(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】加工機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/00 20060101AFI20231024BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20231024BHJP
B23P 23/04 20060101ALI20231024BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20231024BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231024BHJP
【FI】
B23Q1/00 D
B22F3/105
B23P23/04
B23Q11/08 Z
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2022516812
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017781
(87)【国際公開番号】W WO2021215000
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大多和 毅
(72)【発明者】
【氏名】西 修一
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/203823(WO,A1)
【文献】特開2017-189843(JP,A)
【文献】特表2002-515344(JP,A)
【文献】特開2010-017735(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2562596(GB,A)
【文献】国際公開第2018/033973(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00
B23P 23/04
B23Q 11/08
B22F 3/105
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの付加加工および除去加工が可能な加工機械であって、
加工エリアを区画形成するスプラッシュガードと、
ワークの除去加工のための回転工具を保持し、前記加工エリアの内部において、水平方向に平行な第1軸の軸方向と、水平方向に平行で、かつ、前記第1軸と直交する第2軸の軸方向とに移動可能な工具主軸と、
前記工具主軸に接続され、ワークに対して材料粉末を吐出するとともにレーザ光を照射する付加加工用ヘッドと、
前記付加加工用ヘッドから延出し、前記加工エリアの内部から外部に引き出され、前記付加加工用ヘッドに材料粉末およびレーザ光を供給するライン体とを備え、
前記第2軸の軸方向における前記工具主軸の最大移動量は、前記第1軸の軸方向における前記工具主軸の最大移動量よりも短く、
前記加工エリアの内部から外部への前記ライン体の引き出し方向は、上面視において前記第1軸の軸方向に交差する方向である、加工機械。
【請求項2】
前記加工エリアの内部から外部への前記ライン体の引き出し方向は、上面視において前記第1軸の軸方向に直交する方向である、請求項1に記載の加工機械。
【請求項3】
ワークを保持し、前記第1軸に平行な回転軸を中心にワークを回転させるワーク主軸をさらに備える、請求項1または2に記載の加工機械。
【請求項4】
前記加工エリアの外部で前記ライン体を支持し、前記第1軸の軸方向に移動可能な支持部をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の加工機械。
【請求項5】
前記第2軸の軸方向において互いに離れて設けられ、前記支持部を前記第1軸の軸方向に沿って案内する第1案内機構および第2案内機構をさらに備える、請求項4に記載の加工機械。
【請求項6】
前記付加加工用ヘッドは、前記工具主軸に対して着脱可能に設けられ、
前記付加加工用ヘッドが前記工具主軸に装着され、ワークの付加加工を行なう場合に、前記工具主軸および前記支持部の間を連結する第1状態と、前記工具主軸から前記付加加工用ヘッドが取り外され、ワークの除去加工を行なう場合に、前記工具主軸および前記支持部の間の連結を解除する第2状態との間で動作可能な連結機構をさらに備える、請求項4または5に記載の加工機械。
【請求項7】
前記支持部に搭載され、前記ライン体に対して前記付加加工用ヘッドから遠ざかる方向の張力を付与する張力付与機構をさらに備える、請求項4から6のいずれか1項に記載の加工機械。
【請求項8】
前記工具主軸は、上下方向に平行な第3軸の軸方向にさらに移動可能であり、さらに、
前記第1軸に平行な第1回動軸を中心に回動可能なように前記付加加工用ヘッドに対して接続され、前記第1軸に平行な第2回動軸を中心に回動可能なように前記支持部に対して接続され、前記付加加工用ヘッドおよび前記支持部の間で前記ライン体を案内する第1ガイド部材を備える、請求項4から7のいずれか1項に記載の加工機械。
【請求項9】
前記第1ガイド部材は、前記第1回動軸および前記第2回動軸の間の距離が変化するように伸縮する伸縮機構を有する、請求項8に記載の加工機械。
【請求項10】
前記工具主軸は、前記第2軸の軸方向に平行な旋回軸を中心に旋回可能であり、さらに、
前記ライン体が配索される経路上における前記付加加工用ヘッドおよび前記第1ガイド部材の間に設けられ、前記付加加工用ヘッドから延出する前記ライン体を前記旋回軸の周方向に沿って案内する第2ガイド部材を備え、
前記第2ガイド部材は、前記工具主軸の旋回時に、前記旋回軸の周方向における姿勢を維持するように前記工具主軸に対して前記旋回軸を中心に相対的に回動する、請求項8または9に記載の加工機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加工機械に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2017-189843号公報(特許文献1)には、除去加工用ヘッドと、除去加工用ヘッドに接続される付加加工用ヘッドと、付加加工用ヘッドに材料粉末およびレーザ光を供給するためのケーブルとを備える加工機械が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示される加工機械においては、ワークの付加加工時、除去加工用ヘッド(工具主軸)に付加加工用ヘッドが装着されることによって、付加加工用ヘッドが除去加工用ヘッドと一体となって加工エリア内で移動する。このような構成を備える加工機械においては、付加加工用ヘッドが加工エリアを区画形成するスプラッシュガードに直接繋がっていないため、材料粉末およびレーザ光の供給路をなすケーブルを、付加加工用ヘッドに接続し、加工エリアの内部から外部に引き出す必要がある。
【0005】
