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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】電気コネクタおよび電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6461 20110101AFI20231025BHJP
   H01R 24/60 20110101ALI20231025BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20231025BHJP
【FI】
H01R13/6461
H01R24/60
H01R12/71
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019191574
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021068535
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(72)【発明者】
【氏名】河崎 崇志
(72)【発明者】
【氏名】佐土原 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】水江 太郎
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0229470(US,A1)
【文献】特表2017-517118(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0118752(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6461
H01R 13/6581-13/6597
H01R 24/60-24/64
H01R 12/71
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側から挿入される相手側コネクタと嵌合可能な電気コネクタであって、
絶縁性のハウジングと、
第1のコンタクト平面上に配列するよう前記ハウジングに保持され、前記相手側コネクタの挿抜方向に沿って直線状に延伸する複数のコンタクトから構成される第1のコンタクト群と、
前記第1のコンタクト平面と対向する第2のコンタクト平面上に配列するよう前記ハウジングに保持され、前記相手側コネクタの前記挿抜方向に沿って直線状に延伸する複数のコンタクトから構成される第2のコンタクト群と、
前記第1のコンタクト平面と前記第2のコンタクト平面との間で、前記第1のコンタクト平面および前記第2のコンタクト平面と対向するグランド平面上に位置するよう前記ハウジングに保持されたグランドプレートと、を含み、
前記第1のコンタクト群および前記第2のコンタクト群の前記コンタクトのそれぞれは、前記先端側に位置し、前記相手側コネクタと接触する接点部と、前記接点部から基端側へ水平に延伸する水平延伸部と、前記水平延伸部から下方へ向けて延伸する下方延伸部と、前記下方延伸部から前記基端側へ延伸する端子部と、を有しており、
前記グランドプレートは、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部と前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部との間に加え、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部と、前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部、前記下方延伸部、および前記端子部との間に位置しており、
前記グランドプレートは、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部と前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部との間に位置する第1のグランドプレート片と、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部と、前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部、前記下方延伸部、および前記端子部との間に位置する第2のグランドプレート片と、を含み、
前記第1のグランドプレート片および前記第2のグランドプレート片は、互いに接触しないように離間して配置されていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記第2のグランドプレート片は、さらに、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記下方延伸部と、前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記下方延伸部および前記端子部との間に位置するよう延伸している請求項に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
記第2のグランドプレート片と前記第1のグランドプレート片は、電気的に接続されていない請求項1または2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングの外側に位置するシールド部材をさらに含み、
前記第2のグランドプレート片は、前記シールド部材と電気的に接続されている請求項1ないし3のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記第1のコンタクト群および前記第2のグランドプレート片を保持するトップハウジングと、前記第2のコンタクト群および前記第1のグランドプレート片を保持するボトムハウジングと、を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記第2のグランドプレート片は、平板状の本体部と、前記本体部の前記相手側コネクタの前記挿抜方向に対して垂直な幅方向の両端側に、前記本体部から上側に延伸するよう形成された一対の突出部と、を有し、
前記トップハウジングは、一対の圧入溝を有しており、
前記第2のグランドプレート片は、前記第2のグランドプレート片の前記一対の突出部をそれぞれ前記トップハウジングの前記一対の圧入溝内に圧入することにより、前記トップハウジングに固定されている請求項に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
先端側から挿入される相手側コネクタと嵌合可能な電気コネクタであって、
絶縁性のハウジングと、
第1のコンタクト平面上に配列するよう前記ハウジングに保持され、前記相手側コネクタの挿抜方向に沿って直線状に延伸する複数のコンタクトから構成される第1のコンタクト群と、
前記第1のコンタクト平面と対向する第2のコンタクト平面上に配列するよう前記ハウジングに保持され、前記相手側コネクタの前記挿抜方向に沿って直線状に延伸する複数のコンタクトから構成される第2のコンタクト群と、
前記第1のコンタクト平面と前記第2のコンタクト平面との間で、前記第1のコンタクト平面および前記第2のコンタクト平面と対向するグランド平面上に位置するよう前記ハウジングに保持されたグランドプレートと、を含み、
前記第1のコンタクト群および前記第2のコンタクト群の前記コンタクトのそれぞれは、前記先端側に位置し、前記相手側コネクタと接触する接点部と、前記接点部から基端側へ水平に延伸する水平延伸部と、前記水平延伸部から下方へ向けて延伸する下方延伸部と、前記下方延伸部から前記基端側へ延伸する端子部と、を有しており、
前記グランドプレートは、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部と前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部との間に加え、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部と、前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部、前記下方延伸部、および前記端子部との間に位置しており、
前記グランドプレートは、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部と前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部との間に位置する第1のグランドプレート片と、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部と、前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部、前記下方延伸部、および前記端子部との間に位置する第2のグランドプレート片と、を含み、
前記ハウジングは、前記第1のコンタクト群および前記第2のグランドプレート片を保持するトップハウジングと、前記第2のコンタクト群および前記第1のグランドプレート片を保持するボトムハウジングと、を含むことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項8】
筐体と、
前記筐体内に設けられた回路基板と、
前記回路基板上に実装された、請求項1ないしのいずれかに記載の電気コネクタと、を含むことを特徴とする電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気コネクタおよび該電気コネクタを含む電子デバイスに関し、より具体的には、上側に配置された第1のコンタクト群のコンタクトと、下側に配置された第2のコンタクト群のコンタクトと間のクロストークを抑制するために、第1のコンタクト群のコンタクトの接点部および水平延伸部と第2のコンタクト群のコンタクトの接点部および水平延伸部との間に加え、第1のコンタクト群のコンタクトの水平延伸部と第2のコンタクト群のコンタクトの水平延伸部、下方延伸部、および端子部との間に位置するグランドプレートを備える電気コネクタおよび該電気コネクタを含む電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子デバイスと他の電子デバイスとを電気的に接続するために電気コネクタが用いられている。電子デバイスと他の電子デバイスとの間の電気的接続を得るために、電子デバイスの筐体内に設けられた回路基板上に実装され、電子デバイスの筐体に設けられた貫通孔から差込口が電子デバイスの外部に露出するレセプタクルコネクタと、レセプタクルコネクタの差込口に挿入されるプラグコネクタの2種類の電気コネクタが組み合わされて用いられる。
【0003】
また、近年の電子デバイスの小型化に伴い、電気コネクタに対する小型化要求が高まっている。そのような電気コネクタに対する小型化要求に応え、USB Type-Cの規格が提案されている(特許文献1および特許文献2参照)。USB Type-Cの規格に従う電気コネクタは、上下対称なデザインを採用しており、コネクタの上下の向きに関わらず、プラグコネクタをレセプタクルコネクタに挿入することが可能となっている。
【0004】
例えば、図1には、USB Type-Cの規格に従う従来の電気コネクタ800が開示されている。電気コネクタ800は、金属製のシェル810と、シェル810の内部に収納される内部構造体820と、を含んでいる。図2に示されているように、内部構造体820は、第1のコンタクト平面上に配列された複数のコンタクト830から構成される第1のコンタクト群830Uと、第2のコンタクト平面上に配列された複数のコンタクト830から構成される第2のコンタクト群830Lと、第1のコンタクト平面と第2のコンタクト平面との間のグランド平面に配置されたグランドプレート840と、第1のコンタクト群830U、第2のコンタクト群830L、およびグランドプレート840を保持する絶縁性のハウジング850と、を含んでいる。
【0005】
ハウジング850は、第1のコンタクト群830Uと一体的に成型されたトップハウジング850Tと、第2のコンタクト群830Lおよびグランドプレート840と一体的に成型されたボトムハウジング850Bと、を含む。トップハウジング850Tは、第1のコンタクト平面上に配列される複数のコンタクト830を、絶縁性樹脂材料を用いてインサート成型することにより得られる。同様に、ボトムハウジング850Bは、第2のコンタクト平面上に配列される複数のコンタクト830およびグランドプレート平面上に配置されるグランドプレート840を、絶縁性樹脂材料を用いてインサート成型することにより得られる。ハウジング850は、トップハウジング850Tとボトムハウジング850Bをオーバーモールドすることにより得られる。
【0006】
図3は、図1の電気コネクタ800のA-A線断面図を示している。図3に示されているように、第1のコンタクト群830Uおよび第2のコンタクト群830Lの複数のコンタクト830のそれぞれは、相手側コネクタのコンタクトと接触する接点部831と、接点部831から基端側へ水平に延伸する水平延伸部832と、水平延伸部832から下方に延伸する下方延伸部833と、下方延伸部833から基端側へ延伸する端子部834と、を有している。
【0007】
