(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】石礫検出システム、石礫検出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/62 20170101AFI20231025BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231025BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20231025BHJP
G01C 11/02 20060101ALI20231025BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
G06T7/62
G06T7/00 350C
G06T7/00 640
G01B11/00 H
G01C11/02
H04N7/18 K
(21)【出願番号】P 2020032925
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2019037239
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516356402
【氏名又は名称】株式会社スカイマティクス
(73)【特許権者】
【識別番号】390034463
【氏名又は名称】株式会社オリエンタルコンサルタンツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉本 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】榎本 真貴
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 善太郎
(72)【発明者】
【氏名】井川 忠
(72)【発明者】
【氏名】青山 哲司
(72)【発明者】
【氏名】小山 実苗
【審査官】笠田 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-021375(JP,A)
【文献】特開2014-095644(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107655796(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/62
G06T 7/00
G01B 11/00
G01C 11/02
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石礫を含む地面を撮影した複数の撮影画像を結合して、上空から俯瞰した状態の俯瞰画像を生成する画像結合部と、
前記俯瞰画像に撮影された前記石礫の位置を検出する機械学習部と、
前記俯瞰画像に、前記機械学習部により検出された前記石礫の位置を重畳して表示する画面を表示するための表示制御信号を生成する地図・画像表示部と、
前記機械学習部により検出された前記石礫の長径及び短径を計算する長径・短径計算部と、
前記長径・短径計算部により計算された前記石礫の長径及び短径に基づいて前記石礫のサイズのヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、
前記ヒストグラム生成部が生成した前記ヒストグラムを用いて報告書を生成する報告書生成部と
を有する石礫検出システム。
【請求項2】
前記撮影画像に基づいて、前記地面を含む検出対象空間の3次元データを生成し、この3次元データからオルソ画像を生成する3次元データ生成部を有し、
前記機械学習部は、前記オルソ画像に基づいて前記石礫の位置を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の石礫検出システム。
【請求項3】
前記石礫の位置が重畳された前記俯瞰画像に対する関心領域の設定入力を受け入れる処理要求受付部と、
前記関心領域の前記設定入力に基づいて、前記石礫の位置が重畳された前記俯瞰画像に空間的なフィルタリング処理を行う空間フィルタ部とを有し、
前記長径・短径計算部は、前記関心領域内における前記俯瞰画像から、前記機械学習部により検出された前記石礫の長径及び短径を計算する
ことを特徴とする請求項1に記載の石礫検出システム。
【請求項4】
石礫検出システムにより実行される石礫検出方法であって、
石礫を含む地面を撮影した複数の撮影画像を結合して、上空から俯瞰した状態の俯瞰画像を生成し、
前記俯瞰画像に撮影された前記石礫の位置を検出し、
前記俯瞰画像に、検出された前記石礫の位置を重畳して表示する画面を表示するための表示制御信号を生成し、
検出された前記石礫の長径及び短径を計算し、
計算された前記石礫の長径及び短径に基づいて前記石礫のサイズのヒストグラムを生成し、
生成した前記ヒストグラムを用いて報告書を生成する
石礫物体検出方法。
【請求項5】
