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  • 特許-骨髄由来間葉系幹細胞の培養方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】骨髄由来間葉系幹細胞の培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0775 20100101AFI20231025BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C12N5/0775
C12N1/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019120099
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021003084
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 功
(72)【発明者】
【氏名】高見 太郎
(72)【発明者】
【氏名】玉利 知佳子
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-529071(JP,A)
【文献】特開2006-055106(JP,A)
【文献】国際公開第2012/137830(WO,A1)
【文献】特開2012-157263(JP,A)
【文献】特開2016-144439(JP,A)
【文献】Cytotechnology, 2012, Vol.64, pp.301-308
【文献】フナコシ株式会社,"CiMSTM ヒト間葉系幹細胞用無血清培養液",FUNAKOSHI TRONTIRES IN LIFE SCIENCE,[online], 2018年5月15日掲載, [検索日 2023年5月15日],インターネット<URL: https://www.funakoshi.co.jp/contents/67862>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養容器に骨髄液から抽出した細胞を播種し、初回の継代までの間に培地交換を複数回行う骨髄由来間葉系幹細胞の培養方法であって、
上記播種の際および上記初回の継代までの間に複数回行う培地交換の少なくとも1回目は、動物由来の血清を添加した培地を用い、
上記初回の継代までの間に複数回行う培地交換の2回目以降のいずれかで、上記血清を使用しない無血清培地へと培地を切り替え、その後は上記初回の継代および細胞を回収するまで当該無血清培地で培養することを特徴とする骨髄由来間葉系幹細胞の培養方法。
【請求項2】
上記細胞を播種して少なくとも3日は、上記動物由来の血清を添加した培地で培養することを特徴とする請求項1に記載の骨髄由来間葉系幹細胞の培養方法。
【請求項3】
上記初回の継代までに少なくとも1日は、上記無血清培地で培養することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の骨髄由来間葉系幹細胞の培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨髄由来間葉系幹細胞の培養方法に関し、詳しくは無血清培地による骨髄由来間葉系幹細胞の培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の再生医療においては、間葉系幹細胞が治療に使用されてきており、このような間葉系幹細胞は骨髄液から抽出した細胞を培養することで得ることができる。
骨髄由来の間葉系幹細胞は接着性細胞であり、一般的な培養方法としては、骨髄液から抽出した細胞(主に骨髄単核球細胞)を培地とともに培養容器に播種し、細胞が培養容器に接着して安定的に増殖するまで、何度か培地を交換しながら培養を継続する。
その後、間葉系幹細胞として十分に増殖したことが確認されると、培養容器から間葉系幹細胞を剥離して複数の培養容器に分配する継代を実施する。その後、各培養容器において培地交換および継代を行いながら培養することで、必要量まで間葉系幹細胞を増殖させる。
このような間葉系幹細胞の培養において用いる培地としては、基本培地にウシ血清等の動物由来の血清を添加したものが一般的となっているが、血清には基本培地では補えない増殖を促進する成分等が含まれている半面、培養した細胞を治療に用いる場合には感染症の危険性が否定できない。
このような危険性に対して、動物由来の血清を用いない無血清培地を使用した無血清培養方法として、細胞を培養容器に播種するときから無血清培地を使用する方法と、播種の時点では血清を添加した培地を使用し、その後、継代の際に無血清培地に切り替える方法とが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-77号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、図1に示す比較方法A1、A2は、特許文献1に開示された方法に基づいて行った間葉系幹細胞の培養の実験結果を示しており、骨髄液から抽出した細胞を播種し、その後、初回の継代を行うまでに得られた細胞の数をカウントした実験結果を示している。
