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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】機械学習装置、予測装置、及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   B23H 7/02 20060101AFI20231024BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20231024BHJP
【FI】
B23H7/02 R
G06N20/00 130
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022504354
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2021007732
(87)【国際公開番号】W WO2021177237
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2020037485
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】尾関 真一
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-003352(JP,A)
【文献】特開2018-097494(JP,A)
【文献】特開2018-169934(JP,A)
【文献】特開平07-178622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意のワイヤカット放電加工機による任意のワークに対する任意のワイヤカット放電加工の加工条件と、前記加工条件によるワイヤカット放電加工前の電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの少なくとも1つの劣化の度合いを含む消耗品情報と、を含む入力データを取得する入力データ取得部と、
前記入力データに含まれる前記加工条件によるワイヤカット放電加工後の前記電極線、前記イオン交換樹脂、前記給電ダイス、及び前記電極線ガイドローラの少なくとも1つの劣化の度合い、を示すラベルデータを取得するラベル取得部と、
前記入力データ取得部により取得された入力データと、前記ラベル取得部により取得されたラベルデータと、を用いて、教師あり学習を実行し、学習済みモデルを生成する学習部と、
を備える機械学習装置。
【請求項2】
前記加工条件は、少なくとも放電出力、加工時間、加工液の種類、前記加工液の液圧、前記電極線の送り速度、及びワークの板厚のうちの一部を含む、請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の機械学習装置により生成された学習済みモデルと、
ワイヤカット放電加工機によるこれから行うワイヤカット放電加工に先立って、前記ワイヤカット放電加工に係る加工条件と、前記ワイヤカット放電加工前の電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの少なくとも1つの劣化の度合いを含む消耗品情報と、を入力する入力部と、
前記学習済みモデルを用いて、前記入力部により入力された、前記加工条件及び前記消耗品情報によるワイヤカット放電加工後の前記電極線、前記イオン交換樹脂、前記給電ダイス、及び前記電極線ガイドローラの少なくとも1つの劣化の度合いを予測する予測部と、
を備える予測装置。
【請求項4】
前記予測部により予測された前記電極線、前記イオン交換樹脂、前記給電ダイス、及び前記電極線ガイドローラの劣化の度合いのうち少なくとも1つが予め設定された閾値を超過した場合、アラームの出力を決定する決定部をさらに備える、請求項3に記載の予測装置。
【請求項5】
前記アラームは、予測された前記劣化の度合いが前記閾値を超過した前記電極線、前記イオン交換樹脂、前記給電ダイス、若しくは前記電極線ガイドローラの交換、又は前記加工条件の調整を指示する、請求項4に記載の予測装置。
【請求項6】
前記学習済みモデルを、前記予測装置からネットワークを介してアクセス可能に接続されるサーバに備える、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の予測装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の機械学習装置を備える、請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の予測装置。
【請求項8】
請求項3から請求項7のいずれか1項に記載の予測装置を備える、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習装置、予測装置、及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤカット放電加工機は、図8に示すように、Z軸方向に張られたワイヤ電極線を加工対象のワークに通し、ワークとワイヤ電極線との間にパルス状の電圧を印加することでワークとワイヤ電極線との間で放電させ、ワークの切断や穴あけ等の加工を行う。このようなワイヤカット放電加工では、ワイヤ電極線とともに、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラ等の部品(以下、「消耗品」ともいう)は使用されるに従い劣化する。このため、例えば、消耗品毎に予め使用可能な時間(以下、「寿命」ともいう)が設定され、累積使用時間が寿命に対する所定の割合(例えば、80%)以上に達した消耗品は順次に交換される。