電気コネクタ800のような、USB Type-Cの規格に従うレセプタクルコネクタは非常に小型であり、第1のコンタクト群830Uのコンタクト830と第2のコンタクト群830Lのコンタクト830間の離間距離が短い。そのため、第1のコンタクト群830Uのコンタクト830および第2のコンタクト群830Lのコンタクト830に電流が流れた際の上下のコンタクト830間で発生するクロストークが問題となる。USB Type-Cの規格に従うレセプタクルコネクタでは、このようなクロストークを抑制するために、第1のコンタクト群830Uのコンタクト830と第2のコンタクト群830Lのコンタクト830との間にグランドプレート840が配置されている。
【0008】
図2に示されているように、グランドプレート840は、ボトムハウジング850Bの上面に設けられているため、グランドプレート840の長さ(相手側コネクタの挿抜方向の長さ)は、ボトムハウジング850Bの上面の長さに規制される。そのため、グランドプレート840は、第2のコンタクト群830Lのコンタクト830の接点部831および水平延伸部832の先端側部分の上側に位置しているが、第2のコンタクト群830Lのコンタクト830の水平延伸部832の基端側部分、下方延伸部833、および端子部834の上側に配置されていない。そのため、図3に示すように、電気コネクタ800が組み立てられた状態において、第1のコンタクト群830Uのコンタクト830と第2のコンタクト群830Lのコンタクト830との間に、グランドプレート840が存在しない領域が存在してしまう。
【0009】
このように、従来技術の電気コネクタ800においては、第1のコンタクト群830Uのコンタクト830と第2のコンタクト群830Lのコンタクト830との間に、グランドプレート840が存在しない領域が存在している。そのため、該領域において、第1のコンタクト群830Uのコンタクト830と第2のコンタクト群830Lのコンタクト830との間のクロストークを抑制することができず、電気コネクタ800の電気的性能を向上させることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2018-170195号公報
【文献】特開2019-57501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、上側に配置された第1のコンタクト群と、下側に配置された第2のコンタクト群と間のクロストークを効果的に抑制することができる電気コネクタおよび該電気コネクタを含む電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的は、以下の(1)~()の本発明により達成される。
(1)先端側から挿入される相手側コネクタと嵌合可能な電気コネクタであって、
絶縁性のハウジングと、
第1のコンタクト平面上に配列するよう前記ハウジングに保持され、前記相手側コネクタの挿抜方向に沿って直線状に延伸する複数のコンタクトから構成される第1のコンタクト群と、
前記第1のコンタクト平面と対向する第2のコンタクト平面上に配列するよう前記ハウジングに保持され、前記相手側コネクタの前記挿抜方向に沿って直線状に延伸する複数のコンタクトから構成される第2のコンタクト群と、
前記第1のコンタクト平面と前記第2のコンタクト平面との間で、前記第1のコンタクト平面および前記第2のコンタクト平面と対向するグランド平面上に位置するよう前記ハウジングに保持されたグランドプレートと、を含み、
前記第1のコンタクト群および前記第2のコンタクト群の前記コンタクトのそれぞれは、前記先端側に位置し、前記相手側コネクタと接触する接点部と、前記接点部から基端側へ水平に延伸する水平延伸部と、前記水平延伸部から下方へ向けて延伸する下方延伸部と、前記下方延伸部から前記基端側へ延伸する端子部と、を有しており、
前記グランドプレートは、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部と前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部との間に加え、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部と、前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部、前記下方延伸部、および前記端子部との間に位置しており、
前記グランドプレートは、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部と前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部との間に位置する第1のグランドプレート片と、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部と、前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部、前記下方延伸部、および前記端子部との間に位置する第2のグランドプレート片と、を含み、
前記第1のグランドプレート片および前記第2のグランドプレート片は、互いに接触しないように離間して配置されていることを特徴とする電気コネクタ。
【0014】
)前記第2のグランドプレート片は、さらに、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記下方延伸部と、前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記下方延伸部および前記端子部との間に位置するよう延伸している上記()に記載の電気コネクタ。
【0015】
記第2のグランドプレート片と前記第1のグランドプレート片は、電気的に接続されていない上記()または()に記載の電気コネクタ。
【0016】
)前記ハウジングの外側に位置するシールド部材をさらに含み、
前記第2のグランドプレート片は、前記シールド部材と電気的に接続されている上記()ないし()のいずれかに記載の電気コネクタ。
【0018】
)前記ハウジングは、前記第1のコンタクト群および前記第2のグランドプレート片を保持するトップハウジングと、前記第2のコンタクト群および前記第1のグランドプレート片を保持するボトムハウジングと、を含む上記()ないし()のいずれかに記載の電気コネクタ。
【0019】
)前記第2のグランドプレート片は、平板状の本体部と、前記本体部の前記相手側コネクタの前記挿抜方向に対して垂直な幅方向の両端側に、前記本体部から上側に延伸するよう形成された一対の突出部と、を有し、
前記トップハウジングは、一対の圧入溝を有しており、
前記第2のグランドプレート片は、前記第2のグランドプレート片の前記一対の突出部をそれぞれ前記トップハウジングの前記一対の圧入溝内に圧入することにより、前記トップハウジングに固定されている上記()に記載の電気コネクタ。
(7)先端側から挿入される相手側コネクタと嵌合可能な電気コネクタであって、
絶縁性のハウジングと、
第1のコンタクト平面上に配列するよう前記ハウジングに保持され、前記相手側コネクタの挿抜方向に沿って直線状に延伸する複数のコンタクトから構成される第1のコンタクト群と、
前記第1のコンタクト平面と対向する第2のコンタクト平面上に配列するよう前記ハウジングに保持され、前記相手側コネクタの前記挿抜方向に沿って直線状に延伸する複数のコンタクトから構成される第2のコンタクト群と、
前記第1のコンタクト平面と前記第2のコンタクト平面との間で、前記第1のコンタクト平面および前記第2のコンタクト平面と対向するグランド平面上に位置するよう前記ハウジングに保持されたグランドプレートと、を含み、
前記第1のコンタクト群および前記第2のコンタクト群の前記コンタクトのそれぞれは、前記先端側に位置し、前記相手側コネクタと接触する接点部と、前記接点部から基端側へ水平に延伸する水平延伸部と、前記水平延伸部から下方へ向けて延伸する下方延伸部と、前記下方延伸部から前記基端側へ延伸する端子部と、を有しており、
前記グランドプレートは、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部と前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部との間に加え、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部と、前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部、前記下方延伸部、および前記端子部との間に位置しており、
前記グランドプレートは、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部と前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記接点部および前記水平延伸部との間に位置する第1のグランドプレート片と、前記第1のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部と、前記第2のコンタクト群の前記コンタクトの前記水平延伸部、前記下方延伸部、および前記端子部との間に位置する第2のグランドプレート片と、を含み、
前記ハウジングは、前記第1のコンタクト群および前記第2のグランドプレート片を保持するトップハウジングと、前記第2のコンタクト群および前記第1のグランドプレート片を保持するボトムハウジングと、を含むことを特徴とする電気コネクタ。
【0020】
)筐体と、
前記筐体内に設けられた回路基板と、
前記回路基板上に実装された、上記(1)ないし()のいずれかに記載の電気コネクタと、を含むことを特徴とする電子デバイス。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電気コネクタでは、グランドプレートは、第1のコンタクト群のコンタクトの接点部および水平延伸部と第2のコンタクト群のコンタクトの接点部および水平延伸部との間に加え、第1のコンタクト群のコンタクトの水平延伸部と第2のコンタクト群のコンタクトの水平延伸部、下方延伸部、および端子部との間に位置している。このように、本発明の電気コネクタでは、従来技術においてグランドプレートが位置しておらず、第1のコンタクト群のコンタクトと第2のコンタクト群のコンタクトとの間のクロストークを抑制することができなかった領域にも、グランドプレートが位置している。そのため、第1のコンタクト群のコンタクトと第2のコンタクト群のコンタクトとの間のクロストークをより効果的に抑制することができ、電気コネクタの電気的性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来の電気コネクタの斜視図である。
図2図1に示す電気コネクタのハウジングの分解斜視図である。
図3図1の電気コネクタのA-A線断面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る電気コネクタの斜視図である。
図5図4に示す電気コネクタを別の角度から示す斜視図である。
図6図4に示す電気コネクタの分解斜視図である。
図7図6に示す内部構造体の分解斜視図である。
図8図6に示す内部構造体の第1のコンタクト群の斜視図である。
図9図8に示す第1のコンタクト群の平面図である。
図10図6に示す内部構造体の第2のコンタクト群の斜視図である。
図11図10に示す第2のコンタクト群の平面図である。
図12図6に示す内部構造体のグランドプレートの平面図である。
図13図6に示す内部構造体のトップハウジングの下面を示す平面図である。
図14図13に示すトップハウジングによって第1のコンタクト群と第2のグランドプレート片が保持された状態のトップハウジングの平面図である。
図15図6に示す内部構造体のボトムハウジングの上面を示す平面図である。
図16図15に示すボトムハウジングによって第2のコンタクト群と第1のグランドプレート片が保持された状態のボトムハウジングの平面図である。
図17図6に示す内部構造体が形成された状態での第1のコンタクト群、第2のコンタクト群、第1のグランドプレート片、および第2のグランドプレート片の位置関係を示すための斜視図である。
図18図17に示す斜視図を上側から見た平面図である。
図19図17に示す斜視図を下側から見た平面図である。
図20】第1のコンタクト群および第2のコンタクト群の高速信号用コンタクトペアの離間距離と、グランドプレートに形成された流動用開口の幅との関係性を示すための図18中のB-B線断面図の一部拡大図である。
図21図18中のC-C線断面図である。
図22】第2のグランドプレート片とシールド部材との接触を示すための一部拡大図である。
図23図4に示す電気コネクタのYZ平面での断面図である。
図24】本発明の第2実施形態に係る電気コネクタの第2のグランドプレート片の斜視図である。
図25】本発明の第2実施形態に係る電気コネクタのグランドプレートの斜視図である。
図26】本発明の第2実施形態に係る電気コネクタにおける第1のコンタクト群、第2のコンタクト群、第1のグランドプレート片、および第2のグランドプレート片の位置関係を示すためのYZ平面での断面図である。
図27】本発明の第1実施形態に係る電気コネクタの平面図である。
図28】本発明の第1実施形態に係る電気コネクタの底面図である。
