IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クボタシーアイ株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社大阪防水建設社の特許一覧

<>
  • 特許-ライニング部材 図1
  • 特許-ライニング部材 図2
  • 特許-ライニング部材 図3
  • 特許-ライニング部材 図4
  • 特許-ライニング部材 図5
  • 特許-ライニング部材 図6
  • 特許-ライニング部材 図7
  • 特許-ライニング部材 図8
  • 特許-ライニング部材 図9
  • 特許-ライニング部材 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】ライニング部材
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/32 20060101AFI20231025BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019231985
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021098338
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000149206
【氏名又は名称】株式会社大阪防水建設社
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】谷川 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中村 良一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晃介
(72)【発明者】
【氏名】谷室 裕久
(72)【発明者】
【氏名】桔川 良平
(72)【発明者】
【氏名】宇賀 太一
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-105267(JP,A)
【文献】特開2014-014959(JP,A)
【文献】特開2021-091157(JP,A)
【文献】特開平02-032834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00
F16L 1/00
E03F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に巻き回され、隣り合う側縁部どうしが連結部材を用いて連結されることによって螺旋管を形成するライニング部材であって、
前記螺旋管の内面を構成する一方主面を有する帯板状の基体、
前記基体の他方主面の両側部のそれぞれに形成され、前記連結部材に形成された第2嵌合部が前記螺旋管の外面側から嵌め合わされる第1嵌合部、および
前記基体の一部を当該基体の他方主面側に突出するように幅方向に弛ませて形成した変位吸収部を備え、
前記変位吸収部は、幅方向両側部のそれぞれに形成される屈曲部と、前記屈曲部どうしを連結する当該屈曲部よりも曲率の小さい連結部とを有する、ライニング部材。
【請求項2】
前記連結部の内面が平坦である、請求項1記載のライニング部材。
【請求項3】
前記変位吸収部の基端部間に隙間が形成されている、請求項1または2記載のライニング部材。
【請求項4】
前記ライニング部材は、マンホール内で前記螺旋管を形成しながら、形成した前記螺旋管を既設管内に順次送り込んでいく元押し式の管路更生工法に用いられる、請求項1から3のいずれかに記載のライニング部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、螺旋状に巻き回され、隣り合う側縁部どうしが連結されることによって螺旋管を形成する、ライニング部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の管更生部材の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の管更生部材は、ライニング部材(帯板部材)と連結部材(接続部材)とで構成されており、ライニング部材を螺旋状に巻き回し、螺旋状に巻き回したライニング部材の隣り合う側縁部どうしを連結部材によって連結することで螺旋管(ライニング管)を形成する。特許文献1の技術では、連結部材が溝部とフレキシブル部とによって構成される伸長可能部を有しており、地震等によって大きな力が螺旋管に作用すると、連結部材の溝部が破断すると共に、フレキシブル部が大きく伸長することで螺旋管の軸方向変位を吸収して、螺旋管の水密性を保つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6559920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地震時などにおいて螺旋管の伸張を可能とする部分(変位吸収部)を螺旋管の主構成要素であるライニング部材自体に設けることが考えられる。この際、特許文献1の連結部材が備える伸長可能部(溝部およびフレキシブル部)をライニング部材にそのまま設けることも可能である。
