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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】部品装着システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20231024BHJP
   H05K 13/00 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H05K13/02 Z
H05K13/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023020857
(22)【出願日】2023-02-14
(62)【分割の表示】P 2022040099の分割
【原出願日】2018-06-12
(65)【公開番号】P2023053305
(43)【公開日】2023-04-12
【審査請求日】2023-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅浩
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-085543(JP,A)
【文献】特開2005-216945(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181497(WO,A1)
【文献】特開2018-010997(JP,A)
【文献】特開2017-187996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を複数収容する部品収容器を少なくとも含む交換要素が所定ピッチで、または前記所定ピッチの整数倍のピッチで配列方向に配列される部品供給部を有する部品装着装置と、
前記部品供給部に着脱可能に装備される前記交換要素を交換する交換装置と、を具備し、
前記交換装置は、
前記部品装着装置に対して前記配列方向に移動可能に設けられた配列方向移動部と、
前記配列方向移動部に設けられて複数の前記交換要素を前記配列方向に並べた状態で収容できる内部空間を有するケースと、を備え、
前記交換要素は、前記配列方向の幅寸法が前記所定ピッチ以下の標準交換要素、および前記幅寸法が前記所定ピッチを超える大形交換要素を含み、
前記交換装置は、前記標準交換要素および前記大形交換要素を交換可能に構成され、かつ、前記交換要素を保持可能であって前記配列方向に並んで配置された複数の保持部を有し、
複数の前記保持部の各々は、当該の前記保持部にのみ対向した状態の前記標準交換要素を保持し、
複数の前記保持部の少なくとも一つは、複数の前記保持部に対向した状態の前記大形交換要素を保持する、
部品装着システム。
【請求項2】
部品を複数収容する部品収容器を少なくとも含む交換要素が所定ピッチで、または前記所定ピッチの整数倍のピッチで配列方向に配列される部品供給部を有する部品装着装置と、
前記部品供給部に着脱可能に装備される前記交換要素を交換する交換装置と、を具備し、
前記交換装置は、
前記部品装着装置に対して前記配列方向に移動可能に設けられた配列方向移動部と、
前記配列方向移動部に設けられて複数の前記交換要素を前記配列方向に並べた状態で収容できる内部空間を有するケースと、を備え、
前記交換要素は、前記配列方向の幅寸法が前記所定ピッチ以下の標準交換要素、および前記幅寸法が前記所定ピッチを超える大形交換要素を含み、
前記交換装置は、前記標準交換要素および前記大形交換要素を交換可能に構成され、かつ、前記交換要素を保持可能であって前記配列方向に並んで配置された複数の保持部を有し、
複数の前記保持部の少なくとも一つは、前記標準交換要素の保持と前記大形交換要素の保持とに兼用される、
部品装着システム。
【請求項3】
前記交換装置は、
前記部品供給部に装備されている装備交換要素と準備されている準備交換要素とを交換する場合に、前記ケースの準備用内部空間に前記準備交換要素を収容するとともに前記準備交換要素を収容していない回収用内部空間を確保しておき、
前記装備交換要素を前記部品供給部から前記回収用内部空間に回収した後、前記配列方向移動部を前記配列方向に移動させ、
前記装備交換要素が装備されていた配列位置に前記準備交換要素を装備する、
請求項1または2に記載の部品装着システム。
【請求項4】
前記ケースの前記内部空間には、複数の前記交換要素が前記所定ピッチで、または前記所定ピッチの整数倍のピッチで前記配列方向に並べられた状態で収容される、請求項1~3のいずれか一項に記載の部品装着システム。
【請求項5】
複数の前記保持部は、互いに独立して前記交換要素の着脱方向に移動可能に前記配列方向移動部に設けられる請求項1~のいずれか一項に記載の部品装着システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品装着装置に着脱可能に装備される交換要素を自動で交換する交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線が施された基板に対基板作業を実施して、回路基板を量産する技術が普及している。対基板作業を実施する対基板作業装置には、部品の装着作業を実施する部品装着装置などがある。部品装着装置が備える部品供給装置の代表例として、キャリアテープを用いて部品を供給するテープフィーダがある。近年、部品供給の手間を省力化するために、テープフィーダを自動で交換し、あるいはキャリアテープを巻回したテープリールを自動で交換する技術が開発されている。この種の交換装置に関する技術例が、特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1には、複数のカセット式フィーダを並べてセットする吸着作業エリアと、使用前および使用済みカセット式フィーダを収納するフィーダストックエリアと、吸着作業エリアとフィーダストックエリアの間でカセット式フィーダを入れ替える入替ロボットと、を備える部品装着装置のカセット式フィーダ入替システムが開示されている。これによれば、カセット式フィーダの交換作業を自動化でき、さらには、エリア間のカセット式フィーダの入れ替えをスムーズに行える、とされている。
【0004】
