(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】竪型粉砕機
(51)【国際特許分類】
B02C 15/04 20060101AFI20231025BHJP
B02C 23/16 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B02C15/04
B02C23/16
(21)【出願番号】P 2020027137
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】三隅 高寛
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-051500(JP,A)
【文献】特開2011-224473(JP,A)
【文献】特開2016-221493(JP,A)
【文献】特開2008-081694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 15/00 - 15/16
B02C 23/00 - 23/40
F23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転テーブルと、前記回転テーブルに従動する粉砕ローラを備えて、前記回転テーブルの上方から供給した原料を前記粉砕ローラで粉砕するとともに、粉砕物を前記回転テーブルの下方から供給したガスにより吹き上げて、分級機構を介して上部取出口からガスとともに取り出す竪型粉砕機において、
前記回転テーブルのダムリング上からケーシング側面に沿って前記分級機構の内部コーンまで延出して、前記回転テーブルと前記内部コーンの間のスペースと、ガス吹き上げ通路を隔てる円筒部材を設け、
前記円筒部材は前記粉砕物を前記回転テーブル上から前記ガス吹き上げ通路へ排出する排出口を備え
、
前記排出口は、前記粉砕ローラの原料噛み込み後の側面に取り付けて、所定粒径の微粉のみが通過できるように調整可能な柵状又は格子状又はパンチングメタル状に形成したスクリーンを取り付けることを特徴とする竪型粉砕機。
【請求項2】
請求項
1に記載された竪型粉砕機であって、
前記円筒部材は、前記ダムリング上からケーシング側面に沿って延出して前記排出口を有する第1部材と、
前記第1部材の内周に沿って設けて前記第1部材の上端よりも下方から前記ケーシング側面に沿って前記内部コーンまで延出する第2部材を有することを特徴とする竪型粉砕機。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載された竪型粉砕機であって、
前記円筒部材は、ケーシングと内部コーンの間の上方に側面視で外側から内側に向けて凹状に湾曲させたくびれ部を設けたことを特徴とする竪型粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に石炭、オイルコークス、セメント原料などを被粉砕物として粉砕する竪型粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント原料、石炭、オイルコークスなどを粉砕して微粉化させる竪型粉砕機がある。竪型粉砕機は回転テーブルと、これに従動する複数の粉砕ローラを備え、回転テーブル中心の上方から原料を供給すると、原料は遠心力で外周に押し出されて回転テーブルと粉砕ローラの間に噛み込まれて圧縮とせん断力により粉砕される。粉砕物は回転テーブルの外周部とケーシングの間を上方へ流れるガス気流に乗って上昇し搬送される。このようにガス気流を利用して粉砕物を上方からケーシング外へ排出する一方で、ガス気流によって搬送できない大きい粒径の粉砕物はケーシング下方のバケットエレベータによってケーシングの上方から再度回転テーブル上に供給して所望の粒径となるまで繰り返し粉砕される(例えば特許文献1に開示)。
前述のガス気流は、粉砕物をケーシング内の上方へ搬送するために、一例としてバケットエレベータを備えた粉砕機のとき風速40~45m/sや、バケットエレベータがなくガス気流のみで粗粉を吹き上げるためにより高速の90~100m/sなどに設定する必要がある。
【0003】
しかしながら、このような現状の速い風速では消費電力が多くなり、またケーシングへの負荷が多くなるため風速を低く設定することが求められている。