【0005】
しかしながら、ライニング部材に設ける変位吸収部としては、高さ方向(螺旋管の径方向)の大きさを抑制したものが望まれる。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、ライニング部材を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、変位吸収部の高さ方向の大きさを抑制しつつ、地震時などにおいて螺旋管の軸方向変位を適切に吸収できる、ライニング部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、螺旋状に巻き回され、隣り合う側縁部どうしが連結部材を用いて連結されることによって螺旋管を形成するライニング部材であって、螺旋管の内面を構成する一方主面を有する帯板状の基体、基体の他方主面の両側部のそれぞれに形成され、連結部材に形成された第2嵌合部が螺旋管の外面側から嵌め合わされる第1嵌合部、および基体の一部を当該基体の他方主面側に突出するように幅方向に弛ませて形成した変位吸収部を備え、変位吸収部は、幅方向両側部のそれぞれに形成される屈曲部と、屈曲部どうしを連結する当該屈曲部よりも曲率の小さい連結部とを有する、ライニング部材である。
【0009】
第1の発明では、ライニング部材は、螺旋状に巻き回されると共に、隣り合う側縁部どうしが連結部材を用いて連結されることによって、既設管を更生するための螺旋管を形成する。ライニング部材は、螺旋管の内面を構成する一方主面を有する帯板状の基体と、基体の他方主面の両側部のそれぞれに形成され、連結部材に形成された第2嵌合部が螺旋管の外面側から嵌め合わされる第1嵌合部と、基体の一部を基体の他方主面側に突出するように幅方向に弛ませて形成した変位吸収部とを備える。変位吸収部は、幅方向両側部のそれぞれに形成される屈曲部と、変位吸収部の突出方向における先端部において屈曲部どうしを連結する連結部とを有する。この連結部は、屈曲部の曲率よりも小さい曲率を有する。
【0010】
第1の発明によれば、変位吸収部は、その幅方向両側部に形成される2つの屈曲部と屈曲部よりも曲率が小さい連結部とを有する。これにより、変位吸収部の高さ方向の大きさを抑制しつつ、変位吸収部の伸長可能幅を大きくすることができ、地震時などにおいて螺旋管の軸方向変位を適切に吸収できる。
【0011】
また、基体の一部を弛ませて変位吸収部を形成するので、押出成形によってライニング部材全体を単一材料で容易に成形することができる。したがって、変位吸収部を有するライニング部材を容易に製造できる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に従属し、連結部の内面が平坦である。これにより、変位吸収部の高さ方向の大きさをより適切に抑制しつつ、変位吸収部の伸長可能幅を大きくすることができる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、変位吸収部の基端部間に隙間が形成されている。これにより、変位吸収部が幅方向(螺旋管の軸方向)に縮むことも可能となる。
第4の発明は、第1から第3の発明のいずれかに従属し、ライニング部材は、マンホール内で螺旋管を形成しながら、形成した螺旋管を既設管内に順次送り込んでいく元押し式の管路更生工法に用いられる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、変位吸収部は、その幅方向両側部に形成される2つの屈曲部と屈曲部よりも曲率が小さい連結部とを有する。これにより、変位吸収部の高さ方向の大きさを抑制しつつ、変位吸収部の伸長可能幅を大きくすることができ、地震時などにおいて螺旋管の軸方向変位を適切に吸収できる。
【0015】
また、基体の一部を弛ませて変位吸収部を形成するので、押出成形によってライニング部材全体を単一材料で容易に成形することができる。したがって、変位吸収部を有するライニング部材を容易に製造できる。
