(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ジルコニアゾル、及び、ジルコニアゾルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 25/02 20060101AFI20231024BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C01G25/02
C09K3/14 550D
(21)【出願番号】P 2023054629
(22)【出願日】2023-03-30
【審査請求日】2023-07-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208662
【氏名又は名称】第一稀元素化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高崎 史進
(72)【発明者】
【氏名】國貞 泰一
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-075413(JP,A)
【文献】特許第5019826(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/02
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径D
50が50nm以上250nm以下の範囲内であり、
以下の手順により得られる割合Xが
45%以上であることを特徴とするジルコニアゾル。
<手順>
孤立粒子が20個以上含まれている透過型電子顕微鏡画像を得る。
前記透過型電子顕微鏡画像中の各孤立粒子に対して、以下の1)~5)の操作を行う。
1)外接円と、その外接円と中心が同じ内接円を求める。
2)得られた外接円の直径と内接円の直径との比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]を求める。
3)前記透過型電子顕微鏡画像中のすべての孤立粒子について、前記比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]を求める。
4)比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]が2.0以上である孤立粒子Aの個数をカウントする。
5)全孤立粒子に対する前記孤立粒子Aの割合Xを求める。
(割合X(%))=[(孤立粒子Aの数)/(全孤立粒子数)]×100
【請求項2】
前記割合Xが50%以上であることを特徴とする請求項1に記載のジルコニアゾル。
【請求項3】
前記粒子径D
50が200nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のジルコニアゾル。
【請求項4】
オキシ塩化ジルコニウム水溶液にアンモニア水を滴下添加して中和させる工程A
を含み、
前記オキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度が10質量%以上であり、
前記アンモニア水の濃度が10質量%以上であり、
前記工程Aにおいて滴下するアンモニア水の液滴の容量が1.0ml以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のジルコニアゾルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニアゾル、及び、ジルコニアゾルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジルコニアゾルは、ファインセラミックスの原料粉末、精密研磨剤、化粧品、塗料用フィラー、ジルコニア薄膜などに使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、研磨砥粒としてより好適なジルコニアゾルを提供することにある。また、当該ジルコニアゾルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下を提供する。
[1] 粒子径D50が50nm以上250nm以下の範囲内であり、
以下の手順により得られる割合Xが40%以上であることを特徴とするジルコニアゾル。
<手順>
孤立粒子が20個以上含まれている透過型電子顕微鏡画像を得る。
前記透過型電子顕微鏡画像中の各孤立粒子に対して、以下の1)~5)の操作を行う。
1)外接円と、その外接円と中心が同じ内接円を求める。
2)得られた外接円の直径と内接円の直径との比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]を求める。
3)前記透過型電子顕微鏡画像中のすべての孤立粒子について、前記比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]を求める。
