(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム、天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
C10L 1/02 20060101AFI20231025BHJP
C10L 3/00 20060101ALI20231025BHJP
C10L 5/44 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C10L1/02
C10L3/00 Z
C10L5/44
(21)【出願番号】P 2023542965
(86)(22)【出願日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2023020624
【審査請求日】2023-07-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521479367
【氏名又は名称】Innovare株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】川谷 光隆
(72)【発明者】
【氏名】グエン フィン プォン ウィエン
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/078172(WO,A1)
【文献】特開2014-040527(JP,A)
【文献】特開2018-145254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/02
C10L 3/00
C10L 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、
天然ゴムの実を、殻部分と核部分とに分離処理する分離部と、
分離処理した前記核部分を加熱処理する加熱処理部と、
加熱処理した前記核部分を粉砕処理する粉砕部と、
粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出部と、
抽出した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成部と、
分離処理した前記殻部分を炭化処理して、バイオ炭を生成する第2生成部と、
前記抽出処理後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成部と、
を備える天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項2】
天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、
天然ゴムの実を丸ごと加熱処理する加熱処理部と、
加熱処理した前記天然ゴムの実に含まれる核部分を粉砕処理する粉砕部と、
粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出部と、
抽出処理した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成部と、
加熱処理した前記天然ゴムの実
の殻部分を炭化処理し、バイオ炭を生成する第2生成部と、
前記抽出処理後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成部と、
を備える天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項3】
前記加熱処理は、抽出する前記植物油の劣化防止および水分除去のために行う請求項1または2に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項4】
前記加熱処理の条件が、温度範囲が50乃至150度で、加熱時間が4乃至8時間である請求項1または2に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項5】
前記粉砕処理は、前記核部分を10mm以下に粉砕する請求項1または2に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項6】
前記抽出処理は、少なくともスクリュープレスによる圧搾法、および/または、少なくともヘキサンあるいはイソプロピルアルコールを含む有機溶媒による抽出法で行う請求項1または2に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項7】
前記抽出処理の前記有機溶媒は循環させて再利用する請求項6に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項8】
前記第1生成部の前記メチルエステル化処理は、前記バイオ燃料とグリセリンを生成する請求項1または2に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項9】
前記第2生
成部の前記炭化処理は、前記バイオ炭、カーボンブラック、負極材料を生成する請求項1または2に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項10】
前記加熱処理した天然ゴムの実を、前記殻部分と前記核部分とに分離処理する分離部を備える請求項2に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項11】
天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法において、
天然ゴムの実を、殻部分と核部分とに分離処理する分離ステップと、
分離処理した前記核部分を加熱処理する加熱処理ステップと、
加熱処理した前記核部分を粉砕処理する粉砕ステップと、
粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出する抽出ステップと、
抽出した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成ステップと、