【0016】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の一実施例であるライニング部材を用いて既設管を更生する様子を模式的に示す図解図である。
図2図1のライニング部材を用いて螺旋管を形成する様子を示す図解図である。
図3図1のライニング部材を示す斜視図である。
図4図1のライニング部材を示す断面図である。
図5図1のライニング部材の側縁部どうしを連結するための連結部材を示す斜視図である。
図6図5の連結部材を示す断面図である。
図7】連結部材を用いてライニング部材の側縁部どうしを連結した様子を示す断面図である。
図8】のライニング部材と連結部材との連結部分を示す断面図である。
図9】管更生部材を用いて形成した螺旋管によって既設管を更生した様子を示す断面図である。
図10】地震時などにライニング材の変位吸収部が伸長したときの様子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照して、この発明の一実施例であるライニング部材12は、連結部材14と共に管更生部材10を構成する部材であって、発進側マンホール110内でライニング部材12を螺旋状に巻き回して螺旋管(ライニング管)102を製管しながら、製管した螺旋管102を既設管100内に順次送り込んでいく元押し式の管路更生工法に用いられる。
【0019】
なお、ライニング部材12を含む管更生部材10は、鉄筋コンクリート製、合成樹脂製および金属製などの種々の既設管100の更生に用いることが可能であり、特に、内部に作業者が入って作業をすることが難しい300mm以上1000mm以下の中口径を有する下水管の更生に好適に用いられる。ただし、管更生部材10は、1000mmを超える口径を有する既設管100の更生に用いることも可能である。
【0020】
図2に示すように、管更生部材10は、螺旋管102を形成するための部材であって、長尺帯板状のライニング部材12と、螺旋状に巻き回したライニング部材12の隣り合う側縁部どうしを連結する長尺帯板状の連結部材14とを含む。この実施例では、ライニング部材12は、螺旋状に巻き回したときの外面側に連結部材14との嵌合部(第1嵌合部22)を備えており、連結部材14は、螺旋状に巻き回したライニング部材12の外面側からライニング部材12に取り付けられる。なお、管更生部材10を用いて形成する螺旋管102の外径は、既設管100の内径よりも少し小さい大きさに設定される。以下、ライニング部材12および連結部材14の構成について具体的に説明する。
【0021】
図3および図4に示すように、ライニング部材12は、螺旋管102の主構成要素となる長尺の部材であって、帯板状の基体(ライニング基体)20を含む。基体20の一方主面20aは、螺旋管102の内面を構成する面であり、平滑面となっている。基体20の幅は、たとえば75mmであり、基体20の厚み(肉厚)は、たとえば3mmである。
【0022】
基体20の他方主面20b側、つまりライニング部材12を螺旋状に巻き回したときの外面側の両側部のそれぞれには、後述する連結部材14の第2嵌合部52と嵌め合わされる第1嵌合部22が形成される。第1嵌合部22は、基体20の他方主面20bの両側縁部に形成される第1係合部24と、第1係合部24よりも基体20の幅方向における内側に、第1係合部24と所定間隔をあけて形成される第3係合部26とを含む。
【0023】
第1係合部24は、後述する連結部材14の第2係合部54と係合される部分である。この第1係合部24は、基体20の長手方向に延びる第1突条28を有する。この第1突条28の一方側面28a(基体20の幅方向における内側の面)の先端部には、第1係止片30が形成される。また、第1突条28の他方側面28bは、基体20から離れるに従って基体20の幅方向における内側に傾斜する傾斜面になっている。
【0024】
第3係合部26は、後述する連結部材14の第4係合部56と係合される部分である。この第3係合部26は、基体20の長手方向に延びる第3突条32を有する。この第3突条32の一方側面32a(基体20の幅方向における内側の面)の先端部には、第3係止片34が形成される。また、第3突条32の他方側面32bの先端部には、基体20から離れるに従って基体20の幅方向における内側に傾斜する傾斜面が形成される。
【0025】
