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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】免疫賦活剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20231025BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20231025BHJP
   A23L 31/00 20160101ALI20231025BHJP
   A61K 36/074 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231025BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20231025BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L33/10
A23L31/00
A61K36/074
A61P37/04
A61P43/00 111
A61P43/00 107
C12Q1/686 Z ZNA
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019162063
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021038186
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 幸治
(72)【発明者】
【氏名】大形 悠一郎
(72)【発明者】
【氏名】深田 紘介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 千奈
(72)【発明者】
【氏名】高木 寛
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-187745(JP,A)
【文献】特開2008-138195(JP,A)
【文献】特開平05-051324(JP,A)
【文献】特開2014-172818(JP,A)
【文献】特開2016-202098(JP,A)
【文献】特開2015-137244(JP,A)
【文献】特開2007-261968(JP,A)
【文献】特開2003-104904(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102898539(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106946966(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L 33/
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度が140℃~180℃、かつ圧力が飽和蒸気圧以上の亜臨界状態にある水で処理した赤霊芝の亜臨界水処理物又はその抽出物及び黒霊芝の亜臨界水処理物又はその抽出物、を有効成分として含有する免疫賦活剤。
【請求項2】
NK細胞活性の増強作用を有することを特徴とする請求項1記載の免疫賦活剤。
【請求項3】
IgA抗体の産生促進作用を有することを特徴とする請求項1記載の免疫賦活剤。
【請求項4】
免疫細胞の増殖促進作用を有することを特徴とする請求項1記載の免疫賦活剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載の免疫賦活剤を含有する免疫賦活用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンネンタケの亜臨界水処理物又はその抽出物を含有することを特徴とする免疫賦活剤に関する。より詳しくは、免疫賦活作用がNK(ナチュラルキラー)細胞活性の増強作用、IgA(イムノグロブリンA)抗体の産生促進作用、免疫細胞の増殖促進作用であることを特徴とする免疫賦活剤及び免疫賦活用食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫力の低下は、癌の罹患や感染症の発症につながり、それらの疾病による死亡率の増大が医学的及び社会的な問題となっている。癌は日本における死亡原因の第一位であり、平成28年の死亡者数は37万人に達する。加齢と癌発症率との間には正の相関があるといわれており、その理由として、癌原物質の暴露期間の長期化、加齢に伴う遺伝子変化、癌細胞の排除に関わる宿主側の要因などが指摘されているが、最大の要因は宿主における免疫力低下である。また高齢者は、感染抵抗性も低下することから、老人病院など、高齢者の多い施設においては、癌や脳梗塞を患っていても、その末期には肺炎で亡くなる方も少なくない。こうした事実は、生体防御機構の中核をなす免疫力が、高齢者になると著明に低下することを示している(非特許文献1~3)。
