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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/38 20230101AFI20231024BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20231024BHJP
   B63H 21/32 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C02F1/38
B01D53/92 100
B01D53/92 150
B01D53/92 215
B01D53/92 280
B01D53/92 331
B63H21/32 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023010760
(22)【出願日】2023-01-27
【審査請求日】2023-05-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和久
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-6883(JP,A)
【文献】特表2022-528443(JP,A)
【文献】特開2019-118903(JP,A)
【文献】特開2022-45350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/38
C02F 1/00
B01D 53/92-53/94
B63H 21/32-21/34
F01N 3/04
B01D 47/00-47/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舶用内燃機関から排出された排ガスの洗浄に用いられ、前記排ガスから除去した異物を含むスクラバ水を処理する水処理装置であって、
前記スクラバ水を、前記異物を含有する残渣と前記異物の含有量が前記残渣よりも少ないスクラバ排水とに分離して、前記スクラバ水から前記異物を除去する異物除去系統と、
前記残渣および前記スクラバ排水を貯蔵する貯蔵タンクと、
前記異物除去系統から前記スクラバ排水を排出するためのスクラバ排水管と、
前記スクラバ排水を船外へ排出するための第1排水管と、
前記スクラバ排水を前記貯蔵タンクへ排出するための第2排水管と、
前記スクラバ排水管を前記第1排水管と前記第2排水管とに分岐させ、前記スクラバ排水管と前記第1排水管または前記第2排水管とを択一的に連通させる排水路分岐弁と、
を備え、
前記舶用内燃機関が少なくとも脱炭素燃料を燃焼させる代替燃料運転を行っている場合、前記排水路分岐弁は前記スクラバ排水管と前記第1排水管とを連通させ、前記舶用内燃機関が化石燃料を燃焼させる化石燃料運転を行っている場合、前記排水路分岐弁は前記スクラバ排水管と前記第2排水管とを連通させる、
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記異物除去系統から前記残渣を排出するための残渣排出管と、
前記残渣を船外へ排出するための第1残渣管と、
前記残渣を前記貯蔵タンクへ排出するための第2残渣管と、
前記残渣排出管を前記第1残渣管と前記第2残渣管とに分岐させ、前記残渣排出管と前記第1残渣管または前記第2残渣管とを択一的に連通させる残渣路分岐弁と、
を備え、
前記舶用内燃機関が前記代替燃料運転を行っている場合、前記残渣路分岐弁は前記残渣排出管と前記第1残渣管とを連通させ、前記舶用内燃機関が前記化石燃料運転を行っている場合、前記残渣路分岐弁は前記残渣排出管と前記第2残渣管とを連通させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記舶用内燃機関の運転モードが前記代替燃料運転および前記化石燃料運転のいずれの運転モードであるかを判断し、前記代替燃料運転の場合、前記スクラバ排水管と前記第1排水管とを連通させるように前記排水路分岐弁の開度を制御し、前記化石燃料運転の場合、前記スクラバ排水管と前記第2排水管とを連通させるように前記排水路分岐弁の開度を制御する制御装置をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記舶用内燃機関の運転モードが前記代替燃料運転および前記化石燃料運転のいずれの運転モードであるかを判断し、前記代替燃料運転の場合、前記残渣排出管と前記第1残渣管とを連通させるように前記残渣路分岐弁の開度を制御し、前記化石燃料運転の場合、前記残渣排出管と前記第2残渣管とを連通させるように前記残渣路分岐弁の開度を制御する制御装置をさらに備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に搭載される舶用内燃機関の排ガスの洗浄水を処理する水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の分野においては、舶用内燃機関から排出された排ガスを洗浄するための排ガス洗浄装置(スクラバ)が公知である。一般に、スクラバは、排ガスに対して洗浄水を噴射し、これにより、排ガス中の硫黄酸化物や煤塵等の微粒子(PM)といった異物を除去して、排ガスを洗浄する。このようなスクラバは、例えば、排ガス中の窒素酸化物を低減する一手法である排ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)システムに設けられている。
【0003】
EGRシステムは、舶用内燃機関から排出された排ガスの一部をスクラバによって洗浄し、この洗浄後の排ガスを新気(新たに取り込んだ空気)と混合して舶用内燃機関に再循環する。これにより、EGRシステムは、舶用内燃機関の燃焼室内での燃料の燃焼による窒素酸化物の生成を抑制して、排ガス中の窒素酸化物の含有量(すなわち窒素酸化物の排出量)を低減する。
【0004】
一方、スクラバで排ガスの洗浄に使用される水(以下、スクラバ水という)は、排ガスの洗浄後、異物除去等の処理が施されながら、再び排ガスの洗浄に使用されることが一般的である。このため、スクラバには、異物除去等の処理をスクラバ水に対して行う水処理装置(例えば特許文献1参照)が適用される。
【0005】
水処理装置において、スクラバ水からの異物除去は、例えば、遠心分離機または濾過装置を用い、スクラバ水と異物とを分離することによって行われる。異物除去後のスクラバ水は、排ガスの洗浄に再利用される。しかし、異物除去後のスクラバ水であっても、その性状によっては、排水対象として分けられるスクラバ水も生じる。このような排水対象のスクラバ水中には、たとえ異物除去後であっても、舶用内燃機関からの排ガス由来の異物が除去し切れずに残存している場合がある。特に、舶用内燃機関がディーゼル燃料等の化石燃料を燃焼して運転する化石燃料専焼型の内燃機関である場合、排水対象のスクラバ水中には、煤や油分等の炭素成分を多く含有する異物が除去し切れず残存することになる。このスクラバ水を処分する方法として、船舶から海洋への排水(海洋投棄)が考えられる。しかし、スクラバ水を海洋投棄するためには、排水対象とするスクラバ水に含まれる炭素成分の量が、海洋投棄のための基準(以下、排出基準という)内におさまっていなければならない。上記のように炭素成分を多く含有する異物が残存するスクラバ水は、この排出基準を超えてしまうことから、海洋投棄できない。したがって、海洋投棄できないスクラバ水は、船内のタンクに一時保管され、然るべきタイミングに陸揚げされて処分(例えば産業廃棄物扱いで廃棄処分)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-118903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、船舶の分野においては、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出量を削減するために、化石燃料を代替する代替燃料を適用可能な舶用内燃機関(代替燃料対応型の舶用内燃機関)が開発されつつある。ここでいう代替燃料とは、例えばアンモニアまたは水素等、炭素成分を含有していない脱炭素燃料である。代替燃料対応型の舶用内燃機関では、例えば、化石燃料と代替燃料とを一緒に燃焼(混焼)させるため、化石燃料専焼型の舶用内燃機関に比べて排ガス中の炭素成分の含有量が少なく、排ガス中に炭素成分含有の異物を殆ど含んでいない場合がある。この場合、排ガスを洗浄した後のスクラバ水には炭素含有の異物が殆ど含まれないため、排出基準に従い、排水対象のスクラバ水を、船内のタンクに一時保管する必要もなく海洋投棄することが可能になる。
