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特許7372628吹き込み詰め物体用繊維綿とこれを使用した詰め物体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】吹き込み詰め物体用繊維綿とこれを使用した詰め物体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/02 20060101AFI20231025BHJP
   D02G 3/34 20060101ALI20231025BHJP
   D02G 3/38 20060101ALI20231025BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20231025BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20231025BHJP
   A41D 31/06 20190101ALI20231025BHJP
   A41D 31/02 20190101ALI20231025BHJP
   A47G 9/02 20060101ALI20231025BHJP
   A47G 9/10 20060101ALI20231025BHJP
   A47C 27/12 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
D04H1/02
D02G3/34
D02G3/38
A41D31/00 502L
A41D31/04 C
A41D31/06 100
A41D31/00 503G
A41D31/02 E
A47G9/02 D
A47G9/10 B
A47C27/12 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019190315
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021066961
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596075945
【氏名又は名称】イシケン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 和延
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-017109(JP,A)
【文献】実開昭58-117198(JP,U)
【文献】特開昭58-146385(JP,A)
【文献】特開2004-211270(JP,A)
【文献】実開昭55-092391(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
D02G 1/00- 3/48
D01F 11/00-13/04
A41D 31/00-31/32
A47G 9/00-11/00
A47C 27/00-27/22
B68G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の繊維A及び繊維Bで構成される吹き込み詰め物体用繊維綿であって、
前記繊維Aは前記繊維Bに比べて相対的に短く、前記繊維Bと前記繊維Aの重量比は、繊維Bと繊維Aを母数にしたとき、繊維Bの割合は51~99質量%であり、
前記繊維A及び前記繊維Bは、交絡加工、エアージェット加工、及び長繊維Aに対して長繊維Bを噴射させる加工から選ばれる少なくとも一つの加工により一体化されて一体化糸となっており、
前記繊維綿は1本又は複数本の前記一体化糸が集合した集合体であり、前記集合体は、1本又は複数本の一体化糸が折り曲げられるか巻き付けられ、少なくとも一か所接着又は融着により固定されていることを特徴とする吹き込み詰め物体用繊維綿。
【請求項2】
前記集合体の長さは平均20mm以上、平均300mm以下である請求項1に記載の吹き込み詰め物体用繊維綿。
【請求項3】
前記集合体の質量は平均9~3600mg/個である請求項1又は2に記載の吹き込み詰め物体用繊維綿。
【請求項4】
前記一体化糸は、前記繊維A及び前記繊維Bが交絡により一体化された交絡糸である請求項1~のいずれか1項に記載の吹き込み詰め物体用繊維綿。
【請求項5】
前記繊維A及び前記繊維Bから選ばれる少なくとも一部は再生ポリエステル繊維である請求項1~のいずれか1項に記載の吹き込み詰め物体用繊維綿。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の吹き込み詰め物体用繊維綿が側地に吹き込まれている詰め物体であって、
前記繊維Aは前記繊維Bに比べて相対的に短く、
前記繊維Bと前記繊維Aの重量比は、繊維Bと繊維Aを母数にしたとき、繊維Bの割合は51~99質量%であり、
