の熱媒体の流れを説明する。熱媒体から外気への放熱を防ぐため、室外バイパス経路24を通じて室外熱交換器23から熱媒体を迂回させる。このとき室外送風機23Aの作動は停止させてよい。また、ポンプ21,22の少なくとも一方を適宜な回転数で作動させる。
【0055】
凝縮器12により冷媒から吸熱した熱媒体は、第3切替弁33を経由して室内熱交換器25へと流入して車室8内の暖房に供される。そして、室内熱交換器25から流出した熱媒体は、第1切替弁31および蒸発器流量調整弁14Vを経由し、蒸発器14および蒸発器バイパス経路14Aのうち少なくとも蒸発器14に流入して冷媒へと放熱される。
蒸発器14から流出した熱媒体は、第2切換え弁32から室外バイパス経路24に流入し、第1切替弁31と凝縮器流量調整弁12Vとの間に流入した後、凝縮器12および凝縮器バイパス経路12Aのうち少なくとも凝縮器12に流入して冷媒から吸熱する。
【0056】
ヒータモードHTにおいて、熱媒体は、外気への放熱を避けて室外バイパス経路24を流れつつ、圧縮機11の動力により発生した熱を冷媒から受け取り温調対象に搬送する。ヒータモードHTによれば、外気との熱の出入りがない系により運転することで、外気温によらず、車室8内の暖房を継続して行うことができる。
【0057】
図4には、冷媒のp-h線図と、ヒートポンプモードHP時の冷凍サイクルY1(破線)と、ヒータモードHT時の冷凍サイクルY2(実線)とが示されている。冷凍サイクルY1,Y2のいずれも、外気温が-20℃の条件による。
ヒートポンプモードHPのときは、-20℃の外気と熱交換されて蒸発器14に流入する熱媒体より、冷媒が吸熱する必要があるため、低圧pLが低下する。
一方、ヒータモードHTのときは、凝縮器12および室内熱交換器25を経た熱媒体が、蒸発器14により冷媒へと放熱されるので、図4に示すようにヒートポンプモードHPと比べて低圧pLが上昇する。それに伴い圧縮機11に吸入される冷媒の密度(以下、圧縮機吸入密度ρ)が増加することで、圧縮機11の動力が増加して冷媒の循環流量が増加する。
低圧上昇の効果として、ヒータモードHTは、ヒートポンプモードHPと比べて3倍程度体積効率が大きい。体積効率は、エンタルピ差Δhと、圧縮機吸入密度ρとの積に相当する。
【0058】
〔ヒータモード時の低圧-圧縮機動力特性〕
図5は、ヒータモードHTにおける低圧pL(横軸)と圧縮機11の動力(縦軸)との関係を示している。これは、高圧pHが一定、圧縮機11の回転数も一定の条件で計算した結果に基づく。実線は、R1234yfの場合を示し、一点鎖線は、プロパン(R290)の場合を示している。いずれの冷媒についても、低圧-圧縮機動力特性LPPは、山なりのカーブを描き、ピークは約1MPaにある。以下、特に言及しない限り、両冷媒に共通する。
【0059】
図5に示した低圧pLの値の範囲は、0.1MPa以上、2.1MPa以下である。低圧pLは、0.1MPaからピークまで増加率を次第に減少させながら上昇し、ピークを超えて減少に転じると、減少率を次第に増加させながら降下する。
【0060】
低圧pLが0.1MPaから1MPaまで上昇するにつれて圧縮機11の動力は増加するので、圧縮機11の動力に相応の熱量に基づく加熱能力も増加する。しかしながら、低圧pLがピークを超えて高くなり過ぎると、動力の減少により、低外気温に対して十分な加熱能力を得ることができない。低圧pLはピークからなだらかに減少するので、ピークを超えても変化率が10kW/MPa以下である1.2MPaまでの加熱能力は許容できる。
【0061】
こうした低圧-圧縮機動力特性LPPは、ヒータモードHT時の冷凍サイクルY2(図4)と対応している。低圧pLが上昇すると、圧縮機吸入密度ρの増加に伴い、圧縮機11の動力が増加する一方で、高圧pHと低圧pLとの圧力差Δpは減少するため、エンタルピ差Δh(図4)の減少に伴い圧縮機11の動力が減少する。つまり、低圧pLが1MPaまで上昇する間は、エンタルピ差Δhの減少による動力の減少分よりも、圧縮機吸入密度ρの増加による動力の増加分が大きい。
【0062】