【0008】
しかしながら、上述した従来の水処理装置では、たとえ炭素成分含有の異物が殆ど含まれないスクラバ水であっても、スクラバ水を海洋投棄することを選択できず、化石燃料専焼型の舶用内燃機関の場合と同様に、排水対象のスクラバ水を船内のタンクに一時保管せざるを得ない。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、舶用内燃機関からの排ガスの洗浄に用いられた排水対象のスクラバ水について、船外へ排水するか否かを選択することができる水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る水処理装置は、舶用内燃機関から排出された排ガスの洗浄に用いられ、前記排ガスから除去した異物を含むスクラバ水を処理する水処理装置であって、前記スクラバ水を、前記異物を含有する残渣と前記異物の含有量が前記残渣よりも少ないスクラバ排水とに分離して、前記スクラバ水から前記異物を除去する異物除去系統と、前記残渣および前記スクラバ排水を貯蔵する貯蔵タンクと、前記異物除去系統から前記スクラバ排水を排出するためのスクラバ排水管と、前記スクラバ排水を船外へ排出するための第1排水管と、前記スクラバ排水を前記貯蔵タンクへ排出するための第2排水管と、前記スクラバ排水管を前記第1排水管と前記第2排水管とに分岐させ、前記スクラバ排水管と前記第1排水管または前記第2排水管とを択一的に連通させる排水路分岐弁と、を備え、前記舶用内燃機関が少なくとも脱炭素燃料を燃焼させる代替燃料運転を行っている場合、前記排水路分岐弁は前記スクラバ排水管と前記第1排水管とを連通させ、前記舶用内燃機関が化石燃料を燃焼させる化石燃料運転を行っている場合、前記排水路分岐弁は前記スクラバ排水管と前記第2排水管とを連通させる、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る水処理装置は、上記の発明において、前記異物除去系統から前記残渣を排出するための残渣排出管と、前記残渣を船外へ排出するための第1残渣管と、前記残渣を前記貯蔵タンクへ排出するための第2残渣管と、前記残渣排出管を前記第1残渣管と前記第2残渣管とに分岐させ、前記残渣排出管と前記第1残渣管または前記第2残渣管とを択一的に連通させる残渣路分岐弁と、を備え、前記舶用内燃機関が前記代替燃料運転を行っている場合、前記残渣路分岐弁は前記残渣排出管と前記第1残渣管とを連通させ、前記舶用内燃機関が前記化石燃料運転を行っている場合、前記残渣路分岐弁は前記残渣排出管と前記第2残渣管とを連通させる、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る水処理装置は、上記の発明において、前記舶用内燃機関の運転モードが前記代替燃料運転および前記化石燃料運転のいずれの運転モードであるかを判断し、前記代替燃料運転の場合、前記スクラバ排水管と前記第1排水管とを連通させるように前記排水路分岐弁の開度を制御し、前記化石燃料運転の場合、前記スクラバ排水管と前記第2排水管とを連通させるように前記排水路分岐弁の開度を制御する制御装置をさらに備える、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る水処理装置は、上記の発明において、前記舶用内燃機関の運転モードが前記代替燃料運転および前記化石燃料運転のいずれの運転モードであるかを判断し、前記代替燃料運転の場合、前記残渣排出管と前記第1残渣管とを連通させるように前記残渣路分岐弁の開度を制御し、前記化石燃料運転の場合、前記残渣排出管と前記第2残渣管とを連通させるように前記残渣路分岐弁の開度を制御する制御装置をさらに備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、舶用内燃機関からの排ガスの洗浄に用いられた排水対象のスクラバ水について、船外へ排水するか否かを選択することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態1に係る水処理装置によるスクラバ水の流れの一制御手順を例示するフロー図である。
図3図3は、本発明の実施形態2に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。
図4図4は、本発明の実施形態2に係る水処理装置による残渣の流れの一制御手順を例示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る水処理装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0017】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る水処理装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。本発明の実施形態1に係る水処理装置10は、舶用内燃機関110から排出された排ガスを洗浄した後のスクラバ水を処理するものである。
【0018】
例えば図1に示すように、水処理装置10は、排ガス洗浄後のスクラバ水を貯蔵するコレクティングタンク1と、スクラバ水を循環させるための循環系統2と、スクラバ水中の異物を除去するための異物除去系統3とを備える。また、水処理装置10は、スクラバ水の比重を測定する比重計4と、過度に比重が増大したスクラバ水(排水対象のスクラバ水)を異物除去系統3から排出するための分岐弁5およびスクラバ排水管6と、排水対象のスクラバ水を船外または船内に排出するための第1排水管7、第2排水管8および排水路分岐弁9とを備える。また、水処理装置10は、スクラバ水から除去した異物を含有する残渣を異物除去系統3から排出するための残渣排出管11と、上記残渣等を貯蔵するスラッジタンク15とを備える。さらに、水処理装置10は、コレクティングタンク1に清水を補給する清水補給部16と、スクラバ水のpHを調整するpH調整部17と、コレクティングタンク1内のスクラバ水の液面レベルLsを検出するレベル検出部18と、制御装置19とを備える。なお、図1において、スクラバ水や排ガス等の流体の流通および配管は、実線矢印によって適宜図示される。電気信号線は、一点鎖線によって適宜図示される。このことは、他の図面においても同様である。
【0019】
また、図1に示すように、水処理装置10は、舶用内燃機関110から排出された排ガスをスクラバ水を用いて洗浄するスクラバ101に適用されている。本実施形態1において、スクラバ101は、舶用内燃機関110からの排ガスの一部を再循環ガスとして舶用内燃機関110に再循環するEGRシステム100の一構成部である。以下、排ガスといえば、特に説明がない限り、舶用内燃機関110から排出された排ガスを意味する。
【0020】
本実施形態1において対象とする舶用内燃機関110は、例えば、化石燃料および代替燃料の少なくとも一方を燃焼室内で燃焼して運転するタイプの内燃機関であり、船舶の機関室に設置される。このようなタイプの舶用内燃機関110の運転モードには、燃焼燃料として化石燃料のみを用いて運転する化石燃料運転モードと、燃焼燃料として少なくとも代替燃料を用いて運転する代替燃料運転モードとが含まれる。例えば、代替燃料運転モードとしては、化石燃料と代替燃料とを混焼して運転する運転モードと、代替燃料のみを燃焼して運転する運転モードとが挙げられる。なお、化石燃料は、重油または軽油等、石油(原油)から精製される等によって得られる燃料である。代替燃料は、化石燃料を代替し得る燃料であり、例えばアンモニア燃料または水素燃料等、炭素成分を含有していない脱炭素燃料である。
【0021】
上記のような舶用内燃機関110では、例えば化石燃料運転モードでの運転が行われた場合、煤等の炭素成分を多く含有する異物が排ガス中に含まれる。この場合、排ガスの洗浄に用いられたスクラバ水は、当該排ガスから除去した炭素成分が例えば排出規制を超える程に多く含まれた異物(以下、炭素成分を含有する異物という)を含有している。一方、舶用内燃機関110において代替燃料運転モードでの運転が行われた場合、排ガス中の異物に含まれる炭素成分の含有量は、化石燃料運転モードでの排ガスに比べて少ない。この場合、排ガスの洗浄に用いられたスクラバ水には、排ガス由来の炭素成分が殆どまたは全く含まれず、当該スクラバ水中の異物に含まれる炭素成分の含有量は、例えば排出規制以下である。
