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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/16 20060101AFI20231024BHJP
   H05B 3/14 20060101ALI20231024BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H05B3/16
H05B3/14 G
B60N2/56
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022531607
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 CN2019126905
(87)【国際公開番号】W WO2021120156
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】514185921
【氏名又は名称】ジェンサーム ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ ヤン
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-089497(JP,A)
【文献】特開2007-305579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/16
H05B 3/14
B60N 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア要素(12)と、
前記キャリア要素(12)に固定される導電性スレッド配置構成(14)と、
を具備して、
前記スレッド配置構成(14)が複数のスレッド部分(16a~16p,30a~30o)を具備して、各スレッド部分(16a~16p,30a~30o)が複数のスレッドループ(18a~18e,20a~20e)を有する
熱装置(10)であって、
前記スレッド配置構成(14)の複数のスレッド部分(16a~16p,30a~30o)が重複状態で並列配置されて、重複状態で並列配置された前記スレッド配置構成(14)の前記スレッド部分(16a~16p,30a~30o)が互いに数回交差し、
重複状態で並列配置された前記スレッド配置構成(14)の前記スレッド部分(16a~16p,30a~30o)が、交差エリア(22a~22d)内においてスレッド接触路(24a~24d)上で互いに当接し、
前記スレッド接触路(24a~24d)のエリアにおいて、相互に当接している前記スレッド部分(16a~16p,30a~30o)は、互いに平行に延在し、前記スレッド接触路(24a~24d)は、スレッドループ(18a~18e,20a~20e)の間に位置する、
ことを特徴とする、
加熱装置。
【請求項2】
重複状態で並列配置された前記スレッド配置構成(14)の前記スレッド部分(16a~16p,30a~30o)が複数の交差エリア(22a~22d)内において互いに当接し、前記交差エリア(22a~22d)が前記スレッド部分(16a~16p,30a~30o)のスレッドループ(18a~18e,20a~20e)の間に所在することを特徴とする、
請求項1による加熱装置(10)。
【請求項3】
重複状態で並列配置された前記スレッド配置構成(14)の複数の前記スレッド部分(16a~16p,30a~30o)が、炭素加熱スレッド区画(38,38a~38d)を形成する炭素加熱スレッド(28)又は複数の炭素加熱スレッド(28)の炭素加熱スレッド部分(30a~30o)であることを特徴とする、
先行請求項の一つによる加熱装置(10)。
【請求項4】
重複状態で並列配置された前記スレッド配置構成(14)の複数の前記スレッド部分(16a~16p,30a~30o)が、炭素加熱スレッド(28)の為の接触スレッド区画(32,32a~32f)を形成する金属接触スレッド(26)又は複数の金属接触スレッド(26)の金属接触スレッド部分(16a~16p)であることを特徴とする、
