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特許7372419果汁感が増強、調和された容器詰めアルコール飲料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】果汁感が増強、調和された容器詰めアルコール飲料
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/06 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
C12G3/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022157272
(22)【出願日】2022-09-30
(62)【分割の表示】P 2020176522の分割
【原出願日】2016-01-26
(65)【公開番号】P2022173472
(43)【公開日】2022-11-18
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】307027577
【氏名又は名称】麒麟麦酒株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】日下部 真理
(72)【発明者】
【氏名】渡部 健一
(72)【発明者】
【氏名】貴志 文昭
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-262642(JP,A)
【文献】特開2015-123008(JP,A)
【文献】特開2007-319050(JP,A)
【文献】特開2014-128251(JP,A)
【文献】既存添加物名簿収載品目リスト,公益財団法人 日本食品化学研究振興財団,2014年01月30日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール濃度が1~12w/v%の柑橘系香味成分を含有するアルコール飲料において、飲料中に、パラサイメンを0.05~1.0ppm含有させ、かつ塩化ナトリウムを0.003~0.05w/v%含有させることを特徴とする、柑橘系香味成分を含有するアルコール飲料の果汁感増強、改善されかつ、アルコール感が抑制された高香味容器詰アルコール飲料の製造方法。
【請求項2】
柑橘系香味成分として、柑橘系果汁を含有させたことを特徴とする請求項1に記載の高香味容器詰アルコール飲料の製造方法。
【請求項3】
アルコール濃度が4~10v/v%である請求項1又は2に記載の高香味容器詰アルコール飲料の製造方法
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の容器詰アルコール飲料の製造方法によって製造された果汁感増強、改善され、かつ、アルコール感が抑制された高香味容器詰アルコール飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール濃度が1~12w/v%の柑橘系香味成分を含有するアルコール飲料において、アルコール飲料の果汁感の増強、調和がとれ、マイルドなアルコール感を付与した高香味アルコール飲料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の嗜好の多様化にともない、容器詰めのアルコール飲料についても、果汁などの香味成分原料とアルコールを混合して製造する果汁入りアルコール飲料等、多種多様なものが製造販売されている。その中で、果汁などの原料とアルコールを混合して製造する、チューハイ或いはカクテル類のような容器詰アルコール飲料(RTD飲料)は製造販売量が大きいアルコール飲料カテゴリーのひとつとなっている。特に、RTD飲料において、レモンなどの柑橘系の香味を付与したものは、その爽やかな香味がアルコールと混和して、消費者の人気が高いアルコール飲料として提供されている。
【0003】
果汁入りのアルコール飲料等においては、果汁等の添加によって、アルコール飲料に果汁等の持つ香味の付与と、アルコール感の調和を行って、アルコール飲料の香味・味覚の調整が行われているが、該香味・味覚の調整に際しては、アルコール飲料の嗜好性を増すための、果汁感やアルコール感等の調和のための方法が検討されている。