しかしながら、加工エリアの内部から外部へのケーブルの引き出し方向によっては、加工エリア内における付加加工用ヘッドの移動に伴って、加工エリア内で延びるケーブルの全長が長くなってしまう。この場合に、加工エリア内のケーブルがその自重によって大きく撓む可能性がある。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、加工エリア内において、付加加工用ヘッドに材料粉末およびレーザ光を供給するためのライン体に撓みが生じることを抑制する加工機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従った加工機械は、ワークの付加加工および除去加工が可能な加工機械である。加工機械は、加工エリアを区画形成するスプラッシュガードと、ワークの除去加工のための回転工具を保持し、加工エリアの内部において、水平方向に平行な第1軸の軸方向と、水平方向に平行で、かつ、第1軸と直交する第2軸の軸方向とに移動可能な工具主軸と、工具主軸に接続され、ワークに対して材料粉末を吐出するとともにレーザ光を照射する付加加工用ヘッドと、付加加工用ヘッドから延出し、加工エリアの内部から外部に引き出され、付加加工用ヘッドに材料粉末およびレーザ光を供給するライン体とを備える。第2軸の軸方向における工具主軸の最大移動量は、第1軸の軸方向における工具主軸の最大移動量よりも短い。加工エリアの内部から外部へのライン体の引き出し方向は、上面視において第1軸の軸方向に交差する方向である。
【0008】
このように構成された加工機械によれば、加工エリアの内部から外部へのライン体の引き出し方向が、上面視において第1軸の軸方向に交差する方向である一方、第1軸と直交する第2軸の軸方向における工具主軸の最大移動量が、第1軸の軸方向における工具主軸の最大移動量よりも短い。このため、工具主軸とともに付加加工用ヘッドを第2軸の軸方向に移動させた場合であっても、ライン体の引き出し方向が上面視において第1軸の軸方向に平行な方向である構成と比較して、加工エリア内で延びるライン体の全長を短くすることができる。これにより、加工エリア内においてライン体に撓みが生じることを抑制できる。
【0009】
また好ましくは、加工エリアの内部から外部へのライン体の引き出し方向は、上面視において第1軸の軸方向に直交する方向である。
【0010】
このように構成された加工機械によれば、工具主軸とともに付加加工用ヘッドを第2軸の軸方向に移動させた場合に、加工エリア内で延びるライン体の全長をさらに短くすることができる。
【0011】
また好ましくは、加工機械は、ワークを保持し、第1軸に平行な回転軸を中心にワークを回転させるワーク主軸をさらに備える。
【0012】
このように構成された加工機械によれば、加工エリアの内部から外部へのライン体の引き出し方向が、ワーク主軸におけるワークの回転軸の軸方向と交差する方向となるため、加工エリア内におけるライン体の経路を、ワーク主軸、または、ワーク主軸に保持されるワークから遠ざけることができる。これにより、ライン体と、ワーク主軸、または、ワーク主軸に保持されるワークとが干渉することを抑制できる。
【0013】
また好ましくは、加工機械は、加工エリアの外部でライン体を支持し、第1軸の軸方向に移動可能な支持部をさらに備える。
【0014】
このように構成された加工機械によれば、加工エリア内において第1軸の軸方向に移動する付加加工用ヘッドとともに、加工エリア外においてライン体を支持する支持部を第1軸の軸方向に移動させることができる。これにより、加工エリアの内部と外部との間においてライン体に過度な負荷が加わることを防止できる。
【0015】
また好ましくは、加工機械は、第2軸の軸方向において互いに離れて設けられ、支持部を第1軸の軸方向に沿って案内する第1案内機構および第2案内機構をさらに備える。
【0016】
このように構成された加工機械によれば、第1案内機構および第2案内機構によって、支持部を第1軸の軸方向により円滑に移動させることができる。
【0017】
また好ましくは、付加加工用ヘッドは、工具主軸に対して着脱可能に設けられる。付加加工用ヘッドが工具主軸に装着され、ワークの付加加工を行なう場合に、工具主軸および支持部の間を連結する第1状態と、工具主軸から付加加工用ヘッドが取り外され、ワークの除去加工を行なう場合に、工具主軸および支持部の間の連結を解除する第2状態との間で動作可能な連結機構をさらに備える。
【0018】
このように構成された加工機械によれば、ワークの付加加工時、連結機構により工具主軸および支持部の間を連結することによって、簡易な構成により、支持部を工具主軸および付加加工用ヘッドと一体に第1軸の軸方向に移動させることができる。また、ワークの除去加工時、連結機構により工具主軸および支持部の間の連結を解除することによって、支持部および付加加工用ヘッドと分離された工具主軸によりワークの除去加工を行なうことができる。
【0019】
また好ましくは、加工機械は、支持部に搭載され、ライン体に対して付加加工用ヘッドから遠ざかる方向の張力を付与する張力付与機構をさらに備える。
【0020】
このように構成された加工機械によれば、張力付与機構によりライン体に張力を付与することによって、加工エリア内でライン体の撓みが生じることをさらに効果的に抑制できる。
【0021】
また好ましくは、工具主軸は、上下方向に平行な第3軸の軸方向にさらに移動可能である。加工機械は、第1軸に平行な第1回動軸を中心に回動可能なように付加加工用ヘッドに対して接続され、第1軸に平行な第2回動軸を中心に回動可能なように支持部に対して接続され、付加加工用ヘッドおよび支持部の間でライン体を案内する第1ガイド部材をさらに備える。
【0022】
このように構成された加工機械によれば、付加加工用ヘッドが第2軸-第3軸平面内で移動した場合に、第1ガイド部材が、付加加工用ヘッドに対して第1回動軸を中心に回動動作し、支持部に対して第2回動軸を中心に回動動作する。これにより、付加加工用ヘッドおよび支持部の間におけるライン体の配索経路が、付加加工用ヘッドの移動に合わせて円滑に変化するため、ライン体に過度な負荷が加わることを抑制できる。
【0023】
また好ましくは、第1ガイド部材は、第1回動軸および第2回動軸の間の距離が変化するように伸縮する伸縮機構を有する。
【0024】
このように構成された加工機械によれば、付加加工用ヘッドが第2軸-第3軸平面内で移動した場合に、第1ガイド部材の伸縮機構が第1回動軸および第2回動軸の間の距離が変化するように伸縮する。これにより、ライン体に過度な負荷が加わることをさらに効果的に抑制できる。
【0025】
また好ましくは、工具主軸は、第2軸の軸方向に平行な旋回軸を中心に旋回可能である。加工機械は、ライン体が配索される経路上における付加加工用ヘッドおよび第1ガイド部材の間に設けられ、付加加工用ヘッドから延出するライン体を旋回軸の周方向に沿って案内する第2ガイド部材をさらに備える。第2ガイド部材は、工具主軸の旋回時に、旋回軸の周方向における姿勢を維持するように工具主軸に対して旋回軸を中心に相対的に回動する。
【0026】
このように構成された加工機械によれば、工具主軸が旋回動作した場合にも、旋回軸の周方向に沿って延びるライン体の配索経路が一定に保たれるため、ライン体に過度な負荷が加わることを抑制できる。
【発明の効果】
【0027】
以上に説明したように、この発明に従えば、加工エリア内において、付加加工用ヘッドに材料粉末およびレーザ光を供給するためのライン体に撓みが生じることを抑制する加工機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】この発明の実施の形態における加工機械を示す正面図である。
