(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】穀物調製設備の制御方法
(51)【国際特許分類】
B02B 7/00 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
B02B7/00 101Z
(21)【出願番号】P 2021085004
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2023-06-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】頼岡 誠治
(72)【発明者】
【氏名】原本 晃郎
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-014053(JP,A)
【文献】特開平04-087643(JP,A)
【文献】特開2018-020293(JP,A)
【文献】特開2004-008930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の籾摺手段と、前記複数の籾摺手段とデータの送受信が可能な単一の管理制御手段と、を備えた穀物調製設備において、
前記管理制御手段は、前記複数の籾摺手段の各排出部から排出される摺落米又は混合米の流量データを受信し、前記摺落米又は混合米の該流量データに基づいて、前記複数の籾摺手段の供給部から供給される原料籾の供給流量を制御すること
が可能であって、
前記各籾摺手段には、それぞれロール摩耗量検出手段を備え、
前記管理制御手段は、前記ロール摩耗量検出手段とデータの送受信が可能であって、前記各籾摺手段の前記ロール摩耗量検出手段の摩耗量検出値を受信するとともに、前記摺落米又は混合米の流量データに基づき、前記複数の籾摺手段全体の摺落米又は混合米の流量の総量を算出し、前記流量の総量を維持させるために、
前記摩耗量検出値が他の籾摺手段よりも大きい籾摺手段に対しては、原料籾の供給流量を減少させる一方、
前記摩耗量検出値が他の籾摺手段よりも小さい籾摺手段に対しては、原料籾の供給流量を増加させる制御を行い、
これら制御を行った後に、前記複数の籾摺手段全体の摺落米又は混合米の流量の総量を再度算出し、前記制御を行う前後の前記流量の総量を確認することを特徴とする穀物調製設備の制御方法。
【請求項2】
前記管理制御手段は、前記摺落米又は混合米の流量データを、あらかじめ設定した下限しきい値と比較し、前記下限しきい値よりも小さい値を示す籾摺手段があった場合には、当該籾摺手段への原料籾の供給流量を増加させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の穀物調製設備の制御方法。
【請求項3】
前記管理制御手段は、前記摺落米又は混合米の流量データを、あらかじめ設定した上限しきい値と比較し、前記上限しきい値よりも大きい値を示す籾摺手段があった場合には、当該籾摺手段への原料籾の供給流量を減少させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の穀物調製設備の制御方法。
【請求項4】
前記管理制御手段は、各籾摺手段から受信する検出値をデータ履歴として記録し、前記データ履歴に基づいて運転休止させる籾摺手段を判別することを特徴とする請求項1乃至3に記載の穀物調製設備の制御方法。
【請求項5】
前記管理制御手段は、前記籾摺手段のいずれかに配設されることを特徴とする請求項1乃至4に記載の穀物調製設備の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物共同乾燥調製施設やライスセンタにおいて、籾摺(すり)手段への最適な穀粒(籾)の供給流量を自動的に設定可能な制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、穀物共同乾燥調製施設やライスセンタでは、籾から籾殻を脱離(脱ぷ)するために複数の籾摺手段(籾摺機など)を配設し、これら籾摺機を同時に稼働して生産性を上げることが行われている。例えば、特許文献1には、一つの穀物共同乾燥調製施設又はライスセンタに複数の籾摺機を配設し、それら籾摺機を遠隔操作するための制御手段を設置することが記載されている。
【0003】
上記特許文献1によれば、オペレータが各籾摺機まで移動し、直接操作を行う必要がない。よって、作業負担が軽減されるとともに作業効率が向上するという効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1にあっては、遠隔で操作することは可能であるが、各籾摺機に供給する籾の供給流量等の制御手法は開示されておらず、熟練したオペレータが経験に基づいて行うことを想定していた。このため、オペレータの負担となっていた。