この点、寿命に対する所定の割合でなく、加工前の現在の残寿命(=寿命-累積使用時間)に対する割合である余裕度を用いることで、実際の加工時間の見積もり誤差を考慮しつつ消耗品の交換時期の判定が可能となり、無駄なく消耗品を使用することが可能となる技術が知られている。例えば、特許文献1参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5595559号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、消耗品の劣化の度合い(以下、「劣化度」ともいう)は、ワイヤカット放電加工の加工条件(例えば、放電電圧、加工液の種類、加工液圧、加工板厚等)によって変化してしまう。しかしながら、従来のシミュレーションでは、加工条件によって消耗品の劣化度が変化することが考慮されていない。このため、加工時間の見積もりに誤差が生じ、正確な残寿命を予測することが困難である。そして、正確な残寿命を予測できない場合、各消耗品の劣化により、加工効率及び加工精度が落ちてしまうという問題もある。
また、加工条件による消耗品の劣化度の変化は、依然として作業者の経験によって判断され、作業者の負担が大きい。
【0005】
そこで、ワイヤカット放電加工を行う前に、前記ワイヤカット放電加工を行った場合の消耗品の劣化度を予測できる学習済みモデルを生成することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の機械学習装置の一態様は、任意のワイヤカット放電加工機による任意のワークに対する任意のワイヤカット放電加工の加工条件と、前記加工条件によるワイヤカット放電加工前の電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの少なくとも1つの劣化の度合いを含む消耗品情報と、を含む入力データを取得する入力データ取得部と、前記入力データに含まれる前記加工条件によるワイヤカット放電加工後の前記電極線、前記イオン交換樹脂、前記給電ダイス、及び前記電極線ガイドローラの少なくとも1つの劣化の度合い、を示すラベルデータを取得するラベル取得部と、前記入力データ取得部により取得された入力データと、前記ラベル取得部により取得されたラベルデータと、を用いて、教師あり学習を実行し、学習済みモデルを生成する学習部と、を備える。
【0007】
(2)本開示の予測装置の一態様は、(1)の機械学習装置により生成された学習済みモデルと、ワイヤカット放電加工機によるこれから行うワイヤカット放電加工に先立って、前記ワイヤカット放電加工に係る加工条件と、前記ワイヤカット放電加工前の電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの少なくとも1つの劣化の度合いを含む消耗品情報と、を入力する入力部と、前記学習済みモデルを用いて、前記入力部により入力された、前記加工条件及び前記消耗品情報によるワイヤカット放電加工後の前記電極線、前記イオン交換樹脂、前記給電ダイス、及び前記電極線ガイドローラの少なくとも1つの劣化の度合いを予測する予測部と、を備える。
【0008】
(3)本開示の制御装置の一態様は、(2)の予測装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
一態様によれば、ワイヤカット放電加工を行う前に、前記ワイヤカット放電加工を行った場合の消耗品の劣化度を予測できる学習済みモデルを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る数値制御システムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。
図2図1の予測装置に提供される学習済みモデルの一例を示す図である。
図3】ワイヤ電極線の劣化度の一例を示す図である。
図4】消耗品管理テーブルの一例を示す図である。
図5】運用フェーズにおける予測装置の予測処理について説明するフローチャートである。
図6】数値制御システムの構成の一例を示す図である。
図7】数値制御システムの構成の一例を示す図である。
図8】ワイヤカット放電加工機の概略の一例を図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について、図面を用いて説明する。ここでは、ワイヤ電極線として使い捨てでない再利用可能な電極線の場合について例示する。なお、本発明は、再利用可能なワイヤ電極線に限定されず、使い捨てのワイヤ電極線を用いたワイヤカット放電加工の場合にも適用可能である。
<一実施形態>
図1は、一実施形態に係る数値制御システムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。図1に示すように、数値制御システムは、制御装置10、ワイヤカット放電加工機20、予測装置30、及び機械学習装置40を有する。
【0012】
制御装置10、ワイヤカット放電加工機20、予測装置30、及び機械学習装置40は、図示しない接続インタフェースを介して互いに直接接続されてもよい。また、制御装置10、ワイヤカット放電加工機20、予測装置30、及び機械学習装置40は、LAN(Local Area Network)やインターネット等の図示しないネットワークを介して相互に接続されていてもよい。この場合、制御装置10、ワイヤカット放電加工機20、予測装置30、及び機械学習装置40は、かかる接続によって相互に通信を行うための図示しない通信部を備えている。なお、後述するように、制御装置10は、予測装置30及び機械学習装置40を含むようにしてもよい。また、ワイヤカット放電加工機20が制御装置10を含むようにしてもよい。
【0013】
制御装置10は、当業者にとって公知の数値制御装置であり、制御情報に基づいて動作指令を生成し、生成した動作指令をワイヤカット放電加工機20に送信する。これにより、制御装置10は、ワイヤカット放電加工機20の動作を制御する。また、制御装置10は、前記制御情報を予測装置30にも出力する。
なお、制御情報は、例えば、制御装置10に含まれるタッチパネル等の入力装置(図示しない)を介して作業員により入力されたワイヤカット放電加工の加工条件を含んでもよい。ワイヤカット放電加工の加工条件には、例えば、これから行うワイヤカット放電加工における、少なくとも放電出力、加工時間、加工液の種類、加工液圧、ワイヤの送り速度、及びワーク板厚のうちの一部が含まれてもよい。
【0014】
