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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】有機微粒子
(51)【国際特許分類】
   C08F 265/06 20060101AFI20231025BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20231025BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20231025BHJP
   C09D 151/06 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C08F265/06
C09K3/18 101
C08L51/06
C09D151/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020118765
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2022015731
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100224605
【弁理士】
【氏名又は名称】畠中 省伍
(72)【発明者】
【氏名】田中 義人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 優子
(72)【発明者】
【氏名】中野 麻里奈
(72)【発明者】
【氏名】東 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】南 秀人
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-1795(JP,A)
【文献】特開平7-278442(JP,A)
【文献】特開平11-172126(JP,A)
【文献】特開2000-160148(JP,A)
【文献】国際公開第2013/046851(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/159754(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F、C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア重合体及びシェル重合体を含んでなる有機微粒子であって、
コア重合体が非フッ素重合体であり、
コア重合体のTg又は融点が15℃以上であり、
コア重合体の水接触角が100°以上であり、
コア重合体を構成する全ての単官能単量体が、ホモポリマーの水接触角が100°以上である疎水性コア単量体であり、
シェル重合体のTg及び融点の高い方が、コア重合体のTg及び融点の高い方よりも低く
シェル重合体の水接触角が100°未満であり、
シェル重合体は、少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合を有する架橋性シェル単量体から誘導された繰り返し単位を含まず、非架橋であり、
シェル重合体を構成する全ての単官能単量体が、25℃水溶解度が0.1g/l以下である非水溶性シェル単量体であり
水溶性シェル単量体が少なくとも1つの炭素数1~10の炭化水素基又は炭素数1のフルオロアルキル基を有する、有機微粒子。
【請求項2】
コア重合体が、少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合を有する架橋性コア単量体から誘導された繰り返し単位を含む、請求項1に記載の有機微粒子。
【請求項3】
コア重合体が、少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合を有する架橋性コア単量体から誘導された繰り返し単位を含み、
シェル重合体のTg又は融点がコア重合体の10%熱分解温度よりも低い、請求項1又は2に記載の有機微粒子。
【請求項4】
疎水性コア単量体が、1つのエチレン性不飽和二重結合並びに少なくとも1つの反応性基及び/又は親水性基を有する反応性/親水性単量体を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の有機微粒子。
【請求項5】
疎水性コア単量体が、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、2-(トリメチルシリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(tert-ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも一種の単量体である反応性/親水性単量体を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の有機微粒子。
【請求項6】
非水溶性シェル単量体のホモポリマーの25℃水溶解度が10g/l以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の有機微粒子。
【請求項7】
疎水性コア単量体が少なくとも1つの炭素数4~40の炭化水素基を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の有機微粒子。
【請求項8】
疎水性コア単量体が式:
CH=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)
又は
CH=C(-R22)-Y21-(H)5-l-(R21)
[式中、R11は、炭素数11~40の脂肪族炭化水素基であり、
21は炭素数3~30の炭化水素基であり、
12及びR22は、それぞれ独立的に水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
21はベンゼン環からl+1個の水素原子を取り除いた基であり、
Hは水素原子であり、
H及びR21はY21にそれぞれ直接結合しており、
k及びlはそれぞれ独立的に1~3である。]
で示される単量体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の有機微粒子。
【請求項9】
非水溶性シェル単量体が式:
CH=C(-R32)-C(=O)-Y31-(R31)
又は
CH=C(-R42)-Y41-(H)5-n-(R41)
[式中、R31は炭素数1~10の脂肪族炭化水素基又は-(CHi33(ここでR33は炭素数1のフルオロアルキル基であり、iは1から6である)であり、
41は炭素数1~2の炭化水素基であり、
32及びR42は、それぞれ独立的に水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
31は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
41はベンゼン環からn+1個の水素原子を取り除いた基であり、
Hは水素原子であり、
H及びR41はY41にそれぞれ直接結合しており、
mは1~3であり、nは0~3である。]
で示される単量体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の有機微粒子。
【請求項10】
コア重合体において、疎水性コア単量体から誘導された繰り返し単位が、繰り返し単位の合計100モル部に対して、70モル部以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の有機微粒子。
【請求項11】
平均粒径が10nm~5000nmである、請求項1~10のいずれかに記載の有機微粒子。
【請求項12】
シェル重合体のTgはコア重合体のTgよりも低く、シェル重合体のTgとコア重合体のTgとの差が20℃以上であり、請求項1~11のいずれかに記載の有機微粒子。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の有機微粒子が基材表面に配置された表面コーティング構造。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載の有機微粒子、及び
液状媒体
を含んでなる有機微粒子の分散液である撥水剤組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の撥水剤組成物を含む処理液を基材に適用する工程を含む、表面コーティング構造の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機微粒子に関し、詳細にはコアシェル構造の有機微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂等のコーティングにより、基材表面に撥水性を付与できることが知られている。例えば、フッ素樹脂のコーティングによって水接触角が約120°の撥水性の基材表面が得られることが知られている。しかしながら、近年、環境に与える影響の観点から、フッ素を用いずとも、あるいはフッ素の使用量を減じても、撥水性に優れた非フッ素系の撥水性コーティング材料の開発が求められている。
【0003】
引用文献1は、表面が疎水性で平均一次粒子径が100nm以下の微粒子を、疎水性溶媒を全有機溶媒中65質量%以上含有する有機溶媒に分散させたコーティング液を塗工することにより、基材に撥水性を発現させることができることを開示している。引用文献1において微粒子としては無機粒子が使用されている。
