(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】スチールコード接着用ゴム組成物及びコンベヤベルト
(51)【国際特許分類】
C09J 109/00 20060101AFI20231025BHJP
C09J 161/04 20060101ALI20231025BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231025BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20231025BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20231025BHJP
C08L 61/10 20060101ALI20231025BHJP
C08K 5/07 20060101ALI20231025BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20231025BHJP
C08K 5/55 20060101ALI20231025BHJP
C08K 5/47 20060101ALI20231025BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20231025BHJP
C08K 3/011 20180101ALI20231025BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20231025BHJP
B65G 15/34 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C09J109/00
C09J161/04
C09J11/06
C09J11/04
C08L9/00
C08L61/10
C08K5/07
C08K5/13
C08K5/55
C08K5/47
C08K3/06
C08K3/011
C08K5/098
B65G15/34
(21)【出願番号】P 2019182747
(22)【出願日】2019-10-03
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】鄒 徳慶
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-081107(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083746(WO,A1)
【文献】特開2011-052189(JP,A)
【文献】特開2010-248427(JP,A)
【文献】特開2010-053161(JP,A)
【文献】特開2016-089015(JP,A)
【文献】特開2012-246413(JP,A)
【文献】特開2005-350491(JP,A)
【文献】特開2006-152106(JP,A)
【文献】特開2018-030934(JP,A)
【文献】米国特許第05684091(US,A)
【文献】特開2010-222178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C08L 7/00- 7/50
C08L 9/00-201/10
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B65G 15/30- 15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムを少なくとも含むゴム成分と、
フェノール性ヒドロキシ基を1個有し、置換基(ただし、フェノール性ヒドロキシ基を除く。)を更に有してもよいフェノール類とフェノール系樹脂と
アルデヒドとを含む混合物と、
ジエチレングリコールと、
加硫促進剤と、
有機酸コバルト塩と、
硫黄とを含有し、
前記混合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、2.0~10.0質量部であり、
前記ジエチレングリコールの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.3~2.5質量部である、スチールコード接着用ゴム組成物。
【請求項2】
前記有機酸コバルト塩が、ネオデカン酸ホウ酸コバルトである、請求項1に記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
【請求項3】
前記フェノール系樹脂が、アルキルフェノール系樹脂である、請求項1又は2に記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
【請求項4】
前記フェノール類が、フェノール及び/又はアルキルフェノールを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
【請求項5】
前記混合物が、フェノールと、クレゾールと、前記フェノール系樹脂としてのクレゾール樹脂と、ホルムアルデヒドとを含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
【請求項6】
前記加硫促進剤が、チアゾール系加硫促進剤である、請求項1~
5のいずれか1項に記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
【請求項7】
前記加硫促進剤が、前記ゴム成分100質量部に対して、1.50質量部以下である、請求項1~
6のいずれか1項に記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
【請求項8】
前記混合物の軟化点が、85℃以下である、請求項1~
7のいずれか1項に記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
【請求項9】
亜鉛メッキスチールコードを接着させるために使用される、請求項1~
8のいずれか1項に記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載のスチールコード接着用ゴム組成物を用いて形成されたコンベヤベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスチールコード接着用ゴム組成物及びコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スチールコードに対する接着性能等の向上を目的とするゴム組成物が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、架橋ゴムによって形成されたベルト本体を備え、
該ベルト本体が、心体としてスチールコードを備え、該スチールコードが、前記架橋ゴム中に埋設されており、
