(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】直流電力システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/35 20060101AFI20231025BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20231025BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231025BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
H02J7/35 K
H02J1/00 304H
H01M10/48 P
H01M10/44 P
(21)【出願番号】P 2019141333
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】514222101
【氏名又は名称】株式会社FACT
(74)【代理人】
【識別番号】100088096
【氏名又は名称】福森 久夫
(72)【発明者】
【氏名】田路 和幸
(72)【発明者】
【氏名】梅木 千真
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-115115(JP,A)
【文献】玄後義 外5名,リチウム二次電池を用いた系統連系円滑化蓄電システムの開発,三菱重工技法Vol.46No.2(2009) 発電技術特集,Vol.46No.2,日本,三菱重工業株式会社,2009年,p.49-54,https://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/462/462049.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/35
H02J 1/00
H01M 10/48
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電
を含む再生可能エネルギー
による、出力が変動する不安定な直流電力
、及び、系統交流電力を整流器
によって整流した、電圧が不安定な直流電力を、
合成した回路に対して、下記の放電レート
と太陽光発電の出力及び蓄電池の定格容量の関係を満たす、放電レート2C以上の蓄電池を並列接続することを特徴とする直流電力の供給システム。
放電レート(C)≧太陽光発電
の出力(kW)/蓄電池の定格容量(kWh)
【請求項2】
前記蓄電池は、EV、PHV、HV
のいずれかに搭載され、SOHが低下した車載用リユース蓄電池であることを特徴とする請求項1記載の直流電力の供給システム。
【請求項3】
前記SOH
が80~50%である請求項
2に記載の直流電力の供給システム。
【請求項4】
前記再生可能エネルギーの直流電圧と、前記系統交流電力から整流された直流ピーク電圧と、前記蓄電池の出力電圧とは、下記の関係を満たす請求項1乃至3いずれか1項に記載の直流電力の供給システム。
再生可能エネルギーの直流電圧>系統交流電力から整流された直流ピーク電圧>蓄電池の出力電圧
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力システムに係り、より詳細には、小さな蓄電池容量であっても大きな直流電力を平滑化できる直流電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギー等の利用に関しては多数の特許が公開されている。例えば、特許文献1の太陽光発電用電力供給システムは、太陽光電源装置と、前記太陽光電源装置以外の電源装置と、それらの直流電力を合成する直流電力合成装置とで構成されており、負荷にて消費する電力が、太陽電池からの電力と等しいか、又はそれよりも大きい場合を検知して、太陽光電源装置により発電された電力を、最大限無駄なく取り出すように制御する太陽光発電用電力供給システムについて記載されている(特許文献1)。
【0003】
また、直流利用時に問題となるアーク放電抑制に関しても、同じく多数の特許が公開されている。例えば、特許文献2の直流電流開閉装置は、直流接点に対してコンデンサ、ダイオード及び抵抗による回路を、接点周囲に設け、過渡現象と放電回路によってアーク放電を抑制する装置について記載されている(特許文献2)。
【0004】
また、近年の再生可能エネルギーの利用拡大や、エネルギー利用効率の向上に対する社会的要請を受けて、直流給電が見直されており、NTTデータセンターなどで直流給電が実用化されている(非特許文献1)。
