(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】間仕切り装置
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20231025BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20231025BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20231025BHJP
E04B 2/72 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
E04B2/74 551G
E04B1/82 T
E04B1/86 Q
E04B2/72 A
(21)【出願番号】P 2019140682
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000105693
【氏名又は名称】コマニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】角井 誠
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】多田 優樹
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-214753(JP,A)
【文献】特開2010-242298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/72-2/82
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に間隔を空けて配置される少なくとも2枚の透明性を有するパネルと、前記パネルの上端を支持する上桟及び天井レールと、前記パネルの下端を支持する下桟及び床レールと、前後の前記パネルと前記上桟と前記下桟とによって前後及び上下を区画されて成る空間部とを備える間仕切り装置において、
前記上桟及び/又は前記下桟に取り付けられてその内部に吸音材を格納する格納部を備えており、
前記格納部は前記上桟及び/又は前記下桟とは別体に設けられるものであり、
前記格納部の前後の側面
と前記上桟及び/又は前記下桟との間に空隙から成る振動導入路を備え
ており、
前記振動導入路は前記空間部と連続して繋がっていることを特徴とする間仕切り装置。
【請求項2】
前記格納部のうち前記空間部と接する面に複数の貫通穴を備えることを特徴とする請求項1に記載の間仕切り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸音性能に優れた間仕切り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空間を適当な広さに仕切るための間仕切り装置には吸音性能が求められることがある。例えば特許文献1にはパネルの表面材に複数の穴を設け、表面材の裏側に吸音材を貼り付けた間仕切り装置が開示されている。
しかし、パネルの素材として透明なガラスや樹脂等を用いる場合、内部の吸音材が外部から見えると透光性・意匠性が低下するという問題がある。
そこで、特許文献2には前後をガラス板で挟まれた中央空間部と、床レールの周囲の周辺空間部とを区画する区画板を備えており、区画板に複数の貫通穴を形成すると共に周辺空間部に吸音材を充填したダブルガラスパネル装置が開示されている。この装置の場合、外部で発生した音によりガラス板が振動して空気の疎密波(振動)が生じる。この振動は中央空間部から区画板の貫通孔を通過して周辺空間部内の吸音材に対して垂直方向から入射し、吸収される。また、中央空間部には吸音材が存在しないので透光性・意匠性は維持される。なお、同様の技術は特許文献3にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-35524号公報
【文献】特開2017-214753号公報
【文献】実開昭56-089878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献2及び3に開示された技術ではいずれも空気の振動は区画板の貫通孔を通過して吸音材に対して垂直に入射するものであるが、吸音性能は必ずしも充分とは言えず、より高い吸音性能を持つ間仕切り装置が求められている。
【0005】
本発明はこのような問題を考慮して、吸音性能に優れた間仕切り装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の間仕切り装置は、前後に間隔を空けて配置される少なくとも2枚の透明性を有するパネルと、前記パネルの上端を支持する上桟及び天井レールと、前記パネルの下端を支持する下桟及び床レールと、前後の前記パネルと前記上桟と前記下桟とによって前後及び上下を区画されて成る空間部とを備える間仕切り装置において、前記上桟及び/又は前記下桟に取り付けられてその内部に吸音材を格納する格納部を備えており、前記格納部は前記上桟及び/又は前記下桟とは別体に設けられるものであり、前記格納部の前後の側面と前記上桟及び/又は前記下桟との間に空隙から成る振動導入路を備えており、
前記振動導入路は前記空間部と連続して繋がっていることを特徴とする。
また、前記格納部のうち前記空間部と接する面に複数の貫通穴を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では空間部内の空気の振動の一部は振動導入路を通って格納部の側面に至る。これにより格納部の側面が振動し、この振動の影響を受けて格納部内の空気が振動し、吸音材により吸収される。このように空気の振動が垂直方向(上下方向)から吸音材に至るだけでなく、水平方向(前後方向)からも吸音材に至るので吸音性能をより高めることができる。
格納部のうち空間部と接する面は大面積となるので、この面に貫通穴を開けることにすれば空間部内の空気の振動を効率よく格納部内に導くことができるので吸音性能をより高めることができる。
また、振動導入路を空間部から連続させることにより空間部内の空気の振動を速やかに格納部の側面まで伝達させることができるので吸音性能をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態の間仕切り装置を左右方向に並べた状態の側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施の形態]