【0004】
引用文献2は、コアがガラス転移温度(Tg)90℃以上の疎水性重合体であり、且つシェルがα,βーモノエチレン性不飽和カルボン酸と、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性モノマーと、その他の重合性モノマーとの共重合体でTgが0~70℃であることを特徴とするコアシェルエマルジョンを開示している。引用文献2においてホモポリマーが水溶性である単量体が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2010/073623
【文献】特開平5-117344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現状では必ずしも、有機微粒子を用いたコーティングではその撥水性能は十分とはいえない。本開示は、特定の組成のコアシェル構造の有機微粒子を用いることにより、優れた撥水性を基材に付与できる新規な撥水剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示における一実施形態は、次のとおりである。
[項1]
コア重合体及びシェル重合体を含んでなる有機微粒子であって、
コア重合体のTg又は融点が15℃以上であり、
コア重合体の水接触角が100°以上であり、
コア重合体を構成する全ての単官能単量体が、ホモポリマーの水接触角が100°以上である疎水性コア単量体であり、
シェル重合体のTg又は融点がコア重合体のTgよりも低く、若しくは、シェル重合体のTg又は融点がコア重合体の融点よりも低く、
シェル重合体の水接触角が100°未満であり、
シェル重合体を構成する全ての単官能単量体が、ホモポリマーが非水溶性である非水溶性シェル単量体である、有機微粒子。
[項2]
コア重合体が、少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合を有する架橋性コア単量体から誘導された繰り返し単位を含み、
シェル重合体が、少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合を有する架橋性シェル単量体から誘導された繰り返し単位を含まない、項1に記載の有機微粒子。
[項3]
コア重合体が、少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合を有する架橋性コア単量体から誘導された繰り返し単位を含み、
シェル重合体のTg又は融点が、コア重合体の10%熱分解温度よりも低い、項1又は2に記載の有機微粒子。
[項4]
疎水性コア単量体が、1つのエチレン性不飽和二重結合並びに少なくとも1つの反応性基及び/又は親水性基を有する反応性/親水性単量体
を含まない、項1~3のいずれか一項に記載の有機微粒子。
[項5]
反応性/親水性単量体が、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、2-(トリメチルシリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(tert-ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも一種の単量体である、項4に記載の有機微粒子。
[項6]
非水溶性シェル単量体のホモポリマーの25℃水溶解度が10g/l以下である、項1~5のいずれか一項に記載の有機微粒子。
[項7]
疎水性コア単量体が少なくとも1つの炭素数4~40の炭化水素基又は炭素数2~6のフルオロアルキル基を有する、項1~6のいずれか一項に記載の有機微粒子。
[項8]
疎水性コア単量体が式:
CH=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)
又は
CH=C(-R22)-Y21-(H)5-l-(R21)
[式中、R11は、炭素数11~40の脂肪族炭化水素基又は-(CH13(ここでR13は炭素数2~6のフルオロアルキル基であり、jは1から6である)であり、
21は炭素数3~30の炭化水素基であり、
12及びR22は、それぞれ独立的に水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
21はベンゼン環からl+1個の水素原子を取り除いた基であり、
Hは水素原子であり、
H及びR21はY21にそれぞれ直接結合しており、
k及びlはそれぞれ独立的に1~3である。]
で示される単量体である、項1~7のいずれか一項に記載の有機微粒子。
[項9]
非水溶性シェル単量体が少なくとも1つの炭素数1~10の炭化水素基又は炭素数1のフルオロアルキル基を有する、項1~8のいずれか一項に記載の有機微粒子。
[項10]
非水溶性シェル単量体が式:
CH=C(-R32)-C(=O)-Y31-(R31)
又は
CH=C(-R42)-Y41-(H)5-n-(R41)
[式中、R31は炭素数1~10の脂肪族炭化水素基又は-(CHi33(ここでR33は炭素数1のフルオロアルキル基であり、iは1から6である)であり、
41は炭素数1~2の炭化水素基であり、
32及びR42は、それぞれ独立的に水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
31は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
41はベンゼン環からn+1個の水素原子を取り除いた基であり、
Hは水素原子であり、
H及びR41はY41にそれぞれ直接結合しており、
mは1~3であり、nは0~3である。]
で示される単量体である、項1~9のいずれか一項に記載の有機微粒子。
[項11]
コア重合体において、疎水性コア単量体から誘導された繰り返し単位が、繰り返し単位の合計100モル部に対して、70モル部以上であり、
シェル重合体において、非水溶性シェル単量体から誘導された繰り返し単位が、繰り返し単位の合計100モル部に対して、70モル部以上である、項1~10のいずれか一項に記載の有機微粒子。
[項12]
平均粒径が10nm~5000nmである、項1~11のいずれかに記載の有機微粒子。
[項13]
項1~12のいずれか一項に記載の有機微粒子が基材表面に配置された表面コーティング構造。
[項14]
項1~12のいずれかに記載の有機微粒子、及び
液状媒体
を含んでなる有機微粒子の分散液である撥水剤組成物。
[項15]
項14に記載の撥水剤組成物を含む処理液を基材に適用する工程を含む、表面コーティング構造の形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、特定の有機微粒子を用いることで、基材表面に凹凸を形成することができ、優れた撥水性を基材に付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例における(a)PSA粒子の光学顕微鏡写真、及び、(b)PSA粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
図2】実施例における(a)シード分散重合前のPSA粒子の光学顕微鏡写真、及び、(b)シード分散重合後のPSA/PEHMA粒子の顕微鏡写真を示す。
図3】実施例における(a)キャストしたPSA粒子のSEM写真、及び、(b)キャストしたPSA/PEHMA粒子のSEM写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<撥水剤組成物>
撥水剤組成物は、有機微粒子、及び液状媒体を含んでなる。撥水剤組成物は、さらに、液状媒体、バインダー樹脂、分散剤、界面活性剤、及びその他添加剤から選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【0011】
[有機微粒子]
有機微粒子は、撥水性を発揮する有効成分として働く。
【0012】
有機微粒子の平均粒径は、10nm以上、50nm以上、100nm以上、300nm以上、750nm以上であってよく、好ましくは50nm以上である。有機微粒子の平均粒径は、5000nm以下、4000nm以下、3000nm以下、又は2000nm以下であってよく、好ましくは4000nm以下である。平均粒径は、画像解析により測定される数平均粒径を意味する。
【0013】
本開示における有機微粒子はコア重合体及びシェル重合体を含んでなることによりコアシェル構造を有している。コア重合体とシェル重合体は、化学的及び/又は物理的に結合していてもよい。
【0014】
(コア重合体)
コア重合体はコアシェル構造のコア部分を形成する。コア重合体は非フッ素重合体又は含フッ素重合体によって形成されていてよい。コア重合体は、ランダム重合体であってよい。
【0015】
コア重合体のTg又は融点は15℃以上、17.5℃以上、20℃以上、22.5℃以上、25℃以上、27.5℃以上、又は29.5℃以上であってよく、好ましくは17.5℃以上、又は22.5℃以上である。コア重合体のTg又は融点は150℃以下、100℃以下、75℃以下、50℃以下、45℃以下、又は40℃以下であってよく、好ましくは100℃以下である。融点及びTgは既知の方法により測定可能であり、例えば示差走査熱量測定(DSC)により算出できる。
【0016】
コア重合体の水接触角は100°以上、101°以上、103°以上、105°以上、110°以上、115°以上、又は120°以上であってよい。コア重合体の水接触角は160°以下、又は140°以下であってよい。コア重合体の水接触角が上記範囲にあることが有機微粒子の撥水性の観点等から好ましい。重合体の水接触角とは、実施例に示すように重合体のスピンコート膜に対する水接触角をいう。