4)比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]が2.0以上である孤立粒子Aの個数をカウントする。
5)全孤立粒子に対する前記孤立粒子Aの割合Xを求める。
(割合X(%))=[(孤立粒子Aの数)/(全孤立粒子数)]×100
【0006】
前記比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]が2.0以上である粒子は、角張った、歪な形状の粒子といえる。前記[1]の構成によれば、前記割合Xが40%以上であり、角張った、歪な形状の粒子が一定数以上含まれている。このような粒子を有するジルコニアゾルは、研磨砥粒として有用である。
特に、前記[1]の構成によれば、粒子径D50が50nm以上250nm以下の範囲内である。つまり、前記[1]の構成によれば、粒子径D50が50nm以上250nm以下の範囲内であり、且つ、その中に角張った、歪な形状の粒子が一定数以上含まれている。粒子径D50が50nm以上250nm以下であり、且つ、歪な形状の粒子を含むジルコニアゾルは、特に、半導体などの精密研磨において、既存品よりも高レート、かつ、高平滑性(低表面粗さ)が期待できる。
【0007】
さらに、本発明は、以下を提供する。
[2] 前記割合Xが50%以上である前記[1]に記載のジルコニアゾル。
【0008】
前記割合Xが50%以上であると、研磨砥粒としてより有用である。
【0009】
さらに、本発明は、以下を提供する。
[3] 前記粒子径D50が200nm以下である前記[1]又は前記[2]に記載のジルコニアゾル。
【0010】
前記粒子径D50が200nm以下であると、研磨砥粒としてさらに有用である。
【0011】
さらに、本発明は、以下を提供する。
[4] オキシ塩化ジルコニウム水溶液にアンモニア水を滴下添加して中和させる工程A
を含み、
前記オキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度が10質量%以上(ZrO2換算値、以下同様)であり、
前記アンモニア水の濃度が10質量%以上であり、
前記工程Aにおいて滴下するアンモニア水の液滴の容量が1.0ml以下である前記[1]~[3]のいずれか1に記載のジルコニアゾルの製造方法。
【0012】
前記[4]の構成によれば、まず、中和剤としてアンモニア水を用いる。中和剤としてアンモニア水を用いるため、前記[1]のジルコニアゾル、すなわち、前記割合Xが40%以上であるジルコニアゾルを得ることができる。その理由は定かではないが、アンモニア水は、水酸化ナトリウム水溶液等の強アルカリと比較して弱いアルカリであるため、粒子となる核の生成が緩やかとなり、強アルカリを用いた場合と比較して粒径が大きく、歪な形になるのではないかと本発明者らは、推察している。
また、前記[4]の構成によれば、中和させる工程Aにおいて、特定の濃度範囲にあるオキシ塩化ジルコニウム水溶液に、液滴の容量を特定範囲に制御した特定の濃度範囲にあるアンモニア水を滴下添加する。具体的に、濃度10質量%以上のオキシ塩化ジルコニウム水溶液に、濃度10質量%以上のアンモニア水を滴下添加する。そして、この滴下添加するアンモニア水の液滴容量は1.0ml以下である。これにより、前記[1]のジルコニアゾル、すなわち、前記割合Xが40%以上であるジルコニアゾルを得ることができる。その理由は定かではないが、オキシ塩化ジルコニウム水溶液とアンモニア水が反応して水酸化ジルコニウムが生成する過程は以下(1)および(2)のようなものであると考えられる。
(1)オキシ塩化ジルコニウムとアンモニアの反応により水酸化ジルコニウムの核(化学式{Zr(OH)4}nで表現されるクラスターのようなものと推測される。)が生成し、
(2)水酸化ジルコニウムの核同士の凝集および水酸化ジルコニウムの核の粒成長が同時進行する。
この点、本発明者らは、初期オキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度、アンモニア水の濃度、及び、アンモニア水の滴下添加時の液滴容量が、核生成速度とその生成密度の決定要因であり、結果として、前記(2)における核同士の凝集および核の粒成長のバランスの制御要因となると推察している。最終的に得られるジルコニアゾルの粒子特性(粒子径および形状等)は、工程Aにおいて生成される水酸化ジルコニウムの粒子特性(粒子径および形状等)によって決定されると考えられる。
このように、前記[4]の構成によれば、中和剤としてアンモニア水を用い、オキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度を10質量%以上とし、アンモニア水の濃度を10質量%以上とし、オキシ塩化ジルコニウム水溶液にアンモニア水を滴下添加し、滴下添加時のアンモニア水の液滴の大きさを1.0ml以下に制御することで得た水酸化ジルコニウムを原料として用いることで、粒径が大きく、歪な形の粒子が多く得られる。すなわち、前記割合Xが40%以上であるジルコニアゾルを得ることができる。