【
図2】
図1中の加工機械において、工具主軸および付加加工用ヘッドの着脱を示す斜視図である。
【
図3】
図1中の付加加工用ヘッドにレーザ光および材料粉末を供給するための構造を示す斜視図である。
【
図4】
図1中の付加加工用ヘッドにレーザ光および材料粉末を供給するための構造を示す別の斜視図である。
【
図5】
図1中の付加加工用ヘッドにレーザ光および材料粉末を供給するための構造を示すさらに別の斜視図である。
【
図6】
図1中の加工機械におけるワークの加工流れの工程を模式的に示す正面図である。
【
図7】
図1中の加工機械におけるワークの加工流れの次の工程を模式的に示す正面図である。
【
図8】
図1中の加工機械におけるワークの加工流れのさらに次の工程を模式的に示す正面図である。
【
図9】
図1中の加工機械を部分的に示す上面図である。
【
図10】加工エリア内における工具主軸の最大移動量を示す斜視図である。
【
図11】
図3中の2点鎖線XIで囲まれた範囲を示す断面図である。
【
図12】
図3中の2点鎖線XIIで囲まれた範囲を示す断面図である。
【
図13】
図5中の2点鎖線XIIIで囲まれた範囲を示す断面図である。
【
図14】
図3中の2点鎖線XIVで囲まれた範囲を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0030】
図1は、この発明の実施の形態における加工機械を示す正面図である。
図1中には、加工機械の外観をなすカバー体を透視することにより、加工機械の内部が示されている。
図2は、
図1中の加工機械において、工具主軸および付加加工用ヘッドの着脱を示す斜視図である。
【0031】
図1および
図2を参照して、加工機械100は、ワークの付加加工(AM(Additive manufacturing)加工)と、ワークの除去加工(SM(Subtractive manufacturing)加工)とが可能なAM/SMハイブリッド加工機である。加工機械100は、SM加工の機能として、固定工具を用いた旋削機能と、回転工具を用いたミーリング機能とを有する。
【0032】
加工機械100は、コンピュータによる数値制御によって、ワーク加工のための各種動作が自動化されたNC(Numerically Control)加工機械である。
【0033】
なお、本明細書においては、加工機械100の左右方向(幅方向)に平行で、水平方向に延びる軸を「Z軸(第1軸)」といい、加工機械100の前後方向(奥行き方向)に平行で、水平方向に延びる軸を「Y軸(第2軸)」といい、鉛直方向に延びる軸を「X軸」という。
図1中における右方向を「+Z軸方向」といい、左方向を「-Z軸方向」という。
図1中における紙面の手前方向を「+Y軸方向」といい、奥方向を「-Y軸方向」という。
図1中における上方向を「+X軸方向」といい、下方向を「-X軸方向」という。X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する3軸である。
【0034】
まず、加工機械100の全体構造について説明する。加工機械100は、スプラッシュガード181を有する。スプラッシュガード181は、ワークを加工するための加工エリア110を区画形成している。
【0035】
加工機械100は、ベッド151と、第1ワーク主軸111と、第2ワーク主軸116と、刃物台(不図示)とをさらに有する。
【0036】
ベッド151は、第1ワーク主軸111、第2ワーク主軸116および刃物台等を支持するためのベース部材であり、工場などの据付け面に設置されている。
【0037】
第1ワーク主軸111および第2ワーク主軸116は、Z軸方向において、互いに対向して配置されている。第1ワーク主軸111および第2ワーク主軸116は、ワークを保持可能なように構成されている。第1ワーク主軸111および第2ワーク主軸116には、ワークを着脱可能に保持するためのチャック機構(不図示)が設けられている。第1ワーク主軸111は、主に、固定工具を用いたワークの旋削加工時に、保持したワークをZ軸に平行な回転軸501を中心に回転させる。第2ワーク主軸116は、主に、固定工具を用いたワークの旋削加工時に、保持したワークをZ軸に平行な回転軸502を中心に回転させる。
【0038】
第1ワーク主軸111は、ベッド151に固定されている。第2ワーク主軸116は、各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどにより、Z軸方向に移動可能に設けられている。第2ワーク主軸116は、ベッド151に固定される構成であってもよい。第2ワーク主軸116に替わって、第1ワーク主軸111に保持されたワークの回転中心を支持するための心押し台が設けられてもよい。
【0039】
刃物台(不図示)は、加工エリア110内に設けられている。刃物台は、ワークの除去加工(旋削加工)のための複数の固定工具を保持可能なように構成されている。刃物台は、図示しないサドル等を介してベッド151により支持されている。刃物台は、サドル等に設けられた各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどにより、X軸方向およびZ軸方向に移動可能に設けられている。刃物台は、回転工具を回転させるミーリング機能を備えてもよい。
【0040】
加工機械100は、第1縦フレーム152と、第2縦フレーム153と、第1横フレーム154と、第2横フレーム311(後出の
図3を参照)とをさらに有する。
【0041】
第1縦フレーム152および第2縦フレーム153は、X軸方向(上下方向)が長手方向となる柱形状を有する。第1縦フレーム152および第2縦フレーム153は、Z軸方向において、互いに離れて設けられている。第1縦フレーム152および第2縦フレーム153の下端部は、ベッド151に接続されている。
【0042】
第1横フレーム154および第2横フレーム311は、Z軸方向(左右方向)が長手方向となる梁形状を有する。第1横フレーム154および第2横フレーム311は、矩形形状の閉断面をなすパイプ材から構成されている。
【0043】
第1横フレーム154および第2横フレーム311は、Y軸方向において、互いに離れて設けられている。第1横フレーム154は、第2横フレーム311から+Y軸方向にずれた位置に設けられている。Z軸方向における第1横フレーム154の両端部は、それぞれ、第1縦フレーム152および第2縦フレーム153の上端部に接続されている。Z軸方向における第2横フレーム311の両端部は、それぞれ、第1縦フレーム152および第2縦フレーム153の上端部に接続されている。
【0044】
第1縦フレーム152、第2縦フレーム153、第1横フレーム154および第2横フレーム311は、ベッド151上において門型のフレーム構造をなしている。
【0045】
加工機械100は、サドル161と、クロススライド162と、ラム163とをさらに有する。
【0046】
サドル161は、ベッド151により支持されている。サドル161は、ベッド151上であって、Z軸方向において、第1縦フレーム152および第2縦フレーム153の間に設けられている。サドル161は、ベッド151から第1横フレーム154および第2横フレーム311に向けて上方に立ち上がる形状を有する。サドル161は、ベッド151等に設けられた各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどにより、Z軸方向に移動可能に設けられている。