【0006】
本発明は、上記問題点にかんがみ、オペレータの負担を軽減することを目的に、籾摺手段への原料籾の供給流量を自動的に設定可能な最適運転制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、穀物調製設備の制御方法において、複数の籾摺手段と、前記複数の籾摺手段とデータの送受信が可能な単一の管理制御手段と、を備えた穀物調製設備において、前記管理制御手段は、前記複数の籾摺手段の各排出部から排出される摺落米又は混合米の流量データを受信し、前記摺落米又は混合米の該流量データに基づいて、前記複数の籾摺手段の供給部から供給される原料籾の供給流量を制御することが可能であって、
前記各籾摺手段には、それぞれロール摩耗量検出手段を備え、前記管理制御手段は、前記ロール摩耗量検出手段とデータの送受信が可能であって、前記各籾摺手段の前記ロール摩耗量検出手段の摩耗量検出値を受信するとともに、前記摺落米又は混合米の流量データに基づき、前記複数の籾摺手段全体の摺落米又は混合米の流量の総量を算出し、前記流量の総量を維持させるために、前記摩耗量検出値が他の籾摺手段よりも大きい籾摺手段に対しては、原料籾の供給流量を減少させる一方、前記摩耗量検出値が他の籾摺手段よりも小さい籾摺手段に対しては、原料籾の供給流量を増加させる制御を行い、これら制御を行った後に、前記複数の籾摺手段全体の摺落米又は混合米の流量の総量を再度算出し、前記制御を行う前後の前記流量の総量を確認するという技術的手段を講じた。
【0008】
また、前記管理制御手段は、前記摺落米又は混合米の流量データを、あらかじめ設定した下限しきい値と比較し、前記下限しきい値よりも小さい値を示す籾摺手段があった場合には、当該籾摺手段への原料籾の供給流量を増加させる制御を行うことを特徴とするものである。
【0009】
さらに、前記管理制御手段は、前記摺落米又は混合米の流量データを、あらかじめ設定した上限しきい値と比較し、前記上限しきい値よりも大きい値を示す籾摺手段があった場合には、当該籾摺手段への原料籾の供給流量を減少させる制御を行うことを特徴とするものである。
【0011】
加えて、前記管理制御手段は、各籾摺手段から受信する検出値をデータ履歴として記録し、該データ履歴に基づいて運転休止させる籾摺手段を判別することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の籾摺手段と、前記複数の籾摺手段とデータの送受信が可能な単一の管理制御手段と、を備えた穀物調製設備において、前記管理制御手段は、前記複数の籾摺手段の各排出部から排出される摺落米又は混合米の流量データを受信し、前記摺落米又は混合米の該流量データに基づいて、前記複数の籾摺手段の供給部から供給される原料籾の供給流量を制御することを特徴とするものであるので、各籾摺手段に原料籾を供給する際の供給流量にバラツキがある場合であっても、各籾摺手段に最適な量の原料籾の供給を自動的に行うことが可能となり、オペレータの負担が軽減される効果がある。
【0013】
また、前記管理制御手段は、前記摺落米又は混合米の流量データを、あらかじめ設定した下限しきい値と比較し、前記下限しきい値よりも小さい値を示す籾摺手段があった場合には、当該籾摺手段への原料籾の供給流量を増加させる制御を行うことを特徴とするので、原料籾を供給する供給手段の供給流量が低下している籾摺手段に最適な量の原料籾の供給を自動的に行うことが可能となる。
【0014】
さらに、前記管理制御手段は、前記摺落米又は混合米の流量データを、あらかじめ設定した上限しきい値と比較し、前記上限しきい値よりも大きい値を示す籾摺手段があった場合には、当該籾摺手段への原料籾の供給流量を減少させる制御を行うことを特徴とするものであるから、原料籾を供給する供給手段の供給流量が上限しきい値を超えている籾摺手段に最適な量の原料籾の供給を自動的に行うことが可能となる。
【0015】
そして、前記各籾摺手段には、それぞれロール摩耗量検出手段を備え、前記管理制御手段は、前記ロール摩耗量検出手段とデータの送受信が可能であって、前記各籾摺手段の前記ロール摩耗量検出手段の摩耗量検出値と、前記摺落米又は混合米の流量データとを受信するとともに、前記摺落米又は混合米の流量データに基づき、前記複数の籾摺手段全体の摺落米又は混合米の流量の総量を算出する一方、前記摺落米又は混合米の流量の総量を維持させながら、前記摩耗量検出値が他の籾摺手段よりも大きい籾摺手段に対しては、原料籾の供給流量を減少させ、前記摩耗量検出値が他の籾摺手段よりも小さい籾摺手段に対しては、原料籾の供給流量を増加させる制御を行うことを特徴とするものである。