特に、アルコール濃度が12v/v%以下の比較的アルコール濃度が低いアルコール飲料の場合には、添加できる、果汁等の量も限定されるため、該添加の範囲で、果汁感を増す方法や、アルコール感等を調和する方法が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮から得られるピールオイルとを混合した混合物に、アルコールを添加、混合し、不溶成分を除去したアルコール抽出液を用いて、アルコール飲料の柑橘果実由来の香味を向上させる方法が、特許文献2には、0.01~10重量%のアルコールと有機酸を含む果汁等を含むアルコール飲料に、ポリ-γ-グルタミン酸又はその塩を添加することにより、低アルコール飲料のアルコール感を増強する方法が、特許文献3には、果汁含有アルコール飲料に、ラカンカ抽出物を配合することにより、果汁含有アルコール飲料の果汁感を増強する方法が、開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、果汁や、高甘味度甘味料等を配合したアルコール飲料において、リン酸又はその塩と、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等の有機酸とからなる酸味料を配合することにより、アルコール飲料に良好な香味とスッキリ感を付与する方法が、特許文献5には、チュウハイのようなレモンフレーバー含有アルコール飲料等に、アスコルビン酸ナトリウムを添加して、飲料のpHを調整することにより、レモンフレーバーの香気劣化を抑制して、レモンフレーバーのフレッシュの香りを長期間保持する方法が、特許文献6には、アルコール飲料にスクラロースを添加して、アルコールに起因する苦みやバーニング感を抑えて、アルコールの軽やかな風味を生かす方法が開示されている。
【0006】
上記のとおり、アルコール飲料において、アルコール飲料の果汁感の増強や、アルコール感の調和を図る各種の方法が開示されているが、該方法においては、果汁感やアルコール感等の香味の改善に用いられる添加物等の香味への影響を避けることができず、特に、爽やかな香味の付与が特徴の柑橘系アルコール飲料等においては、上記のような方法を適用して、柑橘系アルコール飲料の香味を生かした嗜好性のある香味・味覚の柑橘系アルコール飲料等を提供することは難しいという問題がある。
【0007】
一方で、アルコール飲料の香味・味覚の改善において、塩類を用いる方法も開示されている。例えば、特許文献7には、麦由来成分を含み、プリン体含有量が1.1mg/100mL以下であるビールテイスト飲料において、飲用アルコールと、塩化カルシウム、食塩、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム及び硫酸アンモニウムの中から選択される少なくとも1つの塩類を混合することにより、プリン体の含有量を低くするために、麦芽の使用比率の低下と、飲用アルコールの添加を行ったビールテイスト飲料の突出したアルコール感を改善する方法が開示されている。また、特許文献8には、アルコール濃度が0.1~12v/v%であるアルコール飲料において、カフェイン、ナリンジン、ニガヨモギ抽出物のような苦味物質と、塩化カリウム、塩化ナトリウムのような塩類を含有させることにより、水のようにのどの渇きをいやし、なおかつボディ感や味の幅があり、爽快であるアルコール飲料を調製することが開示されている。これらの開示のものは、低アルコール飲料における味覚の調整を行ったものであるが、特に、果汁入りアルコール飲料のようなアルコール飲料の香味・味覚の改善に向けられたものではない。
【0008】
他方で、柑橘系の飲料における主要な香気成分として、シトラールが知られており、該シトラールの劣化成分として、パラサイメン(パラシメン)やジメチルスチレンなどが知られている。シトラールは、環化、酸化反応が起こり易く、環化、酸化反応によりパラサイメン(パラシメン)やジメチルスチレンなど、香気上好ましくない物質に変化することが知られている。このうちパラサイメンは、樹脂様の香りがあり柑橘系の飲料においては好ましくない成分となる。パラサイメン(C1014)はモノテルペンであり、ベンゼン環のパラ位がメチル基とイソプロピル基に置換した物質である。天然にはクミンやタイムの精油成分に含まれており、樹脂様の香りを持つ。特にアルコール飲料においては、パラサイメン特有の香りにより調和を損ない、特に好ましくない。上記特許文献5に記載されているように、レモンフレーバー含有飲料のような柑橘系の飲料においては、好ましくないフレーバーであり、飲料の製造に際して、該成分の生成を抑制する方法が採られている。
【0009】
特許文献9には、温州みかん香料を添加した温州みかん風味飲食品において、β-イオノン、サリチル酸メチル、1-p-メンテン-9-オール、1-p-メンテン-9-イルアセテート、サピネン、p-サイメンからなる1種以上を含有させることにより、温州みかん風味飲食品の果汁感の向上を図る例が開示されているが、パラサイメン自体は、柑橘系の飲料における主要な香気成分であるシトラールの劣化成分であり、柑橘系アルコール飲料の製造に際しては、利用されていない。
【0010】
上記のとおり、近年、消費者の嗜好の多様化にともない、果汁などの香味成分原料とアルコールを混合して製造する果汁入りアルコール飲料等、多種多様なアルコール飲料が提供されている中で、柑橘系の香味を付与したものは、その爽やかな香味がアルコールと混和して、消費者の人気が高いアルコール飲料として提供されている。該アルコール飲料において、その爽やかな香味の保持とともに、アルコール飲料の果汁感の増強、調和がとれ、マイルドなアルコール感を付与した高香味アルコール飲料を提供することは、該アルコール飲料の嗜好性を高めるために、更なる課題として挙げられるべきものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2010-252640号公報。