一方、オキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度が10質量%未満の場合、アンモニア水の濃度が10質量%未満の場合、アンモニア水の滴下時の液滴容量が1.0mlを超える場合には、前記(2)のバランスが不適切となり、前記[1]のジルコニアゾルを得ることが困難となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、研磨砥粒としてより好適なジルコニアゾルを提供することができる。また、当該ジルコニアゾルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】透過型電子顕微鏡画像中の孤立粒子の外接円、内接円を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。なお、本明細書において、ジルコニア(酸化ジルコニウム)とは一般的なものであり、ハフニアを含めた10質量%以下の不純物金属化合物を含むものである。また、本明細書において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0016】
[ジルコニアゾル]
以下、本実施形態に係るジルコニアゾルの一例について説明する。ただし、本発明のジルコニアゾルは、以下の例示に限定されない。
【0017】
本実施形態に係るジルコニアゾルは、
粒子径D50が50nm以上250nm以下の範囲内であり、
以下の手順により得られる割合Xが40%以上である。
<手順>
孤立粒子が20個以上含まれている透過型電子顕微鏡画像を得る。
前記透過型電子顕微鏡画像中の各孤立粒子に対して、以下の1)~5)の操作を行う。
1)外接円と、その外接円と中心が同じ内接円を求める。
2)得られた外接円の直径と内接円の直径との比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]を求める。
3)前記透過型電子顕微鏡画像中のすべての孤立粒子について、前記比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]を求める。
4)比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]が2.0以上である孤立粒子Aの個数をカウントする。
5)全孤立粒子に対する前記孤立粒子Aの割合Xを求める。
(割合X(%))=[(孤立粒子Aの数)/(全孤立粒子数)]×100
【0018】
上述の通り、前記ジルコニアゾルは、粒子径D50が50nm以上250nm以下の範囲内である。
前記粒子径D50は、好ましくは200nm以下、より好ましくは180nm以下、さらに好ましくは150nm以下である。
前記粒子径D50は、好ましくは55nm以上、より好ましくは60nm以上、さらに好ましくは65nm以上である。
前記粒子径D50は、好ましくは55nm以上200nm以下、より好ましくは60nm以上180nm以下、さらに好ましくは65nm以上150nm以下である。
前記粒子径D50の測定方法は、より詳細には実施例に記載の方法による。
【0019】
前記ジルコニアゾルは、以下の手順により得られる割合Xが40%以上である。
<手順>
孤立粒子が20個以上含まれている透過型電子顕微鏡画像を得る。
前記透過型電子顕微鏡画像中の各孤立粒子に対して、以下の1)~5)の操作を行う。
1)外接円と、その外接円と中心が同じ内接円を求める。
2)得られた外接円の直径と内接円の直径との比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]を求める。
3)前記透過型電子顕微鏡画像中のすべての孤立粒子について、前記比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]を求める。
4)比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]が2.0以上である孤立粒子Aの個数をカウントする。
5)全孤立粒子に対する前記孤立粒子Aの割合Xを求める。
(割合X(%))=[(孤立粒子Aの数)/(全孤立粒子数)]×100
【0020】
前記割合Xは、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上である。
前記割合Xは、大きいほど好ましいが、例えば、99%以下、90%以下等である。
前記割合Xは、好ましくは50%以上99%以下、より好ましくは55%以上90%以下、さらに好ましくは60%以上85%以下である。
前記割合Xは、より詳細には、実施例に記載の方法により得られる値である。
【0021】
