(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】データ処理装置、分析装置およびデータ処理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/02 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
G01N15/02 F
G01N15/02 A
(21)【出願番号】P 2021567151
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2020045189
(87)【国際公開番号】W WO2021131602
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2019233374
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】青木 健吾
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-291786(JP,A)
【文献】特開2015-138002(JP,A)
【文献】特開2016-197031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0147814(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の流路を有する流動場分画装置により分画された粒子についてのデータを処理し、処理結果を表示部に表示するデータ処理装置であって、
前記流動場分画装置による粒子の保持時間を取得する保持時間取得部と、
移動相の流量、ボイド溶出時間、前記流路の内部容量、前記流路の高さおよび前記流動場分画装置の周囲の温度のうち少なくとも一つをパラメータとして取得するパラメータ取得部と、
前記流動場分画装置における粒子の保持時間と粒子径との関係を示す理論式および前記パラメータ取得部により取得されたパラメータに基づいて、前記保持時間取得部により取得された粒子の保持時間を粒子径に変換する粒子径変換部と、
前記粒子径変換部による変換結果を表示するように前記表示部を制御する表示制御部とを備える、データ処理装置。
【請求項2】
前記流動場分画装置により分画された粒子の検出強度を取得する検出強度取得部と、
粒子の検出強度と粒子の濃度との対応関係を示す対応情報を取得する対応情報取得部と、
前記対応情報取得部により取得された対応情報に基づいて、前記検出強度取得部により取得された粒子の検出強度を粒子の濃度に変換する濃度変換部とをさらに備え、
前記表示制御部は、前記粒子径変換部により変換された粒子径と、前記濃度変換部により変換された粒子の濃度とを関連付けて表示するように前記表示部を制御する、請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記保持時間取得部は、前記流動場分画装置により分画された粒子の保持時間を取得し、
前記粒子径変換部は、前記保持時間取得部により取得された粒子の保持時間を粒子径に変換し、
前記検出強度取得部は、前記流動場分画装置により分画された粒子の検出強度を順次取得し、
前記濃度変換部は、前記検出強度取得部により順次取得された粒子の検出強度を粒子の濃度に順次変換し、
前記表示制御部は、前記粒子径変換部により変換された粒子径と、前記濃度変換部により変換された粒子の濃度とを関連付けてリアルタイムに表示するように前記表示部を制御する、請求項2記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記パラメータ取得部は、前記流路に試料注入を開始した時刻、前記流路に試料注入を行う時間、および前記流路内で試料を沈降させる準備動作を行う時間をパラメータとしてさらに取得し、
前記保持時間取得部は、前記パラメータ取得部により取得されたパラメータを用いて粒子の保持時間を取得する、請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記流動場分画装置は、輪状の前記流路が回転可能に構成された遠心型流動場分画装置であり、
前記パラメータ取得部は、前記流路の回転の時間変化、粒子密度および移動相密度をパラメータとしてさらに取得する、請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記理論式は、試料の状態および測定環境により発生する粒子の保持時間と粒子径との関係の誤差を補正する補正係数を含む、請求項1記載のデータ処理装置
。
【請求項7】
液体に分散された粒子を分画する流動場分画装置と、
表示部と、
前記流動場分画装置により分画された粒子についてのデータを処理し、処理結果を前記表示部に表示する請求項1記載のデータ処理装置とを備える、分析装置
。
【請求項8】
液体の流路を有する流動場分画装置により分画された粒子についてのデータを処理し、処理結果を表示部に表示するデータ処理方法であって、
前記流動場分画装置による粒子の保持時間を取得するステップと、
移動相の流量、ボイド溶出時間、前記流路の内部容量、前記流路の高さおよび前記流動場分画装置の周囲の温度のうち少なくとも一つをパラメータとして取得するステップと、
前記流動場分画装置における粒子の保持時間と粒子径との関係を示す理論式および取得されたパラメータに基づいて、取得された粒子の保持時間を粒子径に変換するステップと、