前記心体に接する部分を形成している前記架橋ゴムは、ベースゴムと有機酸コバルト塩とを含有するゴム組成物からなり、前記ベースゴムの一部又は全部が、天然ゴム又はスチレン-ブタジエン共重合体ゴムであり、
前記ゴム組成物は、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合体、変性エーテル化メチロールメラミン樹脂、ジエチレングリコール、及び、シリカをさらに含有し、前記ベースゴム100質量部に対し、前記変性レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合体を1質量部以上10質量部以下、前記変性エーテル化メチロールメラミン樹脂を0.5質量部以上7質量部以下、前記ジエチレングリコールを1質量部以上5質量部以下、前記シリカを5質量部以上45質量部以下の割合で含有しているコンベヤベルトが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようななか、本発明者は特許文献1を参考にして、ゴム組成物を調製しこれをスチールコード接着用ゴム組成物として評価したところ、このようなゴム組成物から得られるゴムとスチールコードとの間の耐水接着性について改善の余地があることが明らかとなった。
そこで、本発明は、耐水接着性に優れる、スチールコード接着用ゴム組成物を提供することを目的とする。なお、本発明において耐水接着性は耐湿接着性を含むものとする。
また、本発明は、耐水接着性に優れるコンベヤベルトを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ジエン系ゴムを少なくとも含むゴム成分と、フェノール性ヒドロキシ基を1個有し、置換基(ただし、フェノール性ヒドロキシ基を除く。)を更に有してもよいフェノール類とフェノール系樹脂とを含む混合物と、ジエチレングリコールと、加硫促進剤と、有機酸コバルト塩と、硫黄とを含有し、上記混合物の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、2.0~10.0質量部であり、上記ジエチレングリコールの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、0.3~2.5質量部である、スチールコード接着用ゴム組成物によれば、上記ゴム組成物から得られるゴムとスチールコードとの間の耐水接着性が向上しうることを見出した。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0006】
[1] ジエン系ゴムを少なくとも含むゴム成分と、
フェノール性ヒドロキシ基を1個有し、置換基(ただし、フェノール性ヒドロキシ基を除く。)を更に有してもよいフェノール類とフェノール系樹脂とを含む混合物と、
ジエチレングリコールと、
加硫促進剤と、
有機酸コバルト塩と、
硫黄とを含有し、
上記混合物の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、2.0~10.0質量部であり、
上記ジエチレングリコールの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、0.3~2.5質量部である、スチールコード接着用ゴム組成物。
[2] 上記有機酸コバルト塩が、ネオデカン酸ホウ酸コバルトである、[1]に記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[3] 上記フェノール系樹脂が、アルキルフェノール系樹脂である、[1]又は[2]に記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[4] 上記フェノール類が、フェノール及び/又はアルキルフェノールを含む、[1]~[3]のいずれかに記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[5] 上記混合物が、更に、アルデヒドを含む、[1]~[4]のいずれかに記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[6] 上記混合物が、フェノールと、クレゾールと、上記フェノール系樹脂としてのクレゾール樹脂と、ホルムアルデヒドとを含む、[1]~[5]のいずれかに記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[7] 上記加硫促進剤が、チアゾール系加硫促進剤である、[1]~[6]のいずれかに記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[8] 上記加硫促進剤が、上記ゴム成分100質量部に対して、1.50質量部以下である、[1]~[7]のいずれかに記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[9] 上記混合物の軟化点が、85℃以下である、[1]~[8]のいずれかに記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[10] 亜鉛メッキスチールコードを接着させるために使用される、[1]~[9]のいずれかに記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載のスチールコード接着用ゴム組成物を用いて形成されたコンベヤベルト。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスチールコード接着用ゴム組成物は、耐水接着性に優れる。
また、本発明のコンベヤベルトは、耐水接着性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本発明のコンベヤベルトの一例を模式的に表す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
本明細書において、耐水接着性がより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
【0010】
[スチールコード接着用ゴム組成物]
本発明のスチールコード接着用ゴム組成物(本発明の組成物)は、
ジエン系ゴムを少なくとも含むゴム成分と、
フェノール性ヒドロキシ基を1個有し、置換基(ただし、フェノール性ヒドロキシ基を除く。)を更に有してもよいフェノール類とフェノール系樹脂とを含む混合物と、
ジエチレングリコールと、
加硫促進剤と、
有機酸コバルト塩と、
硫黄とを含有し、
上記混合物の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、2.0~10.0質量部であり、
上記ジエチレングリコールの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、0.3~2.5質量部である、スチールコード接着用ゴム組成物である。
【0011】