【0022】
上記スクラバ水中の異物(排ガス由来の異物)として、例えば、煤(煤塵)、未燃焼油および硫黄酸化物等が挙げられる。すなわち、当該異物に含まれる成分としては、煤や油分(炭化水素)等の炭素成分、硫黄酸化物等の炭素成分以外の成分が挙げられる。本明細書では、上記のように炭素成分の含有量が化石燃料運転モードでの排ガスに比べて少なく、排出規制を超える程の炭素成分を含まない異物を、炭素成分を含有しない異物と定義する。本実施形態1において、水処理装置10は、舶用内燃機関110の運転モードによっては、炭素成分を含有する異物を含むスクラバ水を処理する場合もあれば、炭素成分を含有しない異物を含むスクラバ水を処理する場合もある。以下では、排ガスに由来する炭素成分を含有する異物と炭素成分を含有しない異物とを総称して、異物と略記する場合がある。また、船舶といえば、特に説明がない限り、舶用内燃機関110を搭載した船舶を意味する。
【0023】
詳細には、図1に示す水処理装置10において、コレクティングタンク1は、スクラバ水を回収するタンクである。コレクティングタンク1は、例えば図1に示すように、回収管104を介してEGRシステム100のデミスタ102の下部(図1では底部)と連通している。なお、デミスタ102は、EGRシステム100の一構成部であり、図1に示すようにスクラバ101と連結されている。コレクティングタンク1は、スクラバ101で排ガスの洗浄に使用されたスクラバ水を、デミスタ102から回収管104を通じて回収する。例えば図1に示すように、回収管104にはポンプ105が設けられている。使用後のスクラバ水は、スクラバ101からデミスタ102に流入した後、ポンプ105の作用等により、回収管104を通じてコレクティングタンク1に流入する。コレクティングタンク1は、このように回収したスクラバ水を一時貯蔵する。
【0024】
循環系統2は、コレクティングタンク1からスクラバ101に向けてスクラバ水を循環させるための系統である。図1に示すように、循環系統2は、循環管21と、循環ポンプ22とを備える。
【0025】
循環管21は、入口端がコレクティングタンク1の下部に接続され且つ出口端がスクラバ101の噴射部101aの入口端に接続される。循環ポンプ22は、循環管21の中途部に設けられる。循環ポンプ22は、コレクティングタンク1から循環管21に流入したスクラバ水を、スクラバ101に向けて圧送する。これにより、循環ポンプ22は、コレクティングタンク1側からスクラバ101側に向かうスクラバ水の流れを循環管21内に発生させる。
【0026】
このような構成を有する循環系統2において、循環管21は、コレクティングタンク1内のスクラバ水を、循環ポンプ22の作用によってスクラバ101の噴射部101aに送る。送られたスクラバ水は、スクラバ101内の噴射部101aから噴射され、スクラバ101での排ガスの洗浄に使用(再利用)される。この排ガスの洗浄に使用されたスクラバ水は、排ガスから除去した異物を含んだ状態でスクラバ101からデミスタ102に流入し、その後、回収管104を通じてコレクティングタンク1に回収される。このようにして、循環系統2は、コレクティングタンク1とスクラバ101との間でスクラバ水を繰り返し循環させる。
【0027】
異物除去系統3は、排ガス洗浄後のスクラバ水を、異物を含有する残渣と、異物の含有量が当該残渣よりも少ないスクラバ排水とに分離して、当該スクラバ水から異物を除去する系統である。例えば図1に示すように、異物除去系統3は、分岐管31と、出口管32と、合流管33と、遠心分離機34とを備える。
【0028】
分岐管31は、循環系統2からスクラバ水を抽出する配管を構成する。図1に示すように、分岐管31は、入口端が循環系統2の循環管21に接続され且つ出口端が遠心分離機34の入口部に接続される。本実施形態1において、分岐管31は、循環管21から分岐して、循環管21と遠心分離機34とを連通させる。分岐管31は、循環管21内を流通するスクラバ水の一部を抽出し、この循環管21から抽出したスクラバ水を遠心分離機34に導く。
【0029】
出口管32および合流管33は、遠心分離機34による異物除去後のスクラバ水を循環系統2に戻すための配管を構成する。図1に示すように、出口管32は、入口端が遠心分離機34の出口部に接続され且つ出口端が分岐弁5に接続される。出口管32は、遠心分離機34による異物除去後のスクラバ水を、遠心分離機34から受け入れ、受け入れたスクラバ水を分岐弁5へ導く。また、出口管32は、分岐弁5を介して合流管33およびスクラバ排水管6と連通可能に接続されている。すなわち、出口管32および合流管33は、異物除去系統3の配管のうち、分岐弁5が設けられる配管である。本実施形態1において、出口管32から分岐弁5に導かれたスクラバ水は、分岐弁5を介して合流管33またはスクラバ排水管6のいずれかに流入する。
【0030】
合流管33は、遠心分離機34による異物除去後のスクラバ水を循環系統2に戻すための配管である。図1に示すように、合流管33は、入口端が分岐弁5に接続され且つ出口端が循環管21の中途部(例えば分岐管31よりもスクラバ水の流通方向の下流側)に接続される。合流管33は、出口管32から分岐弁5を介して異物除去後のスクラバ水を受け入れ、受け入れたスクラバ水を、排ガス洗浄に再利用されるスクラバ水(再利用対象のスクラバ水)として循環管21に合流させて戻す。
【0031】
遠心分離機34は、異物除去系統3においてスクラバ水中の異物を除去する除去装置の一例である。本実施形態1において、遠心分離機34は、循環管21から分岐管31を通じて抽出されたスクラバ水を受け入れ、受け入れたスクラバ水から異物を除去する。この際、遠心分離機34は、受け入れたスクラバ水と異物との比重差を利用して、当該スクラバ水を、異物を含有する残渣と異物の含有量が当該残渣よりも少ないスクラバ排水とに分離(遠心分離)する。すなわち、スクラバ排水は、遠心分離機34による異物除去後のスクラバ水である。遠心分離機34は、スクラバ排水を出口管32に送出し、除去した異物を含有する残渣を残渣排出管11に送出する。以下、残渣といえば、特に説明がない限り、上記のようにスクラバ水から分離された残渣であって、当該スクラバ水から除去された異物を含有するものを意味する。
【0032】
比重計4は、スクラバ水の比重を測定するものである。本実施形態1において、比重計4は、例えば図1に示すように、分岐管31に設けられる。比重計4は、分岐管31内を流通するスクラバ水(すなわち循環管21から分岐管31を通じて抽出されたスクラバ水)の比重を測定する。比重計4によるスクラバ水の比重の測定は、時系列に沿って連続的に行われてもよいし、所定の時間間隔で断続的に行われてもよいし、制御装置19によって測定指示された場合に行われてもよい。比重計4は、スクラバ水の比重を測定する都度、得られたスクラバ水の比重(測定値)を示す電気信号を制御装置19に送信する。
【0033】
分岐弁5は、異物除去系統3の配管内のスクラバ水を循環管21側またはスクラバ排水管6側に流通させるための弁である。図1に示すように、分岐弁5は、三方弁等によって構成され、異物除去系統3の配管(本実施形態1では出口管32および合流管33によって構成される配管)に設けられる。具体的には、分岐弁5が有する3つの開口部のうち、第1の開口部には出口管32の出口端が接続され、第2の開口部には合流管33の入口端が接続され、第3の開口部にはスクラバ排水管6の入口端が接続される。分岐弁5は、出口管32と合流管33との間における開度と、出口管32とスクラバ排水管6との間における開度とのうち、一方の開度を増加させるに伴い他方の開度を減少させる等して、これらの各開度を調整する。本実施形態1において、分岐弁5は、これらの各開度のうち、一方の開度を全開に調整することにより、他方の開度を全閉に調整する。この開度調整は制御装置19によって制御され、この制御に基づき、分岐弁5は、出口管32からのスクラバ排水の流通先を合流管33(スクラバ水の循環経路側)とスクラバ排水管6(スクラバ水の排出経路側)とのいずれかに択一的に決定する。
【0034】