また、制御装置10は、例えば、制御装置10の入力装置(図示しない)を介してワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラ等の消耗品の選択を作業員により受け付け、選択された消耗品に関する情報を後述する予測装置30に出力してもよい。この場合、制御装置10は、ワイヤカット放電加工機20に選択可能なワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラに関する識別情報(以下、「消耗品ID」ともいう)の一覧を、消耗品データテーブルとして図示しないHDD(Hard Disk Drive)等に記憶してもよい。そして、制御装置10は、作業員により選択されたワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの消耗品IDを予測装置30に出力してもよい。
【0015】
ワイヤカット放電加工機20は、図8に示すように、当業者にとって公知のワイヤカット放電加工機であり、制御装置10の動作指令に基づいて、加工対象のワークに対してワイヤカット放電加工を行う。ワイヤカット放電加工機20は、制御装置10の動作指令に基づく動作状態を示す情報を、制御装置10にフィードバックする。
【0016】
予測装置30は、運用フェーズにおいて、ワイヤカット放電加工機20によるワイヤカット放電加工に先立って、制御装置10からの制御情報に含まれる前記ワイヤカット放電加工の加工条件を取得してもよい。また、予測装置30は、例えば、制御装置10から少なくともワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの消耗品IDを入力して、後述する消耗品管理テーブル352(1)-352(4)に基づいて各消耗品の現時点(すなわち、ワイヤカット放電加工前)の劣化度を含む消耗品情報を取得してもよい。予測装置30は、取得した加工条件と消耗品情報とを、後述する機械学習装置40から提供された学習済みモデルに入力することにより、ワイヤカット放電加工後の選択されたワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラ等の劣化度を予測することができる。
なお、消耗品情報は、ワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの現時点の劣化度とともに、ワイヤ電極線の材質及び太さ、イオン交換樹脂の材質、給電ダイスの材質、及び電極線ガイドローラの材質等を含んでもよい。
【0017】
ここで、ワイヤ電極線の材質には、モリブデン、タングステン、真鍮等がある。また、ワイヤ電極線の太さは、直径0.1mmから0.3mm等の範囲である。
イオン交換樹脂の材質には、カチオン樹脂とアニオン樹脂との混合比率が「1:1」、「1.3:1」、「1:1.5」等のものがある。なお、イオン交換樹脂は、カチオン樹脂やアニオン樹脂以外の樹脂が混合されたものでもよい。
給電ダイスの材質には、超硬合金、サーメット、銀タングステン合金等がある。
電極線ガイドローラには、ウレタン、スチール等がある。
【0018】
予測装置30を説明する前に、ワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの劣化度、及び学習済みモデルを生成するための機械学習について説明する。
【0019】
<ワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの劣化度について>
「ワイヤ電極線の劣化度」は、ワイヤカット放電加工機20によるワイヤカット放電加工で使用されたワイヤ電極線における汚れや変形の度合いを示す。例えば、新品のワイヤ電極線は、ワイヤ電極線の断面が円形の形状を有し最も良い状態であることから、「ワイヤ電極線の劣化度」は「0%」となる。そして、「ワイヤ電極線の劣化度」は、ワイヤ電極線が繰り返し使用されるに従いスパッタの付着や放電時の熱による変形等により増加し、例えば、ワイヤ電極線の交換を行う必要があるとき「100%」となる。
「イオン交換樹脂の劣化度」は、ワイヤカット放電加工機20によるワイヤカット放電加工で使用されたイオン交換樹脂における汚れの度合いを示す。例えば、新品のイオン交換樹脂は、最も良い状態であることから、「イオン交換樹脂の劣化度」は「0%」となる。そして、「イオン交換樹脂の劣化度」は、ワイヤカット放電加工が繰り返し行われるに従い加工液中に含まれるスパッタ等の不純物により増加し、例えば、イオン交換樹脂の交換を行う必要があるとき「100%」となる。
「給電ダイスの劣化度」は、ワイヤカット放電加工機20によるワイヤカット放電加工で使用された給電ダイスにおける汚れや変形の度合いを示す。例えば、新品の給電ダイスは、最も良い状態であることから、「給電ダイスの劣化度」は「0%」となる。そして、「給電ダイスの劣化度」は、ワイヤカット放電加工が繰り返し行われるに従いワイヤ電極線との接触に伴う変形やスパッタの付着等により増加し、例えば、給電ダイスの交換を行う必要があるとき「100%」となる。
「電極線ガイドローラの劣化度」は、ワイヤカット放電加工機20によるワイヤカット放電加工で使用された電極線ガイドローラにおける汚れや変形の度合いを示す。例えば、新品の電極線ガイドローラは、最も良い状態であることから、「電極線ガイドローラの劣化度」は「0%」となる。そして、「電極線ガイドローラの劣化度」は、ワイヤカット放電加工が繰り返し行われるに従いワイヤ電極線との摩擦に伴う変形やスパッタの付着等により増加し、例えば、電極線ガイドローラの交換を行う必要があるとき「100%」となる。
なお、ワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの劣化度は、「0%」から「100%」の範囲のパーセント値としたが、例えば、「0」から「1」の範囲の値等でもよい。
【0020】
<機械学習装置40>
機械学習装置40は、例えば、予め、任意のワイヤカット放電加工機による任意のワークに対する任意のワイヤカット放電加工の加工条件と、当該ワイヤカット放電加工で使用された加工前のワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの劣化度を含む消耗品情報と、を含む入力データを取得する。