また粒径の大きい粉砕物を再供給するために用いるバケットエレベータは、再供給量が増えると処理能力を高めるために設備を大型化しなければならず好ましくない。このように再粉砕のため機内で再循環させる粉砕物の量を少なくすることが省エネと生産性を向上させるための課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、原料を効率良く粉砕すると共に、ガス気流による粉粒体の搬送効率を高めた竪型粉砕機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、回転テーブルと、前記回転テーブルに従動する粉砕ローラを備えて、前記回転テーブルの上方から供給した原料を前記粉砕ローラで粉砕するとともに、粉砕物を前記回転テーブルの下方から供給したガスにより吹き上げて、分級機構を介して上部取出口からガスとともに取り出す竪型粉砕機において、
前記回転テーブルのダムリング上からケーシング側面に沿って前記分級機構の内部コーンまで延出して、前記回転テーブルと前記内部コーンの間のスペースと、ガス吹き上げ通路を隔てる円筒部材を設け、
前記円筒部材は前記粉砕物を前記回転テーブル上から前記ガス吹き上げ通路へ排出する排出口を備え、
前記排出口は、前記粉砕ローラの原料噛み込み後の側面に取り付けて、所定粒径の微粉のみが通過できるように調整可能な柵状又は格子状又はパンチングメタル状に形成したスクリーンを取り付けることを特徴とする竪型粉砕機を提供することにある。
上記第1の手段によれば、所定粒径の微粉となるまで確実に粉砕することができる。またガスが回転テーブル上に吹き込んだり、粗粉が混入したりすることがなくガス気流の風速を抑えて粉粒体を効率良く搬送することができる。
また粉砕する微粉を任意の粒径に調整することができる。所定粒径まで粉砕されない原料又は粗粉が回転テーブルから落下することなく、微粉となるまで回転テーブル上に留めることができる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記円筒部材は、前記ダムリング上からケーシング側面に沿って延出して前記排出口を有する第1部材と、
前記第1部材の内周に沿って設けて前記第1部材の上端よりも下方から前記ケーシング側面に沿って前記内部コーンまで延出する第2部材を有することを特徴とする竪型粉砕機を提供することにある。
上記第2の手段によれば、排出口の取り付け位置を任意に変えることができる。また摩耗の進行し易い第1部材のみ交換又はメンテナンスできる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1又は第2の手段において、前記円筒部材は、ケーシングと内部コーンの間の上方に側面視で外側から内側に向けて凹状に湾曲させたくびれ部を設けたことを特徴とする竪型粉砕機を提供することにある。
上記第3の手段によれば、ガスがくびれ部の湾曲に沿って旋回することができスムーズに吹き上がると共に、粉粒体の接触によるケーシング及び円筒部材の摩擦を低減できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定粒径の微粉となるまで確実に粉砕することができる。またガスが回転テーブル上に吹き込んだり、粗粉が混入したりすることがなくガス気流の風速を抑えて粉粒体を効率良く搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の竪型粉砕機の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0013】
[竪型粉砕機1]
図1は、本発明の竪型粉粒体の説明図である。
図2は円筒部材の説明図である。
図3は排出口の斜視図である。
図4は排出口の側面の断面図である。
図1に示すように竪型粉砕機1は、外郭を形成する上部ケーシング1A及び下部ケーシング1Bと、下部ケーシング1Bの下方に設置された減速機2Bと図示しない駆動モータによって駆動される回転テーブル2、コニカル型の粉砕ローラ3を備えている。
図2に示すように粉砕ローラ3は回転テーブル2の外周部分に位相を90度ずらした形で4個配置している。また