先行請求項の一つによる加熱装置(10)。
【請求項5】
重複状態で並列配置された接触スレッド区画(32,32a~32f)の複数の前記接触スレッド部分(16a~16p)の各々が一つ又は複数の炭素加熱スレッド(28)と数回当接することを特徴とする、
請求項による加熱装置(10)。
【請求項6】
前記接触スレッド区画(32,32a~32f)が少なくとも部分的に封止されることを特徴とする、
請求項又はによる加熱装置(10)。
【請求項7】
互いに距離を置いて配置される複数の接触スレッド区画(32,32a~32f)を特徴として、前記接触スレッド区画(32,32a~32f)と接触する一つ又は複数の炭素加熱スレッド(28)が前記接触スレッド区画(32,32a~32f)の間に延在する、
請求項の一つによる加熱装置(10)。
【請求項8】
複数の接触スレッド区画(32,32a~32f)が前記キャリア要素(12)上の離間点に位置することを特徴とする、
請求項の一つによる加熱装置(10)。
【請求項9】
接触スレッド区画(32,32a~32f)から延出する複数の接触スレッド部分(16a~16p)がまとめて圧着されることを特徴とする、
請求項の一つによる加熱装置(10)。
【請求項10】
一以上の第1接触スレッド区画(32,32a~32f)が前記キャリア要素(12)の第1領域に配置されて、一以上の第2接触スレッド区画(32,32a~32f)が前記キャリア要素(12)の第2領域に配置され、一以上の炭素加熱スレッド区画(38,38a~38d)を介して第1接触スレッド区画(32,32a~32f)の各々が第2接触スレッド区画(32,32a~32f)に接続されることを特徴とする、
請求項の一つによる加熱装置(10)。
【請求項11】
前記炭素加熱スレッド区画(38,38a~38d)を具備する前記炭素加熱スレッド(28)が、少なくとも90度の範囲で前記キャリア要素(12)の周囲に延在することを特徴とする、
請求項10による加熱装置(10)。
【請求項12】
炭素加熱スレッド区画(38,38a~38d)から延出する複数の炭素加熱スレッド部分(30a~30o)がまとめて圧着されることを特徴とする、
請求項11の一つによる加熱装置(10)。
【請求項13】
重複状態で並列配置された前記スレッド配置構成(14)の複数の前記スレッド部分(16a~16p,30a~30o)が、炭素加熱スレッド区画(38,38a~38d)を形成する炭素加熱スレッド(28)又は複数の炭素加熱スレッド(28)の炭素加熱スレッド部分(30a~30o)であり、
前記炭素加熱スレッド部分(30a~30o)及び/又は前記接触スレッド部分(16a~16p)が前記キャリア要素(12)自体に縫合される、及び/又は、別の固定スレッドによって前記キャリア要素(12)に縫合されることを特徴とする、
請求項4~10の一つによる加熱装置(10)。
【請求項14】
前記キャリア要素(12)が平坦な材料層であることを特徴とする、先行請求項の一つによる加熱装置(10)。
【請求項15】
少なくとも一つのクッションと、
前記クッションのユーザ接触表面を加熱する為のヒータ(10)と、
を具備して、
前記加熱装置(10)が先行請求項の一つにより設計されることを特徴とする、
車両シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア要素と、キャリア要素に固定される導電性スレッド配置構成とを具備する加熱装置に関し、特に車両シート用の加熱装置に関する。スレッド配置構成は複数のスレッド部分を具備し、各スレッド部分は複数のスレッドループを有する。
【0002】
本発明は更に、少なくとも一つのクッションと、クッションのユーザ接触表面を加熱する為の加熱装置とを備える車両シートに関する。
【背景技術】
【0003】