また、機械学習装置40は、取得した入力データの加工条件によるワイヤカット放電加工後のワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの劣化度、を示すデータをラベル(正解)として取得する。
機械学習装置40は、取得した入力データとラベルとの組の訓練データにより教師あり学習を行い、後述する学習済みモデルを構築する。
そうすることで、機械学習装置40は、構築した学習済みモデルを予測装置30に提供することができる。
機械学習装置40について、具体的に説明する。
【0021】
機械学習装置40は、図1に示すように、入力データ取得部401、ラベル取得部402、学習部403、及び記憶部404を有する。
入力データ取得部401は、学習フェーズにおいて、図示しない通信部を介して、任意のワイヤカット放電加工機による任意のワークに対する任意のワイヤカット放電加工の加工条件と、前記加工条件によるワイヤカット放電加工前のワイヤ電極線等の劣化度を含む消耗品情報と、を入力データとして制御装置10等から取得する。
なお、加工条件には、上述したように、放電出力、加工時間、加工液の種類、加工液圧、ワイヤの送り速度、及びワーク板厚等が含まれる。また、消耗品情報には、ワイヤカット放電加工前のワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの劣化度とともに、ワイヤ電極線の材質、ワイヤ電極線の太さ、イオン交換樹脂の材質、給電ダイスの材質、及び電極線ガイドローラの材質等が含まれる。
入力データ取得部401は、取得した入力データを記憶部404に対して出力する。
【0022】
ラベル取得部402は、入力データに含まれる加工条件によるワイヤカット放電加工後のワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの劣化度、を示すデータをラベルデータ(正解データ)として取得する。ラベル取得部402は、取得したラベルデータを記憶部404に対して出力する。
なお、ラベルは、上述したように、「0%」から「100%」の範囲の値である。
【0023】
学習部403は、上述の入力データとラベルとの組を訓練データとして受け付け、受け付けた訓練データを用いて、教師あり学習を行うことにより、加工対象のワークに対してこれから行うワイヤカット放電加工の加工条件と、選択されたワイヤ電極線等の現時点の劣化度を含む消耗品情報と、に基づいて、ワイヤカット放電加工後のワイヤ電極線等の劣化度を予測する学習済みモデル351を構築する。
そして、学習部403は、構築した学習済みモデル351を予測装置30に対して提供する。
【0024】
ここで、教師あり学習を行うための訓練データは、多数用意されることが望ましい。例えば、熟練者により、あらゆるワイヤカット放電加工の加工条件とあらゆるワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラとの組合せそれぞれにおいて、ワイヤカット放電加工前後のワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの劣化度が評価された訓練データを作成するようにしてもよい。あるいは、顧客の工場等で実際に稼動している様々な場所の制御装置10のそれぞれから訓練データを取得するようにしてもよい。
【0025】
図2は、図1の予測装置30に提供される学習済みモデル351の一例を示す図である。ここでは、学習済みモデル351は、図2に示すように、これから行うワイヤカット放電加工の加工条件と、選択されたワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの現時点の劣化度を含む消耗品情報を入力層として、この加工条件によるワイヤカット放電加工後のワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの劣化度、を示すデータを出力層とする多層ニューラルネットワークを例示する。
なお、これから行うワイヤカット放電加工の加工条件には、放電出力、加工時間、加工液の種類、加工液圧、ワイヤの送り速度、及びワーク板厚等が含まれる。また、消耗品情報には、現時点のワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの劣化度とともに、ワイヤ電極線の材質、ワイヤ電極線の太さ、イオン交換樹脂の材質、給電ダイスの材質、及び電極線ガイドローラの材質等が含まれる。
【0026】
また、学習部403は、学習済みモデル351を構築した後に、新たな教師データを取得した場合には、学習済みモデル351に対してさらに教師あり学習を行うことにより、一度構築した学習済みモデル351を更新するようにしてもよい。
また、機械学習装置40は、他の機械学習装置40との間で学習済みモデル351を共有して教師あり学習を行うようにしてもよい。そうすることで、複数の機械学習装置40それぞれにて学習済みモデル351を分散して教師あり学習を行うことが可能となり、教師あり学習の効率を向上させることが可能となる。
【0027】
上述した教師あり学習は、オンライン学習で行ってもよく、バッチ学習で行ってもよく、ミニバッチ学習で行ってもよい。
オンライン学習とは、ワイヤカット放電加工機20によるワイヤカット放電加工が行われ、訓練データが作成される都度、即座に教師あり学習を行うという学習方法である。また、バッチ学習とは、ワイヤカット放電加工機20によるワイヤカット放電加工が行われ、訓練データが作成されることが繰り返される間に、繰り返しに応じた複数の訓練データを収集し、収集した全ての訓練データを用いて、教師あり学習を行うという学習方法である。さらに、ミニバッチ学習とは、オンライン学習と、バッチ学習の中間的な、ある程度訓練データが溜まるたびに教師あり学習を行うという学習方法である。
【0028】