本発明の組成物は上記のような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
ジエン系ゴムと、有機酸コバルト塩と、フェノール系樹脂と、硫黄と、加硫促進剤等を含有するゴム組成物をスチールコードと接着させ、加硫して複合体を得た場合、上記複合体において、水などにより経時的に加硫ゴムとスチールコードとの接着性が低下すると本発明者は考える。
【0012】
また、上記ゴム組成物中のフェノール系樹脂は、スチールコードの表面をコーティングし、上記ゴム組成物と上記スチールコードとの接着性を補強する機能を有すると考える。
これについて、上記フェノール系樹脂にフェノール性ヒドロキシ基を1個有し、置換基(ただし、フェノール性ヒドロキシ基を除く。)を更に有してもよいフェノール類(特定フェノール類)を加えた混合物及びジエチレングリコールを含有することによって、上記機能が、フェノール系樹脂のみの場合よりも高いと推測される。
また、特定フェノール類とフェノール系樹脂とを含む混合物及びジエチレングリコールを含有する場合、スチールコードの表面の金属酸化物を除去する性能がフェノール系樹脂のみの場合よりも高いと考えられる。
上記理由から、本発明の組成物は、加硫促進剤を含有しても、特定フェノール類とフェノール系樹脂とを含む混合物及びジエチレングリコールを含有することによって、加硫促進剤の劣化による接着性への影響が抑制されるため、ゴム組成物とスチールコードとの耐水接着性が優れると本発明者は推測する。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0013】
<ゴム成分>
本発明の組成物は、ジエン系ゴムを少なくとも含むゴム成分を含有する。
【0014】
<ジエン系ゴム>
本発明の組成物に含有されるジエン系ゴムは、ジエン系モノマーを重合して得られるポリマーであれば特に制限されない。
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴム(例えばスチレンブタジエン共重合体ゴム)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム(CR)が挙げられる。
【0015】
上記ジエン系ゴムとしては、本発明の効果により優れ、耐久性に優れると言う観点から、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴム(例えばスチレンブタジエン共重合体ゴム)が好ましく、天然ゴム及び芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴム(なかでもスチレンブタジエン共重合体ゴム)の組合せ、又は、イソプレンゴム(IR)がより好ましい。
【0016】
・天然ゴム
上記天然ゴム(NR)は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0017】
・イソプレンゴム
上記イソプレンゴムはイソプレンのホモポリマーであれば特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0018】
・スチレンブタジエン共重合体ゴム
上記スチレンブタジエン共重合体ゴムは、スチレンとブタジエンとの共重合体であれば特に制限されない。
【0019】
(スチレンブタジエン共重合体ゴムの結合スチレン量)
上記スチレンブタジエン共重合体ゴムの結合スチレン量は、本発明の効果により優れ、後述する上記スチレンブタジエン共重合体ゴムのガラス転移温度が低くなるという観点から、上記スチレンブタジエン共重合体ゴム全量に対して、5~40質量%であることが好ましく、10~30質量%がより好ましい。
【0020】
(スチレンブタジエン共重合体ゴムのビニル量)
上記スチレンブタジエン共重合体ゴムのブタジエンによるビニル量(1,2-ビニル結合量)は、本発明の効果により優れ、後述する上記スチレンブタジエン共重合体ゴムのガラス転移温度が低くなるという観点から、スチレンブタジエン共重合体ゴムが有するブタジエンによる繰り返し単位の総量に対して、5~30質量%であることが好ましく、5~20質量%がより好ましい。
本発明において、上記スチレンブタジエン共重合体ゴムが有する、上記結合スチレン量と上記ビニル量は、1H-NMRで測定することができる。
【0021】
(スチレンブタジエン共重合体ゴムの重量平均分子量)
スチレンブタジエン共重合体ゴムの重量平均分子量は特に制限されない。例えば、20万~300万とできる。
本発明において、スチレンブタジエン共重合体ゴムの重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。
【0022】
(S-SBR)
上記スチレンブタジエン共重合体ゴムは、その製造方法について特に制限されない。例えば、溶液重合によるスチレンブタジエン共重合体ゴム(S-SBR)、乳化重合によるスチレンブタジエン共重合体ゴム(E-SBR)が挙げられる。なかでも、上記スチレンブタジエン共重合体ゴムは、本発明の効果により優れるという観点から、S-SBRを含むことが好ましい。
【0023】
S-SBRは、スチレンとブタジエンとを有機溶媒中で触媒の存在下で共重合させることによって製造されるSBRであれば特に制限されない。また上記溶液重合は特に制限されない。S-SBR、溶液重合としては、いずれについても、例えば従来公知のものが挙げられる。
【0024】
上記ゴム成分のすべて又は一部が、ジエン系ゴムであればよい。上記ゴム成分のすべてが、ジエン系ゴムであることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記ジエン系ゴムの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、70~100質量部が好ましい。
上記ゴム成分が、上記天然ゴム及び上記スチレンブタジエン共重合体ゴムを含む場合、上記天然ゴムの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、20~80質量部が好ましく、30~70質量部がより好ましく、40~60質量部が更に好ましい。
上記スチレンブタジエン共重合体ゴムの含有量は、上記ゴム成分100質量部から上記天然ゴムの含有量を除いた量とできる。
【0025】
上記ゴム成分が、ジエン系ゴム以外のゴムを含む場合、ジエン系ゴム以外のゴムとしては、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)のような非ジエン系ゴムが挙げられる。
【0026】
<混合物>
本発明の組成物は、フェノール性ヒドロキシ基を1個有し、置換基(ただし、フェノール性ヒドロキシ基を除く。)を更に有してもよいフェノール類とフェノール系樹脂とを含む混合物を含有する。
本発明において、フェノール性ヒドロキシ基は、芳香族環(例えばベンゼン環)に直接結合するヒドロキシ基を意味する。