【0017】
・疎水性コア単量体
コア重合体は単官能単量体から誘導された繰り返し単位を有する。「単官能単量体」とは、1つのエチレン性不飽和二重結合を有する単量体をいう。コア重合体を構成する単官能単量体は、そのホモポリマーの水接触角が100°以上である疎水性コア単量体であってよい。コア重合体を構成する全ての単官能単量体が疎水性コア単量体であってよい。疎水性コア単量体のホモポリマーの水接触角は100°以上、101°以上、103°以上、105°以上、110°以上、115°以上、又は120°以上であってよく、好ましくは100°以上である。疎水性コア単量体のホモポリマーの水接触角は160°以下、140°以下、130°以下、125°以下、又は110°以下であってよい。水接触角が上記範囲にあることが有機微粒子の撥水性の観点等から好ましい。
【0018】
疎水性コア単量体は、1つのエチレン性不飽和二重結合並びに少なくとも1つの反応性基及び/又は親水性基を有する反応性/親水性単量体を含まないことが好ましい。反応性基の例は、エポキシ基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、ブロックイソシアネート基である。親水性基の例は、ヒドロキシル基、ポリアルキレンオキシド基、アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸、スルホン酸、リン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基、塩素又は臭素、ヨウ素イオンが対アニオンであるアンモニウム塩基、その他イオン性基等である。
【0019】
疎水性コア単量体に含まれない反応性/親水性単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、2-(トリメチルシリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(tert-ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物、及びテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
疎水性コア単量体は少なくとも1つの炭素数4~40の炭化水素基を有していてよい。当該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。当該炭化水素基は直鎖状又は分岐鎖状であってよい。当該炭化水素基の炭素数は4以上、6以上、8以上、10以上、11以上、12以上、14以上、又は16以上であってよく、好ましくは6以上である。当該炭化水素基の炭素数は40以下、30以下、25以下、22以下、又は20以下であってよく、好ましくは30以下である。
【0021】
疎水性コア単量体は少なくとも1つの炭素数2~6のフルオロアルキル基を有していてよい。フルオロアルキル基の炭素数2以上の場合、疎水性コア単量体を有する重合体の水接触角が100°以上となり得る。フルオロアルキル基の炭素数は4~6であってよく、例えば5~6、特に6である。フルオロアルキル基はパーフルオロアルキル基であることが好ましい。フルオロアルキル基の例は、-CF2CF3、-CF2CF2CF3、-CF(CF3)2、-CF2CF2CF2CF3、-CF2CF(CF3)2、-C(CF)3、-(CF2)4CF3、-(CF2)2CF(CF3)2、-CF2C(CF3)3、-CF(CF3)CF2CF2CF3、-(CF2)5CF3、-(CF2)3CF(CF3)2、-C(CF)CH3、-C(CF)H、-CF2CFH、-CF2CFCFCFH、-CF2CFCFCFCFCFH等である。
【0022】
疎水性コア単量体は式:
CH=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)
又は
CH=C(-R22)-Y21-(H)5-l-(R21)
[式中、R11は、炭素数11~40の脂肪族炭化水素基又は-(CH13(ここでR13は炭素数2~6のフルオロアルキル基であり、jは1から6、例えば1~4、又は2~3であり、)であり、
21は炭素数3~30の炭化水素基であり、
12及びR22は、それぞれ独立的に水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
21はベンゼン環からl+1個の水素原子を取り除いた基であり、
Hは水素原子であり、
H及びR21はY21にそれぞれ直接結合しており、
k及びlはそれぞれ独立的に1~3である。]
で示される単量体であってよい。
【0023】
11及びR21は、分岐状又は長鎖(もしくは長鎖の直鎖状)の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。-CH基は-CH-に比べ表面自由エネルギーが低く撥水性を示しやすい。このため分岐が多く、-CH基が多い構造が好ましい。また、一方で一定の長さの長鎖アルキル基はその結晶性由来の高い撥水性を示す。よって、分岐状の炭化水素基(例えば、分岐状のアルキル基)、特にt-ブチル基やイソプロピル基、多分岐構造の基、あるいは長鎖の炭化水素基(もしくは長鎖の直鎖状炭化水素基)、例えばアルキル基であってよい。R11の炭素数は、11以上、12以上、14以上、16以上、18以上であってよく、好ましくは12以上である。R11の炭素数は25以下、20以下、15以下、又は10以下であってよい。R21の炭素数は4以上、6以上、8以上、10以上、又は12以上であってよい。R21の炭素数は25以下、15以下、又は10以下であってよい。
【0024】
13は炭素数2~6のフルオロアルキル基であってよい。フルオロアルキル基の炭素数は4~6であってよく、例えば5~6、特に6である。フルオロアルキル基はパーフルオロアルキル基であることが好ましい。フルオロアルキル基の例は、-CF2CF3、-CF2CF2CF3、-CF(CF3)2、-CF2CF2CF2CF3、-CF2CF(CF3)2、-C(CF)3、-(CF2)4CF3、-(CF2)2CF(CF3)2、-CF2C(CF3)3、-CF(CF3)CF2CF2CF3、-(CF2)5CF3、-(CF2)3CF(CF3)2、-C(CF)CH3、-C(CF)H、-CF2CFH、-CF2CFCFCFH、-CF2CFCFCFCFCFH、等である。
【0025】
kは1、2又は3である。Y11が4価の炭素数1の炭化水素基を有する場合などにおいて、k=3である。Y11が3価の炭素数1の炭化水素基を有する場合などにおいて、k=2である。Y11が3価及び4価の炭素数1の炭化水素基を有しない場合(例えば、Y11が2価の炭素数1の炭化水素基(-CH-)を(例えば1~6個)有する場合)に、k=1である。
【0026】
12及びR22は、水素原子、メチル基、ハロゲン原子、置換又は非置換のベンジル基、置換又は非置換のフェニル基であってよい。あるいは、-CF基であってよい。R12及びR22の例は、水素原子、メチル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子、-CF基、シアノ基である。R12及びR22は、水素原子、メチル基、塩素原子であることが好ましい。R12はメチル基であることがより好ましい。R12がメチル基であることにより、より高い撥水性が得られる。R22は、特に反応性の観点から、水素原子であることが好ましい。
【0027】
11は、2価の基であることが好ましい。2~4価の炭素数1の炭化水素基の例は、-CH-、枝分かれ構造を有する-CH=及び枝分かれ構造を有する-C≡である。
【0028】
11は、-Y’-、-Y’-Y’-、-Y’-C(=O)-、-C(=O)-Y’-、-Y’-C(=O)-Y’-、-Y’-X’-、-Y’-X’-Y’-、-Y’-X’-Y’-C(=O)-、-Y’-X’-C(=O)-Y’-、-Y’-X’-Y’-C(=O)-Y’-、又は-Y’-X’-Y’-X’-
[式中、Y’はそれぞれ独立して、直接結合、-O-、-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)又は-S(=O)-であり、
X’は-(CH-(mは1~5の整数である)、炭素数1~5の不飽和結合を有する直鎖状の炭化水素基、炭素数1~5の枝分かれ構造を有する炭化水素基、又は-(CH-C-(CH-(lはそれぞれ独立して0~5の整数であり、-C-はフェニレン基である)である。]
であってよい。Y11は2価の炭化水素基のみでないことが好ましい。R11が-(CH13であるとき、Y11は直接結合であってよい。
【0029】
11の具体例は、-O-、-NH-、-O-C(=O)-、-NH-C(=O)-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-O-C-、-NH-C-、-O-(CHm-O-、-NH-(CHm-NH-、-O-(CHm-NH-、-NH-(CHm-O-、-O-(CHm-O-C(=O)-、-O-(CHm-C(=O)-O-、-NH-(CHm-O-C(=O)-、-NH-(CHm-C(=O)-O-、-O-(CHm-O-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-O-、-O-(CHm-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-、-O-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-O-(CHm-O-C-、-O-(CHm-NH-S(=O)-、-O-(CHm-S(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-S(=O)-、-NH-(CHm-S(=O)-NH--NH-(CHm-O-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-O-、-NH-(CHm-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-O-C-、又は-NH-(CHm-NH-C-である[式中、mは1~5の整数、特に2又は4である。]。