分離した前記殻部分を炭化処理して、バイオ炭を生成する第2生成ステップと、
前記抽
出ステップ後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成ステップと、
を備える天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法。
【請求項12】
天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムと連携するコンピュータに、
天然ゴムの実を、殻部分と核部分とに分離処理する分離ステップと、
分離処理した前記核部分を加熱処理する加熱処理ステップと、
加熱処理した前記核部分を粉砕処理する粉砕ステップと、
粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出する抽出ステップと、
抽出した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成ステップと、
分離処理した前記殻部分を炭化処理して、バイオ炭を生成する第2生成ステップと、
前記抽
出ステップ後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成ステップと、を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラム。
【請求項13】
天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法において、
天然ゴムの実を丸ごと加熱処理する加熱処理ステップと、
加熱処理した前記天然ゴムの実に含まれる核部分を粉砕処理する粉砕ステップと、
粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出ステップと、
抽出処理した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成ステップと、
加熱処理した前記天然ゴムの実
の殻部分を炭化処理し、バイオ炭を生成する第2生成ステップと、
前記抽出処理後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成ステップと、
を備える天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法。
【請求項14】
天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムに、
天然ゴムの実を丸ごと加熱処理する加熱処理ステップと、
加熱処理した前記天然ゴムの実に含まれる核部分を粉砕処理する粉砕ステップと、
粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出ステップと、
抽出処理した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成ステップと、
加熱処理した前記天然ゴムの実
の殻部分を炭化処理し、バイオ炭を生成する第2生成ステップと、
前記抽出処理後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成ステップと、を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム、天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止やカーボンニュートラルなどの観点から、バイオ燃料、バイオ炭、またはメタンガスの需要が高まっている。
【0003】
しかし、従来からある大豆やパームなどの植物由来のバイオ燃料、バイオ炭、またはメタンガスだけでは、需要に対して供給が足りていない問題がある。
【0004】
そこで、天然ゴムの実からバイオ燃料、バイオ炭、またはメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーの技術が求められている。
【0005】
C1基質(メタンまたはメタノールなど)をバイオマスに変換し、次いで、バイオ燃料またはバイオプラスチックなどに変換する技術(特許文献1)や、バイオ燃料を作製するための方法であって、C1代謝非光合成微生物のバイオマスまたは油組成物を精製して燃料を生産する技術(特許文献2)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-13258
【文献】特開2015-527883
【0007】
しかしながら、特許文献1および2の技術では、天然ゴムの実からバイオ燃料、バイオ炭、またはメタンガスを生成することはできない。
【0008】
従って本発明は、天然ゴムの実からバイオ燃料、バイオ炭、またはメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム、天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0010】
第1の特徴に係る発明は、天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、
天然ゴムの実を、殻部分と核部分とに分離処理する分離部と、
分離処理した前記核部分を加熱処理する加熱処理部と、
加熱処理した前記核部分を粉砕処理する粉砕部と、
粉砕した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出部と、
抽出した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成部と、
分離処理した前記殻部分を炭化処理して、バイオ炭を生成する第2生成部と、
前記抽出処理後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成部と、
を備える天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムを提供する。
【0011】