【0003】
さらに、免疫力は癌の罹患や感染症のみならず、心臓病、糖尿病、腎臓病、慢性疲労症候群、認知機能障害など、多くの疾患とも密接に関わっている。他にも、厚生労働省の指定する「難治性疾患(いわゆる難病指定)」135疾患のうちの4分の1が免疫に関わっており、「特定疾患」56疾患についても、3分の1が免疫に関わっていると考えられている。すなわち、免疫力の低下は、実に様々な疾病の発症や病態に結び付く可能性があるため、免疫力の低下を抑制することは、癌の罹患や感染症を防ぐことに加え、幅広く疾病リスクの低減につながると考えられる。
【0004】
癌の罹患や感染症の発症を防ぐには、免疫賦活剤でもって免疫力の低下を抑制することが重要である。免疫賦活剤として、よく用いられるもののひとつとして、NK細胞活性増強剤がある。NK細胞は、自然免疫系における主要な免疫細胞の一種であり、癌細胞やウイルス感染細胞などに対する細胞傷害活性を有する。この作用は、NK細胞活性と呼ばれる。NK細胞活性は、NK細胞における活性化受容体であるNKp46を介して癌細胞やウイルス感染細胞などの標的細胞を認識・結合し、パーフォリンの重合によって形成されたチャネルを通してグランザイムと呼ばれるプロテアーゼを標的細胞に送り込み、標的細胞にアポトーシスを誘導するというメカニズムにより発揮される。
【0005】
またNK細胞活性は、NK細胞自身によって産生されるIFNγ(インターフェロンγ)や、T細胞によって産生されるIL-2(インターロイキン-2)によりさらに増強される。つまり、IFNγ、IL-2、グランザイム、NKp46、IFNγ受容体、IL-2受容体は、NK細胞活性の発揮に重要であるため、これらを介したNK細胞活性の増強は、癌の罹患や感染症の発症予防に極めて効果的である。
【0006】
また、免疫賦活剤として、IgA抗体の産生促進剤も汎用される。IgA抗体は、粘膜に分泌されるタンパク質であり、感染症予防の中心的因子である。上気道粘膜は、外気や食物と直に接することから、細菌、ウイルスなどの侵入に絶えず曝されている組織である。ヒト、ウシ、マウスなどの哺乳動物は、自己防衛のため粘膜免疫系を発達させ、粘膜面の防御に適したIgA抗体により、感染症から体を守っている(非特許文献4)。すなわち、免疫力の低下を抑制するには、IgA抗体の産生促進も大変重要である。
【0007】
さらに、免疫力の低下を抑制するには、免疫細胞自体を増殖させ、細胞数を増やすことも重要な対策法である。生物個体の免疫力は、様々な種類の免疫細胞が関わって構築されており、癌の罹患や感染症の発症を防いでいる。しかしながら、加齢に伴い免疫細胞の数と機能の両方が低下することが知られており、生物個体の免疫力を長期間にわたって維持することは容易ではない(非特許文献5)。
【0008】
免疫細胞の供給源である造血幹細胞は、骨髄においてわずかに存在し、すべての免疫細胞に分化する多分化能と自己複製能を有する。しかし、造血幹細胞は加齢とともに増殖能、分化能の両方が低下すると報告されており(非特許文献6)、加齢による免疫細胞数の減少の要因となっている。従って、免疫細胞の増殖を促進することは、特に高齢者における免疫力低下の抑制につながることから、生涯にわたる免疫力維持において大変効果的と考えられる。
【0009】
このような状況に対処すべく、さまざまな種類の免疫賦活剤が提案されている。例えば、免疫賦活活性を有するオリゴヌクレオチド含有複合体(特許文献1)、免疫賦活活性を有するエズリン由来ペプチド(特許文献2)、コンドロイチン硫酸オリゴ糖を含む免疫賦活剤(特許文献3)、カテキン代謝物又はその誘導体を有効成分とする免疫細胞増殖促進剤(特許文献4)、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)様作用を有する医薬組成物(特許文献5)などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2019-123751号公報
【文献】特開2017-25055号公報
【文献】特開2016-164179号公報
【文献】特開2016-3200号公報
【文献】特開2003-267930号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】磯部健一、日本老年医学会雑誌 2011;48(3):205-210
【文献】廣川勝いく、日本老年医学会雑誌 2003;40(6):543-552
【文献】新井冨生、日本老年医学会雑誌 2010;47(5):409-411
【文献】清野 宏、日本耳鼻咽喉科学会会報 2011;114:843-850
【文献】廣川勝いく、化学と生物 1998;36(5):297-305
【文献】J. Exp. Med.2000 Nov.6;192(9):1273-1280