【0030】
11は、-O-、-NH-、-O-(CHm-O-C(=O)-、-O-(CHm-NH-C(=O)-、-O-(CHm-O-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-O-、-O-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-S(=O)-又は-O-(CHm-S(=O)-NH-、-NH-(CHm-O-C(=O)-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-、-NH-(CHm-O-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-O-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-NH-
[式中、mは1~5の整数、特に2又は4である。]
であることが好ましい。Y11は、-O-、-O-(CHm-O-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-O-、又は-O-(CHm-NH-C(=O)-、-O-(CHm-NH-S(=O)-又は-O-(CHm-S(=O)-NH-、特に-O-(CHm-NH-C(=O)-であることがより好ましい。
【0031】
21はベンゼン環からl+1個の水素原子を取り除いた基である。Y21を有する単量体は、スチリル基を有する。Y21を有する単量体において、1~3個のR21基が存在していてよい。
【0032】
疎水性コア単量体の具体例は、次のとおりである。下記の化学式の化合物は、α位が水素原子であるアクリル化合物であるが、α位がメチル基であるメタクリル化合物及びα位が塩素原子であるαクロロアクリル化合物であってよい。またスチレン誘導体においても、下記の化学式の化合物はα位が水素原子であるが、具体例は、α位がメチル基であるαメチルスチレン化合物及びα位が塩素原子であるαクロロスチレン化合物であってよく、α位が水素原子であるスチレン化合物が好ましい。
CH=CHC(=O)OC1837
CH=CHC(=O)OCOC(=O)NHC1837
CH=CHC(=O)OCNHC(=O)OC1837
CH=CHC(=O)OCNHC(=O)OC1837
CH=CHC(=O)OC2mNHC(=O)C2n+1
CH=CHC(=O)OCOC(=O)NHC2n+1
CH=CHC(=O)OCNHC(=O)OC2n+1
CH=CHC(=O)OCNHC(=O)NHC2n+1
CH=CHC(=O)OCOC(=O)NHC2n+1
CH=CHC(=O)NHC2mOC(=O)NHC2n+1

CH=CHC(=O)OC2mNHSO2n+1
CH=CHC(=O)OC2mSONHC2n+1
CH=CHC(=O)OC2m
CH=CHC(=O)OCH
CH=CHC(=O)OCHCH
CH=CHC(=O)OCHCH13
[上記式中、nは11~40の数であり、mは1~5の数である。]

【0033】
疎水性コア単量体の好ましい具体例としては、ステアリル(メタ)アクリレート、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、CH=CHC(=O)OCNHSO1837、t-ブチルスチレン、2,4-ジt-ブチルスチレン等が挙げられる。
【0034】
・架橋性コア単量体
コア重合体は、少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合を有する架橋性コア単量体から誘導された繰り返し単位を有してよい。即ちコア重合体は架橋されていてよい。
【0035】
架橋性コア単量体は、少なくとも2つ(特に、2つ、3つ又は4つ)のエチレン性不飽和二重結合を有する。架橋性単量体(3)は非フッ素単量体であってよい。
【0036】
架橋性コア単量体は、式:

又は
[式中、R51及びR61は、それぞれ独立的に直接結合、あるいは炭素数1~20の炭化水素基、-(CHCHO)-(rは1~10の整数)、-C-、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~6価の基であり、
52及びR62は、水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
51は、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)であり、
pは、2~6であり、
qは1~5である。]
で示される単量体であることが好ましい。
【0037】
51及びR61の例は、直接結合、2~6価(例えば、2~4価、又は2~3価)の炭化水素基、エチレングリコール基、プロピレングリコール基、グリセロール基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、イソボロニル基、ナフタレン基、ボルニル基、トリシクロデカニル基、フェニル基を含む基である。
【0038】
52及びR62は、それぞれ独立的に、水素原子、メチル基、ハロゲン原子、置換又は非置換のベンジル基、置換又は非置換のフェニル基であってよい。あるいは、-CF基であってよい。R52及びR62の例は、水素原子、メチル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子、-CF基、シアノ基である。R52及びR62は、水素原子、メチル基、塩素原子であることが好ましい。R52はメチル基であることがより好ましい。R52がメチル基であることにより、より高い撥水性が得られる。R62は、特に反応性の観点から、水素原子であることが好ましいが、撥水性の観点ではメチル基が好ましく、その反応性と撥水性を両立するようにR62を選択することが好ましい。
【0039】
架橋性コア単量体の具体例は、ジビニルベンゼン、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチエレングルコールジ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、メチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシ-1,3-アダマンタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである。
【0040】
(シェル重合体)
シェル重合体はコアシェル構造のシェル部分を形成する。シェル重合体は非フッ素重合体又は含フッ素重合体によって形成されていてよい。シェル重合体は、ランダム重合体であってよい。
【0041】
シェル重合体のTg又は融点はコア重合体のTg又は融点よりも低くてよい。例えば、シェル重合体のTgはコア重合体のTgよりも低く、若しくは、シェル重合体の融点はコア重合体の融点よりも低い。シェル重合体のTg及び融点の高い方はコア重合体のTg及び融点の高い方よりも低くてよい。
【0042】
シェル重合体のTg又は融点は、コア重合体が少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合を有する架橋性コア単量体から誘導された繰り返し単位を含む場合、コア重合体の10%熱分解温度未満、5%熱分解温度未満、又は、1%熱分解温度未満よりも低くてよい。コア重合体の10%熱分解温度をT10としたとき、シェル重合体のTg又は融点はT10未満であってよく、好ましくはT10-10℃、より好ましくはT10-20℃、さらに好ましくはT10-50℃以下である。この差が大きいほど、有機微粒子の加工範囲(用途)を広げることが可能になる。ここで、10%熱分解温度はTGA(熱重量分析)によって空気中、昇温速度10℃/分の条件で得られる値である。
【0043】
シェル重合体のTgとコア重合体のTgとの差は、5℃以上、10℃以上、15℃以上、20℃以上、25℃以上、30℃以上、35℃以上、又は40℃以上であってよく、好ましくは20℃以上である。シェル重合体のTgとコア重合体のTgとの差は、100℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以上、60℃以下、又は50℃以下であってよく、好ましくは90℃以下である。
【0044】
シェル重合体のTg又は融点は-120℃以上、-100℃以上、-80℃以上、-60℃以上、-50℃以上、-45℃以上、又は-40℃以上であってよく、好ましくは-100℃以上である。シェル重合体のTg又は融点は15℃未満、12℃以下、10℃以下、7.5℃以下、5℃以下、2.5℃以下、0℃以下、-2.5℃以下、又は-5℃以下、-7.5°以下であってよく、好ましくは-10℃以下である。シェル重合体のTg又は融点が上記範囲にあることが、造膜性の観点等から好ましい。
【0045】