前記繊維A及び前記繊維Bは、交絡加工、エアージェット加工、及び長繊維Aに対して長繊維Bを噴射させる加工から選ばれる少なくとも一つの加工により一体化されて一体化糸となっており、
前記繊維綿は1本又は複数本の前記一体化糸が集合した集合体であり、前記集合体は、1本又は複数本の一体化糸が折り曲げられるか巻き付けられ、少なくとも一か所接着又は融着により固定されていることを特徴とする詰め物体。
【請求項7】
請求項に記載の詰め物体の製造方法であって、
請求項1~のいずれか1項に記載の吹き込み詰め物体用繊維綿を、送風により側地内に吹き込むことを特徴とする詰め物体の製造方法。
【請求項8】
請求項に記載の詰め物体の製造方法であって、
請求項1~のいずれか1項に記載の吹き込み詰め物体用繊維綿を側地に吹き込む際に、吹込み機のブロワーを通過せずにエジェクター方式で前記繊維を側地に吹き込むことを特徴とする詰め物体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹き込み詰め物体用繊維綿とこれを使用した詰め物体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
羽毛布団、羽毛ジャケットなどの羽毛製品に充填される羽毛は、一般的には水鳥の羽毛が使用されている。水鳥としてはグース(ガチョウ)、ダック(アヒル)、北極圏の海岸線に生息するアイダー(野生の鴨)などである。羽毛には、胸毛にあたるダウンと、羽根と呼ばれるフェザーがあり、ともに羽毛製品に使われている。羽毛の産地はポーランド、ハンガリーなどの中欧、スカンジナビア半島を含む北欧、中国などである。羽毛は、嵩高性に優れ、暖かく、掛け布団や羽毛ジャケットの羽毛製品として高級素材の地位を占めている。
【0003】
しかし、天然の羽毛は水鳥に依存しており、その供給量には限度がある上、自然条件や厄病(例えば鳥ウィルス)の影響によって供給量も変動するという問題がある。あるいは自然保護の観点から、野生の鳥を捕捉することには限度がある。その上、天然の羽毛は、洗いが不充分であると悪臭の原因となるため、事前に悪臭の原因となる汚物を除去し、羽毛の洗浄の程度を見る清浄度と酸素計数を一定のレベルに保つ管理が必要である。加えて、羽毛布団、羽毛ジャケットなどの羽毛製品の洗濯は容易ではないという基本的な問題がある。
【0004】
そこで、従来から詰め綿については多くの提案がある。本出願人は特許文献2~3において芯糸と花糸を交絡した詰め綿を提案している。特許文献3には芯糸に花糸を巻き付けて絡ませた詰め綿が提案されている。特許文献4には、糸長差を有する糸条を噴射気流により旋回させて嵩高加工することが提案されている。特許文献5には吹込み用綿状物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-067429号公報
【文献】特開2012-067430号公報
【文献】特開2016-027213号公報
【文献】特開2017-122304号公報
【文献】特許第6417497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来の詰め綿は、吹込み用として好適ではものではなく、さらなる改良が求められていた。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するため、吹込み用として好適な吹き込み詰め物体用繊維綿とこれを使用した詰め物体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の吹き込み詰め物体用繊維綿は、少なくとも2種類の繊維A及び繊維Bで構成される吹き込み詰め物体用繊維綿であって、
前記繊維Aは前記繊維Bに比べて相対的に短く、前記繊維Bと前記繊維Aの重量比は、繊維Bと繊維Aを母数にしたとき、繊維Bの割合は51~99質量%であり、
前記繊維A及び前記繊維Bは、交絡加工、エアージェット加工、及び長繊維Aに対して長繊維Bを噴射させる加工から選ばれる少なくとも一つの加工により一体化されて一体化糸となっており、
前記繊維綿は1本又は複数本の前記一体化糸が集合した集合体であり、前記集合体は、1本又は複数本の一体化糸が折り曲げられるか巻き付けられ、少なくとも一か所接着又は融着により固定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の詰め物体は、前記の吹き込み詰め物体用繊維綿が側地に吹き込まれている詰め物体であって、
前記繊維Aは前記繊維Bに比べて相対的に短く、
前記繊維Bと前記繊維Aの重量比は、繊維Bと繊維Aを母数にしたとき、繊維Bの割合は51~99質量%であり、
前記繊維A及び前記繊維Bは、交絡加工、エアージェット加工、及び長繊維Aに対して長繊維Bを噴射させる加工から選ばれる少なくとも一つの加工により一体化されて一体化糸となっており、