コンピュータにより実行されるコンピュータプログラムであって、
このコンピュータプログラムが実行されると、前記コンピュータを
石礫を含む地面を撮影した複数の撮影画像を結合して、上空から俯瞰した状態の俯瞰画像を生成する画像結合部と、
前記俯瞰画像に撮影された前記石礫の位置を検出する機械学習部と、
前記俯瞰画像に、前記機械学習部により検出された前記石礫の位置を重畳して表示する画面を表示するための表示制御信号を生成する地図・画像表示部と、
前記機械学習部により検出された前記石礫の長径及び短径を計算する長径・短径計算部と、
前記長径・短径計算部により計算された前記石礫の長径及び短径に基づいて前記石礫のサイズのヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、
前記ヒストグラム生成部が生成した前記ヒストグラムを用いて報告書を生成する報告書生成部と
して機能させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石礫検出システム、石礫検出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
防災を目的として、例えば河原の石礫のような地上物体を検出してその大きさと個数とを記した報告書を作成することが行われている。特に、洪水で流されると下流に被害を生じかねない土砂の質(大きさ)を検出することの重要性は非常に高い。
【0003】
一般的に、石礫の検出は、まず、空撮や地上での調査により渓流や河原の写真を撮影し、この写真に撮影された石礫を作業者が目視で抽出・特定し、作業者が計測が必要と判断した石礫についてはその大きさを目分量で特定し、その個数を数えて報告書を作成していた。さらに、石礫の場所を特定する必要があるときは、渓流や河原に作業者が出向いて石礫の場所を測量していた。
【0004】
特許文献1には、高精度な3次元画像の生成処理に利用することのできる航空測量映像を、無人飛行体を使用して正確且つ効率的に収集できる技術が開示されている。また、特許文献2には、被写体が遠方にあって被写体までの距離が大きい場合でも、その被写体距離を正確に測定し、測距データや該測距データに基づくスケールデータを正確に写真画面に写し込むようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-27331号公報
【文献】特開平10-281765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した石礫の大きさと個数とを記した報告書を作成する手法は人力によるものであり、手間と時間を要するとともに、報告書作成までの費用も高額になっていた。
【0007】
また、人力で報告書を作成する作業の場合、石礫の大きさの判定などの判断基準が作業者によって差異が生じてしまう可能性があった。
【0008】
加えて、報告書を作成する作業者の訓練にも時間を要する。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたもので、地上物体の大きさと個数とを記した報告書の作成作業を簡略かつ短時間に行い、結果として報告書作成作業を安価に行うことが可能な石礫検出システム、石礫検出方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明の一つの観点に従う石礫検出システムは、石礫を含む地面を撮影した複数の撮影画像を結合して、上空から俯瞰した状態の俯瞰画像を生成する画像結合部と、俯瞰画像に撮影された石礫の位置を検出する機械学習部と、俯瞰画像に、機械学習部により検出された石礫の位置を重畳して表示する画面を表示するための表示制御信号を生成する地図・画像表示部と、機械学習部により検出された石礫の長径及び短径を計算する長径・短径計算部と、長径・短径計算部により計算された前記石礫の長径及び短径に基づいて石礫のサイズのヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、ヒストグラム生成部が生成したヒストグラムを用いて報告書を生成する報告書生成部とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地上物体の大きさと個数とを記した報告書の作成作業を簡略かつ短時間に行い、結果として報告書作成作業を安価に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例である石礫検出システムの全体構成を示す図である。
【
図2】石礫検出システムにおけるデータ処理サーバとユーザとの間の基本的な通信の流れを示す図である。
【
図3】データ処理サーバの3次元データ生成部が生成したオルソ画像の一例を示す図である。
【
図4】ユーザ端末に表示される、石礫の検出結果の画面表示の一例を示す図である。
【
図5】データ処理サーバの機械学習部が機械学習モデルを生成する手順を示す図である。
【