変換結果を前記表示部に表示するステップとを含む、データ処理方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動場分画装置により得られるデータを処理するデータ処理装置、分析装置およびデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中に分散した粒子を粒子径ごとに分画する装置として、FFF(Field Flow Fractionation:流動場分画)装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。FFF装置のセル内に供給された液体中の粒子は、粒子径に対応した時間だけセルに保持された後、セルから排出される。また、FFF装置には、検出器が接続され、セルから排出された粒子は検出器により検出される。検出器の検出強度に基づいて、粒子の分析が行われる。
【0003】
検出器の種類に応じて、粒子の種々の分析を行うことができる。例えば、MALS(多角度光散乱)検出器を用いる場合には、粒子径を定量することができる。また、UV(紫外可視吸光度)検出器、RI(示唆屈折率)検出器、SLS(静的光散乱)検出器またはICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いる場合には、粒子の体積濃度、個数濃度または質量濃度を評価することができる。
【文献】特許第4572001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MALS検出器またはICP-MSは非常に高価であるため、容易に利用することができないことがある。一方、UV検出器、RI検出器またはSLS検出器は比較的安価である。しかしながら、これらの検出器は、粒子径を測定することができないので、MALS検出器等の粒子径検出器と併せて使用する必要がある。また、これらの検出器は同じ濃度でも粒子径により検出強度が変化する性質を有するため、濃度の定量が困難であり、分析結果の正確さが低下することがある。そのため、高価な検出器を用いることなく比較的正確に粒子を分析することが可能なデータ処理装置を開発することが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、高価な検出器を用いることなく比較的正確に粒子を分析することが可能なデータ処理装置、分析装置およびデータ処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一局面に従うデータ処理装置は、液体の流路を有する流動場分画装置により分画された粒子についてのデータを処理し、処理結果を表示部に表示するデータ処理装置であって、流動場分画装置による粒子の保持時間を取得する保持時間取得部と、移動相の流量、ボイド溶出時間、流路の内部容量、流路の高さおよび流動場分画装置の周囲の温度のうち少なくとも一つをパラメータとして取得するパラメータ取得部と、流動場分画装置における粒子の保持時間と粒子径との関係を示す理論式およびパラメータ取得部により取得されたパラメータに基づいて、保持時間取得部により取得された粒子の保持時間を粒子径に変換する粒子径変換部と、粒子径変換部による変換結果を表示するように表示部を制御する表示制御部とを備える。
【0007】
このデータ処理装置においては、分析開始からの経過時間が保持時間取得部により粒子の保持時間に変換される。流動場分画装置における粒子の保持時間と粒子径との関係を示す理論式およびパラメータ取得部により取得されたパラメータに基づいて、取得された粒子の保持時間が粒子径に変換される。変換結果が表示部に表示される。
【0008】
この構成によれば、遠心型流動場分画装置または非対称フロー型動場分画装置等の流動場分画装置により分画された粒子の保持時間に基づいて比較的正確な粒子径の分析結果が得られる。この場合、粒子径の分析においては、MALS(多角度光散乱)検出器等の高価な検出器を用いる必要がない。これにより、高価な検出器を用いることなく比較的正確に粒子を分析することができる。
【0009】
(2)データ処理装置は、流動場分画装置により分画された粒子の検出強度を取得する検出強度取得部と、粒子の検出強度と粒子の濃度との対応関係を示す対応情報を取得する対応情報取得部と、対応情報取得部により取得された対応情報に基づいて、検出強度取得部により取得された粒子の検出強度を粒子の濃度に変換する濃度変換部とをさらに備え、表示制御部は、粒子径変換部により変換された粒子径と、濃度変換部により変換された粒子の濃度とを関連付けて表示するように表示部を制御してもよい。
【0010】
この場合、対応情報および粒子の検出強度に基づいて正確な粒子の濃度の分析結果が得られる。また、粒子の濃度の分析においては、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)等の高価な検出器を用いる必要がない。これにより、高価な検出器を用いることなく、比較的正確に粒子径と粒子の濃度との関係を分析することができる。
【0011】
(3)保持時間取得部は、流動場分画装置により分画された粒子の保持時間を取得し、粒子径変換部は、保持時間取得部により取得された粒子の保持時間を粒子径に変換し、検出強度取得部は、流動場分画装置により分画された粒子の検出強度を順次取得し、濃度変換部は、検出強度取得部により順次取得された粒子の検出強度を粒子の濃度に順次変換し、表示制御部は、粒子径変換部により変換された粒子径と、濃度変換部により変換された粒子の濃度とを関連付けてリアルタイムに表示するように表示部を制御してもよい。この場合、粒子径および粒子の濃度の分析中においても、分析の途中経過をリアルタイムに把握することができる。
【0012】
(4)パラメータ取得部は、流路に試料注入を開始した時点、流路に試料注入を行う時間、および流路内で試料を沈降させる準備動作を行う時間をパラメータとしてさらに取得し、保持時間取得部は、パラメータ取得部により取得されたパラメータを用いて粒子の保持時間を取得してもよい。この場合、分析開始(流路に試料注入を開始した時点)からの経過時間を容易に保持時間に変換することができる。
【0014】
(5)流動場分画装置は、輪状の流路が回転可能に構成された遠心型流動場分画装置であり、パラメータ取得部は、流路の回転の時間変化、粒子密度および移動相密度をパラメータとしてさらに取得してもよい。この場合、遠心型流動場分画装置により分画された粒子の保持時間を容易に粒子径に変換することができる。