また、基体20の幅方向中央部には、基体20の一部を他方主面20b側に突出するように幅方向に弛ませた変位吸収部36が形成される。変位吸収部36の肉厚は、基体20の他の部分の肉厚と略同じ大きさである。変位吸収部36は、一方主面20aから離れるに従って幅方向に膨らむように形成されており、幅方向両側部のそれぞれに形成される屈曲部38と、変位吸収部36の突出方向における先端部(一方主面20aから離れた部分)において屈曲部38どうしを連結する連結部40とを有する。連結部40は、屈曲部38よりも曲率が小さくなるように形成される。この実施例では、連結部40の内面40aは平坦面となっており、連結部40は平板状に形成される。また、変位吸収部36の基端部間には、隙間42が形成されている。隙間42の幅は、たとえば1mmである。
【0026】
このように基体20が変位吸収部36を有することで、ライニング部材12を用いて形成された螺旋管102は、この変位吸収部36の部分において、軸方向および曲がり方向に変形し易くなる。このため、後述のように既設管100内に螺旋管102を送り込むときには、変位吸収部36が変形することにより、既設管100の曲り部、屈曲部および段差部に螺旋管102が追従可能となる。また、施工後において、地震が発生した際には、変位吸収部36が伸長して螺旋管102の軸方向変位を吸収する。
【0027】
また、変位吸収部36が2つの屈曲部38と屈曲部38よりも曲率が小さい連結部40とを有することで、変位吸収部36の先端部を一定の曲率で湾曲させることと比較して、変位吸収部36の高さ方向(螺旋管102の径方向)の大きさを抑制しつつ、変位吸収部36の幅方向(螺旋管102の軸方向)における伸長可能幅(破断することなく伸長できる幅)を大きくすることができる。また、連結部40の内面40aを平坦面とする、つまり連結部40を平板状に形成することで、変位吸収部36の高さ方向の大きさをより適切に抑制しつつ、変位吸収部の伸長可能幅を大きくすることができる。さらに、変位吸収部36の基端部間に隙間42を有することで、変位吸収部36が幅方向に縮むことも可能となる。さらにまた、変位吸収部36が一方主面20aから離れるに従って幅方向に膨らむように形成されることで、変位吸収部36の幅方向外側面が充填材104(図9参照)に対するアンカ部としても機能する。
【0028】
このようなライニング部材12は、たとえば、ポリエチレン樹脂および硬質塩化ビニル樹脂などの合成樹脂の押出成形によって一体成形される。そして、第1係合部24および第3係合部26を含む第1嵌合部22、および変位吸収部36は、基体20の長手方向の全長に亘って形成される。このように、基体20の一部を弛ませて変位吸収部36を形成することで、押出成形によってライニング部材12全体を単一材料で容易に成形することができる。したがって、変位吸収部36を有するライニング部材12を容易に製造できる。
【0029】
この際、ライニング部材12は、ポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂によって形成されることが好ましい。この実施例のライニング部材12は、高密度ポリエチレン樹脂によって形成される。
【0030】
ライニング部材12をポリエチレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂によって形成することで、ライニング部材12の長手方向の端部どうしを融着接合することが可能となり、この接合部分の強度および円滑性を適切に確保できる。また、ポリオレフィン系樹脂は、柔軟性があるので、ポリオレフィン系樹脂によって形成したライニング部材12は、螺旋状に巻き回し易い。したがって、300mm以上1000mm以下の中口径を有する既設管100に対応する大きさ(つまり比較的小さい口径)の螺旋管102を適切に形成できる。さらに、変位吸収部36が変形し易くなり、施工時および地震時などにおいて螺旋管102が変位に追従し易くなる。さらにまた、ポリオレフィン系樹脂は、耐摩耗性および耐薬品性などに優れるので、螺旋管102の内面を構成するライニング部材12をポリオレフィン系樹脂によって形成することで、螺旋管102の耐摩耗性および耐薬品性などの耐久性も向上する。
【0031】
図5および図6に示すように、連結部材14は、ライニング部材12の側縁部どうしを連結するための長尺の部材である。この連結部材14は、上述のようにライニング部材12の外面側(他方主面20b側)から取り付けられる部材であって、ライニング部材12および連結部材14を用いて螺旋管102を形成した状態において、螺旋管102の外面側に配置され、螺旋管102の内面側には露出しないように構成されている。
【0032】
連結部材14は、帯板状の基体(連結基体)50を備える。基体50の幅は、たとえば30mmであり、基体50の厚みは、たとえば3mmである。
【0033】