シェル重合体の水接触角は100°未満、99°以下、98°以下、又は95°以下あってよい。シェル重合体の水接触角が上記範囲にあることが有機微粒子の撥水性及び分散液中の分散性(特に水分散性)の観点等から好ましい。
【0046】
シェル重合体の水接触角はコア重合体の水接触角よりも低いことが好ましい。シェル重合体の水接触角とコア重合体の水接触角との差は、1°以上、2°以上、3°以上、又は4°以上であってよく、好ましくは2°以上である。
【0047】
・非水溶性シェル単量体
シェル重合体は単官能単量体から誘導された繰り返し単位を有する。シェル重合体を構成する全ての単官能単量体が非水溶性シェル単量体であってよい。シェル重合体を構成する単官能単量体は、そのホモポリマーの水接触角が100°未満である非水溶性シェル単量体であってよい。非水溶性シェル単量体のホモポリマーの水接触角は10°以上、30°以上、50°以上、70°以上、80°以上、又は90°であってよい。非水溶性シェル単量体のホモポリマーの水接触角は100°未満であり、99°以下、98°以下、90°以下、80°以下、70°以下、60°以下、50°以下、又は40°以下であってよく、好ましくは99°又は90°以下である。非水溶性シェル単量体のホモポリマーの水接触角が上記範囲にあることが有機微粒子の撥水性及び分散液中の分散性(特に水分散性)の観点等から好ましい。
【0048】
非水溶性シェル単量体は、25℃水溶解度が10g/l以下、5g/l以下、3g/l以下、1g/l以下、0.5g/l以下、又は0.1g/l以下であってよく、好ましくは3g/l以下である。
【0049】
非水溶性シェル単量体のホモポリマーの25℃水溶解度が10g/l以下、5g/l以下、3g/l以下、1g/l以下、0.5g/l以下、又は0.1g/l以下であってよく、好ましくは3g/l以下である。
【0050】
水溶性シェル単量体(例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸単量体;ポリ(エチレングリコール)メタクリラートのようなポリエチレングリコール鎖含有単量体;2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、カルボキシメチルベタインモノマー等の両親媒性単量体;第4級アンモニウム塩含有アクリレート等)を用いた場合、シェル重合体の親水性が向上する結果、有機微粒子の撥水性が非常に低下するため良くない。
【0051】
非水溶性シェル単量体は少なくとも1つの炭素数3~10の炭化水素基を有していてよい。当該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。当該炭化水素基は直鎖状又は分岐鎖状であってよい。当該炭化水素基の炭素数は3以上、4以上、5以上、6以上、又は7以上であってよい。当該炭化水素基の炭素数は10以下、又は9以下であってよい。
【0052】
疎水性コア単量体は少なくとも1つの炭素数1のフルオロアルキル基を有していてよい。フルオロアルキル基はパーフルオロアルキル基であることが好ましい。フルオロアルキル基の例は、-CF、-CF2H、-CFHである。
【0053】
非水溶性シェル単量体は脂肪族化合物を含むことが好ましい。非水溶性シェル単量体は脂肪族化合物のみからなってよく、例えば、コア重合体が非架橋の場合、非水溶性シェル単量体は脂肪族化合物のみからなってよい。
【0054】
非水溶性シェル単量体は式:
CH=C(-R32)-C(=O)-Y31-(R31)
又は
CH=C(-R42)-Y41-(H)5-n-(R41)
[式中、R31は炭素数1~10の脂肪族炭化水素基又は-(CHi33(ここでR33は炭素数1のフルオロアルキル基であり、iは1から6、例えば1~4、又は2~3であり、)であり、
41は炭素数1又は2の炭化水素基であり、
32及びR42は、それぞれ独立的に水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
31は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
41はベンゼン環からn+1個の水素原子を取り除いた基であり、
Hは水素原子であり、
H及びR41はY41にそれぞれ直接結合しており、
mは1~3であり、nは0~3である。]
で示される単量体であってよい。
【0055】
31及びR41は、分岐状又は長鎖(もしくは長鎖の直鎖状)の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特にアルキル基であることが好ましい。R31の炭素数は、1以上、3以上、4以上、5以上、6以上、又は7以上であってよく、10以下、又は9以下であってよい。
【0056】
33は炭素数1のフルオロアルキル基であってよい。フルオロアルキル基はパーフルオロアルキル基であることが好ましい。フルオロアルキル基の例は、-CF、-CF2H、-CFHである。
【0057】
mは1、2又は3である。Y31が4価の炭素数1の炭化水素基を有する場合などにおいて、m=3である。Y31が3価の炭素数1の炭化水素基を有する場合などにおいて、m=2である。Y31が3価及び4価の炭素数1の炭化水素基を有しない場合(例えば、Y31が2価の炭素数1の炭化水素基(-CH-)を(例えば1~6個)有する場合)に、m=1である。
【0058】
32及びR42は、水素原子、メチル基、ハロゲン原子、置換又は非置換のベンジル基、置換又は非置換のフェニル基であってよい。あるいは、-CF基であってよい。R32及びR42の例は、水素原子、メチル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子、-CF基、シアノ基である。R32及びR24は、水素原子、メチル基、塩素原子であることが好ましい。R12はメチル基であることがより好ましい。
【0059】
31は、2価の基であることが好ましい。2~4価の炭素数1の炭化水素基の例は、-CH-、枝分かれ構造を有する-CH=及び枝分かれ構造を有する-C≡である。
【0060】
31は、-Y’-、-Y’-Y’-、-Y’-C(=O)-、-C(=O)-Y’-、-Y’-C(=O)-Y’-、-Y’-X’-、-Y’-X’-Y’-、-Y’-X’-Y’-C(=O)-、-Y’-X’-C(=O)-Y’-、-Y’-X’-Y’-C(=O)-Y’-、又は-Y’-X’-Y’-X’-
[式中、Y’はそれぞれ独立して、直接結合、-O-、-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)又は-S(=O)-であり、
X’は-(CH-(mは1~5の整数である)、炭素数1~5の不飽和結合を有する直鎖状の炭化水素基、炭素数1~5の枝分かれ構造を有する炭化水素基、又は-(CH-C-(CH-(lはそれぞれ独立して0~5の整数であり、-C-はフェニレン基である)である。]
であってよい。Y31は2価の炭化水素基のみでないことが好ましい。R31が-(CH33であるとき、Y31は直接結合であってよい。
【0061】
31の具体例は、-O-、-NH-、-O-C(=O)-、-NH-C(=O)-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-O-C-、-NH-C-、-O-(CHm-O-、-NH-(CHm-NH-、-O-(CHm-NH-、-NH-(CHm-O-、-O-(CHm-O-C(=O)-、-O-(CHm-C(=O)-O-、-NH-(CHm-O-C(=O)-、-NH-(CHm-C(=O)-O-、-O-(CHm-O-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-O-、-O-(CHm-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-、-O-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-O-(CHm-O-C-、-O-(CHm-NH-S(=O)-、-O-(CHm-S(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-S(=O)-、-NH-(CHm-S(=O)-NH--NH-(CHm-O-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-O-、-NH-(CHm-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-O-C-、又は-NH-(CHm-NH-C-である[式中、mは1~5の整数、特に2又は4である。]。
【0062】
31は、-O-、-NH-、-O-(CHm-O-C(=O)-、-O-(CHm-NH-C(=O)-、-O-(CHm-O-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-O-、-O-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-S(=O)-又は-O-(CHm-S(=O)-NH-、-NH-(CHm-O-C(=O)-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-、-NH-(CHm-O-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-O-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-NH-
[式中、mは1~5の整数、特に2又は4である。]