【0015】
(6)理論式は、試料の状態および測定環境により発生する粒子の保持時間と粒子径との関係の誤差を補正する補正係数を含んでもよい。この場合、理論式に用いる各パラメータの誤差を補正することにより、より正確に保持時間を粒子径に変換することができる。そのため、理論式に合致しない試料に対しても高い精度で粒子径を算出することができる。理論式に用いる各パラメータの誤差とは、例えば、試料の粒子密度差による誤差、流動場分画装置の流路高さの寸法誤差、または温度誤差等を含む。
【0020】
(7)本発明の他の局面に従う分析装置は、液体に分散された粒子を分画する流動場分画装置と、表示部と、流動場分画装置により分画された粒子についてのデータを処理し、処理結果を表示部に表示する本発明の一局面に従うデータ処理装置とを備える。
【0021】
この分析装置においては、液体に分散された粒子が流動場分画装置により分画される。流動場分画装置により分画された粒子についてのデータが上記のデータ処理装置により処理される。データ処理装置による処理結果が表示部に表示される。
【0022】
この構成によれば、比較的正確な分析結果が得られる。この場合、粒子の分析においては、MALS検出器またはICP-MS等の高価な検出器を用いる必要がない。これにより、高価な検出器を用いることなく比較的正確に粒子を分析することができる。
【0023】
(8)本発明のさらに他の局面に従うデータ処理方法は、液体の流路を有する流動場分画装置により分画された粒子についてのデータを処理し、処理結果を表示部に表示するデータ処理方法であって、流動場分画装置による粒子の保持時間を取得するステップと、移動相の流量、ボイド溶出時間、流路の内部容量、流路の高さおよび流動場分画装置の周囲の温度のうち少なくとも一つをパラメータとして取得するステップと、流動場分画装置における粒子の保持時間と粒子径との関係を示す理論式および取得されたパラメータに基づいて、取得された粒子の保持時間を粒子径に変換するステップと、変換結果を表示部に表示するステップとを含む。
【0024】
この方法によれば、粒子の保持時間に基づいて比較的正確な粒子径の分析結果が得られる。この場合、粒子径の分析においては、MALS検出器等の高価な検出器を用いる必要がない。これにより、高価な検出器を用いることなく比較的正確に粒子を分析することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高価な検出器を用いることなく比較的正確に粒子を分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は本発明の一実施の形態に係る分析装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2はFFF装置の流路の回転速度の変化の一例を示す図である。
【
図3】
図3はデータ処理装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4はデータ処理プログラムにより行われるデータ処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は測定に用いられたパラメータの数値を示す図である。
【
図6】
図6は第1および第2の実施例における測定結果および理論曲線を示す図である。
【
図7】
図7は第3および第4の実施例における測定結果および理論曲線を示す図である。
【
図8】
図8は第5~第7の実施例における測定結果および理論曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態に係るデータ処理装置、それを備えた分析装置およびデータ処理方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
(1)分析装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る分析装置の構成を示す図である。
図1に示すように、分析装置100は、分析制御装置110、FFF(Field Flow Fractionation:流動場分画)装置120、検出器130、送液装置140および注入装置150を含む。
図1においては、主として分析装置100のハードウエアの構成が示される。
【0031】
分析制御装置110は、CPU(中央演算処理装置)111、RAM(ランダムアクセスメモリ)112、ROM(リードオンリメモリ)113、記憶装置114、操作部115、表示部116および入出力I/F(インターフェイス)117により構成される。CPU111、RAM112、ROM113、記憶装置114、操作部115、表示部116および入出力I/F117はバス118に接続される。
【0032】
RAM112は、CPU111の作業領域として用いられる。ROM113にはシステムプログラムが記憶される。記憶装置114は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含み、データ処理プログラムを記憶する。CPU111が記憶装置114に記憶されたデータ処理プログラムをRAM112上で実行することにより、後述するデータ処理が行われる。
【0033】
操作部115は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。表示部116は、液晶表示装置等の表示デバイスである。使用者は、操作部115を用いて分析制御装置110に各種指示を行うことができる。表示部116は、データ処理の結果等を表示可能である。入出力I/F117は、FFF装置120、検出器130、送液装置140および注入装置150に接続される。送液装置140は、FFF装置120に移動相を圧送する。注入装置150は、FFF装置120に試料を注入する。