基体50の一方主面50aは、ライニング部材12の基体20の他方主面20bに対向する面であり、この基体50の一方主面50aの両側部のそれぞれには、ライニング部材12の第1嵌合部22と嵌め合わされる第2嵌合部52が形成される。この第2嵌合部52は、第2係合部54と第4係合部56とを含む。第4係合部56は、基体50の一方主面50aの両側縁部に形成される。第2係合部54は、第4係合部56よりも基体50の幅方向における内側に、第4係合部56と所定間隔をあけて形成される。
【0034】
第2係合部54は、基体50の長手方向に延びる第2突条58を有する。この第2突条58の一方側面58a(基体50の幅方向における内側の面)の先端部には、ライニング部材12の第1係止片30を係止する第2係止片60が形成される。一方、第4係合部56は、基体50の長手方向に延びる第4突条62を有する。この第4突条62の一方側面62a(基体50の幅方向における内側の面)の先端部には、ライニング部材12の第3係止片34を係止する第4係止片64が形成される。
【0035】
また、基体50の一方主面50aには、第2係合部54と第4係合部56との間に、弾性体であるエラストマ等によって帯状に形成される止水部66が設けられる。この止水部66は、ライニング部材12の第1嵌合部22と連結部材14の第2嵌合部52とを嵌め合わせた際に、基体50の一方主面50aとライニング部材12の第3係合部26の先端部との間に挟み込まれることで、十分に圧縮される(図9参照)。これにより、ライニング部材12の側縁部どうしの連結部分における水密性が確保される。
【0036】
一方、基体50の他方主面50bは、既設管100の内面と対向する面であり、この基体50の他方主面50bの両側部のそれぞれには、基体50の長手方向に延びる断面半円状の突条68が形成される。この突条68は、後述するように螺旋管102を既設管100内に送り込むときに、既設管100の内面と接触する部分となる。
【0037】
また、連結部材14の幅方向外側面のそれぞれ(この実施例では第4突条62の他方側面62b)には、基体50の長手方向に延びる断面矩形状の側面突条70が形成される。この連結部材14は、充填材104に対するアンカ部として機能する。
【0038】
このような連結部材14は、たとえば、硬質塩化ビニル樹脂およびポリエチレン樹脂などの合成樹脂の押出成形によって一体成形される。そして、第2係合部54および第4係合部56を含む第2嵌合部52、突条68および側面突条70は、基体50の長手方向の全長に亘って形成される。この際、連結部材14は、ポリオレフィン系樹脂よりも強度の大きい硬質塩化ビニル樹脂などの合成樹脂によって形成されることが好ましい。この実施例の連結部材14は、硬質塩化ビニル樹脂によって形成される。なお、止水部66は、連結部材14と共押出により長手方向の全長に亘って設けられる。
【0039】
連結部材14を強度の大きい硬質塩化ビニル樹脂によって形成することで、ライニング部材12および連結部材14の双方をポリオレフィン系樹脂で形成することと比較して、形成される螺旋管102全体の剛性を向上させることができる。また、後述のように螺旋管102を既設管100内に送り込むときに、連結部材14によってライニング部材12を適切に保護できる。さらに、第2嵌合部52の強度も大きくなるので、第1嵌合部22と第2嵌合部52との嵌合が外れ難くなり、ライニング部材12の側縁部どうしを強固に連結できる。したがって、地震時などにおいてこの連結部分の変形が抑えられ、止水機能を確保できる。さらにまた、硬質塩化ビニル樹脂は、ポリオレフィン系樹脂と比較して成形性がよく、連結部材14の寸法を出し易く、ライニング部材12の側縁部どうしを確実に連結できる。また、硬質塩化ビニル樹脂は、ポリオレフィン系樹脂と比較して止水材の付着性が高い。
【0040】
図7および図8に示すように、螺旋状に巻き回したライニング部材12の隣り合う側縁部どうしを連結部材14によって連結する際には、ライニング部材12の基体20の一方主面20aどうしが面一となるように、基体20の側縁どうしを突き合わせた状態にする。そして、螺旋状に巻き回したライニング部材12の外面側から連結部材14を押し込むようにして、ライニング部材12の第1嵌合部22に対して連結部材14の第2嵌合部52を長手方向に順次嵌め合わせていく。すると、第2嵌合部52の第2係止片60および第4係止片64のそれぞれによって第1嵌合部22の第1係止片30および第3係止片34のそれぞれが係止されて、連結部材14によってライニング部材12の側縁部どうしが連結される。
【0041】