記憶部404は、RAM(Random Access Memory)等であり、入力データ取得部401により取得された入力データ、ラベル取得部402により取得されたラベルデータ、及び学習部403により構築された学習済みモデル351等を記憶する。
以上、予測装置30が備える学習済みモデル351を生成するための機械学習について説明した。
次に、運用フェーズにおける予測装置30について説明する。以下の説明では、学習済みモデルとして図2に記載の学習済みモデル351、すなわち、これから行うワイヤカット放電加工の加工条件、及び選択されたワイヤ電極線等の劣化度を含む消耗品情報を入力層として、「ワイヤ電極線の劣化度」等を出力層とする多層ニューラルネットワークを用いる場合を例示する。
【0029】
<運用フェーズにおける予測装置30>
図1に示すように、運用フェーズにおける予測装置30は、入力部301、予測部302、決定部303、通知部304、及び記憶部305を含んで構成される。
なお、予測装置30は、図1の機能ブロックの動作を実現するために、CPU(Central Processing Unit)等の図示しない演算処理装置を備える。また、予測装置30は、各種の制御用プログラムを格納したROM(Read Only Memory)やHDD等の図示しない補助記憶装置や、演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAMといった図示しない主記憶装置を備える。
【0030】
そして、予測装置30において、演算処理装置が補助記憶装置からOSやアプリケーションソフトウェアを読み込み、読み込んだOSやアプリケーションソフトウェアを主記憶装置に展開させながら、これらのOSやアプリケーションソフトウェアに基づいた演算処理を行う。この演算結果に基づいて、予測装置30が各ハードウェアを制御する。これにより、図1の機能ブロックによる処理は実現される。つまり、予測装置30は、ハードウェアとソフトウェアが協働することにより実現することができる。
【0031】
入力部301は、ワイヤカット放電加工機20によるワイヤカット放電加工に先立って、例えば、制御装置10の制御情報から、前記ワイヤカット放電加工に係るこれから行う加工条件と、作業員により選択されたワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラを示す消耗品IDを入力する。入力部301は、後述する記憶部305に記憶される消耗品管理テーブル352と、入力された消耗品IDとに基づいて、現時点のワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの劣化度を含む消耗品情報を取得する。
入力部301は、取得したこれから行う加工条件と、作業員により選択されたワイヤ電極線等の現時点の劣化度を含む消耗品情報とを、予測部302に対して出力する。
【0032】
予測部302は、これから行う加工条件と、作業員により選択されたワイヤ電極線等の現時点の劣化度を含む消耗品情報とを、図2の学習済みモデル351に入力する。予測部302は、学習済みモデル351からの出力「ワイヤ電極の劣化度」、「イオン交換樹脂の劣化度」、「給電ダイスの劣化度」、及び「電極線ガイドローラの劣化度」に基づいて、ワイヤカット放電加工後の選択されたワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの劣化度を予測する。
これにより、予測装置30は、ワイヤカット放電加工を行う前に、前記ワイヤカット放電加工を行った場合のワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの各々の状態の良否を予測することができる。
【0033】
決定部303は、予測部302により予測されたワイヤカット放電加工後のワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの劣化度に基づいて、選択されたワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラが適正か否かを判定する。
より具体的には、決定部303は、ワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの各々について、劣化度の予測値と予め設定された閾値との比較に基づいて適正か否かを判定し、適正でない場合、アラームの出力を決定する。そうすることで、入力された加工条件でワイヤカット放電加工を行った場合、加工中にワイヤ電極線等の消耗品の交換が発生することを作業員に対して通知することができる。
【0034】
図3は、ワイヤ電極線の劣化度の一例を示す図である。図3に示すように、例えば、ワイヤ電極線は、加工前の劣化度が閾値Th(例えば、80%等)以下であったとしても、ワイヤカット放電加工によるスパッタの付着や放電時の熱による溶損(変形)により、劣化度は変化する。例えば、ワイヤ電極線の劣化度が予め設定された閾値Th以下の適正値の場合、ワイヤ電極線は適切に機能する。一方、ワイヤ電極線の劣化度が閾値Thを超過する場合、ワイヤ電極線は適切に機能しない。この場合、作業員は、新しいワイヤ電極線に交換したり、加工条件(例えば、加工時間やワイヤの送り速度等)を調整したりする必要がある。そこで、決定部303は、ワイヤ電極線の交換指示、又は加工条件の調整指示のアラームの出力を決定し、判定結果を後述する通知部304に出力する。
なお、決定部303は、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの場合についても、ワイヤ電極線の場合と同様に処理する。ただし、予め設定される閾値Thは、ワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、電極線ガイドローラ毎に設定されてもよい。
これにより、数値制御システムは、ワイヤカット放電加工機20によるワイヤカット放電加工に先立って、作業員により選択されたワイヤ電極線等の消耗品それぞれについて、これから行うワイヤカット放電加工の加工条件で加工した後の劣化度を予測することにより、消耗品の交換を行う最適な時期、又は加工条件の調整の要否を容易に検知することができる。換言すれば、数値制御システムは、ワイヤカット放電加工中にワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、電極線ガイドローラの交換、又は加工条件の調整が必要になるか否かを事前に検知することができる。