特許文献3には、太陽光発電と風力発電の直流電力を合成した回路に対して、蓄電池を並列接続した直流電源について記載されている。これにより、太陽光発電等の出力を平滑化することができるとされる。
特許文献4には、出力が急激に変動する太陽光発電電力を蓄電池で平滑する方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-19415号公報
【文献】特開2016-28378号公報
【文献】特開2006-254694号公報
【文献】特開平4-308431号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「直流給電技術の現行と動向」ITUジャーナルVol. 46 No.3(2016年3月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、太陽光パネルから得られる直流電力と、他の前記太陽光電源装置以外の電源装置から得られる直流電力の負荷に対する大きさの比較を行って、最適制御を行う太陽光発電用電力供給システムについて記載されているが、前記太陽光電源以外の電源装置を、系統交流電力から取得する可能性については記載されていない。
【0008】
特許文献2では、直流開閉接点に対してコンデンサ、ダイオード及び抵抗による回路を、開閉接点周囲に設け、過渡現象と放電回路によってアーク放電を抑制する装置について記載されているが、前記開閉接点周囲以外のアーク放電抑制回路を、接点側ではなく、負荷側に配置する可能性については記載されていない。
【0009】
非特許文献1では、直流給電の優位性や、高電圧直流給電の事例について記載されているが、直流給電を、既存の交流配線系を利用して給電する可能性については記載されていない。
特許文献3では並列接続する蓄電池のレート特性との関連は記載されておらず、発電出力に相応する大きな蓄電池容量が必要である。
特許文献4では特許文献3と同様に蓄電池のレート特性に関する記載はなされておらず、発電出力に相応する大きな蓄電池容量が必要である。
【0010】
本発明は、小さな蓄電池容量であっても大きな電力を平滑化が可能な電力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、太陽光発電を含む再生可能エネルギーによる、出力が変動する不安定な直流電力、及び、系統交流電力を整流器によって整流した、電圧が不安定な直流電力を、合成した回路に対して、下記の放電レートと太陽光発電の出力及び蓄電池の定格容量の関係を満たす、放電レート2C以上の蓄電池を並列接続することを特徴とする直流電力の供給システムである。
放電レート(C)≧太陽光発電の出力(kW)/蓄電池の定格容量(kWh)
請求項2に係る発明は、前記蓄電池は、EV、PHV、HVのいずれかに搭載され、SOHが低下した車載用リユース蓄電池であることを特徴とする請求項1記載の直流電力の供給システムである。
請求項3に係る発明は、前記SOHが80~50%である請求項2に記載の直流電力の供給システムである。
請求項4に係る発明は、前記再生可能エネルギーの直流電圧と、前記系統交流電力から整流された直流ピーク電圧と、前記蓄電池の出力電圧とは、下記の関係を満たす請求項1乃至3いずれか1項に記載の直流電力の供給システムである。
再生可能エネルギーの直流電圧>系統交流電力から整流された直流ピーク電圧>蓄電池の出力電圧
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小さな蓄電池容量であっても大きな電力を平滑化が可能となり、システム、装置の小型化、低価格化が可能となる。
出力や電圧が変動する不安定な直流電力を、コンデンサやDC/DCコンバータを用いずに、安価で簡便に、且つ電力の変換損失を極力少なくし、蓄電池電圧で規定された所定電圧の、安定な直流電力を得ることができる。
出力や電圧が変動する不安定な直流電力を、小さな容量の蓄電池を用い、大きな出力の電力を平滑化することができ、比較的蓄電容量の小さな蓄電池を活用し、電力の変換損失を極力少なくし、高調波ノイズを発生させることなく、蓄電池電圧で規定された所定電圧の安定な直流電力を、シンプルな装置で実現することができる。
【0013】
