(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】コンクリート床版およびコンクリート床版連結構造体
(51)【国際特許分類】
E01C 5/10 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
E01C5/10
(21)【出願番号】P 2019045750
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】592179067
【氏名又は名称】株式会社ガイアート
(73)【特許権者】
【識別番号】596118530
【氏名又は名称】テクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【氏名又は名称】畠山 順一
(74)【代理人】
【識別番号】230116296
【氏名又は名称】薄葉 健司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 登
(72)【発明者】
【氏名】森田 栄治
(72)【発明者】
【氏名】西川 寧
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-214694(JP,A)
【文献】特開2004-324140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手を介して連結可能であり、緊張材が配設されプレストレスが導入されたコンクリート床版であって、
前記コンクリート床版端部には複数の金具が設けられ、
前記金具は、
前記継手の一部が挿入される平面開口部と、
前記隣合うコンクリート床版の金具と対向する対向面部と、
前記対向面部に設けられるスリットと、
前記緊張材が定着する定着面部と
を有することにより、
前記緊張材を定着するための定着具機能と、
隣合うコンクリート床版と連結する継手を受ける継手受具機能と
を有し、
前記定着面部は、前記隣合うコンクリート床版の金具と対向する側と反対側にて、前記対向面部に設けられたスリットと対向するように形成さ
れ、
前記緊張材は、前記コンクリート床版の両端の金具の間に配設される
コンクリート床版。
【請求項2】
継手を介して連結可能であり、緊張材が配設されプレストレスが導入されたコンクリート床版であって、
前記コンクリート床版端部には複数の金具が設けられ、
前記金具は、
前記継手の一部が挿入される平面開口部と、
前記隣合うコンクリート床版の金具と対向する対向面部と、
前記対向面部に設けられるスリットと、
前記緊張材が定着する定着面部と
を有することにより、
前記緊張材を定着するための定着具機能と、
隣合うコンクリート床版と連結する継手を受ける継手受具機能と
を有し、
前記定着面部は、前記隣合うコンクリート床版の金具と対向する側と反対側にて、両側に張り出して形成さ
れ、
前記緊張材は、前記コンクリート床版の両端の金具の間に配設される
コンクリート床版。
【請求項3】
継手を介して連結可能であり、緊張材が配設されプレストレスが導入されたコンクリート床版であって、
前記コンクリート床版端部には複数の金具が設けられ、
前記金具は、
前記継手の一部が挿入される平面開口部と、
前記隣合うコンクリート床版の金具と対向する対向面部と、
前記対向面部に設けられるスリットと、
前記緊張材が定着する定着面部と
を有することにより、
前記緊張材を定着するための定着具機能と、
隣合うコンクリート床版と連結する継手を受ける継手受具機能と
を有し、
前記定着面部は、前記対向面部の両側に張り出して形成さ
れ、
前記緊張材は、前記コンクリート床版の両端の金具の間に配設される
コンクリート床版。
【請求項4】
前記緊張材は、床版長手方向および床版短手方向に配設され、プレストレスが導入されている
請求項1~3何れか記載のコンクリート床版。
【請求項5】
前記継手はコッター式継手である
請求項1~4何れか記載のコンクリート床版。
【請求項6】
前記継手を介して複数の請求項1~5何れか記載のコンクリート床版が連結されて形成される
コンクリート床版連結構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート床版および複数のコンクリート床版からなるコンクリート床版連結構造体に関し、特に継手による連結機構を有するコンクリート床版に関する。