【文献】特開2009-268400号公報。
【文献】特開2015-208246号公報。
【文献】特開2007-117063号公報。
【文献】特開2007-319050号公報。
【文献】特開平8-224075号公報。
【文献】特開2015-107100号公報。
【文献】特開平10-262642号公報。
【文献】特開2015-97513号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、アルコール濃度が1~12w/v%の柑橘系香味成分を含有するアルコール飲料において、柑橘系アルコール飲料の爽やかな香味を保持しつつ、アルコール飲料の果汁感増強、改善されかつ、アルコール感が抑制された高香味の容器詰アルコール飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するべく、柑橘系アルコール飲料の爽やかな香味を保持しつつ、アルコール飲料の果汁感増強、改善されかつ、アルコール感が抑制された高香味の容器詰アルコール飲料の提供について鋭意検討する中で、アルコール濃度が1~12w/v%の柑橘系香味成分を含有するアルコール飲料において、飲料中に、パラサイメンを特定含有量に含有させ、かつ塩化ナトリウムを特定量添加、含有させることにより、柑橘系アルコール飲料の爽やかな香味を保持しつつ、アルコール飲料の果汁感増強、改善されかつ、アルコール感が抑制された高香味の容器詰アルコール飲料を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、アルコール濃度が1~12w/v%の柑橘系香味成分を含有するアルコール飲料において、飲料中に、パラサイメンを0.05~1.0ppm含有させ、かつ塩化ナトリウムを0.003~0.05w/v%添加、含有させることを特徴とする、柑橘系香味成分を含有するアルコール飲料の果汁感の増強、調和がとれ、マイルドなアルコール感を付与した高香味アルコール飲料の製造方法からなる。
【0015】
本発明の高香味アルコール飲料の製造方法において、含有させるパラサイメン自体は、柑橘系の飲料における主要な香気成分であるシトラールの劣化成分であり、柑橘系アルコール飲料の製造に際しては好ましくない成分として利用されない成分であるが、該成分をアルコール飲料中に特定量で含有させ、かつ、塩化ナトリウムを特定量で添加、含有させることにより、該成分の相互作用により、柑橘系アルコール飲料の爽やかな香味を保持しつつ、アルコール飲料の果汁感の増強、調和がとれ、マイルドなアルコール感を付与した高香味のアルコール飲料を製造することができる。
【0016】
本発明のアルコール飲料の製造方法において、アルコール飲料の柑橘系香味成分としては、各種柑橘系フレーバーや柑橘系果汁を用いることができるが、果汁感の増強、調和の目的からは、柑橘系果汁を用いることが好ましい。
【0017】
本発明は、本発明のアルコール飲料の製造方法によって製造された果汁感の増強、調和がとれ、マイルドなアルコール感を付与した高香味アルコール飲料の発明を包含する。また、本発明は、アルコール飲料を容器詰アルコール飲料として調製した高香味アルコール飲料の発明を包含する。
【0018】
すなわち、具体的には本発明は、[1]アルコール濃度が1~12w/v%の柑橘系香味成分を含有するアルコール飲料において、飲料中に、パラサイメンを0.05~1.0ppm含有させ、かつ塩化ナトリウムを0.003~0.05w/v%添加、含有させることを特徴とする、柑橘系香味成分を含有するアルコール飲料の果汁感の増強、調和がとれ、マイルドなアルコール感を付与した高香味アルコール飲料の製造方法や、[2]柑橘系香味成分として、柑橘系果汁を含有させたことを特徴とする前記[1]に記載の高香味アルコール飲料の製造方法や、[3]前記[1]又は[2]に記載のアルコール飲料の製造方法によって製造された果汁感の増強、調和がとれ、マイルドなアルコール感を付与した高香味アルコール飲料や、[4]アルコール飲料が、容器詰アルコール飲料であることを特徴とする前記[3]に記載の高香味アルコール飲料からなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、アルコール濃度が1~12w/v%の柑橘系香味成分を含有するアルコール飲料において、柑橘系アルコール飲料の爽やかな香味を保持しつつ、アルコール飲料の果汁感の増強、調和がとれ、マイルドなアルコール感を付与した高香味のアルコール飲料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、アルコール濃度が1~12w/v%の柑橘系香味成分を含有するアルコール飲料において、飲料中に、パラサイメンを0.05~1.0ppm含有させ、かつ塩化ナトリウムを0.003~0.05w/v%添加、含有させたことを特徴とする、柑橘系香味成分を含有するアルコール飲料の果汁感の増強、調和がとれ、マイルドなアルコール感を付与した高香味アルコール飲料、及びその製造方法からなる。ここで、増強、調和のとれた果汁感とは、果汁本来の持つ香味・味覚を意味する。また、ここでいうマイルドなアルコール感とは、突出したアルコール特有の刺激が抑制され、添加成分による飲料自体の香味への影響も回避されたマイルドなアルコール感を意味する。