エンタルピ差Δhを十分に確保する観点からは、0.2MPaと1.2MPaとの中央値(0.7MPa)以下の範囲に低圧pLが設定されることが好ましい。当該範囲は、例えば、0.3MPa以上、0.6MPa以下であってよい。
一方、圧縮機吸入密度ρを十分に確保する観点からは、0.2MPaと1.2MPaとの中央値(0.7MPa)超の範囲に低圧pLが設定されることが好ましい。当該範囲は、例えば、0.8MPa以上、1.1MPa以下であってよい。
【0063】
低圧-圧縮機動力特性LPPに基づくと、ヒータモードHT時に低圧pLが上昇しても、その低圧pLが低すぎる、あるいは高すぎるのならば、加熱能力増大に繋がらないので、必ずしも加熱能力増大の効果を得ることはできない。そこで、低外気温時に十分な加熱能力を担保するために、低圧制御部52は、ヒータモードHT時に、低圧pLを0.2MPa以上、1.2MPa以下に維持する。
こうした低圧pLの制御は、ヒータモードHTは、ヒートポンプモードHPとは異なり、外気から熱媒体に吸熱しないため、飽和蒸気に対応する圧力以上に低圧pLを自在に上昇させることができることに基づく。
【0064】
図5において、pは0.2MPaに相当し、pは1.2MPaに相当する。ここで、R1234yfについて、圧縮機動力の最大値が100%であるとすると、pに対応する圧縮機動力Fは約40%に相当し、pに対応する圧縮機動力Fは約98%に相当する。同様に、プロパンについて、圧縮機動力の最大値が100%であるとすると、pに対応する圧縮機動力fは約41%に相当し、pに対応する圧縮機動力fは約98%に相当する。Fとfとの差は、Fとfとの差よりも大きい。
【0065】
他の冷媒に関しても、R1234yfおよびプロパンと同様に、低圧pLのピークの値が約1MPaであって、pに対応する圧縮機動力が35~45%であって、pに対応する圧縮機動力が95~100%である場合は、0.2MPa以上、1.2MPa以下の範囲内に低圧pLを維持しつつ、低外気温に対して十分な加熱能力を得ることができる。
【0066】
〔ヒータモード時の高圧-圧縮機動力特性〕
ヒータモードHT時における高圧pHと圧縮機動力との関係の図示は省略する。高圧pHが上昇するにつれて圧縮機動力は次第に増加するので、高圧pHが高い方が加熱能力は高くなる。圧力差Δpを大きくして加熱能力を十分に確保する観点からは、圧縮機11のハウジング等の機器の耐圧が確保される範囲で、高圧pHを出来るだけ高く設定することが好ましい。そのため、高圧制御部53は、少なくともヒータモードHTにおいて、高圧pHを例えば低圧pLの2倍以上、2.8MPa以下に制限することが好ましい。
【0067】
〔ヒータモード時の冷媒圧力制御〕
ヒータモードHT時に低圧pLを上記の値に制御するため、蒸発器バイパス経路14Aおよび蒸発器流量調整弁14Vを用いることができる。蒸発器14に流入させる熱媒体と、蒸発器バイパス経路14Aに流入させる熱媒体との流量比を変化させると、熱媒体回路20の蒸発器14を含む経路を熱媒体が循環する流量が変化する。それに伴い、蒸発器14における熱媒体から冷媒への放熱量が変化することで低圧pLが変化する。
【0068】
本実施形態の低圧制御部52は、低圧用圧力センサ63により検知される低圧pLを検知しつつ、検知された値と目標の圧力との偏差が解消されるように、低圧側流量指令源14Cから蒸発器流量調整弁14Vに対して低圧側流量指令SLを発生させることを通じて、蒸発器14と蒸発器バイパス経路14Aとに操作量としての流量比を与えるフィードバック制御を行うことができる。
【0069】
また、ヒータモードHT時に高圧pHを上記の値に制御するため、凝縮器バイパス経路12Aおよび凝縮器流量調整弁12Vを用いることができる。凝縮器12に流入させる熱媒体と、凝縮器バイパス経路12Aに流入させる熱媒体との流量比を変化させると、熱媒体回路20の凝縮器12を含む経路を熱媒体が循環する流量が変化する。それに伴い、凝縮器12における冷媒から熱媒体への吸熱量が変化することで高圧pHが変化する。
【0070】
本実施形態の高圧制御部53は、高圧用圧力センサ64により検知される高圧pHを検知しつつ、検知された値と目標の圧力との偏差が解消されるように、高圧側流量指令源12Cから凝縮器流量調整弁12Vに対して高圧側流量指令SHを発生させることを通じて、凝縮器12と凝縮器バイパス経路12Aとに操作量としての流量比を与えるフィードバック制御を行うことができる。