前記比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]が2.0以上である粒子は、角張った、歪な形状の粒子といえる。前記ジルコニアゾルによれば、前記割合Xが40%以上であり、角張った、歪な形状の粒子が一定数以上含まれている。このような粒子を有するジルコニアゾルは、研磨砥粒として有用である。
特に、前記ジルコニアゾルによれば、粒子径D50が50nm以上250nm以下の範囲内である。つまり、前記ジルコニアゾルによれば、粒子径D50が50nm以上250nm以下の範囲内であり、且つ、その中に角張った、歪な形状の粒子が一定数以上含まれている。粒子径D50が50nm以上250nm以下であり、且つ、歪な形状の粒子を含むジルコニアゾルは、特に、半導体などの精密研磨において、既存品よりも高レート、かつ、高平滑性(低表面粗さ)が期待できる。
【0022】
前記ジルコニアゾルの濃度は、特に限定されないが、通常、ZrO2換算で5質量%以上80質量%以下である。前記ジルコニアゾルの濃度が5質量%以上であると、他の溶媒で希釈を行う場合にジルコニア濃度が低くなることを防止できる。前記ジルコニアゾルの濃度が80質量%以下であると、ゾルの増粘が抑制され、安定性に優れる。
前記ジルコニアゾルの濃度は、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。
前記ジルコニアゾルの濃度は、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
前記ジルコニアゾルの濃度は、より好ましくは10質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上60質量%以下である。
【0023】
前記ジルコニアゾルの分散媒は、特に限定されず、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、エーテル等の親水性有機溶媒や、1種以上の前記親水性有機溶媒の混合物等が挙げられる。前記ジルコニアゾルの分散媒は、好ましくは、通常、水(純水又はイオン交換水)が用いられる。
【0024】
前記ジルコニアゾルの分散媒のpHは特に限定されないが、通常、7以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。前記ジルコニアゾルの分散媒のpHが7以下であると、ジルコニアの等電点から離れたpHとなり、安定性が向上する。
【0025】
<研磨性能>
前記ジルコニアゾルは、純水で希釈してZrO2換算で5.0質量%とした液を研磨剤とし、ソーダガラス(表面粗さRa(算術平均粗さ):0.3μm以上0.5μm以下)の研磨を行った際の研磨速度が、0.12μm/分以上であり、且つ、被研磨面の表面粗さRaが0.6nm以下であることが好ましい。
前記研磨速度が、0.12μm/分以上であり、且つ、前記被研磨面の表面粗さRaが0.6nm以下であると、短時間で、低表面粗さの研磨面を得ることができる。
【0026】
前記研磨速度は、より好ましくは0.13μm/分以上、さらに好ましくは0.14μm/分以上である。
表面粗さが一定を超えない限り研磨速度は高いほど良いが、具体的には、前記研磨速度は、より好ましくは1.0μm/分以下、さらに好ましくは0.7μm/分以下である。
前記研磨速度は、より好ましくは0.12μm/分以上1.0μm/分以下、さらに好ましくは0.13μm/分以上0.7μm/分以下である。
【0027】
前記被研磨面の表面粗さRaは、より好ましくは0.55nm以下、さらに好ましくは0.50nm以下である。
前記被研磨面の表面粗さRaは、小さいほど好ましいが、例えば、0.10nm以上、0.20nm以上等である。
前記被研磨面の表面粗さRaは、より好ましくは0.10nm以上0.55nm以下、さらに好ましくは0.20nm以上0.50nm以下である。
【0028】
本実施形態に係るジルコニアゾルは、例えば、以下のジルコニアゾルの製造方法により得ることができる。
【0029】
[ジルコニアゾルの製造方法]
以下、ジルコニアゾルの製造方法の一例について説明する。ただし、ジルコニアゾルの製造方法は、以下の例示に限定されない。
【0030】
本実施形態に係るジルコニアゾルの製造方法は、
オキシ塩化ジルコニウム水溶液にアンモニア水を滴下添加して中和させる工程A
を含み、
前記オキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度が10質量%以上であり、
前記アンモニア水の濃度が10質量%以上であり、
前記工程Aにおいて滴下するアンモニア水の液滴の容量が1.0ml以下である。
【0031】
<工程A>
まず、工程Aでは、オキシ塩化ジルコニウム水溶液にアンモニア水を滴下添加して中和させる。
【0032】
本実施形態では、オキシ塩化ジルコニウムの中和剤としてアンモニア水を用いる。
前記アンモニア水の濃度は、10質量%以上である。
前記アンモニア水の濃度は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。