また、特許文献2には、部品供給ユニットを複数保管するユニット保管庫と、複数の部品装着装置に取り付けられている部品供給ユニットとユニット保管庫にユニット保管庫に保管されている部品供給ユニットを交換するユニット交換装置と、ユニット交換装置を制御する制御装置と、を備える部品装着ラインが開示されている。これによれば、いずれの部品装着装置で使用される部品供給ユニットであっても、補給や回収に伴う搬入出をユニット保管庫で行え、使い勝手が良好となる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/118995号
【文献】国際公開第2017/033268号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1および2の交換装置の技術例において、部品装着装置の交換要素(カセット式フィーダ、部品供給ユニット)の交換は、1つずつ行われる。例えば、特許文献1において、装着作業によって部品が消費され尽したカセット式フィーダが吸着作業エリアから回収され、フィーダストックエリアに移送および収納され、その後に、新しいカセット式フィーダがフィーダストックエリアから引き出され、吸着作業エリアに移送およびセットされる。交換作業の間、装着作業は中断され、基板を生産できない非生産時間が発生する。
【0007】
また、生産する基板の種類を変更する段取り替え作業の多くの場合に、部品装着装置の複数の交換要素の交換が必要となり、非生産時間が長引きがちである。このような非生産時間を短縮して、基板の生産効率を高めることが強く要望されている。
【0008】
本明細書では、部品装着装置の非生産時間を短縮して、基板の生産効率を向上できる交換装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書は、部品を複数収容する部品収容器を少なくとも含む交換要素が配列方向に配列される部品供給部を有する部品装着装置の前記部品供給部に着脱可能に装備される前記交換要素を交換する交換装置であって、前記部品装着装置に対して前記配列方向に移動可能に設けられた配列方向移動部と、前記配列方向移動部に対して互いに独立して前記交換要素の着脱方向に移動可能に前記配列方向移動部に設けられ、前記配列方向に互いに隣接する複数の着脱方向移動部と、複数の前記着脱方向移動部の各々にいずれも同じ方向を向いて少なくとも一つ設けられ、前記交換要素を保持可能な保持部と、前記配列方向移動部を前記配列方向に移動させる配列方向駆動装置と、複数の前記着脱方向移動部を互いに独立して前記着脱方向に移動させる着脱方向駆動装置と、を備える交換装置を開示する。
【0010】
また、本明細書は、部品を複数収容する部品収容器を少なくとも含む交換要素が所定ピッチで、または前記所定ピッチの整数倍のピッチで配列方向に配列される部品供給部を有する部品装着装置の前記部品供給部に着脱可能に装備される前記交換要素を交換する交換装置であって、前記部品装着装置に対して前記配列方向に移動可能に設けられた配列方向移動部と、前記配列方向移動部に対して前記交換要素の着脱方向に移動可能に前記配列方向移動部に設けられた着脱方向移動部と、前記所定ピッチで、または前記所定ピッチの整数倍のピッチで前記配列方向に互いに隣接しつついずれも同じ方向を向いて前記着脱方向移動部に設けられ、前記交換要素を保持可能な複数の保持部と、前記配列方向移動部を前記配列方向に移動させる配列方向駆動装置と、前記着脱方向移動部を前記着脱方向に移動させる着脱方向駆動装置と、を備える交換装置を開示する。
【発明の効果】
【0011】
本明細書で開示する交換装置は、複数の保持部を備えるので、同時に複数の交換要素を取り扱うことができる。したがって、一つの保持部を備える従来構成と比較して、交換要素の交換に要する非生産時間が短縮され、部品装着装置の生産時間の比率が高められて、基板の生産効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の交換装置を適用する部品装着システムの構成例を示した斜視図である。
図2】交換要素に相当するテープフィーダの側面図である。
図3】テープフィーダのロック部付近の構成および着脱方向移動部の内部の構成を示す側面図である。
図4】交換部の内部の構成を示す斜視図である。
図5】二つの着脱方向移動部の保持面付近を並べて拡大した部分拡大斜視図である。
図6】標準的なテープフィーダ、および大形のテープフィーダの保持方法を模式的に示す平面図である。
図7】超大形のテープフィーダの保持方法を模式的に示す平面図である。
図8】保持部および解除部が動作した保持状態を示す着脱方向移動部の側面図である。
図9】交換部がテープフィーダを収容した状態を示す斜視図である。
図10】交換動作の手順例において、回収動作を開始する直前の状態を模式的に示す交換部の平面図である。
図11】回収動作が終了した状態を模式的に示す交換部の平面図である。
図12】装備動作を開始する直前の状態を模式的に示す交換部の平面図である。
図13】装備動作が終了した状態を模式的に示す交換部の平面図である。
図14】実施形態の交換装置を簡略化した第1応用例の交換装置を概念的に示す図である。
図15】実施形態の交換装置を簡略化した第2応用例の交換装置を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施形態の交換装置1を適用する部品装着システム9の構成
まず、実施形態の交換装置1の適用箇所となる部品装着システム9の構成例について説明する。図1は、実施形態の交換装置1を適用する部品装着システム9の構成例を示した斜視図である。図1に示されるように、部品装着システム9の前後左右を便宜的に定める。部品装着システム9は、複数の対基板作業装置が左右方向に列設されて構成される。すなわち、半田印刷装置91、印刷検査装置92、第1部品装着装置93、第2部品装着装置94、第3部品装着装置95、図略の基板外観検査装置、および図略のリフロー装置が、左側から右側へと列設される。
【0014】