図29】本発明の第1実施形態に係る電気コネクタの正面図である。
図30】本発明の第1実施形態に係る電気コネクタの背面図である。
図31】本発明の第1実施形態に係る電気コネクタの左側面図である。
図32】本発明の第1実施形態に係る電気コネクタの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の電気コネクタおよび電子デバイスを、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて、説明する。なお、以下で参照する各図は、本発明の説明のために用意された模式的な図である。図面に示された各構成要素の寸法(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法を反映したものではない。また、各図において、同一または対応する要素には、同じ参照番号が付されている。以下の説明において、各図のZ軸の正方向を「先端側」といい、Z軸の負方向を「基端側」といい、Y軸の正方向を「上側」といい、Y軸の負方向を「下側」といい、X軸の正方向を「手前側」といい、X軸の負方向を「奥側」ということがある。また、Z方向を、「相手側コネクタの挿抜方向」ということがある。
【0024】
<第1実施形態>
最初に、図4から図23を参照して、本発明の第1実施形態に係る電気コネクタを詳述する。図4は、本発明の第1実施形態に係る電気コネクタの斜視図である。図5は、図4に示す電気コネクタを別の角度から示す斜視図である。図6は、図4に示す電気コネクタの分解斜視図である。図7は、図6に示す内部構造体の分解斜視図である。図8は、図6に示す内部構造体の第1のコンタクト群の斜視図である。図9は、図8に示す第1のコンタクト群の平面図である。図10は、図6に示す内部構造体の第2のコンタクト群の斜視図である。図11は、図10に示す第2のコンタクト群の平面図である。図12は、図6に示す内部構造体のグランドプレートの平面図である。図13は、図6に示す内部構造体のトップハウジングの下面を示す平面図である。図14は、図13に示すトップハウジングによって第1のコンタクト群と第2のグランドプレート片が保持された状態のトップハウジングの平面図である。図15は、図6に示す内部構造体のボトムハウジングの上面を示す平面図である。図16は、図15に示すボトムハウジングによって第2のコンタクト群と第1のグランドプレート片が保持された状態のボトムハウジングの平面図である。図17は、図6に示す内部構造体が形成された状態での第1のコンタクト群、第2のコンタクト群、第1のグランドプレート片、および第2のグランドプレート片の位置関係を示すための斜視図である。図18は、図17に示す斜視図を上側から見た平面図である。図19は、図17に示す斜視図を下側から見た平面図である。図20は、第1のコンタクト群および第2のコンタクト群の高速信号用コンタクトペアの離間距離と、グランドプレートに形成された流動用開口の幅との関係性を示すための図18中のB-B線断面図の一部拡大図である。図21は、図18中のC-C線断面図である。図22は、第2のグランドプレート片とシールド部材との接触を示すための一部拡大図である。図23は、図4に示す電気コネクタのYZ平面での断面図である。
【0025】
図4に示す本発明の第1実施形態に係る電気コネクタ1は、防水処理が施された防水機能付きの電気コネクタであり、さらに、USB Type-Cの規格によって定められた仕様に従うよう構成されている。例えば、電気コネクタ1は、携帯電話機、スマートフォン、携帯情報端末、携帯型音楽プレーヤー、電子書籍リーダー等の電子デバイスの筐体(図示せず)内に設けられた回路基板上に、レセプタクルコネクタとして実装される。電気コネクタ1の先端側(+Z方向側)から相手側コネクタが挿入され、相手側コネクタと電気コネクタ1との間の電気的接続が提供される。
【0026】
本発明の電気コネクタ1は、USB Type-Cの規格によって定められた仕様に従うよう構成されている。そのため、電気コネクタ1は、絶縁性のハウジング23の上下面にそれぞれ配置され、グランドプレート22を介して上下対称に対向する第1のコンタクト群21Uおよび第2のコンタクト群21Lを有している。電気コネクタ1は、第1のコンタクト群21Uおよび第2のコンタクト群21Lのコンタクト21間のクロストークを抑制するための様々な特徴を有している。特に、本発明の電気コネクタ1は、従来技術においてグランドプレート等の金属部材が位置していなかった領域においても、グランドプレート22が位置するよう構成されているため、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21と第2のコンタクト群21Lのコンタクト21との間のクロストークを効果的に抑制することができる。
【0027】
図6に示されているように、電気コネクタ1は、内部構造体2と、内部構造体2を外側から覆う金属製のシェル3と、シェル3を外側から覆うシールド部材4と、シェル3の本体部31の外周の先端側部分に取り付けられ、シェル3の係止部32とシールド部材4との間で保持される外側防水シール部材5と、を含む。
【0028】
図7に示されているように、内部構造体2は、第1のコンタクト平面上に配列された複数のコンタクト21から構成される第1のコンタクト群21Uと、第1のコンタクト平面と対向する第2のコンタクト平面に配列された複数のコンタクト21から構成される第2のコンタクト群21Lと、第1のコンタクト平面と第2のコンタクト平面との間で、第1のコンタクト平面および第2のコンタクト平面と対向するグランド平面上に位置するグランドプレート22と、第1のコンタクト群21U、第2のコンタクト群21L、およびグランドプレート22を保持する絶縁性のハウジング23と、ハウジング23内において第1のコンタクト群21Uおよび第2のコンタクト群21Lのコンタクト21のそれぞれと密着し、ハウジング23内を液密に封止するための防水封止部24と、ハウジング23の外側に形成されるアウターモールド25と、アウターモールド25の外周上に取り付けられる内側防水シール部材26と、を含んでいる。
【0029】
図8には、第1のコンタクト群21Uの斜視図が示されており、図9には、第1のコンタクト群21Uを上側から見た平面図が示されている。第1のコンタクト群21Uは、グランドプレート22が配置されたグランド平面よりも上側(+Y方向)に位置する第1のコンタクト平面に配列された複数(図示の形態では、12個)のコンタクト21から構成されている。第1のコンタクト群21Uのコンタクト21は、第1のコンタクト平面上にX軸方向に沿って互いに平行に配列され、ハウジング23のトップハウジング23T(図6および図7参照)の上面上で、互いに絶縁するよう離間した状態で保持されている。
【0030】
複数のコンタクト21のそれぞれは、Z軸方向に沿って直線状に延伸する棒状形状を有している。第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21のそれぞれは、相手側コネクタのコンタクトと接触する先端側(+Z方向側)の接点部211Uと、接点部211Uから基端側(-Z方向側)へ水平に延伸する水平延伸部212Uと、水平延伸部212Uから下方へ向けて延伸する下方延伸部213Uと、下方延伸部213Uから基端側へ延伸する端子部214Uと、トップハウジング23Tのインサート成形時において第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21のそれぞれを接続している接続部をタイバーカットによって打ち抜くことにより形成されたタイバーカット痕215Uと、を有している。
【0031】
第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の接点部211Uは、電気コネクタ1が組み立てられた状態において、先端側からシェル3の先端側開口を介して相手側コネクタが挿入されたときに、相手側コネクタの対応するコンタクトと接触する。この際、相手側コネクタと電気コネクタ1が嵌合状態となり、相手側コネクタと電気コネクタ1との間の電気的接続が提供される。第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の水平延伸部212Uは、接点部211Uの基端から基端側(-Z方向)に水平に延伸している。水平延伸部212Uがトップハウジング23T内に埋め込まれ、コンタクト21がトップハウジング23Tによって固定的に保持される。接点部211Uおよび水平延伸部212Uは、第1のコンタクト平面上に位置している。
【0032】
第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の下方延伸部213Uは、水平延伸部212Uの基端から下方(-Y方向)に延伸している。図5に示されているように、第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21の下方延伸部213Uの基端部がトップハウジング23Tの基端側から外部に露出している。図8に戻り、コンタクト21の端子部214Uは、トップハウジング23Tの基端側から外部に露出している下方延伸部213Uの基端部から基端側(-Z方向)に水平に延伸している。第1のコンタクト群21Uの端子部214Uは、電子デバイスの回路基板に接続される。
【0033】
第1のコンタクト群21Uのコンタクト21のタイバーカット痕215Uは、トップハウジング23Tのインサート成形後に実行されるタイバーカットによって形成される。トップハウジング23Tのインサート成形時においては、トップハウジング23T内における第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21の位置ズレや傾きを防止するため、複数のコンタクト21のそれぞれは接続部によって互いに接続されている。そのため、トップハウジング23Tのインサート成形後に、第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21のそれぞれを接続している接続部を打ち抜き、複数のコンタクト21を互いに分離させるためのタイバーカットが実行される。第1のコンタクト群21Uのコンタクト21のタイバーカット痕215Uは、タイバーカットによって打ち抜かれた接続部の残存部分である。
【0034】
また、第1のコンタクト群21Uを構成する複数のコンタクト21は、相手側コネクタとの間で高周波の差動信号を伝送するための2つの高周波信号コンタクト21Aから構成される二対の高周波信号コンタクトペアCP1と、相手側コネクタとの間で通常の周波数の差動信号を伝送するための2つの通常信号コンタクト21Bから構成される一対の通常信号コンタクトペアCP2と、信号伝送以外の用途で用いられる複数の非信号コンタクト21Cと、を含む。
【0035】
二対の高周波信号コンタクトペアCP1のそれぞれは、隣り合う2つの高周波信号コンタクト21Aから構成されている。二対の高周波信号コンタクトペアCP1は、それぞれ、電気コネクタ1の幅方向(図中のX軸方向)の両側に位置している。さらに、二対の高周波信号コンタクトペアCP1の両側には、非信号コンタクト21Cが配列されている。図8および図9において、二対の高周波信号コンタクトペアCP1のそれぞれの外側に配置されている非信号コンタクト21Cは、相手側コネクタのグランド端子と接触するグランド端子である。一方、二対の高周波信号コンタクトペアCP1のそれぞれの内側に配置されている非信号コンタクト21Cは、電気コネクタ1に電力を供給するための電力供給用端子である。
【0036】
一対の通常信号コンタクトペアCP2は、相手側コネクタとの間で通常の周波数の差動信号を伝送するための2つの通常信号コンタクト21Bから構成されており、二対の高周波信号コンタクトペアCP1の間に配列されている。さらに、一対の通常信号コンタクトペアCP2の両側には、非信号コンタクト21Cが配列されている。一対の通常信号コンタクトペアCP2の両側に配列されている非信号コンタクト21Cのそれぞれは、電気コネクタ1を識別するための信号の伝送に用いられる識別用コンタクトである。
【0037】
このように、第1のコンタクト群21Uは、様々な用途に用いられるコンタクト21を含んでいる。また、USB Type-Cの規格により、複数のコンタクト21の接点部211Uの互いの離間距離(ピッチ)は、互いに等しく(等ピッチ)でなければならないと規定されている。さらに、複数のコンタクト21の接点部211Uのピッチ長も、USB Type-Cの規格によって厳密に決められている。また、複数のコンタクト21の端子部214Uの互いの離間距離は、電子デバイスの回路基板への接続(例えば、はんだ付けによる接続)の実行精度や互いのコンタクト21間のショート(短絡)防止等の観点から、適宜設定される。
【0038】
高周波信号コンタクトペアCP1を構成する隣り合う2つの高周波信号コンタクト21Aは、高周波の差動信号を伝送するために用いられる。そのため、隣り合う2つの高周波信号コンタクト21Aには、向きが正反対の高周波信号が流れる。電磁気分野においてよく知られているように、導体内を流れる電流によって生じるノイズの向きは、導体内を流れる電流の向きに依存する。そのため、互いに反対方向の電流が流れる一対の導体を近づけて配置すると、一対の導体内を流れる電流によって生じるノイズによる他のコンタクト21への影響が、互いに打ち消し合う。
【0039】