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、マンネンタケの亜臨界水処理物又はその抽出物を含有することを特徴とする免疫賦活剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、マンネンタケの亜臨界水処理物又はその抽出物に、優れた免疫賦活作用があることを見出した。より詳しくは、マンネンタケの亜臨界水処理物又はその抽出物に、優れたNK細胞活性の増強作用、IgA抗体の産生促進作用、免疫細胞の増殖促進作用を見出した。さらに、赤霊芝の亜臨界水処理物又はその抽出物と、黒霊芝の亜臨界水処理物又はその抽出物を組み合わせると顕著な免疫賦活作用を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下を包含する。
(1)温度が100℃~374℃、かつ圧力が飽和蒸気圧以上の亜臨界状態にある水で処理したマンネンタケの亜臨界水処理物又はその抽出物を有効成分として含有する免疫賦活剤。
(2)NK細胞活性の増強作用を有することを特徴とする(1)記載の免疫賦活剤。
(3)IgA抗体の産生促進作用を有することを特徴とする(1)記載の免疫賦活剤。
(4)免疫細胞の増殖促進作用を有することを特徴とする(1)記載の免疫賦活剤。
(5)マンネンタケの亜臨界水処理物又はその抽出物が、赤霊芝の亜臨界水処理物又はその抽出物及び/又は黒霊芝の亜臨界水処理物又はその抽出物であることを特徴とする(1)~(4)のいずれか記載の免疫賦活剤。
(6)(1)~(5)のいずれか記載の免疫賦活剤を含有する免疫賦活用食品組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、NK細胞活性の増強、IgA抗体の産生促進、免疫細胞の増殖促進を効果的に達成することができるため、極めて優れた作用を発揮する新たな免疫賦活剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係る免疫賦活剤は、マンネンタケの亜臨界水処理物又はその抽出物を有効成分として含有する。
【0017】
マンネンタケは、マンネンタケ科(Ganodermataceae)マンネンタケ属(Ganoderma)に属する担子菌で、生薬「霊芝」に用いられる。霊芝は、中国の薬学古書である「本草綱目」や「神農本草経」によると、赤霊芝(赤芝)、黒霊芝(黒芝)、紫霊芝(紫芝)、青霊芝(青芝)、黄霊芝(黄芝)及び白霊芝(白芝)が存在すると記載されている。また、赤霊芝の一種として、鹿角霊芝も知られている。本発明に用いられるマンネンタケは、上記マンネンタケ科マンネンタケ属の霊芝であれば特に限定はされず、1種でも2種以上を組み合わせても良いが、中でも赤霊芝(Ganoderma lucidum)、黒霊芝(Ganoderma sinense、Ganoderma atrum)が好ましい。さらに、赤霊芝と黒霊芝の組み合わせが特に好ましい。これらは広く中国や日本市場等で流通しているものを用いることができるし、自生品や栽培品を用いても良い。
【0018】
本発明に用いられるマンネンタケは、子実体、菌糸体、胞子のいずれの部位を用いてもよいが、子実体が好ましい。また、それらの培養物であってもよい。さらに、子実体、菌糸体、胞子は乾燥や粉砕したものを用いることができ、あるいは、生のまま用いることもできる。
【0019】
本発明に用いられる亜臨界水処理とは、所定温度及び圧力の条件下で亜臨界状態にした水と処理対象(本発明ではマンネンタケ)とを接触させることをいう。例えば、水は、圧力22.12MPa、温度374.15℃まで上げると液体でも気体でもない状態を示す。この点を水の臨界点といい、臨界点より低い温度及び圧力の熱水を亜臨界水という。この亜臨界水は、誘電率低下とイオン積の向上により、優れた成分抽出作用と加水分解作用を有する。なお、亜臨界水処理に供給する水は、液体状態でも気体状態でも利用することができる。即ち、亜臨界水処理の処理槽へは、水蒸気を供給してもよく、水を供給してもよく、あるいはその両者を供給してもよい。亜臨界水処理時の反応場は、気体状態よりも液体状態の方が反応は進みやすいので、密閉容器で強制的に液体の状態にした水を使用することが好ましい。より具体的には、金属やセラミックス等の耐圧容器に処理対象であるマンネンタケと処理剤である水を入れて、密閉状態にし、水の亜臨界状態(温度:100℃以上、圧力:飽和蒸気圧以上)で、両者の接触を一定時間以上行った処理物を亜臨界水処理物とすることができる。
【0020】
本発明におけるマンネンタケの亜臨界水処理物とは、マンネンタケを上述の亜臨界水処理に供することによって得られる処理物をいう。また、マンネンタケの亜臨界水処理物には、亜臨界水処理後のマンネンタケと水溶物(水溶液等)との混合物もしくはその乾燥物、また、前記の混合物を濾過した濾液もしくはその乾燥物を含む。
【0021】
マンネンタケの亜臨界水処理温度は、マンネンタケの亜臨界水処理物又はその抽出物中に含まれる有効成分が効率的に得られやすくなるという理由から100~300℃の間が好ましく、130~200℃の間がより好ましく、140~180℃の間がさらに好ましく、160~180℃の間が最も好ましい。100℃未満の場合は、有効成分の量が少なくなる傾向にある。また、亜臨界水処理の温度が300℃を超える場合は、有効成分の過分解を引き起こしやすくなる。