それぞれの対基板作業装置は、基板に対する所定の作業、すなわち対基板作業を実施する。具体的に、半田印刷装置91は、ペースト状の半田を定められたパターン形状で基板に印刷する。印刷検査装置92は、基板の半田印刷状態を撮像して検査する。第1部品装着装置93、第2部品装着装置94、および第3部品装着装置95は、部品供給部9Aから部品を採取して、基板の半田の上に装着する。基板外観検査装置は、基板に装着された部品を撮像して外観状態を検査する。リフロー装置は、半田を加熱および冷却することによって部品の半田付けを確かなものとする。対基板作業は、上記した作業内容に限定されず、付随する諸作業等も含む。例えば、基板の搬入出作業や位置決め作業、基板や部品を撮像してそれらの位置や姿勢を把握する確認作業も、対基板作業に含まれる。
【0015】
第1部品装着装置93、第2部品装着装置94、および第3部品装着装置95は、互いに同一構造である。部品装着装置(93、94、95)は、部品供給部9A、予備フィーダ保管部9B、図1には見えない基板搬送装置、および部品移載装置を有する。
【0016】
部品供給部9Aは、機台99の前側の概ね中間高さに配置される。部品供給部9Aは、前後方向に延びかつ所定ピッチPs(図5~7参照)で互いに平行に形成された複数のスロットを有する。部品供給部9Aの各スロットには、それぞれテープフィーダ8が挿入されて装備される。つまり、複数のテープフィーダ8は、図1の左右方向に並んで配列される。
【0017】
テープフィーダ8は、部品供給部9Aに着脱可能に装備される部品供給装置であり、交換要素に相当する。また、図1の左右方向は、交換要素の配列方向(以降、単に配列方向と略記)となり、図1の前後方向は、交換要素の着脱方向(以降、単に着脱方向と略記)となる。テープフィーダ8は、第1部品装着装置93、第2部品装着装置94、および第3部品装着装置95で互換使用される。
【0018】
予備フィーダ保管部9Bは、機台99の前側の部品供給部9Aの下側に配置される。予備フィーダ保管部9Bも、前後方向に延びかつ所定ピッチPsで互いに平行に形成された複数のスロットを有する。予備フィーダ保管部9Bのスロットには、使用準備が整った予備のテープフィーダ8や、使い終わったテープフィーダ8が配列されて一時的に保管される。基板搬送装置は、基板の搬入、位置決め、および搬出を行う。部品移載装置は、吸着ノズルなどの部品装着具を用いて部品供給部9Aから部品を採取し、基板に装着する。
【0019】
また、部品装着システム9には、フィーダ保管装置96、ライン管理装置97、および実施形態の交換装置1が設けられている。フィーダ保管装置96は、半田印刷装置91の左側に隣接し、かつ、部品装着装置(93、94、95)の部品供給部9Aと同じ高さに配置される。フィーダ保管装置96も、前後方向に延びかつ所定ピッチPsで互いに平行に形成された複数のスロットを有する。フィーダ保管装置96のスロットにも、使用準備が整ったテープフィーダ8や、使い終わったテープフィーダ8が配列されて保管される。
【0020】
ライン管理装置97は、フィーダ保管装置96の左側に隣接して配置される。ライン管理装置97は、複数の対基板作業装置と通信接続される。ライン管理装置97は、基板の種類ごとに異なる対基板作業の作業内容を記述したジョブデータを管理する。ライン管理装置97は、生産計画に基づいて、複数の対基板作業装置にそれぞれのジョブデータを送出する。ライン管理装置97は、さらに、複数の対基板作業装置の動作状況を監視する。
【0021】
2.テープフィーダ8の構造
次に、テープフィーダ8の構造について説明する。図2は、交換要素に相当するテープフィーダ8の側面図である。テープフィーダ8は、側板を含んだ枠体81に各種の部材が組み付けられて、幅方向に薄く構成される。テープフィーダ8は、枠体81、リール収容枠82、収容板83、開閉板84、テープ送給部85、部品供給位置86、フィーダ制御部87、突条88、上位置決めピン89、下位置決めピン8A、コネクタ8B、およびロック部8Cなどを有する。
【0022】
リール収容枠82は、枠体81の概ね中央に大きな円形の内部空間を形成する複数の枠部材である。リール収容枠82は、内部空間にテープリールTRを回転自在に収容する。リール収容枠82の下部寄りに、収容板83が取り付けられる。収容板83と枠体81の側板との離間距離は、テープリールTRの厚さよりわずかに大きく設定される。収容板83は、テープリールTRの離脱を防止する。
【0023】
リール収容枠82の中間高さよりも上寄りに、開閉板84が取り付けられる。開閉板84と枠体81の側板との離間距離も、テープリールTRの厚さよりわずかに大きく設定される。かつ、開閉板84は、上部の前後二箇所841が枠体81に支持されて上方に開放するようになっている。開閉板84が開放することにより、テープリールTRの交換が可能となる。テープリールTRには、複数の部品を収納したキャリアテープが巻回されている。テープリールTRは、部品を複数収容する部品収容器に相当する。
【0024】
テープ送給部85は、枠体81の前上部に配設される。テープ送給部85は、テープリールTRからキャリアテープを引き出し、枠体81の上面の前部に設けられた部品供給位置86まで送給する。テープ送給部85は、キャリアテープの送り穴に嵌合する歯をもつスプロケット、および、スプロケットを回転駆動するモータなどで構成される。
【0025】
フィーダ制御部87は、枠体81の後下部に配設される。フィーダ制御部87は、テープ送給部85を制御し、また、ロック部8Cの状態を監視する。フィーダ制御部87は、コネクタ8Bを経由して、部品装着装置(93、94、95)の本体側の制御装置と通信接続される。
【0026】
突条88は、枠体81の底面に設けられる。突条88は、部品供給部9A、予備フィーダ保管部9B、およびフィーダ保管装置96のいずれのスロットにも挿入されるようになっている。突条88は、さらに、後述する交換装置1の交換部3のケース31のスロット314にも挿入されるようになっている。これにより、テープフィーダ8は、交換時に突条88がスロット314に案内されて、交換装置1から部品供給部9A等に乗り移ったり、逆方向に乗り移ったりする。
【0027】
上位置決めピン89および下位置決めピン8Aは、枠体81の前面の上部に、上下に離隔して設けられる。上位置決めピン89および下位置決めピン8Aは、部品供給部9Aの位置決め孔に嵌入して、テープフィーダ8を位置決めする。コネクタ8Bは、上位置決めピン89と下位置決めピン8Aの間に配設される。コネクタ8Bは、テープフィーダ8への電源供給および通信接続を担う。テープフィーダ8が位置決めされるとき、コネクタ8Bは、部品供給部9Aの受け側コネクタに自動的に嵌合する。