スクラバ排水管6は、異物除去系統3からスクラバ排水を排出するための配管である。図1に示すように、スクラバ排水管6は、入口端が上述の分岐弁5に接続され且つ出口端が排水路分岐弁9に接続される。スクラバ排水管6は、異物除去系統3の配管から分岐弁5を介して分岐し、スクラバ排水を排出するための排水路の一部を構成する。スクラバ排水管6は、遠心分離機34から出口管32を通じて送出されたスクラバ排水のうち、例えば比重が過度に増大した故に排水対象とするスクラバ排水を、出口管32から分岐弁5を介して受け入れる。スクラバ排水管6は、受け入れたスクラバ排水を、排水路分岐弁9を介して第1排水管7または第2排水管8に向けて流通させる。
【0035】
第1排水管7は、スクラバ排水を船外へ排出するための排水路を構成する配管である。図1に示すように、第1排水管7は、入口端が排水路分岐弁9に接続され、排水路分岐弁9を介してスクラバ排水管6から分岐するように構成される。特に図示しないが、第1排水管7の出口端は、船舶の外部(海洋等)に通じている。第1排水管7は、スクラバ排水管6から排水路分岐弁9を介してスクラバ排水を受け入れ、受け入れたスクラバ排水を船外に向けて流通させ、これにより、当該スクラバ排水を船外へ排出(海洋投棄)することができる。
【0036】
第2排水管8は、スクラバ排水を船内のスラッジタンク15へ排出するための排水路を構成する配管である。図1に示すように、第2排水管8は、入口端が排水路分岐弁9に接続され且つ出口端がスラッジタンク15に接続される。すなわち、第2排水管8は、排水路分岐弁9を介してスクラバ排水管6から分岐し、スラッジタンク15に通じる。第2排水管8は、スクラバ排水管6から排水路分岐弁9を介してスクラバ排水を受け入れ、受け入れたスクラバ排水をスラッジタンク15へ排出する。
【0037】
排水路分岐弁9は、異物除去系統3からスクラバ排水管6を通じて排出されたスクラバ排水を、船外に通じる第1排水管7または船内のスラッジタンク15に通じる第2排水管8へ流通させるための弁である。図1に示すように、排水路分岐弁9は、三方弁等によって構成され、スクラバ排水管6を第1排水管7と第2排水管8とに分岐させる。すなわち、排水路分岐弁9が有する3つの開口部のうち、第1の開口部にはスクラバ排水管6の出口端が接続され、第2の開口部には第1排水管7の入口端が接続され、第3の開口部には第2排水管8の入口端が接続される。排水路分岐弁9は、スクラバ排水管6と第1排水管7との間における開度と、スクラバ排水管6と第2排水管8との間における開度とのうち、一方の開度を増加させるに伴い他方の開度を減少させる等して、これらの各開度を調整する。本実施形態1において、排水路分岐弁9は、これらの各開度のうち、一方の開度を全開に調整することにより、他方の開度を全閉に調整する。例えば、この開度調整は制御装置19によって制御され、この制御に基づき、排水路分岐弁9は、スクラバ排水管6と第1排水管7または第2排水管8とを択一的に連通させる。このような排水路分岐弁9は、舶用内燃機関110が代替燃料運転を行っている場合、スクラバ排水管6と第1排水管7とを連通させ、舶用内燃機関110が化石燃料運転を行っている場合、スクラバ排水管6と第2排水管8とを連通させる。
【0038】
なお、代替燃料運転は、少なくとも代替燃料(脱炭素燃料)を燃焼させて行われる舶用内燃機関110の運転である。このとき、舶用内燃機関110の運転モードは、上述した代替燃料運転モードである。化石燃料運転は、化石燃料のみを燃焼させて行われる舶用内燃機関110の運転である。このとき、舶用内燃機関110の運転モードは、上述した化石燃料運転モードである。
【0039】
残渣排出管11は、上述したようにスクラバ水から除去された異物を含有する残渣を異物除去系統3から排出するための配管である。図1に示すように、残渣排出管11は、入口端が遠心分離機34の残渣排出口部に接続され且つ出口端がスラッジタンク15に接続される。残渣排出管11は、遠心分離機34によってスクラバ水から除去された異物を含有する残渣(例えばスラッジ状の残渣)を遠心分離機34から受け入れ、受け入れた残渣を異物除去系統3から排出するとともにスラッジタンク15へ送出する。
【0040】
スラッジタンク15は、異物除去系統3から排出された残渣およびスクラバ排水を貯蔵する貯蔵タンクの一例である。図1に示すように、スラッジタンク15は、遠心分離機34よりも下方の位置に設けられ、上述したように残渣排出管11と接続される。本実施形態1において、スラッジタンク15は、残渣排出管11を通じて排出された残渣および第2排水管8を通じて排出されたスクラバ排水を、船舶から陸揚げされるまでの間、集約して貯蔵する。
【0041】
清水補給部16は、スクラバ水を増量および希釈するための清水をコレクティングタンク1に補給するものである。清水補給部16は、例えば、清水タンク、補給管および補給ポンプ等(いずれも図示せず)を備え、図1に示すように、補給管を通じて清水をコレクティングタンク1へ補給し得るように構成される。清水補給部16からコレクティングタンク1へ補給される清水としては、例えば、船外から積み込まれた清水、船内で造られた清水、舶用内燃機関110から排出されるドレン水等が挙げられる。本実施形態1において、清水補給部16は、コレクティングタンク1内のスクラバ水の液面レベルLsをレベル検出部18から取得し、取得した液面レベルLsが所定の閾レベル範囲内に収まるように、コレクティングタンク1に対する清水の補給タイミングおよび補給量を制御する。コレクティングタンク1内のスクラバ水は、清水補給部16によって清水が補給されることにより、増量されながら希釈される。これにより、当該スクラバ水の比重が低下する。
【0042】
pH調整部17は、コレクティングタンク1内のスクラバ水のpHを調整(中和)するためのものである。pH調整部17は、例えば、アルカリ液タンク、供給管、供給ポンプおよびpH計等(いずれも図示せず)を備え、図1に示すように、供給管を通じてアルカリ液をコレクティングタンク1へ供給し得るように構成される。ここで、スクラバ水がスクラバ101で排ガスの洗浄に使用される都度、当該スクラバ水中においては、排ガスから除去した硫黄酸化物等の異物の含有量が増える。このため、当該スクラバ水の酸性化が進む。したがって、スクラバ水のpHを調整するための薬液としては、アルカリ価の高い薬液であるアルカリ液が用いられる。当該アルカリ液としては、例えば、水酸化ナトリウム等が挙げられる。スクラバ水中の異物のうち、硫黄酸化物は、pH調整部17の作用によって除去される。
【0043】
本実施形態1において、pH調整部17は、コレクティングタンク1内のスクラバ水のpHを測定し、得られたpHの測定値が所定の閾値未満である場合、コレクティングタンク1へアルカリ液を供給する。これにより、コレクティングタンク1内のスクラバ水がアルカリ液で中和されて、このスクラバ水のpHが上昇する。また、pH調整部17は、得られたpHの測定値が所定の閾値以上である場合、コレクティングタンク1に対するアルカリ液の供給を停止する。上記pHの閾値は、例えば、水処理装置10においてスクラバ水と接触する配管等の各部材が腐食しない範囲、あるいは、スクラバ101での硫黄酸化物の除去性能を害さない範囲に設定される。一方、これらスクラバ水とアルカリ液との中和反応の進行に伴い、スクラバ水中に生成されるNa2SO4等の副生成物の含有量が増大する。これにより、スクラバ水の比重が増大する。
【0044】
レベル検出部18は、コレクティングタンク1内のスクラバ水の液面レベルLsを検出するものである。例えば図1に示すように、レベル検出部18は、コレクティングタンク1の高さ方向における低レベルおよび高レベルの各位置に検出子を有する態様でコレクティングタンク1に設けられる。レベル検出部18は、コレクティングタンク1内のスクラバ水の液面レベルLsが低レベルの検出子よりも低い位置となった場合、液面レベルLsが低レベル未満であることを検出する。この場合、レベル検出部18は、液面レベルLsが低レベル未満であることを示す電気信号を清水補給部16に送信する。一方、レベル検出部18は、液面レベルLsが高レベルの検出子以上に高い位置となった場合、この液面レベルLsが高レベル以上であることを検出する。この場合、レベル検出部18は、液面レベルLsが高レベル以上であることを示す電気信号を清水補給部16に送信する。
【0045】