【背景技術】
【0002】
舗装にはアスファルト舗装とコンクリート舗装がある。空港や港湾の舗装、道路のうち交差点の舗装など耐久性が求められる場合、コンクリート舗装が用いられる。コンクリート舗装には、現場打ちコンクリートによるものとコンクリート床版を敷設するものとがある。コンクリート床版は工場にて製作可能である。急速施工や品質保持の観点では、コンクリート床版が有利である。
【0003】
コンクリート床版に荷重が作用すると、コンクリートに引張応力が作用し、クラック発生の原因となる。これに対し緊張材が配設されたコンクリート床版では、プレストレスを導入することによりクラック発生を抑制できる(特許文献1)。その結果、コンクリート床版の鉄筋量を減らしたり、コンクリート床版を薄くしたりできる。なお、緊張材を定着するために、定着具機能が必要である。
【0004】
ところで、コンクリート床版による舗装では、コンクリート床版同士の連結箇所に課題が発生することが多い。例えば、目地が開き目地から水が路盤へ浸透し、路盤が大量の水を含んだ状態で、大きな荷重が繰り返し作用すると、ポンピング現象により、路盤の細粒分が流出し、舗装下に空洞が生じる。コンクリート床版は支持力を失い、破損の原因となる。また、目地付近におけるコンクリート床版の微小変形が騒音の一因となるおそれもある。
【0005】
これに対し、特殊な継手により、コンクリート床版同士を連結する技術が提案されている(特許文献2)。例えば、コッター式継手では、継手側面および受け金具内壁面にテーパを設け、継手を受け金具に挿入し固定することにより、連結箇所にプレストレスが導入される。この結果、コンクリート床版同士は確実に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-224633号公報
【文献】特開2001-214694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記プレストレスが導入されたコンクリート床版自体は優れた機能を有するものの、連結箇所(いわゆる目地)にて課題が発生する可能性がある。つまり、一枚の連結構造体ではない。上記プレストレスが導入されたコンクリート床版にコッター式継手等の連結機能を付加すれば、一枚の連結構造体となるものと思われる。
【0008】
しかしながら、コンクリート床版にて定着具機能と連結機能(継手受具機能)とを両立させようとすると、構成が複雑になる。
【0009】
本発明は上記課題を解決するものであり、プレストレスが導入されたコンクリート床版であって、簡素な構成により一枚の連結構造体を形成できるコンクリート床版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、緊張材が配設されプレストレスが導入されたコンクリート床版である。前記コンクリート床版端部には複数の金具が設けられ、前記金具は、前記緊張材を定着するための定着具機能と、隣合うコンクリート床版と連結する継手を受ける継手受具機能とを有する。
【0011】
これにより、連結により一枚の連結構造体を形成できる。共通金具により部材数を減らすことができる。すなわち構成が簡素である。
【0012】
また、緊張材を従来金具において必須であったアンカーの代わりに利用できる。これにより、ひび割れ抑制、経済性向上を図ることができる。
【0013】
上記発明において好ましくは、前記金具は、前記継手の一部が挿入される平面開口部と、前記隣合うコンクリート床版の金具と対向する対向面部と、前記対向面に設けられるスリットと、前記緊張材が定着する定着面部とを有する。
【0014】
対向する金具に、スリットを介して継手が挿入されることにより連結機構が形成される。つまり、金具は継手受具機能を有する。緊張材が定着面部に定着し、プレストレスが導入される。つまり、金具は定着具機能を有する。
【0015】
上記発明において好ましくは、前記定着面部は、前記隣合うコンクリート床版の金具と対向する側と反対側にて、前記対向面部と対向するように形成される。
【0016】
上記発明において好ましくは、前記定着面部は、前記隣合うコンクリート床版の金具と対向する側と反対側にて、両側に張り出して形成される。
【0017】