本発明によれば、太陽光発電等の再生可能エネルギーなどによる出力が変動する不安定な直流電力、及び系統交流電力から整流回路などにより整流された電圧が変動する不安定な直流電力から、比較的容量が小さな蓄電池や、蓄電容量が劣化した車載用リユース蓄電池を活用し、電力の変換損失を極力少なくし、高調波ノイズを発生させることなく、蓄電容量に比較して大きな出力の電力を平滑化して、蓄電池電圧で規定された所定電圧の安定な直流電力を得ることができる電力システムを、安価に提供することができる。
【0014】
本発明によれば、太陽光発電設備等において、変換損失が大きく、装置原価が高く、装置寿命に制約のあるパワーコンディショナーを排除することができ、再生可能エネルギー電力システムの導入コストを大幅に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】本発明の実施例における実験によるDCコンバータ(COSEL/PBAシリーズ)と、リレー(OMRON/G7L)を用いた例を示す回路図である。
【
図4】本発明の実施例における実験(
図3)による直流電圧:105V、電流:1.0Aを負荷に通電し、接点を開放した場合のリレー両端電圧の挙動を示す波形の写真である。
【
図5】本発明の実施例における実験(
図3)による直流電圧:105V、電流:2.0Aにて行った場合のリレー両端電圧の挙動を示す波形の写真である。
【
図6】本発明の実施例における実験による負荷と開閉接点の間に、前記DCコンバータを配置した例を示す図である。
【
図7】本発明の実施例における実験(
図6)による直流電圧:105V、電流:2.0Aにて行った場合のリレー両端電圧の挙動を示す図である。
【
図8】本発明の実施例における実験(
図6)による直流電圧:105V、電流:8.3Aにて行った場合のリレー両端電圧の挙動を示す図である。
【
図9】本発明の実施例における実験による負荷と開閉接点の間に、前記DCコンバータを配置した例を示す図である。
【
図10】本発明の実施例における実験(
図9)による直流電圧:105V、電流:2.0Aにて行った場合のリレー両端電圧の挙動を示す図である。
【
図11】本発明の実施例における実験(
図9)による直流電圧:105V、電流:8.3Aにて行った場合のリレー両端電圧の挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を実施するための形態の一例を述べる。
太陽光発電等、再生可能エネルギーなどによる、出力が変動する不安定な直流電力や、系統交流電力を整流器などによって整流した、電圧が不安定な直流電力を、それぞれ単独の、または合成した回路に対して、下記の放電レートの蓄電池を並列接続する。
放電レート(C)≧(太陽光発電等の出力)(kW)/(蓄電池の定格容量)(kWh)
本発明の根幹をなす、蓄電池による不安定電力の直流安定化について、
図1に概念を示す。前記再生可能エネルギーなどによる直流電圧(V
1)と、前記系統交流電力から整流された直流ピーク電圧(V
2)と、蓄電池の出力電圧(V
3)を、例えば、V
1 > V
2 > V
3となるように設定すれば、再生可能エネルギーが発電する間は、系統交流電力から蓄電池へ電力の入力は止まり、再生可能エネルギーが停止した場合は、系統交流電力から蓄電池へ電力が入力することで、常に蓄電池電圧で規定された直流電力を負荷に供給することができる。
【0017】
蓄電池には定格容量が示されている。この定格容量を1時間で充放電するような一定電流の充放電のことを1C充放電と定義し、Cレートと表す。例えば、定格容量が10Ahの蓄電池の場合、1C充放電は10Aの定電流でローディングすることであり、2Cの場合には20A、0.5Cの場合は5Aのローディング電流と表される。
定格容量とは、充電完了後から使い終えるまでに蓄電池から放電した電気量である。
【0018】
特許文献3、4などにより、蓄電池を並列接続することで、不安定な直流電力を平滑化できることが知られているが、このような公知技術では、例えば、出力10kWの太陽光発電を平滑化するためには、定格容量10kWh程度の蓄電池が必要とされる。
【0019】
しかし、前記Cレートの内、放電レートの大きな蓄電池を用いることで、必要となる定格容量を小さく抑えることができ、電力システムの大幅な小型化、低価格化を実現することができる。
【0020】
電力平滑化のために必要な蓄電池の定格容量と放電レートの関係は以下の通りである。
定格容量(kWh)× 放電レート(C) = 太陽光発電等の出力(kW)
従って、例えば、蓄電池の放電レートが10Cであれば、定格容量1kWhの蓄電池を用いて、出力10kW程度の太陽光発電を平滑化することができる。
【0021】
