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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】調湿装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20231025BHJP
   F24F 1/037 20190101ALI20231025BHJP
   F24F 1/0358 20190101ALI20231025BHJP
   F24F 6/08 20060101ALI20231025BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20231025BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20231025BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20231025BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20231025BHJP
   F24F 3/14 20060101ALI20231025BHJP
   F24F 6/00 20060101ALN20231025BHJP
   F24F 13/22 20060101ALN20231025BHJP
   F24F 13/20 20060101ALN20231025BHJP
【FI】
B01D53/26 220
F24F1/037
F24F1/0358
F24F6/08
B01J20/10 D
B01J20/22 A
B01J20/26 A
B01J20/34 H
B01D53/26 231
F24F3/14
F24F6/00 D
F24F13/22 228
F24F13/20 202
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021037933
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138199
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2022-02-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】池上 周司
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-283053(JP,A)
【文献】特表2008-513206(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187893(WO,A1)
【文献】特開2013-156002(JP,A)
【文献】特開平04-011948(JP,A)
【文献】特開2013-076476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26-53/28
B01J 20/00-20/34
F24F 1/00- 3/167
F24F 6/00- 6/18
F24F 13/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物質を吸着する吸着材(57)を有する吸着部(51,52)と、
前記吸着材(57)の表面に水を生成する生成部(56)とを備え、
前記吸着材(57)は、その表面の水を酸性またはアルカリ性とする性質を有し、
前記吸着部(51,52)を通過した空気を室内空間に供給することで、該室内空間の空気の湿度を調節し
前記生成部は、結露水を生成するように空気を冷却する冷却部(56)を含み、
前記吸着部(51,52)は、前記吸着材(57)が設けられた熱交換器(56)を有し、
前記冷却部は、蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路(50)に接続され、蒸発器として機能する前記熱交換器(56)であり、
前記熱交換器(56)は、該熱交換器(56)を通過する空気の温度が露点温度以下になるように、蒸発温度が調節される
調湿装置。
【請求項2】
請求項の調湿装置において、
前記熱交換器(56)を蒸発器とする第1動作と、前記熱交換器(56)を放熱器とする第2動作とを交互に実行させる制御装置(95)を備え、
前記熱交換器(56)は、前記第1動作中において、前記結露水を生成するように前記空気を冷却する調湿装置。
【請求項3】
請求項1または2の調湿装置において、
前記吸着材(57)は、ルイス酸によりその表面の水を酸性とする性質を有する調湿装置。
【請求項4】
請求項1または2の調湿装置において、
前記吸着材(57)は、金属有機構造体を含む調湿装置。
【請求項5】
請求項1または2の調湿装置において、
前記吸着材(57)は、シリカゲルを含む調湿装置。
【請求項6】
請求項1または2の調湿装置において、
前記吸着材(57)は、ポリアクリル酸ナトリウムを含む調湿装置。
【請求項7】
請求項1または2の調湿装置において、
前記吸着材(57)は、その表面の水のpHを5以下、または9以上とする性質を有する調湿装置。
【請求項8】
請求項の調湿装置において、
前記吸着材(57)は、その表面の水のpHを2以上4以下の範囲とする性質を有する調湿装置。
【請求項9】
請求項の調湿装置において、