前記アンモニア水の濃度は、特に上限はないが、例えば、30質量%以下、28質量%以下等である。
前記アンモニア水の濃度は、好ましくは15質量%以上30質量%以下、より好ましくは20質量%以上28質量%以下である。
【0033】
前記オキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度は、10質量%以上である。
前記オキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは18質量%以上である。
前記オキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度は、特に上限はないが、例えば、28質量%以下、25質量%以下等である。
前記オキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度は、好ましくは15質量%以上28質量%以下、より好ましくは18質量%以上25質量%以下である。
【0034】
前記工程Aにおいて滴下するアンモニア水の液滴の容量は、1.0ml以下である。
前記液滴の容量は、好ましくは0.7ml以下、より好ましくは0.5ml以下である。
前記液滴の容量は、小さいほど好ましいが、例えば、0.05ml以上、0.1ml以上等である。
前記液滴の容量は、好ましくは0.05ml以上0.7ml以下、より好ましくは0.1ml以上0.5ml以下である。
【0035】
前記工程Aにおけるアンモニア水の滴下時間は、特に限定されないが、例えば、オキシ塩化ジルコニウム水溶液1000mlにアンモニア水1000mlを滴下添加する場合、10分以上120分以下であることが好ましい。
前記滴下時間は、より好ましくは90分以下、さらに好ましくは60分以下である。
前記滴下時間は、適度に反応が進行する範囲内であれば特に限定されず、例えば、15分以上、20分以上等である。
前記滴下時間は、好ましくは15分以上90分以下、より好ましくは20分以上60分以下である。
【0036】
前記工程Aを行う前の前記オキシ塩化ジルコニウム水溶液の温度、及び、前記アンモニア水の温度は、特に限定されず、例えば、環境温度(例えば、20℃以上40℃以下の範囲内)とすればよい。また、前記工程Aを行う前の前記オキシ塩化ジルコニウム水溶液の温度、及び、前記アンモニア水の温度は、予め調整してもよい。
温度の調整を行う場合、前記工程Aを行う前の前記オキシ塩化ジルコニウム水溶液の温度、及び、前記アンモニア水の温度は、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。
温度の調整を行う場合、前記工程Aを行う前の前記オキシ塩化ジルコニウム水溶液の温度、及び、前記アンモニア水の温度の下限値は、適度に反応が進行する範囲内であれば特に限定されず、例えば、5℃以上、10℃以上等である。
温度の調整を行う場合、前記工程Aを行う前の前記オキシ塩化ジルコニウム水溶液の温度、及び、前記アンモニア水の温度は、5℃以上50℃以下が好ましく、10℃以上40℃以下がより好ましい。
【0037】
前記ジルコニアゾルの製造方法によれば、中和剤としてアンモニア水を用いるため、前記ジルコニアゾル、すなわち、前記割合Xが40%以上であるジルコニアゾルを得ることができる。
また、前記ジルコニアゾルの製造方法によれば、中和させる工程Aにおいて、濃度10質量%以上のオキシ塩化ジルコニウム水溶液に、濃度10質量%以上のアンモニア水を滴下添加し、且つ、この滴下添加するアンモニア水の液滴容量を1.0ml以下とするため、粒径が大きく、歪な形の粒子が多く得られる。すなわち、前記割合Xが40%以上であるジルコニアゾルを得ることができる。
このように、前記ジルコニアゾルの製造方法によれば、中和剤としてアンモニア水を用い、オキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度を10質量%以上とし、アンモニア水の濃度を10質量%以上とし、アンモニア水の滴下時の液滴容量を1.0ml以下とすることにより、粒径が大きく、歪な形の粒子が多く得られる。すなわち、前記割合Xが40%以上であるジルコニアゾルを得ることができる。
【0038】
前記工程Aの後、必要に応じて、攪拌を行い、均一化する。これにより水酸化ジルコニウムの沈殿物が得られる。前記攪拌の時間としては、特に限定されず、例えば、15分以上120分以下である。
【0039】
その後、必要に応じて、水酸化ジルコニウムの洗浄を行う。前記洗浄は、例えば、Cl濃度が所定濃度以下となるまで行う。前記所定濃度としては、例えば、0.01%以下が好ましい。前記洗浄方法は、特に限定されないが、例えば、水酸化ジルコニウムを濾別、イオン交換水で分散する操作を繰り返す方法が挙げられる。
【0040】
次に、解膠剤として酸を添加する。