【0071】
〔本実施形態による主な作用効果〕
【0072】
ヒータモードHT時の低圧-動力特性LPPに基づき、低圧pLが0.2MPa以上、1.2MPa以下に制御されることにより、外気温が0℃を大幅に下回る場合であっても、ヒータモードHTにより暖房能力を担保することができるので、車室8内の温度を早期に目標温度まで到達させることができる。
【0073】
また、直列回路CCを用いるヒータモードHTのとき、凝縮器12と蒸発器14とは直列に接続されているので、凝縮器12と蒸発器14とに対して熱媒体を並列に流入させる場合と比べて、凝縮器12から流出した熱媒体の温度を早く上昇させることができる。また、室内熱交換器25の熱媒体循環量が大きいため、熱媒体と空気との熱交換量が大きくなる。
【0074】
低圧pLを制御可能な蒸発器バイパス経路14A、蒸発器流量調整弁14V、および低圧側流量指令源14Cを備えているとともに、高圧pHを制御可能な凝縮器バイパス経路12A、凝縮器流量調整弁12V、および高圧側流量指令源12Cを備えていることにより、ヒータモードHT時に低圧pLおよび高圧pHを個別に調整可能である。低圧pLおよび高圧pHにそれぞれ適切な値を与えて、所望の加熱能力を実現することができる。
このとき膨張弁13は、凝縮器12出口の冷媒過冷却度を一定値とするように制御させると良い。
【0075】
[第1変形例]
ヒータモードHT時の低圧pLおよび高圧pHの制御は、圧縮機11の回転数Nを制御することによっても行うことができる。
その場合、圧縮機11は、モータに駆動電流を印加する図示しない駆動回路部により、圧縮機構の回転数Nが可変に構成されている。
【0076】
圧縮機11の回転数Nが増加すると、蒸発器14および凝縮器12それぞれの冷媒流量の増加により、蒸発器14における熱媒体から冷媒への放熱量および凝縮器12における冷媒から熱媒体への吸熱量が増加するので、低圧pLおよび高圧pHは上昇する。
一方、圧縮機11の回転数Nが減少すると、蒸発器14および凝縮器12それぞれの冷媒流量の減少により、蒸発器14における熱媒体から冷媒への放熱量および凝縮器12における冷媒から熱媒体への吸熱量が減少するので、低圧pLおよび高圧pHは降下する。
【0077】
低圧・高圧制御部54は、例えば、低圧用圧力センサ63により検知される低圧pLを検知しつつ、検知された値と目標の圧力との偏差が解消されるように、制御装置5により圧縮機11の駆動回路部に対して操作量としての回転数N(制御指令)を与えるフィードバック制御を行うことができる。このとき、低圧・高圧制御部54は、高圧pHを上限の2.8MPa以下に制限する。
【0078】
[第2変形例]
ヒータモードHT時の低圧pLおよび高圧pHの制御は、ポンプ21,22の回転数nを制御することによっても行うことができる。
その場合、ポンプ21,22の少なくとも一方は、モータに駆動電流を印加する図示しない駆動回路部により、熱媒体を圧送する機構の回転数nが可変に制御可能に構成されていることが好ましい。
【0079】
ポンプ21,22は所定の効率ηで作動し、簡単には、モータからポンプ21,22に出力される軸動力Pと、(1-効率η)との積である損失の大部分が熱エネルギーとして熱媒体に伝達される。ポンプ21,22の回転数nが増加すると、ポンプ21,22による熱媒体の吐出流量が増加するとともに、ポンプ21,22から熱媒体に伝達される熱量が増加する。そうすると、蒸発器14における熱媒体から冷媒への放熱量が増加するので、低圧pLは上昇する。
また、ポンプ21,22による熱媒体の吐出流量の増加により、凝縮器12における冷媒から熱媒体への吸熱量が増加する。
【0080】
一方、ポンプ21,22の回転数nが減少すると、ポンプ21,22による熱媒体の吐出流量が減少するとともに、ポンプ21,22から熱媒体に伝達される熱量が減少する。
そうすると、蒸発器14における熱媒体から冷媒への放熱量および凝縮器12における冷媒から熱媒体への吸熱量が減少するので、低圧pLおよび高圧pHは降下する。