【0047】
クロススライド162は、サドル161により支持されている。クロススライド162は、全体として、X軸-Z軸平面に平行な平板形状をなしている。クロススライド162は、+Y軸方向を向くサドル161の前面に取り付けられている。クロススライド162は、サドル161等に設けられた各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどにより、X軸方向(上下方向)に移動可能に設けられている。
【0048】
ラム163は、クロススライド162により支持されている。ラム163は、全体として、Y軸方向に沿って延びる筒形状を有する。ラム163は、Y軸方向において、クロススライド162を貫通し、加工エリア110内に突出するように設けられている。ラム163は、クロススライド162等に設けられた各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどにより、Y軸方向に移動可能に設けられている。
【0049】
加工機械100は、工具主軸121をさらに有する。工具主軸121は、加工エリア110内に設けられている。工具主軸121は、ワークの除去加工(ミーリング加工)のための回転工具を保持可能なように構成されている。工具主軸121には、回転工具を着脱可能に保持するためのクランプ機構(不図示)が設けられている。工具主軸121は、回転工具を用いたワークのミーリング加工時に、保持した回転工具をX軸-Z軸平面に平行な回転軸503を中心に回転させる。
【0050】
工具主軸121は、ラム163により支持されている。工具主軸121は、+Y軸方向におけるラム163の先端部に接続されている。工具主軸121は、Z軸方向におけるサドル161の移動と、X軸方向におけるクロススライド162の移動と、Y軸方向におけるラム163の移動とによって、加工エリア110内において3次元的に移動可能である。
【0051】
工具主軸121は、さらに、Y軸に平行な旋回軸504を中心に旋回可能に設けられている(B軸旋回)。工具主軸121の旋回範囲は、工具主軸121の主軸端面122が下方を向く基準姿勢(
図1および
図2中に示す姿勢)に対して±90°以上の範囲であることが好ましい。一例として、工具主軸121の旋回範囲は、基準姿勢に対して±120°の範囲である。
【0052】
加工機械100は、自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)141と、工具マガジン171とをさらに有する。
【0053】
工具マガジン171は、ワークのミーリング加工に用いられる複数の回転工具Tを収容する。工具マガジン171は、加工エリア110の外部に設けられている。工具マガジン171は、第1ワーク主軸111(第1縦フレーム152)を挟んで、加工エリア110の反対側に設けられている。第1ワーク主軸111(第1縦フレーム152)は、Z軸方向において、工具マガジン171および加工エリア110の間に配置されている。
【0054】
自動工具交換装置141は、加工エリア110内における工具主軸121と、加工エリア110外における工具マガジン171との間で工具を交換可能なように構成されている。
【0055】
自動工具交換装置141は、第1横フレーム154により支持されている。自動工具交換装置141は、第1横フレーム154等に設けられた各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどにより、Z軸方向に移動可能である。
【0056】
より具体的には、第1横フレーム154には、ラック156と、レール155とが設けられている。ラック156およびレール155は、Z軸方向に延びている。Z軸方向においてラック156およびレール155が延びる範囲は、Z軸方向における加工エリア110の範囲を含む。自動工具交換装置141には、ラック156と係合するピニオン(不図示)が設けられている。自動工具交換装置141には、レール155と係合しながらZ軸方向にスライド可能なスライダー(不図示)が設けられている。
【0057】
サーボモータからの回転を受けたピニオンが正方向または逆方向に回転することによって、自動工具交換装置141が、+Z軸方向または-Z軸方向に移動する。自動工具交換装置141は、加工エリア110の内部と外部との間で移動可能である。
【0058】
自動工具交換装置141は、加工エリア110の外部であって、第1ワーク主軸111の上方に位置し、自動工具交換装置141が待機する待機位置(
図1中に示す自動工具交換装置141の位置)と、加工エリア110の内部であって、Z軸方向における任意の座標に位置し、自動工具交換装置141が工具主軸121と工具交換を行なう機内側工具交換位置と、加工エリア110の外部であって、待機位置を挟んで機内側工具交換位置の反対側に位置し、自動工具交換装置141が工具マガジン171と工具交換を行なうマガジン側工具交換位置との間で移動可能である。
【0059】
自動工具交換装置141は、昇降アーム143と、ダブルアーム144とを有する。昇降アーム143は、X軸方向(上下方向)が長手方向となるようにアーム状に延びている。昇降アーム143は、X軸方向に昇降動作が可能である。
【0060】
ダブルアーム144は、アーム状に延び、その両端に工具を把持可能な把持部を有する。ダブルアーム144は、Z軸に平行な旋回軸505を中心にして旋回可能で、かつ、旋回軸505の軸方向にスライド可能である。自動工具交換装置141は、上記の機内側工具交換位置およびマガジン側工具交換位置の各位置において、昇降アーム143が昇降動作し、ダブルアーム144が旋回およびスライド動作することによって、工具交換を行なう。
【0061】
加工機械100は、付加加工用ヘッド131をさらに有する。付加加工用ヘッド131は、ワークに対して材料粉末を吐出するとともにレーザ光を照射することにより付加加工を行なう(指向性エネルギ堆積法(Directed Energy Deposition))。材料粉末としては、ステンレス、ステライト、インコネルもしくはチタン等の金属粉末を利用することができる。なお、材料粉末は、金属粉末に限られない。
【0062】
付加加工用ヘッド131は、ヘッド本体132と、レーザツール133とを有する。ヘッド本体132には、レーザ光および材料粉末が導入される。レーザツール133は、ワークに向けてレーザ光を出射するとともに、ワークにおけるレーザ光の照射領域を定める。付加加工用ヘッド131に導入された材料粉末は、ノズル(不図示)を通じてワークに向けて吐出される。
【0063】
加工機械100は、複数のレーザツール133を有する。複数のレーザツール133は、ワーク上に定められるレーザ光の照射領域の形状および/または大きさが異なる。ヘッド本体132には、実行する付加加工の条件に合わせて、複数のレーザツール133のうちいずれか1つのレーザツール133が選択的に装着される。
【0064】