前記繊維綿は1本又は複数本の前記一体化糸が集合した集合体であり、前記集合体は、1本又は複数本の一体化糸が折り曲げられるか巻き付けられ、少なくとも一か所接着又は融着により固定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の詰め物体の製造方法は、前記の吹き込み詰め物体用繊維綿を、送風により側地内に吹き込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吹き込み詰め物体用繊維綿は、少なくとも2種類の繊維A及び繊維Bで構成される吹き込み詰め物体用繊維綿であって、前記繊維Aは前記繊維Bに比べて相対的に短く、前記繊維A及び前記繊維Bは一体化されており、前記繊維綿は、1本又は複数本の前記一体化糸が集合した集合体であることにより、吹込み用として好適な吹き込み詰め物体用繊維綿とこれを使用した詰め物体及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明の一実施形態で使用する長繊維一体化糸の模式的側面図である。
図2図2は本発明の一実施形態における長繊維エアー一体化糸の製造方法の模式的説明図である。
図3図3A-Gは本発明の一実施形態における吹き込み詰め物体用繊維綿の模式的側面図である。
図4図4は本発明の一実施形態における吹き込み詰め物体用繊維綿を製造するための模式的側面図である。
図5図5は本発明の一実施形態における吹込み装置の模式的説明図である。
図6図6Aは比較例における吹込み装置の模式的説明図、図6Bは同、部分切り欠き斜視図、図6Cは同、ブロワーの構造と送風の仕組みを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で使用する交絡糸は、少なくとも2種類の繊維A及び繊維Bで構成される。繊維A及び繊維B以外の繊維を加えることは任意であるが、一体化糸を100質量%としたとき繊維A及び繊維B合計で70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上である。繊維A及び繊維Bは一体化されている。ここで一体化とは、繊維同士が絡み合ったり、巻き付いたり、撚られた状態をいう。また、繊維Aは繊維Bに比べて相対的に短い。繊維Aと繊維Bとの長さの差を設けることでかさ高性を出している。繊維A及び繊維Bは、所定の長さにカットされているので、カットされる前は長繊維A及び長繊維Bという。
【0014】
本発明の吹き込み詰め物体用繊維綿は、1本又は複数本の前記一体化糸が集合した集合体である。集合体であると吹き込み可能となる。特に一体化糸が交絡糸である場合、詰め物体の耐洗濯性が良好であり、へたり難い利点がある。集合体の長さは平均300mm以下が好ましく、さらに平均200mm以下が好ましい。下限値は平均20mm以上が好ましい。
【0015】
前記集合体の質量は平均9~3600mg/個が好ましく、より好ましくは平均18~1800mg/個であり、さらに好ましくは平均30~1000mg/個である。この質量であるとエアーブロー(空気流による充填)しやすく、掛け布団などの大きな側地にも均一に吹き込みやすくなる。
【0016】
前記集合体は、1本又は複数本の交絡糸が折り曲げられるか巻き付けられ、少なくとも一か所接着又は融着により固定されていてもよい。これにより集合体は壊れにくくなる。接着又は融着は、接着テープもしくは融着テープを使用するか、又は交絡糸の中に熱融着繊維(例えば、ナイロン糸、低融点ポリエステル糸、ポリエチレン糸、ポリプロピレン糸)を混合しておき、熱処理、超音波処理、レーザービーム処理して融着させてもよい。接着テープもしくは融着テープとしては、スパンボンドなどの不織布テープ、ホットメルトフィルム、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系などを使用するのが好ましい。
【0017】
繊維A及び繊維Bから選ばれる少なくとも一部又は全部は再生ポリエステル繊維を使用するのが好ましい。好ましくは5~100質量%が再生ポリエステル繊維であり、より好ましくは10~100質量%が再生ポリエステル繊維である。これにより、かさ高性が高く、環境配慮がなされた詰め物用糸が得られる。再生ポリエステル繊維はPETボトルを回収し、フレーク化し、乾燥し、溶融紡糸、延伸して得ることができる。回収PETにバージンPETを混合してもよい。ボトル用PETは数平均分子量がバージンPET繊維(数平均分子量約2万)より高く、再生後でほぼバージンPET繊維と同等の平均分子量になるとされているが、本発明の詰め物用糸は、かさ高性は高い。回収PETをオリゴマーまで解重合し、再度重縮合した再生ポリエステルから紡糸した繊維でもよい。再生ポリエステルはリサイクルポリエステルともいう。