【0027】
<フェノール類>
上記混合物は、フェノール性ヒドロキシ基を1個有し、置換基(ただし、フェノール性ヒドロキシ基を除く。)を更に有してもよいフェノール類を含む。
本明細書において、上記フェノール類を「特定フェノール類」と称する場合がある。
上記特定フェノール類は、フェノール性ヒドロキシ基を1分子当たり1個有する。
上記特定フェノール類は、上記1個のフェノール性ヒドロキシ基のほかに、置換基を更に有してもよい。ただし、上記置換基からフェノール性ヒドロキシ基を除く。
上記特定フェノール類が更に有することができる置換基としては、例えば、アルキル基のような炭化水素基が挙げられる。
【0028】
上記特定フェノール類としては、例えば、フェノール(フェノール性ヒドロキシ基を1個有し、上記置換基を更に有さないフェノール類);
クレゾール、キシレノール等の、アルキル基と1個のフェノール性ヒドロキシ基とを有するアルキルフェノールのような、フェノール性ヒドロキシ基を1個有し、上記置換基を更に有するフェノール類が挙げられる。
上記特定フェノール類は、本発明の効果により優れるという観点から、フェノール及び/又はアルキルフェノールが好ましく、フェノール及びアルキルフェノールを併用することがより好ましい。
【0029】
(フェノール)
上記特定フェノール類として含有されうるフェノールは、1つのフェノール性ヒドロキシ基がベンゼン環に直接結合した化合物である。なお、本発明において上記フェノールは無置換である。
【0030】
(アルキルフェノール)
上記特定フェノール類として含有されうるアルキルフェノールは、アルキル基と1つのフェノール性ヒドロキシ基とを有し、上記フェノール性ヒドロキシ基がベンゼン環に直接結合する化合物である。
【0031】
・・アルキル基
上記アルキルフェノールが有するアルキル基としては、例えば、炭素数1~10のアルキル基が挙げられる。
上記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、これらの組合せのいずれであってもよい。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられる。なかでも上記アルキル基は、メチル基が好ましい。
上記アルキルフェノールが1分子当たりに有する上記アルキル基の数は特に制限されない。上記数は1個であることが好ましい。
上記アルキルフェノールにおいて、上記アルキル基の位置は特に制減されない。上記アルキルフェノールが有するフェノール性ヒドロキシ基に対して、m位であることが好ましい。
【0032】
上記アルキルフェノールは、本発明の効果により優れるという観点から、クレゾールが好ましく、m-クレゾールがより好ましい。
【0033】
<フェノール系樹脂>
上記混合物に含有されるフェノール系樹脂は、フェノール類とアルデヒド類との縮合物、又はその変性体であれば特に制限されない。
上記フェノール系樹脂は、本発明の効果により優れるという観点から、フェノール類(原料フェノール類)とアルデヒド類との重縮合物であることが好ましい。
【0034】
(フェノール類)
上記フェノール系樹脂を構成しうるフェノール類(以下これを「原料フェノール類」と称する場合がある。)としては、例えば、フェノール;
クレゾール、キシレノールのような、アルキル基と1つのフェノール性ヒドロキシ基とを有するアルキルフェノール;
レゾルシンのようなフェノール性ヒドロキシ基を複数有するフェノール類が挙げられる。
【0035】
上記原料フェノール類は、フェノール以外のフェノール類を少なくとも含むことが好ましい態様の1つとして挙げられる。なお、この場合、原料フェノール類が、フェノール以外のフェノール類のほかに、更に、フェノールを含んでもよい。
なかでも、上記原料フェノール類は、本発明の効果により優れるという観点から、アルキルフェノール、フェノール性ヒドロキシ基を複数有するフェノール類が好ましく、アルキルフェノールがより好ましく、クレゾールが更に好ましく、m-クレゾールがより更に好ましい。
【0036】
(アルデヒド類)
上記フェノール系樹脂を構成しうる上記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールが挙げられる。
なかでも、本発明の効果により優れるという観点から、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0037】
上記フェノール系樹脂は、本発明の効果により優れるという観点から、アルキルフェノール系樹脂が好ましく、クレゾール樹脂がより好ましく、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂が更に好ましい。
【0038】
上記フェノール系樹脂は、未変性のフェノール系樹脂であることが好ましい。
【0039】
(特定フェノール類とフェノール系樹脂との関係)
上記特定フェノール類がアルキルフェノールを含み、一方、上記フェノール系樹脂を構成しうるフェノール類(上記原料フェノール類)がアルキルフェノールを含む場合、上記両者のアルキルフェノールは、共に同種のアルキルフェノールであることが好ましい。
【0040】
(アルデヒド)
上記混合物は、本発明の効果により優れるという観点から、更に、アルデヒドを含むことが好ましい。
【0041】
上記混合物が更にアルデヒドを含み、本発明の組成物が例えば加硫された際、上記アルデヒドは上記特定フェノール類及び/又は上記フェノール系樹脂と縮合することができる。
【0042】
上記アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールが挙げられる。
なかでも、本発明の効果により優れるという観点から、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0043】
なお、上記アルデヒドは、メチレン供与体に由来するものであってもよい。
上記メチレン供与体としては、例えば、一般的な、フェノール系樹脂の硬化剤が挙げられ、具体的には例えば、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン、ペンタメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、パラ-ホルムアルデヒドのポリマーが挙げられる。
【0044】
上記混合物は、本発明の効果により優れるという観点から、フェノールと、アルキルフェノールと、アルキルフェノール系樹脂と、アルデヒドとを含むことが好ましく、
上記フェノールと、クレゾールと、(上記フェノール系樹脂としての)クレゾール樹脂と、ホルムアルデヒドとを含むことがより好ましい。
【0045】
(フェノール系樹脂及び特定フェノール類としてのアルキルフェノールの合計含有量)