【0035】
例えば、作業員は、ワイヤカット放電加工後にワイヤ電極線等の消耗品の劣化度が閾値Thを超えないように、加工対象のワークに対する加工時間やワイヤの送り速度等を調整してもよい。これにより、数値制御システムは、ワイヤカット放電加工開始前に、加工中にワイヤ電極線等の消耗品の交換を行うことなくワイヤカット放電加工を行える加工条件に調整することができる。そして、数値制御システムは、ワイヤカット放電加工のきりのよい段階で、例えばワイヤカット放電加工機20を停止して、ワイヤ電極線等の消耗品の交換を行うようにしてもよい。
【0036】
通知部304は、例えば、選択されたワイヤ電極線等の消耗品が適正か否かの決定部303による判定結果を、制御装置10及び/又はワイヤカット放電加工機20に含まれる液晶ディスプレイ等の出力装置(図示しない)に出力してもよい。例えば、選択されたワイヤ電極線が適正の場合、制御装置10は、入力された加工条件でワイヤカット放電加工機20に対してワイヤカット放電加工を実行させてもよい。一方、通知部304は、選択されたワイヤ電極線が適正でない場合アラームを、制御装置10及び/又はワイヤカット放電加工機20の出力装置(図示しない)に出力してもよい。また、通知部304は、スピーカ(図示せず)を介して音声により通知してもよい。
【0037】
記憶部305は、ROMやHDD等であり、各種の制御用プログラムとともに、学習済みモデル351及び消耗品管理テーブル352を記憶してもよい。
【0038】
<消耗品管理テーブル352>
図4は、消耗品管理テーブル352(1)-352(4)の一例を示す図である。図4では、消耗品管理テーブル352(1)-352(4)それぞれは、ワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの消耗品管理テーブルである。
図4に示すように、消耗品管理テーブル352(1)は、ワイヤカット放電加工に使用可能に管理されるすべてのワイヤ電極線を識別するための「消耗品ID」を含む。また、消耗品管理テーブル352(2)は、消耗品IDに対応するワイヤ電極線の「種別」、「材質」、「太さ」、及び「劣化度」を含む。
なお、消耗品管理テーブル352(2)-352(4)は、消耗品管理テーブル352(1)の場合と同様に、ワイヤカット放電加工に使用可能に管理されるすべてのイオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラを識別するための「消耗品ID」を含む。また、消耗品管理テーブル352(2)-352(4)は、「太さ」を除き、消耗品管理テーブル352(1)の場合と同様に、消耗品IDに対応するイオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの「種別」、「材質」、及び「劣化度」を含む。
【0039】
消耗品管理テーブル352(1)内の「消耗品ID」は、制御装置10の作業員により選択されるワイヤ電極線を識別するための情報であり、前記作業員により予め設定される。図4では、消耗品IDとして、1からnが、ワイヤ電極線それぞれに付与される。なお、「消耗品ID」として1からnの数字が設定されたが、アルファベット又は数字とアルファベットとの組合せ等で設定されてもよい(nは2以上の整数)。
また、「消耗品ID」には、識別情報とともに、種別の情報を含んでもよい。例えば、ワイヤ電極線の「消耗品ID」として「1」から「99」を付与し、イオン交換樹脂の「消耗品ID」として「100」から「199」を付与し、給電ダイスの「消耗品ID」として「200」から「299」を付与し、電極線ガイドローラの「消耗品ID」として「300」から「399」を付与することで、種別の情報も含ませてもよい。
【0040】
消耗品管理テーブル352(1)内の「種別」は、上述した消耗品IDが付与された各ワイヤ電極に対して「ワイヤ電極線」が格納される。
消耗品管理テーブル352(1)内の「材質」は、上述した消耗品IDが付与された各ワイヤ電極に対してタングステン等のワイヤ電極線の材質が格納される。
消耗品管理テーブル352(1)内の「太さ」は、上述した消耗品IDが付与された各ワイヤ電極に対してワイヤ電極線の太さが格納される。
消耗品管理テーブル352(1)内の「劣化度」は、上述した消耗品IDが付与された各ワイヤ電極に対して、前回のワイヤカット放電加工後に作業員により判定された現時点のワイヤ電極線の劣化度が格納される。すなわち、消耗品管理テーブル352(1)内の「劣化度」は、ワイヤカット放電加工に使用される度に作業員によりワイヤ電極線の劣化度が判定され、作業員により入力・更新される。
以下、消耗品管理テーブル352(1)-352(4)のそれぞれを個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「消耗品管理テーブル352」ともいう。
【0041】
<運用フェーズにおける予測装置30の予測処理>
次に、本実施形態に係る予測装置30の予測処理に係る動作について説明する。
図5は、運用フェーズにおける予測装置30の予測処理について説明するフローチャートである。
【0042】
ステップS11において、入力部301は、ワイヤカット放電加工機20によるワイヤカット放電加工に先立って、制御装置10の制御情報から、これから行うワイヤカット放電加工の加工条件と、作業員により選択されたワイヤ電極線等の消耗品IDに基づいて、消耗品管理テーブル352からワイヤ電極線等の劣化度を含む消耗品情報と、を取得する。
【0043】
ステップS12において、予測部302は、ステップS11で取得された、これから行う加工条件と消耗品情報とを学習済みモデル351に入力し、ワイヤカット放電加工後の選択されたワイヤ電極線等の消耗品の劣化度を予測する。
【0044】