車両シートの加熱装置にユーザが課す要求は常に高まっている。それを別にしても、このような加熱装置が高い費用効果で製造されてエネルギー効率良く作動し得ることが必要である。一方で、最新の車両シートは急速な加熱が可能であるべきであり、他方で、加熱はユーザにとって快適に行われるのと同時に高い動作信頼度を確保するものとする。更に、電磁場の発生が回避されるものとし、高い信頼度と長い動作寿命とが製造者により保証されるものとする。加熱装置は、広範囲の用途で使用され得るように多様な出力密度で作動し得るべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術で周知の加熱装置は、上述の要件を部分的にのみ満たし得る。それゆえ本発明の目的は、上述の特性の少なくとも一つに関して改良された加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
始めに言及されたタイプの加熱装置によりこの目的が達成され、重複状態で並列配置されたスレッド配置構成のスレッド部分が互いに数回交差するように本発明による加熱装置のスレッド配置構成の複数のスレッド部分は重複状態で並列配置される。
【0006】
本発明は、使用されるスレッドのフェイルセーフ敷設パターンによりこのような加熱装置の信頼度及び動作寿命が向上するという事実を利用している。重複状態で並列配置されて互いに数回交差するスレッド部分によって、スレッド破損あるいはスレッドに対する別の損傷は加熱装置の大規模又は完全な故障をもはや招かない。故障のケースでは、重複状態で並列配置されたスレッド部分の複数の交差点によって、冗長性が使用され得る。冗長性は基本的に、スレッドへの損傷の際に機能障害を防止する。重複状態で並列配置されたスレッド部分は少なくとも部分的に非平行及び/又は非対称に延在する。重複状態で並列配置されたスレッド部分は互いに鏡像であり得る、及び/又は、少なくとも或るエリアで逆行路を有し得る。スレッド部分のスレッドループは、例えば、少なくとも90度、特に少なくとも135度のスレッド湾曲部であり得る。好適な実施形態において、スレッド部分のスレッドループは180度のスレッド湾曲部である。
【0007】
本発明による加熱装置の好適な実施形態において、重複状態で並列配置されたスレッド配置構成のスレッド部分は、複数の交差エリア内で互いに当接する。交差エリアは好ましくはスレッド部分のスレッドループの間に所在する。代替的又は付加的に、交差エリアはスレッドループの経路に存在し得る。交差エリアでのスレッド接触によって、スレッド部分の複数の接触が達成され得るので、スレッド部分は複数のスレッド区分に分割され、各スレッド区分は好ましくは二つの接触点の間に延在する。これは、スレッドが損傷した時にスレッド区分の故障のみが発生するという利点につながる。一つの破損スレッド部分による、あるいは少数の損傷スレッド部分によるヒータの大規模故障が、効果的に回避される。
【0008】
本発明による加熱装置の別の好適な実施形態において、重複状態で並列配置されたスレッド配置構成のスレッド部分が、交差エリア内のスレッド接触路上で互いに当接する。スレッド接触路のエリアにおいて、相互に当接しているスレッド部分は、好ましくは互いに平行に延在する。スレッド接触路は、好ましくはスレッドループの間に位置する。
【0009】
更に、重複状態で並列配置されたスレッド配置構成の複数のスレッド部分が、炭素加熱スレッド区画を形成する炭素加熱スレッド又は複数の炭素加熱スレッドの炭素加熱スレッド部分である、本発明による加熱装置が好適である。好ましくは、炭素加熱部分は、炭素加熱スレッド部分に電流が流れる時に熱を発生するように設計される。炭素加熱スレッド部分は好ましくは、加熱路上に、あるいはヒータの加熱ゾーン内に延在する。炭素加熱スレッドは好ましくは一以上の炭素繊維を包含する。炭素繊維は丈夫で低価格の抵抗加熱材料である。炭素繊維は耐久性かつ耐摩耗性でもある。高いスレッド密度によって、炭素加熱スレッド区画のエリアでは特に高いエリア固有の加熱出力が達成され得る。炭素加熱スレッドは、例えば、200テックス又は67テックスのヤーンフィラメントを包含し得る。炭素加熱スレッドは、電気抵抗を低下させる為の複数、例えば2本のヤーンフィラメントを包含し得る。
【0010】