【0028】
ロック部8Cは、枠体81の後上部に配設される。図3は、テープフィーダ8のロック部8C付近の構成、および交換装置1の着脱方向移動部32(後述)の内部の構成を示す側面図である。ロック部8Cは、ロックピン8D、ロックばね8E、ロック操作部材8F、およびロックセンサ8Lなどで構成される。ロックピン8Dは、筒状の部材であり、枠体81によって上下動可能に保持される。ロックばね8Eは、コイル形状に形成され、ロックピン8Dの内部に配置される。ロックばね8Eは、その一端が枠体81に結合され、その他端がロックピン8Dに結合される。
【0029】
ロックばね8Eは、ロックピン8Dを上向きに付勢する。部品供給部9Aに装備されたテープフィーダ8において、付勢により上昇したロックピン8Dは、枠体81の上面から突出し、部品供給部9Aのロック孔9Hに嵌入する。これにより、ロック部8Cはロック状態となり、テープフィーダ8の離脱やガタツキが防止される。
【0030】
ロック操作部材8Fは、揺動支点8Gを有するY字形状の部材である。揺動支点8Gは、枠体81によって揺動可能に支承される。揺動支点8Gから前方に伸びる作用アーム8Hは、ロックピン8Dの下端に係止される。揺動支点8Gから上方に伸びる解除アーム8Jは、後述する直接動作部材61により前方に押動される。揺動支点8Gから後方に伸びる手動アーム8Kは、枠体81の後面から突出している。手動アーム8Kは、作業者の操作により上方に押動される。
【0031】
解除アーム8Jまたは手動アーム8Kが押動されることにより、ロック操作部材8Fは、揺動支点8Gを中心にして図3の時計回りに揺動する。このとき、作用アーム8Hは、ロックばね8Eに抗してロックピン8Dを下降させる。すると、ロックピン8Dは、ロック孔9Hから抜け出る。これにより、ロック部8Cは、ロック状態から解除状態に移行する(図8参照)。また、テープフィーダ8は、スロットからの引き出し操作が可能な状態となる。
【0032】
ロックセンサ8Lは、ロック部8Cの状態、すなわち、ロック状態であるかそれとも解除状態であるかを検出する。ロックセンサ8Lは、出力ケーブル8Mを経由して、検出結果をフィーダ制御部87に出力する。部品供給部9Aに装備されたテープフィーダ8において、フィーダ制御部87は、ロック部8Cが解除状態であるときに部品の供給動作を進めない。その理由は、テープフィーダ8が良好な装備姿勢でないと判断されることに因る。
【0033】
また、図3に示されるように、ロック部8Cの後側に、保持板8Nが鉛直方向に設けられる。保持板8Nは、保持部5によって保持される部位である。保持板8Nは、中央に保持孔8Pを有する。保持孔8Pは、コネクタ8Bと同じ高さ(所定高さ)に位置する。後方から見て、保持孔8Pの延長線上に、ロック操作部材8Fの解除アーム8Jが位置する。
【0034】
テープフィーダ8は、テープリールTRの複数種類の厚みに対応して、配列方向の幅寸法が異なる複数種類が用意されている。標準的なテープフィーダ8Xは、幅寸法が所定ピッチPs以下であり、隣り合うスロットに並んで装備される。換言すると、標準的なテープフィーダ8Xは、所定ピッチPsで配列方向に配列される(図6参照)。
【0035】
幅寸法が所定ピッチPsを超え2倍以下の大形のテープフィーダ8Yは、2条のスロットを占有して装備される。換言すると、大形のテープフィーダ8Yは、所定ピッチPsの2倍のピッチで配列方向に配列される(図6参照)。さらに、幅寸法が所定ピッチPsの2倍を超える超大形のテープフィーダ8Zは、3条以上のスロットを占有して装備される。換言すると、超大形のテープフィーダ8Zは、所定ピッチPsの3倍以上のピッチで配列方向に配列される(図7参照)。
【0036】
3.実施形態の交換装置1の構成
実施形態の交換装置1の説明に移る。交換装置1は、テープフィーダ8を自動で交換する。詳細には、交換装置1は、部品装着装置(93、94、95)の部品供給部9Aと、予備フィーダ保管部9Bとの間でテープフィーダ8を交換する。また、交換装置1は、部品装着装置(93、94、95)とフィーダ保管装置96との間を移動し、テープフィーダ8を搬送して交換する。
【0037】
図1に示されるように、交換装置1は、配列方向移動部2、配列方向駆動装置20、交換部3、および交換部3の内部に設けられる諸構成要素で構成される。配列方向移動部2は、部品装着装置(93、94、95)に対して配列方向に移動可能に設けられる。配列方向移動部2は、前側が開いた縦長の箱形状の部材である。配列方向駆動装置20は、配列方向移動部2を配列方向に移動させる。配列方向駆動装置20は、移動しない側に設けられる軌道部、移動する側に設けられて前記軌道部に移動可能に係合する係合部、および移動用の動力を発生する駆動源などで構成される。
【0038】
軌道部に相当する中段レール21および下段レール22は、複数の対基板作業装置の機台99の後面、およびフィーダ保管装置96の後面にそれぞれ設けられる。中段レール21および下段レール22は、配列方向に延在する。中段レール21の高さ位置は、部品供給部9Aと予備フィーダ保管部9Bの中間に統一されている。下段レール22の高さ位置は、予備フィーダ保管部9Bの下側に統一されている。これにより、複数の中段レール21および複数の下段レール22は、フィーダ保管装置96から第3部品装着装置95まで続いて互いに平行する2条の軌道部を形成する。
【0039】
係合部に相当する中段走行部23および下段走行部24は、配列方向移動部2の前側の左右にそれぞれ配置される。中段走行部23は、中段レール21に走行可能に係合し、下段走行部24は、下段レール22に走行可能に係合する。中段走行部23は、さらに走行用の動力を発生する駆動源を含んでいる。これにより、配列方向移動部2は、中段レール21および下段レール22に装架され、配列方向に走行して移動する。
【0040】
さらに、配列方向移動部2は、中段走行部23と下段走行部24の間の高さ位置であって、テープフィーダ8の交換を阻害しない高さ位置に非接触受電部25を備える。非接触受電部25は、複数の対基板作業装置の対応する高さに設けられた非接触送電部から非接触で電力を受電する。
【0041】