図9に示されているように、本発明の電気コネクタ1において、第1のコンタクト群21Uを構成する複数のコンタクト21のうち、二対の高周波信号コンタクトペアCP1のそれぞれを構成する2つの高周波信号コンタクト21Aのそれぞれは、一方から他方に向かって近接する狭ピッチ部216を有している。2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216によって、狭ピッチ領域217が形成されている。
【0040】
2つの高周波信号コンタクト21Aのそれぞれの狭ピッチ部216は、一方の高周波信号コンタクト21Aから他方の高周波信号コンタクト21Aへ向かって接近する2つの接近部2161と、2つの接近部2161の間で高周波信号コンタクト21Aの延伸方向(相手側コネクタの挿抜方向、すなわち、Z方向)に沿って水平に延伸する直線部2162と、を有している。
【0041】
前述のように、2つの高周波信号コンタクト21Aの接点部211U間の離間距離(ピッチ)は、USB Type-Cの規格により定められており、端子部214U間の離間距離は、電子デバイスの回路基板への接続(例えば、はんだ付けによる接続)の実行精度や互いのコンタクト21間のショート(短絡)防止等の観点から、適宜設定される。そのため、USB Type-Cの規格に従う限り、接点部211Uや端子部214Uに、狭ピッチ領域217を形成することはできない。そのため、本発明の電気コネクタ1においては、USB Type-Cの規格や実行精度や互いのコンタクト21間のショート(短絡)防止等の観点からの制限がなく、設計自由度が存在する水平延伸部212Uに、狭ピッチ領域217が形成されている。
【0042】
狭ピッチ領域217において、2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216の直線部2162間の離間距離は、2つの高周波信号コンタクト21Aの他の部分間の離間距離よりも小さい。前述のように、高周波信号コンタクトペアCP1を構成する2つの高周波信号コンタクト21Aのそれぞれには、高周波の差動信号、すなわち、互いに反対方向の電流が流れる。そのため、2つの高周波信号コンタクト21Aのそれぞれ内を流れる電流によって生じるノイズの向きは互いに異なったものとなり、他のコンタクト21に対するノイズの影響が、互いに打ち消し合う。特に、狭ピッチ部216の直線部2162間の離間距離は、他の部分間の離間距離よりも小さくなっている。そのため、狭ピッチ領域217において、2つの高周波信号コンタクト21Aのそれぞれ内を流れる電流(差動信号)によって生じるノイズの他のコンタクト21に対する影響が、打ち消し合う。そのため、狭ピッチ領域217において、2つの高周波信号コンタクト21Aのそれぞれ内を流れる電流(差動信号)によって生じるノイズが他のコンタクト21に与える影響は、他の部分を流れる電流によって生じるノイズが他のコンタクト21に与える影響よりも小さくなる。
【0043】
よく知られているように、互いに離間して配置された2つのコンタクト21(例えば、上下に分かれて配置された第1のコンタクト群21Uのコンタクト21と第2のコンタクト群21Lのコンタクト21)間のクロストークは、一方のコンタクト21内を流れる電流が、他方のコンタクト21に影響を与え、電磁誘導により他方のコンタクト21内に電流が生じることに起因する。そのため、2つのコンタクト21間のクロストークを抑制するためには、一方のコンタクト21内を流れる電流の影響を吸収または低減させることが有用である。
【0044】
狭ピッチ領域217では、2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216の直線部2162間の離間距離は、2つの高周波信号コンタクト21Aの他の部分間の離間距離よりも小さくなっており、2つの高周波信号コンタクト21Aのそれぞれ内を流れる電流(差動信号)によって生じるノイズの他のコンタクト21に対する影響が、打ち消し合う。そのため、狭ピッチ領域217において、高周波信号コンタクト21Aによって生じるクロストークを抑制することができる。
【0045】
なお、図9から明らかなように、狭ピッチ領域217において、高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216の直線部2162と隣り合う非信号コンタクト21Cの水平延伸部212Uとの間の離間距離は、高周波信号コンタクト21Aの他の部分と隣り合う非信号コンタクト21Cの水平延伸部212Uとの間の離間距離よりも大きくなっている。2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216の直線部2162間の離間距離は、クロストーク抑制の観点からは、小さければ小さいほどよい。しかしながら、2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216の直線部2162間の離間距離を小さくしすぎると、2つの高周波信号コンタクト21A間のショート(短絡)の発生リスクの増加、高周波信号コンタクト21Aのインピーダンスの変化、高周波信号コンタクト21Aの反射およびインサーションロス(挿入損失)の増加等のデメリットが生じることから、2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216の直線部2162間の離間距離は、これらのデメリットを含めた複数の要因を考慮に入れ、電気コネクタ1の電気的特性が最も好ましくなるように、適宜設定される。ただし、電気コネクタ1の全体のサイズやコンタクト21の幅、長さ、厚み等の電気コネクタ1の設計バランスにもよるが、狭ピッチ領域217によるクロストーク抑制効果を実質的に得るためには、2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216の直線部2162間の離間距離は、高周波信号コンタクト21Aの幅(X方向の長さ)の1.5倍以下であることが好ましく、更には1.0倍以下であることがより好ましい。
【0046】
同様に、2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216の直線部2162の長さ(Z方向の長さ)は、クロストーク抑制の観点からは、長ければ長いほどよい。しかしながら、接点部211Uの長さ(Z方向の長さ)がUSB Type-Cの規格により定められていることや、電子デバイス内に組み込むために、電気コネクタ1全体の長さが制限されることから、直線部2162の長さは、適宜設定される。ただし、電気コネクタ1の全体のサイズやコンタクト21の幅、長さ、厚み等の電気コネクタ1の設計バランスにもよるが、狭ピッチ領域217によるクロストーク抑制効果を実質的に得るためには、直線部2162の長さは、高周波信号コンタクト21Aの幅(X方向の長さ)の2倍以上であることが好ましく、更には5倍以上であることがより好ましい。
【0047】
このように、本発明の電気コネクタ1においては、高周波信号コンタクトペアCP1を構成する隣り合う2つの高周波信号コンタクト21Aのそれぞれは、一方から他方に向かって近接する狭ピッチ部216を有しており、2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216によって、狭ピッチ領域217が形成されている。そのため、狭ピッチ領域217において、高周波信号コンタクト21Aによって生じるクロストークを効果的に抑制することができる。
【0048】
よく知られているように、クロストークの影響は、コンタクト21内を流れる信号の周波数が高ければ高いほど大きくなる。そのため、本発明の電気コネクタ1では、高周波の差動信号が流れる高周波信号コンタクト21Aのそれぞれが一方から他方に向かって近接する狭ピッチ部216を有しており、2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216によって、狭ピッチ領域217が形成されている。そのため、他の隣り合う2つのコンタクト21に狭ピッチ部216を設けるよりも、より効果的に複数のコンタクト21間のクロストークを抑制することができる。なお、図示の形態では、通常信号コンタクト21Bは、狭ピッチ部216を有していないが、本発明はこれに限られない。例えば、高周波信号コンタクト21Aと同様に、通常信号コンタクト21Bが、狭ピッチ部216を有している態様も、本発明の範囲内である。
【0049】
図10には、第2のコンタクト群21Lの斜視図が示されており、図11には、第2のコンタクト群21Lを上側から見た平面図が示されている。第2のコンタクト群21Lは、グランドプレート22が配置されたグランド平面よりも下側(-Y方向)に位置する第2のコンタクト平面に配列された複数(図示の形態では、12個)のコンタクト21から構成されている。第2のコンタクト群21Lのコンタクト21は、第2のコンタクト平面上にX軸方向に沿って互いに平行に配列され、ハウジング23のボトムハウジング23B(図6および図7参照)の下面上で、互いに絶縁するよう離間した状態で保持されている。
【0050】
図10および図11に示されているように、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21のそれぞれは、基本的に、第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21のそれぞれと同じ構成を有している。すなわち、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21のそれぞれは、相手側コネクタのコンタクトと接触する先端側(+Z方向側)の接点部211Lと、接点部211Lから基端側(-Z方向側)へ水平に延伸する水平延伸部212Lと、水平延伸部212Lから下方へ向けて延伸する下方延伸部213Lと、下方延伸部213Lから基端側へ延伸する端子部214Lと、ボトムハウジング23Bのインサート成形時において第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21のそれぞれを接続している接続部をタイバーカットによって打ち抜くことにより形成されたタイバーカット痕215Lと、を有している。
【0051】
ただし、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21のそれぞれの長さは、第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21のそれぞれの長さよりも短い。また、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21の水平延伸部212Lは、電気コネクタ1の幅方向(X方向)の中心から外側に広がる方向に延伸する外側延伸部2121を有している。そのため、図19に示されているように、平面視において、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21の端子部214Lは、第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21の端子部214Uの間に位置している。図10に戻り、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21の下方延伸部213Lの下方(-Y方向)への延伸量は、第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21の下方延伸部213Uの下方への延伸量よりも少ない。
【0052】
第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21のそれぞれの機能は、上述した第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21のそれぞれの機能と同じである。具体的には、第1のコンタクト群21Uと同様に、第2のコンタクト群21Lは、相手側コネクタとの間で高周波の差動信号を伝送するための2つの高周波信号コンタクト21Aから構成される二対の高周波信号コンタクトペアCP1と、相手側コネクタとの間で通常の周波数の差動信号を伝送するための2つの通常信号コンタクト21Bから構成される一対の通常信号コンタクトペアCP2と、信号伝送以外の用途で用いられる複数の非信号コンタクト21Cと、を含む。また、第2のコンタクト群21Lの高周波信号コンタクト21A、通常信号コンタクト21B、および非信号コンタクト21Cの配置は、第1のコンタクト群21Uと同じである。
【0053】
第1のコンタクト群21Uの高周波信号コンタクトペアCP1を構成する2つの高周波信号コンタクト21Aと同様に、第2のコンタクト群21Lの高周波信号コンタクトペアCP1を構成する2つの高周波信号コンタクト21Aのそれぞれは、一方から他方に向かって近接する狭ピッチ部216を有しており、2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216によって、狭ピッチ領域217が形成されている。
【0054】
なお、第2のコンタクト群21Lの高周波信号コンタクト21Aでは、水平延伸部212Lの基端側部分に外側延伸部2121が形成されているので、第2のコンタクト群21Lの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216は、1つの接近部2161と、直線部2162とから構成されている。