前記吸着材(57)は、その表面のpHを2未満とする性質を有する調湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸着システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸着材を備えた吸着システムが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の吸着システムは、調湿装置に適用されている。調湿装置は、除湿運転と加湿運転とを行う。除湿運転では、空気に含まれる水分が吸着材に吸着される。水分が奪われた空気は対象空間へ供給される。加湿運転では、吸着材から脱離した水分が空気へ放出される。水分が付与された空気は対象空間へ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-096126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸着材の表面では、カビや菌などの微生物が繁殖する。微生物が繁殖すると、微生物そのもの、あるいは微生物から放出された悪臭が対象空間へ供給される。その結果、対象空間の快適性や衛生状態が損なわれてしまうという問題があった。
【0006】
本開示の目的は、吸着材での菌の繁殖を抑制できる吸着システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、対象物質を吸着する吸着材(57)を有する吸着部(51,52)と、前記吸着材(57)の表面に水を生成する生成部(56)とを備え、前記吸着材(57)は、その表面の水を酸性またはアルカリ性とする性質を有する吸着システムである。
【0008】
第1の態様では、生成部(56)が吸着材(57)の表面に水を生成すると、吸着材(57)の表面の水が酸性またはアルカリ性となる。酸性またはアルカリ性の水により、吸着材(57)の表面の微生物の繁殖を抑制できる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様の吸着システムにおいて、前記生成部は、結露水を生成するように空気を冷却する冷却部(56)を含む。
【0010】
第2の態様では、生成部としての冷却部(56)が空気を冷却すると、空気中から結露水が発生する。この水が吸着材(57)の表面に付着し、酸性またはアルカリ性となる。
【0011】
第3の態様は、第2の態様の吸着システムにおいて、前記吸着部は、前記吸着材(57)が設けられた熱交換器(56)を有し、前記冷却部は、蒸発器として機能する前記熱交換器(56)である。
【0012】
第3の態様では、冷却部としての熱交換器(56)が蒸発器として機能すると、空気中の水分が結露し、吸着材(57)の表面に付着する。この水が酸性またはアルカリ性となる。
【0013】
第4の態様は、第3の態様の吸着システムにおいて、前記熱交換器(56)を蒸発器とする第1動作と、前記熱交換器(56)を放熱器とする第2動作とを交互に実行させる制御装置(95)を備え、前記熱交換器(56)は、前記第1動作中において、前記結露水を生成するように前記空気を冷却する。
【0014】
第4の態様では、制御装置(95)が第1動作と第2動作とを交互に実行させる。第1動作において、制御装置(95)は熱交換器(56)を蒸発器として機能させる。これにより、吸着材(57)に空気中の水分を吸着させることができる。第2動作において、制御装置(95)は熱交換器(56)を放熱器として機能させる。これにより、吸着材(57)に吸着させた水分を空気中へ脱離させることができる。このように第1動作と第2動作とを交互に行うことで、吸着材(57)での水分の吸着と脱離を交互に行うことができる。
【0015】
さらに、第1動作では、蒸発器として機能する熱交換器(56)によって空気が冷却され、結露水が生成される。この結露水が吸着材(57)の表面に付着すると、吸着材(57)の表面において酸性またはアルカリ性の水を生成できる。これにより、水分の吸着と脱離とを交互に行いながら、微生物の繁殖を抑制できる。
【0016】
第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様の吸着システムにおいて、前記吸着材(57)は、ルイス酸によりその表面の水を酸性とする性質を有する吸着システムである。
【0017】
第5の態様では、吸着材(57)から生じるルイス酸により、吸着材(57)の表面の水を酸性またはアルカリ性とする。
【0018】
第6の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様の吸着システムにおいて、前記吸着材(57)は、金属有機構造体を含む吸着システムである。
【0019】
第6の態様では、吸着材(57)に含まれる金属有機構造体により、吸着材(57)の表面の水を酸性とすることができる。
【0020】
第7の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様の吸着システムにおいて、前記吸着材(57)は、シリカゲルを含む吸着システムである。
【0021】
第7の態様は、吸着材(57)に含まれるシリカゲルにより、吸着材(57)の表面の水を酸性とすることができる。
【0022】
第8の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様の吸着システムにおいて、前記吸着材(57)は、ポリアクリル酸ナトリウムを含む吸着システムである。
【0023】
第8の態様では、吸着材(57)に含まれるポリアクリル酸ナトリウムにより、吸着材(57)の表面の水をアルカリ性とすることができる。
【0024】
第9の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様の吸着システムにおいて、前記吸着材(57)は、その表面の水のpHを5以下、または9以上とする性質を有する吸着システムである。
【0025】
第9の態様では、吸着材(57)の表面の水のpHが、微生物の繁殖をより抑制できる状態となる。
【0026】
第10の態様は、第9の態様の吸着システムにおいて、前記吸着材(57)は、その表面の水のpHを2以上4以下の範囲とする性質を有する。
【0027】
第10の態様では、吸着材(57)の表面の水のpHが、微生物の繁殖をさらに抑制できる状態となる。
【0028】
第11の態様は、第9の態様の吸着システムにおいて、前記吸着材(57)は、その表面のpHを2未満とする性質を有する。
【0029】