第1の特徴に係る発明によれば、天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムにおいて、天然ゴムの実を、殻部分と核部分とに分離処理する分離部と、分離した前記核部分を加熱処理する加熱処理部と、加熱処理した前記核部分を粉砕処理する粉砕部と、粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出部と、抽出した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成部と、分離した前記殻部分を炭化処理して、バイオ炭を生成する第2生成部と、前記抽出処理後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成部と、を備える。
【0012】
第1の特徴に係る発明は、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムのカテゴリであるが、天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法、及びプログラムであっても同様の作用、効果を奏する。
【0013】
第2の特徴に係る発明は、天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、
天然ゴムの実を丸ごと加熱処理する加熱処理部と、
加熱処理した前記天然ゴムの実に含まれる核部分を粉砕処理する粉砕部と、
粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出部と、
抽出処理した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成部と、
加熱処理した前記天然ゴムの実の殻部分を炭化処理し、バイオ炭を生成する第2生成部と、
前記抽出処理後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成部と、
を備える天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムを提供する。
【0014】
第2の特徴に係る発明によれば、天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムにおいて、天然ゴムの実を丸ごと加熱処理する加熱処理部と、加熱処理した前記天然ゴムの実に含まれる核部分を粉砕処理する粉砕部と、粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出部と、抽出処理した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成部と、加熱処理した前記天然ゴムの実の前記殻部分を炭化処理し、バイオ炭を生成する第2生成部と、前記抽出処理後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成部と、を備える。
【0015】
第2の特徴に係る発明は、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムのカテゴリであるが、天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法、及びプログラムであっても同様の作用、効果を奏する。
【0016】
第3の特徴に係る発明は、第1または第2の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、前記加熱処理は、抽出する前記植物油の劣化防止および水分除去のために行う天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムを提供する。
【0017】
第3の特徴に係る発明によれば、第1または第2の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムにおいて、前記加熱処理は、抽出する前記植物油の劣化防止および水分除去のために行う。
【0018】
第4の特徴に係る発明は、第1または第2の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、前記加熱処理の条件が、温度範囲が50乃至150度で、加熱時間が4乃至8時間である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムを提供する。
【0019】
第4の特徴に係る発明によれば、第1または第2の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムにおいて、前記加熱処理の条件が、温度範囲が50乃至150度で、加熱時間が4乃至8時間である。
【0020】
第5の特徴に係る発明は、第1または第2の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、前記粉砕処理は、前記核部分を10mm以下に粉砕する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムを提供する。
【0021】
第5の特徴に係る発明によれば、第1または第2の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムにおいて、前記粉砕処理は、前記核部分を10mm以下に粉砕する。
【0022】
第6の特徴に係る発明は、第1または第2の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、前記抽出処理は、少なくともスクリュープレスによる圧搾法、および/または、少なくともヘキサンあるいはイソプロピルアルコールを含む有機溶媒による抽出法で行う天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムを提供する。
【0023】
第6の特徴に係る発明によれば、第1または第2の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムにおいて、前記抽出処理は、少なくともスクリュープレスによる圧搾法、および/または、少なくともヘキサンあるいはイソプロピルアルコールを含む有機溶媒による抽出法で行う。