この実施例では、連結部材14によってライニング部材12の側縁部どうしを連結した状態、つまり螺旋管102を形成した状態においては、ライニング部材12の基体20の側縁どうしが直接突き合わされ、連結部材14は、螺旋管102の内面側に露出しない。したがって、螺旋管102の内面に表れる継ぎ目の数を低減できるので、螺旋管102の内面を円滑にすることができ、螺旋管102の流下性能を向上できる。また、螺旋管102の内面に露出するのは、ポリエチレン樹脂(ポリオレフィン系樹脂)によって形成されるライニング部材12のみであるので、螺旋管102の耐摩耗性および耐薬品性などの耐久性も向上する。
【0042】
また、連結部材14によってライニング部材12の側縁部どうしを連結した状態において、その連結部分では、隣り合う基体20の側縁どうしが突き合わされ、ライニング部材12の第1係止片30が基体20の側縁を中心として互いに外向きとなり、連結部材14の第2係止片60が基体20の側縁を中心として互いに内向きとなる。つまり、ライニング部材12の側縁部どうしの連結部分では、連結部材14の第2係合部54によってライニング部材12の第1係合部24を挟み込む状態となる。このため、ライニング部材12には、第1係合部24と第2係合部54との係合によって、隣り合う基体20の側縁どうしが近づく方向(密着する方向)に力が作用する。したがって、ライニング部材12の基体20の側縁どうしを適切に密着させた状態で固定することができる。
【0043】
同様に、ライニング部材12の側縁部どうしの連結部分では、基体20の側縁を中心として、ライニング部材12の第3係止片34が互いに外向きとなり、連結部材14の第4係止片64が互いに内向きとなって、連結部材14の第4係合部56によってライニング部材12の第3係合部26を挟み込む状態となる。このため、ライニング部材12には、第1係合部24と第2係合部54との係合に加えて、第3係合部26と第4係合部56との係合によっても、隣り合う基体20の側縁どうしが近づく方向に力が作用する。したがって、ライニング部材12の基体20の側縁どうしをより適切に密着させた状態で固定することができる。
【0044】
また、上述のように、第1係合部24と第2係合部54との係合、および第3係合部26と第4係合部56との係合を含む2重の係合によって、ライニング部材12の側縁部どうしを連結するので、この連結部分においては引張方向(ライニング部材12が互いに離れる方向)に対する抵抗力が大きくなる。このため、地震時などにおいて螺旋管102に軸方向変位が作用した場合でも、連結部分(第1嵌合部22および第2嵌合部52)の変形を抑えられ、止水部66による止水機能を確保できる。また、2重の係合によって連結強度を確保するので、連結強度を大きくするために第1係合部24、第2係合部54、第3係合部26および第4係合部56の肉厚を大きくする必要がなく、他の部分と肉厚を均等にできる、すなわち部材全体を均一な肉厚にできるため成形し易い。
【0045】
さらに、第1係合部24の第1突条28の他方側面28bが傾斜面になっていることから、連結部材14によってライニング部材12の側縁部どうしを連結した状態においては、第1突条28の他方側面28b側に空隙80が形成される。第1係合部24と第2係合部54とを係合させるときには、主として、ポリエチレン製の第1係合部24が他方側面28b側に弾性変形して傾動するが、空隙80があることによって第1係合部24の倒れ代が確保される。したがって、第1係合部24と第2係合部54との係合に要する力(押込み力)を低減でき、ライニング部材12に対して連結部材14を取り付け易くなる。
【0046】
同様に、連結部材14によってライニング部材12の側縁部どうしを連結した状態においては、第3突条32の他方側面32b側に空隙82が形成される。第3係合部26と第4係合部56とを係合させるときには、主として第3係合部26が他方側面32b側に弾性変形して傾動するが、空隙82があることによって第3係合部26の倒れ代が確保される。したがって、第3係合部26と第4係合部56との係合に要する力を低減でき、ライニング部材12に対して連結部材14を取り付け易くなる。
【0047】
さらにまた、連結部材14によってライニング部材12の側縁部どうしを連結した状態において、連結部材14の基体50に形成した突条68の先端は、螺旋管102の径方向におけるライニング部材12の最外部(この実施例では変位吸収部36の連結部40の外面)よりも外側に位置する。したがって、螺旋管102を既設管100内に送り込むときには、突条68が既設管100の内面と摺接し、ライニング部材12は既設管100の内面と摺接しない(または摺接し難い)ので、連結部材14によってライニング部材12を適切に保護できる。また、連結部材14の基体50の他方主面50bに突条68を形成することで、螺旋管102を既設管100内に送り込むときには、既設管100の内面と螺旋管102の外面との接触面積が減少する。これにより、螺旋管102の挿入抵抗を低減できると共に、既設管100との摺接による螺旋管102の損傷を低減できる。なお、この実施例では、連結部材14を強度の大きい硬質塩化ビニル樹脂によって形成しているので、ライニング部材12の保護効果および螺旋管102の損傷低減効果がより適切に発揮される。