この特徴により、脱ぷロールが摩耗し、すべり長さが小さくなり脱ぷ率が低下した籾摺手段への原料籾の供給流量を減少させることでその籾摺手段の脱ぷ率の低下を抑えつつ、前記減少させた分の原料籾をロール摩耗量の小さい籾摺手段に振り分けて供給する制御となる。
このため、ロール間隙を狭めることなく、各籾摺部への原料籾の供給流量を制御することで、脱ぷロールの摩耗が原因となる脱ぷ率及び加工処理量の低下を軽減することが可能な籾摺手段の運転を自動的に行うことが可能となる。
加えて、穀物調製設備全体での原料籾の供給流量は維持されるので、生産性が低下しないというメリットもある。
【0016】
また、前記管理制御手段は、各籾摺部から受信する検出値をデータ履歴として記録し、該データ履歴に基づいて運転休止させる籾摺部を判別することを特徴とするので、他の手段を設けることなく、運転休止のタイミングを自動的に決定することができる。
【0017】
さらに、前記管理制御手段は、前記籾摺部のいずれかに配設することができるので、設置する際に、設置スペースを別途用意する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】穀物調製設備の各工程の流れを示すフロー図である。
【
図5】流量計(シャッタを閉じた状態)の概略断面図である。
【
図6】流量計(シャッタを開いた状態)の概略断面図である。
【
図7】穀物調製設備の制御部の概略ブロック図である。
【
図8】穀物調製設備の籾摺部で籾摺作業を行う際の制御フローチャートである。
【
図9】穀物調製設備の籾摺部で籾摺作業を行う際の制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は穀物調製設備1の各工程の流れを示すフロー図である。
図2は穀物調製設備1の概略図である。
図3は籾摺部2A及び風選部3Aを説明するための概略断面図である。
【0020】
図1乃至
図3に示すように、本発明の穀物調製設備1は、一対の脱ぷロール2a,2bからなる籾摺部2と、籾摺後の摺米から籾殻やしいなや軽い夾雑物を風選別する風選部3と、風選された混合米を揺動選別作用によって籾、玄米及び混合米のそれぞれに選別する揺動選別部4と、選別された玄米のうち、粒が充実した整粒と未熟粒との篩分けを行う粒選別部5とを主要部としている。
【0021】
なお、本発明では、一対の脱ぷロール2a,2bで形成される間隙tを通過した原料を「摺落米」とし、風選部3を通過した摺落米を「混合米」としている。
【0022】
前記籾摺部2と風選部3とは重設して一体構造となし、風選部3と揺動選別部4との間は、混合米揚穀機6及び混合米タンク7を介して連絡している。また、前記揺動選別部4と粒選別部5との間は、玄米揚穀機8を介して連絡している。
【0023】
符号9は籾返還用揚穀機であり、揺動選別部4での選別籾や籾摺部2で籾摺処理できなかったオーバーフロー籾などを揚穀して前記籾摺部2へ再供給するための役目を果たす。符号10は各部を制御するための制御部である。符号11は吸引ファンであり、風選部3で分離された籾殻や夾雑物を機外に排出するための役目を果たす。符号12は籾摺部2の原料タンクである。符号13(
図1参照)は籾摺部2への籾の戻りタンクである。符号9aは揚穀機9で揚穀された籾を原料タンク12に供給するか機外排出とするかを切り換える切り換え弁である。符号8aは揚穀機8で揚穀された玄米を粒選別機5に供給するか機外排出とするかを切り換える切り換え弁である。
【0024】
籾摺部2の原料タンク12には、原料籾の下限値を検知する下限センサ12aが設けられており(
図1参照)、下限センサ12aがオンした場合(つまり、原料が溜まっている状態)に、すぐに、籾摺部2を起動するか否かの時間をユーザが設定することができる。一方、下限センサ12aがオフした場合(つまり、原料がなくなった状態)に、すぐに、籾摺部2を停止するか否かの時間をユーザが設定することができる。
【0025】
籾摺部2の戻りタンク13には、原料籾の上限値を検知する上限センサ13aが設けられている(
図1参照)。この上限センサ13aは、戻り籾のオーバーフローを検知するものであり、上限センサ13aがオンした場合(つまり、戻り籾が多くなり、戻りタンクから溢れ出る直前の状態)に、すぐに、揺動選別部4を停止するか否かの時間をユーザが設定することができる。
【0026】
一方、上限センサ13aがオフした場合(つまり、戻り籾が少なくなった状態)に、すぐに、揺動選別部4を起動するか否かの時間をユーザが設定することができる。