【0055】
第1のコンタクト群21Uおよび第2のコンタクト群21Lは、電気コネクタ1の正面側(相手側コネクタ側)から見て、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の接点部211Uと第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の接点部211Lが、グランドプレート22を介して上下対称となるように、配置されている。
【0056】
また、第1のコンタクト群21Uおよび第2のコンタクト群21Lの接点部211U、211Lおよび水平延伸部212U、212Lの先端側部分(第2のコンタクト群21Lの水平延伸部212Lの外側延伸部2121より先端側の部分)は、グランドプレート22を介して、互いに対向している。このような上下で対向するコンタクト21間でのクロストークは、電気コネクタ1の電気的特性に悪影響を与える。
【0057】
上述のように、高周波の差動信号を伝送するための高周波信号コンタクト21Aによって生じるクロストークは、電気コネクタ1の電気的特性に与える影響が大きい。本発明の電気コネクタ1では、第1のコンタクト群21Uおよび第2のコンタクト群21Lの高周波信号コンタクトペアCP1を構成する2つの高周波信号コンタクト21Aのそれぞれは、一方から他方に向かって近接する狭ピッチ部216を有し、2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216によって、狭ピッチ領域217が形成されている。そのため、狭ピッチ領域217において、高周波信号コンタクト21Aによって生じるクロストークを効果的に抑制することができ、電気コネクタ1の電気的特性を向上させることができる。
【0058】
図12は、グランドプレート22を上側から見た平面図を示している。グランドプレート22は、第1のコンタクト群21Uが配列された第1のコンタクト平面と第2のコンタクト群21Lが配列された第2のコンタクト平面との間で、第1のコンタクト平面および第2のコンタクト平面の双方と平行なグランド平面上に配置されている。グランドプレート22は、上下に分かれて配置された第1のコンタクト群21Uおよび第2のコンタクト群21Lの一方のコンタクト21内を流れる電流の影響を吸収し、一方のコンタクト21を流れる電流が、他方のコンタクト21に影響を与えることを防止し、上下に分かれて配置されたコンタクト21間のクロストークを抑制する。
【0059】
図12に示されているように、グランドプレート22は、第1のグランドプレート片221と、第2のグランドプレート片222と、を含む。第1のグランドプレート片221は、図7に示されているように、ハウジング23のボトムハウジング23Bの上面上に設けられた、金属材料から構成された平板状部材である。図12に戻り、第1のグランドプレート片221は、平板状の本体部2211と、本体部2211の基端から下方(-Y方向)に向かって延伸し、ハウジング23の外部に露出する端子部2212(図5参照)と、を備えている。
【0060】
第1のグランドプレート片221の本体部2211は、ハウジング23のボトムハウジング23Bの上面上に、複数のコンタクト21が配列されている平面(第1のコンタクト平面および第2のコンタクト平面)と平行となるように設けられている。また、本体部2211には、第2のコンタクト群21Lおよび第1のグランドプレート片221を保持するようハウジング23のボトムハウジング23Bをインサート成形する際に、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21の位置決めを行うためのピンを挿通させるための複数の位置決め孔2213と、ハウジング23のボトムハウジング23Bのインサート成形時には接続部を介して互いに接続されている第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21の接続部を打ち抜き、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21を互いに分離させるためのタイバーカットを実行するための複数のタイバーカット孔2214と、ハウジング23のトップハウジング23Tおよびボトムハウジング23Bを互いに密着させた状態において、ハウジング23内部で防水封止部24を形成するために、エラストマー材料をハウジング23内に充填する際のハウジング23内でのエラストマー材料の流動性を確保するための複数の流動用開口2215と、を備えている。
【0061】
位置決め孔2213は、第2のコンタクト群21Lおよび第1のグランドプレート片221を保持するようボトムハウジング23Bをインサート成形する際に第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21のそれぞれの位置決めを行うための位置決めピンを挿通させるために本体部2211に形成されている。なお、ボトムハウジング23Bをインサート成形する際に、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21のそれぞれの位置決めを行うための位置決めピンは、位置決め孔2213に加え、タイバーカット孔2214、および流動用開口2215に挿通されてもよい。本体部2211における位置決め孔2213の数、位置および形状は特に限定されず、ボトムハウジング23Bをインサート成形する際の必要に応じて適宜設定される。
【0062】
タイバーカット孔2214は、ボトムハウジング23Bをインサート成形する際には接続部を介して互いに接続されている第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21の接続部を打ち抜き、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21を互いに分離させるためのタイバーカットを実行するために本体部2211に形成されている。ボトムハウジング23Bをインサート成形する際には、上述のように位置決めピンによる第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21の位置決めが実行されるが、複数のコンタクト21の位置決めをより正確に実行するためには、複数のコンタクト21同士を根元部分において互いに接続された状態で保持することが好ましい。そのため、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21は、ボトムハウジング23Bをインサート成形する時点では、水平延伸部212Lに設けられた接続部によって互いに接続されている。図示の形態では、第2のコンタクト群21Lを構成する複数のコンタクト21のうち、高周波信号コンタクトペアCP1を構成する2つの高周波信号コンタクト21Aと、高周波信号コンタクトペアCP1の左右に位置する2つの非信号コンタクト21Cが接続部により互いに接続されており、第1のコンタクト部品および第2のコンタクト部品がそれぞれ構成されている。具体的には、図10および図11において、第1のコンタクト部品は、X軸の正方向側に位置する高周波信号コンタクトペアCP1を構成する2つの高周波信号コンタクト21Aと、高周波信号コンタクトペアCP1の左右に位置する2つの非信号コンタクト21Cとで、構成されている。一方、第2のコンタクト部品は、X軸の負方向側に位置する高周波信号コンタクトペアCP1を構成する2つの高周波信号コンタクト21Aと、高周波信号コンタクトペアCP1の左右に位置する2つの非信号コンタクト21Cとで、構成されている。さらに、通常信号コンタクトペアCP2を構成する2つの通常信号コンタクト21Bと、通常信号コンタクトペアCP2の左右に位置する2つの非信号コンタクト21Cが接続部により互いに接続されており、第3のコンタクト部品が構成されている。そのため、複数のコンタクト21は、ボトムハウジング23Bをインサート成形する時点では、4つのコンタクト21が互いに接続された3つのコンタクト部品、すなわち、第1のコンタクト部品、第2のコンタクト部品、および第3のコンタクト部品から構成されている。
【0063】
タイバーカットは、ボトムハウジング23Bをインサート成形した後に、第1のコンタクト部品、第2のコンタクト部品、および第3のコンタクト部品の互いに接続された4つのコンタクト21の接続部を打ち抜き、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21を互いに分離させるために実行される。第1のコンタクト部品、第2のコンタクト部品、および第3のコンタクト部品のそれぞれを構成する4つのコンタクト21に対するタイバーカットによって、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21のそれぞれが互いに分離され、複数のコンタクト21のそれぞれにタイバーカット痕215Lが形成される。
【0064】
なお、タイバーカットは、第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21に対しても同様に実行される。第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21と同様に、第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21は、第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21を保持するようトップハウジング23Tがインサート成形された際には、第1のコンタクト部品、第2のコンタクト部品、および第3のコンタクト部品から構成されている。トップハウジング23Tをインサート成形した後に、トップハウジング23Tに形成された開口を介して、第1のコンタクト部品、第2のコンタクト部品、および第3のコンタクト部品の互いに接続された4つのコンタクト21の接続部がタイバーカットにより打ち抜かれ、第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21が、互いに分離される。これにより、第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21のそれぞれが互いに分離され、複数のコンタクト21のそれぞれにタイバーカット痕215Uが形成される。
【0065】
流動用開口2215は、ハウジング23のトップハウジング23Tの下面とボトムハウジング23Bの上面とを互いに密着させた状態において、エラストマー材料をハウジング23内部に充填し、ハウジング23内に防水封止部24(図7参照)を形成するために用いられる。防水封止部24は、ハウジング23内において複数のコンタクト21のそれぞれの一部を囲むように密着して形成された弾性部材である。
【0066】
防水封止部24は、ハウジング23内において、複数のコンタクト21のそれぞれの一部と密着した状態で、複数のコンタクト21のそれぞれの一部を内包する。そのため、防水封止部24によって、ハウジング23内が液密に封止され、防水封止部24より先端側から基端側への水の侵入を防止することができる。このように、防水封止部24は、ハウジング23内の先端側と基端側との間に位置し、ハウジング23内において先端側から基端側への水の侵入経路を遮断し、ハウジング23内での防水機能を提供している。
【0067】
ハウジング23のトップハウジング23Tの下面とボトムハウジング23Bの上面とを互いに密着させた状態において、トップハウジング23Tおよびボトムハウジング23Bの充填用開口233(図7図13、および図15参照)を介して、エラストマー材料がハウジング23内に充填され、防水封止部24がハウジング23内に形成される。流動用開口2215は、防水封止部24を形成する際のエラストマー材料のハウジング23内での流動性を確保するための開口である。
【0068】
流動用開口2215は、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21と第2のコンタクト群21Lのコンタクト21のそれぞれと対向する位置に形成されている。防水封止部24の第1のコンタクト群21Uと第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の一部に対する密着性を高めるためには、トップハウジング23Tおよびボトムハウジング23Bの充填用開口233を介してエラストマー材料がハウジング23内に充填される際に、流動用開口2215より下側に位置する第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21のそれぞれの全周にエラストマー材料を密着させる必要がある。もし、第1のグランドプレート片221の流動用開口2215と対向する部分において、平面視で見た際に、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21が第1のグランドプレート片221と重なっていると、ボトムハウジング23Bをインサート成形する際に、第1のグランドプレート片221の流動用開口2215と対向する部分において、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21のそれぞれの全周を金型で押さえることができない。その結果、ボトムハウジング23Bをインサート成形する際に、第1のグランドプレート片221の流動用開口2215と対向する部分において、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21のそれぞれの周りにボトムハウジング23Bの絶縁性樹脂材料が流れ込んでしまうので、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21のそれぞれの全周を露出させることができない。この場合、防水封止部24の形成時に第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21のそれぞれの全周にエラストマー材料を密着させるための空間を形成することができない。このような理由により、本発明の電気コネクタ1においては、第1のグランドプレート片221の流動用開口2215と対向する部分において、第2のコンタクト群21Lのコンタクト21を、流動用開口2215に対して完全に露出させる必要がある。