【0022】
マンネンタケの亜臨界水処理圧力は、各温度での飽和蒸気圧以上であれば良く、例えば、圧力0.1~3.0MPaの間が好ましく、0.2~1.5MPaの間がより好ましく、0.37~1.01MPaの間がさらに好ましく、0.63~1.01MPaの間が最も好ましい。圧力0.1MPa未満の場合は、有効成分の量が少なくなる傾向にある。また、亜臨界水処理の圧力が、飽和蒸気圧を大きく上回るような過度の加圧には、別途加圧装置の追加及び設備の耐圧向上が必要となり、抽出の経済性が悪化する。
【0023】
マンネンタケの亜臨界水処理時間は、5~90分の間で行うことが好ましく、10~30分の間で行うことがより好ましい。5分未満の場合は、有効成分の量が少なくなる傾向にある。また、亜臨界水処理の時間が90分を超える場合は、有効成分の過分解を引き起こしやすくなる。
【0024】
すなわち、マンネンタケの亜臨界水処理条件としては、温度は100~300℃、圧力は0.1~3.0MPa、時間は5~90分で行うことが好ましい。
【0025】
本発明に用いられるマンネンタケの亜臨界水処理物の抽出物とは、前記の亜臨界水処理物に溶媒を加えて抽出した抽出液又はその乾燥物をいう。
【0026】
マンネンタケの亜臨界水処理物の抽出物を得るための抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出方法であっても良いし、常温や冷温抽出方法であっても良い。抽出に使用する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)等が挙げられる。これらの溶媒のなかでも、水、エタノールが好ましく、水、含水エタノールがより好ましく、水(熱水:温度95~100℃)が最も好ましい。これらの溶媒は1種でも2種以上を混合して用いてもよい。また、上記抽出溶媒に酸やアルカリを添加して、pH調整した溶媒を使用することもできる。また、抽出方法としては、連続抽出、浸漬抽出、超臨界抽出、亜臨界抽出等が挙げられる。ここで、亜臨界抽出としては、亜臨界水抽出が好ましく、亜臨界水抽出は上記の亜臨界水処理と同一の条件で行ってもよく、別条件で行ってもよい。
【0027】
抽出における、マンネンタケの亜臨界水処理物と溶媒との割合は、固形分に換算して、例えば1~50重量%、好ましくは5~25重量%が挙げられる。例えば、マンネンタケの亜臨界水処理物の乾燥物に水を加え、95~100℃における熱水抽出を行うことで、マンネンタケの亜臨界水処理物の抽出物を得ることができる。あるいは、マンネンタケの亜臨界水処理物の乾燥物に低級アルコール(例えば、エタノール等)又は液状多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)を添加し、常温(例えば5~35℃)で抽出を行うことで、マンネンタケの亜臨界水処理物の抽出物を得ることができる。
【0028】
上記のマンネンタケの亜臨界水処理物又はその抽出物は、得られた溶液自体又は溶媒相自体をそのまま用いてもよいが、必要に応じて、その効果に影響のない範囲で、得られた溶液自体又は溶媒相を、濃縮(減圧濃縮、膜濃縮等による濃縮)、希釈、濾過、乾燥(濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等)等の処理、活性炭等による脱色、脱臭処理、エタノール沈殿等に供して、得られた生成物を用いてもよい。特に、前記乾燥処理による乾燥物の形態で使用することが好ましい。
【0029】
本発明に係る免疫賦活剤は、医薬品、医薬部外品、食品として用いることができる。医薬品や医薬部外品としては、経口用の散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤など、非経口用の注射剤、座剤などとして用いることができる。また、食品としては、飲料、硬カプセル、軟カプセル、タブレット、顆粒、ゼリーなどとして用いることができる。
【0030】
本発明に係る免疫賦活剤は、効果を損なわない範囲内で、必要に応じて通常の医薬品、医薬部外品、食品に用いられる賦形剤、安定剤、保存剤、結合剤、崩壊剤、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、pH調整剤、防腐剤、香料などの成分を含有することもできる。
【0031】
本発明に用いるマンネンタケの摂取量は、摂取形態、使用目的、年齢、体重などによって適宜調整することができる。成人1日当り、マンネンタケは、キノコ乾燥物に換算して1~20000mg、好ましくは50~10000mgの範囲で1日1回から数回経口摂取できる。上記摂取範囲より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて摂取する必要がある場合もある。また、製剤化における薬効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