であることが好ましい。Y31は、-O-、-O-(CHm-O-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-O-、又は-O-(CHm-NH-C(=O)-、-O-(CHm-NH-S(=O)-又は-O-(CHm-S(=O)-NH-、特に-O-(CHm-NH-C(=O)-であることがより好ましい。
【0063】
41はベンゼン環からn+1個の水素原子を取り除いた基である。Y41を有する単量体は、スチリル基を有する。Y41を有する単量体において、0~3個のR41基が存在していてよい。
【0064】
非水溶性シェル単量体の具体例は、次のとおりである。下記の化学式の化合物は、α位が水素原子であるアクリル化合物であるが、α位がメチル基であるメタクリル化合物及びα位が塩素原子であるαクロロアクリル化合物であってよい。またスチレン誘導体においても、下記の化学式の化合物はα位が水素原子であるが、具体例は、α位がメチル基であるαメチルスチレン化合物及びα位が塩素原子であるαクロロスチレン化合物であってよく、α位が水素原子であるスチレン化合物が好ましい。
CH=CHC(=O)OC2mNHC(=O)C2n+1
CH=CHC(=O)OCOC(=O)NHC2n+1
CH=CHC(=O)OCNHC(=O)OC2n+1
CH=CHC(=O)OCNHC(=O)NHC2n+1
CH=CHC(=O)OCOC(=O)NHC2n+1
CH=CHC(=O)NHC2mOC(=O)NHC2n+1
CH=CHC(=O)OC2mNHSO2n+1
CH=CHC(=O)OC2mSONHC2n+1
CH=CHC(=O)OC2mCF
CH=CHC(=O)OCHCF
[上記式中、nは3~10の数であり、mは1~5の数である。]
【0065】
非水溶性単量体の好ましい具体例としては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
・架橋性シェル単量体
シェル重合体は、少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合を有する架橋性シェル単量体から誘導された繰り返し単位を有してよいが、有しないことが好ましい。即ちシェル重合体は非架橋であってよい。
【0067】
架橋性シェル単量体は、上記で架橋性コア単量体について説明したものと同様であってよい。
【0068】
疎水性コア単量体、架橋性コア単量体、非水溶性シェル単量体、及び架橋性シェル単量体のそれぞれは、一種単独であってよく、あるいは二種以上の混合物であってもよい。
【0069】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0070】
(有機微粒子の組成)
有機微粒子において、コア重合体の重量比率は5wt%以上、15wt%以上、30wt%以上、50wt%以上、75wt%以上、又は90wt%以上であってよく、好ましくは30wt%以上である。有機微粒子において、コア重合体の重量比率は95wt%以下、75wt%以下、60wt%以下、50wt%以下、30wt%以下、又は25wt%以下であってよい。有機微粒子において、シェル重合体の重量比率は5wt%以上、15wt%以上、30wt%以上、50wt%以上、75wt%以上、又は90wt%以上であってよく、好ましくは30wt%以上である。有機微粒子において、シェル重合体の重量比率は95wt%以下、75wt%以下、60wt%以下、50wt%以下、30wt%以下、又は25wt%以下であってよい。
【0071】
コア重合体において、疎水性コア単量体から誘導された繰り返し単位は、繰り返し単位の合計100モル部に対して、70モル部以上、75モル部以上、80モル部以上、85モル部以上、90モル部以上、95モル部以上であってよい。コア重合体において、疎水性コア単量体から誘導された繰り返し単位から誘導された繰り返し単位は、繰り返し単位の合計100モル部に対して、100モル部以下、99モル部以下、97.5モル部以下、95モル部以下、又は92.5モル部以下であってよい。
【0072】
コア重合体において、架橋性コア単量体から誘導された繰り返し単位は、繰り返し単位の合計100モル部に対して、0.1モル部以上、0.3モル部以上、0.5モル部以上、0.75モル部以上、1.5モル部以上、3.0モル部以上であってよい。コア重合体において、架橋性コア単量体から誘導された繰り返し単位は、繰り返し単位の合計100モル部に対して、30モル部以下、20モル部以下、10モル部以下、5モル部以下、3モル部以下、1.5モル部以下、1.0モル部以下、0.5モル部以下であってよい。
【0073】
シェル重合体において、非水溶性シェル単量体から誘導された繰り返し単位は、繰り返し単位の合計100モル部に対して、70モル部以上、75モル部以上、80モル部以上、85モル部以上、90モル部以上、95モル部以上であってよい。シェル重合体において、非水溶性シェル単量体から誘導された繰り返し単位から誘導された繰り返し単位は、繰り返し単位の合計100モル部に対して、100モル部以下、99モル部以下、97.5モル部以下、95モル部以下、又は92.5モル部以下であってよい。
【0074】
シェル重合体において、架橋性シェル単量体から誘導された繰り返し単位は、繰り返し単位の合計100モル部に対して、0.5モル部以下、又は0.1モル部以下、であってよく、好ましくは0モル部(非架橋)である。
【0075】
有機微粒子の量は、組成物に対して0.1重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、又は10重量%以上であってよい。液状媒体の量は、組成物に対して75重量%以下、50重量%以下、30重量%以下、15重量%以下、又は10重量%以下であってよい。
【0076】
[液状媒体]
撥水剤組成物は、液状媒体を含有し、好ましくは水性媒体を含有する。液状媒体は水の単独、有機溶媒の単独、又は水と有機溶媒の混合物であり、好ましくは水の単独又は水と有機溶媒の混合物である。
【0077】
液状媒体が水と有機溶媒の混合物の場合、有機溶媒の量は、液状媒体に対して、30重量%以上、50重量%以上、75重量%以上、又は90重量%以上であってよい。有機溶媒の量は、液状媒体に対して、90重量%以下、50重量%以下、30重量%以下、又は10重量%以下であってよい。
【0078】
液状媒体の量は、組成物に対して30重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、75重量%以上、又は90重量%以上であってよい。液状媒体の量は、組成物に対して95重量%以下、75重量%以下、又は50重量%以下であってよい。
【0079】
[バインダー樹脂]
撥水剤組成物はバインダー樹脂を含んでいてよい。バインダー樹脂は有機微粒子を基材に結合させるバインダーとして働く。バインダー樹脂としては撥水性樹脂が好ましい。撥水性樹脂は、撥水性を発揮する有効成分としても働く。バインダー樹脂の例は、アクリル重合体、ウレタン重合体、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、シリコーン重合体である。バインダー樹脂の量は、有機微粒子100重量部に対して、0.1~20重量部、例えば0.1~10重量部であってよい。
【0080】
[分散剤]
撥水剤組成物は、有機微粒子の分散性を高めるために分散剤を含んでいてよい。分散剤は高分子分散剤であってよく、好ましくは親水性高分子系分散剤である。分散剤としては、ポリビニルピロリドンやポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリアクリル酸塩等を用いることができる。分散剤の量は、有機微粒子100重量部に対して、0.1~20重量部、例えば0.1~10重量部であってよい。撥水処理の前に、撥水剤組成物から分散剤を除去してもよい。
【0081】
[界面活性剤]
撥水剤組成物は、界面活性剤(乳化剤)を含有しなくてもよいし、あるいは含有していてもよい。一般に、重合中の粒子の安定化、重合後の水分散体の安定化のために、重合時に界面活性剤を少量(例えば、単量体100重量部に対して0.01~15重量部)で添加してよく、又は、重合後に界面活性剤を添加してよい。
【0082】
被処理物が繊維製品である場合において特に、撥水剤組成物において、界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。さらに、界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤から選択された一種以上の界面活性剤を含むことが好ましい。ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤の組み合わせを用いることが好ましい。
【0083】
ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のそれぞれが一種又は二以上の組み合わせであってよい。
界面活性剤の量は、有機微粒子100重量部に対して15重量部以下、10重量部以下、7.5重量部以下、5重量部以下、2.5重量部以下であってよい。一般に界面活性剤を添加すると、水分散体の安定性や布への浸透性は向上するが、撥水性能は低下する。これらの効果を両立するように界面活性剤の種類や量を選定することが好ましい。本開示の有機微粒子は、良好な撥水性及び分散性(特に水分散性)を示すため、界面活性剤の量を減ずることが可能である。
【0084】
[その他添加剤]