【0024】
第7の特徴に係る発明は、第6の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、前記抽出処理の前記有機溶媒は循環させて再利用する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムを提供する。
【0025】
第7の特徴に係る発明によれば、第6の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムにおいて、前記抽出処理の前記有機溶媒は循環させて再利用する。
【0026】
第8の特徴に係る発明は、第1または第2の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、前記第1生成部の前記メチルエステル化処理は、前記バイオ燃料とグリセリンを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムを提供する。
【0027】
第8の特徴に係る発明によれば、第1または第2の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムにおいて、前記第1生成部の前記メチルエステル化処理は、前記バイオ燃料とグリセリンを生成する。
【0028】
第9の特徴に係る発明は、第1または第2の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、前記第2生成部の前記炭化処理は、前記バイオ炭、カーボンブラック、負極材料を生成する請求項1または2に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムを提供する。
【0029】
第9の特徴に係る発明は、第1または第2の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムにおいて、前記第2生成部の前記炭化処理は、前記バイオ炭、カーボンブラック、負極材料を生成する。
【0030】
第10の特徴に係る発明は、第2の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、前記加熱処理した天然ゴムの実を、前記殻部分と前記核部分とに分離する分離部を備える天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムを提供する。
【0031】
第10の特徴に係る発明によれば、第2の特徴に係る発明である天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムにおいて、前記加熱処理した天然ゴムの実を、前記殻部分と前記核部分とに分離する。
【0032】
第11の特徴に係る発明は、天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法において、
天然ゴムの実を、殻部分と核部分とに分離する分離ステップと、
分離した前記核部分を加熱処理する加熱処理ステップと、
加熱処理した前記核部分を粉砕する粉砕ステップと、
粉砕した前記核部分から植物油を抽出する抽出ステップと、
抽出した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成ステップと、
分離した前記殻部分を炭化処理して、バイオ炭を生成する第2生成ステップと、
前記抽出ステップ後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成ステップと、
を備える天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法を提供する。
【0033】
第12の特徴に係る発明は、天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムと連携するコンピュータに、
天然ゴムの実を、殻部分と核部分とに分離する分離ステップと、
分離した前記核部分を加熱処理する加熱処理ステップと、
加熱処理した前記核部分を粉砕する粉砕ステップと、
粉砕した前記核部分から植物油を抽出する抽出ステップと、
抽出した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成ステップと、
分離した前記殻部分を炭化処理して、バイオ炭を生成する第2生成ステップと、
前記抽出ステップ後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成ステップと、を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラムを提供する。
【0034】
第13の特徴に係る発明は、天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法において、
天然ゴムの実を丸ごと加熱処理する加熱処理ステップと、
加熱処理した前記天然ゴムの実に含まれる核部分を粉砕処理する粉砕ステップと、
粉砕した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出ステップと、
抽出処理した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成ステップと、
加熱処理した前記天然ゴムの実の殻部分を炭化処理し、バイオ炭を生成する第2生成ステップと、
前記抽出処理後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成ステップと、
を備える天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法を提供する。
【0035】
第14の特徴に係る発明は、天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムに、
天然ゴムの実を丸ごと加熱処理する加熱処理ステップと、