ステップS13において、決定部303は、ステップS12で予測されたワイヤ電極線等の消耗品それぞれの劣化度と、予め設定された閾値Thとの比較に基づいて、選択されたワイヤ電極線等の消耗品それぞれが適正か否かを判定する。
【0045】
ステップS14において、通知部304は、ワイヤカット放電加工前に、ステップS13で適正でないと判定されたワイヤ電極線等の消耗品がある場合、消耗品の交換又は加工条件の調整を指示するアラームを、制御装置10及び/又はワイヤカット放電加工機20の図示しない出力装置に出力する。
【0046】
以上により、一実施形態に係る予測装置30は、ワイヤカット放電加工機20によるワイヤカット放電加工に先立って、制御装置10の制御情報から、前記ワイヤカット放電加工に係るこれから行う加工条件、及び作業員により選択されたワイヤ電極線等の劣化度を含む消耗品情報を、学習済みモデル351に入力し、ワイヤカット放電加工後の選択されたワイヤ電極線等の消耗品の劣化度を予測する。これにより、予測装置30は、ワイヤカット放電加工を行う前に、加工条件を考慮しつつ、前記ワイヤカット放電加工を行った場合のワイヤ電極線等の消耗品の状態の良否を予測することができる。そして、予測装置30は、予測されたワイヤ電極線等の消耗品の劣化度と、予め設定された閾値Thとの比較により、ワイヤ電極線等の消耗品それぞれについて、ワイヤカット放電加工中に交換が必要になるか否かを事前に検知することができる。
すなわち、予測装置30は、選択されたワイヤ電極線等の消耗品の劣化度が閾値Thを超過する場合、ワイヤカット放電加工前をワイヤ電極線等の消耗品の交換の最適な時期、又は加工条件の調整の要否を検知することができ、作業員の負担を減らすことができる。
また、学習済みモデル351が様々なワイヤ電極線等の消耗品の教師データを用いて生成されるため、予測装置30は、様々なワイヤ電極線等の消耗品の状態の良否を予測することができる。
【0047】
以上、一実施形態について説明したが、予測装置30、及び機械学習装置40は、上述の実施形態に限定されるものではなく、目的を達成できる範囲での変形、改良等を含む。
<変形例1>
上述の実施形態では、機械学習装置40は、制御装置10、ワイヤカット放電加工機20及び予測装置30と異なる装置として例示したが、機械学習装置40の一部又は全部の機能を、制御装置10、ワイヤカット放電加工機20又は予測装置30が備えるようにしてもよい。
【0048】
<変形例2>
上述の実施形態では、予測装置30は、制御装置10やワイヤカット放電加工機20と異なる装置として例示したが、予測装置30の一部又は全部の機能を、制御装置10又はワイヤカット放電加工機20が備えるようにしてもよい。
あるいは、予測装置30の入力部301、予測部302、決定部303、通知部304及び記憶部305の一部又は全部を、例えば、サーバが備えるようにしてもよい。また、クラウド上で仮想サーバ機能等を利用して、予測装置30の各機能を実現してもよい。
さらに、予測装置30は、予測装置30の各機能を適宜複数のサーバに分散される、分散処理システムとしてもよい。
【0049】
<変形例3>
また例えば、上述の実施形態では、予測装置30は、機械学習装置40から提供された学習済みモデル351を用いて、1つの制御装置10から取得したこれから行うワイヤカット放電加工の加工条件による加工後のワイヤ電極線等の消耗品の劣化度を予測したが、これに限定されない。例えば、図6に示すように、サーバ50は、機械学習装置40により生成された学習済みモデル351を記憶し、ネットワーク60に接続されたm個の予測装置30A(1)-30A(m)と学習済みモデル351を共有してもよい(mは2以上の整数)。これにより、新たなワイヤカット放電加工機、制御装置、及び予測装置が配置されても学習済みモデル351を適用することができる。
なお、予測装置30A(1)-30A(m)の各々は、制御装置10A(1)-10A(m)の各々と接続され、制御装置10A(1)-10A(m)の各々は、ワイヤカット放電加工機20A(1)-20A(m)の各々と接続される。
また、制御装置10A(1)-10A(m)の各々は、図1の制御装置10に対応する。ワイヤカット放電加工機20A(1)-20A(m)の各々は、図1のワイヤカット放電加工機20に対応し、互いに同じ機種でもよく、互いに異なる機種でもよい。予測装置30A(1)-30A(m)の各々は、図1の予測装置30に対応する。
あるいは、図7に示すように、サーバ50は、例えば、予測装置30として動作し、ネットワーク60に接続された制御装置10A(1)-10A(m)の各々に対して、これから行うワイヤカット放電加工の加工条件におけるワイヤ電極線等の消耗品の劣化度を予測してもよい。これにより、新たなワイヤカット放電加工機及び制御装置が配置されても学習済みモデル351を適用することができる。
【0050】
<変形例4>
また例えば、上述の実施形態では、消耗品管理テーブル352(1)-352(4)は、ワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、電極線ガイドローラ等の消耗品毎に構築されたが、これに限定されない。例えば、1つの消耗品管理テーブル352が、ワイヤ電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、電極線ガイドローラすべてを管理してもよい。
【0051】
なお、一実施形態における、予測装置30、及び機械学習装置40に含まれる各機能は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0052】
予測装置30、及び機械学習装置40に含まれる各構成部は、電子回路等を含むハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。また、これらのプログラムは、リムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。また、ハードウェアで構成する場合、上記の装置に含まれる各構成部の機能の一部又は全部を、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ゲートアレイ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等の集積回路(IC)で構成することができる。