本実施形態1において、上記の低レベルおよび高レベルは、各々、コレクティングタンク1の設備仕様上の下限レベルと上限レベルとの間の範囲に予め設定される液面の閾レベルである。すなわち、低レベルは、コレクティングタンク1の下限レベル以上、上記の高レベル未満の閾レベルである。高レベルは、上記の低レベルより高く、コレクティングタンク1の上限レベル以下の閾レベルである。コレクティングタンク1内のスクラバ水が液面レベルLsを低レベル未満に低下させた状態から高レベル以上に上昇させた状態になるまで清水で増量(希釈)された場合、このスクラバ水の比重は、遠心分離機34によるスクラバ水と異物との分離処理に支障を来さない程度に低くなる。これらの低レベルおよび高レベルは、上記の事象を実現し得るように予め設定される。
【0046】
制御装置19は、水処理装置10におけるスクラバ水の流れを制御するものである。詳細には、制御装置19は、各種プログラムを実行するためのCPU、メモリおよびシーケンサ等によって構成される。制御装置19は、スクラバ水の流れを制御する際、比重計4および舶用内燃機関110の各々から電気信号を受信し、これらの電気信号に基づいて、上述した分岐弁5および排水路分岐弁9を各々制御する。
【0047】
例えば、制御装置19は、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重と予め設定された所定の基準値とを比較し、この比較結果に基づいて、分岐弁5を制御する。本実施形態1において、制御装置19は、測定されたスクラバ水の比重が上記基準値以上である場合、出口管32とスクラバ排水管6とを連通させるように分岐弁5の開度を制御する。これにより、制御装置19は、スクラバ排水が排水対象として異物除去系統3からスクラバ排水管6(すなわち排水路側)へ排出されるように、スクラバ排水の流れを制御する。また、制御装置19は、測定されたスクラバ水の比重が上記基準値未満である場合、出口管32と合流管33とを連通させるように分岐弁5の開度を制御する。これにより、制御装置19は、スクラバ排水が再利用対象として異物除去系統3から循環系統2の循環管21へ送出される(戻される)ように、スクラバ排水の流れを制御する。
【0048】
なお、上述のように制御装置19に予め設定される基準値としては、例えば、遠心分離機34によるスクラバ水と異物との分離処理に支障を来さないスクラバ水の比重範囲における上限値等が用いられる。以下、基準値といえば、特に説明がない限り、上述したようにスクラバ水の比重について予め設定された所定の基準値を意味する。
【0049】
また、制御装置19は、舶用内燃機関110から受信した電気信号に基づいて、舶用内燃機関110の運転モードが代替燃料運転および化石燃料運転のいずれの運転モードであるかを判断する。代替燃料運転の場合、制御装置19は、スクラバ排水管6と第1排水管7とを連通させるように排水路分岐弁9の開度を制御する。これにより、制御装置19は、スクラバ排水が船外へ排出されるように、スクラバ排水の流れを制御する。化石燃料運転の場合、制御装置19は、スクラバ排水管6と第2排水管8とを連通させるように排水路分岐弁9の開度を制御する。これにより、制御装置19は、スクラバ排水が船内のスラッジタンク15へ排出されるように、スクラバ排水の流れを制御する。
【0050】
なお、舶用内燃機関110の運転モードは、作業者による舶用内燃機関110の操作部(図示せず)の操作に応じて、上述した代替燃料運転モードまたは化石燃料運転モードに切り換えられる。このように舶用内燃機関110の運転モード(以下、エンジン運転モードと略記する場合がある)が切り換えられる都度、舶用内燃機関110の操作部または制御装置等の装置から制御装置19に対して、エンジン運転モードが代替燃料運転モードであることを示す電気信号、または、エンジン運転モードが化石燃料運転モードであることを示す電気信号が送信される。
【0051】
一方、EGRシステム100は、船舶に搭載される舶用内燃機関110から排出された排ガスの一部を再循環ガスとして舶用内燃機関110に再循環し、これにより、排ガス中の窒素酸化物の含有量を低減するためのシステムである。図1に示すように、EGRシステム100は、スクラバ101と、デミスタ102と、EGRブロア103とを備える。
【0052】
スクラバ101は、舶用内燃機関110から排出された排ガスの一部を再循環ガスとして使用するために洗浄するものであり、本実施形態1に係る水処理装置10が適用されている。図1に示すように、スクラバ101には、舶用内燃機関110から配管等を通じて排ガスの一部が送給される。スクラバ101は、洗浄対象の排ガスに対してスクラバ水を噴射するノズル等の噴射部101aを備えている。この噴射部101aは、循環管21を通じてスクラバ水が供給されるように構成されている。スクラバ101は、舶用内燃機関110側から送給された排ガスの一部(再循環ガス)に対して、噴射部101aからスクラバ水を噴射し、これにより、再循環ガスから煤塵および硫黄酸化物等の異物を除去して再循環ガスを洗浄する。なお、舶用内燃機関110から排出された排ガスのうち、スクラバ101に送給されない残りの排ガスは、配管等を通じて煙突から船外へ排出される。
【0053】
デミスタ102は、中空矩形状の筐体であり、スクラバ101の出口部と接続されている。また、デミスタ102の下部(底部)には、上述したコレクティングタンク1に通じる回収管104が接続されている。このようなデミスタ102には、スクラバ101でスクラバ水の噴射によって洗浄された再循環ガスと、この再循環ガスの洗浄に使用されたスクラバ水とが流れ込む。デミスタ102は、洗浄後の再循環ガスと使用後のスクラバ水とを分離する。これらの再循環ガスおよびスクラバ水のうち、再循環ガスはデミスタ102のガス吐出口からEGRブロア103に送出され、スクラバ水はデミスタ102の下部から回収管104を通じてコレクティングタンク1に回収される。
【0054】
EGRブロア103は、図1に示すように、デミスタ102の上部に設けられる。EGRブロア103は、デミスタ102から送出された再循環ガスを、配管等を通じて舶用内燃機関110に送り込む。EGRブロア103から送出された再循環ガスは、空気(新気)とともに舶用内燃機関110の燃焼室に送給され、舶用内燃機関110を運転する際の燃焼用ガスとして用いられる。
【0055】
つぎに、水処理装置10によるスクラバ水の流れの制御手順について説明する。図2は、本発明の実施形態1に係る水処理装置によるスクラバ水の流れの一制御手順を例示するフロー図である。上述した水処理装置10(図1参照)において、制御装置19は、図2に示されるステップS101~S106の各処理を行うことにより、スクラバ水の流れを制御する。
【0056】
詳細には、水処理装置10によるスクラバ水の流れの制御において、図2に示すように、制御装置19は、まず、スクラバ水の比重が基準値以上であるか否かを判断する(ステップS101)。
【0057】
ステップS101において、制御装置19は、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重と基準値とを比較する。そして、制御装置19は、この比重の測定値が基準値以上である場合、スクラバ水の比重が基準値以上であると判断する。このことは、水処理装置10とスクラバ101との間で繰り返し循環しているスクラバ水の比重が基準値以上であることに相当する。
【0058】
測定されたスクラバ水の比重が基準値以上である場合(ステップS101,Yes)、制御装置19は、スクラバ排水管6を開くように分岐弁5の開度を制御する(ステップS102)。ステップS102において、制御装置19は、分岐弁5のスクラバ排水管6側を全開とし且つ合流管33側を全閉とするように、分岐弁5の開度を制御する。この開度制御に基づいて、分岐弁5は、出口管32からのスクラバ排水の流通先を、合流管33側からスクラバ排水管6側に択一的に切り換える。制御装置19は、この分岐弁5の開度制御により、出口管32内のスクラバ排水(遠心分離機34による異物除去後のスクラバ水)が排水対象として異物除去系統3からスクラバ排水管6側へ排出されるように、スクラバ水の流れを制御する。
【0059】