【0048】
また、この実施例では、連結部材14の基体50の他方主面50bも、連結部材14によってライニング部材12の側縁部どうしを連結した状態において、螺旋管102の径方向におけるライニング部材12の最外部よりも外側に位置する。したがって、螺旋管102を既設管100内に送り込むときには、連結部材14によってライニング部材12をより確実に保護できる。
【0049】
続いて、図1および図9を参照して、上述のような管更生部材10を用いて既設管100を更生する管路更生工法の一例について具体的に説明する。この実施例では、発進側マンホール110から到達側マンホール112までの間の既設管100を更生するものとする。
【0050】
既設管100を更生するときには、先ず、発進側マンホール110内に製管機114を設置すると共に、発進側マンホール110の近傍の地上にライニング部材12および連結部材14を含む管更生部材10を設置する。ライニング部材12および連結部材14は、それぞれ個別にロール状に巻き取ったものを用意して設置するとよい。なお、既設管100内は、高圧洗浄機などを用いて予め洗浄しておく。
【0051】
次に、図1に示すように、既設管100内に螺旋管102を施工する。すなわち、ライニング部材12および連結部材14を地上から発進側マンホール110内に設置した製管機114に供給し、この製管機114を用いて形成した螺旋管102を発進側マンホール110内から既設管100内に順次送り込んでいく。製管機114においては、ライニング部材12の基体20の側縁どうしを突き合わせるようにしてライニング部材12を螺旋状に巻き回すと共に、ライニング部材12の外面側から連結部材14を取り付けてライニング部材12の隣り合う側縁部どうしを連結することで、螺旋管102が製管される。
【0052】
ここで、ライニング部材12を螺旋状に巻き回して製管する際には、ライニング部材12の基体20の側縁どうしを突き合わせた状態にするので、ライニング部材12の位置決めが容易となり、製管し易い。また、ライニング部材12が基体20の他方主面20b側(外面側)に連結部材14との嵌合部を備えており、螺旋状に巻き回したライニング部材12の外面側から連結部材14を取り付け可能である。このため、ライニング部材の内面側から連結部材を取り付ける管更生部材では製管作業が困難となる300mm以上1000mm以下の中口径の既設管100に対応する大きさ(つまり比較的小さい口径)の螺旋管102であっても、製管し易い。また、ライニング部材12および連結部材14の2つの部材を用いて螺旋管102を形成するので、ライニング部材12を周回させて位置決めした後、連結部材14によってライニング部材12の側縁部どうしを連結固定することができる。したがって、螺旋管102を形成する際に、隣り合うライニング部材12の周長(口径)を合わせ易く、軸方向の全長に亘って口径が一様な螺旋管102を形成できる。
【0053】
製管機114において製管された螺旋管102は、製管された部分から順に製管機114から押し出されて、回転しながら到達側マンホール112に向かって既設管100内に送り込まれる。この際、ライニング部材12が変位吸収部36を有するので、仮に既設管100に曲り部、屈曲部および段差部などがあったとしても、変位吸収部36が変形することにより、螺旋管102は、既設管100の曲り部、屈曲部および段差部に追従可能となる。
【0054】
既設管100の更生区間の全長に亘って螺旋管102を施工すると、続いて、既設管100の内面と螺旋管102の外面との間に充填材104を注入する。充填材104が固化することで、図9に示すような、既設管100と螺旋管102とが一体化した更生管(複合管)106が形成される。その後、片付け作業などを適宜実施することによって、既設管100の更生作業が終了する。
【0055】
更生管106を形成する際には、連結部材14の側面突条70およびライニング部材12の変位吸収部36がアンカ効果を発揮するので、充填材104から螺旋管102が外れ難くなり、螺旋管102と充填材104との固定強度が向上する。したがって、充填材104によって既設管100と螺旋管102とを強固に一体化することができる。
【0056】