第11の態様では、吸着材(57)の表面の水のpHが、微生物の繁殖をさらに抑制できる状態となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、実施形態に係る調湿装置の全体構成図である。
図2図2は、実施形態に係る調湿装置の冷媒回路の配管系統図である。
図3図3は、実施形態に係るコントローラと、他の要素部品の接続関係を示すブロック図である。
図4図4は、第1除湿動作の空気の流れを表した、図1に相当する図である。
図5図5は、第2除湿動作の空気の流れを表した、図1に相当する図である。
図6図6は、第1加湿動作の空気の流れを表した、図1に相当する図である。
図7図7は、第2加湿動作の空気の流れを表した、図1に相当する図である。
図8図8は、除湿運転のタイミングチャートである。
図9図9は、加湿運転のタイミングチャートである。
図10図10は、微生物の種類と、それらの生育にためのpHの範囲を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0032】
〈吸着システムの全体構成〉
本発明に係る吸着システムは、調湿装置(10)に適用される。調湿装置(10)は、対象空間の空気の湿度を調節する。対象空間は室内空間である。調湿装置(10)は、空気を除湿する除湿運転と、空気を加湿する加湿運転とを切り換えて行う。調湿装置(10)の対象物質は空気中の水分である。調湿装置(10)は、室内空間の空気の湿度を調節するとともに室内空間の換気を行う。調湿装置(10)は、調湿ユニット(U)と、冷媒回路(50)と、コントローラ(100)とを備える。
【0033】
〈調湿ユニット〉
調湿ユニット(U)について、図1を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる「上」「下」「左」「右」「前」「後」「手前」「奥」は、特にことわらない限り、調湿ユニット(U)を前面側から見た場合の方向を意味している。
【0034】
調湿ユニット(U)は、ケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)内には、冷媒回路(50)が収容されている。冷媒回路(50)には、第1吸着熱交換器(51)、第2吸着熱交換器(52)、圧縮機(53)、四方切換弁(54)、及び、電動膨張弁(55)が接続されている。冷媒回路(50)の詳細は後述する。
【0035】
ケーシング(11)は、やや扁平で高さが比較的低い直方体状に形成されている。ケーシング(11)には、外気吸込口(24)と、内気吸込口(23)と、給気口(22)と、排気口(21)とが形成されている。外気吸込口(24)は第1ダクトを介して室外空間と連通する。内気吸込口(23)は第2ダクトを介して室内空間と連通する。給気口(22)は第3ダクトを介して室内空間と連通する。排気口(21)は第4ダクトを介して室外空間と連通する。
【0036】
外気吸込口(24)及び内気吸込口(23)は、ケーシング(11)の背面パネル部(13)に設けられている。外気吸込口(24)は、背面パネル部(13)の下側部分に設けられている。内気吸込口(23)は、背面パネル部(13)の上側部分に設けられている。給気口(22)は、ケーシング(11)の第1側面パネル部(14)に設けられている。第1側面パネル部(14)において、給気口(22)は、ケーシング(11)の前面パネル部(12)側の端部付近に配置されている。排気口(21)は、ケーシング(11)の第2側面パネル部(15)に設けられている。第2側面パネル部(15)において、排気口(21)は、前面パネル部(12)側の端部付近に配置されている。
【0037】
ケーシング(11)の内部空間には、上流側仕切板(71)と、下流側仕切板(72)と、中央仕切板(73)とが設けられている。これらの仕切板(71~73)は、何れもケーシング(11)の底板に起立した状態で設置されており、ケーシング(11)の内部空間をケーシング(11)の底板から天板に亘って区画している。
【0038】
上流側仕切板(71)及び下流側仕切板(72)は、前面パネル部(12)及び背面パネル部(13)と平行な姿勢で、ケーシング(11)の前後方向に所定の間隔をおいて配置されている。上流側仕切板(71)は、背面パネル部(13)寄りに配置されている。下流側仕切板(72)は、前面パネル部(12)寄りに配置されている。中央仕切板(73)の配置については、後述する。
【0039】
ケーシング(11)内において、上流側仕切板(71)と背面パネル部(13)の間の空間は、上下二つの空間に仕切られており、上側の空間が内気側通路(32)を構成し、下側の空間が外気側通路(34)を構成している。内気側通路(32)は内気吸込口(23)と連通し、外気側通路(34)は外気吸込口(24)と連通する。
【0040】
内気側通路(32)には、内気側フィルタ(27)と、内気温度センサ(91)と、内気湿度センサ(92)とが設置されている。内気温度センサ(91)は、内気側通路(32)を流れる室内空気の温度を計測する。内気湿度センサ(92)は、内気側通路(32)を流れる室内空気の相対湿度を計測する。外気側通路(34)には、外気側フィルタ(28)と、外気温度センサ(93)と、外気湿度センサ(94)とが設置されている。外気温度センサ(93)は、外気側通路(34)を流れる室外空気の温度を計測する。外気湿度センサ(94)は、外気側通路(34)を流れる室外空気の相対湿度を計測する。なお、図4図7では、内気温度センサ(91)、内気湿度センサ(92)、外気温度センサ(93)、及び外気湿度センサ(94)の図示を省略している。
【0041】
ケーシング(11)内における上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間の空間は、中央仕切板(73)によって左右に区画されており、中央仕切板(73)の右側の空間が第1熱交換器室(37)を構成し、中央仕切板(73)の左側の空間が第2熱交換器室(38)を構成している。第1熱交換器室(37)には、第1吸着熱交換器(51)が収容されている。第2熱交換器室(38)には、第2吸着熱交換器(52)が収容されている。また、図示しないが、第1熱交換器室(37)には、冷媒回路(50)の電動膨張弁(55)が収容されている。