加熱処理した前記天然ゴムの実に含まれる核部分を粉砕処理する粉砕ステップと、
粉砕した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出ステップと、
抽出処理した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成ステップと、
加熱処理した前記天然ゴムの実の殻部分を炭化処理し、バイオ炭を生成する第2生成ステップと、
前記抽出処理後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成ステップと、を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、天然ゴムの実からバイオ燃料、バイオ炭、またはメタンガスを生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、天然ゴムの実由来バイオリファイナリー1の実施形態1の概要図である。
【
図3】
図3は、実施形態1のコンピュータが実行するバイオリファイナリーの手順を示すフローチャート図である。
【
図4】
図4は、天然ゴムの実由来バイオリファイナリー1の実施形態2の概要図である。
【
図6】
図6は、実施形態2のコンピュータが実行するバイオリファイナリーの手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図を参照しながら説明する。なお、これらは一例であって、本発明の技術的範囲は、これに限られるものではない。
【0039】
[実施形態1の概要]
図1は、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の実施形態1の概要を説明するための図である。
【0040】
図1に示すように、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1は、天然ゴムの実100から、バイオ燃料150、バイオ炭160、およびメタンガス170を生成するためのシステムである。
【0041】
ここで、天然ゴムの実100は、例えば、天然ゴムプランテーションなどで採取された実であり、保存ため採取後に乾燥したものであってよい。前記乾燥とは、例えば、天日干しによる乾燥などであってよい。
【0042】
まず、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の分離部201は、天然ゴムの実100を天然ゴムの実の核部分110と、殻部分120とに分離する(ステップS10)。
【0043】
次に、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の加熱処理部202は、分離部201が分離した核部分110を加熱処理する(ステップS20)。
【0044】
次に、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の粉砕部203は、加熱処理部202が加熱処理した核部分111を粉砕処理する(ステップS30)。
【0045】
次に、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の抽出部204は、粉砕部203が粉砕処理した粉砕した核部分112を抽出処理する(ステップS40)。ここで、粉砕した核部分112から植物油130を抽出すると共に、核部分の残渣140を生成する。
【0046】
天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の第1生成部205は、抽出部204が抽出した植物油130を、メチルエステル化処理もしくは水素化処理し、バイオ燃料150を生成する(ステップS50)。
【0047】
また、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の第2生成部206は、分離部201が分離した天然ゴムの実100の殻部分120を、炭化処理しバイオ炭160を生成する(ステップS60)。
【0048】
さらに、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の第3生成部207は、抽出部204が生成した核部分の残渣140を、メタン発酵処理しメタンガス170を生成する(ステップS70)。
【0049】
以上が天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の実施形態1の概要である。
【0050】
図2は、実施形態1の構成図である。
図2に基づいて実施形態1の構成を説明する。
【0051】
以下、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の実施形態1の構成は、各処理を、それぞれ装置を使用して実現した場合で説明するが、必ずしも前記装置を使用する必要はなく、例えば、人の手によって手動で実現してもよい。
【0052】
図2に示すように、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の実施形態1の構成は、コンピュータ2、分離装置4、加熱装置5、粉砕装置6、抽出装置7、第1生成装置8、第2生成装置9、および第3生成装置10を少なくとも含むシステムである。
【0053】
天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1のコンピュータ2は、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1を制御するためのコンピュータであって、例えば、物理的に1台または複数のコンピュータで実現されてもよいし、クラウドコンピュータのように仮想的な装置で実現されてよい。
【0054】
ここで、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1のコンピュータ2は、コンピュータ2を操作するための端末(非図示)を一つ乃至複数更に備えてよい。
【0055】