【0034】
本実施の形態においては、FFF装置120は遠心力を用いて粒子を粒子径ごとに分画するCF3(Centrifugal Field Flow Fractionation:遠心型FFF)装置であり、回転可能に構成された輪状の流路を有する。なお、以下の説明における粒子径は、粒子の直径を意味する。液体中に粒子が分散された試料が移動相とともに流路内に導入された状態で、流路が回転される。
【0035】
図2は、FFF装置120の流路の回転速度の変化の一例を示す図である。
図2に示すように、流路は初期回転速度N
0で時間t
1だけ回転された後、時間tの経過に従って、式(1)で示すように流路の回転速度Nが減衰する。t
aおよびpは、流路の回転速度の減衰の挙動を特徴付けるパラメータである。式(1)のt
1を第1時間パラメータと呼び、t
aを第2時間パラメータと呼び、pを減衰パラメータと呼ぶ。また、第1時間パラメータt
1、第2時間パラメータt
aおよび減衰パラメータpを総称して回転パラメータと呼ぶ。
【0036】
【0037】
流路の回転により、粒子が粒子径ごとに分画され、粒子径に対応した保持時間だけ流路内に保持された後、流路から排出される。検出器130は、FFF装置120から排出された粒子を検出し、FFF装置120による分析開始からの経過時間と粒子の検出強度との関係を示す検出データを出力する。本実施の形態においては、検出器130は、例えばUV(紫外可視吸光度)検出器、RI(示唆屈折率)検出器またはSLS(静的光散乱)検出器である。
【0038】
分析制御装置110は、FFF装置120、検出器130、送液装置140および注入装置150の動作を制御する。また、分析制御装置110は、FFF装置120等から回転パラメータを含む種々のパラメータを取得するとともに検出器130から検出データを順次取得するデータ処理装置を含む。データ処理装置は、取得されたパラメータに基づいて検出データにデータ処理を行う。以下、データ処理装置の詳細について説明する。
【0039】
(2)データ処理装置
図3は、データ処理装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図3に示すように、データ処理装置10は、保持時間取得部1、検出強度取得部2、パラメータ取得部3、対応情報取得部4、粒子径変換部5、濃度変換部6および表示制御部7を含む。
図1のCPU111が記憶装置114に記憶されたデータ処理プログラムを実行することにより、データ処理装置10の構成要素(1~7)の機能が実現される。データ処理装置10の構成要素(1~7)の一部または全てが電子回路等のハードウエアにより構成されてもよい。
【0040】
パラメータ取得部3は、入出力I/F117を介して各装置から種々のパラメータを取得する。具体的には、パラメータ取得部3は、FFF装置120から流路内部容量、流路に試料注入を行う時間(注入時間)、および流路内で試料を沈降させる準備動作を行う時間(リラクゼーション時間)を取得する。また、パラメータ取得部3は、注入装置150から流路に試料注入を開始した時点(分析開始時点)を取得し、送液装置140から移動相の流量を取得する。
【0041】
保持時間取得部1は、パラメータ取得部3により取得された分析開始時点を基準にした分析時間から注入時間とリラクゼーション時間とを減算することにより保持時間trを順次取得(測定)する。このように、測定期間は分析期間の一部であり、FFF装置120への試料の注入が開始された時点が分析期間の始点である。分析開始時点から注入時間およびリラクゼーション時間が経過した時点が測定期間の始点である。検出強度取得部2は、入出力I/F117を介して検出データにおける粒子の検出強度を検出器130から順次取得する。
【0042】
パラメータ取得部3は、上述したパラメータに加えて、ボイド溶出時間t0、FFF装置120の周囲の絶対温度T、初期重力場G、流路高さw、粒子密度ρsおよび移動相密度ρをパラメータとして取得する。また、パラメータ取得部3は、試料の状態および測定環境により発生する誤差を補正する補正係数を取得する。パラメータ取得部3は、これらのパラメータを記憶装置114、操作部115、FFF装置120、送液装置140または注入装置150のいずれから取得してもよい。
【0043】
例えば、記憶装置114にパラメータの一部または全部が記憶されている場合には、パラメータ取得部3は、記憶装置114から記憶されたパラメータを取得してもよい。あるいは、パラメータ取得部3は、使用者により操作部115を介して入力されたパラメータを取得してもよい。
【0044】
また、FFF装置120に流路高さw、流路の回転半径または流路の容量等の流路の情報が登録されていることがある。この場合には、パラメータ取得部3は、FFF装置120から流路高さwを取得してもよい。あるいは、パラメータ取得部3は、回転パラメータとともに初期回転速度N0をFFF装置120から取得し、流路の回転半径と初期回転速度N0とに基づいて初期重力場Gを算出してもよい。あるいは、パラメータ取得部3は、ボイド溶出時間t0を、検出強度を解析して実測することにより取得してもよいし、パラメータ取得部3により取得された種々のパラメータから算出してもよい。具体的には、流路の容量、流路から検出器までの配管の容量、および移動相の流量からボイド溶出時間t0を算出することができる。
【0045】
さらに、FFF装置120または検出器130には、周囲の温度を検出する温度センサが設けられることがある。この場合には、パラメータ取得部3は、FFF装置120または検出器130から絶対温度Tを取得してもよい。
【0046】
対応情報取得部4は、粒子の検出強度と粒子の濃度との対応関係を示す対応情報を記憶装置114から取得する。記憶装置114には、対応情報が予め記憶されている。対応情報は、検量線であってもよいし、対応テーブルであってもよい。あるいは、使用者は、粒子の濃度が既知の試料(標準試料)を用いて対応情報を生成することができる。この場合、対応情報取得部4は、使用者により操作部115を介して入力された対応情報を取得してもよい。