さらに、上限センサ13aがオンした場合(つまり、戻り籾が多くなり、戻りタンクから溢れ出る状態)に、すぐに、警報を発するか否かの時間をユーザが設定することもできる。
【0027】
原料タンク12内の原料籾と戻りタンク13内の戻り籾は、これらタンクの下方に設けた分岐弁17に送られ、前記分岐弁17から各籾摺部2に供給される。
図1では、三つの籾摺部2A,2B,2Cを設けているが、籾摺部の数は三つに限定されない。穀物調製設備の規模に応じて籾摺部2の台数を適宜変更することが可能であり、風選部の台数も適宜変更すればよい。加えて、揺動選別部4や粒選別部5の台数も変更することが望ましい。
【0028】
符号14は、前記風選部3と混合米揚穀機6との間を連絡する混合米排出流路であり、符号15は、前記風選部3から排出された未熟米と籾返還用揚穀機9との間を連絡する未熟米排出流路であり、符号16は、前記風選部3から排出された籾殻を排出する籾殻排出流路である。また、該混合米排出流路14には、各風選部3から排出される混合米の流量を検出するための流量計90が設けられる。
【0029】
前記籾摺部2について
図3を用いて説明する。
図3に示すように、本発明の一実施形態に係る籾摺部2は、機枠21内にゴム製の一対の脱ぷロール2a,2bを回転可能に配設した脱ぷ部20と、前記脱ぷロール2a,2bの上方に設けられ、籾ホッパー22及び流量調整用の振動フィーダ23を備えて籾を貯留しつつ適宜な繰出しを行う籾供給部24と、前記籾供給部24から供給される籾を前記脱ぷロール2a,2bの間に形成される間隙tに案内する案内シュート部25とから主要部が構成される。また、符号33は、脱ぷロール2a,2bを回転させるための駆動モータである。
【0030】
そして、一対の前記脱ぷロール2a,2bの周速度を互いに異にして反対方向に回転させ、脱ぷロール2a,2b間の周速度の差により籾殻をせん断破壊して籾摺りを行う形態(ロール式籾摺機)である。
【0031】
前記籾供給部24は、籾ホッパー22の投入口26から張り込んだ穀粒(籾)を、振動フィーダ23の振動機構27により振動トラフ28を振動させることで、トラフ先端から均等かつ並列的に適量の籾を送り込む作用を奏する。振動トラフ28には、適宜流量調節板29が設けられ、籾の送り込み量を調節したり規制したりすることができる。符号30は、籾ホッパー22に付設された原料有無センサであり、該センサの検知により、籾摺部2の駆動をオン・オフ制御することができる。
なお、振動フィーダに代えて、ロータリーバルブ、ゲート式の搬送手段を使用してもよい。
【0032】
前記案内シュート部25は、幅が25~30cm程度、長さが0.8m~1.5m程度に形成された滑流板31と、該滑流板31の底部に配設した角度調整機構32とから構成され、水平から60°程度の傾斜角をもって設けられている。前記滑流板31の幅は、前記脱ぷロール2a,2bの幅が10インチのサイズであれば25.4cmであるので、これとほぼ等しい幅に設定されている。
【0033】
そして、前記滑流板31を、その長さ方向に延びる仮想線と前記脱ぷロール2a,2bの中心を結ぶ線とがほぼ垂直に交差するように配置すれば、脱ぷロール2a,2bに籾が供給される際に、籾がはじかれて姿勢が乱れることが少なくなり、脱ぷ時の砕粒の発生を抑えることができる。
【0034】
脱ぷロール2a,2bは、稼働時間に比例して摩耗し、ゴム層の厚みが減少していく。この減少は摩耗量検出センサ53(53a,53B)で検出する。該摩耗量検出センサ53には、例えば、カメラを用いたセンサや、接触センサ、光電センサ等を用いることができる。
摩耗量検出センサ53にてゴム層の摩耗量、すなわち擦り減った時の厚みを検出できる。したがって、該厚みがあらかじめ設定した基準値よりも小さくなった時点で、メンテナンス(脱ぷロール交換など)のために籾摺部2の運転を中止することができる。
【0035】
上記間隙tを通過した原料(摺落米)は、玄米と籾殻に分離された後、均分スクリューコンベア32を通過して風選部3(3A,3B,3C)に送られる。
【0036】
図3に示すように、均分スクリューコンベア32を通過した摺落米は漏斗部34を流下する。分流板36は、送風ファン35によって発生する気流を棚板47の上方と下方とに分岐させるためのものである。また、送風ファン35は、ファンモータ35bにより駆動する。
【0037】
符号91は、混合米(籾、玄米)排出口である。符号37は混合米受樋38に流下した混合米を前記混合米排出口91に搬送する混合米用スクリユーコンベアである。