【0069】
例えば、図20に示されているように、第2のコンタクト群21Lの高周波信号コンタクトペアCP1を構成する2つの高周波信号コンタクト21Aの外側面間の離間距離W2は、第2のコンタクト群21Lの高周波信号コンタクトペアCP1を構成する2つの高周波信号コンタクト21Aと対向している流動用開口2215の幅(X方向の長さ)W3よりも小さくなっている。このように、第1のグランドプレート片221の流動用開口2215と対向する部分において、第2のコンタクト群21Lのコンタクト21は、流動用開口2215に対して完全に露出しており、これにより、防水封止部24を形成する際に、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21の周囲において、エラストマー材料を十分に流動させ、防水封止部24の第1のコンタクト群21Uと第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の一部に対する密着性を高めることができる。
【0070】
また、図21に示されているように、第1のグランドプレート片221の本体部2211は、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の接点部211Uおよび水平延伸部212Uと第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の接点部211Lおよび水平延伸部212Lとの間に位置している。このような配置により、第1のコンタクト群21Uおよび第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の接点部211U、211Lおよび水平延伸部212U、212Lを流れる電流の影響が、第1のグランドプレート片221の本体部2211に吸収される。そのため、上下に配置されたコンタクト21間のクロストークを抑制することができる。
【0071】
図12に戻り、第2のグランドプレート片222は、グランド平面上において、第1のグランドプレート片221よりも基端側(-Z方向側)に位置する金属材料から構成された部材である。第2のグランドプレート片222は、平板上の本体部2221と、本体部2221の幅方向(X方向)の両端側部分から上方(+Y方向)に延伸する一対の突出部2222と、本体部2221の幅方向(X方向)の両端側部分に位置し、シールド部材4の内側面と接触する一対の電気的接触部2223と、を有している。一対の突出部2222および電気的接触部2223は、本体部2221よりも上方(+Y方向)に位置しており、これにより、第2のグランドプレート片222の一対の突出部2222および電気的接触部2223が、第1のグランドプレート片221に接触しないようになっている。
【0072】
本体部2221は、グランド平面上において、第1のグランドプレート片221の本体部2211よりも基端側に位置する板状部材である。第2のグランドプレート片222の本体部2221は、第1のグランドプレート片221の本体部2211と接触しないように設けられており、グランド平面状において、第1のグランドプレート片221の本体部2211と第2のグランドプレート片222の本体部2221との間にはわずかな隙間が存在している。上述のように第2のグランドプレート片222の一対の突出部2222および電気的接触部2223も、第1のグランドプレート片221に接触しないようになっているので、第2のグランドプレート片222は、第1のグランドプレート片221と離間しており、第1のグランドプレート片221と直接的には電気的に接続されていない。
【0073】
一対の突出部2222は、本体部2221の幅方向(X方向)の両端側部分から上方(+Y方向)に延伸している。一対の突出部2222のそれぞれを、トップハウジング23Tの下面上に形成された圧入溝234(図13参照)内に挿入することにより、トップハウジング23Tの下面上に第2のグランドプレート片222を取り付けることができる。なお、トップハウジング23Tの下面上への第2のグランドプレート片222の取り付けは、トップハウジング23Tをインサート成形により形成した後であって、ボトムハウジング23Bと一体化される前の任意のタイミングで実行される。
【0074】
一対の電気的接触部2223は、本体部2221の幅方向(X方向)の両端側部分から外側に延伸しており、電気的接触部2223の外側の形状は、シールド部材4の内側面にフィットするようになっている(図22参照)。一対の電気的接触部2223をシールド部材4に接触させることにより、第2のグランドプレート片222のグランド(接地)が実現されている。
【0075】
図21に示されているように、第2のグランドプレート片222の本体部2221は、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の水平延伸部212Uと、第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の水平延伸部212L、下方延伸部213L、および端子部214Lとの間に位置している。このような配置により、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の水平延伸部212U、または、第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の水平延伸部212L、下方延伸部213L、および端子部214Lを流れる電流の影響が、第2のグランドプレート片222の本体部2221に吸収される。
【0076】
本発明の電気コネクタ1のグランドプレート22は、従来技術において用いられていた第1のグランドプレート片221に加え、第2のグランドプレート片222を備えている。このように、本発明の電気コネクタ1は、従来技術においてグランドプレート等の金属部材が位置していなかった領域、より具体的には、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の水平延伸部212Uと、第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の水平延伸部212L、下方延伸部213L、および端子部214Lとの間に、グランドプレート22の第2のグランドプレート片222が位置するよう、構成されている。そのため、上下のコンタクト21間のクロストークをより効果的に抑制することができる。
【0077】
図13には、第2のグランドプレート片222が取り付けられるトップハウジング23Tの下面が示されている。図14には、トップハウジング23Tに第1のコンタクト群21Uと第2のグランドプレート片222が保持された状態でのトップハウジング23Tの下面が示されている。
【0078】
図13に示されているように、トップハウジング23Tは、基端側(-Z方向側)に位置する基部231と、基部231から先端側(+Z方向側)へ向かって延伸する舌状部232と、舌状部232の基端側部分に形成された充填用開口233と、基部231の下面の幅方向(X方向)の両端部に形成された一対の圧入溝234と、を有している。トップハウジング23Tは、第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21を保持するよう、インサート成形されることにより形成される。図14に示されているように、第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21を保持するようインサート成形されたトップハウジング23Tの下面上に形成された一対の圧入溝234内に、第2のグランドプレート片222の一対の突出部2222を圧入することにより、第2のグランドプレート片222がトップハウジング23Tの下面上で固定され、第2のグランドプレート片222がトップハウジング23Tによって保持される。
【0079】
舌状部232には、トップハウジング23Tをインサート成形する際に、第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21の位置決めを行うためのピンを挿通させるための複数の位置決め孔2321と、トップハウジング23Tのインサート成形時には接続部を介して互いに接続されている第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21の接続部を打ち抜き、第1のコンタクト群21Uの複数のコンタクト21を互いに分離させるためのタイバーカットを実行するための複数のタイバーカット孔2322と、が形成されている。
【0080】
図15には、第1のグランドプレート片221が設けられるボトムハウジング23Bの上面が示されている。図16には、ボトムハウジング23Bに第2のコンタクト群21Lおよび第1のグランドプレート片221が保持された状態でのボトムハウジング23Bの下面が示されている。
【0081】
図15に示されているように、トップハウジング23Tと同様に、ボトムハウジング23Bは、基端側(-Z方向側)に位置する基部231と、基部231から先端側(+Z方向側)へ向かって延伸する舌状部232と、舌状部232の基端側部分に形成された充填用開口233と、を有している。図16に示されているように、ボトムハウジング23Bの上面上に第1のグランドプレート片221が設けられ、ボトムハウジング23Bの下面側で第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21が保持されている。ボトムハウジング23Bは、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21および第1のグランドプレート片221を保持するよう、インサート成形されることにより形成される。
【0082】
ボトムハウジング23Bの舌状部232には、第1のグランドプレート片221の位置決め孔2213およびタイバーカット孔2214にそれぞれ対応する位置に、ボトムハウジング23Bをインサート成形する際に、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21の位置決めを行うためのピンを挿通させるための複数の位置決め孔2321と、ボトムハウジング23Bのインサート成形時には接続部を介して互いに接続されている第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21の接続部を打ち抜き、第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21を互いに分離させるためのタイバーカットを実行するための複数のタイバーカット孔2322が形成されている。
【0083】
図7に示されているように、第2のグランドプレート片222が下面上に取り付けられたトップハウジング23Tの下面側と、ボトムハウジング23Bの上面側とを密着させることによりハウジング23が形成される。トップハウジング23Tの下面側と、ボトムハウジング23Bの上面側とを密着させたとき、トップハウジング23Tおよびボトムハウジング23Bの充填用開口233と、第1のグランドプレート片221の流動用開口2215が、平面視において重なり合う。
【0084】
トップハウジング23Tの下面側と、ボトムハウジング23Bの上面側とを密着させた後、トップハウジング23Tおよびボトムハウジング23Bの充填用開口233を介して、エラストマー材料がハウジング23内に充填される。ハウジング23内に充填されたエラストマー材料は、第1のグランドプレート片221の流動用開口2215を介して、ハウジング23内で流動する。その後、エラストマー材料が硬化することにより、防水封止部24がハウジング23内に形成される。防水封止部24により、ハウジング23内が液密に封止され、防水封止部24より先端側から基端側への水の侵入を防止することができる。
【0085】
防水封止部24が形成された後、トップハウジング23Tとボトムハウジング23Bとを一体化させるために、トップハウジング23Tとボトムハウジング23Bに対してオーバーモールドが施され、アウターモールド25が形成される。アウターモールド25によってトップハウジング23Tとボトムハウジング23Bとが一体化される。また、図6および図23に示されているように、アウターモールド25の外周面上には、弾性材料から構成されたリング状の内側防水シール部材26が取り付けられており、内部構造体2とシェル3の内側面との隙間が、内側防水シール部材26により、液密に封止されている。内側防水シール部材26は、先端側から基端側への内部構造体2とシェル3の内側面との間の水の侵入経路を遮断し、内部構造体2とシェル3との間での防水機能を提供している。