【0021】
本発明のアルコール飲料は、アルコール濃度が1~12v/v%のアルコール飲料を対象とするが、好ましくは3~12v/v%、より好ましくは4~10v/v%、更に好ましくは5~10v/v%、最も好ましくは7~10v/v%のものが挙げられる。この範囲にあるとき、本発明の効果、すなわち調和のとれた果汁感が顕著に感じられる。使用するアルコールは、いわゆる原料用アルコール、ウオッカ、ラム、焼酎、スピリッツ類などの蒸留酒などを使用することが香味設計上好ましい。
【0022】
柑橘系アルコール飲料の調製に用いられる柑橘系香味成分としては、柑橘系フレーバーや柑橘系果汁等、柑橘系アルコール飲料の調製に用いられる香味成分を用いることができるが、果汁感の増強、調和の目的からは、柑橘系果汁を用いることが好ましい。該柑橘系果汁の調製原料として用いられる柑橘類果実としては、例えば、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、ライム、ミカン及びユズ、カボス、イヨカンなどの柑橘類を挙げることができるが、特にグレープフルーツ、レモン、オレンジ、ユズなどの柑橘類を挙げることができる。該果汁は、濃縮果汁でもストレート果汁でもよく、使用量はストレート果汁換算で0.1~50%、好ましくは0.1~40%、より好ましくは0.1~20%の範囲で調製される。
【0023】
本発明の柑橘系香味成分を含有するアルコール飲料には、パラサイメンを0.05~1.0ppmの範囲で含有するように調整する。パラサイメンは香料成分として添加しても良いし、パラサイメンを多く含む食品素材を添加することでも良い。アルコール飲料中のパラサイメンの濃度の測定は、飲料をクロロホルムで抽出し、対象成分を濃縮した後、ガスクロマトグラフィー(GC/MS)により定量することができる。該GC/MSの分析条件としては、例えば特開2015-123008号公報に記載の(表2)分析条件を採用することができる。
【0024】
本発明の柑橘系香味成分を含有するアルコール飲料には、塩化ナトリウムを0.003~0.050w/v%の範囲で、添加、配合する。この際、塩化ナトリウムを豊富に含む飲食品原料を使用してもよいが、香味設計の都合上、食品添加物グレードの塩化ナトリウム(食塩)を使用することが好ましい。
【0025】
本発明の柑橘系アルコール飲料の製造における添加成分や添加剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、通常、柑橘系アルコール飲料の製造において用いられる調味成分や添加剤等を用いることができる。例えば、糖類や高甘味度甘味料などの甘味料、果汁以外の各種エキス類、クエン酸やリンゴ酸をはじめとする各種酸味料、香料、着色料など通常のRTD飲料に使用される原料であればいずれも使用可能である。また、二酸化炭素を付与することで炭酸ガス入りのアルコール飲料とすることもできる。
【0026】
本発明のアルコール飲料は、容器詰アルコール飲料として製造することができる。該容器詰アルコール飲料の製造方法自体は、本発明の方法を採用する点を除いて、通常の容器詰アルコール飲料の製造方法と変わるところはない。例えば、具体的な製造方法は次の通りである。酸味料、甘味料、糖類、アルコール、食塩(塩化ナトリウム)、果汁、香料、及びそのほかの必要な原料を、イオン交換水に投入し、攪拌溶解する。その調合液に必要に応じて炭酸ガスを付与した後、缶やビンなどの容器に充填し、最後に所定の殺菌をおこなって容器詰めアルコール飲料とする。或いは、調合液に対してUHT殺菌などの殺菌をおこなった後、ペット容器や紙容器などに充填してもよい。
【実施例
【0027】
以下に、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0028】
[実施例1-24、比較例1-16]
表1に示す基本配合成分に対して、アルコール濃度を4、5、7、10w/v%、塩化ナトリウム濃度を0、0.003、0.015、0.050、0.100w/v%、とそれぞれ組み合わせた試飲用サンプルを調製し、缶容器に充填した後、パストライザーで殺菌して、容器詰めアルコール飲料の試験飲料を調製した。なお、試験アルコール飲料には、パラサイメンを含む香料を添加して、最終濃度が0.32ppmとなる濃度で実施した。炭酸ガス圧は0.16~0.24MPaであった。
【0029】
【表1】
【0030】
<試験飲料の評価1:アルコール低感低減果>