水酸化ジルコニウムの解膠剤としては、水溶性の無機酸、有機酸であれば特に限定されず、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、りんご酸、マンデル酸等が例示されるが、塩酸、硝酸がジルコニアゾル中に過剰に存在していても、ジルコニアゾル生成後、水にて精製することで容易に除去できるという理由で、好ましい。
解膠剤の添加量としては、酸/ZrO2(モル比)=0.01以上3以下、さらに好ましくは、0.1以上1.5以下である。
酸/ZrO2(モル比)が0.01以上であると、ジルコニウム水酸化物の解膠を充分とすることができる。また、前記酸/ZrO2(モル比)が3を超えても量的効果は少ないことから、前記酸/ZrO2(モル比)が3以下であると、経済的である。
【0041】
次に、前記水酸化ジルコニウムを解膠させるために、加熱・熟成を行う。前記加熱・熟成温度は、収率の観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上である。前記加熱温度は、好ましくは110℃以下、より好ましくは105℃以下である。前記加熱温度は、好ましくは80℃以上110℃以下、より好ましくは90℃以上105℃以下である。
前記加熱・熟成時間は、収率の観点から、好ましくは24時間以上、より好ましくは48時間以上である。記加熱・熟成時間は、好ましくは120時間以下、より好ましくは100時間以下である。前記加熱・熟成時間は、好ましくは24時間以上120時間以下、より好ましくは48時間以上100時間以下である。
【0042】
その後、常温まで冷却した後、限外濾過を行い、ジルコニアゾルの濃縮を行ってもよい。
過剰に添加された酸は限外濾過を用いて、容易に除去することが可能である。
【0043】
以上、本実施形態に係るジルコニアゾルの製造方法について説明した。
【実施例】
【0044】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例におけるジルコニアゾルには、不可避不純物としてハフニウムがジルコニウムに対して1~3質量%含まれる(下記式(X)にて算出)。
<式(X)>
([酸化ハフニウムの質量]/([酸化ジルコニウムの質量]+[酸化ハフニウムの質量]))×100(%)
【0045】
以下の実施例で示される各成分の含有量の最大値、最小値は、他の成分の含有量に関係なく、本発明の好ましい最小値、好ましい最大値と考慮されるべきである。
また、以下の実施例で示される測定値の最大値、最小値は、各成分の含有量(組成)に関係なく、本発明の好ましい最小値、最大値であると考慮されるべきである。
【0046】
[ジルコニアゾルの作製]
(実施例1)
恒温槽で25℃に調整したオキシ塩化ジルコニウム水溶液(ZrO2換算で10質量%)1000gに、同じく25℃に調整したアンモニア水(10質量%)1380gを30分かけて滴下投入した。このとき、アンモニア水の液滴の容量は0.1~0.5mlの範囲となるように送液管の本数および滴下速度を調整した。その後、30分攪拌を継続して水酸化ジルコニウムの沈殿を得た。水酸化ジルコニウムを濾別し再びイオン交換水で分散する洗浄操作を繰り返し行った。前記操作は、Cl濃度が0.01%以下になるまで行った。
洗浄後の水酸化ジルコニウムの濃度はZrO2換算で31.9質量%であった。得られた水酸化ジルコニウム300gにイオン交換水299g、及び、硝酸(60質量%)39.1gを混合して、調製したスラリーを攪拌しながら還流下100℃で48時間保持し、得られたジルコニアゾル前駆体を限外濾過を用いて精製することで、実施例1に係るジルコニアゾルを得た。
【0047】
(実施例2-実施例4、比較例1)
オキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度、及び/又は、アンモニア水の濃度を表1に記載の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2-実施例4、比較例1に係るジルコニアゾルを得た。なお、表1中「ZOC」は、オキシ塩化ジルコニウムを意味する。
(比較例2-比較例3)
オキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度、及び/又は、アンモニア水の濃度、並びに、アンモニア水の液滴の容量を表1に記載の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2-比較例3に係るジルコニアゾルを得た。
【0048】
(比較例4)
アンモニア水の代わりに、15質量%の苛性ソーダ(水酸化ナトリウム水溶液)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、比較例4に係るジルコニアゾルを得た。
【0049】
(比較例5)
ZrO2換算で1質量%に純水で希釈したオキシ塩化ジルコニウム水溶液を還流下100℃で60時間保持して得たジルコニアゾル前駆体を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例5に係るジルコニアゾルを得た。