【0047】
粒子径変換部5には、遠心型のFFF装置120における粒子の保持時間trと粒子径dとの関係を示す理論式が記憶されている。遠心型のFFF装置120における理論式を式(2)に示す。粒子径変換部5は、パラメータ取得部3により取得されたパラメータおよび理論式(2)に基づいて、保持時間取得部1により取得された粒子の保持時間trを粒子径dに変換する。ここで、πは円周率であり、kはボルツマン定数であり、AおよびBは補正係数である。
【0048】
【0049】
濃度変換部6は、対応情報取得部4により取得された対応情報に基づいて、検出強度取得部2により順次取得される粒子の検出強度を粒子の濃度に順次変換する。表示制御部7は、粒子径変換部5により変換された粒子径と、濃度変換部6により変換された粒子の濃度との関係を示すグラフを分析中にリアルタイムに表示するように表示部116を制御する。
【0050】
(3)データ処理
図4は、データ処理プログラムにより行われるデータ処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。まず、パラメータ取得部3は、
図1の記憶装置114、操作部115または各装置からパラメータを取得する(ステップS1)。パラメータは、分析開始時点、注入時間、リラクゼーション時間、回転パラメータ(第1時間パラメータt
1、第2時間パラメータt
aおよび減衰パラメータp)、ボイド溶出時間t
0、絶対温度T、初期重力場G、流路高さw、粒子密度ρ
sおよび移動相密度ρを含む。また、パラメータ取得部3は、試料の密度差および測定環境の誤差を補正する補正係数を取得する。補正係数は、使用者により操作部115を介して入力されてもよいし、FFF装置120または記憶装置114から取得されてもよい。
【0051】
また、対応情報取得部4は、記憶装置114または操作部115から対応情報を取得する(ステップS2)。ステップS1,S2は、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。
【0052】
次に、保持時間取得部1は、分析開始時点、注入時間およびリラクゼーション時間から粒子の保持時間trを取得する(ステップS3)。また、検出強度取得部2は、検出器130から粒子の検出強度を取得する(ステップS4)。ステップS3,S4は、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。本実施の形態においては、ステップS3,S4は略同時に実行される。
【0053】
続いて、粒子径変換部5は、ステップS1で取得されたパラメータおよび理論式(2)に基づいて、ステップS3で取得された粒子の保持時間trを粒子径dに変換する(ステップS5)。また、濃度変換部6は、ステップS2で取得された対応情報に基づいて、ステップS4で取得された粒子の検出強度を粒子の濃度に変換する(ステップS6)。ステップS1,S2は、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。
【0054】
表示制御部7は、ステップS5で変換された粒子径と、ステップS6で変換された粒子の濃度との関係を示すグラフを表示部116に表示させる(ステップS7)。その後、表示制御部7は、ステップS3に戻る。
【0055】
ステップS3~S7が繰り返されることにより、検出器130から粒子の保持時間trおよび粒子の検出強度が順次取得されるとともに、粒子の保持時間trおよび粒子の検出強度が粒子径dおよび粒子の濃度にそれぞれ変換される。変換された粒子径と変換された粒子の濃度との関係を示すグラフがリアルタイムに表示部116に表示される。
【0056】
(4)効果
本実施の形態に係るデータ処理装置10においては、FFF装置120による粒子の保持時間に基づいて比較的正確な粒子径の分析結果が得られる。また、対応情報および検出器130による粒子の検出強度に基づいて正確な粒子の濃度の分析結果が得られる。比較的正確に粒子径と粒子の濃度との関係を分析することができる。この場合、粒子の分析においては、MALS検出器またはICP-MS等の高価な検出器を用いる必要がない。これにより、高価な検出器を用いることなく比較的正確に粒子を分析することができる。
【0057】
また、表示部116には、粒子径変換部5により変換された粒子径と、濃度変換部6により変換された粒子の濃度との関係を示すグラフがリアルタイムに表示される。そのため、粒子径および粒子の濃度の分析中においても、分析の途中経過をリアルタイムに把握することができる。
【0058】
(5)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、FFF装置120はCF3装置であるが、本発明はこれに限定されない。FFF装置120は、流路に沿った移動相の流れ(チャネルフロー)と流路に直交する移動相の流れ(クロスフロー)とを用いて粒子を粒子径ごとに分画するAF4(Asymmetric Flow Field Flow Fractionation:非対称フローFFF)であってもよい。
【0059】
この場合、パラメータ取得部3は、CF3装置と同様に、FFF装置120の周囲の絶対温度Tおよび流路高さwを取得する。また、パラメータ取得部3は、回転パラメータ、ボイド溶出時間t0、初期重力場G、粒子密度ρsおよび移動相密度ρに代えて、移動相粘度η、クロスフロー流量Vcrossおよびチャネルフロー流量Vchannelをパラメータとして取得する。
【0060】
粒子径変換部5には、非対称フロー型のFFF装置120における粒子の保持時間trと粒子径dとの関係を示す理論式が記憶されている。非対称フロー型のFFF装置120における理論式を式(3)に示す。粒子径変換部5は、パラメータ取得部3により取得されたパラメータおよび理論式(3)に基づいて、保持時間取得部1により取得される粒子の保持時間trを粒子径dに変換する。