符号39は未熟粒排出口であり、籾や玄米よりも軽く、かつ籾穀よりも重い未熟粒の排出口である。符号40は、未熟粒受樋41に流下した未熟粒を未熟粒排出口39に搬送する 未熟粒用スクリユーコンベアである。符号42は、前記未熟粒受樋41の上方にあって未熟粒排出口39の排出量を増減するためのバルブである。
符号43は籾殻排出口であり、籾穀や塵埃の排出口である。符号44は、籾穀受樋45内に収集された籾穀を籾殻排出口43に搬送する籾穀用スクリユーコンベアである。
【0038】
次に、風選部3における摺落米の流れについて説明する。
一対の脱ロール2a,2bの間隙tを通過して80~90%程度脱ぷされた摺落米は分散されながら漏斗部34内を流下する。
一方、送風ファン35によって起風された選別気流は、風路46内に横架された分流板36によって分岐されながら棚板47の上下を通過する気流となり、やがて風路46の終端部に至り、送風ファン35の吸入口35aに吸入され、再び風路46内を循環する。
【0039】
前記漏斗部34によって風路46内に誘導された摺落米は、まず、前述した棚板47の上方に流れる気流によって風選される。つまり、前記摺落米は前記気流の吸入口35aの方向に引き寄せられながら棚板47上に達するのであるが、その間、軽量な塵埃や籾穀等は前記気流とともに下流方向へ運ばれ、籾穀受樋45内に収集されて順次籾殻排出口43から機外に排出される。
【0040】
前記棚板47上に落下した摺落米は分流板36の方向に滑流し、混合米受樋38内に向かって落下する間に、分流板36の下方を流れる気流によって、比較的軽量な未熟粒等が吸入口35aの方向に引き寄せられながら未熟粒受樋41内に収集されて未熟粒排出口39から機外へ排出される。
前記混合米受樋38の下端に設けた混合米用スクリューコンベア37の下方には流量計90(90a,90b,90c)が配設されている。該粒量計90の下端に前記混合米排出口91が設けられている。
【0041】
前記流量計90の構成について
図4~
図6を参照して詳細に説明する。
図4は流量計90の斜視図である。流量計90の上端には、前記混合米用スクリューコンベア37から排出された混合米が投入される混合米投入口92が設けられている。混合米投入口92から投入された混合米は、流量計90の内部に設けた混合米貯留部93に一時的に貯留される。
【0042】
符号94はセンサであって、該センサ94の位置まで混合米が貯留(充填)されたタイミングを検出するために用いられる。符号95は樹脂製の透明板であって、該透明板にセンサ94が取り付けられる。センサ94には近接センサなどを用いることが可能である。
【0043】
前記混合米排出口91は、シャッタ96にて開閉される。該シャッタ96は、エアシリンダ81のロッド82の伸縮運動により支点軸97を中心に回動するものである。
エアシリンダ81は、軸83を介して流量計90の一側面に取り付けられている。また、エア供給口84からエアが供給され、エア排出口85からエアが排出される。エア供給口84へのエアの供給はコンプレッサ(図示無し)から行われる。前記ロッド82は、シャッタ96の端部98と軸99を介して接続されている。
なお、符号86はオーバーフロー部であって、前記オーバーフロー86は、前記混合米貯留部93に一定量を超える混合米が貯留された際に該混合米を機外へ排出させるために設けられるものである。
【0044】
以下、前記流量計90での混合米の流量を検出する方法について説明する。流量検出は、シャッタ96を閉じてからセンサ94の位置まで混合米が充填されるまでの時間を求めて行う。例えば、単位時間当たりの流量が多い場合には、上記時間は短くなる。逆に単位時間当たりの流量が少ない場合には、上記時間が長くなる。
【0045】
前記エアシリンダ81は前記制御部10に接続されており、エアシリンダ81のロッド82の伸縮の制御(シャッタ96の開閉制御)は制御部10で行っている。また、センサ94も制御部10に接続されており、該センサ94の検出信号は制御部10で受信される。この構成から、籾摺部2の稼働時に、制御部10にて、エアシリンダ81のロッド82を縮めてシャッタ96を閉じた時点から、混合米貯留部93に混合米が充填されていき、所定の量まで充填されたことをセンサ94が検出するまでの時間を求める。
【0046】
前記時間計測は、各籾摺部2単位で行い、各籾摺部2における混合米の流量を求める。本発明では、複数の籾摺部2の混合米の流量を比較するために、該流量を検出する。このため、正確な混合米の流量を検出しなくても対応可能であり、上記方法での流量の検出方法を利用することができる。混合米の重量を検出しなくても対応可能である。
なお、例えば、特許第3750125号公報に記載の流量検出装置等を使用することも可能である。