付加加工用ヘッド131は、円盤部136をさらに有する。円盤部136は、Y軸方向が厚み方向となる円盤形状を有する。円盤部136は、ヘッド本体132に接続されている。円盤部136は、+Y軸方向におけるヘッド本体132の前端部から直角に折れ曲がった位置に設けられている。工具主軸121は、前面部124と、側面部123とを有する。前面部124は、+Y軸方向を向いている。側面部123は、工具主軸121の基準姿勢において+Z軸方向を向いている。
【0065】
付加加工用ヘッド131は、工具主軸121に対して着脱可能に設けられている。付加加工用ヘッド131は、ヘッド本体132が側面部123と対向し、円盤部136が前面部124と対向するように、工具主軸121に装着される。
【0066】
付加加工用ヘッド131(円盤部136)および工具主軸(前面部124)には、バネ力等を利用したクランプ機構が内蔵されており、工具主軸121に対する付加加工用ヘッド131の装着時、そのクランプ機構が動作することによって、付加加工用ヘッド131が工具主軸121に接続される。付加加工用ヘッド131は、工具主軸121に接続されることにより、工具主軸121と一体となって、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能である。
【0067】
図3から
図5は、
図1中の付加加工用ヘッドにレーザ光および材料粉末を供給するための構造を示す斜視図である。
【0068】
図1から
図5を参照して、加工機械100は、材料粉末供給装置341およびレーザ発振装置342と、ライン体210とをさらに有する。
【0069】
材料粉末供給装置341およびレーザ発振装置342は、加工エリア110の外部に設置されている。材料粉末供給装置341は、付加加工に用いられる材料粉末を付加加工用ヘッド131に向けて送り出す。レーザ発振装置342は、付加加工に用いられるレーザ光を発振する。
【0070】
ライン体210は、材料粉末供給装置341からの材料粉末を付加加工用ヘッド131に供給し、レーザ発振装置342からのレーザ光を付加加工用ヘッド131に供給する。ライン体210は、付加加工用ヘッド131から延出している。ライン体210は、加工エリア110の内部から外部に引き出され、材料粉末供給装置341およびレーザ発振装置342に接続されている。
【0071】
ライン体210は、可撓性を有しており、外力を受けた場合に曲げ変形が可能である。ライン体210は、レーザ光を導くための光ファイバと、材料粉末を導くための配管と、空気の流路となるエア配管と、不活性ガスの流路となるガス配管と、冷媒の流路となる冷却配管と、電気配線と、これらを収容するフレキシブルチューブ211とを含む。
【0072】
加工機械100は、支持部221をさらに有する。支持部221は、加工エリア110の外部において、加工エリア110内から引き出されたライン体210を支持している。支持部221は、付加加工用ヘッド131よりも上方に設けられている。支持部221は、第1横フレーム154および第2横フレーム311により支持されている。
【0073】
支持部221は、第1横フレーム154等に設けられた各種の案内機構により、Z軸方向に沿って案内されている。支持部221は、サドル161に対して着脱可能に設けられている。支持部221は、サドル161に対して接続されることによって、サドル161と一体となってZ軸方向に移動する。
【0074】
さらに、支持部221は、第1横フレーム154等に設けられた各種の送り機構およびサーボモータなどにより、単独でZ軸方向に移動可能である(自走機構)。支持部221には、第1横フレーム154に設けられたラック156と係合するピニオン(不図示)が設けられている。サドル161に対する支持部221の接続が解除された状態において、サーボモータからの回転を受けたピニオンが正方向または逆方向に回転することによって、支持部221が、+Z軸方向または-Z軸方向に移動する。
【0075】
このような構成において、自動工具交換装置141および支持部221は、Z軸方向における移動を可能とするための案内機構(レール155)および送り機構(ラック156)を共用している。
【0076】
なお、付加加工用ヘッド131にレーザ光および材料粉末を供給するための構造については、後で詳細に説明する。
【0077】
図6から
図8は、
図1中の加工機械におけるワークの加工流れを模式的に示す正面図である。
【0078】
図6から
図8を参照して、加工機械100は、レーザツール格納部191と、ヘッド格納部192とをさらに有する。レーザツール格納部191は、複数のレーザツール133を格納可能なように構成されている。ヘッド格納部192は、ワークの除去加工時に、工具主軸121から分離された付加加工用ヘッド131を格納可能なように構成されている。
【0079】
レーザツール格納部191およびヘッド格納部192は、加工エリア110の外部に設けられている。レーザツール格納部191は、X軸方向(上下方向)において、第1ワーク主軸111と、自動工具交換装置141の待機位置との間に設けられている。ヘッド格納部192は、第2ワーク主軸116の上方に設けられている。
【0080】
図6に示されるように、ワークWの付加加工時、付加加工用ヘッド131は、工具主軸121に装着される。工具主軸121がX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動することによって、付加加工用ヘッド131も、工具主軸121と一体となって加工エリア110内で移動する。これにより、付加加工用ヘッド131による付加加工の加工位置が3次元的に変位する。さらに、工具主軸121が、旋回軸504を中心に旋回することによって、付加加工用ヘッド131も工具主軸121と一体となって旋回軸504を中心に旋回する。これにより、付加加工用ヘッド131による付加加工の向き(ワークに対するレーザ光の照射方向)を自在に変化させることができる。
【0081】
付加加工用ヘッド131は、Z軸方向においてレーザツール格納部191と対向する位置に移動することによって、付加加工用ヘッド131に装着されたレーザツール133を、レーザツール格納部191に格納された別のレーザツール133と交換することが可能である。
【0082】
図7に示されるように、ワークWの付加加工に続いてワークWの除去加工を行なう場合、工具主軸121および付加加工用ヘッド131の接続を解除するとともに、サドル161に対する支持部221の接続を解除する。支持部221と一体の付加加工用ヘッド131を、支持部221に備えられた自走機構によって、加工エリア110内から加工エリア110外のヘッド格納部192に移動させる。
【0083】
一方、付加加工用ヘッド131が分離された工具主軸121を、基準姿勢から旋回軸504を中心に90°旋回させる。自動工具交換装置141を待機位置から加工エリア110内における機内側工具交換位置まで移動させる。自動工具交換装置141によって、自動工具交換装置141におけるダブルアーム144に把持された工具Taを工具主軸121に装着する。自動工具交換装置141を、機内側工具交換位置から待機位置に移動させることにより、工具主軸121に対する工具の装着が完了する。
【0084】
なお、機内側工具交換位置は、工具交換開始時における工具主軸121の位置から機内側工具交換位置までの工具主軸121の移動量が短くなるように適切に設定される。このように設定される機内側工具交換位置は、Z軸方向における任意の座標から選択されてもよいし、Z軸方向における複数の座標の候補から選択されてもよい。