【0061】
【0062】
(b)上記実施の形態において、データ処理装置10は対応情報取得部4および濃度変換部6を含むが、本発明はこれに限定されない。データ処理装置10は、対応情報取得部4および濃度変換部6を含まなくてもよい。この場合、表示制御部7は、粒子径変換部5により変換された粒子径と、検出強度取得部2により取得された粒子の検出強度との関係を示すグラフをリアルタイムに表示するように表示部116を制御する。
【0063】
あるいは、データ処理装置10は検出強度取得部2、対応情報取得部4および濃度変換部6を含まなくてもよい。この場合、表示制御部7は、粒子径変換部5により変換された粒子径を保持時間と対応付けて表示するように表示部116を制御する。
【0064】
(c)上記実施の形態において、データ処理装置10はパラメータ取得部3および粒子径変換部5を含むが、本発明はこれに限定されない。データ処理装置10は、パラメータ取得部3および粒子径変換部5を含まなくてもよい。この場合、表示制御部7は、保持時間取得部1により取得された粒子の保持時間trと、濃度変換部6により変換された粒子の濃度との関係を示すグラフをリアルタイムに表示するように表示部116を制御する。
【0065】
あるいは、データ処理装置10は保持時間取得部1、パラメータ取得部3および粒子径変換部5を含まなくてもよい。この場合、表示制御部7は、濃度変換部6により変換された粒子の濃度を、分析開始時点からの経過時間に対応付けてリアルタイムに表示するように表示部116を制御する。
【0066】
(d)上記実施の形態において、表示制御部7は粒子径変換部5により変換された粒子径および濃度変換部6により変換された粒子の濃度の少なくとも一方をリアルタイムに表示するように表示部116を制御するが、本発明はこれに限定されない。表示制御部7は、粒子径変換部5により変換された粒子径および濃度変換部6により変換された粒子の濃度の少なくとも一方を、非リアルタイムに一括で表示するように表示部116を制御してもよい。
【0067】
(6)実施例
以下の実施例1~7においては、粒子径dが既知である種々の標準粒子について、遠心型のFFF装置120による保持時間trが算出された。また、標準粒子の保持時間trの測定時と同一のパラメータが理論式(2)に適用されることにより、保持時間trと粒子径dとの関係を示す理論曲線が生成された。さらに、測定結果と理論曲線とが比較されることにより、理論式(2)に基づく粒子の保持時間trから粒子径dへの変換の妥当性が検証された。
【0068】
図5は、測定に用いられたパラメータの数値を示す図である。
図5に示すように、第1時間パラメータt
1は10[min]にされ、第2時間パラメータt
aは-40[min]にされ、減衰パラメータpは4にされた。また、絶対温度Tは298[K]にされ、流路高さwは0.25[mm]にされ、移動相密度ρは1000[kg/m
3]にされた。
【0069】
第1および第2の実施例においては、標準粒子としてPSL(ポリスチレンラテックス)標準粒子が用いられた。なお、PSL標準粒子の粒子径dは、TEM(透過電子顕微鏡)により値付けされており、比較的正確であると考えられる。PSLの粒子密度ρsは1050[kg/m3]にされた。
【0070】
また、第1および第2の実施例においては、初期回転速度N0はそれぞれ4500[rpm]および11250[rpm]にされた。ここで、初期回転速度N0=4500[rpm]は初期重力場G=22000[m/s2]に相当し、初期回転速度N0=11250[rpm]は初期重力場G=137000[m/s2]に相当する。
【0071】
図6は、第1および第2の実施例における測定結果および理論曲線を示す図である。
図6の横軸は粒子径d[nm]を示し、縦軸は粒子の保持時間t
r[min]を示す。後述する
図7および
図8においても同様である。また、
図6では、第1の実施例における測定結果が黒い丸で示され、第1の実施例に対応する理論曲線が実線で示される。第2の実施例における測定結果が黒い四角で示され、第2の実施例に対応する理論曲線が点線で示される。
【0072】
第1および第2の実施例においては、補正係数Aは1であり、補正係数Bは0である。すなわち、第1および第2の実施例においては、理論式(2)に補正が行われていない。
図6に示すように、第1の実施例においては、測定値が理論曲線に一致している。同様に、第2の実施例においても、測定値が理論曲線に一致している。そのため、理論式(2)に基づく粒子の保持時間t
rから粒子径dへの変換は妥当であることが確認された。
【0073】
第3および第4の実施例においては、標準粒子としてシリカ標準粒子が用いられた。なお、シリカ標準粒子の粒子径dの値付けの方法は不明である。シリカは結晶構造によって密度が異なり、また、シリカ標準粒子は完全な球形ではないという理由から、シリカ標準粒子の粒子密度ρsを正確に評価することは困難である。そこで、シリカ標準粒子の見かけの大きさに基づいて、シリカ標準粒子の粒子密度ρsは2000[kg/m3]にされた。また、第3および第4の実施例においては、初期回転速度N0はそれぞれ4500[rpm]および11250[rpm]にされた。
【0074】
図7は、第3および第4の実施例における測定結果および理論曲線を示す図である。
図7では、第3の実施例における測定結果が黒い丸で示され、補正が行われない場合の第3の実施例に対応する理論曲線が実線で示される。第4の実施例における測定結果が黒い四角で示され、補正が行われない場合の第4の実施例に対応する理論曲線が点線で示される。
【0075】