図1に示すように回転テーブル2の上方には、形状がほぼ円錐型の内部コーン6を配置し、内部コーン6の上部に固定式の一次分級羽根7が配置されている。そして内部コーン6の上方で一次分級羽根7の内側には、回転式分級羽根8を設置している。回転式分級羽根8は竪型粉砕機1の上部に設置された図示しない駆動モータによって駆動されて、自在に回転する構成となっている。本実施形態では回転式分級羽根8と一次分級羽根7を合わせて分級機構9と称している。分級機構9の中心及び内部コーン6の下部開口の中心と同軸上に円筒状の原料供給口10を配置している。原料供給口10から原料を回転テーブル2上に供給できる。
また竪型粉砕機1は、回転テーブル2の下方にガスを導入するためのガス導入口11と、重量の大きな原料を取り出すための排出シュート12と、回転テーブル2の上方にガスと共に粉砕物(所定粒径の製品)を取り出す上部取出口13を備えている。
【0014】
回転テーブル2の外周部分に対向する下部ケーシング1Bの内周面は、円筒状に形成されており、回転テーブル2の外周部分と竪型粉砕機1の下部ケーシング1Bとの間で環状の隙間を設けている。ガス導入口11から供給されたガスは、下部ケーシング1Bの下方、回転テーブル2の下方へと吹き込まれる。そして、吹き込まれたガスは、下部ケーシング1Bの内壁に沿ったガス吹き上げ通路を吹き上がり、分級機構9を通過した後、上部取出口13へと流れるガスの気流が生じる構成となっている。
本実施形態では、回転テーブル2のダムリング5上からケーシング側面に沿って分級機構9の内部コーン6まで延出して、回転テーブル2の内周を囲んで、回転テーブル2上と内部コーン6の間のスペースと、ガス吹き上げ通路を隔てる円筒部材20を設けている。円筒部材20は回転テーブル2とほぼ同径で、ケーシングと同様に所定強度の鋼材を用いた円筒であり、下端を回転テーブル2のダムリング5上に所定間隔を開けて接触を回避可能に配置し、上端を内部コーン6と所定間隔を開けて原料供給時の圧力損失を回避可能に配置し、複数の円筒部材支持部21を用いて下部ケーシング1Bに固定している。円筒部材20は一枚タイプの円筒であるが、この他、円筒を複数分割した分割タイプの部品を複数枚組み合わせることで1つの円筒を形成する構成であっても良い。ダムリング5上に円筒部材20を設けることにより回転テーブル2上に流れ込もうとするガス気流がなくなり、ガス吹き上げ通路に沿って下方からガスを吹き上げることができる。
【0015】
円筒部材20は、粉砕物を回転テーブル2上からガス吹き上げ通路へ排出する排出口22を備えている。排出口22は、粉砕ローラ3と同数個であって、粉砕ローラ3の原料噛み込み後の側面のみに取り付けている。なお、あらかじめ開口面積の異なる(幅又は高さの長さが異なる)排出口22を備えた円筒部材20を複数用意しておき、円筒部材20を交換することにより排出口22の開口面積を任意に変更するように構成しても良い。この排出口22には、柵状又は格子状又はパンチングメタル状に形成したスクリーンを着脱可能に取り付けている。スクリーンは、所定粒径の微粉のみが通過できるように開口(柵状の場合は長孔、格子状の場合は四角孔、パンチングメタルの場合は丸穴)の面積を任意に調整するように構成している。このような排出口22の構成により、遠心力によって粉砕物を回転テーブル2上からガス吹き上げ通路へ排出できる。排出口22は微粉のみが通過する柵状又は格子状又はパンチングメタル状のスクリーンを取り付けているので、スリット又は網目などの開口を通過できない粒径の大きい原料は排出されず回転テーブル2上に留まり、バケットエレベータを使用することなく再度粉砕することができる。
【0016】
[変形例1]
図5は変形例の円筒部材の説明図である。図示のように変形例の円筒部材20Aは、第1部材23a及び第2部材23bを組み合わせた構成である。第1部材23aは、ダムリング5上から下部ケーシング1B側面に沿って途中まで延出して前記排出口22を有している。排出口22は前述と同様の構成を採用している。第2部材23bは、第1部材23aの内周に沿って設けて第1部材23aの上端よりも下方から下部ケーシング1B側面に沿って内部コーン6まで延出している。第2部材23bは複数の円筒部材支持部21を用いて下部ケーシング1Bに固定している。一方、第1部材23aは円筒部材支持部21を用いて円筒の軸回りを回転可能に取り付けている。第1部材23aの構成により、排出口22の位置を円筒の軸回りで任意箇所に移動させることができる。