調製した試験飲料は、熟練したパネラー4名による官能評価によって、アルコール感の抑制効果を評価した。評価にあたっては、アルコール感が強いものを15、少ないものを1として、15段階で評価し、食塩無添加で、それぞれのアルコール濃度に対応する試験飲料を「比較例」として、そのアルコール感を評価し、該食塩無添加の各アルコール濃度に対応する「アルコール感」を対照として、各試験飲料(実施例、比較例)における「アルコール感」を比較、評価した。評価点数が1以上ある場合を有意差があると判断した。表中の評価点数において、(-1)は、「アルコール感の緩和が感じられる」;(-2)は、「アルコール感の緩和が大いに感じられる」;(-3~)は、「アルコール感の緩和が顕著に感じられる」ことを基準として数値で表示した。結果(各パネラー評価の平均値)を表2に示す。表2に示されるように、食塩濃度0.003~0.050w/v%の範囲で、アルコール感の低減効果が示された。なお、食塩を0.100w/v%添加した、比較例2、比較例4、比較例6及び比較例8の試験飲料は塩味が強くなりすぎて評価不能であった。
【0031】
【表2】
【0032】
<試験飲料の評価2:果汁感の増強、改善効果>
「試験飲料の評価1」で調製した試験飲料について、果汁感の改善効果の評価を実施した。試験飲料の評価は、熟練したパネラー4名による官能評価によって、果汁感の改善効果について評価した。評価にあたっては、各アルコール濃度において、食塩添加0(0w/v%)の果汁感を基準として、「1」とし、果汁感を5段階で評価し、2(+1)を果汁感の改善効果が感じられる;3(+2)を、果汁感の改善効果がより感じられる;4(+3)果汁感の改善効果が大いに感じられる;5(+4)果汁感の改善効果が顕著に感じられる、ものとして数値で表示した。各アルコール濃度における食塩無添加の対照飲料と比較し、評価点数が1以上ある場合を有意差があると判断した。結果(各パネラー評価の平均値)を表3に示す。表3に示されるように、食塩濃度0.003~0.050w/v%の範囲で、果汁感の増強、改善効果が示された。なお、食塩を0.100w/v%添加した、比較例10、比較例12、比較例14及び比較例16の試験飲料は塩味が強くなりすぎて評価不能であった。
【0033】
【表3】
【0034】
[実施例25-56、比較例17-32]
前記、表1に示す基本配合に対して、アルコールを7、10度(v/v%)、塩化ナトリウム濃度を0.003、0.050w/v%に調整し、パラサイメンを0.00、0.15、0.50、1.00、2.00と変化させた試飲用サンプルを調製し、缶容器に充填した後、パストライザーで殺菌して、容器詰めアルコール飲料の試験飲料を調製した。
【0035】
<試験飲料の評価3:アルコール低感低減果>
調製した試験飲料は、熟練したパネラー4名による官能評価によって、アルコール感の抑制効果を評価した。評価にあたっては、各アルコール濃度及び食塩濃度に対する、パラサイメン無添加(0.00ppm)のアルコール感を「5」とし(比較例)、該比較例を対照として、各パラサイメンの濃度に対応する試験飲料の「アルコール感」を比較、評価した。評価点数が1以上ある場合を有意差があると判断した。表中の評価点数において、(-1)は、「アルコール感の緩和が感じられる」;(-2)は、「アルコール感の緩和が大いに感じられる」;(-3)は、「アルコール感の緩和が顕著に感じられる」;(-4)は、「アルコール感の緩和が特に顕著に感じられる」ことを基準として数値で表示した。結果(各パネラー評価の平均値)を表4に示す。表4に示されるように、パラサイメン0.05~1.000(ppm)の範囲で、アルコール感の低減効果が示された。なお、パラサイメン2.00(ppm)では、パラサイメンの望ましくない樹脂様の香りが付与されて、評価不能であった。
【0036】
【表4】
【0037】
<試験飲料の評価4:果汁感の増強、改善効果>
調製した試験飲料は、熟練したパネラー4名による官能評価によって、果汁感の改善効果を評価した。評価にあたっては、各アルコール濃度及び食塩濃度に対する、パラサイメン無添加(0.00ppm)の果汁感を「1」とし(比較例)、該比較例を対照として、各パラサイメンの濃度に対応する試験飲料の「果汁感」を比較、評価した。果汁感を5段階で評価し、2(+1)を果汁感の改善効果が感じられる;3(+2)を、果汁感の改善効果がより感じられる;4(+3)果汁感の改善効果が大いに感じられる;5(+4)果汁感の改善効果が顕著に感じられる、ものとして数値で表示した。各アルコール濃度及び食塩濃度におけるパラサイメン無添加の対照飲料と比較し、評価点数が1以上ある場合を有意差があると判断した。結果(各パネラー評価の平均値)を表5に示す。表5に示されるように、パラサイメン0.05~1.000(ppm)の範囲で、果汁感の増強、改善効果が示された。なお、パラサイメン2.00(ppm)では、パラサイメンの望ましくない樹脂様の香りが付与されて、評価不能であった。
【0038】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、アルコール濃度が1~12w/v%の柑橘系香味成分を含有するアルコール飲料において、柑橘系アルコール飲料の爽やかな香味を保持しつつ、アルコール飲料の果汁感の増強、調和がとれ、マイルドなアルコール感を付与した高香味のアルコール飲料を提供する。