本発明による加熱装置の別の実施形態において、重複状態で並列配置されるスレッド配置構成の複数のスレッド部分は、炭素加熱スレッドの為の接触スレッド区画を形成する金属接触スレッド又は複数の金属接触スレッドの金属接触スレッド部分である。接触スレッド区画は、加熱装置の一つ又は複数の炭素加熱スレッドの為の電極として作用する。それゆえ、加熱装置の一つ又は複数の炭素加熱スレッドの為の電極として作用する少なくとも二つの接触スレッド区画を加熱装置が有すると、好適である。一つ又は複数の接触スレッド区画は、矩形、方形、又は円形の基本形状を有し得る。電極機能に加えて、接触スレッド部分は、動作中に熱も発生するので、加熱機能も有する。接触スレッドは複数の金属フィラメントを備える加熱編組体であり得る。接触スレッド区画のエリアでの高いスレッド密度によって、特に高い表面固有の加熱出力がこれらの表面部分で達成され得る。好ましくは、一つ又は複数の接触スレッド区画の各々は、重複状態で互いに並列配置されて互いに数回交差する複数のスレッド部分を有して、重複スレッド部分の間には多数の接触点が設けられる。スレッド破損の後でも接触点は基本的に接触スレッド区画全体にわたって導電性接続を確保するので、これはスレッド損傷又はスレッド破損の際の接触安全性の向上にもつながる。
【0011】
本発明による加熱装置の更に好適な実施形態において、重複状態で並列配置された接触スレッド区画の複数の接触スレッド部分の各々は、一つ又は複数の炭素加熱スレッドと数回当接する。一つ又は複数の炭素加熱スレッドは、ゆえに、電極として作用する接触スレッド区画を介して接触する。接触スレッド区画の接触スレッド部分の主要延在方向は、好ましくは、一つ又は複数の接触炭素加熱スレッド部分の主要延在方向に対して横向きに延在する。一つ又は複数の炭素加熱スレッドと接触スレッド区画の接触スレッド部分との間の複数の接触は、接触スレッドと炭素加熱スレッドとの間の接触抵抗の低下につながる。
【0012】
加えて、接触スレッド区画が少なくとも部分的に封止された本発明による加熱装置は有利である。特に、接触スレッド区画は接着剤で部分的又は完全に封止される。加熱装置が複数の接触スレッド区画を有する場合には、好ましくは、当該の接触スレッド区画に割り当てられた封止剤で、特に接着剤で、各接触スレッド区画が封止される。一つ又は複数の接触スレッド区画は封止材料で被覆され得る。封止材料は好ましくは液状で塗着され、一つ又は複数の接触スレッド区画への塗着の後に乾燥される。封止材料が接着剤である場合には、ホットメルト接着剤の使用が好適である。封止剤は、一つ又は複数の接触スレッド区画を腐食及び外部応力に対して保護する。封止剤は、一つ又は複数の接触スレッド区画の水密性及び/又は気密性封止につながり得る。
【0013】
更なる実施形態において、本発明による加熱装置は、互いから距離を置いて配置される複数の接触スレッド区画を有し、接触スレッド区画と接触する一つ又は複数の炭素加熱スレッドはこれらの接触スレッド区画の間に延在する。接触スレッド区画と接触して接触スレッド区画の間に延在する炭素加熱スレッドは、実質的に直線状である主要延在方向を有して、これらが接触する接触スレッド区画の間で局所的に延在する。炭素加熱スレッドは、主要延在方向において蛇行及び/又はループ状態で延在し得る、及び/又は、一つ又は複数の炭素加熱スレッド区画を形成し得る。代替的に、接触スレッド区画と接触して接触スレッド区画の間に延びる炭素加熱スレッドは、局所的に接触スレッド区画の間にない表面エリアも炭素加熱スレッドが通過するように、少なくとも部分的に周方向又は円弧状の主要延在方向を有し得る。例えば、炭素加熱スレッドはキャリア要素の縁部領域に延びる、及び/又は、少なくとも部分的にキャリア要素の中央区分に延びる。
【0014】
本発明による加熱装置の別の好適な実施形態では、複数の接触スレッド区画がキャリア要素上の離間点に位置する。特に、加熱装置は、キャリア要素上の離間点に位置するちょうど2,3,4,5,6,7,8,9,10個又はこれらのみ、あるいは10個より多い接触スレッド区画を有する。
【0015】