上記発明において好ましくは、前記定着面部は、前記対向面部の両側に張り出して形成される。
【0018】
いずれの定着面部も緊張材が定着し、プレストレスが導入される。
【0019】
上記発明において好ましくは、前記緊張材は、床版長手方向および床版短手方向に配設され、プレストレスが導入されている。
【0020】
プレストレス導入は全て工場にて行う。施工現場での連結は連結機構によって行われる。これにより、施工性や補修容易性が向上する。
【0021】
上記発明において好ましくは、前記継手はコッター式継手である。
【0022】
これにより、連結機構にもプレストレスが導入される。
【0023】
上記課題を解決する本発明は、前記継手を介して複数の上記コンクリート床版が連結されて形成されるコンクリート床版連結構造体である。
【0024】
連結構造体は一枚の大きな剛性平板して機能する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のコンクリート床版はプレストレスが導入されたコンクリート床版である。簡素な構成により連結により一枚の連結構造体を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図10】コンクリート床版における緊張材のプレストレス導入についての説明図
【
図11】床版中央に荷重が作用した場合の動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
~コンクリート床版および連結構造体~
図1はコンクリート床版1の概略斜視図である。コンクリート床版1は、例えば、横幅が約1750ミリ、縦幅が5000ミリ、厚さ180ミリの平板である。自動車等の通行を可能にする一般道路に適用できるように、20~60N(ニュートン)/cm2の強度を有する。剛性を高めるため、鉄筋が挿入されている。さらに緊張材2を介してプレストレスが導入されている。
【0028】
コンクリート床版1の端部(四辺)には、複数の金具3が設けられている。図示の例では、長辺方向3カ所、短辺方向2カ所、合計10箇所において金具3が埋設されている。
【0029】
図2Aはコンクリート床版1の概略斜視図である。
図2Bは、コンクリート床版1の配筋図である。図示の例は空港の駐機場、誘導路といった、比較的広い場所に用いられる。例えば、横幅が約2400ミリ、縦幅が15000ミリ、厚さ240ミリの平板である。緊張材2と鉄筋が配置されている。緊張材2には金具3,3の間にてプレストレスが導入されている。
【0030】
図3は連結構造体10の概略平面図である。路盤を設け、路盤上に、所定幅の目地間隔を保ちながら、複数枚のコンクリート床版1を平面状に敷き並べる。コンクリート舗装版1,1が配設された状態にて、金具3,3が対向する。金具3,3と継手4とは連結機構5を構成する。
【0031】
連結機構5を介して、隣り合うコンクリート床版1、1同士が確実かつ強固に連結され、連結構造体10が形成される。連結構造体10は一枚の大きな剛性平板として機能する。
【0032】
~金具および連結機構~
本願金具3は、定着具機能と継手受具機能とを有することを特徴とする。
【0033】
図4は金具3を示す概略斜視図である。図示の例では、金具3は略直方体状であり、平面開口部31と、4つの側面部32~35と、底面部36とを有する。
【0034】
側面部(対向面部)32は、連結対象のコンクリート床版金具と対向する。側面部33は、連結対象のコンクリート床版金具と対向する側と反対側にて、側面部32と対向する。側面部34,35は、側面部32,33の対向方向と直交方向にて、互いに対向する。
【0035】
側面部32~35は底面部36の各辺から立設され、側面部32~35の上縁に囲まれる範囲は平面開口部31を形成する。
【0036】
側面部32には図示上下方向に平面開口部31に連続するスリット37が設けられる。側面部(定着面部)33には緊張材2が定着する。底面部36にはボルト穴38が設けられている。
【0037】
図5は金具3の定着具機能を示す断面図である。定着面部33には孔が設けられ、緊張材2は当該孔を挿通する。緊張材2端部には定着具21が設けられ、プレストレス導入により定着具21は定着面部33に係止する。これにより、プレストレスが維持される。
【0038】