図7】関心領域の設定入力の他の例を示す図である。
【
図8】関心領域の設定入力のまた他の例を示す図である。
【
図9】関心領域の設定入力のさらに他の例を示す図である。
【
図10】誤認識領域の設定入力の一例を示す図である。
【
図11】データ処理サーバのヒストグラム生成部により生成されるヒストグラムの一例を示す図である。
【
図12】データ処理サーバの報告書生成部により作成された調査報告書の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
本実施例の石礫検出システムは、渓流や河原の石礫のような地上物体を画像を用いて検出し、この地上物体の大きさと個数とを計測して報告書を作成するシステムである。本実施例の石礫検出システムは、河原の石礫を検出するシステムに適用されるが、石礫検出システムにより検出する地上物体は石礫に限定されず、石礫より小さい砂・樹木や倒木(流木)や他の地上物体もあり得る。また、地上物体を抽出する入力データは画像に限定されず、点群データや他の空間状態を把握できるデータもあり得る。
【0015】
<システムの全体構成>
図1は、本発明の一実施例である石礫検出システムの全体構成を示す図である。
【0016】
図1に示すように、石礫検出システム1はデータ処理サーバ3を有し、データ処理サーバ3は1台又は複数台のサーバコンピュータマシンにより構成され得る。データ処理サーバ3は一人又は複数人のユーザのそれぞれに対して、それぞれのユーザにより指定される対象物を画像を用いて検査する作業と、その検査結果を報告書にまとめる作業とを手伝うサービスを提供する。
【0017】
データ処理サーバ3は、Webサーバ5を介して、それぞれのユーザの使用するパーソナルコンピュータやスマートフォンなどの情報処理端末(以下、ユーザ端末)7のウェブブラウザとデータ通信を行うことができる。
図1では、便宜上、一つのユーザ端末7だけが図示されており、以下では、一人のユーザがデータ処理サーバ3を利用する場合を例にとり、本システムの詳細を説明する。
【0018】
データ処理サーバ3は、処理要求受付部11、データ保存・検索部13及び解析・演算部15などの処理コンポーネントを有する。
【0019】
処理要求受付部11は、ユーザからの種々の処理要求(例えば、検査を行うための種々の処理要求、又は、報告書を作成するための種々の処理要求など)を受け付けて、要求された処理を行う処理コンポーネントにその要求を渡す。
【0020】
データ保存・検索部13は、様々な検査対象の地図、画像、検査結果及び報告書などのデータを保存し、他の処理コンポーネントからのデータ要求に応じて、要求された地図、画像又は検査結果データを読み出してその処理コンポーネントに渡す。また、データ保存・検索部13には、データ処理サーバ3の起動時に実行されるファームウェア、データ処理サーバ3の基本的動作を制御するオペレーティングシステムなどのプログラムが格納されている。
【0021】
解析・演算部15はデータ処理サーバ3全体の制御を行う。また、データ処理サーバ3の起動時にデータ保存・検索部13に格納されたファームウェアが解析・演算部15により実行されることで、この解析・演算部15は、次に説明する処理コンポーネントとしての機能を実行する。
【0022】
解析・演算部15は、画像登録部17、画像結合部19、3次元データ生成部21、機械学習部23、空間フィルタ部25、長径・短径計算部27、ヒストグラム生成部29、地図・画像表示部31、報告書生成部33、報告書表示部35、報告書出力部37、土地被覆分類部39、土地被覆解析部41、空間フィルタ推論部43、報告書様式登録部45、報告書様式解析部47などの処理コンポーネントを有する。
【0023】
画像登録部17は、ユーザ端末7から検出対象物である石礫を含む地面を撮影した撮影画像(それには、一般的な可視光の写真画像だけでなく、赤外線などの非可視光を用いた写真画像や、その他の種類の画像なども含まれ得る)を受け入れて、それらの画像を、その画像の地理的情報(緯度、経度など)とそのユーザに関連付けてデータ保存・検索部13に登録する。
【0024】
通常、検出対象物である石礫は地面上に多数存在する。従って、河原などの検出対象空間について多数の撮影画像が登録される。例えば、無人飛行体に搭載されたカメラで河原のような広大な検出対象空間の写真を撮影した場合、その河原の一部をそれぞれ撮影した多数の高画質撮影画像がカメラにより撮影される。カメラは河原の一部を撮影した際の地理的情報を撮影画像に紐付けて記憶する。
【0025】
従って、画像登録部17は、それぞれの撮影画像を、撮影したときの地理的情報に紐付けて登録する。この際、画像登録部17は、それぞれの撮影画像に紐付けられた地理的情報のうち、いずれかの地理的情報を、検出対象空間である河原を代表する地理的情報として紐付けて登録してもよい。
【0026】
画像結合部19は、登録された多数の撮影画像を結合することで、検出対象空間全体のモザイク画像を生成する。
【0027】