図7に示すように、第3の実施例においては、測定値は理論曲線から僅かに乖離しているが、理論曲線に略一致している。同様に、第4の実施例においても、測定値は理論曲線から僅かに乖離しているが、理論曲線に略一致している。そのため、理論式(2)に基づく粒子の保持時間trから粒子径dへの変換は妥当であることが確認された。なお、第3および第4の実施の形態において、測定値が理論曲線から僅かに乖離した要因として、シリカ標準粒子の粒子径dおよび粒子密度ρ
sの不正確さが考えられる。
【0076】
第3および第4の実施例においては、補正係数Aを0.7とし、補正係数Bを0として、さらに理論曲線が生成された。補正が行われた場合の第3の実施例に対応する理論曲線が一点鎖線で示され、補正が行われた場合の第4の実施例に対応する理論曲線が二点鎖線で示される。第3の実施例においては、測定値が補正後の理論曲線に一致している。同様に、第4の実施例においても、測定値が補正後の理論曲線に一致している。そのため、補正を行うことにより、理論式(2)に基づく粒子の保持時間trから粒子径dへの変換がより妥当になることが確認された。
【0077】
第5、第6および第7の実施例においては、標準粒子としてAg(銀)標準粒子が用いられた。なお、第5および第6の実施の形態においては、Ag標準粒子の粒子径dの値付けの方法は不明である。一方、第7の実施の形態においては、Ag標準粒子の粒子径dは、TEMにより値付けされており、比較的正確であると考えられる。Ag標準粒子の粒子密度ρsは9320[kg/m3]にされた。また、第5および第7の実施例においては初期回転速度N0は4500[rpm]にされ、第6の実施例においては初期回転速度N0は11250[rpm]にされた。
【0078】
図8は、第5~第7の実施例における測定結果および理論曲線を示す図である。
図8では、第5の実施例における測定結果が黒い丸で示され、補正が行われない場合の第5の実施例に対応する理論曲線が実線で示される。第6の実施例における測定結果が黒い四角で示され、補正が行われない場合の第6の実施例に対応する理論曲線が点線で示される。第7の実施例における測定結果が黒い三角で示される。第7の実施例に対応する理論曲線は、第5の実施例に対応する理論曲線と同一である。
【0079】
図8に示すように、第5の実施例においては、測定値は理論曲線から僅かに乖離しているが、理論曲線に略一致している。同様に、第6の実施例においても、測定値は理論曲線から僅かに乖離しているが、理論曲線に略一致している。第7の実施例においては、測定値が理論曲線に一致している。そのため、理論式(2)に基づく粒子の保持時間t
rから粒子径dへの変換は妥当であることが確認された。なお、第5および第6の実施の形態において、測定値が理論曲線から僅かに乖離した要因として、Ag標準粒子の粒子径dの不正確さが考えられる。
【0080】
第5および第6の実施例においては、補正係数Aを0.6とし、補正係数Bを0として、さらに理論曲線が生成された。補正が行われた場合の第5の実施例に対応する理論曲線が一点鎖線で示され、補正が行われた場合の第6の実施例に対応する理論曲線が二点鎖線で示される。第5の実施例においては、測定値が補正後の理論曲線に一致している。同様に、第6の実施例においても、測定値が補正後の理論曲線に一致している。そのため、補正を行うことにより、理論式(2)に基づく粒子の保持時間trから粒子径dへの変換がより妥当になることが確認された。
(7)参考形態
(7-1)本発明の一参考形態に従うデータ処理装置は、液体の流路を有する流動場分画装置により分画された粒子についてのデータを処理し、処理結果を表示部に表示するデータ処理装置であって、流動場分画装置による粒子の保持時間を取得する保持時間取得部と、流動場分画装置における粒子の保持時間と粒子径との関係を示す理論式に基づいて、保持時間取得部により取得された粒子の保持時間を粒子径に変換する粒子径変換部と、粒子径変換部による変換結果を表示するように表示部を制御する表示制御部とを備える。
このデータ処理装置においては、分析開始からの経過時間が保持時間取得部により粒子の保持時間に変換される。流動場分画装置における粒子の保持時間と粒子径との関係を示す理論式に基づいて、取得された粒子の保持時間が粒子径に変換される。変換結果が表示部に表示される。
この構成によれば、粒子の保持時間に基づいて比較的正確な粒子径の分析結果が得られる。この場合、粒子径の分析においては、MALS(多角度光散乱)検出器等の高価な検出器を用いる必要がない。これにより、高価な検出器を用いることなく比較的正確に粒子を分析することができる。
(7-2)データ処理装置は、流動場分画装置により分画された粒子の検出強度を取得する検出強度取得部と、粒子の検出強度と粒子の濃度との対応関係を示す対応情報を取得する対応情報取得部と、対応情報取得部により取得された対応情報に基づいて、検出強度取得部により取得された粒子の検出強度を粒子の濃度に変換する濃度変換部とをさらに備え、表示制御部は、粒子径変換部により変換された粒子径と、濃度変換部により変換された粒子の濃度とを関連付けて表示するように表示部を制御してもよい。
この場合、対応情報および粒子の検出強度に基づいて正確な粒子の濃度の分析結果が得られる。また、粒子の濃度の分析においては、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)等の高価な検出器を用いる必要がない。これにより、高価な検出器を用いることなく、比較的正確に粒子径と粒子の濃度との関係を分析することができる。
(7-3)保持時間取得部は、流動場分画装置により分画された粒子の保持時間を取得し、粒子径変換部は、保持時間取得部により取得された粒子の保持時間を粒子径に変換し、検出強度取得部は、流動場分画装置により分画された粒子の検出強度を順次取得し、濃度変換部は、検出強度取得部により順次取得された粒子の検出強度を粒子の濃度に順次変換し、表示制御部は、粒子径変換部により変換された粒子径と、濃度変換部により変換された粒子の濃度とを関連付けてリアルタイムに表示するように表示部を制御してもよい。この場合、粒子径および粒子の濃度の分析中においても、分析の途中経過をリアルタイムに把握することができる。