また、近年の次世代自動車の普及拡大から、近い将来、使用済みの電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)等から、多量の使用済蓄電池が排出されることが予想できるが、一般的なストレージ利用に適さない、SOHが低下した蓄電池や、比較的蓄電容量が小さなHV用の蓄電池については、有効な利用方法が見出されていない。
ここで、SOH(States Of Health)とは、電池の劣化状態を表す指標であり、SOH=(Crd/Cf)×100である。ただし、Crdは劣化時の残容量[Ah]、Cfは初期の満充電容量[Ah]である。
【0022】
一般に、前記車載用蓄電池は、モーターを急激に駆動することから、放電レートが大きいという特徴があり、本発明に係る利用法において、好適な性能を持つ。また、SOHが低下しても、Cレート特性には大きな影響はなく、例えばSOHが50%程度に劣化した蓄電池であっても、本発明に係る利用法においては、全く問題なく利用できる。
【0023】
前記蓄電池は、充放電機能を有する二次電池であれば、鉛電池でも、キャパシタでも、ニッケル水素電池でも構わないが、リチウムイオン蓄電池が最も適している。この場合、リチウムイオン蓄電池の安全性を担保するために、過充電及び過放電状態が生じない設計とする必要がある。本発明の請求項2に係る車載用リユース蓄電池の利用では、原理的に過充電が生じ難いという利点が得られる。
【0024】
例えばSOHが70%以下に低下し、一般的な蓄電利用のリユースに適さない蓄電池を有効活用することができ、前記直流電源システムを安価に得ることができる。
【0025】
このようにして、従来の再生可能エネルギー利用システムにおける、頻繁な直流と交流の変換による電力の変換損失を解消しながら、シンプルで安価なシステムで、再生可能エネルギーを無駄なく使用できる直流電源システムを得ることができる。
【0026】
前記蓄電池は、充放電機能を有する二次電池であれば、例えば鉛蓄電池でも、キャパシタでも構わないが、リチウムイオン蓄電池が最も適している。この場合、リチウムイオン蓄電池の安全性を担保するために、過充電及び過放電状態が生じない設計とする必要がある。本発明の電力システムでは、蓄電機能が劣化した車載用リユース蓄電池を用いることで、原理的に過充電が生じ難いという利点も得られ、更に前記V1及びV3を、蓄電池の使用可能電圧範囲内に設定することで、過充電及び過放電が生じ難いシステムとすることができる。
【0027】
但し、災害による停電時等、系統交流電力のバックアップが長時間停止した場合においては、例えば低電圧で動作する負荷が接続されていると、過放電状態に至る可能性があることから、蓄電池電圧をモニターして蓄電池を遮断する保護回路は必要となる。
【0028】
直流電力システムでは、蓄電池を電力のストレージとしてではなく、電圧を平滑化するためのコンデンサとして活用するところに大きな特徴がある。再生可能エネルギーなどを有効活用するために、系統交流電力をバックアップとする、
図1に概念を示した本システムの動作では、系統交流電力から蓄電池を充電するための整流器は、単純なダイオードブリッジだけでも原理的に問題はない。しかし、所定の蓄電池電圧で充電すること、及び高調波抑制の観点から、整流にはPFC回路を用いることになる。
【0029】
図2に典型的なPFC回路を示す。系統交流電力をPFC回路で整流する場合、従来のPFC回路から、電圧平滑のためのコンデンサを排することができ、デバイスの低コスト化、及び長寿命化、更には効果的な高調波抑制を同時に実現することができる。
【0030】
また、前記蓄電池は、車載用のリユース蓄電池を用いることができ、デバイスの低コスト化、及び資源循環に貢献することができる。
【0031】
本直流電源システムでは、通常のリチウムイオン蓄電池において必須となる、複雑なバッテリーマネジメント機構は不要となり、前記停電時等の安全性担保のための前記保護回路のみ備えればよく、デバイスの低コスト化に貢献することができる。
【0032】
さて、一般に直流電力の利用においては、アーク放電の発生が問題となる。アーク放電は、電圧が高いほど発生し易くなることから、既存の直流給電システムにおいては、DCコンバータで降圧した後で開閉を行うため、
図3に示すように、負荷とコンバータの間に開閉接点が配置される。一方、本発明では、
図4に示すように、負荷と開閉接点の間に、コンバータを配置することが好ましい。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