本発明による加熱装置の別の好適な実施形態では、接触スレッド区画から延出する複数の接触スレッド部分がまとめて圧着される。圧着部は好ましくは、導電性接続導体を介して電源装置と接続される。複数の接触スレッド部分をまとめて圧着すると、耐腐食性の向上につながり、製造費用を低減させる。圧着点は好ましくは接着剤で封止され得る。
【0016】
本発明による加熱装置の別の好適な実施形態において、一つ又は複数、特に2,3,4個の第1接触スレッド区画がキャリア要素の第1領域に配置され、一つ又は複数、特に2,3,4個の第2接触スレッド区画がキャリア要素の第2領域に配置される。好ましくは、一つ又は複数の炭素加熱スレッド部分、及び/又は、一つ又は複数の炭素加熱スレッド区画を介して、各接触スレッド区画が第2接触スレッド区画に接続される。第1接触スレッド区画は好ましくは、接触スレッド部分を介して直列接続される。第1接触スレッド区画の間の接触スレッド部分の数は変化し得る。特に、行位置が進むにつれて、第1接触スレッド区画の間の接触スレッド部分の数が減少する。好ましくは、接触スレッド部分を介して第2接触スレッド区画が直列接続される。第2接触スレッド区画の間の接触スレッド部分の数が変化し得る。特に、行位置が進むにつれて第2接触スレッド区画の間の接触スレッド部分の数が減少する。
【0017】
また、炭素加熱スレッド区画を具備する炭素加熱スレッドが少なくとも90度の範囲で、好ましくは180度の範囲でキャリア要素に延在する、本発明による加熱装置が好適である。炭素加熱スレッドのグループは好ましくはキャリア要素の外側表面部分に延在する。好ましくは、炭素加熱スレッドのグループはキャリア要素の内側表面部分に延在する。
【0018】
本発明による加熱装置の別の実施形態では、炭素加熱スレッド区画から延出する複数の炭素加熱スレッド部分がまとめて圧着される。圧着部は好ましくは導電性接続導体を介して電源装置と接続される。幾つかの炭素加熱スレッド部分をまとめて圧着すると、耐腐食性の向上につながり、製造費用を低下させる。圧着点は好ましくは接着剤で封止され得る。
【0019】
本発明による加熱装置の別の好適な実施形態では、炭素加熱スレッド部分及び/又は接触スレッド部分がキャリア要素自体に縫合される。代替的又は付加的に、炭素加熱スレッド部分及び/又は接触スレッド部分は別の固定スレッドによってキャリア要素に縫合される。キャリア要素に縫合された接触スレッド部分によって、炭素加熱スレッド部分もキャリア要素に固定され得る。このケースでは、炭素加熱スレッド部分がキャリア要素自体に縫合されてもよい。代替的に、キャリア要素に縫合された炭素加熱スレッド部分によって接触スレッド部分がキャリア要素に固定されてもよい。このケースでは、炭素加熱スレッド部分がキャリア要素自体に縫合されてもよい。ステッチの孔の間隔は、好ましくは3mm未満、特に2mm未満、特に好ましくは約1mmである。接触スレッド区画の領域では、接触スレッド部分と炭素加熱スレッドとの間の接触抵抗が低減される。
【0020】
本発明による加熱装置の好適な実施形態において、キャリア要素は平坦な材料層、特に繊維材料層である。キャリア要素の平坦設計によって、キャリア要素はクッションのユーザ接触表面の近傍に締結され得る。キャリア要素の繊維設計は空気及び/又は水分に対してこれを透過性にする。代替的に、キャリア要素はフィルムとして設計されてもよい。キャリア要素は好ましくは耐破断性である、及び/又は、複数の孔及び/又は凹部を有する。孔又は凹部を通して、材料及び/又は重量のかなりの削減が達成され得る。
【0021】
本発明の目的は、始めに言及されたタイプの車両シートによっても達成され、本発明による車両シートの加熱装置は上に記載された実施形態の一つにより設計される。本発明による車両シートの利点及び変形に関しては、本発明による加熱装置の利点及び変形が参照される。
【0022】
車両シートのクッションは、車両シートのシート表面の臀部クッション、あるいは車両シートの背もたれの背部クッションであり得る。
本発明の好適な実施形態が、添付図面を参照して以下でより詳しく説明及び記載される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による加熱装置の実施形態を平面での略図で示す。