製造例1 赤霊芝の亜臨界水処理物(処理条件1)及びその熱水抽出物
亜臨界水処理缶に、マンネンタケ原料として赤霊芝45gを入れ、処理条件1(処理温度:140℃、処理圧力:0.37MPa、処理時間:30分間)で亜臨界水処理を行った。亜臨界水処理の終了後、処理缶内の処理物を凍結乾燥させることで赤霊芝の亜臨界水処理物を43.8g得た。得られた赤霊芝の亜臨界水処理物10gに、精製水200mLを加え、95~100℃で2時間抽出した。濾過した後、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して赤霊芝の亜臨界水処理物の熱水抽出物を0.6g得た。
【0034】
製造例2 赤霊芝の亜臨界水処理物(処理条件2)及びその熱水抽出物
亜臨界水処理缶に、マンネンタケ原料として赤霊芝45gを入れ、処理条件2(処理温度:160℃、処理圧力:0.63MPa、処理時間:20分間)で亜臨界水処理を行った。亜臨界水処理の終了後、処理缶内の処理物を凍結乾燥させることで赤霊芝の亜臨界水処理物を45.4g得た。得られた赤霊芝の亜臨界水処理物10gに、精製水200mLを加え、95~100℃で2時間抽出した。濾過した後、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して赤霊芝の亜臨界水処理物の熱水抽出物を0.8g得た。
【0035】
製造例3 赤霊芝の亜臨界水処理物(処理条件3)及びその熱水抽出物
亜臨界水処理缶に、マンネンタケ原料として赤霊芝45gを入れ、処理条件3(処理温度:180℃、処理圧力:1.01MPa、処理時間:30分間)で亜臨界水処理を行った。亜臨界水処理の終了後、処理缶内の処理物を凍結乾燥させることで赤霊芝の亜臨界水処理物を39.8g得た。得られた赤霊芝の亜臨界水処理物10gに、精製水200mLを加え、95~100℃で2時間抽出した。濾過した後、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して赤霊芝の亜臨界水処理物の熱水抽出物を2.6g得た。
【0036】
製造例4 黒霊芝の亜臨界水処理物(処理条件1)及びその熱水抽出物
亜臨界水処理缶に、マンネンタケ原料として黒霊芝45gを入れ、処理条件1(処理温度:140℃、処理圧力:0.37MPa、処理時間:30分間)で亜臨界水処理を行った。亜臨界水処理の終了後、処理缶内の処理物を凍結乾燥させることで黒霊芝の亜臨界水処理物を41.7g得た。得られた黒霊芝の亜臨界水処理物10gに、精製水200mLを加え、95~100℃で2時間抽出した。濾過した後、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して黒霊芝の亜臨界水処理物の熱水抽出物を0.6g得た。
【0037】
製造例5 黒霊芝の亜臨界水処理物(処理条件2)及びその熱水抽出物
亜臨界水処理缶に、マンネンタケ原料として黒霊芝45gを入れ、処理条件2(処理温度:160℃、処理圧力:0.63MPa、処理時間:20分間)で亜臨界水処理を行った。亜臨界水処理の終了後、処理缶内の処理物を凍結乾燥させることで黒霊芝の亜臨界水処理物を40.3g得た。得られた黒霊芝の亜臨界水処理物10gに、精製水200mLを加え、95~100℃で2時間抽出した。濾過した後、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して黒霊芝の亜臨界水処理物の熱水抽出物を1.0g得た。
【0038】
製造例6 黒霊芝の亜臨界水処理物(処理条件3)及びその熱水抽出物
亜臨界水処理缶に、マンネンタケ原料として黒霊芝45gを入れ、処理条件3(処理温度:180℃、処理圧力:1.01MPa、処理時間:30分間)で亜臨界水処理を行った。亜臨界水処理の終了後、処理缶内の処理物を凍結乾燥させることで黒霊芝の亜臨界水処理物を34.2g得た。得られた黒霊芝の亜臨界水処理物10gに、精製水200mLを加え、95~100℃で2時間抽出した。濾過した後、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して黒霊芝の亜臨界水処理物の熱水抽出物を2.4g得た。
【0039】
製造例7 マンネンタケの亜臨界水処理物の熱水抽出物の混合物
製造例3の赤霊芝の亜臨界水処理物(処理条件3)の熱水抽出物2gと、製造例6の黒霊芝の亜臨界水処理物(処理条件3)の熱水抽出物2gを均一になるように混合し、マンネンタケの亜臨界水処理物の熱水抽出物の混合物を4g得た。
【0040】
製造例8 赤霊芝の熱水抽出物
赤霊芝100gに、精製水2Lを加え、95~100℃で2時間抽出した。濾過した後、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して赤霊芝の熱水抽出物を4.4g得た。
【0041】