天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1のコンピュータ2は、制御部(非図示)として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、通信部(非図示)として、他の端末や装置等と通信可能にするためのデバイス、例えば、IEEE802.11に準拠したWi―Fi(Wireless―Fidelity)対応デバイス等を備える。
また、コンピュータ2は、記憶部(非図示)として、ハードディスクや半導体メモリ、記録媒体、メモリカード等によるデータのストレージ部を備える。ストレージ部はネットワーク通信可能な外部に存在してもよい。
【0056】
ここで、分離部201は、コンピュータ2の制御部で実行されるプログラムと、分離装置4の制御部(非図示)で実行されるプログラムとにより実現されてよい。すなわち、コンピュータ2が天然ゴムの実100の分離処理を分離装置4に指令し、これに応じて、分離装置4が分離を開始する。分離処理が終了した際には、分離した核部分110および殻部分120を、次の処理である加熱処理装置5および第2生成装置9に、例えばコンベア等でそれぞれ移送する。その際に、分離装置4はコンピュータ2に、分離処理が終了したことを通知し、これに応じて、コンピュータ2は次の処理を当該装置に指令する。
【0057】
同様に、加熱処理部202は、コンピュータ2の制御部で実行されるプログラムと、加熱装置5の制御部(非図示)で実行されるプログラムとにより実現されてよい。すなわち、コンピュータ2が天然ゴムの実100の核部分110の加熱処理を加熱装置5指令し、これに応じて、加熱装置5が加熱を開始する。加熱処理が終了した際には、加熱処理した核部分111を、次の処理である粉砕装置6に、例えばコンベア等で移送する。その際に、加熱装置5はコンピュータ2に、加熱処理が終了したことを通知し、これに応じて、コンピュータ2は次の処理を当該装置に指令する。
【0058】
同様に、粉砕部203は、コンピュータ2の制御部で実行されるプログラムと、粉砕装置5の制御部(非図示)で実行されるプログラムとにより実現されてよい。すなわち、コンピュータ2が加熱処理した核部分111の粉砕処理を粉砕装置6に指令し、これに応じて、粉砕装置6が粉砕を開始する。粉砕処理が終了した際には、粉砕した核部分112を、次の処理である抽出装置7に、例えばコンベア等で移送する。その際に、粉砕装置6はコンピュータ2に、粉砕処理が終了したことを通知し、これに応じて、コンピュータ2は次の処理を当該装置に指令する。
【0059】
同様に、抽出部204は、コンピュータ2の制御部で実行されるプログラムと、抽出装置7の制御部(非図示)で実行されるプログラムとにより実現されてよい。すなわち、コンピュータ2が粉砕した核部分112の抽出処理を抽出装置7に指令し、これに応じて、抽出装置7が抽出を開始する。抽出処理が終了した際には、抽出した植物油130および核部分の残渣140を、次の処理である第1生成装置8および第3生成装置10に、例えばコンベア等でそれぞれ移送する。その際に、抽出装置7はコンピュータ2に、抽出処理が終了したことを通知し、これに応じて、コンピュータ2は次の処理を当該装置に指令する。
【0060】
同様に、第1生成部205は、コンピュータ2の制御部で実行されるプログラムと、第1生成装置8の制御部(非図示)で実行されるプログラムとにより実現されてよい。すなわち、コンピュータ2が植物油130のメチルエステル化処理もしくは水素化処理を第1生成装置8に指令し、これに応じて、第1生成装置8がメチルエステル化処理もしくは水素化処理を開始する。メチルエステル化処理もしくは水素化処理が終了した際には、生成されたバイオ燃料150を、保管場所(非図示)等に例えばコンベア等で移送する。その際に、第1生成装置8はコンピュータ2に、メチルエステル化処理もしくは水素化処理が終了したことを通知し、これに応じて、コンピュータ2は当該処理を終了する。
【0061】
同様に、第2生成部206は、コンピュータ2の制御部で実行されるプログラムと、第2生成装置9の制御部(非図示)で実行されるプログラムとにより実現されてよい。すなわち、コンピュータ2が分離された殻部分120の炭化処理を第2生成装置9に指令し、これに応じて、第2生成装置9が炭化処理を開始する。炭化処理が終了した際には、バイオ炭160を、保管場所(非図示)等に例えばコンベア等で移送する。その際に、第2生成装置9はコンピュータ2に、炭化処理が終了したことを通知し、これに応じて、コンピュータ2は当該処理を終了する。
【0062】
同様に、第3生成部207は、コンピュータ2の制御部で実行されるプログラムと、第3生成装置10の制御部(非図示)で実行されるプログラムとにより実現されてよい。すなわち、コンピュータ2が抽出された殻部分の残渣140のメタン発酵処理を第3生成装置10に指令し、これに応じて、第3生成装置10がメタン発酵処理を開始する。メタン発酵処理が終了した際には、メタンガス170を、保管場所(非図示)等に移送する。その際に、第3生成装置10はコンピュータ2に、メタン発酵処理が終了したことを通知し、これに応じて、コンピュータ2は当該処理を終了する。
【0063】
ここで、上述のように、各装置は、コンピュータ2の開始指令に応じて、各処理を開始してよい。すなわち、コンピュータ2に管理されて全ての装置が自動で各処理を行う。
【0064】
なお、上記とは異なり、コンピュータ2が管理せずに、手動で行ってよい。すなわち、コンピュータ2の指令ではなく、ユーザからの入力に基づいて、各処理が実行されてよい。
【0065】
なお、前記各装置間は、例えば、コンピュータ2が制御するコンベア(非図示)などで接続され、各処理を一部あるいは全部自動化してよい。
【0066】
以上が実施形態1の構成である。
【0067】
図3は実施形態1のコンピュータ2が実行するバイオリファイナリーの手順を示すフローチャート図である。以下
図3に基づいて実施形態1のコンピュータ2が実行するバイオリファイナリーについて更に詳しく説明する。
【0068】
[分離処理]
天然ゴムの実100を核部分110と殻部分120に分離処理する(ステップS301)。ここで、核部分110と殻部分120の分離は、分離装置4を使用してよい。