【0081】
低圧・高圧制御部54は、例えば、低圧用圧力センサ63により検知される低圧pLを検知しつつ、検知された値と目標の圧力との偏差が解消されるように、制御装置5によりポンプ21,22の駆動回路部に対して操作量としての回転数n(制御指令)を与えるフィードバック制御を行うことができる。このとき、低圧・高圧制御部54は、高圧pHを上限の2.8MPa以下に制限する。
【0082】
ポンプ21,22の吐出口の開度調整等により、ポンプ21,22による熱媒体の吐出流量が可変に構成されている場合は、回転数nに代えて吐出流量を操作量としてフィードバック制御を行うことができる。
【0083】
[第3変形例]
ヒータモードHT時には、熱負荷としての空調負荷に応じて低圧pLおよび高圧pHをそれぞれ制御することが可能である。
ここで、冷房負荷や暖房負荷である「空調負荷」は、下記の式(1)により定義される。式中の空気温度は、厳密には空気エンタルピである。式中の風量は、厳密には質量流量である。
空調負荷L=風量Q×(目標吹き出し空気温度T- 吸い込み空気温度T)…(1)
暖房負荷は、外気温が低下するにつれて大きくなる。
【0084】
風量Qは、室内送風機25Aおよび車両の走行により室内熱交換器25に送られる空気の体積流量を言う。風量Qは、例えば、乗員による設定段数もしくは温調システム1による設定段数と、吹き出しモード(Face/Foot/Defogger等)とから取得可能である。
目標吹き出し空気温度Tは、HVACユニットUから車室8内に吹き出される空気の目標温度であり、車室8内の空気の目標温度から設定される。目標吹き出し空気温度Tは、温度センサ62より検知される。
吸い込み空気温度Tは、室内送風機25Aおよび車両の走行により室内熱交換器25に導入される空気の温度を言う。吸い込み空気温度Tは、内気循環が設定されている場合は、図示しない室温センサにより検知される車室8内の室温に相当し、外気導入が設定されている場合は、外気温センサ61により検知される外気温に相当する。
外気温が0℃を大幅に下回る場合は、TとTとの差ΔTが大きいので暖房負荷が高い。
【0085】
ヒータモードHTのとき、制御装置5は、例えば、式(1)により演算される空調負荷Lが相対的に低いほど、蒸発器流量調整弁14Vにより低圧pLを降下させ、空調負荷Lが相対的に高いほど、蒸発器流量調整弁14Vにより低圧pLを上昇させる。
また、空調負荷Lが低い場合には、膨張弁13の凝縮器出口目標過冷却度を小さくすることで高圧pHを低下させる。
【0086】
ヒータモードHTのときの高圧pHの制御に関しても、制御装置5は、例えば、式(1)により演算される空調負荷Lが相対的に低いほど、凝縮器流量調整弁12Vにより高圧pHを降下させ、空調負荷Lが相対的に高いほど、凝縮器流量調整弁12Vにより高圧pHを上昇させる。
【0087】
ここで、空調負荷Lに応じて低圧pLおよび高圧pHを制御するため、蒸発器流量調整弁14Vおよび凝縮器流量調整弁12Vを用いて流量比を変えることに代えて、圧縮機11の回転数Nを増減させたり、ポンプ21,22の回転数nを増減させたりすることができる。
【0088】
第3変形例によれば、空調負荷Lに十分な暖房能力を担保しつつ、動力を抑えて省電力で運転することが可能となる。
空調負荷Lが低い場合でも、圧縮機11の回転数Nは、圧縮機11に潤滑油を戻すために必要な回転数以下に下げることができない。そのため、空調負荷Lに暖房能力を対応させるために低圧pLを下げることが有効である。
【0089】
[第4変形例]
温調制御部51が、空調負荷Lに応じて圧縮機11の回転数Nを増減させている場合がある。その場合は、空調負荷Lに代えて圧縮機11の回転数Nに対して閾値を適用することで、上記と同様にして低圧pLおよび高圧pHをそれぞれ制御することが可能である。例えば、圧縮機11の回転数Nが所定の第1閾値に対して小さい場合は、上記実施形態で説明したフィードバック制御と同様にして、蒸発器流量調整弁14Vにより、蒸発器14に流入する熱媒体の流量を減少させることで、冷媒回路10の低圧pLを降下させる。