【0050】
[粒子径D50の測定]
実施例、比較例のジルコニアゾルをイオン交換水で、ZrO2換算で0.1質量%に希釈し、装置(動的光散乱法粒子径分布測定装置(「ゼータサイザーナノZS」Malvern Panalytical製))に投入して、ジルコニアゾルの粒子径D50を測定した。結果を表1に示す。
<測定条件>
測定温度:25℃
散乱角度:173°
分散質:ZrO2
分散媒:水
セル:純正ディスポセル
【0051】
[粒子形状の測定]
まず、実施例、比較例のジルコニアゾルのTEM画像(透過型電子顕微鏡画像)を得た。TEM画像の撮像には、透過型電子顕微鏡(日立製作所製、製品名:HV-8100)を用い、1視野のサイズを1.15μm×0.90μmとした。
次に、目視により、孤立粒子の数をカウントした。具体的には、粒子に外接する外接円の直径が50nm以上の粒子の数をカウントした。粒子に外接する外接円が複数存在する場合は、外接円の直径と、その外接円と中心が同じ内接円(同心内接円)の直径との比(下記「2)」を参照)が最小となる方を採用することとした。なお、粒子に外接する外接円の直径が50nm未満の粒子をカウント対象としなかったのは、当該粒子は、研磨剤としての効果が低いためである。
孤立粒子の数が20個以上ある場合は、当該TEM画像を評価対象の画像とした。孤立粒子の数が20個未満である場合は、別視野のTEM画像を撮像し、孤立粒子が20個以上あるTEM画像が得られるまで繰り返した。
得られたTEM画像中の各孤立粒子(カウント対象とした孤立粒子)に対して、以下の操作を行った。
1)まず、粒子の外接円と、その外接円と中心が同じ内接円(同心内接円)を求めた(
図1参照)。なお、外接円、内接円の定義は、JIS B 7451:1997の真円度MCC法と同一である。
2)次に、得られた外接円の直径と内接円の直径との比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]を求めた。
3)TEM画像中のすべての孤立粒子(カウント対象としたすべての孤立粒子)について、比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]を求めた。
4)比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]が2.0以上である孤立粒子(以下、「孤立粒子A」ともいう)の個数をカウントした。
5)全孤立粒子(カウント対象とした全孤立粒子)に対する孤立粒子Aの存在割合(以下、「割合X」ともいう)を求めた。
(割合X(%))=[(孤立粒子Aの数)/(全孤立粒子数)]×100
結果を表1に示す。
【0052】
[研磨性能評価]
実施例、比較例のジルコニアゾルを純水で希釈してZrO2換算で5.0質量%とした液を研磨剤とし、ソーダガラス(Ra:0.3~0.5μm)の研磨を行い、研磨速度、被研磨面の表面粗さRaを測定した。
研磨条件は以下の通りとした。
基板(研磨対象物):ソーダガラス(表面粗さRa(算術平均粗さ):0.3μm以上0.5μm以下)
研磨装置:片面研磨装置(ENGIS社製 EJ-380N)
研磨パッド:スウェード型パッド
研磨荷重:100g/cm2(9.8kPa)
定盤の回転速度:80rpm(線速度:9.5m/分)
研磨時間:15分
研磨用組成物の供給速度:10mL/分
研磨対象物の測定面積:0.143×0.107mm(表面粗さ)
ピッチ:0.164μm
【0053】
研磨速度の測定方法は、研磨前後の基板の重量を測定し、その差から算出した。
研磨対象物の研磨後の被研磨面の表面粗さ(算術平均粗さ(Ra)は、AMETEC社製の非接触式3D形状測定/表面粗さ測定機『NewView5032』を使用して、視野角が0.143×0.107mmとなる条件で測定した。結果を表1に示す。
【0054】
【要約】
【課題】 研磨砥粒としてより好適なジルコニアゾルを提供すること。
【解決手段】 粒子径D
50が50nm以上250nm以下であり、以下の手順により得られる割合Xが40%以上であるジルコニアゾル。<手順>孤立粒子が20個以上含まれている透過型電子顕微鏡画像を得る。前記透過型電子顕微鏡画像中の各孤立粒子に対して、以下の1)~5)の操作を行う。1)外接円と、その外接円と中心が同じ内接円を求める。2)得られた外接円の直径と内接円の直径との比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]を求める。3)透過型電子顕微鏡画像中のすべての孤立粒子について、前記比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]を求める。4)比[(外接円の直径)/(内接円の直径)]が2.0以上である孤立粒子Aの個数をカウントする。5)全孤立粒子に対する孤立粒子Aの割合Xを求める。
【選択図】
図1