また、配列方向移動部2は、昇降駆動部26および交換部3を箱形状の内部に有する。昇降駆動部26は、部品供給部9Aの高さから予備フィーダ保管部9Bの高さまで、交換部3を昇降駆動する。昇降駆動部26として、ボールねじ送り機構を例示でき、これに限定されない。図4は、交換部3の内部の構成を示す斜視図である。図4において、ケース31の手前側の側板などが省略されている。
【0042】
交換部3は、ケース31、二つの着脱方向移動部32、および二つの着脱方向駆動装置4からなる。ケース31は、隣接して配列された4個の標準的なテープフィーダ8Xを並べた状態で出し入れできる開口部311を前側に有する。ケース31は、さらに、4個の標準的なテープフィーダ8Xを収容できる内部空間をもつ。また、ケース31の底板313には、所定ピッチPsで互いに平行に形成された4個のスロット314が刻設されている。さらに、底板313の各スロット314の前側に、それぞれガイドローラ315が配設される。これにより、テープフィーダ8は、突条88がスロット314に案内されつつ開口部311およびガイドローラ315を経由して出し入れされる。
【0043】
二つの着脱方向移動部32は、配列方向移動部2に対して互いに独立して着脱方向に移動可能に設けられる。二つの着脱方向移動部32は、ケース31内に設けられ、配列方向に分かれて配置される。着脱方向移動部32は、前側の上部に保持面33を有し、前側の下部に当接面34を有する。着脱方向移動部32は、保持面33でテープフィーダ8の後面上部の保持板8Nを保持する。このとき、当接面34は、テープフィーダ8の後面下部に当接する。なお、当接面34にコネクタを設けて、テープフィーダ8のフィーダ制御部87に接続することも可能である。
【0044】
移動する着脱方向移動部32へ給電するために、可撓性を有する電源ケーブル35が着脱方向移動部32の上側に架設される。電源ケーブル35は、着脱方向移動部32の上部の電源端子36に接続される。
【0045】
着脱方向駆動装置4は、二つの着脱方向移動部32を互いに独立して着脱方向に移動させる。着脱方向駆動装置4は、着脱方向移動部32ごとに設けられる。着脱方向駆動装置4は、上レール41、下レール42、駆動モータ43、固定プーリ44、駆動ベルト45などで構成される。図3には、紙面奥側の着脱方向移動部32を駆動する着脱方向駆動装置4が示されている。
【0046】
上レール41および下レール42は、ケース31の側板312に設けられる。上レール41および下レール42は、上下に離隔しつつ平行し、着脱方向に延在する。駆動モータ43は、ケース31内の後部に配置される。駆動モータ43から紙面奥側に突き出た出力軸に、減速機構が付設される。固定プーリ44は、側板312の前部に配置される。環状の駆動ベルト45は、減速機構の出力部と固定プーリ44の間に水平に架け渡され、輪転可能となっている。
【0047】
着脱方向移動部32は、上レール41および下レール42に装架される。着脱方向移動部32は、駆動ベルト45の輪転により駆動され、交換部3の内部空間を着脱方向に移動する。着脱方向駆動装置4は、保持面33に保持されたテープフィーダ8および着脱方向移動部32を一緒に移動させる。当然ながら、着脱方向駆動装置4は、着脱方向移動部32だけを移動させることもできる。
【0048】
紙面手前側の着脱方向移動部32を駆動する着脱方向駆動装置4に関して、構成自体は上述と同様であるが、部材の配置位置は相違する。すなわち、駆動モータ47は、駆動モータ43よりも高い位置に逆向きに設けられる。また、図9に示されるように、紙面手前側の図略の側板に設けられる固定プーリ48および駆動ベルト49も、対応する高い位置に配置される。このように二つの着脱方向駆動装置4を異なる高さに逆向きに配置することにより、交換部3および配列方向移動部2の薄型化が実現される。
【0049】
着脱方向移動部32の内部構成について、さらに説明を続ける。二つの着脱方向移動部32の各々には、保持部5、解除部6、共通駆動部7、および制御部79の組み合わせが2組設けられる。この2組は、同一構成であり、配列方向に並んで配置され、互いに独立して動作する。以降では、1組の構成について詳細に説明する。保持部5、解除部6、共通駆動部7、および制御部79は、着脱方向移動部32の一部であって鉛直方向に延在する本体部37に取り付けられる。
【0050】
共通駆動部7は、保持部5および解除部6を動作させる。図3に示されるように、共通駆動部7は、ステッピングモータ71、第1ギヤ73、第2ギヤ76、および揺動部材77で構成される。ステッピングモータ71は、本体部37の下部寄りに固定される。ステッピングモータ71は、制御部79からの指令にしたがい、正回転および逆回転が切り替わるとともに、指令された回転量だけ回転する。ステッピングモータ71の出力軸には、少歯数の出力歯車72が設けられる。
【0051】
第1ギヤ73は、ステッピングモータ71よりも上側に配置され、本体部37に回転可能に支承される。第1ギヤ73は、相対的に多歯数の大歯車74、および相対的に少歯数の小歯車75が、一体的に同軸に重ねられて構成される。図4において、小歯車75は、大歯車74の裏側に位置して見えない。大歯車74は、出力歯車72と噛合する。
【0052】
第2ギヤ76は、第1ギヤ73よりも上側に配置され、本体部37に回転可能に支承される。第2ギヤ76は、小歯車75よりも多数の歯を有して、小歯車75と噛合する。第2ギヤ76の上部寄りに、揺動部材77が設けられる。揺動部材77は、第2ギヤ76の外周よりも外側の位置に揺動ピン78を有する。出力歯車72、第1ギヤ73、および第2ギヤ76は、減速機構を構成する。これにより、ステッピングモータ71の正回転および逆回転は、揺動ピン78の着脱方向の揺動に変換される。
【0053】
解除部6は、部品供給部9Aに装備されたテープフィーダ8の離脱を防止するロック部8Cを解除可能である。解除部6は、直接動作部材61および手動レバー67などで構成される。直接動作部材61は、着脱方向に長い棒状の部材である。直接動作部材61は、長さ方向の概ね中間位置に、上下方向に長い長孔62をもつ。この長孔62に、揺動ピン78が遊嵌している。したがって、揺動ピン78の円弧を描く揺動は、直接動作部材61の着脱方向の直動に変換される。また、直接動作部材61は、ロック部8Cを解除する解除操作部63を前側の先端にもつ。
【0054】