【0085】
図8に示されるように、ワークWの除去加工時、付加加工用ヘッド131がヘッド格納部192に格納された状態において、工具主軸121に保持された工具Taによりワークをミーリング加工する。
【0086】
この間、自動工具交換装置141を待機位置からマガジン側工具交換位置に移動させ、マガジン側工具交換位置において工具マガジン171に格納された工具Tbを自動工具交換装置141に移す。工具Tbを把持した自動工具交換装置141を、マガジン側工具交換位置から待機位置に移動させることにより、工具主軸121における次の工具交換に備える。
【0087】
続いて、付加加工用ヘッド131にレーザ光および材料粉末を供給するための構造について、より詳細に説明する。
【0088】
図9は、
図1中の加工機械を部分的に示す上面図である。
図3および
図9を参照して、スプラッシュガード181は、スライドカバー351を有する。
【0089】
スライドカバー351は、全体として、X軸-Z軸平面に平行な平板形状を有する。スライドカバー351は、加工エリア110の奥側(-Y軸方向における加工エリア110の端部)に配置されている。ラム163は、Y軸方向において、加工エリア110外からスライドカバー351を貫通して加工エリア110内に進入している。スライドカバー351は、X軸方向およびZ軸方向におけるラム163の移動に合わせてスライド変形可能である。
【0090】
スライドカバー351には、ライン体挿入孔352が設けられている。ライン体挿入孔352は、Y軸方向においてスライドカバー351を貫通する貫通孔からなる。ライン体210(フレキシブルチューブ211)は、加工エリア110内からライン体挿入孔352に挿入されることによって、加工エリア110外に引き出されている。
【0091】
加工エリア110の内部から外部へのライン体210(フレキシブルチューブ211)の引き出し方向は、上面視においてZ軸方向に交差する方向である。
【0092】
加工エリア110の内部から外部へのライン体210(フレキシブルチューブ211)の引き出し方向は、上面視においてZ軸方向に直交する方向である。加工エリア110の内部から外部へのライン体210(フレキシブルチューブ211)の引き出し方向は、上面視において-Y軸方向である。ライン体210(フレキシブルチューブ211)は、上面視において-Y軸方向に延びながらライン体挿入孔352に挿通されている。
【0093】
図10は、加工エリア内における工具主軸の最大移動量を示す斜視図である。
図10を参照して、Y軸方向における工具主軸121の最大移動量Ymaxは、Z軸方向における工具主軸121の最大移動量Zmaxよりも短い(Ymax<Zmax)。X軸方向における工具主軸121の最大移動量Xmaxは、Z軸方向における工具主軸121の最大移動量Zmaxよりも短い(Xmax<Zmax)。Y軸方向における工具主軸121の最大移動量Ymaxは、X軸方向における工具主軸121の最大移動量Xmax以上であってもよいし、X軸方向における工具主軸121の最大移動量Xmaxよりも小さくてもよい。
【0094】
Z軸方向における工具主軸121の最大移動量Zmaxは、たとえば、4000mm以上であってもよい。
【0095】
このような構成において、仮に付加加工用ヘッド131から延出するライン体210が、上面視において+Z軸方向に向けて延びながら加工エリア110の外部に引き出される場合、-Z軸方向における工具主軸121および付加加工用ヘッド131の移動に伴って、加工エリア110内で延びるライン体210の全長が相当に長くなってしまう。この場合に、加工エリア110内のライン体210がその自重によって大きく撓んでしまう懸念が生じる。加えて、加工エリア内110内でライン体210が大きく撓むと、ライン体210が第2ワーク主軸116に保持されたワークと干渉したり、第2ワーク主軸116がZ軸方向に移動可能な構成である場合には、ライン体210が第2ワーク主軸116自身と干渉したりする懸念が生じる。
【0096】
図9および
図10を参照して、これに対して、本実施の形態における加工機械100では、加工エリア110の内部から外部へのライン体210の引き出し方向が、上面視においてY軸方向(-Y軸方向)であり、Y軸方向における工具主軸121の最大移動量YmaxがZ軸方向における工具主軸121の最大移動量Zmaxよりも短い。このような構成により、付加加工用ヘッド131が工具主軸121とともにY軸方向に移動した場合であっても、加工エリア110内で延びるライン体210の全長を短く抑えることができる。これにより、加工エリア110内におけるライン体210の撓みを抑制しつつ、ライン体210と、第2ワーク主軸116、または、第2ワーク主軸116に保持されたワークとの干渉を防ぐことができる。
【0097】
図3から
図5および
図9を参照して、支持部221は、基台331と、滑車部332と、コイルバネ(弾性部材)333とを有する。
【0098】
基台331は、第1横フレーム154および第2横フレーム311上に設けられている。基台331は、上面視において第1横フレーム154および第2横フレーム311の間に跨がって設けられている。加工エリア110の内部から外部に引き出されたライン体210は、基台331上を配索されている。基台331上を配索されたライン体210は、Z軸方向にストローク可能な図示しないケーブルベア(登録商標)に挿通された後、材料粉末供給装置341およびレーザ発振装置342に向けて延びている。
【0099】
滑車部332は、基台331により支持されている。滑車部332は、X軸方向(上下方向)に平行な回転軸526を中心に回転可能で、かつ、Y軸方向にスライド移動可能なように設けられている。
【0100】
コイルバネ333の一方端は、滑車部332に接続されている。コイルバネ333の他方端は、ブラケット334を介して基台331に接続されている。コイルバネ333は、滑車部332に対して-Y軸方向の弾性力を作用させている。コイルバネ333は、滑車部332に対して、上面視において加工エリア110から遠ざかる方向の弾性力を作用させている。
【0101】
フレキシブルチューブ211は、可撓性を有するチューブからなる。フレキシブルチューブ211は、加工エリア110の内部と外部との間で延びている。フレキシブルチューブ211の一方端211pは、加工エリア110の内部に配置されている。フレキシブルチューブ211の他方端211qは、加工エリア110の外部に配置されている。
【0102】
ライン体挿入孔352を通じて加工エリア110の内部から外部に引き出されたフレキシブルチューブ211は、基台331上において、-Y軸方向に延びている。フレキシブルチューブ211は、滑車部332に掛け回され、180°反転して+Y軸方向に延びている。フレキシブルチューブ211の他方端211qは、+Y軸方向に延びるフレキシブルチューブ211の先端において基台331に固定されている。
【0103】
滑車部332およびコイルバネ333は、張力付与機構335を構成している。張力付与機構335は、ライン体210(フレキシブルチューブ211)に対して、加工エリア110内の付加加工用ヘッド131から遠ざかる方向の張力を付与している。張力付与機構335は、ライン体210(フレキシブルチューブ211)に対して、加工エリア110の内部から外部に向けた引っ張り力を付与している。