図5Aの例では緊張材2は撚線であり定着具21は楔式である。
図5Bの例では緊張材2は鋼棒であり定着具21は定着ナットである。緊張材2は一般に鋼材が用いられるが、FRP等代替品を用いてもよい。
【0039】
【0040】
図6Aは継手4の概略斜視図である。継手4は平面視ダンベル形状を有する。すなわち二つの端部41,41と二つの端部41,41を連結する連結部42を有する。端部41,41の中央には孔が設けられ、ボルト43,43は当該孔を挿通する。
【0041】
図6Bは連結機構5の概略斜視図である。
図7Aは連結機構5の概略平面図である。
図7Bは連結機構5の概略断面図である。
【0042】
2つの金具3,3は、目地および対向面部32,32を介して対向している。一の継手端部41が一の金具3の平面開口部31に挿入されるとともに、他の継手端部41が他の金具3の平面開口部31に挿入される。スリット37,37に相当する空間には継手連結部42が挿入される。継手端部41,41は対向面部32,32に係止される。
【0043】
ボルト43,43はボルト穴38,38に螺合される。これにより、継手4は金具3,3内に固定され、連結機構5が形成される。すなわち、金具3は継手受具機能を有する。
【0044】
さらに、金具3,3上面開口には蓋を装着して連結機構5を被蔽する。
【0045】
金具3,3の間には適切な間隔で目地が設けられている。グラウト注入により目地を形成してもよいし、樹脂製の目地材を介挿してもよい。
【0046】
~コッター式継手~
継手をコッター式継手としてもよい。
図8および
図9は連結機構5の変形例である。
図8Aはコッター式継手4の概略斜視図である。
図8Bは連結機構5の概略斜視図である。
【0047】
コッター式継手4は、二つの端部41,41に上から下に向かう方向に互いに離れるようなテーパ44,44が形成されている。テーパ44,44は雌の楔状を形成する。金具3,3の側面部32,32内壁にも、上から下に向かう方向に互いに離れるようなテーパ39,39が設けられている。テーパ39,39は雄の楔状を形成する。テーパ44,44による雌の楔状とテーパ39,39による雄の楔状とが対応している。
【0048】
図9Aはコッター式継手4挿入前の状態を示し、
図9Bはコッター式継手4挿入およびボルトによる螺合後の状態を示す。
【0049】
コッター式継手4を金具3,3に挿入すると、テーパ39,39による雄の楔状がテーパ44,44による雌の楔状に食い込む。これにより金具3,3間には互いに引き合うようなプレストレスが導入される。ボルト43,43がボルト穴38,38に螺合されているため、楔が抜けることはない。強固な連結機構5が形成される。
【0050】
~緊張材プレストレス導入~
図10は、コンクリート床版1における緊張材2のプレストレス導入について説明する図である。
【0051】
図10Aは、
図5Aの例に対応する。側面部32に反力をとり緊張用ジャッキを設置する。撚線2はスリット37を挿通している。緊張用ジャッキにより撚線2を引っ張り、所定のプレストレスを導入する。楔式定着具21を定着面部33に係止させ、プレストレスを維持しつつ余分な撚線を切断除去する。
【0052】
図10Bは、
図5Bの例に対応する。平面開口部31から締具を挿入し、ナット21を回転させる。ナットの回転に伴い鋼棒2を引っ張ることで、所定のプレストレスを導入する。ナット21は定着面部33に係止している。
【0053】
~連結構造体動作~
連結構造体10に大きな荷重(例えば航空機の車輪が通過)が作用する場合の連結構造体10の動作について説明する。
【0054】
図11は、床版中央に荷重が作用した場合の動作説明図である(動作1)。床版中央に荷重が作用すると、床版中央は下に沈もうとし、床版端部は上に浮こうとする。その結果、コンクリート床版1には曲げモーメントが発生する。床版端部の変動により目地上側が開こうとする。
【0055】
これに対し、緊張材2およびコンクリート床版1に導入されているプレストレスが曲げモーメント発生に対抗する。コンクリート床版1の変形が抑制されている。
【0056】
また、連結機構5を介して隣接するコンクリート床版1が、床版端部の変動に対抗する。その結果、目地の開きを抑制する。連結機構5にコッター式継手を用いるとより確実に目地の開きを抑制する。
【0057】