【0069】
また、分離処理に使用する天然ゴムの実は、後述する実施形態2のまるごと加熱処理した天然ゴムの実501を使用してもよい。なお、まるごと加熱処理した天然ゴムの実501を分離処理した場合は、分離後の核部分510および殻部分520は加熱処理を行わない。
【0070】
以上が分離処理である。
【0071】
[加熱処理]
天然ゴムの実の核部分に含まれる酵素により前記核部分の油分の劣化する場合があり、さらに前記核部分に含まれる水分により腐敗やカビが発生する場合があるため、加熱処理(ステップS302)によって当該酵素の失活と水分の除去を行う。
【0072】
ここで、加熱処理(ステップS302)の加熱条件は、温度範囲が50乃至150度であってよく、加熱時間が4乃至8時間であってよい。また、後述する実施形態2の天然ゴムの実500をまるごと加熱する場合であっても、同一の条件であってよい。
【0073】
加熱処理に使用する加熱装置5は、上述した加熱条件を満たせるのであれば、例えば、オーブンなどの熱風循環式や電子レンジなどの誘電加熱方式であってよい。
【0074】
以上が加熱処理である。
【0075】
[粉砕処理]
後述する抽出処理の効率をあげるために加熱処理した核部分111を粉砕処理する(ステップS303)。
【0076】
ここで、加熱した核部分111の粉砕条件は、粉砕後の当該核部分が10mm以下である。また、後述する実施形態2のまるごと加熱した天然ゴムの実501の核部分520を粉砕する場合も、粉砕条件は同一であってよい。
【0077】
分再処理に使用する粉砕装置6の粉砕方式は、上述した粉砕条件を満たせるのであれば粉砕方式は限定されない。
【0078】
以上が粉砕処理である。
【0079】
[抽出処理]
粉砕した核部分112を抽出処理し、植物油130を抽出する(ステップS304)。
【0080】
ここで、抽出処理を行った粉砕した核部分112の残渣は、核部分の残渣140として生成される。
【0081】
核部分の残渣140は後述するメタン発酵処理に使用されるが、前記メタン発酵処理に使用しない場合は、食料や飼料用途として利用してよい。
【0082】
粉砕した核部分112の抽出方法は、例えば、抽出装置7としてスクリュープレスなどを用いた圧搾方式であってよく、ヘキサンやイソプロピルアルコールなどの有機溶媒を用いた抽出方式であってよい。さらに、当該抽出方法は、複数の組み合わせであってよい。
【0083】
また、抽出に前記有機溶媒を用いる場合は、抽出時に当該有機溶媒を循環させて再利用することによって効率化や抵コスト化することが可能である。
【0084】
上述した当該抽出処理は、後述する実施形態2のまるごと加熱した天然ゴムの実501の核部分を粉砕した核部分512を用いた場合においても同様であってよい。
【0085】
以上が抽出処理である。
【0086】
[メチルエステル化処理および水素化処理]
第1生成部205は、抽出部204が抽出した植物油130をメチルエステル化処理または水素化処理してバイオ燃料150を生成する(ステップS305)。
【0087】
ここで、当該メチルエステル化処理は、メタノールおよび濃硫酸によって植物油130中の脂肪酸をメチルエステル化する。
【0088】
さらに、前記メチルエステル化処理を行った場合は、バイオ燃料150だけでなくグリセリンも生成される。ここで、生成されたバイオ燃料150と前記グリセリンの分離は、自然沈降によって行ってよく、例えば、遠心分離機をもちいた分離方法であってよい。
【0089】
また、メチルエステル化処理の代わりに抽出部204が抽出した植物油130を高温高圧下で水素化処理してもよい。
【0090】
上述したメチルエステル化処理および水素化処理は、後述する実施形態2のまるごと加熱した天然ゴムの実501の核部分510をから抽出した植物油530を用いた場合においても同様であってよい。
【0091】
以上が第1生成部205が行うメチルエステル化処理および水素化処理である。
【0092】
[炭化処理]
第2生成部206は、分離部202によって分離された殻部分120炭化処理してバイオ炭160を生成する(ステップS306)
【0093】
なお、炭化処理はバイオ炭160だけでなく、カーボンブラック、蓄電池の負極材料を生成してよい。
【0094】
また、上述した炭化処理は、後述する実施形態2のまるごと加熱した天然ゴムの実501の核部分510をから抽出した植物油530を用いた場合においても同様であってよい。
【0095】
以上が炭化処理である。
【0096】
[メタン発酵処理]
第3生成部207は、抽出部204によって植物油530を抽出した残渣である核部分の残渣140を、メタン発酵処理してメタンガス170を生成する(ステップS307)。
【0097】
前記メタン発酵処理は、核部分の残渣140にメタン発酵を行う微生物を作用させることによりメタンガスを生成する。
【0098】
上述したメタン発酵処理は、後述する実施形態2のまるごと加熱した天然ゴムの実501の核部分510から植物油530を抽出した残渣である殻部分の残渣540を用いた場合においても同様であってよい。
【0099】
以上がメタン発酵処理である。
【0100】
以上のような天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の実施形態1であれば、天然ゴムの実からバイオ燃料、バイオ炭、またはメタンガスを生成することが可能となる。
【0101】
[実施形態2]
図4は、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の実施形態2の概要図である。また、
図5は、実施形態2の構成図である。
図6は、実施形態2のコンピュータ11が実行するバイオリファイナリーの手順を示すフローチャート図である。
図4乃至
図6に基づいて実施形態2を説明する。
【0102】
天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の実施形態2は、天然ゴムの実500から、バイオ燃料550、バイオ炭560、およびメタンガス570を生成するためのシステムである。