【0086】
その内部において第1のコンタクト群21U、第2のコンタクト群21L、第1のグランドプレート片221、第2のグランドプレート片222、および防水封止部24を保持するハウジング23を形成した後、アウターモールド25の外周面上に内側防水シール部材26を取り付けることにより、内部構造体2を形成することができる。
【0087】
図17は、内部構造体2が形成された状態での、第1のコンタクト群21U、第2のコンタクト群21L、第1のグランドプレート片221、および第2のグランドプレート片222の位置関係を示すための斜視図である。図18は、第1のコンタクト群21U、第2のコンタクト群21L、第1のグランドプレート片221、および第2のグランドプレート片222を上側から見た平面図である。図19は、第1のコンタクト群21U、第2のコンタクト群21L、第1のグランドプレート片221、および第2のグランドプレート片222を下側から見た平面図である。図20は、図18のB-B線断面図の一部拡大図である。図21は、図18のC-C線断面図である。なお、図17図21では、説明のため、第1のコンタクト群21U、第2のコンタクト群21L、第1のグランドプレート片221、および第2のグランドプレート片222以外の内部構造体2のコンポーネントは、省略されている。また、図20では、図面の簡略化のため、コンタクト21の断面と第1のグランドプレート片221のみを示し、B-B線断面図において表れるコンタクト21の他の部分については省略している。
【0088】
図17および図21に示されているように、内部構造体2(図6参照)が形成された状態において、第1のコンタクト群21Uは、第1のグランドプレート片221および第2のグランドプレート片222の上側に位置しており、第2のコンタクト群21Lは、第1のグランドプレート片221および第2のグランドプレート片222の下側に位置している。また、第1のコンタクト群21Uおよび第2のコンタクト群21L、第1のグランドプレート片221、並びに、第2のグランドプレート片222は、ハウジング23(図7参照)によって互いに離間し、絶縁された状態で保持されている。
【0089】
図17および図21に示されているように、内部構造体2(図6参照)が形成された状態において、第1のグランドプレート片221の本体部2211は、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の接点部211Uおよび水平延伸部212Uと第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の接点部211Lおよび水平延伸部212Lとの間に位置している。さらに、第2のグランドプレート片222の本体部2221は、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の水平延伸部212Uと第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の水平延伸部212L、下方延伸部213L、および端子部214Lとの間に位置している。そのため、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の接点部211Uおよび水平延伸部212Uと第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の接点部211Lおよび水平延伸部212Lとの間のクロストークだけでなく、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の水平延伸部212Uと第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の水平延伸部212L、下方延伸部213L、および端子部214Lとの間のクロストークも抑制することができる。このような構成により、上下のコンタクト21間のクロストークをより効果的に抑制することができる。
【0090】
また、図18に示されているように、第1のコンタクト群21Uの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216は、第1のグランドプレート片221の本体部2211および第2のグランドプレート片222の本体部2221の上側に位置している。すなわち、第1のコンタクト群21Uの高周波信号コンタクトペアCP1を構成する2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216によって形成される狭ピッチ領域217は、第1のグランドプレート片221の本体部2211および第2のグランドプレート片222の本体部2221の双方をまたがって形成されている。前述のように、第1のグランドプレート片221と第2のグランドプレート片222とは接触していないので、第1のグランドプレート片221と第2のグランドプレート片222との間に、コンタクト21を流れる電流の影響を吸収するための金属部材が存在しない領域が存在している。このような領域では、上下のコンタクト間のクロストークを第1のグランドプレート片221および第2のグランドプレート片222によって抑制することができない。特に、このような領域では、高周波の差動信号が流れる高周波信号コンタクトペアCP1を構成する2つの高周波信号コンタクト21Aによって生じるクロストークの影響が大きくなってしまう。
【0091】
しかしながら、本発明の電気コネクタ1では、第1のコンタクト群21Uの隣り合う2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216によって形成される狭ピッチ領域217が、第1のグランドプレート片221の本体部2211および第2のグランドプレート片222の本体部2221の双方をまたがるよう位置している。前述のように、狭ピッチ領域217では、2つの高周波信号コンタクト21Aのそれぞれによって生じるノイズが他のコンタクト21に対して与える影響は、互いに打ち消し合う。そのため、狭ピッチ領域217における、高周波信号コンタクト21Aによって生じるクロストークが抑制される。そのため、第1のグランドプレート片221と第2のグランドプレート片222との間での上下の高周波信号コンタクト21A間のクロストークを抑制することができる。
【0092】
一方、図19に示されているように、第2のコンタクト群21Lの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216は、第1のグランドプレート片221の本体部2221の流動用開口2215と対向する位置に形成されている。換言すれば、第1のグランドプレート片221は、第1のコンタクト群21Uおよび第2のコンタクト群21Lの高周波信号コンタクトペアCP1を構成する2つの高周波信号コンタクト21Aと対向する位置に形成された流動用開口2215を有しており、第2のコンタクト群21Lの高周波信号コンタクト21Aは、第1のグランドプレート片221の流動用開口2215と対向する位置に狭ピッチ部216を有している。
【0093】
上述のように、第1のコンタクト群21Uの隣り合う2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216は、第1のグランドプレート片221の本体部2211および第2のグランドプレート片222の本体部2221の双方をまたがって形成されている一方、第2のコンタクト群21Lの隣り合う2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216は、第1のグランドプレート片221の流動用開口2215と対向するよう形成されている。したがって、図18または図19に示されているような平面図、すなわち、第1のコンタクト群21U、第2のコンタクト群21L、およびグランドプレート22を上側または下側から見た平面図において、第1のコンタクト群21Uの隣り合う2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216は、第2のコンタクト群21Lの隣り合う2つの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ部216と重なっていない。
【0094】
前述したように、ハウジング23内にエラストマー材料を充填し、防水封止部24を形成するために、第1のグランドプレート片221に流動用開口2215が形成されている。しかしながら、第1のグランドプレート片221の流動用開口2215が形成された領域には、コンタクト21を流れる電流の影響を吸収するための金属部材が存在しないため、該領域におけるクロストークを抑制することができない。このような問題に対応するため、本発明の電気コネクタ1は、以下に説明するような、第1のグランドプレート片221の流動用開口2215が形成された領域におけるクロストークを抑制するための構造上の特徴を有している。
【0095】
図20には、第1のグランドプレート片221の流動用開口2215付近を拡大した、図18のB-B線断面図の一部拡大図が示されている。図20に示されているように、第1のグランドプレート片221の流動用開口2215を介して、第1のコンタクト群21Uの高周波信号コンタクトペアCP1を構成する2つの高周波信号コンタクト21Aと、第2のコンタクト群21Lの高周波信号コンタクトペアCP1を構成する2つの高周波信号コンタクト21Aとが対向している。
【0096】
また、流動用開口2215と対向する領域において、第1のコンタクト群21Uの2つの高周波信号コンタクト21A間の空間の幅方向の中心と、第2のコンタクト群21Lの2つの高周波信号コンタクト21A間の空間の幅方向の中心と、流動用開口2215の幅方向の中心とは一致している。すなわち、流動用開口2215と対向する領域において、第1のコンタクト群21Uの2つの高周波信号コンタクト21Aと、第2のコンタクト群21Lの2つの高周波信号コンタクト21Aと、流動用開口2215とは中心が一致している。
【0097】
図20から明らかなように、流動用開口2215と対向する第1のコンタクト群21Uの2つの高周波信号コンタクト21Aの外側面間の離間距離W1は、流動用開口2215の幅W3よりも大きい。なお、2つの高周波信号コンタクト21Aの互いに対向する面を2つの高周波信号コンタクト21Aの内側面といい、2つの高周波信号コンタクト21Aの内側面と反対側の面を2つの高周波信号コンタクト21Aの外側面という。
【0098】
第1のコンタクト群21Uの2つの高周波信号コンタクト21Aの外側面間の離間距離W1が、流動用開口2215の幅W3よりも大きいため、第1のコンタクト群21Uの2つの高周波信号コンタクト21Aは、流動用開口2215に対して完全に露出せず、外側の一部分が、第1のグランドプレート片221の本体部2221と対向する。そのため、流動用開口2215と対向する領域において、第1のコンタクト群21Uの2つの高周波信号コンタクト21Aを流れる電流による影響の大部分が、第1のグランドプレート片221の本体部2221に吸収されることになる。そのため、流動用開口2215と対向する領域において、第1のコンタクト群21Uの2つの高周波信号コンタクト21Aを流れる電流によるクロストークを抑制することができる。
【0099】
一方、上述のように、第2のコンタクト群21Lの高周波信号コンタクトペアCP1を構成する2つの高周波信号コンタクト21Aは、流動用開口2215と対向する位置に狭ピッチ部216を有しており、流動用開口2215と対向する位置に、第2のコンタクト群21Lの高周波信号コンタクト21Aの狭ピッチ領域217が形成されている。そのため、流動用開口2215と対向する領域において、第2のコンタクト群21Lの2つの高周波信号コンタクト21Aの外側面間の離間距離W2は、第1のコンタクト群21Uの2つの高周波信号コンタクト21Aの外側面間の離間距離W1よりも小さくなっている。
【0100】
前述のように、狭ピッチ領域217では、2つの高周波信号コンタクト21Aのそれぞれによって生じるノイズが他のコンタクト21に与える影響は、互いに打ち消し合う。そのため、狭ピッチ領域217では、高周波信号コンタクト21Aによって生じるクロストークが抑制される。そのため、流動用開口2215と対向する領域において、第2のコンタクト群21Lの高周波信号コンタクト21Aによって生じるクロストークを抑制することができる。
【0101】
なお、図20を参照して、第1のコンタクト群21Uの一方の高周波信号コンタクトペアCP1の2つの高周波信号コンタクト21Aの外側面間の離間距離W1と、第2のコンタクト群21Lの一方の高周波信号コンタクトペアCP1の2つの高周波信号コンタクト21Aの外側面間の離間距離W2と、それらに対向する流動用開口2215の幅W3との関係を説明したが、第1のコンタクト群21Uの他方の高周波信号コンタクトペアCP1の2つの高周波信号コンタクト21Aの外側面間の離間距離W1と、第2のコンタクト群21Lの他方の高周波信号コンタクトペアCP1の2つの高周波信号コンタクト21Aの外側面間の離間距離W2と、それらに対向する流動用開口2215の幅W3との関係も同様である。