また、回転数Nが第1閾値よりも大きい第2閾値に対して大きい場合は、上記実施形態で説明したフィードバック制御と同様にして、蒸発器流量調整弁14Vにより、蒸発器14に流入する熱媒体の流量を増加させることで、冷媒回路10の低圧pLを上昇させる。
【0090】
回転数Nに応じて低圧pLおよび高圧pHを制御するため、蒸発器流量調整弁14Vおよび凝縮器流量調整弁12Vを用いて流量比を変えることに代えて、ポンプ21,22の回転数nを増減させることができる。
【0091】
第4変形例によっても、空調負荷Lに十分な暖房能力を担保しつつ、動力を抑えて省電力で運転することが可能となる。
【0092】
[第5変形例]
上記実施形態の温調システム1は、図6に示す起動時ヒータモードHT0を備えていてもよい。起動時ヒータモードHT0は、直列回路CCを用いる。
起動時ヒータモードHT0では、室外熱交換器23により外気から熱媒体に吸熱させるため、室外熱交換器23に熱媒体を流入させる。また、冷媒の加温を車室8内の暖房に優先させるため、凝縮器12に熱媒体を流入させずに凝縮器バイパス経路12Aへと迂回させることで、冷媒の熱媒体への放熱を防ぐ。そして、蒸発器14において熱媒体から冷媒へと放熱させる。
さらには、室内熱交換器25における空気と熱媒体との熱交換を抑えるために、室内送風機25Aの作動を停止させることが好ましい。
【0093】
室外熱交換器23の出口から、凝縮器バイパス経路12Aおよび室内熱交換器25を経て蒸発器14の入口までの間に亘り、熱媒体と冷媒との間の熱の授受、および熱媒体と空気との間の熱の授受は抑えられている。外気から吸熱した熱媒体は、凝縮器バイパス経路12Aと室内熱交換器25とを通過して、冷媒が流れる蒸発器14まで熱を搬送する。
【0094】
外気温が氷点下の非常に低い状態で車両が停止している間に、熱媒体および冷媒のそれぞれの温度は外気温と同程度にまで下がっている。そのため、温調システム1の起動により圧縮機11の起動が開始され、冷凍サイクルが始動した直後は、冷媒が熱媒体を冷却することで冷媒回路10の低圧が降下し、冷媒の蒸発温度は外気温よりも低くなる。しかし、起動時ヒータモードHT0によれば、外気から熱媒体に吸熱した熱を冷媒に継続的に伝達することで、冷媒回路10の低圧が次第に上昇し、蒸発温度も上昇する。その後、冷媒回路10の低圧が所定値まで上昇し、冷媒回路10が定常運転することで、圧縮機11の動力から熱媒体に取り出した熱により温調対象を加熱することが可能となるのでヒータモードHTに移行すると良い。
【0095】
熱媒体の温度が外気温を超えると外気からの吸熱が不十分となるので、制御装置5は、熱媒体が外気温に近づいた時に温調システム1をヒータモードHTに移行させると良い。例えば、外気温(例えば-20℃)に対して所定の温度差αだけ低い閾値Tを熱媒体の温度が上回った時にヒータモードHTに移行させるとよい。
【0096】
上記以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
以上に開示した低圧pLの複数の制御方法は、適宜に組み合わせることができる。同様に、以上に開示した高圧pHの複数の制御方法も、適宜に組み合わせることができる。
【0097】
温調システム1は、少なくともヒータモードHTを備えていれば足りる。
温調システム1は、温調機器としての室内熱交換器25に加えて、あるいは室内熱交換器25に代えて、バッテリー装置等の他の温調機器を備えていてもよい。その場合、熱媒体回路20は、他の温調機器を熱媒体により冷却または加熱するための経路を含む。
【0098】
[付記]
以上の開示により、以下に記す構成が把握される。
〔1〕車両用の温調システムであって、
圧縮機(11)、高圧側熱交換器(12)、減圧部(13)、および低圧側熱交換器(14)を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路(10)と、
前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路(20)と、
前記冷媒回路(10)の冷媒の圧力を制御可能に構成される制御装置(5)と、を備え、