図6はくびれ部の斜視図である。図示のように円筒部材20Bは、下部ケーシング1Bと内部コーン6の間の上方に側面視で外側から内側に向けて凹状に湾曲させたくびれ部24を設けた構成でも良い。このようなくびれ部24の構成により、下部ケーシング1Bの内壁に沿って形成されたガス吹き上げ通路を吹き上がるガスが、拡径した上方へ流れる際に、スムーズに流れを変える旋回流のスペースが生じて、内部コーン6に直接当たることが少なくなり、上方へ流れ易くなり、ケーシング及び内部コーン6の摩耗を抑えることができる。
【0017】
[作用]
上記構成による本発明の竪型粉砕機1の作用について以下説明する。
原料が原料供給口10から回転テーブル2上に供給されると、遠心力で回転テーブル2の外周に押し出されて回転テーブル2と粉砕ローラ3の間に噛み込まれて粉砕される。所定粒径の微粉は、粉砕ローラ3による原料噛み込み後、円筒部材20の側面に設けた排出口22からガス吹き上げ通路へ排出される。排出口22のスクリーンを通過できない粒径の大きい原料、粉砕が十分でない粗粉は、回転テーブル2上に留まり、後段の粉砕ローラ3によって再粉砕されて前記微粉となるまで繰り返される。
一方、排出口22を通過した粉砕物は、円筒部材20とケーシングの間のガス吹き上げ通路を上方へ流れるガス気流に乗って上昇して分級機構9へ搬送される。このときガス気流は、円筒部材20の外周が案内板や風向き制御板の役割を果たし、スムーズなガスの吹き上げをもたらし、無駄のない搬送が実現できる。
このように原料を所定粒径の微粉に粉砕した後、円筒部材20の外周に沿ってスムーズにガス気流によって吹き上げることができるため、旋回流などのロスがなくなり、ガス気流の風速を従来構成の約半分、一例として風速20~23m/sまで低下できる。
また従来の竪型粉砕機の場合、供給される原料の量を130とすると、粉砕後、上部取出口13から回収される製品の量は100で、排出シュート12から回収されて再粉砕される原料又は粗粉の量は30となっており、原料の2~3割程度がバケットエレベータによって上方の上部取出口13へ搬送して再粉砕することになる。本発明の竪型粉砕機1によれば、粉砕が不十分な粗粉が回転テーブル2上から落下しないため、バケットエレベータに高度な搬送能力が必要ない。
さらに、円筒部材20の上方にくびれ部24を設けることにより、ガスがくびれ部24の湾曲に沿って旋回することができスムーズに吹き上がると共に、粉粒体の接触によるケーシング及び円筒部材20の摩擦を低減できる。
【0018】
従来の構成では、下部ケーシング1B内の回転テーブル2上が開放状態であったため、下方から吹き上がるガス気流の影響を受けて原料が十分に粉砕されないまま回転テーブル2上から落下したり、粉砕物を上方の分級機構9まで吹き上げる際に回転テーブル2上で旋回流が生じたりして、ロスがあったためガス気流の風速を高く設定せざるを得なかったが、本発明の竪型粉砕機1の構成により円筒部材20で回転テーブル2上と内部コーン6の間のスペースと、ガス吹き上げ通路を隔てて、回転テーブル2上と内部コーン6の間を囲うことができ、ガス気流の影響を受けることがない。回転テーブル2上に供給された原料が確実に粉砕されるまでテーブル上に留めることができる。またガス吹き上げ通路を吹き上がるガスで回転テーブル2上に旋回流が発生することがない。従って、原料を効率良く粉砕できると共に、ガス気流による粉粒体の搬送効率を高めることができる。
【0019】
このような本発明によれば、所定粒径の微粉となるまで確実に粉砕することができる。またガスが回転テーブル上に吹き込んだり、粗粉が混入したりすることがなくガス気流の風速を抑えて粉粒体を効率良く搬送することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 竪型粉砕機
1A 上部ケーシング
1B 下部ケーシング
2 回転テーブル
2B 減速機
3 粉砕ローラ
5 ダムリング
6 内部コーン
7 一次分級羽根
8 回転式分級羽根
9 分級機構
10 原料供給口
11 ガス導入口
12 排出シュート
13 上部取出口
20,20A,20B 円筒部材
21 円筒部材支持部
22 排出口
23a 第1部材
23b 第2部材
24 くびれ部