3次元データ生成部21は、画像結合部19がモザイク画像を生成する際に使用した入力データ(画像)が所定の条件を満たした場合、この入力データに対してSfM(Structure from motion)処理を行って、撮影された検出対象空間の3次元データを生成し、こ
の3次元データからオルソ画像を生成する。このオルソ画像は、検出対象空間(河原)を上空から俯瞰した状態の俯瞰画像である。オルソ画像とは、写真測量技術に基づき、カメラの傾きや比高等による歪みを補正して正射投影とした画像である。SfM及びSfMにより3次元データを生成し、この3次元データに基づいてオルソ画像を生成する手法は公知であるため、ここでの説明は省略する。
【0028】
オルソ画像は、後述する地上物体検出精度(特に大きさとその位置の検出精度)を確保するために生成される。以降、このオルソ画像(俯瞰画像)に基づいて、検出対象空間に存在する検出対象物である石礫の検査を行う。3次元データ及びオルソ画像はデータ保存・検索部13に保存される。
【0029】
機械学習部23は、オルソ画像に撮影された石礫の位置を検出する。より詳細には、機械学習部23は、機械学習モデルを用いて、オルソ画像から石礫が撮影されている位置を検出する。機械学習モデルの生成方法は公知であるため、ここでの説明は省略する。
【0030】
空間フィルタ部25は、ユーザ端末7を介してユーザが設定入力した関心領域に基づいて、3次元データ生成部21が生成したオルソ画像に対して空間的なフィルタリング処理を行う。関心領域とは、後述する長径・短径計算部27及びヒストグラム生成部29による石礫の長径・短径の計算処理及び石礫の個数算出処理を行う領域であり、オルソ画像の少なくとも一部に設定される。空間的なフィルタリング処理とは、オルソ画像に対して関心領域を設定して、長径・短径計算部27等による計算処理をすべき領域を限定することである。
【0031】
長径・短径計算部27は、空間フィルタ部25により設定された関心領域内におけるオルソ画像から、機械学習部23の出力結果、つまり石礫の検出結果に基づいて、この機械学習部23により検出された石礫の長径及び短径を計算する。
【0032】
ヒストグラム生成部29は、長径・短径計算部27により計算された石礫の長径及び短径の計算結果に基づいて、石礫のサイズのヒストグラム、及び、石礫のサイズの累計ヒストグラムを生成する。
【0033】
地図・画像表示部31は、ユーザからの処理要求に応じて、ユーザ端末7のスクリーンに表示されるオルソ画像等をWebサーバ5に送る。Webサーバ5は、オルソ画像を組み込んだ作業画面をユーザ端末7に送出し、ユーザ端末7はこの作業画面をウェブブラウザのスクリーン上に表示する。
【0034】
特に、地図・画像表示部31は、機械学習部23により検出された石礫の位置をオルソ画像に重畳して表示する画面を表示するための表示制御信号を生成することができる。
【0035】
報告書生成部33は、ユーザからの要求に応じて、オルソ画像、石礫の位置検出結果、石礫のサイズのヒストグラム、石礫のサイズの累計ヒストグラム等のデータを用いて、関心領域における石礫の調査報告書を作成する。この際、報告書生成部33は、ユーザがユーザ端末7を介して入力したコメントを処理要求受付部11を介して受け入れ、このコメントを含めた調査報告書を作成する。
【0036】
報告書表示部35は、ユーザからの要求に応じて、報告書生成部33が作成した調査報告書をWebサーバ5に送る。Webサーバ5は調査報告書をユーザ端末7に送出し、ユーザ端末7はこの作業画面をウェブブラウザのスクリーン上に表示する。
【0037】
報告書出力部37は、ユーザからの要求に応じて、報告書生成部33が作成した調査報告書をWebサーバ5に送る。Webサーバ5は、調査報告書をユーザがユーザ端末7にダウンロードすることを可能にする。
【0038】
土地被覆分類部39は、オルソ画像の各画素が持つ分光放射特性やサブビクセルのテクスチャ情報から、オルソ画像中の各領域または各画素の土地被覆を推測する。土地被覆分類部39の処理自体は既知であり、例えば特開平8-320930号公報に開示された技術等が適用可能である。
【0039】
土地被覆解析部41は、ユーザが設定入力した関心領域である空間フィルタと、土地被覆分類部39による分類された土地被覆分類結果との相関を調べる。一例として、土地被覆解析部41は、空間フィルタ内におけるオルソ画像中の各領域または各画素の土地被覆の推定結果を抽出する。
【0040】
空間フィルタ推論部43は、石礫検出システム1においてまだ解析が行われていない検出対象空間についての調査報告書を作成する際に、土地被覆解析部41による土地被覆解析結果に基づいて、最適と思われる空間フィルタを設定する。
【0041】
報告書様式登録部45は、ユーザがユーザ端末7を介して入力した、ユーザが作成を希望する調査報告書の様式(サンプル)と解析を導出するため手順を登録する。登録した調査報告書の様式と解析を導出するため手順はデータ保存・検索部13に格納される。
【0042】