本発明の間仕切り装置の第1の実施の形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、間仕切り装置10はパネル20、上桟30、天井レール40、下桟50、床レール60、空間部70、格納部80、吸音材90、振動導入路100等から概略構成される。
パネル20は矩形状の板体であり、透明性を有している。パネル20の素材としては透明性を有するガラス、ポリカーボネートやアクリル等の樹脂等が挙げられるが特にこれらに限定されない。また、本明細書において「透明」には半透明も含まれるものとする。
本実施の形態では前後に間隔を空けて2枚のパネル20を配置しているが、これに限らず前側と後ろ側に各2枚(計4枚)のパネル20を配置してもよい。
【0010】
上桟30、天井レール40、下桟50及び床レール60でパネル20の上端及び下端を支持している。パネル20の支持構造は周知であるため詳細な説明は省略するが、天井面1に天井レール40を天井用アジャスター部材110を介してネジ41で固定し、上桟30は天井用アジャスター金具111を介してネジ固定する。そして、上桟30の前後のパネル嵌合用凹部31に前後のパネル20の上端を嵌め込んでいる。また、床面2に床レール60をネジ61で固定し、下桟50は床用アジャスター部材112を介してネジ固定する。そして、下桟50の前後のパネル嵌合用凹部51に前後のパネル20の下端を嵌め込んでいる。パネル20の左右の端部はスタッド3に接合された縦桟に嵌合しているが、パネル20の左右の端面同士を突き合せた状態で粘着テープ等で連結し、パネル20の連結枚数を増減させることもできる。
空間部70は前後のパネル20と上桟30と下桟50とによって前後及び上下を区画されて成る。前後のパネル20が透明性を有するので一方のパネル20の外部から空間部70を視認できる。
【0011】
格納部80はその内部に吸音材90を格納するための筐体であり、空間部70の上側と下側に取り付けられる。上側の格納部80はボルト42によって上桟30と共締めされ、下側の格納部80はボルト62によって下桟50と共締めされる。なお、格納部80を空間部70の上側と下側のいずれか一方のみに取り付けることにしてもよい。本実施の形態では床レール60の内部にも吸音材90を充填している。
吸音材90とは音のエネルギーを熱エネルギーに変える性質を持つ材料を指す。本発明の吸音材90としては特に限定されず、グラスウール、ウレタンスポンジその他吸音機能を有する素材、ハニカム構造等の吸音機能を有する構造を備える素材であればよい。
格納部80のうち空間部70と接する面に蓋81を備えている。蓋81を開けた状態で内部に吸音材90を充填し、その後蓋81を閉めることで吸音材90を格納部80に格納する。
本実施の形態では蓋81に複数の貫通穴82を設けてある。貫通穴82を設けることで空間部70内の空気の振動が貫通穴82を通って格納部80の内部に侵入し易くなるので吸音材90による吸音効果を高めることができる。
径を変えた複数種類の貫通穴82(例えば大径、中径及び小径の3種類の穴)を蓋81に設けてもよい。この場合、各貫通穴82の配列は特に限定されず、径が異なる貫通穴82をランダムに配置したり、同一径の貫通穴82を同一直線上に配置したりすればよい。一般的には径が大きくなると吸音率のピーク周波数は高くなる。また同じ径でも数が増えると吸音するピーク周波数が高くなると同時に吸音率も高くなることが知られている。大小異なる径の複数種類の貫通穴を設けることで広範囲な周波数帯域(300Hz~2,000Hz)で吸音できるようになる。
振動導入路100は格納部80の前後の側面83に形成される空隙である。振動導入路100は空間部70から連続するように、つまり振動導入路100と空間部70とが繋がるように形成するのが好ましい。
【0012】
次に本発明の間仕切り装置10が有する吸音機能について説明する。
パネル20の外部で生じた音(空気の振動)の影響を受けてパネル20が振動し、空間部70内の空気が振動する。
図3の矢印Aに示すように空間部70内の空気の振動の一部は上下の格納部80の蓋81に設けた貫通穴82を通って吸音材90により吸収され、他の一部は振動導入路100を通って格納部80の側面83に至る。これにより格納部80の側面83が振動し、この振動の影響を受けて格納部80内の空気が振動し、吸音材90により吸収される。
本発明では空間部70内の空気の振動を貫通穴82を通過させて吸音材90で吸収するだけでなく、振動導入路100を利用して格納部80の側面83を振動させることによっても吸収する。空気の振動が垂直方向(上下方向)から吸音材90に至るだけでなく、水平方向(前後方向)からも吸音材90に至ることになるので、吸音性能をより高めることができる。
なお、格納部80の側面83にも貫通穴82を開けることにすればより吸音性能を更に高めることができる。また、上側の格納部80の蓋81に貫通穴82を開けると内部の吸音材90の小片が貫通穴82を通過して空間部70に出てしまい、空間部70の見た目が悪化するおそれがあるので、上側の格納部80の蓋81には貫通穴82を開けないことにしてもよい。
【0013】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の間仕切り装置の第2の実施の形態について説明するが、上記第1の実施の形態と同様の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図4に示すように、本実施の形態の間仕切り装置11は蓋81の前後の端部が屈曲している。当該屈曲箇所84はビード113に接触しておらず、振動導入路100が空間部70から連続する構造になっている。実験の結果、本実施の形態の間仕切り装置11であっても、格納部80の前後の側面83に振動導入路100を設けることによって従来の間仕切り装置10と比較して高い吸音性能を有することを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、吸音性能に優れた間仕切り装置に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0015】
A 空気の振動(疎密波)の移動方向を示す矢印
1 天井面
2 床面
3 スタッド
10 間仕切り装置
11 間仕切り装置
20 パネル
30 上桟
31 パネル嵌合用凹部
40 天井レール
41 ネジ
42 ボルト
50 下桟
51 パネル嵌合用凹部
60 床レール
61 ネジ
62 ボルト
70 空間部
80 格納部
81 蓋
82 貫通穴
83 側面
84 屈曲箇所
90 吸音材
100 振動導入路
110 天井用アジャスター部材
111 天井用アジャスター金具
112 床用アジャスター部材
113 ビード