【0102】
このように、本発明の電気コネクタ1においては、流動用開口2215と対向する領域において、第1のコンタクト群21Uの2つの高周波信号コンタクト21Aの外側面間の離間距離W1と、第2のコンタクト群21Lの2つの高周波信号コンタクト21Aの外側面間の離間距離W2とが互いに異なるようになっている。そのため、流動用開口2215が形成されている領域において、上下の高周波信号コンタクト21A間のクロストークを効果的に抑制することができる。
【0103】
また、流動用開口2215と対向する領域において、第2のコンタクト群21Lの2つの高周波信号コンタクト21Aの外側面間の離間距離W2は、流動用開口2215の幅W3よりも小さく、第2のコンタクト群21Lの2つの高周波信号コンタクト21Aは、流動用開口2215に対して完全に露出している。そのため、上述したように、トップハウジング23Tおよびボトムハウジング23Bの充填用開口233を介して、エラストマー材料をハウジング23内に充填し、ハウジング23内に防水封止部24を形成する際において、防水封止部24の第1のコンタクト群21Uと第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の一部に対する密着性を高めることができ、ハウジング23内の防水性能を向上させることができる。
【0104】
上述したように、本発明の電気コネクタ1は、複数のコンタクト21間のクロストークを抑制するための様々な特徴を含む内部構造体2を有している。特に、本発明の電気コネクタ1は、従来技術においてグランドプレート等の金属部材が位置していなかった領域、より具体的には、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の水平延伸部212Uと、第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の水平延伸部212L、下方延伸部213L、および端子部214Lとの間に、グランドプレート22の第2のグランドプレート片222が位置するよう、構成されている。そのため、第1のコンタクト群21Uおよび第2のコンタクト群21Lのコンタクト21間のクロストークを効果的に抑制することができる。
【0105】
図6に戻り、シェル3は、金属材料から構成された筒状部材であり、内部構造体2を外側から覆う。シェル3は、相手側コネクタの挿抜方向(Z方向)の先端側および基端側を除き、内部構造体2を覆った状態で、内部構造体2を内部に収納する。シェル3は、筒状の本体部31と、本体部31の外周の先端から外側に突出するよう形成された環状の係止部32と、を有している。
【0106】
係止部32は、本体部31の外周の先端から外部に突出するよう形成された環状部であり、本体部31の外周の先端部を覆うよう設けられた外側防水シール部材5を先端側から係止する機能を有している。シェル3において、係止部32が形成されている部分の外径(係止部32の外形)は、係止部32が形成されていない部分の外形(本体部31の外形)よりも大きくなっている。
【0107】
シールド部材4は、シェル3および内部構造体2の第1のコンタクト群21Uおよび第2のコンタクト群21Lの複数のコンタクト21およびグランドプレート22(第1のグランドプレート片221および第2のグランドプレート片222)を外側から覆うことにより、これらコンポーネントを電磁シールド(EMC)する機能を有している。
【0108】
シールド部材4は、金属材料から構成されており、シェル3に対応した筒状形状を有している。シールド部材4をシェル3に取り付けた状態において、シールド部材4の先端部と、シェル3の係止部32との間に空間が形成され、該空間内に外側防水シール部材5が取り付けられる。図22に示されているように、シールド部材4の内側面は、第2のグランドプレート片222の一対の電気的接触部2223と接触している。このような構成により、第2のグランドプレート片222のグランド(接地)が実現されている。
【0109】
図6に戻り、外側防水シール部材5は、シェル3の本体部31の外周上の先端側に取り付けられ、シールド部材4の先端部と、シェル3の係止部32との間で保持される。外側防水シール部材5は、弾性材料から構成されたリング状の部材であり、電気コネクタ1が電子デバイスへ取り付けられた際に、電気コネクタ1が取り付けられた取り付けポートの隙間を介して電子デバイス内へ水が浸入することを防止するために用いられる。
【0110】
図23には、電気コネクタ1の断面図が示されている。図23に示されているように、ハウジング23内部の先端側から基端側への水の侵入経路は、防水封止部24によって遮断されており、ハウジング23内での防水機能が提供されている。一方、ハウジング23とシェル3の内側面との間における先端側から基端側への水の侵入経路は、内側防水シール部材26によって遮断されており、シェル3内での防水機能が提供されている。さらに、シェル3の本体部31の外周の先端側には、外側防水シール部材5が取り付けられており、電気コネクタ1が取り付けられた電子デバイス内への水の侵入が防止されている。
【0111】
<第2実施形態>
次に、図24図26を参照して、本発明の第2実施形態に係る電気コネクタを詳述する。図24は、本発明の第2実施形態に係る電気コネクタの第2のグランドプレート片の斜視図である。図25は、本発明の第2実施形態に係る電気コネクタのグランドプレートの斜視図である。図26は、本発明の第2実施形態に係る電気コネクタにおける第1のコンタクト群、第2のコンタクト群、第1のグランドプレート片、および第2のグランドプレート片の位置関係を示すためのYZ平面での断面図である。なお、説明のため、図26では、第1のコンタクト群21U、第2のコンタクト群21L、第1のグランドプレート片221、および第2のグランドプレート片222以外のコンポーネントは省略されている。
【0112】
以下、第2実施形態の電気コネクタ1について、第1実施形態の電気コネクタ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。本実施形態の電気コネクタ1は、第2のグランドプレート片222の構成が変更されている点を除き、第1実施形態の電気コネクタ1と同じ構成を有している。
【0113】
図24には、本実施形態の電気コネクタ1の第2のグランドプレート片222が示されている。本実施形態の第2のグランドプレート片222は、平板上の本体部2221と、本体部2221の幅方向(X方向)の両端側部分から上方(+Y方向)に延伸する一対の突出部2222と、本体部2221の幅方向(X方向)の両端側部分に位置し、第1のグランドプレート片221と接触する一対の電気的接触部2223と、本体部2221の基端部から下方(-Y方向)に向かって延伸する延伸部2224と、を有している。
【0114】
本体部2221および一対の突出部2222は、第1実施形態の第2のグランドプレート片222と同様であるので、説明を省略する。一方、本実施形態の第2のグランドプレート片222の一対の電気的接触部2223は、本体部2221の幅方向の両端側部分から先端側(+Z方向)に向かって延伸している。図25に示されているように、一対の電気的接触部2223は、シールド部材4ではなく、第1のグランドプレート片221と接触している。そのため、本実施形態においては、第2のグランドプレート片222は、第1のグランドプレート片221と電気的に接続されている。
【0115】
また、図26に示されているように、延伸部2224は、内部構造体2が形成された状態において、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の下方延伸部213Uと、第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の下方延伸部213Lおよび端子部214Lとの間に位置するよう、本体部2221の基端部から下方(-Y方向)に向かって延伸している。すなわち、内部構造体2が形成された状態において、延伸部2224は、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の下方延伸部213Uと、第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の下方延伸部213Lおよび端子部214Lとの間に位置している。
【0116】
第1実施形態では、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の下方延伸部213Uと、第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の下方延伸部213Lおよび端子部214Lとの間にコンタクト21を流れる電流の影響を吸収するための金属部材が存在していなかった。一方、本実施形態では、第1のコンタクト群21Uのコンタクト21の下方延伸部213Uと、第2のコンタクト群21Lのコンタクト21の下方延伸部213Lおよび端子部214Lとの間に延伸部2224が存在しているため、より効果的に上下のコンタクト21間のクロストークを抑制することができる。
【0117】
以上、本発明の電気コネクタを図示の実施形態に基づいて説明したが、上述のような本発明の電気コネクタを備える電子デバイスもまた、本発明の範囲内である。本発明の電子デバイスは、筐体と、筐体内に設けられた回路基板(図示せず)と、回路基板上に実装された上述の電気コネクタを含む。
【0118】
本発明の電気コネクタおよび電子デバイスを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、本発明の各構成に任意の構成のものを付加することができる。
【0119】
例えば、電気コネクタ1の各実施形態において、第2のグランドプレート片222は、インサート成形によりトップハウジング23Tを形成した後に、一対の突出部2222を、第1のグランドプレート片221の下面に形成された一対の圧入溝234内に圧入することにより、トップハウジング23Tに取り付けられるが、本発明はこれに限られない。例えば、第1のコンタクト群21Uおよび第2のグランドプレート片222を保持するように、トップハウジング23Tがインサート成形により形成されてもよい。
【0120】
本発明の属する分野および技術における当業者であれば、本発明の原理、考え方、および範囲から有意に逸脱することなく、記述された本発明の電気コネクタの構成の変更を実行可能であろうし、変更された構成を有する電気コネクタもまた、本発明の範囲内である。例えば、第1実施形態および第2実施形態の電気コネクタを任意に組み合わせた態様も、本発明の範囲内である。
【0121】
また、図4図26に示された電気コネクタの構成要素の数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意の構成要素が追加若しくは組み合わされ、または任意の構成要素が削除された態様も、本発明の範囲内である。
【0122】
また、参考のため、本発明の第1実施形態に係る電気コネクタの6面図を図27図32に示す。図27は、本発明の第1実施形態に係る電気コネクタの平面図である。図28は、本発明の第1実施形態に係る電気コネクタの底面図である。図29は、本発明の第1実施形態に係る電気コネクタの正面図である。図30は、本発明の第1実施形態に係る電気コネクタの背面図である。図31は、本発明の第1実施形態に係る電気コネクタの左側面図である。図32は、本発明の第1実施形態に係る電気コネクタの右側面図である。
【符号の説明】
【0123】
1…電気コネクタ 2…内部構造体 21…コンタクト 21A…高周波信号コンタクト 21B…通常信号コンタクト 21C…非信号コンタクト 21U…第1のコンタクト群 21L…第2のコンタクト群 211U、211L…接点部 212U、212L…水平延伸部 2121…外側延伸部 213U、213L…下方延伸部 214U、214L…端子部 215U、215L…タイバーカット痕 216…狭ピッチ部 2161…接近部 2162…直線部 217…狭ピッチ領域 22…グランドプレート 221…第1のグランドプレート片 2211…本体部 2212…端子部 2213…位置決め孔 2214…タイバーカット孔 2215…流動用開口 222…第2のグランドプレート片 2221…本体部 2222…突出部 2223…電気的接触部 2224…延伸部 23…ハウジング 23B…ボトムハウジング 23T…トップハウジング 231…基部 232…舌状部 2321…位置決め孔 2322…タイバーカット孔 233…充填用開口 234…圧入溝 24…防水封止部 25…アウターモールド 26…内側防水シール部材 3…シェル 31…本体部 32…係止部 4…シールド部材 5…外側防水シール部材 800…電気コネクタ 810…シェル 820…内部構造体 830…コンタクト 830U…第1のコンタクト群 830L…第2のコンタクト群 831…接点部 832…水平延伸部 833…下方延伸部 834…端子部 840…グランドプレート 850…ハウジング 850T…トップハウジング 850B…ボトムハウジング CP1…高周波信号コンタクトペア CP2…通常信号コンタクトペア W1…離間距離 W2…離間距離 W3…幅
図1
図2
図3
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