【0047】
また、上記時間と混合米の流量には相関関係があるので、上記時間を説明変数、混合米の流量を目的変数として回帰分析を行い、検量線(回帰式)を求め、該検量線と上記時間とから流量を算出するようにしてもよい。
【0048】
図7は、複数のセンサと制御部10とモータ等の駆動部との電気的な接続関係を示すブロック図である。制御部10は、穀物調製設備1の各部を制御するものであり、例えば、中央演算処理装置(CPU)、該CPUの作業領域としてデータの読み書きのできる第1記憶媒体(RAM)、前記CPUで実行される基本的なプログラムを記録する読み出し専用の第2記憶媒体(ROM)、ハードディスク装置や不揮発性のフラッシュメモリ装置からなる第3の記憶媒体、及びタッチパネル等の入力装置兼表示装置等を備えて構成される。
【0049】
そして、原料タンク12の下限値を検知する下限センサ12a、及び混合米の流量を検出するための流量計90が入力インターフェース51を介して制御部10と接続される。それ以外に、籾摺部2の脱ぷロール2a,2bを駆動する脱ぷロール駆動モータ33の負荷電流を検出する負荷電流検知センサ、脱ぷロール2a,2bの摩耗量を検出する摩耗量検出センサ53a~53c、さらには、加速度センサなどの籾摺部2の脱ぷロール2a,2bが回転する際の回転軸の振動状態を検出する振動検知センサを、入力インターフェース51を介して制御部10と接続することができる。
【0050】
出力インターフェース52の出力側には、籾摺部2の脱ぷロール駆動モータ33、風選部3の送風ファン35を駆動するファンモータ35b、各種揚穀機を駆動する揚穀機モータ28a~28c、揺動選別部4の選別板を揺動させる揺動選別モータ、及び粒選別部5の選別筒体を回転駆動する粒選別部モータが接続される。さらに、籾摺部2の脱ぷロールに供給する籾や混合米の流量を制御する振動フィーダ23a~23cが接続される。
【0051】
前記制御部10は、穀物調製設備1の付近に配置することができ、オペレータが操作しやすい位置に配置すればよい。また、複数配置される籾摺部2のいずれかを親機として、該親機の制御盤に組み込んで配置することも可能である。
なお、前記制御部と各センサは有線で接続してもよいし、無線で接続してもよい。
【0052】
次に、上記構成における穀物調製施設の制御方法の一例について
図8のフローチャートに基づき説明する。
図8は、穀物調製設備1の籾摺部2Aで籾摺り作業を行う際の制御フローチャートである。
【0053】
まず、制御部10からの出力信号により穀物調製設備の各部のモータを駆動させ、籾摺部2の原料タンク12に原料(穀粒)を供給する。このとき、下限センサ12aからは、原料タンク12内に「穀粒有り」とするオンの信号が発信される。下限センサ12aがオンのとき、籾摺部2での籾摺作業が可能となるので、操作者は制御部10を操作して、ロール間隙を閉じるとともに、原料タンク12内の原料を分岐弁17を介して各籾摺部2A~2Cに供給し、籾摺作業を行う。
【0054】
ここでは、籾摺部2Aについて説明する。脱ぷロール2a,2bを通過した摺落米は、次に、風選部3Aを通過する。風選部3Aでは送風ファン35の送風によって籾殻が除去され、籾と玄米とからなる混合米が流量計90aにて流量を検出されてから、混合米排出路14より排出されることになる。
【0055】
前記流量計90aでの流量検出値は、制御部10に送信される(ステップS1)。制御部10では、前記流量検出値が下限しきい値よりも大きいか否かを確認し(ステップS2)、さらに上限しきい値よりも小さいか否かを確認する(ステップS3)。前記ステップS2で下限しきい値よりも混合米の流量が少ない場合は、籾摺部2Aへの原料籾の供給流量を増加させる(ステップS3)。また、前記ステップS4で上限しきい値よりも混合米の流量が多い場合は、籾摺部2Aへの原料籾の供給流量を減少させる(ステップS5)。
【0056】
前記ステップS1~S5のフローは、籾摺部2Aの稼働中、連続的又は定期的に行う。
籾摺部2Aへの原料籾の供給流量の増加及び減少は、制御部10で振動フィーダ23aによる原料籾の搬送量を制御して行えばよい。
【0057】
なお、ステップS3で増加させる原料籾の供給流量は、籾摺部2Aの処理能力等を考慮して適宜設定すればよい。同様に、ステップS5で減少させる原料籾の供給流量も、籾摺部2Aの処理能力等を考慮して適宜設定すればよい。
【0058】
また、前記ステップS1~S5のフローは、籾摺部2B及び籾摺部2Cでも籾摺2Aと同様に行う。
【0059】
制御部10による上記制御により、各籾摺部への原料籾の適切な供給を自動的に行うことが可能となる。このため、各籾摺部で効率的に籾摺作業を行うことができ、生産性が向上する。