【0042】
各吸着熱交換器(51,52)は、対象物質を吸着する吸着部である。図2に示すように、各吸着熱交換器(51,52)は、熱交換器(56)と、熱交換器(56)の表面に設けられた吸着材(57)とをそれぞれ有する。熱交換器(56)は、いわゆるクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器である。吸着材(57)は、熱交換器(56)の表面に担持される。吸着材(57)の詳細は後述する。
【0043】
各吸着熱交換器(51,52)は、全体として長方形の厚板状又は扁平な直方体状に形成されている。各吸着熱交換器(51,52)は、その前面及び背面が上流側仕切板(71)及び下流側仕切板(72)と平行になる姿勢で、熱交換器室(37,38)内に起立した状態で設置されている。
【0044】
ケーシング(11)の内部空間において、下流側仕切板(72)の前面に沿った空間は、上下に仕切られており、この上下に仕切られた空間のうち、上側の部分が給気側通路(31)を構成し、下側の部分が排気側通路(33)を構成している。
【0045】
上流側仕切板(71)には、開閉式の4つのダンパ(41)~(44)が設けられている。各ダンパ(41)~(44)は、概ね横長の長方形状に形成されている。具体的には、上流側仕切板(71)のうち内気側通路(32)に面する部分(上側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1内気側ダンパ(41)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2内気側ダンパ(42)が取り付けられる。また、上流側仕切板(71)のうち外気側通路(34)に面する部分(下側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1外気側ダンパ(43)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2外気側ダンパ(44)が取り付けられる。
【0046】
下流側仕切板(72)には、開閉式の4つのダンパ(45)~(48)が設けられている。各ダンパ(45)~(48)は、概ね横長の長方形状に形成されている。具体的には、下流側仕切板(72)のうち給気側通路(31)に面する部分(上側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1給気側ダンパ(45)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2給気側ダンパ(46)が取り付けられる。また、下流側仕切板(72)のうち排気側通路(33)に面する部分(下側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1排気側ダンパ(47)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2排気側ダンパ(48)が取り付けられる。
【0047】
8つのダンパ(41)~(48)は、空気の流通経路を切り換える切換機構(40)を構成している。
【0048】
ケーシング(11)内において、給気側通路(31)及び排気側通路(33)と前面パネル部(12)との間の空間は、仕切板(77)によって左右に仕切られており、仕切板(77)の右側の空間が給気ファン室(36)を構成し、仕切板(77)の左側の空間が排気ファン室(35)を構成している。
【0049】
給気ファン室(36)には、給気ファン(26)が収容されている。排気ファン室(35)には排気ファン(25)が収容されている。給気ファン(26)及び排気ファン(25)は、何れも遠心型の多翼ファン(いわゆるシロッコファン)である。給気ファン(26)は、下流側仕切板(72)側から吸い込んだ空気を給気口(22)へ吹き出す。排気ファン(25)は、下流側仕切板(72)側から吸い込んだ空気を排気口(21)へ吹き出す。
【0050】
給気ファン室(36)には、冷媒回路(50)の圧縮機(53)と四方切換弁(54)とが収容されている。圧縮機(53)及び四方切換弁(54)は、給気ファン室(36)における給気ファン(26)と仕切板(77)との間に配置されている。
【0051】
〈冷媒回路〉
図2に示すように、冷媒回路(50)は、第1吸着熱交換器(51)、第2吸着熱交換器(52)、圧縮機(53)、四方切換弁(54)、及び、電動膨張弁(55)が設けられた閉回路である。この冷媒回路(50)は、充填された冷媒を循環させることによって、蒸気圧縮冷凍サイクルを行う。図示しないが、冷媒回路(50)には、複数の温度センサ及び圧力センサが取り付けられている。
【0052】
冷媒回路(50)において、圧縮機(53)は、その吐出管が四方切換弁(54)の第1のポートに、その吸入管が四方切換弁(54)の第2のポートにそれぞれ接続されている。また、冷媒回路(50)では、四方切換弁(54)の第3のポートから第4のポートへ向かって順に、第1吸着熱交換器(51)と、電動膨張弁(55)と、第2吸着熱交換器(52)とが配置されている。
【0053】
四方切換弁(54)は、第1のポートと第3のポートが連通して第2のポートと第4のポートが連通する第1状態(図2の(A)に示す状態)と、第1のポートと第4のポートが連通して第2のポートと第3のポートが連通する第2状態(図2の(B)に示す状態)とに切り換え可能となっている。
【0054】
圧縮機(53)は、圧縮機構とそれを駆動する電動機とが一つのケーシングに収容された全密閉型の圧縮機である。この圧縮機(53)の電動機には、インバータを介して交流が供給される。インバータの出力周波数(つまり、圧縮機(53)の運転周波数)を変更すると、電動機とそれによって駆動される圧縮機構の回転速度が変化し、圧縮機(53)の運転容量が変化する。圧縮機構の回転速度を上昇させると、圧縮機(53)の運転容量が増加し、圧縮機構の回転速度を低下させると、圧縮機(53)の運転容量が減少する。