このうち比較方法A1は培地として、基本培地に動物由来の血清としてウシ血清を添加した培地を使用し、比較方法A2は血清を用いない無血清培地を使用したものとなっている。これら比較方法A1、A2を比較すると、無血清培地よりも、血清を添加した培地を使用した方が得られた細胞数が多く、細胞の増殖が促進されていることが分かる。
すなわちこの実験結果によると、播種から初回の継代までは、動物由来の血清を添加した培地を用いた方が、無血清培地を用いた場合よりも有効であると推測できる。しかしながら、動物由来の血清を用いることから、感染症の危険性は残っている。
このような結果に鑑み、本発明は無血清培地を用いて、動物由来の血清による影響を最小限としつつ、効率的に培養することが可能な骨髄由来間葉系幹細胞の培養方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明にかかる骨髄由来間葉系幹細胞の培養方法は、培養容器に骨髄液から抽出した細胞を播種し、初回の継代までの間に培地交換を複数回行う骨髄由来間葉系幹細胞の培養方法であって、
上記播種の際および上記初回の継代までの間に複数回行う培地交換の少なくとも1回目は、動物由来の血清を添加した培地を用い、
上記初回の継代までの間に複数回行う培地交換の2回目以降のいずれかで、上記血清を使用しない無血清培地へと培地を切り替え、その後は上記初回の継代および細胞を回収するまで当該無血清培地で培養することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、初回の継代までの間に行う複数回の培地交換のいずれかで、血清を添加した培地から無血清培地へと切り替えることで、動物由来の血清による影響を最小限としつつ、効率的に骨髄由来間葉系幹細胞を培養することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実験結果を示し、播種から初回継代までの初代培養における細胞数の結果を示す表
図2】第2の実験結果を示し、初代培養および拡大培養を通しての細胞数の結果を示す表
図3】第3の実験結果を示し、播種から初回継代までの初代培養における細胞数の結果を示す表
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明にかかる骨髄由来間葉系幹細胞の培養方法について説明すると、図1図2は、本発明にかかる発明方法と、これと比較して行った従来の培養方法を含む比較方法とを、これらの培養作業に要した作業日数に従って示した表となっている。
間葉系幹細胞は様々な組織から単離することができるが、骨髄由来間葉系幹細胞については、骨髄液から抽出した骨髄単核球細胞を培養することで比較的容易に得ることができる。
このような間葉系幹細胞の一般的な培養方法については、背景技術で述べたとおりであるが、より具体的には、播種では、骨髄液から抽出した骨髄単核球細胞を培地に混合させ、懸濁液として培養容器に分注する。培地交換では、古い培地を吸引して新たな培地を供給しながら接着性の間葉系幹細胞を増殖させる。継代では、増殖度合いを確認した上で培養容器の底に接着している間葉系幹細胞を剥がし、洗浄して培地に混合させて懸濁液とし、新たな複数の培養容器に分配して播種する。
ここで、上記骨髄液から抽出した骨髄単核球細胞を培養容器に播種した後、初回の継代までの間に行う培養のことを初代培養として、その期間を初代培養期間と呼び、初回の継代により複数の培養容器に間葉系幹細胞を分配して行う培養のことを拡大培養として、その期間を拡大培養期間と呼ぶことにする。
なお、本実験で使用した骨髄液は、試験用に購入したものとなっている。また各作業の実施については、日を跨ぐことはなく概ね日中に行うものとするが、時間帯については状況により異なる。
【0009】
接着性細胞である間葉系幹細胞の培養では、初代培養において、播種した細胞が速やかに培養容器に接着して増殖を開始するのが望ましく、図1における比較方法A1と比較方法A2とを比較すると、比較方法A2のように初代培養を無血清培地で行うよりも、比較方法A1のようにウシ血清を添加した培地の方が、2倍近い増殖性を示している。
これは、基本培地は細胞の接着因子を備えておらず、基本培地にウシ血清を添加することで細胞の接着性能を促進させており、一方で、無血清培地についても接着因子を備えておらず、予め接着因子で培養容器の表面を被覆したり、接着因子を無血清培地に添加することで接着性能を補うようにしている。
すなわち、初代培養における増殖性の差は細胞の接着性能の差によるものと考えられ、比較方法A2については、用いた接着因子が血清以上に接着性を発揮しておらず、全ての細胞が速やかに接着して増殖していないものと推測される。