また、図10に示すように、施工後において、地震等によって大きな力が螺旋管102(更生管106)に作用したときには、ライニング部材12の変位吸収部36が破断することなく大きく伸長して、螺旋管102の軸方向変位を吸収する。これにより、ライニング部材12の側縁部どうしの連結部分における変形が抑制されるので、ライニング部材12の第1嵌合部22と連結部材14の第2嵌合部52との嵌合(特に止水部66の周辺部分の形状)が適切に保持され、螺旋管102の水密性が適切に確保される。
【0057】
以上のように、この実施例によれば、変位吸収部36がその幅方向両側部に形成される2つの屈曲部38と屈曲部38よりも曲率が小さい連結部40とを有するので、変位吸収部36(延いてはライニング部材12)の高さ方向の大きさを抑制しつつ、変位吸収部36の伸長可能幅を大きくすることができ、地震時などにおいて螺旋管102の軸方向変位を適切に吸収できる。
【0058】
また、基体20の一部を弛ませて変位吸収部36を形成するので、押出成形によってライニング部材12全体を単一材料で容易に成形することができる。したがって、変位吸収部36を有するライニング部材12を容易に製造できる。
【0059】
なお、上述したライニング部材12および連結部材14を含む管更生部材10の具体的な構成ないし形状は、単なる一例であり、適宜変更可能である。
【0060】
たとえば、上述の実施例では、ライニング部材12は、連結部材14との嵌合部(第1嵌合部22)として、2つの係合部(第1係合部24および第3係合部26)を有するが、係合部は1つであっても構わない。同様に、連結部材14は、ライニング部材12との嵌合部(第2嵌合部52)として、2つの係合部(第2係合部54および第4係合部56)を有するが、係合部は1つであっても構わない。また、ライニング部材12および連結部材14に形成する嵌合部のうち、一方の嵌合部を溝状に形成し、他方の嵌合部をそれに嵌め込まれる突条状に形成することもできる。
【0061】
また、上述の実施例では、ライニング部材12の変位吸収部36の基端部間に隙間42を形成するようにしたが、この隙間42は、必ずしも形成される必要はない。また、隙間42を覆うように基体20の一方主面20aどうしを連結する薄膜部を一体成形するようにしてもよいし、後付けで薄膜部を貼り付ける等して設けるようにしてもよい。
【0062】
さらに、上述の実施例では設けていないが、ライニング部材12の外面側(他方主面20b側)には、剛性を高めるための補強部材を取り付けておくこともできる。
【0063】
さらにまた、上述の実施例では、螺旋管102を回転させながら既設管100内に送り込む元押し式の管路更生工法にライニング部材12を用いたが、これに限定されない。ライニング部材12は、発進側マンホール110内で製管した螺旋管102を到達側マンホール112側からウィンチ等で引っ張ることで、螺旋管102を回転させることなく既設管100内に送り込む牽引式の管路更生工法に用いることもできる。また、ライニング部材12は、既設管100の内面に沿って螺旋状に巻き回し、その隣り合う側縁部同士を連結することによって、既設管100内で螺旋管102を製管する管路更生方法に用いることもできる。
【0064】
また、上述の実施例では、連結部材14をライニング部材12の外面側から取り付けるようにしたが、連結部材14は、ライニング部材12の内面側から取り付けられるものであっても構わない。また、必ずしも連結部材14を用いてライニング部材12の隣り合う側縁部同士を連結する必要はなく、ライニング部材12の両側縁部に互いに嵌り合う嵌合部を形成することによって、ライニング部材12の側縁部同士を直接連結するようにしてもよい。
【0065】
さらに、上述の実施例では、充填材104によって既設管100と螺旋管102とが一体化した複合管(更生管106)を形成するようにしたが、これに限定されない。管更生部材10は、既設管100から独立して強度を保持する自立管を形成することもできる。
【0066】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値はいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 …管更生部材
12 …ライニング部材
14 …連結部材
20 …基体(ライニング基体)
36 …変位吸収部
38 …屈曲部
40 …連結部
40a …連結部の内面
42 …隙間
100 …既設管
102 …螺旋管
104 …充填材
106 …更生管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10