上記混合物の成分としての特定フェノール類がフェノールとアルキルフェノール(例えばクレゾール)とを含み、上記混合物がアルデヒド(例えばホルムアルデヒド)を更に含む場合、フェノール系樹脂(例えばクレゾール樹脂)及び上記アルキルフェノール(例えばクレゾール)の合計含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記混合物全量に対して、80~98質量%が好ましく、90~98質量%がより好ましい。
【0046】
(特定フェノール類としてのフェノール及びアルデヒドの合計含有量)
また、上記特定フェノール類がフェノールとアルキルフェノール(例えばクレゾール)とを含み、上記混合物がアルデヒド(例えばホルムアルデヒド)を更に含む場合、上記フェノール及び上記アルデヒドの合計含有量は、上記混合物全量から、上記フェノール系樹脂(例えばクレゾール樹脂)及び上記アルキルフェノール(例えばクレゾール)の合計含有量を除いた値とできる。
【0047】
上記混合物の軟化点は、本発明の効果により優れ、ゴム組成物中で分散しやすく、スチールコードの表面の金属酸化物を除去する性能がより高く、スチールコード(金属)の表面への付着が有利になるという観点から、85℃以下であることが好ましく、50~80℃がより好ましい。
本発明において、上記混合物の軟化点は、JIS K5601に準じて測定できる。
【0048】
<混合物の含有量>
本発明において、上記混合物の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、2.0~10.0質量部である。
上記混合物の含有量は、本発明の効果により優れ、耐久性に優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、2~8質量部であることが好ましく、5~7質量部がより好ましい。
【0049】
<ジエチレングリコール>
本発明の組成物はジエチレングリコールを含有する。
本発明の組成物に含有されるジエチレングリコールは、特に制限されない。上記ジエチレングリコールは、例えば、ジエチレングリコールの単体であってもよく、ジエチレングリコールとシリカとの混合物(両者が予め混合されたブレンド物)であってもよい。
【0050】
<ジエチレングリコールの含有量>
本発明において、ジエチレングリコールの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.3~2.5質量部である。
ジエチレングリコールの含有量が上記範囲である場合、耐水接着性に優れる。
ジエチレングリコールの含有量が上記ゴム成分100質量部に対して2.5質量部を超えると、耐水接着性が低くなる。
上記ジエチレングリコールの含有量は、本発明の効果により優れ、耐久性に優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、0.4~2.0質量部であることが好ましく、0.4質量部以上1.0質量部未満がより好ましい。
【0051】
<加硫促進剤>
本発明の組成物に含有される加硫促進剤は、硫黄による加硫が可能なゴム組成物に使用され得る加硫促進剤であれば特に制限されない。
上記加硫促進剤としては、例えば、アルデヒド-アンモニア系、アルデヒド-アミン系、チオウレア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、キサントゲン酸塩系、これらの混合物が挙げられる。
なお、一般的にチアゾール系以外の加硫促進剤に分類されている加硫促進剤がチアゾール骨格を有する場合、本明細書において、上記のような加硫促進剤を、チアゾール系加硫促進剤に分類するものとする。
【0052】
上記加硫促進剤は、耐水接着性により優れるという観点から、チアゾール系加硫促進剤が好ましい。
チアゾール系加硫促進剤は、チアゾール骨格を有する加硫促進剤であれば特に制限されない。チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ベンゾチアゾール骨格を有するベンゾチアゾール系加硫促進剤が挙げられる。
【0053】
・ベンゾチアゾリルスルフィド基を有する加硫促進剤
上記ベンゾチアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ベンゾチアゾリルスルフィド基を有する加硫促進剤が挙げられる。
【0054】
上記ベンゾチアゾリルスルフィド基は、例えば、下記構造で表すことができる。なお、下記構造において、ベンゾチアゾリル環における水素原子が置換基で置換されていてもよい。ベンゾチアゾリル環における置換基は特に制限されない。
【化1】
【0055】
上記構造で表される上記ベンゾチアゾリルスルフィド基において、環構造を構成していない硫黄原子は、例えば、-SH(メルカプト基);(ポリ)スルフィド結合、スルフェンアミド結合(例えば-S-NH-、-S-N<)のような連結基(例えば2価又は3価の連結基);例えば亜鉛のような金属又はナトリウムのようなアルカリ金属と塩を構成することができる。
【0056】
上記ベンゾチアゾリルスルフィド基が上記連結基を有する場合、上記連結基に更に結合する基は特に制限されない。例えば、酸素、窒素、硫黄のようなヘテロ原子を有してもよい炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、環状を含む。)、芳香族炭化水素基、ヘテロ環、これらの組み合わせが挙げられる。
【0057】
上記ベンゾチアゾリルスルフィド基における環構造を構成していない硫黄原子がスルフェンアミド結合を構成する場合(スルフェンアミド結合を有するベンゾチアゾール系加硫促進剤)としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-第三ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドが挙げられる。
【0058】
上記加硫促進剤(又はベンゾチアゾール系加硫促進剤)は、耐水接着性により優れるという観点から、メルカプト基若しくはポリスルフィド結合を有するベンゾチアゾール、又は、金属若しくはアルカリ金属と塩を形成するメルカプトベンゾチアゾールを含むことが好ましい。
【0059】
上記メルカプト基を有するベンゾチアゾールとしては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール(下記構造)が挙げられる。
【化2】
【0060】
ポリスルフィド結合を有するベンゾチアゾールとしては、例えば、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(下記構造)のような、ジスルフィド結合を有するベンゾチアゾールが挙げられる。
【化3】
【0061】
金属又はアルカリ金属と塩を形成するメルカプトベンゾチアゾールとしては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(下記構造)、
【化4】
【0062】