製造例9 黒霊芝の熱水抽出物
黒霊芝100gに、精製水2Lを加え、95~100℃で2時間抽出した。濾過した後、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して黒霊芝の熱水抽出物を4.2g得た。
【0042】
製造例10 マンネンタケの熱水抽出物の混合物
製造例8の赤霊芝の熱水抽出物2gと、製造例9の黒霊芝の熱水抽出物2gを均一になるように混合し、マンネンタケの熱水抽出物の混合物を4g得た。
【0043】
製造例11 赤霊芝の亜臨界水処理物(処理条件3)の50%エタノール抽出物
製造例3の赤霊芝の亜臨界水処理物10gに、50%エタノール水溶液200mLを加え、一昼夜抽出した。濾過した後、その濾液を減圧濃縮し、凍結乾燥することにより、赤霊芝の亜臨界水処理物の50%エタノール抽出物を2.1g得た。
【0044】
製造例12 黒霊芝の亜臨界水処理物(処理条件3)の50%エタノール抽出物
製造例6の黒霊芝の亜臨界水処理物10gに、50%エタノール水溶液200mLを加え、一昼夜抽出した。濾過した後、その濾液を減圧濃縮し、凍結乾燥することにより、黒霊芝の亜臨界水処理物の50%エタノール抽出物を1.8g得た。
【実施例2】
【0045】
処方例1 飲料
<処方>
成分 含有量(%)
1.赤霊芝の亜臨界水処理物(処理条件2)の熱水抽出物(製造例2) 0.25
2.黒霊芝の亜臨界水処理物(処理条件2)の熱水抽出物(製造例5) 0.25
3.クエン酸 6.0
4.ショ糖 10.0
5.香料 1.0
6.水 82.5
<製造方法>
成分1~5を成分6の一部の水に撹拌溶解する。次いで、成分6の残りの水を加えて混合し、殺菌したものを飲料とする。
<用法>
1日当り50mL摂取する。
【0046】
処方例2 軟カプセル剤
<処方>
成分 含有量(%)
1.赤霊芝の亜臨界水処理物(処理条件3)の熱水抽出物(製造例3) 10.0
2.黒霊芝の亜臨界水処理物(処理条件3)の熱水抽出物(製造例6) 10.0
3.赤霊芝の熱水処理物(製造例8) 5.0
4.黒霊芝の熱水抽出物(製造例9) 5.0
5.米胚芽油 60.0
6.ミツロウ 7.0
7.ビタミンE 3.0
<製造方法>
成分1~7を混合し、ゼラチン、グリセリン、カラメル色素で構成される被膜に、250mg充填し、乾燥後、軟カプセル剤を得る。
<用法>
1日当り3粒摂取する。
【0047】
処方例3 硬カプセル剤
<処方>
成分 含有量(%)
1.赤霊芝の亜臨界水処理物(処理条件1)の熱水抽出物(製造例1) 40.0
2.コーンスターチ 52.0
3.ショ糖脂肪酸エステル 8.0
<製造方法>
成分1~3を混合し、2号硬カプセルに250mg充填してカプセル剤を得る。
<用法>
1日当り4粒摂取する。
【0048】
処方例4 顆粒剤
<処方>
成分 含有量(%)
1.黒霊芝の亜臨界水処理物(処理条件1)の熱水抽出物(製造例4) 8.0
2.乳糖 80.0
3.セルロース 12.0
<製造方法>
成分1~3を乾式法により造粒し、顆粒剤を得る。
<用法>
1日当り1g摂取する。
【0049】
処方例5 錠剤
<処方>
成分 含有量(%)
1.赤霊芝の亜臨界水処理物(処理条件3)の熱水抽出物(製造例3) 11.0
2.乳糖 60.0
3.還元麦芽糖水飴 25.0
4.ショ糖脂肪酸エステル 4.0
<製造方法>
成分1~4を混合して打錠成型し、0.5gの錠剤を得る。
<用法>
1日当り2粒摂取する。
【0050】
処方例6 ゼリー
<処方>
成分 含有量(%)
1.黒霊芝の亜臨界水処理物(処理条件3)の熱水抽出物(製造例6) 0.01
2.カラギーナン 2.0
3.ゼラチン 1.0
4.砂糖 28.5
5.精製水 68.49
<製造方法>
成分1~5を混合し、加熱しながら煮詰め、ゼリーの型に流し込み、冷却する。
<用法>
1日当り1個(100g)を摂取する。
【0051】
比較例1 マンネンタケの抽出物未配合の軟カプセル剤
処方例2のマンネンタケの抽出物(製造例3、製造例6、製造例8、製造例9)を、米胚芽油に置き換えた軟カプセル剤を比較例1とする。
【実施例3】
【0052】
実験例1 免疫賦活作用(マウス)
実施例1で製造した抽出物(製造例3、製造例6~10)の免疫賦活作用を検討した。
【0053】
製造例3の熱水抽出物、製造例6~10の熱水抽出物をそれぞれ2%添加した飼料を調製し、ICRマウスに摂取させた。コントロール群に対しては、コーンスターチを2%添加した飼料を摂取させた。飼育30日後、脾臓、胸腺、左右の後肢大腿骨を摘出し、免疫賦活作用について検討した。
【0054】
(脾臓細胞のNK細胞活性試験)
マウスより摘出した脾臓より細胞を回収し、塩化アンモニウム水溶液にて処理することによって赤血球を除去したものを脾臓細胞とし、脾臓細胞と標的癌細胞YAC-1を共培養した。20時間後、培養上清を回収し、脾臓細胞により細胞傷害を受けたYAC-1より放出された乳酸脱水素酵素活性を測定することにより、NK細胞活性を算出した。