【0010】
細胞の接着性能については、未だウシ血清等の動物由来の血清の成分について、十分に解明されていないところが多く、人工的に再現することは実現していない。そのため高い細胞接着性を得るには、動物由来の血清を使用せざるを得ないが、感染症の危険性を完全に取り除くこともできない。
そこで本発明においては、動物由来の血清の利用を極力抑えながら、より短期間で効率的な培養を目指しているところに、従来にない顕著な効果を見出すことができる。
ここでは、播種の直後は最も高い接着性能を必要とするが、増殖が進むことで細胞自身の接着能力も向上すること、および無血清培地は細胞の増殖に有効な成分が補強されたものであって、増殖性能は血清を用いるよりも高いという考えに基づいて、特許文献1に開示される培養方法のように、初回の継代のタイミングで血清を添加した培地から無血清培地に切り替えるのではなく、播種から所定期間は基本培地に動物由来の血清を添加して培養を行い、初回の継代までに行われる複数回のいずれかの培地交換のタイミングで、無血清培地への切り替えを行うことにしたものである。
【0011】
以下、図1に示す発明方法Aおよび比較方法A1、A2について詳細に説明すると、図1に示す実験では、作業0日目に播種を行ってから、作業9日目に初回の継代を行うようにして、同じ初代培養期間の間にどれだけの間葉系幹細胞が得られたかを比較した。
本実験では、作業9日目の時点における、実験に用いたφ90mmの培養容器内の間葉系幹細胞の数をカウントし、これを実験結果としたものである。
ここで、図1における発明方法Aおよび比較方法A1、A2で使用する無血清培地としては同じものを使用するものとし、また発明方法Aおよび比較方法A1における播種時の培地は、同じ基本培地に同じウシ血清を添加して調製した。なお、無血清培地には一般的に入手可能な接着因子を添加している。
【0012】
発明方法Aは、播種からウシ血清を添加した培地を使用し、3日後の1回目の培地交換では、除去した培地と同じウシ血清を添加した培地を培養容器に供給する。
それから2日後の作業5日目となる2回目の培地交換において、ウシ血清を添加した培地を除去して、代わりに無血清培地を培養容器に供給して培地を切り替えている。
そして、さらに2日後の作業7日目となる3回目の培地交換作業では、無血清培地を除去して同じ無血清培地を培養容器に供給し、その2日後の作業9日目に初回の継代を行うものとして細胞の数をカウントしている。
つまり発明方法Aでは、初代培養期間中に3回行う培地交換のうち、2回目の培地交換において、それまで使用したウシ血清を添加した培地を無血清培地に切り替えたものとなっている。
その結果、発明方法Aによる間葉系幹細胞の数は4.5×10個であった。
【0013】
一方、比較方法A1は、作業0日目の播種から、初回継代までの初代培養期間において、継続してウシ血清を添加した培地を使用した。
その結果、比較方法A1による間葉系幹細胞の数は3.31×10個であった。
【0014】
さらに比較方法A2は、作業0日目の播種から、初回継代までの初代培養期間において、継続して無血清培地を使用した。
その結果、比較方法A2による間葉系幹細胞の数は1.73×10個であった。
【0015】
上記図1にかかる実験結果により、発明方法Aが比較方法A1よりも約1.36倍多く最も良い結果であることが確認できた。
発明方法Aでは播種から2回目の培地交換までの作業0~4日目の間、継続してウシ血清を添加した培地を用いたことにより、播種の直後から細胞が良好に培養容器に接着したものと考えられる。
そして、作業5日目の2回目の培地交換にて無血清培地に切り替えて、以降は無血清培地で培養を行ったことにより、既に接着した細胞を、培養効率の高い無血清培地によって効率的に増殖させることができたものと推察される。
これに対し、比較方法A1では、十分に細胞が接着した後も、培養効率に劣るウシ血清を添加した培地を用い続けたことにより、発明方法Aに比べて細胞数が下回ったものと推察される。
【0016】
次に、図2に示す実験は、図1における発明方法Aおよび比較方法A1について、初代培養の後の拡大培養を含めて得られた間葉系幹細胞の数を比較したものである。
またこの実験では、発明方法Bおよび比較方法Bとして、発明方法Aおよび比較方法A1と同様の手順で初代培養を行うものの、使用する無血清培地を発明方法A、比較方法A1で用いた無血清培地と異ならせた場合の実験を行った。
そして図2の実験においては、上記初代培養に続く拡大培養では、培地交換と継代および細胞の回収を、それぞれ培養状態を観察しながら行った。また、回収時の細胞のカウントは、10mlの液中に含まれる細胞数として計測した。
【0017】
発明方法Aについて、初代培養に続く拡大培養では、初回の継代の2日後の作業11日目に培地交換を行い、その2日後の作業13日目に継代を行って、さらにその2日後の作業15日目に培地交換を行い、その翌日の作業16日目に細胞を回収した。
その結果としては、2.06×10個の細胞が確認された。
【0018】