2-メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩(下記構造)が挙げられる。
【化5】
【0063】
上記加硫促進剤(又はベンゾチアゾール系加硫促進剤)は、耐水接着性により優れるという観点から、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、及び2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドがより好ましい。
【0064】
(加硫促進剤の含有量)
本発明の組成物における加硫促進剤の含有量は、耐水接着性により優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、0.0質量部を超え1.5質量部以下であることが好ましく、0.1~0.7質量部が好ましく、0.3~0.7質量部がより好ましい。
【0065】
<有機酸コバルト塩>
本発明の組成物に含有される有機酸コバルト塩は、有機酸とコバルトで形成される塩であれば特に制限されない。
【0066】
(有機酸)
上記有機酸コバルト塩を構成する有機酸としては、例えば、カルボキシ基を有する化合物が挙げられる。上記カルボキシ基は有機基に結合することができる。上記有機基は特に制限されない。例えば、炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組合せが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状、これらの組合せが挙げられる。脂肪族炭化水素基は不飽和結合を有してもよい。
【0067】
(カルボキシイオン)
上記有機酸コバルト塩を形成する有機酸がカルボキシ基を有する化合物である場合、上記有機酸コバルト塩が有するカルボキシイオン(-COO-)は、上記有機酸のカルボキシ基に由来することができる。
【0068】
(コバルトイオン)
上記有機酸コバルト塩において、上記カルボキシイオンのような、(酸による)アニオンの対イオンは、有機酸コバルト塩が有するコバルトイオン(例えば、Co2+、Co3+)である。
【0069】
上記有機酸コバルト塩としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、オクチル酸コバルト、ネオデカン酸コバルトのような、ホウ素を含まない有機酸コバルト;ホウ素を含む有機酸コバルト塩が挙げられる。
【0070】
上記有機酸コバルト塩は、本発明の効果により優れ、耐久性に優れるという観点から、ホウ素を含むことが好ましい。
ホウ素を含む有機酸コバルト塩としては、例えば、有機酸の一部をホウ酸等で置き換えた複合塩が挙げられる。
上記有機酸コバルト塩としては、具体的には例えば、下記式(1)で表されるネオデカン酸ホウ酸コバルトのようなコバルトボロン錯体などが挙げられる。
【0071】
【0072】
上記有機酸コバルト塩は、本発明の効果により優れ、耐久性に優れるという観点から、ネオデカン酸ホウ酸コバルトが好ましい。
【0073】
(有機酸コバルト塩中のコバルトの含有量)
本発明の組成物に含有される、有機酸コバルト塩中のコバルトの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.22~1.20質量部であることが好ましく、0.25~0.80質量部であることがより好ましい。
【0074】
<硫黄>
本発明の組成物は硫黄を含有する。上記硫黄は特に制限されない。例えば、硫黄単体が挙げられる。
【0075】
(硫黄の含有量)
本発明の組成物に含有される硫黄の含有量は、本発明の効果により優れ、耐久性に優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、2.1~6.0質量部であることが好ましく、3.5~5.0質量部がより好ましい。
【0076】
(化合物A)
本発明の組成物は、ロジン類、フェノール樹脂及び塩素化パラフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物Aを更に含有することが好ましい。
本発明の組成物は化合物Aを更に含有することによって耐水接着性により優れる。
【0077】
(ロジン類)
本発明の組成物は、ロジン類を更に含有することができる。
ロジン類としては、例えば、ロジン、ロジン誘導体が挙げられる。
【0078】
・ロジン
ロジンは、一般的に、松脂を蒸留等して得られる天然樹脂である。
ロジンを上記のように製造上の観点から例示すると、ロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジンが挙げられる。
上記ロジンは、本発明の効果により優れるという観点から、(ガムロジン、ウッドロジン、トールロジンのなかでは)ガムロジンが好ましい。
【0079】
また、ロジンは、一般的に、樹脂酸を含む。
樹脂酸としては、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸が挙げられる。
上記各種の樹脂酸は、官能基としてカルボキシ基を有する点で共通する。
【0080】
ロジンは、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸及びデヒドロアビエチン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含めばよい。また、ロジンは上記群から選ばれる少なくとも2種以上を含む混合物であってもよい。
なお、上記ガムロジン等のロジンの種類によって、一般的に、上記樹脂酸の構成の比率が異なる。
【0081】
・ロジン誘導体
ロジン誘導体(ロジンの変性体)しては、例えば、上記樹脂酸を、酸変性、(二重結合の)不均化、水素化、二量化、又はエステル化した化合物が挙げられる。
【0082】
上記ロジン類は、本発明の効果により優れるという観点から、ロジンを含むことが好ましい。
【0083】
・ロジン類の軟化点
上記ロジン類の軟化点は、本発明の効果により優れるという観点から、40~130℃であることが好ましく、50~100℃がより好ましい。
ロジン類の軟化点は、JIS K5902-1969に準じて測定することができる。
【0084】
・ロジン類の酸価
上記ロジン類の酸価は、50mgKOH/g以上とすることができる。
上記ロジン類の酸価は、本発明の効果により優れるという観点から、50~200mgKOH/gであることが好ましく、80~180mgKOH/gがより好ましい。
ロジン類の酸価は、JIS K2501:2003に準じて測定することができる。
【0085】
・ロジン類の分子量
上記ロジン類の分子量は、本発明の効果により優れるという観点から、200~1000であることが好ましく、250~400がより好ましい。
ロジン類の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。