前記熱媒体回路(20)は、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器(12)と、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器(14)と、
前記熱媒体を圧送可能に構成されるポンプ(21,22)と、
外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器(23)と、
前記熱媒体により加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器(25)と、
前記室外熱交換器から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路(24)と、を含み、
前記制御装置(5)は、
前記高圧側熱交換器(12)から流出した前記熱媒体が、前記温調機器(25)を経由して前記低圧側熱交換器(14)に流入し、さらに前記室外バイパス経路(24)を通り、前記高圧側熱交換器(12)に流入する圧縮機熱源モード(HT)において、前記低圧側熱交換器(14)を流れる前記熱媒体の流量の調整により、前記冷媒回路(10)の低圧(pL)を0.2MPa以上、1.2MPa以下に制御するように構成されている、車両用温調システム。
【0099】
〔2〕前記冷媒は、R1234yf、またはプロパンに相当する、
〔1〕項に記載の車両用温調システム。
【0100】
〔3〕前記熱媒体回路(20)は、
前記低圧側熱交換器(14)から前記熱媒体を迂回させる低圧側バイパス経路(14A)と、
前記低圧側熱交換器(14)と前記低圧側バイパス経路(14A)との前記熱媒体の流量比を調整可能に構成される低圧側流量調整弁(14V)と、を含み、
前記制御装置(5)は、
前記圧縮機熱源モード(HT)において、前記低圧側流量調整弁(14V)に対する制御指令に基づく前記流量比の調整により、前記低圧(pL)を制御するように構成されている、
〔1〕または〔2〕項に記載の車両用温調システム。
【0101】
〔4〕前記圧縮機(11)は、前記冷媒を圧縮する機構の回転数を可変に制御可能に構成され、
前記制御装置(5)は、
前記圧縮機熱源モード(HT)において、前記圧縮機(11)に対する制御指令に基づく前記回転数の制御により、前記冷媒の流量を調整することで、前記冷媒回路(10)の前記低圧(pL)および高圧(pH)のうち少なくとも前記低圧(pL)を制御するように構成されている、
〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
【0102】
〔5〕前記ポンプ(21,22)は、前記熱媒体を圧送する機構の回転数、または前記ポンプから吐出される前記熱媒体の吐出流量を可変に制御可能に構成され、
前記制御装置(5)は、
前記圧縮機熱源モード(HT)において、前記ポンプ(21,22)に対する制御指令に基づく前記回転数または前記吐出流量の制御により、前記冷媒回路(10)の前記低圧(pL)および高圧(pH)のうち少なくとも前記低圧(pL)を制御するように構成されている、
〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
【0103】
〔6〕前記制御装置(5)は、
前記圧縮機熱源モード(HT)において、熱負荷または前記圧縮機(11)の回転数に応じて前記冷媒回路(10)の前記低圧(pL)および高圧(pH)のうち少なくとも前記低圧(pL)を制御するように構成されている、
〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
【0104】
〔7〕前記熱媒体回路(20)は、
前記高圧側熱交換器(12)から前記熱媒体を迂回させる高圧側バイパス経路(12A)と、
前記高圧側熱交換器(12)と前記高圧側バイパス経路(12A)との前記熱媒体の流量比を調整可能に構成される高圧側流量調整弁(12V)と、を含み、
前記制御装置(5)は、
前記圧縮機熱源モード(HT)において、前記高圧側流量調整弁(12V)に対する制御指令に基づく前記流量比の調整により、前記冷媒回路(10)の高圧(pH)を制御するように構成される、