撥水剤組成物は、その他添加剤を含有してもよい。その他添加剤の例は、バインダー樹脂、撥水剤,撥油剤,乾燥速度調整剤,架橋剤,造膜助剤,相溶化剤,凍結防止剤,粘度調整剤,紫外線吸収剤,酸化防止剤,pH調整剤,消泡剤,風合い調整剤,すべり性調整剤,帯電防止剤,親水化剤,抗菌剤,防腐剤,防虫剤,芳香剤,難燃剤等などである。その他添加剤の量は、有機微粒子100重量部に対して、0.1~20重量部、例えば0.1~10重量部であってよい。
【0085】
<有機微粒子及び撥水剤組成物の製造方法>
有機微粒子を形成するコアシェル重合体を作製するための重合方法として、公知の方法を用いることができ、好ましくは、シード重合法が用いられる。シード重合法とは第一の単量体から重合されたコア重合体粒子をシード粒子として使用し、このシード粒子表面近傍で第二の単量体を重合させることで、コアシェル重合体粒子を得るという方法である。
【0086】
水分散体の形態の撥水剤組成物が得られれば、重合体(コア重合体、コアシェル重合体)の製造方法は限定されない。例えば、界面活性剤の存在下又は不存在下で、有機微粒子用の単量体を水性媒体中で重合することによって、重合体(有機微粒子)を製造してよい。あるいは、溶液重合により重合体を製造した後に、界面活性剤及び水の添加及び溶剤の除去を行って、水分散体を得ることができる。
【0087】
撥水剤組成物が有機微粒子及びバインダー樹脂を含む場合には、有機微粒子の水分散体の製造とバインダー樹脂の水分散体の製造とを別個に行い、有機微粒子の水分散体とバインダー樹脂の水分散体とを混合することによって、有機微粒子及びバインダー樹脂を含む撥水剤組成物を製造することができる。あるいは、有機微粒子の水分散体の中において、バインダー樹脂用の単量体を重合することによって、有機微粒子及びバインダー樹脂を含む撥水剤組成物を製造することができる。また、バインダー樹脂の水分散体の中において、有機微粒子用の単量体を重合することによって、有機微粒子及びバインダー樹脂を含む撥水剤組成物を製造することができる。
【0088】
界面活性剤を用いない乳化重合においては、水性媒体中において単量体を低濃度(例えば、単量体濃度1~30重量%、特に1~15重量%)で重合させることが好ましい。
【0089】
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶媒に溶解させ、窒素置換後、30~120℃の範囲で1~10時間、加熱撹拌する方法が採用される。重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。重合開始剤は単量体100モル部に対して、0.01~20モル部、例えば0.01~10モル部の範囲で用いられる。
【0090】
有機溶媒は、単量体に不活性でこれらを溶解又は均一に分散するものであり、例えば、エステル(例えば、炭素数2~30のエステル、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、炭素数2~30のケトン、具体的には、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン)、アルコール(例えば、炭素数1~30のアルコール、具体的には、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール)であってよい。有機溶媒の具体例としては、アセトン、クロロホルム、HCHC225、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。有機溶媒は単量体と有機溶媒の合計を100重量部とすると、そのうち50~99.5重量部、例えば70~99重量部の範囲で用いられる。
【0091】
乳化重合では、重合開始剤及び界面活性剤の存在下で、単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、30~80℃の範囲で1~10時間、撹拌して重合させる方法が採用される。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t-ブチルパーベンゾエート、1-ヒドロキシシクロヘキシルヒドロ過酸化物、3-カルボキシプロピオニル過酸化物、過酸化アセチル、アゾビスイソブチルアミジン-二塩酸塩、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ニ塩酸塩、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、過酸化ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性のものやアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどの油溶性のものが用いられる。重合開始剤は単量体100モル部に対して、0.01~10モル部の範囲で用いられる。必要に応じて、ロンガリット、アスコルビン酸、酒石酸、二亜硫酸ナトリウム、イソアスコルビン酸、硫酸第一鉄などの還元剤を併用してもよい。
【0092】
界面活性剤としてはアニオン性、カチオン性あるいはノニオン性の各種界面活性剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5~20重量部の範囲で用いられる。アニオン性及び/又はノニオン性及び/又はカチオン性の界面活性剤を使用することが好ましい。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶媒を添加することも好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性及び共重合性を向上させることが可能である。
【0093】
水溶性有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノール、メタノールなどが挙げられ、水100重量部に対して、0.1~50重量部、例えば1~40重量部の範囲で用いてよい。
【0094】
重合においては、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤の使用量に応じて、重合体の分子量を変化させることができる。連鎖移動剤の例は、ラウリルメルカプタン、チオグリコール、チオグリセロールなどのメルカプタン基含有化合物(特に、(例えば炭素数1~30の)アルキルメルカプタン)、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの無機塩などである。連鎖移動剤の使用量は、単量体の総量100重量部に対して、0.01~10重量部、例えば0.1~5重量部の範囲で用いてよい。
【0095】
<撥水剤組成物の用途>
撥水剤組成物(及び有機微粒子の水分散体)は、外的処理剤(表面処理剤)又は内的処理剤として使用できる。撥水剤組成物(及び有機微粒子の水分散体)は、撥油剤、防汚剤、汚れ脱離剤、剥離剤又は離型剤として使用できる。
【0096】
基材が撥水剤組成物により処理されることで、撥水剤組成物中の有機微粒子が基材表面に配置された表面コーティング構造を形成する。表面コーティング構造は有機微粒子に由来する凹凸構造を有する。
【0097】
処理された繊維製品は、撥水性を発現させるために、乾燥され、好ましくは、例えば、シェル重合体のTg以上の温度、例えば100℃~200℃で加熱されることが好ましい。シェル重合体のTg以上の温度で処理することにより、シェル重合体が基材側へ移行する。一方で、疎水性のコアはTgが高いため形状を保つ。これにより、疎水性に優れた表面コーティング構造が形成され得る。
【0098】
表面コーティング構造は、撥水剤組成物を従来既知の方法により被処理物(基材)に適用することで形成することができる。通常、該撥水剤組成物を有機溶媒又は水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布などのような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる。また、必要ならば、適当な架橋剤(例えば、ブロックイソシアネート)と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。さらに、撥水剤組成物に、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤などを添加して併用することも可能である。基材と接触させる処理液における重合体の濃度は0.01~10重量%(特に、浸漬塗布の場合)、例えば0.05~10重量%であってよい。
【0099】
撥水剤組成物(及び有機微粒子の水分散体)で処理される被処理物としては、繊維製品、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、燃料電池の部品(例えば、ガス拡散電極及びガス拡散支持体)、ガラス、紙、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属及び酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、及びプラスターなどを挙げることができる。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。
【0100】
撥水剤組成物は外部離型剤としても使用できる。例えば、基材の表面を、他の表面(該基材における他の表面、あるいは他の基材における表面)から容易に剥離することができる。
【0101】