【0055】
〈コントローラ〉
図3に示すコントローラ(95)は、調湿ユニット(U)および冷媒回路(50)を制御する制御装置である。コントローラ(95)は、圧縮機(53)、電動膨張弁(55)、四方切換弁(54)、および切換機構(40)と有線または無線で接続される。コントローラ(95)は、内気湿度センサ(92)、内気温度センサ(91)、外気湿度センサ(94)、及び外気温度センサ(93)と有線または無線で接続される。
【0056】
コントローラ(95)は、内気湿度センサ(92)、内気温度センサ(91)、外気湿度センサ(94)、および外気温度センサ(93)の計測値が受信される受信部を有する。コントローラ(95)は、圧縮機(53)、電動膨張弁(55)、四方切換弁(54)、および切換機構(40)を制御する。コントローラ(95)は、各種の運転を切り換えるように、調湿ユニット(U)および冷媒回路(50)を制御する。
【0057】
-運転動作-
本実施形態の調湿装置(10)は、除湿運転と、加湿運転と、冷却運転と、加熱運転と、単純換気運転とを行う。除湿運転及び加湿運転は、室内空間へ供給される室外空気の絶対湿度の調節を目的とした調湿運転である。つまり、除湿運転及び加湿運転は、主に室内空間の潜熱負荷(除湿負荷又は加湿負荷)を処理するための運転である。冷却運転及び加熱運転は、室内空間へ供給される室外空気の温度の調節を目的とした顕熱処理運転である。つまり、冷却運転及び加熱運転は、主に室内空間の顕熱負荷(冷房負荷又は暖房負荷)を処理するための運転である。単純換気運転は、室内空間の換気だけを行うための運転である。
【0058】
除湿運転、加湿運転、冷却運転、加熱運転、及び単純換気運転のそれぞれでは、給気ファン(26)及び排気ファン(25)が作動する。調湿装置(10)は、吸い込んだ室外空気(OA)を供給空気(SA)として室内空間へ供給し、吸い込んだ室内空気(RA)を排出空気(EA)として室外空間(201)へ排出する。
【0059】
以下、調湿装置(10)が行う除湿運転及び加湿運転について、詳細に説明する。
【0060】
〈除湿運転〉
除湿運転中の調湿装置(10)では、室外空気が外気吸込口(24)からケーシング(11)内へ第1空気として吸い込まれ、室内空気が内気吸込口(23)からケーシング(11)内へ第2空気として吸い込まれる。冷媒回路(50)では、圧縮機(53)が作動し、電動膨張弁(55)の開度が調節される。除湿運転中の調湿装置(10)は、後述する第1除湿動作と第2除湿動作とを数分間ずつ交互に繰り返し行う。除湿運転では、第1除湿動作の実行時間が数分に設定される。第2除湿動作の実行時間が数分に設定される。
【0061】
図4に示すように、除湿運転の第1除湿動作では、切換機構(40)が空気の流通経路を第2経路に設定する。具体的には、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、および第1排気側ダンパ(47)が開状態となり、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、および第2排気側ダンパ(48)が閉状態となる。第1除湿動作中には、四方切換弁(54)が第1状態(図2の(A)に示す状態)に設定される。冷媒回路(50)では冷凍サイクルが行われ、第1吸着熱交換器(51)が放熱器として機能し、第2吸着熱交換器(52)が蒸発器として機能する。
【0062】
外気側通路(34)へ流入した第1空気は、第2外気側ダンパ(44)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、第1空気中の水分が吸着材に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第2吸着熱交換器(52)では、第1空気の温度が幾分低下する。第2吸着熱交換器(52)において除湿された第1空気は、第2給気側ダンパ(46)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内空間へ供給される。
【0063】
内気側通路(32)へ流入した第2空気は、第1内気側ダンパ(41)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、冷媒によって加熱された吸着材から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。第1吸着熱交換器(51)において水分を付与された第2空気は、第1排気側ダンパ(47)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外空間(201)へ排出される。
【0064】
図5に示すように、除湿運転の第2動作では、切換機構(40)が空気の流通経路を第1経路に設定する。具体的には、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が開状態となり、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び、第1排気側ダンパ(47)が閉状態となる。第2動作中には、四方切換弁(54)が第2状態(図2の(B)に示す状態)に設定される。冷媒回路(50)では冷凍サイクルが行われ、第2吸着熱交換器(52)が凝縮器(放熱器)として機能し、第1吸着熱交換器(51)が蒸発器として機能する。
【0065】
外気側通路(34)へ流入した第1空気は、第1外気側ダンパ(43)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、第1空気中の水分が吸着材に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第1吸着熱交換器(51)では、第1空気の温度が幾分低下する。第1吸着熱交換器(51)において除湿された第1空気は、第1給気側ダンパ(45)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内空間へ供給される。