これに対して比較方法A1では、培地交換の回数が1回多く、回収の日が作業17日目と1日遅い上に、回収した細胞数は、1.14×10個と、発明方法Aよりも少量であった。
すなわち本実験結果によれば、発明方法Aは比較方法A1よりも短期間で効率的に培養できたことが確認された。
【0019】
発明方法Bは、異なる無血清培地を用いるものの、発明方法Aと同様に、播種から5日後の2回目の培地交換まで、ウシ血清を添加した培地を使用し、その後の初代継代および拡大継代では無血清培地を用いて培養を行った。
その結果、発明方法Aと同じ作業16日目に回収を行い、0.582×10個の細胞が確認された。
【0020】
これに対し比較方法Bは、上記発明方法Bと同じ無血清培地を用いるものの、比較方法A1と同様に播種から初回の継代までを、ウシ血清を添加した培地を用いて培養を行ったものである。
その結果、比較方法Bでは、発明方法Bよりも3日遅い作業19日目に回収を行い、回収した数も0.446×10個と、発明方法Bを下回る結果となった。
【0021】
上記図2に示す実験結果によれば、発明方法Aと比較方法A1とを対比すると、発明方法Aは回収を行った日が一日早いにも関わらず、回収できた細胞数は約1.8倍多いことが確認できた。
これと同様、発明方法Bと比較方法Bとを対比した場合においても、発明方法Bは回収を行った日が3日早いにも関わらず、回収できた細胞数は約1.3倍多いことが確認できた。
これら発明方法Aと発明方法Bの比較では、発明方法Aで使用した無血清培地の方がより増殖するものであるが、いずれも比較方法より増殖していることから、本発明の培養方法を用いることで、いずれの無血清培地を使用した場合であっても同様の効果が得られることが明らかとなった。
以上のことから、本発明の培養方法(発明方法A)によれば、初代培養において比較方法A1よりも高い増殖性が発揮され、拡大培養においてさらに高まることが分かった。これは初回継代の前に無血清培地に切り替えたことが影響しているものと推測される。
【0022】
次に、図3に示す実験は、培地交換の際にウシ血清を添加した培地から無血清培地に切り替える作業日を異ならせた場合の、初回の継代の際における間葉系幹細胞の回収量を比較したものとなっている。
まず、図1図2で示す発明方法Aと対比するため、発明方法C2として、作業3日目の培地交換ではウシ血清を添加した培地を用い、作業5日目の2回目の培地交換で無血清培地に切り替え、さらに作業7日目に3回目の培地交換を行った。
この発明方法C2に対し、2回目の培地交換を作業4日目に早めたものを発明方法C1とした。
一方、発明方法C3は、2回目の培地交換を作業5日目に行うものの、この時はウシ血清を添加した培地を用い、その1日後の作業6日目に行った3回目の培地交換において、培地を無血清培地に切り替えたものとなっている。
そして本実験では、作業8日目の時点における、実験に用いたφ90mmの培養容器内の間葉系幹細胞の数をカウントし、これを実験結果としたものである。ウシ血清を添加した培地および無血清培地は、同じものを使用している。
ここで、発明方法C1、C2では、3回目の培地交換を7日目、すなわち初回の継代の前日に行っているのに対し、発明方法C3では、3回目の培地交換と初回の継代との間に1日設けたものとなっている。
実験の結果、発明方法C1では1.93×10、発明方法C2では2.09×10、発明方法C3では2.48×10の間葉系幹細胞が得られた。
上記実験結果を比較すると、発明方法C1と発明方法C2により得られた細胞数は同水準で、発明方法C3により得られた細胞数は若干多い結果となっている。
【0023】
以上の図1図2および図3に示す実験結果について考察すると、各実験での発明方法のように、播種において血清を添加した培地を使用し、続く1回目の培地交換では同じ血清を添加した培地に交換することが有効であると考えられる。
ここで、図3に示す発明方法C1と発明方法C2が同程度の結果であることから、少なくとも播種から3日は、血清を添加した培地を使用することが効果的であると言える。
さらに、図1図2に示す比較方法A1では、初代培養期間に行う培地交換では血清を添加した培地で培養を行い、初回の継代において無血清培地に切り替えているが、この場合、細胞にとっては剥離されて改めて新たな培養容器に播種される段階で、これまでとは異なる培地による環境で培養されることになる。
これに対し、発明方法では、初回の継代の前に行う培地交換の段階で無血清培地に切り替えていることから、初回の継代の際には同じ培地により新たな培養容器に播種されることとなり、継代に伴う細胞へ影響は少ないと推測される。
この場合、増殖性能の高い無血清培地にできるだけ早く切り替えた方が効果的であると考えられるが、無血清培地で培養する期間としては、図3に示す発明方法C2と発明方法C3の結果を参照すると、初回の継代の前に少なくとも1日(発明方法C2:2回目の培地交換との間で2日、発明方法C3:3回目の培地交換との間で1日)あれば有効であると言える。

図1
図2
図3