【0055】
(脾臓細胞のグランザイム産生試験)
上述のNK細胞活性試験における、脾臓細胞とYAC-1との共培養20時間後の上清を試料として、ELISA Kitにより脾臓細胞のグランザイムA及びグランザイムBの産生量を測定した
【0056】
(脾臓細胞のIFNγ産生試験)
脾臓細胞に、刺激剤としてConA(コンカナバリンA)を添加して培養した。20時間後、培養上清を回収し、ELISA Kitにより脾臓細胞のIFNγ産生量を測定した。
【0057】
(脾臓細胞のIgA抗体産生試験)
脾臓細胞に、刺激剤としてLPS(リポポリサッカライド)を添加して培養した。7日後、培養上清を回収し、ELISA Kitにより脾臓細胞のIgA抗体産生量を測定した。
【0058】
(脾臓の遺伝子発現解析)
摘出した脾臓よりRNAを抽出・精製した。精製したRNAからcDNAを調製し、SYBR Greenを用いたリアルタイムPCR法により、免疫賦活に関連の深い因子について遺伝子発現解析を行った。尚、遺伝子発現解析に使用したプライマーは以下のとおりである。
【0059】
IFNγ用のプライマーセット
CAACAGCAAGGCGAAAAAGG(配列番号1)
CCTGTGGGTTGTTGACCTCAA(配列番号2)
TNFα用のプライマーセット
GCCAGCCGATGGGTTGTA(配列番号3)
GGCAGCCTTGTCCCTTGA(配列番号4)
IL-1β用のプライマーセット
GATGATAACCTGCTGGTGTGTGA(配列番号5)
GTTGTTCATCTCGGAGCCTGTAG(配列番号6)
IL-2受容体α用のプライマーセット
TCCTAAACTGTGAATGCAAGAG(配列番号7)
ATTTGTCATGGGAGTTGCTG(配列番号8)
IL-2受容体β用のプライマーセット
CCTTTGACAACCTTCGCCTG(配列番号9)
AGCATCTCCAAGAAGAGCCA(配列番号10)
IL-2受容体γ用のプライマーセット
GCTGAAACGAGAATCCTTCC(配列番号11)
CGTTCCAACCAACAGTACAC(配列番号12)
IFNγ受容体1用のプライマーセット
AAGGTGTATTCGGGTTCCTG(配列番号13)
TGTCCAACCTTAGCTTTAACTC(配列番号14)
IFNγ受容体2用のプライマーセット
TGAGAATGTTACTGTTGGACCT(配列番号15)
CTGTTCCTGTTGGGTTTCTG(配列番号16)
BCL2用のプライマーセット
CCGGGAGATCGTGATGAAGT(配列番号17)
ATCTCCAGCATCCCACTCGTA(配列番号18)
JUN用のプライマーセット
AAACAGAGCATGACCTTGAACC(配列番号19)
GTCGGTGTAGTGGTGATGTG(配列番号20)
MYC用のプライマーセット
ATCAGCAACAACCGCAAGTG(配列番号21)
GTGTCCGCCTCTTGTCGTTT(配列番号22)
グランザイムA用のプライマーセット
CACTGTAACGTGGGAAAGAG(配列番号23)
GTGAAGGATAGCCACATTTCTG(配列番号24)
グランザイムB用のプライマーセット
CTGCTAAAGCTGAAGAGTAAGG(配列番号25)
TTTAAAGTAGGACTCACACTCCC(配列番号26)
NKp46用のプライマーセット
GGAAACTCGGTGAACATCTG(配列番号27)
TCATACAGACCAGTTACTACCA(配列番号28)
NKG2D用のプライマーセット
CAGCAAAGTGGGATACTTCTC(配列番号29)
CTTGTTGCACAATACTGGCTG(配列番号30)
DNAM1用のプライマーセット
ATATAACAGGAAGAGACGGAGAC(配列番号31)
CTGGATGGGAGAAGTAGGAC(配列番号32)
L-セレクチン用のプライマーセット
TGCTCTGTTGTGACTTCCTG(配列番号33)
TTGTATGGCGACTAAATCTGTG(配列番号34)
FCGR3用のプライマーセット
ATTCTGCTGCTGTTTGCTTTTG(配列番号35)
CACCACAGCCTTCGGAAGAG(配列番号36)
【0060】
(胸腺におけるT細胞数の計数)
マウスより摘出した胸腺より細胞を回収し、塩化アンモニウム水溶液にて処理することによって赤血球を除去したものを胸腺細胞とした。細胞数を計測し、フローサイトメーターを使用してT細胞の比率を測定することにより、T細胞数を算出した。
【0061】
(骨髄における免疫細胞数の計数)
注射針を用いて左右の後肢大腿骨より細胞を回収し、塩化アンモニウム水溶液にて処理することによって赤血球を除去したものを骨髄細胞とした。細胞数を計測し、フローサイトメーターを使用して造血幹細胞、造血前駆細胞、総リンパ球、骨髄球、未熟B細胞、NK細胞の比率を測定することにより、それぞれの免疫細胞数を算出した。
【0062】