〔1〕から〔6〕のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
【0105】
〔8〕車両用の温調システムを用いる温調方法であって、
前記温調システムは、
圧縮機(11)、高圧側熱交換器(12)、減圧部(13)、および低圧側熱交換器(14)を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路(10)と、
前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路(20)と、を備え、
前記熱媒体回路(20)は、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器(12)と、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器(14)と、
前記熱媒体を圧送可能に構成されるポンプ(21,22)と、
外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器(23)と、
前記熱媒体により加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器(25)と、
前記室外熱交換器から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路(24)と、を含み、
前記温調方法は、
前記高圧側熱交換器(12)から流出した前記熱媒体が、前記温調機器(25)を経由して前記低圧側熱交換器(14)に流入し、さらに前記室外バイパス経路(24)を通り、前記高圧側熱交換器(12)に流入する圧縮機熱源モード(HT)において、前記低圧側熱交換器(14)を流れる前記熱媒体の流量を調整することで、前記冷媒回路(10)の低圧を0.2MPa以上、1.2MPa以下に制御する、
車両用温調方法。
【符号の説明】
【0106】
1 温調システム
5 制御装置
8 車室
10 冷媒回路
11 圧縮機
12 凝縮器(高圧側熱交換器)
12A 凝縮器バイパス経路(高圧側バイパス経路)
12C 高圧側流量指令源
12V 凝縮器流量調整弁(高圧側流量調整弁)
13 膨張弁(減圧部)
14 蒸発器(低圧側熱交換器)
14A 蒸発器バイパス経路(低圧側バイパス経路)
14C 低圧側流量指令源
14V 蒸発器流量調整弁
20 熱媒体回路
21 第1ポンプ
22 第2ポンプ
23 室外熱交換器
23A 室外送風機
24 室外バイパス経路
25 室内熱交換器(温調機器)
25A 室内送風機
31 第1切替弁
32 第2切替弁
33 第3切替弁
51 温調制御部
52 低圧制御部
53 高圧制御部
54 低圧・高圧制御部
61 外気温センサ
62 温度センサ
63 低圧用圧力センサ
64 高圧用圧力センサ
501 メモリ
502 演算部
503 記憶部
504 入出力部
C1 低圧側回路
C2 高圧側回路
CC 直列回路
,F 圧縮機動力
,f 圧縮機動力
HP ヒートポンプモード
HT ヒータモード
HT0 起動時ヒータモード
LPP 低圧-圧縮機動力特性
U HVACユニット
Y1,Y2 冷凍サイクル
pH 高圧
pL 低圧
Δh エンタルピ差
Δp 圧力差
【要約】
【課題】外気温が低いため熱源の確保が難しい状況であっても加熱能力を担保することが可能な車両用の温調システムおよび温調方法を提供すること。
【解決手段】温調システムは、冷媒回路と、熱媒体回路とを備える。熱媒体回路は、高圧側熱交換器と、低圧側熱交換器と、ポンプと、室外熱交換器と、温調機器と、室外バイパス経路とを含む。制御装置は、高圧側熱交換器から流出した熱媒体が、温調機器を経由して低圧側熱交換器に流入し、さらに室外バイパス経路を通り、高圧側熱交換器に流入する圧縮機熱源モードにおいて、低圧側熱交換器を流れる熱媒体の流量の調整により、冷媒回路の低圧を0.2MPa以上、1.2MPa以下に制御するように構成されている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6