なお、床版中央に作用する荷重は路盤に伝達され、路盤が対抗する。
【0058】
図12は、目地に荷重が作用した場合の動作説明図である(動作2)。目地に荷重が作用すると、床版端部は下に沈もうとし、その結果、目地下側が開こうとする。
【0059】
これに対し、連結機構5が、床版端部の変動に対抗する。その結果、目地の開きを抑制する。連結機構5にコッター式継手を用いるとより確実に目地の開きを抑制する。このとき、緊張材2および緊張材2に導入されているプレストレスは反力を受ける。
【0060】
なお、目地に作用する荷重は路盤に伝達され、路盤が対抗する。
【0061】
~効果~
以下、本願実施形態のコンクリート床版1および連結構造体10に係る効果について説明する。
【0062】
・効果1
従来のプレストレスが導入されたコンクリート床版においても床版自体は高性能であったが、床版同士をタイバーで連結するため、目地に係る課題があった。
【0063】
これに対し、本願実施形態の連結構造体10の動作で述べたとおり、目地に係る課題が発生しない。連結構造体10は一枚の剛性平板として機能している。その結果、1枚のコンクリート床版1に荷重が作用する場合でも、他のコンクリート床版に分散させ、応力集中を防止できる。
【0064】
また、金具3は、定着具機能と継手受具機能とを有することにより、構成および施工手間が簡素である。
・効果2
従来のプレストレスが導入されたコンクリート床版に従来技術の連結機構を設けることにより、本願実施形態のコンクリート床版1および連結構造体10に一見近似するようにも見える。ところで、従来技術の連結機構では、反力を受けるためのアンカーが必須である。
【0065】
図13は、従来のプレストレスが導入されたコンクリート床版に従来技術の連結機構を設けた比較例の概略構成図および動作説明図である。
【0066】
連結機構に力が作用するとき、その反力はアンカーを介してコンクリートに伝達される。このとき、アンカーにおいて応力集中が発生し、アンカー相当位置のコンクリート表面にひび割れが発生しやすくなる。
【0067】
なお、アンカーを極端に長くすることにより、ひび割れを抑制できる可能性があるが、極端に長いアンカーを配置することは、施工手間となり、施工実務の常識に反する。
【0068】
これに対し、本願実施形態の金具3が定着具機能と継手受具機能とを有することにより、緊張材2をアンカーとして利用できる。緊張材2はコンクリート床版1端部から他端部まで配設されている。したがって、反力が緊張材2を介してコンクリートに伝達されるとき、応力集中が発生しない。すなわち、ひび割れを抑制できる。さらに、プレストレスによるひび割れ抑制効果も期待できる。
・効果3
効果2において述べたとおり、本願実施形態では、緊張材2をアンカーとして利用できる。すなわち、金具3にアンカーは不要となる。
【0069】
ところで、従来技術の連結機構の受金具では、反力を受けるためのアンカーが必須である。
図14は、従来技術に基づく比較例に係る受け金具の概略構成図である。
【0070】
図14に例示する受け金具を、金具本体とアンカーを一体成型により製造しようとすると、鋳造によるのが一般的である。しかしながら、金型が大型化するともに、鋳造装置も大型化する。その結果、不経済となる。
【0071】
図14に例示する受け金具において、金具本体とアンカーとを別々に製造すると、接合工程が増えて不経済となる。また、接合箇所の強度の確認が必要となる。
【0072】
これに対し、本願実施形態の金具3においてアンカーは不要である。これにより、製造装置の小型化、工程の簡素化が図れ、経済的である。
【0073】
効果1~3において述べたように、金具3が定着具機能と継手受具機能とを有することは、共通金具により部材数を減らすことはもちろん、それ以上の効果が得られる。
【0074】
次に、施工および補修の観点から、本願実施形態の効果について説明する。
【0075】
・効果4
従来のプレストレスが導入されたコンクリート床版においても床版自体は高性能であったが、目地に係る課題があった。この課題を解決して、複数のコンクリート床版からなる連結構造体を一枚の剛性平板として機能させるためには、複数のコンクリート床版を配設した後に、更に緊張材を介してコンクリート床版同士を連結させていた。たとえば、一方向のプレストレス導入のみを工場で行い、他方向のプレストレス導入を施工現場で行う。しかしながら、この施工方法ではコンクリート床版を工場で製作するメリットを充分に得られない。