【0104】
このような構成によれば、加工エリア110内におけるライン体210の撓みをさらに効果的に抑制することができる。また、滑車部332がY軸方向にスライド移動することによって、付加加工用ヘッド131の位置に合わせて加工エリア111内におけるライン体210の長さを自動的に調整することができる。
【0105】
なお、張力付与機構335を構成する弾性部材は、特に限定されず、たとえば、コイルバネ333に替わってガススプリングが用いられてもよい。
【0106】
図11は、
図3中の2点鎖線XIで囲まれた範囲を示す断面図である。
図12は、
図3中の2点鎖線XIIで囲まれた範囲を示す断面図である。
【0107】
図3から
図5、
図11および
図12を参照して、加工機械100は、第1案内機構370と、第2案内機構360とをさらに有する。第1案内機構370および第2案内機構360は、支持部221をZ軸方向に沿って案内している。第1案内機構370と、第2案内機構360は、Y軸方向において互いに離れて設けられている。
【0108】
図3、
図4および
図11に示されるように、支持部221は、ブロック336をさらに有する。ブロック336は、基台331に固定されている。ブロック336は、Y軸方向において、第1横フレーム154と対向している。
【0109】
第1案内機構370は、レール155と、スライダー372とを有する。第1案内機構370は、2組のレール155およびスライダー372を有する。レール155は、第1横フレーム154に取り付けられている。レール155は、Z軸方向に延びている。スライダー372は、ブロック336に取り付けられている。スライダー372は、図示しない複数のボールを介してレール155と係合している。スライダー372は、レール155とともに、Z軸方向における直線案内機構を構成している。
【0110】
図3から
図5および
図12に示されるように、第2案内機構360は、第1案内機構370から-Y軸方向に離れた位置に設けられている。第2案内機構360は、レール312と、一対の第1ローラ361,362と、一対の第2ローラ363,364とを有する。第2案内機構360は、2組の一対の第1ローラ361,362および一対の第2ローラ363,364を有する。
【0111】
レール312は、第2横フレーム311に取り付けられている。レール312は、Z軸方向に延びている。一対の第1ローラ361,362と、一対の第2ローラ363,364とは、基台331により支持されている。
【0112】
第1ローラ361および第1ローラ362は、それぞれ、X軸方向に平行な回転軸531および回転軸532を中心に回転可能に設けられている。第1ローラ361および第1ローラ362は、Y軸方向における両側からレール312を挟持している。第2ローラ363および第2ローラ364は、それぞれ、Y軸方向に平行な回転軸533および回転軸534を中心に回転可能に支持されている。第2ローラ363および第2ローラ364は、X軸方向における両側からレール312を挟持している。
【0113】
このような構成によれば、支持部221がY軸方向において互いに離れた位置で第1案内機構370および第2案内機構360により案内されるため、支持部221をZ軸方向に円滑に移動させることができる。
【0114】
図13は、
図5中の2点鎖線XIIIで囲まれた範囲を示す断面図である。
図5および
図13を参照して、加工機械100は、連結機構380をさらに有する。
【0115】
連結機構380は、付加加工用ヘッド131が工具主軸121に装着され、ワークの付加加工を行なう場合に、工具主軸121および支持部221の間を連結する第1状態と、工具主軸121から付加加工用ヘッド131が取り外され、ワークの除去加工を行なう場合に、工具主軸121および支持部221の間の連結を解除する第2状態との間で動作可能である。
【0116】
連結機構380は、エアシリンダ382と、ブロック381とを有する。ブロック381は、サドル161に取り付けられている。ブロック381には、ピン挿入孔386が設けられている。ピン挿入孔386は、Y軸方向に延び、+Y軸方向を向いて開口している。
【0117】
エアシリンダ382は、支持部221に取り付けられている。エアシリンダ382は、ピン384を有する。ピン384は、エアシリンダ382の駆動により、Y軸方向において進退可能である。ピン384がピン挿入孔386に挿入されることによって、工具主軸121および支持部221の間を連結する第1状態が得られる。ピン384がピン挿入孔386から抜かれることによって、工具主軸121および支持部221の間の連結を解除する第2状態が得られる。
【0118】
このような構成によれば、ワークの付加加工時、連結機構380により工具主軸121および支持部221の間を連結することによって、支持部221を工具主軸121および付加加工用ヘッド131と一体にZ軸方向に移動させる。これにより、支持部221を工具主軸121および付加加工用ヘッド131と同期させてZ軸方向に移動させる構造を、簡易な構成により実現することができる。また、ワークの除去加工時、連結機構380により工具主軸121および支持部221の間の連結を解除することによって、支持部221および付加加工用ヘッド131と分離された工具主軸121によりワークの除去加工を行なうことができる。
【0119】
図3および
図4を参照して、加工機械100は、第1ガイド部材320をさらに有する。第1ガイド部材320は、付加加工用ヘッド131および支持部221の間においてライン体210(フレキシブルチューブ211)を案内している。第1ガイド部材320は、Z軸に平行な第1回動軸522を中心に回動可能なように付加加工用ヘッド131に対して接続されている。第1ガイド部材320は、Z軸に平行な第2回動軸521を中心に回動可能なように支持部221に対して接続されている。
【0120】
第1ガイド部材320は、支持部221から後述する第2ガイド部材325に向けて斜め下方向(+Y軸方向、かつ、-X軸方向)に延びている。第1ガイド部材320は、第1回動軸522において第2ガイド部材325に接続され、第2回動軸521において基台331に接続されている。第1ガイド部材320が第1回動軸522および第2回動軸521を中心に回動することによって、第1ガイド部材320の傾きが変化する。
【0121】
第1ガイド部材320は、リニアガイド部321と、複数のカバー体323とを有する。
【0122】
リニアガイド部321は、第1回動軸522および第2回動軸521の間において直線状に延びている。リニアガイド部321は、支持部221から第2ガイド部材325に向けて繰り出されるライン体210(フレキシブルチューブ211)を下方から支持するように設けられている。リニアガイド部321は、第1回動軸522および第2回動軸521の間の距離が変化するように伸縮する伸縮機構として設けられている。リニアガイド部321は、第1回動軸522から第2回動軸521に向かう方向において伸縮可能に組み合わされた複数のリニアガイドの多段構造を有する。
【0123】