【0018】
本発明の吹き込み詰め物体用繊維綿には、架橋剤として、少なくともウレタン系架橋剤、アクリル系架橋剤又はエポキシ樹脂架橋剤が付与されキュアリングにより固定されている。前記架橋剤を用いることによりかさ高性及び耐洗濯性を向上させることができる。さらに、表面処理剤として平滑性を向上させる樹脂平滑剤として、例えば、シリコーン系樹脂を前記架橋剤とともに併用するのが好ましい。特にシリコーン系樹脂剤とウレタン系架橋剤の併用が好ましい。
【0019】
繊維A及び繊維B以外の繊維は、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンなどの繊維が使用できるが、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)中空糸である。ポリエチレンテレフタレート中空糸は断熱効果により温かく、かつPETはコシがあり、かさ高性を高く維持できる。中空率は10~40%程度が好ましい。
【0020】
長繊維一体化糸の単位長さ当たりの質量は0.01~3g/mが好ましく、0.02~1.5g/mがさらに好ましい。この範囲であると、詰め物加工にする際の取り扱いに便利である。
【0021】
長繊維一体化糸の繊維B(花糸)と繊維A(芯糸)の重量比は、繊維B(花糸)と繊維A(芯糸)を母数にしたとき、繊維B(花糸)の割合は51~99質量%(wt%)の範囲が好ましい。更に好ましくは80~98wt%の範囲、特に好ましくは85~97wt%の範囲である。前記範囲であれば、繊維A(芯糸)による固定一体化はしっかりしたものとなり、かつ風合いも良好となる。
【0022】
カットする前の長繊維A及び長繊維Bは、交絡加工、エアージェット加工、巻き付け加工、撚り加工及び長繊維Aに対して長繊維Bを噴射させる加工から選ばれる少なくとも一つの加工により一体化されているのが好ましい。交絡加工は長繊維Aと長繊維Bの走行方向に対して垂直方向に圧空を噴射するエアー交絡機による加工である。エアージェット加工はいわゆるタスラン加工であり、長繊維Aと長繊維Bに対して進行方向に圧空を押し込む加工である。巻き付け加工は長繊維Aに対して長繊維Bを巻き付け、一体化する加工である。撚り加工は長繊維Aと長繊維Bとを実撚り又は仮撚りする加工である。長繊維Aに対して長繊維Bを噴射させる加工は、長繊維Aに長繊維Bを噴射させ絡めるか又は旋回させる加工である。
【0023】
長繊維一体化糸は、シリコーン樹脂が付与されキュアリングにより熱固定されているのが好ましい。シリコーン樹脂の好ましい付着量は、詰め物用糸に対して0.1~10質量%の範囲である。さらに、硬さ調整のためアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などを固定しても良い。
【0024】
前記繊維Bは、ポリエステル中空糸またはポリエステル異形断面糸であってもよい。もちろん通常の中実糸であってもよい。
【0025】
本発明の詰め物体は、前記繊維綿が側地に吹き込まれ、充填された詰め物体である。前記繊維綿は、1本又は複数本の前記一体化糸が集合した集合体であり、この集合体のまま側地内に吹き込まれており、前記繊維綿は様々な方向に配列されている。前記繊維綿は集合体であることにより側地に吹き込みやすく、かつ詰め物体の耐洗濯性は向上し、へたり難い。
【0026】
本発明の詰め物用糸は、一例として、布団、毛布、寝袋、枕、クッション、マット、ぬいぐるみ、ひざ掛け、ジャケット、シャツ、パンツ、ベスト、コート、防寒衣料、作業着及びネックウォーマーから選ばれる少なくとも一つの詰め物体に充填されている。ジャケット、シャツ、パンツなどの衣類はスポーツ用に好適である。また、インナージャケットのようなフィット感があり、良く伸びる性質がある。
【0027】
本発明の詰め物体は、前記繊維綿を50質量%以上含むのが好ましく、さらに好ましくは70質量%以上が好ましい。50質量%以下の範囲で羽毛、人工羽毛、繊維綿などと併用してもよい。羽毛、人工羽毛、繊維綿なども同時吹き込みが可能である。
【0028】
繊維A及び繊維Bの単繊維繊度は0.1~300decitex、かつトータル繊度が10~600decitexの範囲が好ましい。更に好ましくは単繊維繊度が1.0~50decitex、かつトータル繊度が15~250decitexの範囲である。繊度が前記の範囲であれば、へたりにくく、かつ風合いも良好である。
【0029】