また、振動フィーダは、共振周波数や振幅に個体差がある。該個体差により、複数台の振動フィーダを同一の設定で稼働させても、搬送する原料籾の流量に差が生じるという問題がある。さらに、振動フィーダのバイブレータには、起動直後より一定時間経過後の方が搬送する流量が増加するという温度特性がある。加えて、搬送対象の原料籾の状態により前記流量が変動するという問題もある(枝梗が多いと流量が減少する)。
このため、前記制御で自動的に流量を制御することで、これらの問題を解決できるというメリットがある。
【0060】
次に、流量計90a~90cで求める流量検出値に加えて、脱ぷロール2a,2bのゴム層の摩耗量を検出した摩耗量検出値を利用した穀物調製設備1の制御方法について
図9のフローチャートを用いて説明する。
【0061】
まず、制御部10からの出力信号により穀物調製設備1の各部のモータを駆動させ、原料タンク12から籾摺部2A~2Cに原料(穀粒)を供給する。このとき、下限センサ12aからは、原料タンク12内に「穀粒有り」とするオンの信号が発信される。下限センサ12aがオンのとき、籾摺部2A~2Cでの籾摺作業が可能となるので、操作者は制御部10を操作して、各籾摺部のロール間隙を閉じるとともに、原料タンク12内の原料を分岐弁17を介して各籾摺部2A~2Cに供給し、籾摺作業を行う。
【0062】
各籾摺部2A~2Cの脱ぷロール2a,2bを通過した摺落米は、それぞれ、風選部3A~3Cを通過する。風選部3A~3Cでは送風ファン35の送風によって籾殻が除去され、籾と玄米とからなる混合米が流量計(90a~90c)にて流量を検出されてから、混合米排出路14より排出されることになる。
【0063】
前記籾摺作業中に、各籾摺部2A~2Cの脱ぷロール2a,2bのゴム層の摩耗量は、摩耗量検出センサ53(53a,53b)によって、連続的又は定期的に検出される(ステップS11)。そして、検出された各摩耗量検出値は、制御部10に送られ、該制御部10でそれぞれの摩耗量検出値と比較し(ステップS12)、摩耗量検出値の差を求める。
【0064】
ステップS13では、前記摩耗量検出位置の差があらかじめ設定した設定値を超えているか否かを確認する。前記設定値を超えていない場合は、籾摺部2A~2Cへの原料籾の供給流量を変更せずに籾摺作業を続行する。
【0065】
前記設定値を超えている場合について説明する。その場合は、籾摺部2A~2Cへの原料籾の供給流量を変更することになる。
まず、流量計90a~90cのそれぞれの流量検出値を制御部10で受信し、風選部3A~3Cから排出される混合米の流量を検出する(ステップS14)。そして、これら流量を加算して混合米流量の総量を算出する(ステップS15)。脱ぷロール2a,2bから流下する摺落米は籾殻などを含んでいるので、該籾殻などを風選部で除去した後の混合米の流量で籾摺部2a~2cの稼働状態を判断する。
なお、前記混合米に代えて、前記摺落米の流量で籾摺部2a~2cの稼働状態を判断することも可能である。
【0066】
次に、脱ぷロールの摩耗量検出値が小さい籾摺部への原料籾の供給流量を増加させる(ステップS16)。この増加量は、前記籾摺部の処理能力を超えない範囲で行うことになる。そして、脱ぷロールの摩耗量検出値が大きい籾摺部への原料籾の供給流量を減少させる(ステップS17)。この減少量は、前記増加量と同量かそれ以下にするのが好ましい。前記減少量を多くしすぎると穀物調製施設1の処理能力が低下してしまうからである。
なお、籾摺部への原料籾の供給流量の増減は、前記振動フィーダ23(23a,23b,23c)で行うことができる。
【0067】
前記ステップS16及びステップS17で原料籾の供給流量を変更し、所定の時間が経過した時点で、前記変更後の流量を確認するために、流量計90a~90cの流量検出値をそれぞれ確認する(ステップS18)。そして、これら流量を加算して混合米流量の総量を算出する(ステップS19)。
なお、前記所定の時間は、原料籾の供給流量を変更した後、流量計90を通過する混合米の流量が安定するまでの時間にすればよい。
【0068】
次に、前記変更の前後での籾摺部2(2A~2C)の処理量に変化がなくほぼ一定であることを確認するために、前記ステップS15で算出した混合米流量の総和と、前記ステップS19で算出した混合米流量の総和の差を求め、該差があらかじめ設定した設定値よりも小さいことを確認する(ステップS20)。
【0069】