【0066】
内気側通路(32)へ流入した第2空気は、第2内気側ダンパ(42)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、冷媒によって加熱された吸着材から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。第2吸着熱交換器(52)において水分を付与された第2空気は、第2排気側ダンパ(48)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外空間(201)へ排出される。
【0067】
〈加湿運転〉
加湿運転中の調湿装置(10)では、室外空気が外気吸込口(24)からケーシング(11)内へ第2空気として吸い込まれ、室内空気が内気吸込口(23)からケーシング(11)内へ第1空気として吸い込まれる。また、冷媒回路(50)では、圧縮機(53)が作動し、電動膨張弁(55)の開度が調節される。そして、加湿運転中の調湿装置(10)は、後述する第1加湿動作と第2加湿動作とを交互に繰り返し行う。つまり、加湿運転では、第1加湿動作の実行時間が数分に設定される。第2加湿動作の実行時間が数分に設定される。
【0068】
図6に示すように、加湿運転の第1加湿動作では、切換機構(40)が空気の流通経路を第1経路に設定する。具体的には、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び、第2排気側ダンパ(48)が開状態となり、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び、第1排気側ダンパ(47)が閉状態となる。第1加湿動作では、四方切換弁(54)が第1状態(図2の(A)に示す状態)に設定される。冷媒回路(50)では冷凍サイクルが行われ、第1吸着熱交換器(51)が凝縮器(放熱器)として機能し、第2吸着熱交換器(52)が蒸発器として機能する。
【0069】
内気側通路(32)へ流入した第1空気は、第2内気側ダンパ(42)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、第1空気中の水分が吸着材に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第2吸着熱交換器(52)において水分を奪われた第1空気は、第2排気側ダンパ(48)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外空間(201)へ排出される。
【0070】
外気側通路(34)へ流入した第2空気は、第1外気側ダンパ(43)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、冷媒によって加熱された吸着材から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。また、第1吸着熱交換器(51)では、第2空気の温度が幾分上昇する。第1吸着熱交換器(51)において加湿された第2空気は、第1給気側ダンパ(45)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内空間へ供給される。
【0071】
図7に示すように、加湿運転の第2加湿動作では、切換機構(40)が空気の流通経路を第2経路に設定する。具体的には、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び、第1排気側ダンパ(47)が開状態となり、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び、第2排気側ダンパ(48)が閉状態となる。第2動作では、四方切換弁(54)が第2状態(図2の(B)に示す状態)に設定される。冷媒回路(50)では冷凍サイクルが行われ、第2吸着熱交換器(52)が凝縮器(放熱器)として機能し、第1吸着熱交換器(51)が蒸発器として機能する。
【0072】
内気側通路(32)へ流入した第1空気は、第1内気側ダンパ(41)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、第1空気中の水分が吸着材に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第1吸着熱交換器(51)において水分を奪われた第1空気は、第1排気側ダンパ(47)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外空間(201)へ排出される。
【0073】
外気側通路(34)へ流入した第2空気は、第2外気側ダンパ(44)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、冷媒によって加熱された吸着材から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。第2吸着熱交換器(52)では、第2空気の温度が幾分上昇する。第2吸着熱交換器(52)において加湿された第2空気は、第2給気側ダンパ(46)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内空間へ供給される。
【0074】
《実施形態の特徴》
実施形態の特徴について詳細に説明する。
【0075】
(1)吸着材
吸着部である吸着熱交換器(51,52)では、熱交換器(56)に吸着材(57)が担持される。本実施形態の吸着材(57)は、構造柔軟性を有する金属有機構造体(以下、フレキシブルMOFという)を含む。フレキシブルMOFは、金属イオンと有機配位子(例えば、配位子に親水基を持つもの)との組み合わせ、対象分子サイズに適するMOF構造、細孔のサイズなどを再デザインすることにより、対象物質の吸着に適した材料に構成される。本実施形態のフレキシブルMOFの対象物質は、空気中の水分である。
【0076】