図2図1に示されている加熱装置のスレッド配置構成の第1スレッド部分を示す。
図3図1に示されている加熱装置のスレッド配置構成の第2スレッド部分を示す。
図4】本発明による加熱装置の別の実施形態を略図で示す。
図5】本発明による加熱装置の別の実施形態を略図で示す。
図6】本発明による加熱装置の別の実施形態を略図で示す。
図7】本発明による加熱装置の別の実施形態を略図で示す。
図8】本発明による加熱装置の別の実施形態を略図で示す。
図9】本発明による加熱装置の別の実施形態を略図で示す。
図10】本発明による車両シートのクッションを略図で示す。
図11】本発明による車両シートの別のクッションを略図で示す。
図12】本発明による車両シートの別のクッションを略図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1~3は、車両シート用の加熱装置10を示す。加熱装置10は車両シートのクッションに装着され得るか、車両シートのクッションに一体化され得る。
【0025】
加熱装置10はキャリア要素12を具備する。キャリア要素12は平坦な繊維材料層である。キャリア層12を平坦な材料層として設計することにより、クッションのユーザ接触表面の近傍にキャリア要素12が装着され得る。キャリア要素12の繊維設計は空気又は水分透過性を確保し、これは快適性を高めるものとして車両シートのユーザに認識されている。
【0026】
キャリア要素12には導電性スレッドアセンブリ14が固定される。スレッド配置構成14は、キャリア要素12に縫合される複数、すなわち、二つのスレッド部分16a,16bを有する。スレッド部分16a,16bの各々は複数のスレッドループ18a~18e,20a~20eを有する。スレッドループ18a~18e,20a~20eは、180度にわたって延在するスレッド湾曲部である。
【0027】
スレッド配置構成14のスレッド部分18a,18bは、重複状態で並列配置されたスレッド部分16a,16bが互いに数回交差するように、重複状態で並列配置される。
【0028】
重複状態で並列配置されたスレッド配置構成14のスレッド部分18a,18bは、複数の交差エリア22a~22dで互いに当接する。交差エリア22a~22dは、スレッド部分16a,16bのスレッドループ18a~18e,20a~20eの間に所在する。このケースにおいて、重複状態で並列配置されたスレッド配置構成14のスレッド部分18a,18bは、交差エリア22a~22d内のスレッド接触路で互いに当接する。スレッド部分16aのスレッドループ18a~18eとスレッド部分16bのスレッドループ20a~20eは互いに反対に配置されて、反対の配向と鏡像状の経路とを有する。結果的に、重複状態で並列配置されたスレッド部分16a,16bは部分的に互いに非平行に延在する。スレッド部分16a,16bにより画定される縫目パターンは低費用で製作され、高い加熱出力をエネルギー効率良く提供できる。スレッド破損又はスレッド損傷が加熱装置10全体の故障につながらないので、複数の交差点は向上した動作及び機能信頼度も確保する。
【0029】
図4は、金属接触スレッド26と炭素加熱スレッド28とを備える加熱装置10を示す。金属接触スレッド26は複数の金属フィラメントを備える編組導体である。金属接触スレッド26は、重複状態で並列配置された複数の金属接触スレッド部分16a~16dを具備して、接触スレッド部分16a~16dは接触スレッド区画32を画定する。炭素加熱スレッド28はキャリア要素12に締結され、接触スレッド区画32によって電気的に接触している。ゆえに接触スレッド区画32は炭素加熱スレッド28の電極として作用する。
【0030】
接触スレッド部分16a~16dは、炭素加熱スレッド28が縫目によりキャリア要素12に固定されるようにキャリア要素12に縫合される。更に接触スレッド部分16a~16dの各々は複数のスレッドループを有して互いに数回交差するので、個々の接触スレッド部分16a~16dの間には複数の接触点が設けられる。更に、重複状態で並列配置された接触スレッド区画32の複数の接触スレッド部分16a~16dは、炭素加熱スレッド28の実質的に相互に平行な二つの炭素加熱スレッド部分30a,30bと数回当接する。接触スレッド26と炭素加熱スレッド28との間の接触抵抗がこうして低減される。接触スレッド区画32のエリアでの高いスレッド密度によって、特に高いエリア固有の加熱出力がこのエリアで局所的に達成される。