さらに、直接動作部材61は、長孔62を挟んだ前後に、中間駆動ピン64をもつ。2本の中間駆動ピン64は、後述するスライドプレート51の長孔53に遊嵌する。これにより、直接動作部材61の水平状態が維持される。さらに、直接動作部材61は、前側の中間駆動ピン64と解除操作部63の間の上下の側面に、それぞれ間接駆動突起65をもつ。上下一対の間接駆動突起65は、後述する保持部5のチャック55を駆動する。
【0055】
手動レバー67は、直接動作部材61の後端から上方に立設される。手動レバー67は、作業者によって着脱方向に操作され、共通駆動部7が不調のときなどに直接動作部材61の手動動作を可能にする。手動レバー67の下側に位置マーカ68が設けられる。位置マーカ68は、直接動作部材61と一体的に動作して、直接動作部材61の位置を示す。本体部37には、位置マーカ68を検出する基準位置センサ6Aおよび保持位置センサ6Bが設けられる。
【0056】
図3には、保持部5および解除部6が動作していない初期状態が示されている。基準位置センサ6Aは、初期状態に対応する直接動作部材61の後端位置において、位置マーカ68を検出する。保持位置センサ6Bは、保持部5および解除部6が動作したときの保持状態に対応する直接動作部材61の前端位置において、位置マーカ68を検出する(図5参照)。基準位置センサ6Aおよび保持位置センサ6Bは、検出結果を制御部79に出力する。
【0057】
保持部5は、交換対象となるテープフィーダ8を保持可能である。二つの保持部5は、保持面33を共有している。保持部5の各々は、スライドプレート51および上下一対のチャック55などで構成される。スライドプレート51は、概ね矩形板状の部材であり、台形状の切欠孔が設けられている。スライドプレート51は、図略の付勢スプリングにより前側に付勢されている。スライドプレート51の切欠孔の中で、揺動部材77が揺動する。スライドプレート51には、着脱方向に長い長孔形状のスライド孔52が4個穿設されている。スライド孔52の各々は、本体部37に立設された支持ピン38が遊嵌される。また、スライドプレート51には、着脱方向に長い長孔53が2個穿設されている。長孔53の各々は、中間駆動ピン64が遊嵌される。
【0058】
スライド孔52の着脱方向の遊び寸法と比較して、長孔53の着脱方向の遊び寸法のほうが大きい。そして、スライド孔52の着脱方向の遊び寸法と長孔53の着脱方向の遊び寸法を加算すると、直接動作部材61が着脱方向に動作する所定の動作ストローク長に一致する。図3に示される初期状態において、中間駆動ピン64が長孔53の後縁に接しており、前側に付勢されたスライドプレート51の前進を阻んでいる。このとき、スライドプレート51は、支持ピン38がスライド孔52の前縁に接した後退位置にある。
【0059】
スライドプレート51の前寄りの二箇所であって、直接動作部材61に対して上下対称となる二箇所に、チャック支承座54が設けられる。チャック支承座54には、上下一対のチャック55が揺動可能に支承される。上下一対のチャック55は、後側が概ね平行する平行部となり、平行部の前側が相互に近付く接近部となり、接近部の前側が屈曲しながら相互に離れる屈曲部となっている。チャック55は、平行部と接近部の境目あたりが支承される。
【0060】
上下一対のチャック55の向かい合う面に、直接動作部材61の間接駆動突起65がそれぞれ摺動する。図3において、間接駆動突起65は、チャック55の平行部の後尾に摺接している。このとき、上下一対のチャック55は、接近部が直接動作部材61に接する閉じた状態にある。そして、上下一対のチャック55の屈曲部は、直接動作部材61の解除操作部63を挟みつつ、テープフィーダ8の保持孔8Pよりも小さく閉じている。
【0061】
制御部79は、本体部37の下側に配置される。制御部79は、基準位置センサ6Aおよび保持位置センサ6Bの検出結果に基づいて、ステッピングモータ71の回転方向および回転量を制御する。ステッピングモータ71の回転量は制御可能であるので、基準位置センサ6Aおよび保持位置センサ6Bは必須でない。しかしながら、交換装置1の電源が停止された場合や、手動レバー67による操作が有った場合に、直接動作部材61の位置が不明になるおそれがある。したがって、基準位置センサ6Aおよび保持位置センサ6Bの少なくとも一方を設けることが好ましい。
【0062】
次に、図5は、二つの着脱方向移動部32の保持面33付近を並べて拡大した部分拡大斜視図である。図5は、保持部5および解除部6が動作した保持状態を示している。後で詳述するように、保持部5の上下一対のチャック55は、保持面33から突出して開動作することにより、テープフィーダ8を保持する。また、解除部6の直接動作部材61の先端の解除操作部63は、保持面33から突出して、テープフィーダ8のロック部8Cを解除操作する。
【0063】
図示されるように、二つの着脱方向移動部32は、所定ピッチPsの3倍のピッチで配列方向に隣接して設けられる。なお、二つの着脱方向移動部32は、所定ピッチPsの2倍のピッチや、4倍以上の整数倍のピッチで隣接して設けられてもよい。また、各々の着脱方向移動部32において、二つの保持部5は、所定ピッチPsで配列方向に隣接して設けられる。なお、二つの保持部5は、所定ピッチPsの2倍以上の整数倍のピッチで隣接して設けられてもよい。
【0064】
4.実施形態の交換装置1の保持動作
ここで、実施形態の交換装置1の動作のうち、幅寸法が異なる複数種類のテープフィーダ(8X、8Y、8Z)の保持方法の相違について説明する。図6は、標準的なテープフィーダ8X、および大形のテープフィーダ8Yの保持方法を模式的に示す平面図である。図6の紙面上側の着脱方向移動部32に示されるように、各々の保持部5は、それぞれ標準的なテープフィーダ8Xを保持する。
【0065】
また、図6の紙面下側に示されるように、大形のテープフィーダ8Yは、配列方向において二つの保持部(5Y、5)に対向する。それゆえ、一つの保持部5Yは、大形のテープフィーダ8Yを保持し、他の保持部5は、保持面33から突出しない初期状態を維持する。これによれば、大形のテープフィーダ8Yを保持するときに、他の保持部5が邪魔にならない。
【0066】