前記差が前記設定置よりも小さい場合は、そのままの供給流量で籾摺作業を継続する。前記差が前記設定値よりも大きい場合は、該差を前記設定値よりも小さくする制御を制御部10で自動的に行う。具体的には、前記ステップS16で増加させた供給流量を減少させ(ステップS21)、又は/及び前記ステップS17で減少させた供給流量を増加させる(ステップS22)。
【0070】
前記ステップS21及びステップS22で供給流量の変更を行った後、所定の時間が経過した時点で、前記変更後の流量を確認するために、流量計90a~90cの流量検出値をそれぞれ確認する(ステップS23)。そして、これら流量を加算して混合米流量の総量を算出する(ステップS24)。
なお、前記所定の時間は、原料籾の供給流量を変更した後、流量計90を通過する混合米の流量が安定するまでの時間にすればよい。
【0071】
前記ステップS21とステップS22での前記供給流量の変更後、籾摺部2A~2Cでの処理量が前記ステップS16での前記供給流量の変更前と変化がなくほぼ一定であることを確認するために、前記ステップS15で算出した混合米流量の総和と、前記ステップS24で算出した混合米流量の総和の差を求め、該差があらかじめ設定した設定値よりも小さいことを確認する(ステップS25)。
【0072】
前記ステップS25で、前記差が前記設定値よりも小さいことが確認できれば、ステップS21及びステップS22で変更した原料籾の供給流量で籾摺作業を継続する。前記差が前記設定値よりも大きい場合は、再度、ステップS21及びステップS22で原料籾の供給流量を変更する。該変更は、前記差が前記設定値よりも小さいことが確認されるまで繰り返し行う。
【0073】
本発明では前記制御方法を制御部10により自動的に行う。該制御方法は、脱ぷロールが摩耗し、すべり長さが小さくなり脱ぷ率が低下した籾摺部への原料籾の供給流量を減少させることでその籾摺部の脱ぷ率の低下を抑えつつ、前記減少させた分の原料籾を脱ぷロールの摩耗量の小さい籾摺部に供給する制御となる。
したがって、脱ぷロール間隙を狭めることなく、各籾摺部への籾の供給流量を制御することで、脱ぷロールの摩耗が原因となる脱ぷ率及び加工処理量の低下を軽減することが可能な籾摺部の運転を自動で行うことが可能となる。
【0074】
前記制御部10は、前記流量計及び摩耗量検出センサから受信する検出値をデータ履歴として記録する。よって、各流量計を計量された流量値の積算値を求めることが可能であり、該積算値によって籾摺部の稼働時間を求め、該稼働時間に基づいて籾摺部のメンテナンス等を行うための運転中止のタイミングを決定することができる。
また、摩耗量検出センサにてゴム層の摩耗量、すなわち厚みが検出される。したがって、該厚みがあらかじめ設定した基準値よりも小さくなった時点で、メンテナンス(脱ぷロール交換など)のために籾摺部2の運転を中止することができる。
【0075】
前記制御部10では、前記流量や脱ぷロールの摩耗量の他に、ロール圧力、各回転軸(脱ぷロールの主軸・副軸など)の回転数、振動フィーダの振幅、案内シュート部の角度などを取得し、これらのデータを穀物調製施設の制御に利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、複数の籾摺部を同時に使用する籾摺作業に適用することができる。そして、該籾摺部が農家用の籾摺選別機であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 穀物調製設備
2 籾摺部
2a 脱ぷロール
2b 脱ぷロール
3 風選部
4 揺動選別部
5 粒選別部
6 混合米揚穀機
7 混合米タンク
8 玄米揚穀機
8a 切り換え弁
9 籾返還用揚穀機
9a 切り換え弁
10 制御部
11 吸引ファン
12 原料タンク
12a 下限センサ
13 戻りタンク
13a 上限センサ
14 混合米排出流路
15 未熟米排出流路
16 籾殻排出流路
17 分岐弁
21 機枠
22 籾ホッパー
23 振動フィーダ
24 籾供給部
25 案内シュート部
27 振動機構
28 振動トラフ
29 適宜流量調節板
30 原料有無センサ
31 滑流板
32 均分スクリューコンベア
33 駆動モータ
34 漏斗部
35 送風ファン
36 分流板
37 混合米用スクリューコンベア
38 混合米受樋
39 未熟粒排出口
40 未熟粒用スクリューコンベア
41 未熟粒受樋
42 バルブ
43 籾殻排出口
44 籾穀用スクリューコンベア
45 籾穀受樋
46 風路
47 棚板
81 エアシリンダ
82 ロッド
83 回転軸
84 エア供給口
85 エア排出口
86 開口部
90 流量計
91 混合米排出口
92 混合米投入口
93 混合米貯留部
94 センサ
95 透明板
96 シャッタ
97 回転軸
98 端部
99 回転軸