【0053】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(Non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(Tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(Transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は、無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0054】
なお、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0055】
以上を換言すると、本開示の機械学習装置、予測装置、及び制御装置は、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
【0056】
(1)本開示の機械学習装置40は、任意のワイヤカット放電加工機20による任意のワークに対する任意のワイヤカット放電加工の加工条件と、加工条件によるワイヤカット放電加工前の電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの少なくとも1つの劣化の度合いを含む消耗品情報と、を含む入力データを取得する入力データ取得部401と、入力データに含まれる加工条件によるワイヤカット放電加工後の電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの少なくとも1つの劣化の度合い、を示すラベルデータを取得するラベル取得部402と、入力データ取得部401により取得された入力データと、ラベル取得部402により取得されたラベルデータと、を用いて、教師あり学習を実行し、学習済みモデル351を生成する学習部403と、を備える。
この機械学習装置40によれば、ワイヤカット放電加工を行う前に、前記ワイヤカット放電加工を行った場合の消耗品の劣化度を予測できる学習済みモデルを生成することができる。
【0057】
(2) (1)に記載の機械学習装置40において、加工条件は、少なくとも放電出力、加工時間、加工液の種類、前記加工液の液圧、前記電極線の送り速度、及びワークの板厚のうちの一部を含んでもよい。
そうすることで、機械学習装置40は、ワイヤカット放電加工を行った場合の消耗品の劣化度を、より精度良く予測することができる学習済みモデル351を生成することができる。
【0058】
(3)本開示の予測装置30は、(1)又は(2)に記載の機械学習装置40により生成された学習済みモデル351と、ワイヤカット放電加工機20によるこれから行うワイヤカット放電加工に先立って、ワイヤカット放電加工に係る加工条件と、ワイヤカット放電加工前の電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの少なくとも1つの劣化の度合いを含む消耗品情報と、を入力する入力部301と、学習済みモデル351を用いて、入力部301により入力された、加工条件及び消耗品情報によるワイヤカット放電加工後の電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの少なくとも1つの劣化の度合いを予測する予測部302と、を備える。
この予測装置30によれば、ワイヤカット放電加工を行う前に、ワイヤカット放電加工を行った場合の消耗品の劣化度を予測することができる。
【0059】
(4) (3)に記載の予測装置30において、予測部302により予測された電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、及び電極線ガイドローラの劣化の度合いのうち少なくとも1つが、予め設定された閾値Thを超過した場合、アラームの出力を決定する決定部303をさらに備えてもよい。
そうすることで、予測装置30は、入力された加工条件でワイヤカット放電加工を行った場合、加工中に少なくとも消耗品の交換が発生することを作業員に対して通知することができる。
【0060】
(5) (3)に記載の予測装置30において、アラームは、予測された劣化の度合いが閾値Thを超過した電極線、イオン交換樹脂、給電ダイス、若しくは電極線ガイドローラの交換、又は加工条件の調整を指示してもよい。
そうすることで、予測装置30は、消耗品の交換を行う最適な時期、又は加工条件の調整の要否を容易に検知することができる。
【0061】
(6) (3)から(5)のいずれかに記載の予測装置30において、学習済みモデル351を、予測装置30からネットワーク60を介してアクセス可能に接続されるサーバ50に備えてもよい。
そうすることで、予測装置30は、新たな制御装置10、ワイヤカット放電加工機20、及び予測装置30が配置されても学習済みモデル351を適用することができる。
【0062】
(7) (3)から(6)のいずれかに記載の予測装置30において、(1)又は(2)に記載の機械学習装置40を備えてもよい。
そうすることで、予測装置30は、上述の(1)から(6)のいずれかと同様の効果を奏することができる。
【0063】
(8)本開示の制御装置10は、(3)から(7)のいずれかに記載の予測装置30を備えてもよい。
この制御装置10によれば、上述の(1)から(7)のいずれかと同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 制御装置
20 ワイヤカット放電加工機
30 予測装置
40 機械学習装置
301 入力部
302 予測部
303 決定部
304 通知部
305 記憶部
351 学習済みモデル
352(1)-352(4) 消耗品管理テーブル
401 入力データ取得部
402 ラベル取得部
403 学習部
404 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8