脾臓細胞におけるNK細胞活性、IFNγ産生量、グランザイムA産生量、グランザイムB産生量、IgA抗体産生量の測定結果を表1に、脾臓における遺伝子発現解析の結果を表2に、胸腺及び骨髄における免疫細胞数の測定結果を表3にそれぞれ示した。いずれのデータについても、コントロール群における測定値を1とし、その他の群のデータは相対値にて示した。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示すように、マンネンタケの亜臨界水処理物の熱水抽出物(製造例3、製造例6)は、NK細胞活性における優れた増強作用と、IFNγ、グランザイムA、グランザイムB、IgA抗体の産生における優れた促進作用を示した。特に、マンネンタケの亜臨界水処理物の熱水抽出物の混合物(製造例7)は、極めて優れた作用を示した。
【0065】
なお、製造例7は、製造例3と製造例6の1:1混合物であるが、混合割合を1:9から9:1の範囲の任意の割合とした場合にも、表1に示す脾臓細胞の機能において優れた作用を示した。また、マンネンタケの亜臨界水処理物の50%エタノール抽出物(製造例11、製造例12)についても同様に試験を行ったところ、脾臓細胞の機能において優れた作用を示した。
【0066】
【表2-1】
【0067】
【表2-2】
【0068】
【表2-3】
【0069】
表2-1~表2-3に示すように、マンネンタケの亜臨界水処理物の熱水抽出物(製造例3、製造例6)は、IFNγ、IL-2受容体α、IL-2受容体β、IL-2受容体γ、グランザイムA、グランザイムB、NKp46の遺伝子発現において優れた促進作用を示した。特に、マンネンタケの亜臨界水処理物の熱水抽出物の混合物(製造例7)は、極めて優れた作用を示した。
【0070】
なお、製造例7は、製造例3と製造例6の1:1混合物であるが、混合割合を1:9から9:1の範囲の任意の割合とした場合にも、表2-1~表2-3に示す脾臓の遺伝子発現において優れた促進作用を示した。また、マンネンタケの亜臨界水処理物の50%エタノール抽出物(製造例11、製造例12)についても同様に試験を行ったところ、脾臓の遺伝子発現において優れた促進作用を示した。
【0071】
【表3】
【0072】
表3に示すように、マンネンタケの亜臨界水処理物の熱水抽出物(製造例3、製造例6)は、骨髄における造血幹細胞、造血前駆細胞、総リンパ球、骨髄球、未熟B細胞、NK細胞、胸腺におけるT細胞の細胞増殖において優れた促進作用を示した。特に、マンネンタケの亜臨界水処理物の熱水抽出物の混合物(製造例7)は、極めて優れた作用を示した。
【0073】
なお、製造例7は、製造例3と製造例6の1:1混合物であるが、混合割合を1:9から9:1の範囲の任意の割合とした場合にも、表3に示す免疫細胞増殖において優れた作用を示した。また、マンネンタケの亜臨界水処理物の50%エタノール抽出物(製造例11、製造例12)についても同様に試験を行ったところ、免疫細胞増殖において優れた作用を示した。
【0074】
実験例2 マンネンタケの抽出物配合の軟カプセル剤を用いたヒト飲用試験
男女40人(32~60歳)を20人ずつ2群に分け、赤霊芝の亜臨界水処理物の熱水抽出物(製造例3)、黒霊芝の亜臨界水処理物の熱水抽出物(製造例6)、赤霊芝の熱水抽出物(製造例8)、黒霊芝の熱水抽出物(製造例9)をすべて配合した軟カプセル剤(処方例2)又はマンネンタケの抽出物未配合の軟カプセル剤(比較例1)を1日3粒、3ヶ月間飲用させた。飲用前、飲用3ヶ月後に採血と唾液採取を行い、血液中NK細胞活性、血液中T細胞数、血液中B細胞数、唾液中IgA抗体量の測定を行った。
【0075】
飲用前において、NK細胞活性、T細胞数、B細胞数、IgA抗体量について2群間の差はなかった。飲用前における各測定値を1とし、飲用3ヶ月後の測定値を相対値にて表4に示した。
【0076】
【表4】
【0077】
表4に示すように、マンネンタケの抽出物(製造例3、製造例6、製造例8、製造例9)を配合した処方例2の軟カプセル剤は、飲用3ヶ月において、優れた血液中NK細胞活性の増強作用、T細胞及びB細胞の増殖促進作用、IgA抗体の産生促進作用を示した。また処方例2の軟カプセル剤の飲用群において、飲用期間中、体調不良を訴える者はいなかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のマンネンタケの亜臨界水処理物又はその抽出物は、NK細胞活性の増強、IgA抗体の産生促進、免疫細胞数の増殖促進など、優れた免疫賦活作用を示した。免疫力は、癌の罹患や感染症の予防をはじめ、心臓病、糖尿病、腎臓病、慢性疲労症候群、認知機能障害など、多くの疾患と密接に関わっている。本発明は、安全性が高く、長期間に渡って飲用可能かつ十分な作用を発揮する新たな免疫賦活剤を提供するものであり、免疫が関与する疾患又は病態を治療、改善及び予防するための医薬品、医薬部外品、食品として幅広く利用できる。
【配列表】
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