【0103】
以下、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の実施形態2の構成は、各処理を、それぞれ装置を使用して実現した場合で説明するが、必ずしも前記装置を使用する必要はなく、例えば、人の手によって手動で実現してもよい。
【0104】
図5に示すように、実施形態2の構成は、コンピュータ11、加熱装置12、分離装置13、粉砕装置14、抽出装置15、第1生成装置16、第2生成装置17、および第3生成装置18を少なくとも含むシステムである。
【0105】
なお、実施形態2のコンピュータ11は実施形態1のコンピュータ2と同様の構成であってよい。
【0106】
コンピュータ11において、制御部が所定のプログラムを読み込むことにより、記憶部と協働して、加熱処理部601、分離部602、粉砕部603、抽出部604、第1生成部605、第2生成部606、第3生成部607の制御を実現する。
【0107】
ここで、実施形態1と同様に、実施形態2のコンピュータ11の制御部で実行されるプログラムと、加熱処理装置12は加熱処理部601の加熱処理(ステップS700)を、分離装置13は分離部201が行う分離処理(ステップS710)を、粉砕装置14は粉砕部603の粉砕処理(ステップS720)を、抽出装置15は抽出部604の抽出処理(ステップS730)を、第1生成装置16は第1生成部605のメチルエステル化処理(ステップS740)および水素化処理を、第2生成装置17は第2生成部606の炭化処理(ステップS750)を、第3生成装置18は第3生成部267のメタン発酵処理(ステップS760)を、それぞれの装置の制御部(非図示)で実行されるプログラムと、により実現されてよい。すなわち、実施形態と同様に、実施形態2のコンピュータ11が各処理をそれぞれの装置に指令し、これに応じて各装置が処理を行い、前記各処理が終了した前記それぞれの装置は、コンピュータ11に処理が終了したことを通知し、コンピュータ11は次の処理を当該装置に通知する、あるいは処理を終了する。
【0108】
ここで、上述のように、各装置は、コンピュータ11の開始指令に応じて、各処理を開始してよい。すなわち、コンピュータ2に管理されて全ての装置が、例えばコンベア等で接続されて自動で各処理を行う。
【0109】
なお、上記とは異なり、コンピュータ11が管理せずに、手動で行ってよい。すなわち、コンピュータ11の指令ではなく、ユーザからの入力に基づいて、各処理が実行されてよい。
【0110】
次に、実施形態2のコンピュータ11が実行するバイオリファイナリーの手順を説明する。
【0111】
まず、実施形態2の加熱処理部601は、天然ゴムの実500をまるごと加熱処理する(ステップS700)。
【0112】
次に、実施形態2の分離部602は、まるごと加熱処理した天然ゴムの実501を天然ゴムの実の核部分510と、殻部分520とに分離する(ステップS710)。
【0113】
次に、実施形態2の粉砕部603は、分離部602が分離した核部分510を粉砕処理する(ステップS720)。
【0114】
次に、実施形態2の抽出部604は、粉砕部603が粉砕処理した粉砕した核部分510を抽出処理する(ステップS730)。ここで、粉砕した核部分510から植物油530を抽出すると共に、核部分の残渣540を生成する。
【0115】
実施形態2の第1生成部605は、抽出部604が抽出した植物油530を、メチルエステル化処理もしくは水素化処理し、バイオ燃料550を生成する(ステップS740)。
【0116】
また、実施形態2の第2生成部606は、分離部602が分離した加熱処理した天然ゴムの実501の殻部分520を、炭化処理しバイオ炭560を生成する(ステップS750)。
【0117】
さらに、実施形態2の第3生成部607は、抽出部604が生成した核部分の残渣540を、メタン発酵処理しメタンガス570を生成する(ステップS760)。
【0118】
以上が実施形態2の概要である。実施形態2は、上述した実施形態1の天然ゴムの実100をまるごと加熱処理してから核部分と殻部分に分離処理したものであって、粉砕処理以降の処理においては、実施形態1と同様である。
【0119】
以上のような天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム1の実施形態2であれば、天然ゴムの実からバイオ燃料、バイオ炭、またはメタンガスを生成することが可能となる。
【0120】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0121】
1 天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム
2,11 コンピュータ
100,500 天然ゴムの実
110,510 核部分
111 加熱処理した核部分
112,512 粉砕した核部分
120,520 殻部分
130,530 植物油
140,540 核部分の残渣
150,550 バイオ燃料
160,560 バイオ炭
170,570 メタンガス
【要約】
【課題】 天然ゴムの実からバイオ燃料、バイオ炭、またはメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム、天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】 天然ゴムの実100を、核部分110と殻部分120に分離処理する分離部201と、分離処理した核部分110を加熱処理する加熱処理部202と、加熱処理した核部分111を粉砕処理する粉砕部203と、粉砕処理した核部分112から植物油130を抽出処理する抽出部204と、抽出した植物油130を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料150を生成する第1生成部205と、分離処理した殻部分120を炭化処理して、バイオ炭160を生成する第2生成部206と、抽出処理後の核部分の残渣140をメタン発酵処理し、メタンガス170を生成する第3生成部207と、を備える。
【選択図】
図1