このステップS102の段階では、循環管21等を通じてコレクティングタンク1とスクラバ101との間でスクラバ水の循環が継続して行われている。これに並行して、循環管21から分岐管31に抽出された一部のスクラバ水は、合流管33から循環管21に戻らず、スクラバ排水管6を通じて異物除去系統3から排出される。この結果、コレクティングタンク1内のスクラバ水の貯蔵量は減少し、これに伴い、このスクラバ水の液面レベルLsは低下する。コレクティングタンク1内のスクラバ水の液面レベルLsが低レベル未満である場合、清水補給部16が、コレクティングタンク1内へ清水を補給する。これにより、スクラバ水の液面レベルLsが上昇する。当該スクラバ水の液面レベルLsが高レベル以上である場合、清水補給部16は、コレクティングタンク1内への清水の補給を停止する。
【0060】
ステップS102の実行後、制御装置19は、エンジン運転モードを判断する(ステップS103)。ステップS103において、制御装置19は、舶用内燃機関110からの電気信号(エンジン運転モードを示す電気信号)に基づいて、エンジン運転モードが代替燃料運転モードおよび化石燃料運転モードのいずれであるかを判断する。
【0061】
具体的には、舶用内燃機関110が代替燃料運転を行うように操作された場合、制御装置19は、エンジン運転モードが代替燃料運転モードであることを示す電気信号を舶用内燃機関110から受信する。制御装置19は、この受信した電気信号に基づいて、現在のエンジン運転モードが代替燃料運転モードであると判断する。
【0062】
エンジン運転モードが代替燃料運転モードであると判断した場合(ステップS103,代替燃料)、制御装置19は、第1排水管7を開くように排水路分岐弁9の開度を制御する(ステップS104)。その後、制御装置19は、上述したステップS101に戻り、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0063】
ステップS104において、制御装置19は、排水路分岐弁9の第1排水管7側を全開とし且つ第2排水管8側を全閉とするように、排水路分岐弁9の開度を制御する。この開度制御に基づいて、排水路分岐弁9は、スクラバ排水管6からのスクラバ排水の流通先を、第2排水管8側から第1排水管7側に択一的に切り換える。すなわち、排水路分岐弁9は、スクラバ排水管6と第2排水管8との連通を遮断するとともに、スクラバ排水管6と第1排水管7とを連通させる。制御装置19は、この排水路分岐弁9の開度制御により、代替燃料運転モード時のスクラバ排水がスクラバ排水管6および第1排水管7を通じて船外へ排出(海洋投棄)されるように、スクラバ水の流れを制御する。
【0064】
ここで、エンジン運転モードが代替燃料運転モードである場合、舶用内燃機関110からの排ガスの洗浄に使用後のスクラバ排水に含まれる異物は、上述したように炭素成分を含有しない異物である。すなわち、当該スクラバ排水中には、本発明において上述のように定義される、炭素成分を含有する異物が含まれない。このように炭素成分を含有する異物を含んでいないスクラバ排水は、排出規制上、海洋投棄することが可能な程にクリーンな排水である。
【0065】
一方、舶用内燃機関110が化石燃料運転を行うように操作された場合、制御装置19は、エンジン運転モードが化石燃料運転モードであることを示す電気信号を舶用内燃機関110から受信する。上述したステップS103において、制御装置19は、この受信した電気信号に基づいて、現在のエンジン運転モードが化石燃料運転モードであると判断する。
【0066】
エンジン運転モードが化石燃料運転モードであると判断した場合(ステップS103,化石燃料)、制御装置19は、第2排水管8を開くように排水路分岐弁9の開度を制御する(ステップS105)。その後、制御装置19は、上述したステップS101に戻り、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0067】
ステップS105において、制御装置19は、排水路分岐弁9の第1排水管7側を全閉とし且つ第2排水管8側を全開とするように、排水路分岐弁9の開度を制御する。この開度制御に基づいて、排水路分岐弁9は、スクラバ排水管6からのスクラバ排水の流通先を、第1排水管7側から第2排水管8側に択一的に切り換える。すなわち、排水路分岐弁9は、スクラバ排水管6と第1排水管7との連通を遮断するとともに、スクラバ排水管6と第2排水管8とを連通させる。制御装置19は、この排水路分岐弁9の開度制御により、化石燃料運転モード時のスクラバ排水がスクラバ排水管6および第2排水管8を通じて船内のスラッジタンク15へ排出されるように、スクラバ水の流れを制御する。
【0068】
ここで、エンジン運転モードが化石燃料運転モードである場合、舶用内燃機関110からの排ガスの洗浄に使用後のスクラバ排水には、炭素成分を含有する異物が含まれる。このように炭素成分を含有する異物を含むスクラバ排水は、海洋投棄されず、スラッジタンク15内に一時保管され、陸揚げ後に廃棄処分される。
【0069】
一方、上述したステップS101において、制御装置19は、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重が基準値未満である場合、水処理装置10とスクラバ101との間で繰り返し循環しているスクラバ水の比重が基準値以上ではないと判断する(ステップS101,No)。この場合、制御装置19は、スクラバ排水管6を閉じるように分岐弁5の開度を制御する(ステップS106)。その後、制御装置19は、上述したステップS101に戻り、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0070】
ステップS106において、制御装置19は、分岐弁5のスクラバ排水管6側を全閉とし且つ合流管33側を全開とするように、分岐弁5の開度を制御する。この開度制御に基づいて、分岐弁5は、出口管32からのスクラバ排水の流通先を、スクラバ排水管6側から合流管33側に択一的に切り換える。制御装置19は、この分岐弁5の開度制御により、出口管32内のスクラバ排水が再利用対象のスクラバ水として異物除去系統3から循環系統2へ送出されるように、スクラバ水の流れを制御する。
【0071】
このステップS106の段階では、上述したコレクティングタンク1とスクラバ101との間でのスクラバ水の循環に並行して、循環管21から分岐管31に抽出された一部のスクラバ水は、遠心分離機34によって異物が除去された後、スクラバ排水管6から排出されずに、合流管33を通じて循環管21に戻る。この結果、コレクティングタンク1内のスクラバ水の減量が抑制され、これに伴い、このスクラバ水の液面レベルLsの低下が抑制される。
【0072】
以上、説明したように、本発明の実施形態1に係る水処理装置10は、舶用内燃機関110からの排ガスの洗浄に用いられたスクラバ水を残渣とスクラバ排水とに分離して、当該スクラバ水から異物を除去する異物除去系統3と、異物除去系統3からスクラバ排水を排出するためのスクラバ排水管6と、スクラバ排水を船外へ排出するための第1排水管7と、スクラバ排水を船内の貯蔵タンクへ排出するための第2排水管8と、スクラバ排水管6を第1排水管7と第2排水管8とに分岐させ、スクラバ排水管6と第1排水管7または第2排水管8とを択一的に連通させる排水路分岐弁9と、を備えている。また、この水処理装置10において、排水路分岐弁9は、舶用内燃機関110が代替燃料運転を行っている場合、スクラバ排水管6と第1排水管7とを連通させ、舶用内燃機関110が化石燃料運転を行っている場合、スクラバ排水管6と第2排水管8とを連通させている。
【0073】
上記の構成により、舶用内燃機関110の運転モード(代替燃料運転モードまたは化石燃料運転モード)に応じて、スクラバ排水の排水路を、船外へ排水(海洋投棄)するための排水路と、船内の貯蔵タンク内へ排水(保管)するための排水路と、のいずれかに切り換えることができる。このため、舶用内燃機関110からの排ガスの洗浄に用いられたスクラバ排水(排水対象のスクラバ水)について、船外へ排水するか否かを選択することができる。具体的には、代替燃料運転モードにおいて炭素成分を含有する異物を含まないスクラバ排水を、船内の貯蔵タンクに保管する必要が無く、海洋投棄することができ、化石燃料運転モードにおいて炭素成分を含有する異物を含むスクラバ排水を、海洋投棄することなく船内の貯蔵タンクに保管することができる。
【0074】
(実施形態2)