次に、図7は、超大形のテープフィーダ8Zの保持方法を模式的に示す平面図である。図示されるように、超大形のテープフィーダ8Zは、配列方向において二つの着脱方向移動部(32Z、32)に対向する。それゆえ、紙面上側の一つの着脱方向移動部32Zの一つの保持部5Zは、超大形のテープフィーダ8Zを保持し、他の保持部5は、保持面33から突出しない初期状態を維持する。また、紙面下側の別の着脱方向移動部32は、二つの保持部5が初期状態に維持される。かつ、別の着脱方向移動部32は、着脱方向駆動装置4によって一つの着脱方向移動部32Zよりも着脱方向の後側に維持される。通常、別の着脱方向移動部32は、着脱方向の後端位置に留まる。これによれば、超大形のテープフィーダ8Zを保持するときに、他の保持部5や別の着脱方向移動部32が邪魔にならない。上述したように、保持部5は、テープフィーダ(8X、8Y、8Z)の大きさを問わず保持することができる。
【0067】
次に、実施形態の交換装置1がテープフィーダ8を保持する保持動作について詳細に説明する。保持対象となるテープフィーダ8は、フィーダ保管装置96、部品供給部9A、および予備フィーダ保管部9Bのどこに有っても、以降の説明は共通である。まず、配列方向駆動装置20は、配列方向移動部2を保持対象となるテープフィーダ8の正面まで移動させる。次に、昇降駆動部26は、交換部3の高さをテープフィーダ8に合わせる。次に、着脱方向駆動装置4は、テープフィーダ8に正対する着脱方向移動部32を着脱方向に前進させる。着脱方向移動部32は、保持面33がテープフィーダ8の保持板8Nに当接するまで前進する。この時点で、図3に示される状態となる。
【0068】
図3に示されるように、保持部5および解除部6は、動作しない初期状態では保持面33から突出していない。このため、配列方向移動部2が配列方向にわずかに移動して着脱方向移動部32の位置を微調整する場合が生じても、テープフィーダ8を損傷するおそれがない。仮に、直接動作部材61やチャック55が保持面33から突出した状態であると、配列方向移動部2が移動する前に着脱方向移動部32を一旦後退させる必要が生じるため、動作が煩雑かつ非効率になる。
【0069】
次に、制御部79は、ステッピングモータ71を始動する。これにより、第2ギヤ76および揺動部材77は図3の時計回りに回転し始め、直接動作部材61は着脱方向への前進を開始する。直接動作部材61の中間駆動ピン64の前進に伴い、スライドプレート51も付勢されて前進を開始する。以降、スライドプレート51は、支持ピン38がスライド孔52の後縁に接する前進位置まで前進する。これにより、直接動作部材61および閉状態のチャック55が共に保持面33から突出して、保持孔8Pに入りこむ。
【0070】
スライドプレート51が前進位置で停止した後に直接動作部材61がさらに前進すると、間接駆動突起65がチャック55の接近部にさしかかる。以降、間接駆動突起65は、上下一対のチャック55の接近部を押し拡げてチャック55を開動作させる。すると、図8に示されるように、上下一対のチャック55は、屈曲部が開いた状態となって、保持板8Nの内面を把持する。図8は、保持部5および解除部6が動作した保持状態を示す着脱方向移動部32の側面図である。着脱方向移動部32は、保持部5の上下一対のチャック55を用いてテープフィーダ8を保持している。なお、保持状態においてチャック55と保持板8Nの間に多少のガタが有ってもよい。
【0071】
直接動作部材61が所定の動作ストローク長の前進を終えるとき、解除操作部63は、解除アーム8Jを前方へ押動する。これにより、ロック部8Cは、解除状態に移行する。次に、着脱方向駆動装置4は、テープフィーダ8を保持した着脱方向移動部32を後退させる。このとき、テープフィーダ8は、底面の突条88が底板313のスロット314に案内されつつスライド移動して、交換部3の内部空間に収容される。図9は、交換部3がテープフィーダ8を収容した状態を示す斜視図である。図9において、交換部3を構成するケース31が省略されている。なお、別形態として、交換部3は、底板313のスロット314を備えず、保持部5だけでテープフィーダ8を支持してもよい。
【0072】
テープフィーダ8を収容する際に、着脱方向移動部32は、テープフィーダ8を着脱方向に水平に引き出す。このときの引き出し力は、チャック55からテープフィーダ8に作用する。そして、チャック55はコネクタ8Bと同じ高さにあるので、コネクタ8Bは真っ直ぐに引き抜かれる。したがって、コネクタ8Bの破損のおそれが軽減される。同様に、上位置決めピン89および下位置決めピン8Aも、斜め方向の引き出し力が殆ど作用しないので、破損のおそれが軽減される。加えて、必要な引き出し力も小さくて済む。
【0073】
この後、交換部3は、フィーダ保管装置96、部品供給部9A、および予備フィーダ保管部9Bのいずれかの正面まで駆動される。そして、交換部3は、収容したテープフィーダ8を、いずれかのスロットに保管し、または装備することができる。テープフィーダ8の保管動作および装備動作は、上述した保持動作の概ね逆順で実施される。
【0074】
5.実施形態の交換装置1の交換動作の手順例
次に、実施形態の交換装置1が部品供給部9Aのテープフィーダ8を交換するときの交換動作の手順例について説明する。以降では、部品供給部9Aに隣接して装備されている標準的な第1テープフィーダ8X1および第3テープフィーダ8X3を、準備された第2テープフィーダ8X2および第4テープフィーダ8X4に交換するときの手順例を説明する。
【0075】
図10は、交換動作の手順例において、回収動作を開始する直前の状態を模式的に示す交換部3の平面図である。図11は、回収動作が終了した状態を模式的に示す交換部3の平面図である。図12は、装備動作を開始する直前の状態を模式的に示す交換部3の平面図である。図13は、装備動作が終了した状態を模式的に示す交換部3の平面図である。図10~13において、第2テープフィーダ8X2および第4テープフィーダ8X4は、便宜的にハッチングが付されて示される。
【0076】
交換装置1は、まず、一つの着脱方向移動部32(図10の紙面の上側)の二つの保持部5がテープフィーダ8を保持しない状態とする。交換装置1は、次に、別の着脱方向移動部32(図10の紙面の下側)の二つの保持部5が第2テープフィーダ8X2および第4テープフィーダ8X4を保持して交換部3内に収容した状態とする。その次に、配列方向駆動装置20および昇降駆動部26が動作して、交換部3の一つの着脱方向移動部32を部品供給部9Aの第1テープフィーダ8X1および第3テープフィーダ8X3に正対させる。