【0076】
本実施形態のコンクリート床版1では、緊張材2が床版長手方向および床版短手方向に配設され、ともにプレストレスが導入されていてもよい。プレストレス導入は工場にて行われるため、施工性が高い。
【0077】
本実施形態の連結構造体10においては、コンクリート床版同士の連結は、連結機構5によって行われる。連結機構5による連結は、継手4を金具3,3内に挿入し固定する作業のみであるため、施工性が高い。すなわち、施工現場での緊張作業が不要である。
【0078】
・効果5
図15は連結構造体10補修の施工例を示す図である。
【0079】
効果4において対比のため説明した従来工法では、緊張材を介して複数のコンクリート床版が連結されているため、1枚のコンクリート床版を交換しようとするとき、緊張材による連結を解除する必要があった。すなわち、1枚のみのコンクリート床版の交換が難しかった。
【0080】
本実施形態の連結構造体10においては、コンクリート床版同士の連結は、連結機構5によって行われる。連結機構5による連結解除は、継手4の固定を解除し、継手4を金具3,3外に抜き取る作業のみである。すなわち、1枚のみのコンクリート床版の交換が容易である。
【0081】
部分的に破損した場合、1枚のコンクリート床版を交換することにより、連結構造体10を補修できる。
【0082】
~変形例~
本願発明は、上記実施形態に限定されず、発明の技術思想の範囲で、種々の変形が可能である。
【0083】
図16Aは変形例1に係る金具および連結機構を示す図である。
図4~9に示す上記実施形態に比べて、金具3のスリット37の幅および継手4の継手連結部42の幅が太くなっている。
【0084】
図10Bでは、平面開口部31から締具を挿入していた。
図16Bに示す変形例1では、スリット37から締具を挿入できる。その結果、締具回転の自由度が増し、締具の操作性が向上する。プレストレス導入がより容易にできる。
【0085】
図17は、変形例2の金具を示す図である。
図4~9に示す上記実施形態では、定着面部33は側面部32と対向する側面部33に形成されていたが、変形例2では、定着面部40は側面部33の両側に張り出して形成される。
【0086】
上記実施形態では、定着具機能21,33は金具空間内部に形成されていたが、変形例2では、定着具機能21,40は金具空間外部に形成される。その結果、緊張用ジャッキや締具の操作性が向上し、プレストレス導入がより容易にできる。
【0087】
上記実施形態では、1本の緊張材2に対応しているのに対し、変形例2では、2本の緊張材2,2に対応している。これにより、同じプレストレス導入の場合、緊張材を細くすることや、同程度の緊張材を用いて、より大きなプレストレスを導入することができる。
【0088】
図18は、変形例3の金具を示す図である。
図19Aは、変形例3の連結機構の構成を示す図であり、
図19Bは、変形例3の連結状態を示す図である。
【0089】
変形例3は変形例2の変形例でもある。変形例2では、定着面部40は側面部33の両側に張り出して形成されるのに対し、変形例3では、定着面部40は側面部32の両側に張り出して形成される。また、変形例2の継手連結部42に比べて、変形例3の継手連結部42が長くなる。
【0090】
これにより、変形例3では、目地グラウト注入と同時に、定着具機能21,40の防水・防錆処理ができる。
【0091】
図20は、変形例4の金具を示す図である。変形例4は変形例3の変形例でもある。
【0092】
変形例3では、定着面部40は側面部32の両側に張り出して同一平面上に形成されるのに対し、変形例4では、定着面部40は側面部32の両側に張り出した位置に設けられる開口部に形成される。
【0093】
これにより、変形例4では、定着具機能21,40の防水・防錆処理が少量となる。
【符号の説明】
【0094】
1 コンクリート床版
2 緊張材
3 金具(継手受金具)
4 継手
5 連結機構
10 連結構造体
31 平面開口部
32 側面部
33 側面部
34 側面部
35 側面部
36 底面部
37 スリット
38 ボルト穴
39 テーパ
40 定着面部(変形例)
41 継手端部
42 継手連結部
43 ボルト
44 テーパ