なおロジン類は一般的に混合物であるため、上記ロジン類の分子量は平均値であってもよい。
【0086】
上記ロジン類の含有量は、本発明の効果により優れ、耐久性に優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、3~10質量部であることが好ましい。
【0087】
・塩素化パラフィン
上記塩素化パラフィンは、塩素を有するパラフィンであれば特に制限されない。例えば、平均で炭素数26の鎖状飽和炭化水素化合物であって、該化合物中の水素原子の全部又は一部が塩素原子で置換されているものが挙げられる。
上記塩素化パラフィンが有する塩素量は、塩素化パラフィン全量に対して、例えば、40~80質量%が好ましい。
【0088】
上記塩素化パラフィンの含有量は、本発明の効果により優れ、耐久性に優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、3~8質量部であることが好ましい。
【0089】
上記化合物Aは、本発明の効果により優れ、耐久性に優れるという観点から、ロジン又は上記ロジン誘導体と、塩素化パラフィンとを含むことが好ましい。
【0090】
(カーボンブラック)
本発明の組成物は、更に、カーボンブラックを含有することができる。
上記カーボンブラックは特に制限されない。
なかでも、上記カーボンブラックは、本発明の効果により優れるという観点から、HAF級カーボンブラック、ISAF級カーボンブラックが好ましく、HAF級カーボンブラックがより好ましい。
【0091】
(カーボンブラックの窒素吸着比表面積)
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、本発明の効果により優れるという観点から、60~120m2/gが好ましく、65~95m2/gがより好ましい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K 6217-2:2017「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定できる。
【0092】
(カーボンブラックの含有量)
上記カーボンブラックの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、35~75質量部であることが好ましく、40~70質量部がより好ましい。
【0093】
(老化防止剤)
本発明の組成物は、更に、老化防止剤を含有することができる。
老化防止剤は特に制限されない。例えば従来公知の老化防止剤が挙げられる。
【0094】
上記老化防止剤の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、1.0質量部以上であることが好ましい。
上記老化防止剤の含有量の上限は、上記ゴム成分100質量部に対して、5.0質量部以下とできる。
【0095】
(酸化亜鉛)
本発明の組成物は更に酸化亜鉛を含有することができる。上記酸化亜鉛は特に制限されない。
【0096】
(酸化亜鉛の含有量)
上記酸化亜鉛の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、5.0質量部以上であることが好ましい。
上記酸化亜鉛の含有量の上限は、上記ゴム成分100質量部に対して、20質量部以下とできる。
【0097】
本発明の組成物は、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、上記必須の成分に加え、更に、例えば、上記特定フェノール類以外のフェノール類、有機酸コバルト塩以外の金属塩、ステアリン酸、カーボンブラック以外の充填剤、オイル等の添加剤を含有できる。
【0098】
本発明の組成物は、上記必須成分、必要に応じて使用することができる上記カーボンブラック等を、ロールミル又はバンバリーミキサーなどを用いて混合することによって、製造することができる。
【0099】
本発明の組成物は、例えば、スチールコード(具体的には例えば亜鉛メッキスチールコード)を接着させるために使用することができる。
本発明の組成物をスチールコード(例えば亜鉛メッキスチールコード)とともに用いて、例えば加硫することによって、加硫ゴムとスチールコードとを有する複合体を得ることができる。上記複合体において加硫ゴムとスチールコードとは接着することができる。
【0100】
上記スチールコードとしては、例えば、スチールコード;スチールコードを亜鉛メッキしたものが挙げられる。
上記スチールコードは、本発明の効果により優れ、防錆性に優れるという観点から、亜鉛メッキされたものが好ましい。
上記スチールコード(亜鉛メッキされたスチールコードを含む。以下同様)の例えば素線径又はコード径などは、適宜選択できる。上記スチールコードは、その表面が未処理のものであってもよい。
【0101】
本発明の組成物を加硫する際の温度は、例えば140~160℃程度とできる。
【0102】
本発明の組成物は、例えば、コンベヤベルトの製造に好適に用いることができる。本発明の組成物をコンベヤベルトの製造に用いる場合、本発明の組成物は、コンベヤベルトを構成する部材として例えば、スチールコードをコートするコートゴム層(例えばクッションゴム及び/又はタイゴム)を形成することが好ましい。スチールコードをコートする1層のコートゴム層が、クッションゴム及びタイゴムの両方の機能を有してもよい。
【0103】
クッションゴムとしては、例えば、コンベヤベルトがカバーゴム層を有する場合、上記カバーゴム層と隣接するゴムが挙げられる。
タイゴムとしては、例えば、コンベヤベルトを例えば端部で接続しうるゴムが挙げられる。タイゴムによる接続によってコンベヤベルトを、長く及び/又はエンドレス化することができる。
【0104】
[コンベヤベルト]
次に、本発明のコンベヤベルトについて以下に説明する。
本発明のコンベヤベルトは、本発明のスチールコード接着用ゴム組成物を用いて形成されたコンベヤベルトである。
【0105】
本発明のコンベヤベルトは、スチールコードを有することが好ましい態様として挙げられる。上記スチールコードは、本発明の効果により優れるという観点から、スチールコードを亜鉛メッキしたものが好ましい。
【0106】
本発明のコンベヤベルトに使用されるスチールコード接着用ゴム組成物は、本発明の組成物であれば特に制限されない。
本発明の組成物は、本発明の効果により優れるという観点から、スチールコードをコートするコートゴム層(例えばクッションゴム及び/又はタイゴム)を形成することが好ましい。
本発明のコンベヤベルトは、更に、カバーゴム層を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。上記カバーゴム層を形成しうるゴム組成物は特に制限されない。
【0107】
なお、本発明の組成物によって形成されるコートゴム層がタイゴムである場合、上記コートゴム層にはカバーゴム層が隣接しても隣接しなくてもよい。
【0108】