複数のカバー体323は、リニアガイド部321に取り付けられている。複数のカバー体323は、第1回動軸522から第2回動軸521に向かう方向において互いに間隔を設けて配置されている。カバー体323は、リニアガイド部321により支持されるフレキシブルチューブ211をその外周から覆うように設けられている。フレキシブルチューブ211は、第1ガイド部材320によって、第1ガイド部材320による案内方向(第1回動軸522および第2回動軸521を結ぶ方向)に沿ってスライド可能なように支持されている。
【0124】
このような構成によれば、付加加工用ヘッド131がY軸-X軸平面内で移動した場合に、第1ガイド部材320が第1回動軸522および第2回動軸521を中心に回動するともに、リニアガイド部321が伸縮動作する。これにより、第2ガイド部材325および支持部221の間におけるライン体210(フレキシブルチューブ211)の配索経路が、付加加工用ヘッド131の移動に合わせて円滑に変化するため、ライン体210(フレキシブルチューブ211)を過度な負荷を加えることなく円滑に引き出すことができる。
【0125】
図14は、
図3中の2点鎖線XIVで囲まれた範囲を示す斜視図である。
図15は、
図14中の加工機械を示す正面図である。
【0126】
図14および
図15を参照して、加工機械100は、第2ガイド部材325をさらに有する。第2ガイド部材325は、ライン体210が配索される経路上における付加加工用ヘッド131および第1ガイド部材320の間に設けられている。第2ガイド部材325は、付加加工用ヘッド131から延出するライン体210を旋回軸504の周方向に沿って案内している。
【0127】
第2ガイド部材325は、工具主軸121の旋回時に、旋回軸504の周方向における第2ガイド部材325の姿勢を維持するように工具主軸121に対して旋回軸504を中心に相対的に回動する。
【0128】
円盤部136は、Y軸方向(旋回軸504の軸方向)において、第2ガイド部材325および工具主軸121の間に配置されている。第2ガイド部材325は、付加加工用ヘッド131のうちの円盤部136により支持されている。第2ガイド部材325は、円盤部136に対して、旋回軸504を中心にして相対的に回動可能である。
【0129】
第2ガイド部材325は、外周壁326を有する。外周壁326は、旋回軸504の周方向に沿って延在する壁形状をなしている。
【0130】
円盤部136には、内周壁327が接続されている。内周壁327は、円盤部136から+Y軸方向に突出し、旋回軸504の周方向に沿って延在する壁形状をなしている。内周壁327は、外周壁326の内周側に配置されている。内周壁327および外周壁326の間には、旋回軸504の周方向に延びる空間が設けられおり、その空間にライン体210(フレキシブルチューブ211)が配置されている。
【0131】
工具主軸121の旋回時、内周壁327は、工具主軸121と一体の円盤部136とともに旋回軸504を中心に旋回動作する。その一方で、第2ガイド部材325には第1ガイド部材320が接続されているため、第2ガイド部材325は、旋回軸504の周方向における第2ガイド部材325の姿勢を維持するように工具主軸121(円盤部136)に対して旋回軸504を中心に相対的に回動する。
【0132】
このとき、ライン体210(フレキシブルチューブ211)は、内周壁327および外周壁326の間の空間において、旋回軸504の周方向にスライドすることによって、フレキシブルチューブ211の一方端211pと、ヘッド本体132との相対的な位置関係が維持される。これにより、旋回軸504を中心とするライン体210の配索経路が保たれるため、工具主軸121のB軸旋回に伴ってライン体210に過度な負荷が加わることを抑制できる。
【0133】
以上に説明した、この発明の実施の形態における加工機械100の構造についてまとめると、本実施の形態における加工機械100は、ワークの付加加工および除去加工が可能な加工機械である。加工機械100は、加工エリア110を区画形成するスプラッシュガード181と、ワークの除去加工のための回転工具を保持し、加工エリア110の内部において、水平方向に平行な第1軸としてのZ軸の軸方向と、水平方向に平行で、かつ、Z軸と直交する第2軸としてのY軸の軸方向とに移動可能な工具主軸121と、工具主軸121に接続され、ワークに対して材料粉末を吐出するとともにレーザ光を照射する付加加工用ヘッド131と、付加加工用ヘッド131から延出し、加工エリア110の内部から外部に引き出され、付加加工用ヘッド131に材料粉末およびレーザ光を供給するライン体210とを備える。Y軸の軸方向における工具主軸121の最大移動量は、Z軸の軸方向における工具主軸121の最大移動量よりも短い。加工エリア110の内部から外部へのライン体210の引き出し方向は、上面視においてZ軸の軸方向に交差する方向である。
【0134】
このように構成された、この発明の実施の形態における加工機械100によれば、加工エリア110内において、付加加工用ヘッド131に材料粉末およびレーザ光を供給するためのライン体210に撓みが生じることを抑制できる。
【0135】
なお、本実施の形態では、旋削機能とミーリング機能とを有する複合加工機をベースにAM/SMハイブリッド加工機を構成した場合について説明したが、このような構成に限られず、たとえば、ミーリング機能を有するマシニングセンタをベースにAM/SMハイブリッド加工機を構成してもよい。
【0136】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0137】
この発明は、主に、ワークの付加加工および除去加工が可能なAM/SMハイブリッド加工機に適用される。
【符号の説明】
【0138】
100 加工機械、110 加工エリア、111 第1ワーク主軸、116 第2ワーク主軸、121 工具主軸、122 主軸端面、123 側面部、124 前面部、131 付加加工用ヘッド、132 ヘッド本体、133 レーザツール、136 円盤部、141 自動工具交換装置、143 昇降アーム、144 ダブルアーム、151 ベッド、152 第1縦フレーム、153 第2縦フレーム、154 第1横フレーム、155,312 レール、156 ラック、161 サドル、162 クロススライド、163 ラム、171 工具マガジン、181 スプラッシュガード、191 レーザツール格納部、192 ヘッド格納部、210 ライン体、211 フレキシブルチューブ、211p 一方端、211q 他方端、221 支持部、311 第2横フレーム、320 第1ガイド部材、321 リニアガイド部、323 カバー体、325 第2ガイド部材、326 外周壁、327 内周壁、331 基台、332 滑車部、333 コイルバネ、334 ブラケット、335 張力付与機構、336,381 ブロック、341 材料粉末供給装置、342 レーザ発振装置、351 スライドカバー、352 ライン体挿入孔、360 第2案内機構、361,362 第1ローラ、363,364 第2ローラ、370 第1案内機構、372 スライダー、380 連結機構、382 エアシリンダ、386 ピン挿入孔、501,502,503,526,531,532,533,534 回転軸、504,505 旋回軸、521 第2回動軸、522 第1回動軸。