つぎに、本発明の実施形態2に係る水処理装置の構成について説明する。図3は、本発明の実施形態2に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。図3に示すように、本実施形態2に係る水処理装置10Aは、上述した実施形態1に係る水処理装置10の残渣排出管11に代えて残渣排出管11Bを備え、制御装置19に代えて制御装置19Aを備え、さらに、第1残渣管12と、第2残渣管13と、残渣路分岐弁14とを備える。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0075】
残渣排出管11Bは、異物除去系統3(具体的には遠心分離機34)による残渣を異物除去系統3から排出するための配管である。図3に示すように、残渣排出管11Bは、入口端が遠心分離機34の残渣排出口部に接続され且つ出口端が残渣路分岐弁14に接続される。残渣排出管11Bは、遠心分離機34によってスクラバ水から除去された異物を含有する残渣(例えばスラッジ状の残渣)を遠心分離機34から受け入れる。残渣排出管11Bは、受け入れた残渣を、異物除去系統3から排出するとともに残渣路分岐弁14を介して第1残渣管12または第2残渣管13に向けて流通させる。
【0076】
第1残渣管12は、異物除去系統3による残渣を船外へ排出するための排出路を構成する配管である。図3に示すように、第1残渣管12は、入口端が残渣路分岐弁14に接続され、残渣路分岐弁14を介して残渣排出管11Bから分岐するように構成される。特に図示しないが、第1残渣管12の出口端は、船舶の外部(海洋等)に通じている。第1残渣管12は、残渣排出管11Bから残渣路分岐弁14を介して残渣を受け入れ、受け入れた残渣を船外に向けて流通させる。当該残渣は、第1残渣管12を通じて船外へ排出(海洋投棄)され得る。
【0077】
第2残渣管13は、異物除去系統3による残渣を船内のスラッジタンク15へ排出するための排出路を構成する配管である。図3に示すように、第2残渣管13は、入口端が残渣路分岐弁14に接続され且つ出口端がスラッジタンク15に接続される。すなわち、第2残渣管13は、残渣路分岐弁14を介して残渣排出管11Bから分岐し、スラッジタンク15に通じる。第2残渣管13は、残渣排出管11Bから残渣路分岐弁14を介して残渣を受け入れ、受け入れた残渣をスラッジタンク15へ排出する。
【0078】
残渣路分岐弁14は、異物除去系統3から残渣排出管11Bを通じて排出された残渣を、船外に通じる第1残渣管12または船内のスラッジタンク15に通じる第2残渣管13へ流通させるための弁である。図3に示すように、残渣路分岐弁14は、三方弁等によって構成され、残渣排出管11Bを第1残渣管12と第2残渣管13とに分岐させる。すなわち、残渣路分岐弁14が有する3つの開口部のうち、第1の開口部には残渣排出管11Bの出口端が接続され、第2の開口部には第1残渣管12の入口端が接続され、第3の開口部には第2残渣管13の入口端が接続される。残渣路分岐弁14は、残渣排出管11Bと第1残渣管12との間における開度と、残渣排出管11Bと第2残渣管13との間における開度とのうち、一方の開度を増加させるに伴い他方の開度を減少させる等して、これらの各開度を調整する。本実施形態2において、残渣路分岐弁14は、これらの各開度のうち、一方の開度を全開に調整することにより、他方の開度を全閉に調整する。例えば、この開度調整は制御装置19Aによって制御され、この制御に基づき、残渣路分岐弁14は、残渣排出管11Bと第1残渣管12または第2残渣管13とを択一的に連通させる。このような残渣路分岐弁14は、舶用内燃機関110が代替燃料運転を行っている場合、残渣排出管11Bと第1残渣管12とを連通させ、舶用内燃機関110が化石燃料運転を行っている場合、残渣排出管11Bと第2残渣管13とを連通させる。
【0079】
制御装置19Aは、水処理装置10Aにおけるスクラバ水および残渣の各流れを制御するものである。詳細には、制御装置19Aは、各種プログラムを実行するためのCPU、メモリおよびシーケンサ等によって構成される。制御装置19Aは、残渣の流れを制御する際、舶用内燃機関110から電気信号を受信し、この受信した電気信号に基づいて、上述した残渣路分岐弁14を制御する。なお、制御装置19Aは、スクラバ水の流れを制御する際、上述した実施形態1における制御装置19と同様に、上述した分岐弁5および排水路分岐弁9を各々制御する。
【0080】
例えば、制御装置19Aは、舶用内燃機関110から受信した電気信号に基づいて、舶用内燃機関110の運転モードが代替燃料運転および化石燃料運転のいずれの運転モードであるかを判断する。代替燃料運転の場合、制御装置19Aは、残渣排出管11Bと第1残渣管12とを連通させるように残渣路分岐弁14の開度を制御する。これにより、制御装置19Aは、異物除去系統3からの残渣が船外へ排出されるように、残渣の流れを制御する。化石燃料運転の場合、制御装置19Aは、残渣排出管11Bと第2残渣管13とを連通させるように残渣路分岐弁14の開度を制御する。これにより、制御装置19Aは、異物除去系統3からの残渣が船内のスラッジタンク15へ排出されるように、残渣の流れを制御する。
【0081】
つぎに、水処理装置10Aによる残渣の流れの制御手順について説明する。図4は、本発明の実施形態2に係る水処理装置による残渣の流れの一制御手順を例示するフロー図である。本実施形態2に係る水処理装置10A(図3参照)において、制御装置19Aは、図4に示されるステップS201~S203の各処理を行うことにより、排出対象の残渣の流れを制御する。
【0082】
詳細には、水処理装置10Aによる残渣の流れの制御において、図4に示すように、制御装置19Aは、まず、舶用内燃機関110の運転モード(エンジン運転モード)を判断する(ステップS201)。ステップS201において、制御装置19Aは、上述した実施形態1におけるステップS103(図2参照)と同様に、舶用内燃機関110からの電気信号に基づいて、エンジン運転モードが代替燃料運転モードおよび化石燃料運転モードのいずれであるかを判断する。
【0083】
エンジン運転モードが代替燃料運転モードであると判断した場合(ステップS201,代替燃料)、制御装置19Aは、第1残渣管12を開くように残渣路分岐弁14の開度を制御する(ステップS202)。その後、制御装置19Aは、上述したステップS201に戻り、このステップS201以降の処理を繰り返す。
【0084】
ステップS202において、制御装置19Aは、残渣路分岐弁14の第1残渣管12側を全開とし且つ第2残渣管13側を全閉とするように、残渣路分岐弁14の開度を制御する。この開度制御に基づいて、残渣路分岐弁14は、残渣排出管11Bからの残渣の流通先を、第2残渣管13側から第1残渣管12側に択一的に切り換える。すなわち、残渣路分岐弁14は、残渣排出管11Bと第2残渣管13との連通を遮断するとともに、残渣排出管11Bと第1残渣管12とを連通させる。制御装置19Aは、この残渣路分岐弁14の開度制御により、代替燃料運転モード時の残渣が残渣排出管11Bおよび第1残渣管12を通じて船外へ排出(海洋投棄)されるように、残渣の流れを制御する。
【0085】
ここで、エンジン運転モードが代替燃料運転モードである場合、排ガスの洗浄に使用後のスクラバ水から分離除去された残渣には、上述したスクラバ排水の場合と同様に、炭素成分を含有する異物が含まれない。このように炭素成分を含有する異物を含んでいない残渣は、排出規制上、海洋投棄することが可能である。
【0086】
一方、上述したステップS201において、エンジン運転モードが化石燃料運転モードであると判断した場合(ステップS201,化石燃料)、制御装置19Aは、第2残渣管13を開くように残渣路分岐弁14の開度を制御する(ステップS203)。その後、制御装置19Aは、上述したステップS201に戻り、このステップS201以降の処理を繰り返す。
【0087】
ステップS203において、制御装置19Aは、残渣路分岐弁14の第1残渣管12側を全閉とし且つ第2残渣管13側を全開とするように、残渣路分岐弁14の開度を制御する。この開度制御に基づいて、残渣路分岐弁14は、残渣排出管11Bからの残渣の流通先を、第1残渣管12側から第2残渣管13側に択一的に切り換える。すなわち、残渣路分岐弁14は、残渣排出管11Bと第1残渣管12との連通を遮断するとともに、残渣排出管11Bと第2残渣管13とを連通させる。制御装置19Aは、この残渣路分岐弁14の開度制御により、化石燃料運転モード時の残渣が残渣排出管11Bおよび第2残渣管13を通じて船内のスラッジタンク15へ排出されるように、残渣の流れを制御する。
【0088】