本発明のコンベヤベルトについて添付の図面を用いて以下に説明する。本発明のコンベヤベルトは添付の図面に制限されない。
図1は本発明のコンベヤベルトの一例を模式的に表す断面斜視図である。
図1において、コンベヤベルト1は、両表面にカバーゴム層6を有し、カバーゴム層6の間に、スチールコード2とコートゴム層4を有する。コートゴム層4はスチールコード2をコートする。コートゴム層4は本発明のスチールコード接着用ゴム組成物で形成されることが好ましい。
【実施例】
【0109】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0110】
<組成物の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いた。
まず、下記第1表に示す成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、バンバリーミキサーで混合し、次に、ここに硫黄および加硫促進剤を第1表に示す量で加えて、これらをロールを用いて混合して、各組成物を製造した。
【0111】
<<評価>>
上記のとおり製造された各組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0112】
<耐水接着性>
耐水接着性をゴム付きで評価した。
・評価方法
デシケータ中に保管して防塵防湿処理を施してある直径4.1mmの亜鉛メッキスチールコードに、上記のとおり製造された各組成物を15mmの厚さに付与して、各組成物とスチールコードとの複合体(スチールコードは組成物中に埋まっている状態)とし、上記複合体をプレス成型機を用いて153℃、面圧2.0MPaの条件下で20分間加圧加硫して、試験体(ゴム/亜鉛メッキスチールコード複合体)を作製した。上記試験体において、ゴム表面からスチールコードが突出している箇所のゴムとスチールコードとの境目を蜜ロウでシールし、温度50℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽内で3週間放置した。その後、室温(23℃)条件下で各試験体からスチールコードを引き抜く引き抜き試験を行った。上記引き抜き試験は、DIN22131に準拠して行った。
引き抜き試験後、引き抜かれたスチールコードの状態を確認し、初期のスチールコードの表面積に対する引き抜き後のスチールコード表面に残存するゴムの被覆面積の割合(ゴム被覆率、%)を算出した。上記のとおり算出されたゴム被覆率をゴム付きとして第1表に示した。
【0113】
・評価基準
本発明において、上記ゴム付き(ゴム被覆率)が60%を超える場合、耐水接着性に優れると評価した。
上記ゴム付きが60%以下である場合、耐水接着性が劣ると評価した。
上記ゴム付きが60%より大きいほど、耐水接着性により優れると評価した。
【0114】
【0115】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
(ジエン系ゴム)
・ジエン系ゴム1(NR):天然ゴム。TSR20
・ジエン系ゴム2(SBR):溶液重合スチレンブタジエン共重合体ゴム。商品名タフデン 2000R(旭化成社製)。ガラス転移温度-70℃。重量平均分子量32万、結合スチレン量27質量%、ビニル量9質量%
【0116】
(混合物)
・混合物:m-クレゾール樹脂、フェノール、m-クレゾール及びホルムアルデヒドを含む混合物。上記混合物中、クレゾール樹脂の含有量は95質量%、クレゾールの含有量は1.5質量%、残部にフェノール及びホルムアルデヒドが含まれる。商品名スミライト レジン PR-175、住友デュレズ株式会社製。混合物の軟化点は55~70℃。
【0117】
・(比較)レゾルシン樹脂:商品名スミカノ-ル 620、田岡化学工業社製。上記レゾルシン樹脂は、フェノール性ヒドロキシ基を1個有し、置換基(ただし、フェノール性ヒドロキシ基を除く。)を更に有してもよいフェノール類を含まない。代わりにレゾルシン(1分子当たり、フェノール性ヒドロキシ基を2個有する)を含む。
・上記(比較)レゾルシン樹脂の硬化剤:商品名スミカノール 507AP、田岡化学工業社製。多価メチロールメラミン誘導体
【0118】
(化合物A)
・ロジン類(ガムロジン):中国ロジン WW、荒井化学工業株式会社製。軟化点:65℃、酸価:162mgKOH/g、分子量:289
・塩素化パラフィン:塩素化パラフィン(塩素含有量70質量%)。エンパラ 70S、味の素ファインテクノ社製。
【0119】
(有機酸コバルト塩)
・有機酸コバルト塩1(ナフテン酸コバルト10%):ナフテン酸コバルト。ナフテン酸コバルト中のコバルト含有量10質量%。商品名「ナフテン酸コバルト 10%」、DIC CORPORATION社製。
【0120】
・有機酸コバルト塩2(ネオデカン酸ホウ酸コバルト):下記式(1)で表されるネオデカン酸ホウ酸コバルト。DIC CORPORATION社製DICNATE NBC-II(ネオデカン酸ホウ酸コバルト中のコバルト含有量22.2質量%)
【化7】
【0121】
・HAF級カーボンブラック:キャボットジャパン株式会社製シヨウブラック N330T(窒素吸着比表面積74m2/g)
【0122】
・老化防止剤(OD-3):下記式で表されるp,p′-ジオクチルジフェニルアミン。ノンフレックスOD-3、精工化学社製。なお、上記老化防止剤は加硫促進剤として機能しない。
【化8】
【0123】
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:ステアリン酸YR(日油社製)
【0124】
(ジエチレングリコール)
・ジエチレングリコール:ジエチレングリコールとして、商品名DSTパウダー1.6(ジエチレングリコール:シリカ=60:40(質量比)のブレンド品。日本ピグメント株式会社製)を使用した。なお、第1表のジエチレングリコール欄に示す量は、使用されたDSTパウダーに含まれるジエチレングリコールの量である。
【0125】
(加硫促進剤)
・加硫促進剤1(DM):チアゾール系加硫促進剤。ジベンゾチアジルジスルフィド(下記構造)。サンセラー DM-PO、(三新化学工業株式会社製)
【化9】
【0126】
・加硫促進剤2(スルフェンアミド):N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(下記構造)、ノクセラー DZ、大内新興化学工業社製
【化10】
【0127】
・硫黄:金華印油入微粉硫黄(鶴見化学工業社製)
【0128】
第1表に示す結果から明らかなように、ジエチレングリコールを含まない比較例1は、耐水接着性が劣った。
所定の混合物を含有せず、代わりに、(比較)レゾルシン樹脂及びその硬化剤を含有する比較例2は、耐水接着性が劣った。
【0129】
これに対して、本発明の組成物は、耐水接着性に優れた。
【符号の説明】
【0130】
1 コンベヤベルト
2 スチールコード
4 コートゴム層
6 カバーゴム層