報告書様式解析部47は、報告書様式登録部45により登録され、データ保存・検索部13に格納された調査報告書の様式を解析して、様式を文字部、グラフ部、写真部などに分類して、この分類結果と略同一の比率を有する調査報告書のテンプレートを生成する。
【0043】
<システムの動作>
図2は、石礫検出システム1におけるデータ処理サーバ3とユーザとの間の基本的な通信の流れを示す。
【0044】
図2において、ステップ51で、ユーザ9が、調査報告書作成の際の基礎となる撮影画像をユーザ端末7を介してデータ処理サーバ3にアップロードする。ステップ53で、データ処理サーバ3の画像登録部17が、アップロードされた撮影画像を登録し、データ保存・検索部13に格納する。
【0045】
ステップ55で、画像結合部19が、ステップ53で登録された撮影画像を結合して、検出対象空間のモザイク画像を生成する。この後、3次元データ生成部21が、画像結合部19が生成したモザイク画像に対してSfM処理を行って、3次元データ及びオルソ画像を生成する。
図3は、3次元データ生成部21が生成したオルソ画像Pの一例を示す。
【0046】
ステップ57で、3次元データ生成部21が生成したオルソ画像に基づいて、機械学習部23がオルソ画像に撮影された石礫の位置を検出する。そして、ステップ59で、地図・画像表示部31が、オルソ画像に検出された石礫の位置を重畳した画面をユーザ端末7に表示させる。
【0047】
図4は、ユーザ端末7に表示される、石礫の検出結果の画面表示の一例を示す。オルソ画像Pに重畳して、機械学習部23が検出した石礫Tの位置がバーBとして表示されている。バーBの長さは、機械学習部23が検出した石礫Tのおおよその大きさに比例している。
【0048】
図5は、機械学習部23が機械学習モデルを生成する手順を示す。モデル生成指示者(教師)は、オルソ画像Pにおいて石礫が撮影されている位置を矩形領域Rにより指定する。機械学習部23は、矩形領域Rの特徴量に基づいて機械学習モデルを生成する。
【0049】
ステップ61で、ユーザ9は、ユーザ端末7に表示された画面を見ながら、石礫の位置及びその大きさを計算すべき関心領域の設定入力を行う。ステップ61における関心領域の設定入力は、例えば、ユーザ端末7に設けられたマウス等の入力機器を用いて行われる。
【0050】
図6は、ステップ61において行われる関心領域の設定入力の一例を示す。まず、ユーザ9は、検出対象空間である渓流や河原における調査範囲工事予定地80から上流及び下流にnメートル(一例として200m)の長さ81を指定する。次いで、ユーザ9は、関心領域の幅を設定する。この際、川沿いの道路など、石礫の計数を行わない領域を除外して指定する。さらに、ユーザ9は、コンクリートブロック群のように、石礫の計数を行わない領域(除外領域)82を指定する。これにより、関心領域83の設定入力が行われる。加えて、ユーザ9は、関心領域83内において機械学習部23による検出漏れがあった石礫が撮影されている領域84を追記する。
【0051】
ステップ63で、空間フィルタ部25は、ユーザが設定入力した関心領域83に基づいて、オルソ画像に対して空間的なフィルタリング処理を行う。ステップ65で、長径・短径計算部27が、関心領域83内にある石礫の長径・短径を計数し、さらに、石礫の個数を計数する。
【0052】
ユーザ9は、ステップ61において設定入力をした関心領域83を、ステップS66において修正することができる。以下、
図7~
図10を参照して、関心領域83の修正手法について説明する。
【0053】
図7に示すように、ユーザ9は、渓流を横切るように、計画、調査、設計を行う検討の予定地80である線分を空撮画像上に引くことができる。(この線分は砂防ダム等構造物の建設や各種対策の計画検討、設計等を行う際の渓流調査の基準線を模擬し得る。)すると、関心領域83として、その線分の上流側と下流側にその線分を一辺としてもつ、長さ81の規定サイズ(例えば、それぞれ長さ200m、幅は線分の長さ)の2つの長方形領域が自動的に設定される。これら2つの長方形領域が関心領域83として設定される。
【0054】
そして、ステップS65において、その関心領域83内に存在する石礫の複数のサイズレベル毎の個数と個数割合が自動計算され、その集計結果が画面上に表示される(
図7の右下表参照)。この集計結果には、石礫のサイズレベルに固有の色マークが表示される。
【0055】
さらに、空撮画像上にも、関心領域83内に存在する石礫の各々が、それが該当するサイズレベルの固有の色を付されて表示される。ユーザ9は、どのレベルのサイズの石礫が、関心領域内にどのように分布しているかを、視覚的に把握できる。
【0056】
ユーザ9は、集計結果と、空撮画像上での渓流調査範囲、関心領域83内の石礫のサイズ別の分布などを見ることで、石礫の質の観点での渓流特性を把握し、砂防ダム等の計画設計や各種検討に活用できる。
【0057】
ユーザは関心領域83を次のように変更できる。
【0058】
例えば、