本例では、蓄電池の定格容量及び電圧が等しく、放電レートが異なる蓄電池について、不安定な直流電力の平滑化能力を示す。
図5に示すように、出力:5kW、電圧:200Vの太陽光パネルに対して、同出力の負荷:5kW(8Ω)が接続されている回路に、定格容量:1kWh、蓄電池電圧:200V、放電レート:10Cの蓄電池BT
1と、定格容量及び電圧値が等しく、放電レート:1Cの蓄電池BT
2を並列接続することで電力の平滑化を行う場合を考える。蓄電池の放電レートから、BT
1の放電電流能力は50A、BT
2の放電電流能力は5Aであることが判る。
一般に、太陽光発電は天候等の影響により出力が不安定である。時刻t
1にて太陽光パネルへの光が遮られ発電電流が停止し、t
2にて発電が再開される状況を、簡略化して
図6に示す。この系に対してBT
1を並列接続すると、時刻t
1からt
2間の発電電流が停止する時間、BT
1から電流が補われ、不安定な直流電力を平滑化でき、安定な直流電力として利用できることが判る。一方、放電レートの小さなBT
2を並列接続した場合、放電電流能力が小さく、時刻t
1からt
2間の発電電流が停止する時間、負荷に供給できる電力が不足することが判る(
図7)。
【0034】
(実施例2)
本例では、直流電力について、
図4に示すように、負荷と開閉接点の間に、コンバータを配置し、アーク放電について調べた。
DCコンバータ(COSEL/PBAシリーズ)と、リレー(OMRON/G7L)を用い、
図3に示す、既存の直流給電システムにおける開閉接点配置において、通電状態から接点開放時のリレー両端電圧の経時変化を、オシロスコープで観察することで、開閉接点におけるアーク放電の挙動を観察した。
図4に、直流電圧:105V、電流:1.0Aを負荷に通電し、接点を開放した場合のリレー両端電圧の挙動を示す。この場合、接点開放から通電終了まで、約22ミリ秒を要し、この間、わずかながらアーク放電が発生していることが判る。但し、数十ミリ秒程度のアーク放電は、実用上は大きな問題にならない。
図8に、直流電圧:105V、電流:2.0Aにて、同様の実験を行った場合のリレー両端電圧の挙動を示す。この場合、接点開放から通電終了まで、約3.8秒を要し、また目視でも激しいアーク放電が確認され、接点開放においてアーク放電が大きな障害となることが判る。
【0035】
次に、
図9のように、負荷と開閉接点の間に、前記DCコンバータを配置し、前記実験を行った。
図10に、直流電圧:105V、電流:2.0Aにて、前記実験を行った場合のリレー両端電圧の挙動を示す。この場合、接点開放から通電終了まで、約5ミリ秒程度であり、
図8と比較して明らかにアーク放電が抑制されていることが判る。
図11に、直流電圧:105V、電流:8.3Aにて、前記実験を行った場合のリレー両端電圧の挙動を示す。この場合でも、接点開放から通電終了まで、約15ミリ秒程度であり、段落[0034]に記載した実験結果と比較し、DCコンバータの配置を変えることで、大幅にアーク放電の発生が抑制されることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、太陽光発電等の再生可能エネルギーなどによる、出力が変動する不安定な直流電力と、系統交流電力から得る直流電力を、蓄電池を用いて安定な直流電力とし、既存の交流配線系を用いて負荷に供給し、アーク放電を発生させずに安全に使用できる、安価で高効率な電力システムを実現することができる。また、本発明の蓄電池による不安定電力の直流安定化電源を単独で利用する場合においても、従来の再生可能エネルギー利用システムから、設備価格のネックとなるパワーコンディショナーを排除することができ、再生可能エネルギー利用率の向上と、車載用蓄電池のリユースに寄与し、更には、安価な災害時等の非常電源システムを提供することが出来る。
【0037】
本発明の電力システムの効果をまとめると、以下の通りとなる。
(1)小さな容量の蓄電池を用いることによっても大きな電力の平滑化を図ることが可能でありシステムの小型化・コンパクト化を図ることができる。
(1)極小化されたデバイス構成により、直流⇔交流変換損失を極力少なくし、且つ安価に、再生可能エネルギー(太陽光発電、他)の高効率利用が可能となる。
(2)SOHが低下した車載用蓄電池のリユースが可能となる。
(3)交流電力を基盤とする既存社会インフラを活用しながら、高効率な直流電力システムを、安全に、安価に、スムーズに導入することができる。
(4)災害時等の非常電源システムを、安価に提供することができる。