撥水剤組成物は、繊維製品を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって繊維状基材(例えば、繊維製品など)に適用することができる。繊維製品が布であるときには、布を溶液に浸してよく、あるいは、布に溶液を付着又は噴霧してよい。
【0102】
撥水剤組成物はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用又はドライクリーニング法などにおいて繊維製品に適用してよい。
【0103】
処理される繊維製品は、典型的には、布であり、これには、織物、編物及び不織布、衣料品形態の布及びカーペットが含まれるが、繊維又は糸又は中間繊維製品(例えば、スライバー又は粗糸など)であってもよい。繊維製品材料は、天然繊維(例えば、綿又は羊毛など)、化学繊維(例えば、ビスコースレーヨン又はレオセルなど)、又は、合成繊維(例えば、ポリエステル、ポリアミド又はアクリル繊維など)であってよく、あるいは、繊維の混合物(例えば、天然繊維及び合成繊維の混合物など)であってよい。
【0104】
あるいは、繊維状基材は皮革であってよい。有機微粒子を、皮革を疎水性及び疎油性にするために、皮革加工の様々な段階で、例えば、皮革の湿潤加工の期間中に、又は、皮革の仕上げの期間中に、水溶液又は水性乳化物から皮革に適用してよい。
あるいは、繊維状基材は紙であってもよい。有機微粒子を、予め形成した紙に適用してよく、又は、製紙の様々な段階で、例えば、紙の乾燥期間中に適用してもよい。
【0105】
「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である有機微粒子が被処理物の内部に浸透する及び/又は被処理物の表面に付着する。
【0106】
処理された基材(特に繊維製品)において、水の転落速度が、130mm/秒以上、例えば、150mm/秒以上又は200mm/秒以上であることが好ましい。
処理された基材は、着霜を防止する効果を発現する。
【0107】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例
【0108】
以下、実施例を挙げて本開示を詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。以下において、部又は%又は比は、特記しない限り、重量部又は重量%又は重量比を表す。
【0109】
<試験方法>
(Tg及び融点の測定方法)
重合体の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により算出した。DSC測定は窒素雰囲気下、-20℃に冷却した後、10℃/分で200℃まで昇温後、再度-20℃に冷却し、その後の10℃/分で200℃まで昇温過程に観測される融点を測定した。複数融解ピークが現れる重合体においては、長鎖アルキルの融解に由来する最も融解熱量の大きいピークを融点とした。ガラス転移点(ガラス転移温度)は、DSC曲線の二次転移前後のそれぞれのベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との交点の中間点が示す温度として求めた。
【0110】
(重合体の水接触角の測定方法)
重合体の水接触角は得られた重合体の固形分濃度1.0%のクロロホルム溶液をシリコンウエハ基板上にスピンコートし、静的接触角を測定した。静的接触角は、塗膜上に、2μLの水を滴下し、着滴1秒後の接触角を測定して得られた。
【0111】
(水溶解度の測定方法)
重合体の水溶解度については、同重量の水(25℃)と試料を、攪拌機を用いて回転数300rpm、30分の条件で混合し、次いで、水相を採取し100℃で1時間乾燥して、乾燥減量から水相中の重合体量を求めて算出した。単量体の水溶解度については、所定量の水(25℃)に、単量体を少量ずつ添加していき、溶けなくなった(浮遊や沈殿、析出、白濁が見られた)時点での溶解量から水溶解度を算出した。
【0112】
実施例にて用いるステアリルアクリレート(SA)及び2-エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)の物性は表1のとおりであった。
[表1]
【0113】
<実施例1:PSA/PEHMAコアシェル粒子>
[PSA粒子の作製]
表2の条件に従い,封管に所定量のSA(ホモポリマーのTgが30℃)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ポリビニルピロリドン(PVP)(K-30,分子量40,000)、エタノールを仕込み、窒素雰囲気下、60℃、80 cycles/min にて24h分散重合を行った。重合後に得られたポリステアリルアクリレート(PSA)粒子はメタノール媒体を用いて遠心分離を行うことにより余分なPVPを除去した。
[表2]
【0114】
得られたPSA粒子の光学顕微鏡写真及び走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示した。画像解析ソフト(Win roof 三谷商事(株)製)による解析の結果、数平均粒子径:1.27μm、変動係数(Cv値):6.4%の比較的単分散なPSA粒子が作製されたことを確認した(図1)。
【0115】
[PSA/PEHMAコアシェル粒子の作製]
ホモポリマーのTgがSAよりも低いEHMA(ホモポリマーのTgが-10℃)を用いて、シード分散重合を行い、コアシェル粒子を作製した。表3の条件に従い、封管に上記で得られた所定量のPSA粒子をシードとして、EHMA、AIBN、PVP(K-30)、メタノール、水を仕込み、窒素雰囲気下、60℃、振とう機により120 cycles/minにて24h重合した。重合後に得られたポリステアリルアクリレート/ポリ2-エチルヘキシルメタクリレート(PSA/PEHMA)粒子からメタノール媒体を用いて遠心分離を行うことにより余分なPVPを除去した。
[表3]
【0116】
図2にシード分散重合前後の粒子の光学顕微鏡写真を示す。図2(a)はシード分散重合前であるPSA粒子のエマルションの顕微鏡写真を示し、図2(b)はシード分散重合後のPSA/PEHMA粒子のエマルションの顕微鏡写真を示す。重合前後で、粒子径が増大していたことから重合の進行が示唆された。
【0117】
図3(a)は室温でキャストしたPSA粒子のSEM写真を示し、図3(b)は室温でキャストしたPSA/PEHMA粒子のSEM写真を示す。PSA/PEHMA粒子においては、コアであるPSAのTが30℃であり、シェルであるPEHMAのTが-10℃であることから、常温においては、シェルのPEHMAのみが融着した様子が観察され、コアシェル粒子の形成が示唆された。
【0118】
[PSA/PEHMA粒子エマルションフィルムの作製]
得られたPSA/PEHMA粒子のエマルション(エタノール媒体)をスライドガラス上に滴下し,室温(約20℃)下、24時間の条件で乾燥させコアシェル構造のPSA/PEHMA粒子エマルションフィルムを作製した。
【0119】
PSA/PEHMA粒子エマルションフィルム表面を光学顕微鏡写真で観察したところ、フィルム表面にひび割れは確認されず、均一性の高いフィルムであることがわかった。
【0120】
[PSA/PEHMA粒子エマルションフィルムの水接触角測定]
接触角計(共和界面化学株式会社製Dropmaster 6000X)を用いて得られたフィルムにおける水接触角を測定した。その結果、PSA/PEHMA粒子エマルションフィルムの水接触角は126.3°であって、高い撥水性を維持した。
【0121】
<比較例1:PSA粒子エマルションフィルム及びPSA平滑フィルムの作製>
[PSA粒子エマルションフィルム及び平滑フィルムの作製]
実施例1において得られたPSA粒子のエマルション(エタノール媒体)をスライドガラス上に滴下し、室温(約20℃)下、24時間の条件で乾燥させPSA粒子エマルションフィルムを作製した。
【0122】
また、比較のためのPSA平滑フィルムについては、同様に得られた粒子のエマルション(エタノール媒体)をアルミ基板上に滴下し、室温下、24時間の条件で乾燥させPSA粒子エマルションフィルムを作製した後、80℃、10MPa、10分間の条件でメルトプレスすることにより作製した。
【0123】
PSA平滑フィルム表面及びPSA粒子エマルションフィルム表面をSEMにより観察した。PSA平滑フィルム表面においては、PSAは粒子形状を保っておらず、平滑表面であることが示唆された。PSA粒子エマルションフィルム表面においては、ひび割れが多数観察され、フィルムの均一性が不十分であることが示唆された。PSA粒子エマルションフィルム表面においては、目視で観察できるひび割れが多数観察された。
【0124】
[PSA平滑フィルム及びPSA粒子エマルションフィルムの水接触角測定]
接触角計(共和界面化学株式会社製,Dropmaster 6000X)を用いて得られたフィルムにおける水接触角を測定した。その結果,PSA平滑フィルムにおける水接触角は102.1°であり、PSA粒子エマルションフィルムでは118.5°であった。
【0125】
[PSA粒子の水への再分散後の水接触角測定]
PSA粒子のエマルションはエタノール溶液であったため、遠心分離で粉体回収後、水への分散を試みたが、撥水性が高く、水への再分散はできなかった。そこで、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムをポリマーに対して5%添加し、水へ再分散させた結果、水分散エマルションが得られた。そのエマルションから製膜したフィルムの水接触角を測定した結果100°であり、界面活性剤による撥水性の低下が示唆された。
図1
図2
図3