【0077】
次に、一つの着脱方向移動部32は、着脱方向駆動装置4に駆動されて前進する(図10の矢印M1参照)。次に、一つの着脱方向移動部32において、共通駆動部7が動作し、二つの保持部5が第1テープフィーダ8X1および第3テープフィーダ8X3を保持して、図10に示される状態となる。次に、一つの着脱方向移動部32は、着脱方向駆動装置4に駆動されて後退する(図11の矢印M2参照)。これにより、図11に示されるように、第1テープフィーダ8X1および第3テープフィーダ8X3は、回収されて交換部3内に収容される。
【0078】
次に、配列方向移動部2は、所定ピッチPsの3倍分だけ配列方向に移動する(図12の矢印M3参照)。すると、図12に示されるように、別の着脱方向移動部32は、空になったスロットに正対する。次に、別の着脱方向移動部32は、着脱方向駆動装置4に駆動されて前進し(図13の矢印M4参照)、図13に示される状態となる。次に、別の着脱方向移動部32の保持部5は、共通駆動部7の逆方向の動作にしたがって、保持を解除する。また、解除部6は、ロック部8Cをロック状態とする。これにより、第2テープフィーダ8X2および第4テープフィーダ8X4は、部品供給部9Aに装備される。この後、別の着脱方向移動部32は、着脱方向駆動装置4に駆動されて後退し、交換動作が終了する。
【0079】
なお、一つの着脱方向移動部32のどちらかの保持部5で第1テープフィーダ8X1を回収し、別の着脱方向移動部32のどちらかの保持部5で第2テープフィーダ8X2を装備する交換動作も可能である。さらには、合計で四つの保持部5を用いて、4個のテープフィーダ8Xを一緒に回収し、続いて4個のテープフィーダ8Xを一緒に装備することもできる。交換装置1は、その他にも様々な交換動作の方法を行える。
【0080】
実施形態の交換装置1は、複数の保持部5を備えるので、同時に複数のテープフィーダ(8、8X、8Y)を取り扱うことができる。これによれば、装着作業の途中で部品切れになったときの部品補給作業や、生産する基板の種類を切り替えるときの段取り替え作業などの際に、交換装置1は交換作業を効率的に行える。したがって、一つの保持部5を備える従来構成と比較して、テープフィーダ(8、8X、8Y)の交換に要する非生産時間が短縮され、部品装着装置(93、94、95)の生産時間の比率が高められて、基板の生産効率が向上する。
【0081】
6.実施形態の応用および変形
なお、交換装置1は、三つ以上の着脱方向移動部32を備えてもよい。また、着脱方向移動部32に保持部5を三つ以上設けてもよい。さらに、保持部5の数や配置ピッチが着脱方向移動部32によって異なっていてもよい。また、保持部5の配列ピッチがテープフィーダ8の配列ピッチPsの整数倍でなくてもよい。実施形態の交換装置1は、保持部5を四つ備えるが、図14図15に示されるように、保持部5を二つに減らして簡略化することも可能である。図14は、実施形態の交換装置1を簡略化した第1応用例の交換装置11を概念的に示す図である。第1応用例の交換装置11では、二つの着脱方向移動部32の各々に、保持部5が一つずつ設けられている。
【0082】
第1応用例の交換装置11は、部品供給部9Aに装備されている第1テープフィーダ8X1を、準備された第2テープフィーダに交換する場合に、一つの着脱方向移動部32が第1テープフィーダ8X1を回収し、別の着脱方向移動部32が第2テープフィーダ8X2を装備する。また、交換装置11は、2個のテープフィーダ8Xを一緒に回収したり、2個のテープフィーダ8Xを一緒に装備したりできる。さらに、大形のテープフィーダ8Yを交換する場合に、交換装置11の一つの着脱方向移動部32の保持部5が大形のテープフィーダ8Yを保持し、他の着脱方向移動部32は、着脱方向駆動装置4によって一つの着脱方向移動部32よりも着脱方向の後側に維持される。
【0083】
また、図15は、実施形態の交換装置1を簡略化した第2応用例の交換装置12を概念的に示す図である。第2応用例の交換装置12では、一つの着脱方向移動部32に、二つの保持部5が設けられている。第2応用例の交換装置12は、一つの保持部5で第1テープフィーダ8X1を回収し、別の保持部5で第2テープフィーダ8X2を装備する交換動作の他に、2個のテープフィーダ8Xを一緒に回収したり、2個のテープフィーダ8Xを一緒に装備したりできる。さらに、大形のテープフィーダ8Yを交換する場合に、交換装置12の一つの保持部5が大形のテープフィーダ8Yを保持し、他の保持部5が初期状態を維持する。
【0084】
さらに、保持部5においてテープフィーダ8を把持するチャック55に代え、テープフィーダ8を引っかけて引き出すフックや、テープフィーダ8を磁力で吸着する電磁石などを用いてもよい。また、昇降駆動部26を備えない交換装置として、部品供給部9Aとフィーダ保管装置96との間のみでテープフィーダ8を交換してもよい。さらには、テープリールTRを後側に取り出せるようにテープフィーダ8を構成して、交換装置(1、11、12)が交換要素としてテープリールTRだけを交換するようにしてもよい。本実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1、11、12:交換装置 2:配列方向移動部 20:配列方向駆動装置 26:昇降駆動部 3:交換部 32、32Y、32Z:着脱方向移動部 33:保持面 4:着脱方向駆動装置 5、5Y、5Z:保持部 51:スライドプレート 55:チャック 6:解除部 61:直接動作部材 63:解除操作部 64:中間駆動ピン 65:間接駆動突起 67:手動レバー 6A:基準位置センサ 6B:保持位置センサ 7:共通駆動部 71:ステッピングモータ 73:第1ギヤ 76:第2ギヤ 77:揺動部材 79:制御部 8:テープフィーダ 8C:ロック部 8X:標準的なテープフィーダ 8X1~8X4:第1~第4テープフィーダ 8Y:大形のテープフィーダ 8Z:超大形のテープフィーダ 9:部品装着システム 93:第1部品装着装置 94:第2部品装着装置 95:第3部品装着装置 96:フィーダ保管装置 9A:部品供給部 9B:予備フィーダ保管部 Ps:所定ピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15