ここで、エンジン運転モードが化石燃料運転モードである場合、排ガスの洗浄に使用後のスクラバ水から分離除去された残渣には、上述したスクラバ排水の場合と同様に、炭素成分を含有する異物が含まれる。このように炭素成分を含有する異物を含む残渣は、海洋投棄されず、スラッジタンク15内に一時保管され、陸揚げ後に廃棄処分される。
【0089】
なお、制御装置19Aは、上述した残渣の流れの制御に並行して、スクラバ水の流れを制御する。制御装置19Aによるスクラバ水の流れの制御手順は、上述した実施形態1におけるステップS101~S106(図2参照)と同様である。
【0090】
以上、説明したように、本発明の実施形態2に係る水処理装置10Aは、異物除去系統3から残渣を排出するための残渣排出管11Bと、残渣を船外へ排出するための第1残渣管12と、残渣を船内の貯蔵タンクへ排出するための第2残渣管13と、残渣排出管11Bを第1残渣管12と第2残渣管13とに分岐させ、残渣排出管11Bと第1残渣管12または第2残渣管13とを択一的に連通させる残渣路分岐弁14と、を備え、その他に実施形態1と同様の構成部を備えている。また、この水処理装置10Aにおいて、残渣路分岐弁14は、舶用内燃機関110が代替燃料運転を行っている場合、残渣排出管11Bと第1残渣管12とを連通させ、舶用内燃機関110が化石燃料運転を行っている場合、残渣排出管11Bと第2残渣管13とを連通させている。
【0091】
上記の構成により、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受するとともに、舶用内燃機関110の運転モード(代替燃料運転モードまたは化石燃料運転モード)に応じて、残渣の排出路を、船外へ排出(海洋投棄)するための排出路と、船内の貯蔵タンク内へ排出(保管)するための排出路と、のいずれかに切り換えることができる。このため、上述したスクラバ排水に加え、排ガスを洗浄後のスクラバ水から分離除去された残渣について、船外へ排出するか否かを選択することができる。具体的には、代替燃料運転モードにおいて炭素成分を含有する異物を含まないスクラバ排水および残渣を、船内の貯蔵タンクに保管する必要が無く、海洋投棄することができ、化石燃料運転モードにおいて炭素成分を含有する異物を含むスクラバ排水および残渣を、海洋投棄することなく船内の貯蔵タンクに保管することができる。
【0092】
なお、上述した実施形態1、2では、分岐弁5および排水路分岐弁9の各開度制御を制御装置19、19Aによって自動で行っていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、分岐弁5および排水路分岐弁9の各開度制御は、作業者の操作によって手動制御されてもよい。
【0093】
また、上述した実施形態2では、残渣路分岐弁14の開度制御を制御装置19Aによって自動で行っていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、残渣路分岐弁14の開度制御は、作業者の操作によって手動制御されてもよい。
【0094】
また、上述した実施形態1、2では、異物除去系統3からスクラバ排水を排出する際、分岐弁5のスクラバ排水管側を全開とし且つ合流管側(循環系統側)を全閉としていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、異物除去系統3からスクラバ排水を排出する際、分岐弁5のスクラバ排水管側および合流管側の双方を開(中間開度)としてもよい。
【0095】
また、上述した実施形態1、2では、遠心分離機34の入口側の配管(分岐管31等)内のスクラバ水の比重を比重計4によって測定していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、比重計4によるスクラバ水の比重測定は、遠心分離機34の出口側の配管(出口管32等)において行われてもよい。あるいは、比重計4によるスクラバ水の比重測定は、循環管21、回収管104またはコレクティングタンク1等、異物除去系統以外のスクラバ水の流通経路において行われてもよい。
【0096】
また、上述した実施形態1、2では、第2排水管8と、残渣排出管11、11Bおよび第2残渣管13とを、スラッジタンク15に対して別々に接続していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、第2排水管8と残渣排出管11、11Bとを合流させてスラッジタンク15に接続してもよいし、第2排水管8と第2残渣管13とを合流させてスラッジタンク15に接続してもよい。
【0097】
また、上述した実施形態1、2では、本発明に係る水処理装置が適用されるスクラバの一例としてEGRシステム100のスクラバ101を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、本発明に係る水処理装置は、EGRシステム以外の排ガス洗浄装置(スクラバ)に適用されてもよい。
【0098】
また、上述した実施形態1、2では、スクラバ水を残渣とスクラバ排水とに分離して異物を除去する装置として遠心分離機34を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、スクラバ水を残渣とスクラバ排水とに分離して異物を除去する装置は、スクラバ水と異物との比重差を利用してスクラバ水から異物を除去するものであってもよいし、スクラバ水と異物との比重差を利用せずにスクラバ水から異物を除去するもの(例えば濾過装置等)であってもよい。すなわち、本発明において、当該装置の種類は特に問われない。
【0099】
また、上述した実施形態1、2では、分岐弁5および排水路分岐弁9の各開度を一つの制御装置(実施形態1の制御装置19または実施形態2の制御装置19A)によって各々制御していたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、分岐弁5の開度は、上述した制御装置19、19Aとは別の制御装置(図示せず)により、スクラバ水の比重に応じて制御されてもよい。この場合、制御装置19、19Aは、図2に示したステップS101~S106のうち、ステップS103~S105の各処理手順(すなわちエンジン運転モードに応じて排水路分岐弁9の開度を制御するための各処理手順)を適宜繰り返して実行してもよい。
【0100】
また、上述した実施形態1、2により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態1、2に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1 コレクティングタンク
2 循環系統
3 異物除去系統
4 比重計
5 分岐弁
6 スクラバ排水管
7 第1排水管
8 第2排水管
9 排水路分岐弁
10、10A 水処理装置
11、11B 残渣排出管
12 第1残渣管
13 第2残渣管
14 残渣路分岐弁
15 スラッジタンク
16 清水補給部
17 pH調整部
18 レベル検出部
19、19A 制御装置
21 循環管
22 循環ポンプ
31 分岐管
32 出口管
33 合流管
34 遠心分離機
100 EGRシステム
101 スクラバ
101a 噴射部
102 デミスタ
103 EGRブロア
104 回収管
105 ポンプ
110 舶用内燃機関
Ls 液面レベル
【要約】
【課題】舶用内燃機関からの排ガスの洗浄に用いられた排水対象のスクラバ水について、船外へ排水するか否かを選択可能な水処理装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様である水処理装置は、舶用内燃機関からの排ガスを洗浄して除去した異物を含むスクラバ水を処理する装置であって、スクラバ水を異物含有の残渣とスクラバ排水とに分離してスクラバ水から異物を除去する異物除去系統と、残渣およびスクラバ排水を貯蔵する貯蔵タンクと、スクラバ排水を排出するためのスクラバ排水管、第1排水管および第2排水管と、スクラバ排水管を第1排水管と第2排水管とに分岐させる排水路分岐弁と、を備える。舶用内燃機関が代替燃料運転する場合、排水路分岐弁はスクラバ排水管と船外に通じる第1排水管とを連通させ、舶用内燃機関が化石燃料運転する場合、排水路分岐弁はスクラバ排水管と貯蔵タンクに通じる第2排水管とを連通させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4