(7-4)データ処理装置は、流路に試料注入を開始した時点、流路に試料注入を行う時間、および流路内で試料を沈降させる準備動作を行う時間をパラメータとして取得するパラメータ取得部をさらに備え、保持時間取得部は、パラメータ取得部により取得されたパラメータを用いて粒子の保持時間を取得してもよい。この場合、分析開始(流路に試料注入を開始した時点)からの経過時間を容易に保持時間に変換することができる。
(7-5)パラメータ取得部は、移動相の流量、ボイド溶出時間、流路の内部容量、流路の高さおよび流動場分画装置の周囲の温度のうち少なくとも一つをパラメータとして取得し、粒子径変換部は、パラメータ取得部により取得されたパラメータをさらに用いて、保持時間取得部により取得された粒子の保持時間を粒子径に変換してもよい。この場合、遠心型流動場分画装置または非対称フロー型動場分画装置等の流動場分画装置により分画された粒子の保持時間を容易に粒子径に変換することができる。
(7-6)流動場分画装置は、輪状の流路が回転可能に構成された遠心型流動場分画装置であり、パラメータ取得部は、流路の回転の時間変化、粒子密度および移動相密度をパラメータとしてさらに取得してもよい。この場合、遠心型流動場分画装置により分画された粒子の保持時間を容易に粒子径に変換することができる。
(7-7)理論式は、試料の状態および測定環境により発生する粒子の保持時間と粒子径との関係の誤差を補正する補正係数を含んでもよい。この場合、理論式に用いる各パラメータの誤差を補正することにより、より正確に保持時間を粒子径に変換することができる。そのため、理論式に合致しない試料に対しても高い精度で粒子径を算出することができる。理論式に用いる各パラメータの誤差とは、例えば、試料の粒子密度差による誤差、流動場分画装置の流路高さの寸法誤差、または温度誤差等を含む。
(7-8)本発明の他の参考形態に従うデータ処理装置は、流動場分画装置により分画された粒子についてのデータを処理し、処理結果を表示部に表示するデータ処理装置であって、流動場分画装置により分画された粒子の検出強度を取得する検出強度取得部と、粒子の検出強度と粒子の濃度との対応関係を示す対応情報を取得する対応情報取得部と、対応情報取得部により取得された対応情報に基づいて、検出強度取得部により取得された粒子の検出強度を粒子の濃度に変換する濃度変換部と、濃度変換部により変換された粒子の濃度を表示するように表示部を制御する表示制御部とを備える。
このデータ処理装置においては、流動場分画装置により分画された粒子の検出強度が取得される。粒子の検出強度と粒子の濃度との対応関係を示す対応情報が取得される。取得された対応情報に基づいて、取得された粒子の検出強度が粒子の濃度に変換される。変換された粒子の濃度が表示部に表示される。
この構成によれば、対応情報および粒子の検出強度に基づいて正確な粒子の濃度の分析結果が得られる。この場合、粒子の濃度の分析においては、ICP-MS等の高価な検出器を用いる必要がない。これにより、高価な検出器を用いることなく正確に粒子を分析することができる。
(7-9)検出強度取得部は、流動場分画装置により分画された粒子の検出強度を順次取得し、濃度変換部は、検出強度取得部により順次取得された粒子の検出強度を粒子の濃度に順次変換し、表示制御部は、濃度変換部による変換結果をリアルタイムに表示するように表示部を制御してもよい。この場合、粒子の濃度の分析中においても、分析の途中経過をリアルタイムに把握することができる。
(7-10)本発明のさらに他の参考形態に従う分析装置は、液体に分散された粒子を分画する流動場分画装置と、表示部と、流動場分画装置により分画された粒子についてのデータを処理し、処理結果を表示部に表示する本発明の一参考形態または他の参考形態に従うデータ処理装置とを備える。
この分析装置においては、液体に分散された粒子が流動場分画装置により分画される。流動場分画装置により分画された粒子についてのデータが上記のデータ処理装置により処理される。データ処理装置による処理結果が表示部に表示される。
この構成によれば、比較的正確な分析結果が得られる。この場合、粒子の分析においては、MALS検出器またはICP-MS等の高価な検出器を用いる必要がない。これにより、高価な検出器を用いることなく比較的正確に粒子を分析することができる。
(7-11)本発明のさらに他の参考形態に従うデータ処理方法は、液体の流路を有する流動場分画装置により分画された粒子についてのデータを処理し、処理結果を表示部に表示するデータ処理方法であって、流動場分画装置による粒子の保持時間を取得するステップと、流動場分画装置における粒子の保持時間と粒子径との関係を示す理論式に基づいて、取得された粒子の保持時間を粒子径に変換するステップと、変換結果を表示部に表示するステップとを含む。
この方法によれば、粒子の保持時間に基づいて比較的正確な粒子径の分析結果が得られる。この場合、粒子径の分析においては、MALS検出器等の高価な検出器を用いる必要がない。これにより、高価な検出器を用いることなく比較的正確に粒子を分析することができる。
(7-12)本発明のさらに他の参考形態に従うデータ処理方法は、流動場分画装置により分画された粒子についてのデータを処理し、処理結果を表示部に表示するデータ処理方法であって、流動場分画装置により分画された粒子の検出強度を取得するステップと、粒子の検出強度と粒子の濃度との対応関係を示す対応情報を取得するステップと、取得された対応情報に基づいて、取得された粒子の検出強度を粒子の濃度に変換するステップと、変換された粒子の濃度を表示部に表示するステップとを含む。
この方法によれば、対応情報および粒子の検出強度に基づいて正確な粒子の濃度の分析結果が得られる。この場合、粒子の濃度の分析においては、ICP-MS等の高価な検出器を用いる必要がない。これにより、高価な検出器を用いることなく正確に粒子を分析することができる。