本実施形態の吸着材(57)は、その表面の水を酸性とする性質を有する。吸着材(57)の表面に水が付着すると、化学式1の(1)式で示す水分子のヒドロキシ基が、(2)式のように、フレキシブルMOFの金属イオン(M)と反応する。ここで、(M)は例えばAlやZnである。式(2)では、金属イオン(M)が、ルイス酸として機能する。(2)式の反応により、吸着材(57)の表面の水では、水素イオン濃度が高くなり、pHが低下する。その結果、吸着材(57)の表面の水はpHが比較的低い酸性となる。
【0077】
【化1】
【0078】
例えばフレキシブルMOFからなる吸着材(57)の表面の水のpHは3.3であった。
【0079】
(2)生成部
本実施形態の生成部は、熱交換器(56)によって構成される。熱交換器(56)は、結露水を生成するように空気を冷却する冷却部である。具体的には、熱交換器(56)は、蒸発器として機能することで、空気を露点温度以下まで冷却する。熱交換器(56)の周囲において結露水が生成すると、結露水が吸着材(57)の表面に付着する。これにより、上述のようにして吸着材(57)の表面の水が酸性になる。
【0080】
(3)生成動作
コントローラ(95)は、熱交換器(56)によって空気中から結露水を生成させる動作(以下、生成動作という)を実行させる。
【0081】
(3-1)除湿運転での生成動作のタイミング
図8に示す調湿装置(10)の除湿運転では、コントローラ(95)は、第2吸着熱交換器(52)を蒸発器とする第1動作と、第2吸着熱交換器(52)を放熱器とする第2動作とを交互に実行させる。調湿装置(10)の除湿運転では、コントローラ(95)は、第1吸着熱交換器(51)を放熱器とする第2動作と、第1吸着熱交換器(51)を蒸発器とする第1動作とを交互に実行させる。言い換えると、第1除湿動作において、コントローラ(95)は、第1吸着熱交換器(51)で第2動作を実行させると同時に第2吸着熱交換器(52)で第1動作を実行させる。第2除湿動作において、コントローラ(95)は、第1吸着熱交換器(51)で第1動作を実行させると同時に第2吸着熱交換器(52)で第2動作を実行させる。
【0082】
コントローラ(95)は、各吸着熱交換器(56)のそれぞれの第1動作中に生成動作を実行させる。具体的には、コントローラ(95)は、第1除湿動作において、第2吸着熱交換器(52)の第1動作中に生成動作を実行させる。コントローラ(95)は、第2除湿動作において、第1吸着熱交換器(51)の第1動作中に生成動作を実行させる。
【0083】
コントローラ(95)は、第1動作において、時点t1から時点t2に亘って生成動作を実行する。時点t1は、第1動作の終了時点に対応する。時点t1は、時点t2からΔT1だけ前の時点に対応する。除湿運転の生成動作の実行時間(ΔT1)は、第1動作の実行時間にα%を乗じた値に設定される。ここでαは、吸着材(57)の特性(吸着等温線)や、除湿運転の運転条件などに応じて決定される。
【0084】
(3-2)加湿運転での生成動作のタイミング
図9に示す調湿装置(10)の加湿運転では、コントローラ(95)は、第2吸着熱交換器(52)を蒸発器とする第1動作と、第2吸着熱交換器(52)を放熱器とする第2動作とを交互に実行させる。調湿装置(10)の加湿運転では、コントローラ(95)は、第1吸着熱交換器(51)を放熱器とする第2動作と、第1吸着熱交換器(51)を蒸発器とする第1動作とを交互に実行させる。言い換えると、第1加湿動作において、コントローラ(95)は、第1吸着熱交換器(51)で第2動作を実行させると同時に第2吸着熱交換器(52)で第1動作を実行させる。第2加湿動作において、コントローラ(95)は、第1吸着熱交換器(51)で第1動作を実行させると同時に第2吸着熱交換器(52)で第2動作を実行させる。
【0085】
コントローラ(95)は、各吸着熱交換器(56)のそれぞれの第1動作中に生成動作を実行させる。具体的には、コントローラ(95)は、第1加湿動作において、第2吸着熱交換器(52)の第1動作中に生成動作を実行させる。コントローラ(95)は、第2加湿動作において、第1吸着熱交換器(51)の第1動作中に生成動作を実行させる。
【0086】
コントローラ(95)は、第1動作において、時点t3から時点t4に亘って生成動作を実行する。時点t4は、第1動作の終了時点に対応する。時点t4は、時点t3からΔT2だけ前の時点に対応する。加湿運転の生成動作の実行時間(ΔT2)は、第1動作の実行時間にβ%を乗じた値に設定される。ここでβは、吸着材(57)の特性(吸着等温線)や、加湿運転の運転条件などに応じて決定される。
【0087】
(3-3)生成動作の具体的な制御
第1動作が開始されると、コントローラ(95)は、吸着熱交換器(56)を流れる空気の温度が露点温度より高い所定温度になるように、吸着熱交換器(56)(熱交換器(57))の蒸発温度を制御する。コントローラ(95)は、圧縮機(53)の回転数を調節することにより、熱交換器(56)の蒸発温度を制御する。
【0088】
吸着熱交換器(56)を流れる空気の露点温度は、温度センサと湿度センサの計測値から求めることができる。具体的には、室外空気(OA)が吸着熱交換器(56)に送られる場合、コントローラ(95)は、外気温度センサ(93)の計測値と、外気湿度センサ(94)の計測値とに基づいて室外空気(OA)の露点温度を求める。室内空気(RA)が吸着熱交換器(56)に送られる場合、コントローラ(95)は、内気温度センサ(91)の計測値と、内気湿度センサ(92)の計測値とに基づいて室内空気(RA)の露点温度を求める。
【0089】
第1動作において、生成動作が実行されるまでは、吸着材(57)に空気中の水分が吸着される。次いで、生成動作が実行されると、コントローラ(95)は、吸着熱交換器(56)を流れる空気の温度が露点温度以下となるように、熱交換器(57)の蒸発温度を制御する。その結果、空気中から結露水が生成する。生成した結露水は、吸着材(57)の表面に付着する。
【0090】
上述したように、吸着材(57)は、その表面の水を酸性とする性質を有する。このため、吸着材(57)の表面の水を酸性とすることができ、吸着材(57)における微生物の繁殖を抑制できる。