【0031】
図5は、重複状態で並列配置された合計6個の接触スレッド部分16a~16fを接触スレッド26が有する加熱装置10を示す。接触スレッド部分16a~16fの各々はやはり複数のスレッドループを有する。互いに数回交差するような手法で互いに重複するようにスレッド部分16a~16fが配置される。接触スレッド部分16a~16fは、キャリア要素12に縫合された接触スレッド区画32を画定する。縫合された接触スレッド26によって炭素加熱スレッド28がキャリア要素12に固定される。炭素加熱スレッド28は、互いに基本的に平行に延在する4個の炭素加熱スレッド部分30a~30dを有する。重複状態で並列配置された接触スレッド区画32の複数の接触スレッド部分16a~16fは、複数の炭素加熱スレッド部分30a~30dと数回当接する。
【0032】
図6は、互いに導電性接続された二つの接触スレッド区画32a,32bを備える加熱装置10を示す。接触スレッド区画32a,32bは、接触スレッド部分16e,16fを介して互いに接続されている。接触スレッド区画32aは炭素加熱スレッド部分30f~30hと接触するように作用する。接触スレッド区画32bは炭素加熱スレッド部分30a~30eと接触するように作用する。接触スレッド区画32bから延出する接触スレッド部分16a~16dは、圧着点34でまとめて圧着される。圧着点34は腐食に対して保護され、封止剤40により接続され、そして導電性接続導体36によって電源装置と接続されている。
【0033】
図7は、接触スレッド区画32を備える加熱装置10を示す。接触スレッド区画32から延出する接触スレッド部分16a~16fは、圧着点34でまとめて圧着される。
【0034】
接触スレッド区画32は、炭素加熱スレッド部分30a~30jの電気接触の為に作用する。このケースで、炭素加熱スレッド部分30a~30jも重複状態で並列配置されて炭素加熱スレッド区画38を画定する。炭素加熱スレッド部分30a~30jは熱を発生するように構成される。炭素加熱スレッド区画38は、キャリア要素12の加熱ゾーン内に所在する。炭素加熱スレッド部分30a~30jは、例えば、複数の炭素繊維を包含する。炭素加熱スレッド区画38のエリアでの高いスレッド密度によって、特に高いエリア固有の加熱出力がここで達成され得る。炭素加熱スレッド部分30a~30jは、炭素加熱スレッド28の、あるいは複数の炭素加熱スレッドの一部であり得る。一つ又は複数の炭素加熱スレッドは、例えば、67テックスのヤーンフィラメント又は200テックスのヤーンフィラメントを包含し得る。
【0035】
図8は、左加熱ウィングと右加熱ウィングとを備える加熱装置10を示す。接触スレッド区画32a,32bに通じる接触スレッド部分は、圧着点34aで圧着される。圧着点34aは封止剤40aにより封止され、接続導体36aに接続される。左加熱ウィングの炭素加熱スレッドは接触スレッド区画32a,32bを介して接触している。接触スレッド区画32c,32dに通じる接触スレッド部分は、圧着点34bで圧着される。圧着点34bは封止剤40bにより封止されて接続導体36bに接続される。右加熱ウィングの炭素加熱スレッドは接触スレッド区画32c,32dを介して接触している。
【0036】
図9は、接触スレッド区画32a,32bが接着封止剤42a,42bで封止される加熱装置10を示している。封止の為に、ホットメルト接着剤が流動状態で接触スレッド区画32a,32bに塗着された。ホットメルト接着剤が乾燥した後に、封止剤42a,42bは、腐食及び外部応力に対する保護を接触スレッド区画32a,32bに提供する。封止剤42a,42bは、水密及び気密状態で接触スレッド区画32a,32bを封止する。
【0037】