本発明の詰め物体の製造方法は、前記繊維綿を側地に吹き込む際に吹込み機を用いる。吹込み機に特に制限はないが、好ましくはブロワーを通過せずに側地に吹き込むエジェクター方式である。前記エジェクター方式吹込み機のブロワーは、前記繊維綿の供給領域と側地との中間部に配置され、前記繊維綿は供給領域から前記ブロワ―の吸引流体と前記ブロワーからの噴射流体により側地に吹き込まれる。これにより、繊維綿がブロワーに絡まずスムースに側地に吹き込める。従来のブロワーを通過する吹き込み機を用いたのでは、繊維綿がブロワーに絡まってしまう可能性が高い。また、従来のポリエステルなどの合成繊維、コットン、ウールなどの短繊維を吹き込む真空充填装置も知られているが、この装置は大掛かりな制御装置が必要で、かつ掛け布団のようなかさ高な詰め物体を作成することが困難である。
【0030】
以下図面を用いて説明する。各図面において、同一符号は同一部分を示す。図1は本発明の一実施形態で使用する長繊維交絡糸の模式的側面図である。この長繊維交絡糸1は、芯糸2(長繊維A)と花糸3(長繊維B)の構成繊維が互いに絡まっており、花糸3が開繊されて部分的にループ状繊維を形成している。
【0031】
図2はエアー交絡糸の製造方法を示す模式的説明図である。巻き糸体4から芯糸4a(長繊維A)を引き出し、巻き糸体5から花糸5a(長繊維B)引き出し、2個のフィードローラ6、7と糸ガイド8を通過させてエアー交絡装置10に供給する。エアー交絡装置10に圧力空気11を供給すると、糸道9内の繊維は開繊されたり旋回されることにより、互いに交絡する。12は混繊交絡糸である。芯糸の供給速度は10~200m/分、花糸の供給速度は20~10000m/分、巻き取り速度10~200m/分、空気圧力0.01~1.0MPaの交絡ノズルで混繊交絡処理を施した後、デリベリローラ13通過後の糸を巻き糸体20に巻き取る。この方法は、糸の巻き取り速度を20~1500m/分と高速化でき、生産性が高いところに利点がある。
【0032】
得られた交絡糸は、シリコーン樹脂を付与する。シリコーン樹脂としては、分子末端がハイドロジェン基(-OH)、ビニル基(-CH=CH2)などを有する反応性シリコーン処理剤を使用するのが好ましい。例えば、松本油脂製薬社製“TERON E 530”バルキーシリコン、“TERON E 731”、“TERON E 722”などのソフトシリコンを使用できる。付与量は、乾燥重量で詰め綿に対し0.1~10質量%付与するのが好ましい。次に熱処理工程において、140~190℃で1~10分間熱処理し、シリコーン樹脂をキュアリングする。このとき、芯糸の潜在捲縮型ストレッチ糸は後捲縮が発現する。
【0033】
図3A-Gは本発明の一実施形態における吹き込み詰め物体用繊維綿の模式的側面図である。下記に限定されないが、一例として下記のような各種タイプの繊維綿を使用できる。
(1)図3Aは交絡糸22を羽根(フェザー)のように形成したもので、一体化糸22を複数対に折り曲げ、中央縦方向に接着テープ23を貼りつけて一体化糸22を固定している。このフェザー型繊維綿21の大きさは、一例としてタテ15cm以下、ヨコ8cm以下である。
(2)図3Bは交絡糸22をスパイラル状に巻き、外側又は内側に接着テープ23を貼りつけて一体化糸22を固定している。これをスパイラル型繊維綿24と呼ぶ。
(3)図3Cは交絡糸22をジグザグ状に折り曲げ、中央縦方向に接着テープ23を貼りつけて一体化糸22を固定している。これをスネーク型繊維綿25と呼ぶ。
(4)図3Dは交絡糸22をストレート状に複数列配列し、両端に接着テープ23を貼りつけて一体化糸22を固定している。これをストレート型両側固定繊維綿26と呼ぶ。
(5)図3E図3Dのストレート型両側固定繊維綿26を中央の任意の個所でカットしたものである。これをストレート型片側固定繊維綿27と呼ぶ。
(6)図3Fは一体化糸22を円筒状の接着テープ23の外側に、円筒の長さ方向に配列するようにジグザク状に配列したものである。接着テープ23の内側には支持体を入れて、後に取り去る。このようにして得られたものをスパイラル状+外リング型繊維綿28と呼ぶ。
(7)図3Gは交絡糸22を折りたたんで繊維束とし、外側から接着テープ23で固定したものである。これをスネーク状+外リング型繊維綿29と呼ぶ。
【0034】
図4は本発明の一実施形態における吹き込み詰め物体用繊維綿を製造するための模式的側面図である。円筒形支持体30の外側表面に一体化糸22を複数回巻き付け、外側から接着テープ23で固定する。この状態で円筒形支持体30を取り去ると図3Bのスパイラル型繊維綿24が作成できる。また、接着テープ23を縦方向にカットすると図3Dのストレート型両側固定繊維綿26が作成できる。
【0035】
図5は本発明の一実施形態における吹込み装置31の模式的説明図である。この吹込み装置31は、ブロワー32と、吸引口33と、吹き出し口34を含む。吸引口33と吹き出し口34の中間部37において、吸引口33は、ブロワー32と中間部37との接続部38より吹き出し口34側に突出させてあり、これによりブロワー32からの噴射空気流は矢印35a,35b,35cのように流れる。また吸引空気流は35dのように流れる。その結果、繊維綿36a,36bはブロワー32を通過せずに吸引口33から吹き出し口34に送られ、側地内に吹き込まれる。よって、繊維綿36a,36bはブロワー32内で絡みつくことはない。