【0091】
(4)微生物の繁殖と、pHの関係
図10は、微生物の種類と、それらの微生物の生育のためのpHの範囲を表している。「生育最適範囲」は、微生物の生育に適したpHの範囲である。pHがこの範囲内にあれば微生物の増殖が促される。「生育限界範囲」は微生物が生育可能なpHの範囲である。pHがこの範囲外にあると、微生物は生存できなくなる。
【0092】
吸着材(57)は、その表面の水のpHを5以下とする性質を有するのが好ましい。これにより、吸着材(57)の表面での一般細菌の繁殖を効果的に抑制できる。
【0093】
吸着材(57)は、その表面の水のpHを2以上4以下の範囲とする性質を有するのが好ましい。これにより、吸着材(57)の表面におけるカビ、酵母、一般細菌、スペイン風インフルエンザウィルスのそれぞれの繁殖を効果的に抑制できる。
【0094】
吸着材(57)は、その表面の水のpHを2未満とする性質を有するのが好ましい。これにより、吸着材(57)の表面におけるカビ、酵母、一般細菌、スペイン風インフルエンザウィルスのそれぞれの発生自体を抑制できる。
【0095】
(5)実施形態の効果
吸着材(57)は、その表面に水を酸性とする性質を有する。このため、吸着材(57)の表面の水を酸性とすることができ、微生物の繁殖を抑制できる。吸着材(57)を除菌するために他の装置を設ける必要がなく、吸着システムの簡素化を図ることができる。
【0096】
生成部は、空気中で結露水を生成する冷却部(熱交換器(56))である。このため、吸着材(57)に水を供給する装置を設けずとも、吸着材(57)の表面で水を生成できる。
【0097】
熱交換器(56)は、第1動作が実行される毎に吸着材(57)の表面に結露水を生成する。このため、吸着材(57)の表面の水を酸性に維持できるので、微生物の繁殖を確実に抑制できる。
【0098】
加えて、コントローラ(95)は、第1動作の終了直前に生成動作を実行する。このため、第1動作では、生成動作が実行されるまでの間に、吸着材(57)に十分な水分を吸着できる。
【0099】
《実施形態の変形例》
上述した実施形態は、以下のような変形例の構成であってもよい。
【0100】
〈変形例1-吸着部〉
実施形態の吸着部は、熱交換器(56)に吸着材(57)が設けられた方式である。しかし、吸着部は、回転可能なロータの表面に吸着材(57)が設けられたロータ式であってもよいし、空気が通過可能な基材の表面に吸着材(57)が設けられた吸着素子式であってもよい。これらの実施形態では、ロータ式や吸着素子式の吸着部の上流側に、空気を冷却する冷却部を配置する。冷却部によって空気を露点温度以下まで冷却することで、吸着材(57)の表面に水を付着させることができる。
【0101】
〈変形例2-冷却部〉
冷却部は、蒸発器として機能する熱交換器(56)でなくてもよい。冷却部は、冷水やブラインなどが流れる熱交換器であってもよいし、ペルチェ素子などの熱電素子であってもよい。
【0102】
〈変形例3-生成部〉
生成部は、吸着材(57)に水を供給する手段であってもよい。例えば生成部は、水配管と、該水配管を流れた水を吸着材(57)に水を噴霧する噴霧器とを有してもよい。
【0103】
〈変形例4-吸着材〉
吸着材(57)は、金属有機構造体以外の材料を含んでいてもよい。
【0104】
(変形例4-1)
吸着材(57)は、シリカゲルを含んでいてもよい。シリカゲルは、周囲に水が存在する状態において化学式2の(3)式に示すように、シラノール基(-SiOH)から水素イオンを生成する性質を有する。このため、吸着材(57)の表面に水が付着すると、この水が酸性となる。これにより、吸着材(57)の表面での微生物の繁殖を抑制できる。
【0105】
【化2】
【0106】
(変形例4-2)
吸着材(57)は、ポリアクリル酸ナトリウムを含んでいてもよい。吸着材(57)の表面に水が付着すると、化学式3の(4)式で示す水分子の水素イオンが、(5)式に示すように、カルボキシル基のナトリウム塩(-COONa)と反応し、水酸化物イオン濃度が高くなる。その結果、吸着材(57)の表面の水はpHが比較的高いアルカリ性となる。
【0107】
【化3】
【0108】
図10に示すように、カビ、酵母、一般細菌、スペイン風邪インフルエンザウィルスなどは、pHの生育最適範囲や生育限界範囲が酸性側にある。このため、吸着材(57)の表面の水のpHをアルカリ性とすることで、微生物の繁殖を抑制できる。
【0109】
吸着材(57)は、その表面の水のpHを9以上とする性質を有するのが好ましい。これにより、吸着材(57)の表面での微生物の繁殖をさらに抑制できる。
【0110】
〈変形例5-生成動作のタイミング〉
吸着材(57)の表面で水を生成する生成動作のタイミングは、必ずしも第1動作中の終了直前でなくてもよい。コントローラ(95)は、例えば調湿装置(10)の除湿運転や加湿運転を含む運転の終了時において、生成動作を実行してもよい。コントローラ(95)は、例えば調湿装置(10)の除湿運転や加湿運転を含む運転の開始時において、生成動作を実行してもよい。
【0111】
〈変形例6-対象物質〉
吸着材(57)の対象物質は、空気中の水以外であってもよく、例えば二酸化炭素や揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)や他の悪臭物質であってもよい。
【0112】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0113】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0114】
以上説明したように、本開示は、吸着システムについて有用である。
【符号の説明】
【0115】
10 調湿装置(吸着システム)
51 第1吸着熱交換器(吸着部)
52 第2吸着熱交換器(吸着部)
56 熱交換器(冷却部、生成部)
57 吸着材
95 コントローラ(制御装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10