図10は、加熱装置10を備える車両シートの背もたれのクッションを示す。下方領域で、加熱装置10は、繊維キャリア要素12の特定点に位置する4個の接触スレッド区画32a~32dを有する。
【0038】
接触スレッド区画32a,32dと接触する炭素加熱スレッドは接触スレッド区画32a,32dの間に延在し、接触スレッド区画32a,32dは互いに離間している。接触スレッド区画32a,32dと接触する炭素加熱スレッドは、キャリア要素12の上方領域に二つの炭素加熱スレッド区画38c,38dを形成する。接触スレッド区画32a,32dの間に延在する炭素加熱スレッドは、キャリア要素12の左右外側領域及び上方外側領域に延び、ゆえに接触スレッド区画32a,32dの間の直接接続軸線上にはない。
【0039】
接触スレッド区画32b,32cと接触する炭素加熱スレッドは接触スレッド区画32b,32cの間に延在し、接触スレッド区画32b,32cは互いに離間している。接触スレッド区画32b,32cと接触する炭素加熱スレッドは、キャリア要素12の中央領域に二つの炭素加熱スレッド区画38a,38bを形成する。接触スレッド区画32b,32cの間に延在する炭素加熱スレッドはキャリア要素の内側領域に延びて、接触スレッド区画32a,32dと接触する炭素加熱スレッドに囲繞されている。接触スレッド区画32b,32cの間に延在する炭素加熱スレッドも、接触スレッド区画32b,32cの間の直接接続軸線上に延びていない。
【0040】
図11に示されている加熱装置10のキャリア要素12の外側領域に延びる炭素加熱スレッドと、キャリア要素12の内側領域に延びる炭素加熱スレッドとは、接触スレッド区画32e,32fを介して互いに導電性接続される。ゆえに加熱装置10は、キャリア要素12上の特定点に位置する合計6個の接触スレッド区画32a~32fを有する。炭素加熱スレッド部分の付加的な接触によって、加熱装置10の加熱出力が上昇し、加えて信頼度の向上が達成される。
【0041】
図12に示されている加熱装置10は、キャリア要素12の左側に配置された3個の接触スレッド区画32a~32cと、キャリア要素12の右側に配置された3個の接触スレッド区画32d~32fとを有する。炭素加熱スレッド区画38aを形成する複数の炭素加熱スレッド部分30a~30fは、接触スレッド区画32a,32dの間に延在し、接触スレッド区画32a,32dは互いに離間している。接触スレッド区画32aは、4個の接触スレッド部分16a~16dを介して圧着点34aに接続される。接触スレッド区画32dは、4個の接触スレッド部分16i~16lを介して圧着点34dに接続される。
【0042】
接触スレッド区画32bは、二つの接触スレッド部分16e,16fを介して接触スレッド区画32aに接続される。接触スレッド区画32eは、二つの接触スレッド部分16m,16nを介して接触スレッド区画32dに接続される。炭素加熱スレッド区画38bを形成する複数の炭素加熱スレッド部分30g~30lは、互いに離間している接触スレッド区画32b,32eの間に延在する。
【0043】
接触スレッド区画32bは、接触スレッド部分16g,16hを介して接触スレッド区画32cに接続される。接触スレッド区画32eは、二つの接触スレッド部分16o,16pを介して接触スレッド区画32fに接続される。炭素加熱スレッド区画38cを形成する複数の炭素加熱スレッド部分30m~30oは、互いに離間している接触スレッド区画32c,32fの間に延在する。
【符号の説明】
【0044】
10 加熱装置
12 キャリア要素
14 スレッド配置構成
16a~16p スレッド部分
18a~18e スレッドループ
20a~20e スレッドループ
22a~22d 交差エリア
24a~24d スレッド接触路
26 接触スレッド
28 炭素加熱スレッド
30a~30o スレッド部分
32,32a~32f 接触スレッド区画
34,34a,34b 圧着部
36,36a,36b 接続導体
38,38a~38d 炭素加熱スレッド区画
40,40a~40c 封止剤
42a,42b 封止剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12