【0036】
図6A-Cは比較例における吹込み装置44の模式的説明図である。この吹込み装置44は、ブロワー43と、吸引口39と、吹き出し口40を含み、吸引空気流は41eで吸引された繊維綿42aはブロワー43内の空気流42bに随伴し、噴射流41c,41dにより側地内に吹き込まれる。繊維綿42aはブロワー43内を通過する際に、スクロール45とライナー46との間を通過することから、繊維綿42bはブロワー43内に絡みつきやすくなる。ライナー46はモーター47によって回転され、送風を引き起こす。
【実施例
【0037】
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
芯糸として、帝人社製再生ポリエステル繊維、繊度41decitex ,フィラメント数12本を使用し、花糸として帝人社製再生ポリエステル繊維、商品名”ECO PET”の中空フィラメント糸中空率35%、繊度41decitex ,フィラメント数12本を使用し、図2に示す方法で交絡糸を作製した。長繊維Bと長繊維Aを母数にしたとき、長繊維Bの割合は51~99質量%で供給した。
【0039】
次に表面処理工程において、ウレタン樹脂架橋剤として日華化学社製樹脂、5質量%、シリコーン系樹脂剤として松本油脂製薬社製“テロン E-530”を0.5%質量%の水溶液を使用し、付与量は乾燥重量で詰め綿に対し1.5~3.5質量%散布した。次に熱処理工程において、140~190℃で1~13分間熱処理し、シリコーン樹脂を熱キュアリング固定した。
【0040】
得られた表面処理交絡糸を15本束ね、図4に示すように直径30mmの紙管に4回転巻き、熱融着不織布で押さえた。得られた繊維綿の質量は平均700mg/個であった。
【0041】
図5に示す吹込み装置を使用し、得られた繊維綿を側地内に吹き込んだ。側地は座布団側地用コットン生地であり、サイズはタテ200mm、ヨコ200mm、質量10gであった。吹き込んだ繊維綿は10gであった。繊維綿は側地内に均一に充填されていた。
【0042】
このようにして得られた座布団を22リットルの家庭用洗濯機で8分間洗濯し、2回すすぎ、6分脱水した後にそれぞれ乾燥(部屋干し)し、評価した。
【0043】
(比較例1)
実施例1の交絡糸15本束を並列に並べ、長さ200mm、幅200mmにしてカット両端部を熱融着不織布で抑えた。この長繊維綿をタテ200mm、ヨコ200mm、質量10gの座布団側地用コットン生地に充填した。
【0044】
このようにして得られた座布団を22リットルの家庭用洗濯機で8分間洗濯し、2回すすぎ、6分脱水した後にそれぞれ乾燥し、評価した。
【0045】
実施例1と比較例1の座布団の洗濯試験の結果を下記表1にまとめて示す。表1の平均高さは、本素材を入れたミニ座布団の上に発泡スチロール板を乗せてその4つ角の高さを測定し、その平均値を記入した。また、平均高さの増減率は、洗濯前を基準としたときの増減率を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1から明らかなとおり、実施例1は比較例1とほぼ同等の耐洗濯性を示した。比較例1は長繊維中綿を使用し、両端を固定しているので、中綿の移動が少なく、耐洗濯性はもともと優れているが、繊維綿を吹き込んだ実施例1は比較例1とほぼ同等の耐洗濯性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の詰め物用糸は、布団、毛布、寝袋、枕、クッション、マット、ぬいぐるみ、ひざ掛け、ジャケット、シャツ、パンツ、ベスト、コート、防寒衣料及びネックウォーマーから選ばれる少なくとも一つの詰め物体に充填されている。ジャケット、シャツ、パンツなどの衣類はスポーツ用に好適である。
【符号の説明】
【0049】
1 長繊維交絡糸
2,4a 芯糸
3,5a 花糸
4,5,20 巻き糸体
6,7 フィードローラ
8 糸ガイド
9 交絡機の糸道
10 エアー交絡装置
11 圧力空気
12 混繊交絡糸
13 デリベリローラ
14 ワインダーローラ
21 フェザー型繊維綿
22 一体化糸
23 接着テープ
24 スパイラル型繊維綿
25 スネーク型繊維綿
26 ストレート型両側固定繊維綿
27 ストレート型片側固定繊維綿
28 スパイラル状+内リング型繊維綿
29 スネーク状+外リング型繊維綿
30 円筒形支持体
31 吹込み装置
32,43 ブロワー
33,39 吸引口
34,40 吹き出し口
37 中間部
38 接続部
44 吹込み装置
45 スクロール
46 ライナー
47 モーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6