図8に示すように、渓流調査の基準線(線分80)を固定したまま、その上流側と下流側の関心領域83の方向を個別に変えることができる(長方形領域が平行四辺形領域に変わる)。河川の折れ曲がりに対応できる。
【0059】
また、
図9に示すように、渓流調査の基準線(線分80)を固定したまま、その上流側と下流側の関心領域の方向に関心領域の長さ81を個別に変えることができる。渓流内の構造物近くに存在したり、渓流の幅が変化したりしている場合に対応しやすい。
【0060】
さらに、
図8、
図9に示すように、空撮画像上で除外領域82を指定することで、除外領域82を関心領域83から除外することができる。
【0061】
さらに、図示は省略するが、渓流調査の基準線(線分80)の長さや位置を変えることもできる。
【0062】
さらに、
図10に示すように、ユーザ9は、空撮画像上で石礫に該当しない領域が石礫と自動認識されて表示されていた場合、その誤認識された表示(例えば囲み枠84)を指定して、これを石礫から除外する修正を行うことができる。逆に、図示は省略するが、石礫に該当する領域が自動では認識漏れになっていた場合、その領域を指定して(例えば枠線で囲むことで)それを石礫に加える修正を行うことができる。
【0063】
ユーザ9が上記の関心領域83変更や誤認識修正を行なうと、その都度、ステップ63、65において集計が再度行われ、集計結果の表示と、関心領域の表示と、関心領域内の石礫の表示とが更新される。そして、石礫のサイズに応じた色分け表示がされ、関心領域83内に存在する石礫のサイズレベルごとの石礫の個数と個数割合が計算され、画面に表示される。
【0064】
関心領域83の更新が行われた後、ヒストグラム生成部29が、長径・短径計算部27により計算された石礫の長径及び短径の計算結果に基づいて、石礫のサイズのヒストグラム、及び、石礫のサイズの累計ヒストグラムを生成する。
【0065】
図7は、ヒストグラム生成部29により生成されるヒストグラムの一例を示す。
図7は、ヒストグラム生成部29によりヒストグラムが生成された後に、ユーザ9からの指示に基づいてユーザ端末7に表示される画面の一例である。
【0066】
この画面には、石礫のサイズのヒストグラム90及び石礫のサイズの累計ヒストグラム91が表示されている。また、画面には、機械学習部23により検出された石礫の個数を表示する領域92、長径・短径計算部27により計算された石礫の径の平均を表示する領域93、検出された石礫全体の個数の50%に相当する石礫の径(D50)を表示する領域94、及び、検出された石礫全体の個数の95%に相当する石礫の径(D95)を表示する領域95が設けられている。
【0067】
ステップ67で、報告書生成部33が調査報告書を作成する。
図8は、報告書生成部33により作成された調査報告書の一例を示す。調査報告書は、書誌的事項及び検出結果が記載された文字部100、オルソ画像に石礫の検出結果が重畳された画像が表示された写真部101、及び、2種類のヒストグラムが表示されたグラフ部102を有する。
【0068】
ステップ69で、報告書表示部35がユーザ端末7の画面に調査報告書を表示する。ステップ71で、ユーザ9がユーザ端末7を介して、調査報告書のコメントを入力することでこの調査報告書を編集する。ユーザ9が入力したコメントは文字部100に追記される。
【0069】
ステップ73で、報告書生成部33が調査報告書をデータ保存・検索部13に格納する。ステップ75で、報告書出力部37が調査報告書をダウンロード可能な状態でWebサーバ5に送出し、ユーザ9は調査報告書をダウンロードする。
【0070】
<システムの効果>
このように構成される本実施例によれば、撮影画像に基づいて石礫の位置を検出し、設定入力された関心領域に撮影されている石礫の大きさと個数とを計数し、さらに、石礫のサイズのヒストグラムを生成して、これらに基づいて調査報告書を作成することができる。
【0071】
従って、本実施例によれば、石礫の大きさと個数と位置座標を記した報告書の作成作業を簡略かつ短時間に行い、結果として報告書作成作業を安価に行うことが可能となる。
【変形例】
【0072】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0073】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0074】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…石礫検出システム 3…データ処理サーバ 5…Webサーバ 7…ユーザ端末 9…ユーザ 11…処理要求受付部 13…データ保存・検索部 15…解析・演算部 17…画像登録部 19…画像結合部 21…3次元データ生成部 23…機械学習部 25…空間フィルタ部 27…長径・短径計算部 29…ヒストグラム生成部 31…画像表示部 33…報告書生成部 83…関心領域 90…ヒストグラム 91…累計ヒストグラム P…オルソ画像 T…石礫