(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】ヒ素含有量が多いスコロダイトを硫酸含有量が多い酸性溶液から得る方法
(51)【国際特許分類】
C01G 49/00 20060101AFI20231025BHJP
C02F 1/62 20230101ALI20231025BHJP
C02F 1/64 20230101ALI20231025BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20231025BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C01G49/00 A
C02F1/62 Z
C02F1/64 Z
C01G49/00 K
C22B7/00 G
C22B3/44 101A
(21)【出願番号】P 2021537126
(86)(22)【出願日】2019-12-22
(86)【国際出願番号】 IB2019061255
(87)【国際公開番号】W WO2020136543
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-12
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521276009
【氏名又は名称】エコメタレス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アクーニャ ゴイコレア,マルセロ グスタボ
(72)【発明者】
【氏名】ローマン エスピノザ,エンリケ アンセルモ
(72)【発明者】
【氏名】ペソア コンテ,リカルド ミゲル
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-137884(JP,A)
【文献】特開2014-227320(JP,A)
【文献】特開2016-016404(JP,A)
【文献】特開平07-187663(JP,A)
【文献】特表2017-530927(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056349(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107540006(CN,A)
【文献】特開2014-205584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 49/00
C02F 1/62
C02F 1/64
C22B 7/00
C22B 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒ素含有量が
15%よりも多
いスコロダイトを含む鉱業または産業廃棄物を、酸の濃度が45g/L
より高く、銅、ヒ素およ
び鉄、
任意のアンチモンおよび/または
任意のビスマスを含む強酸性溶液から得る方法であって、
(i)
酸の濃度が45g/Lより高く、銅、ヒ素および鉄、任意のアンチモンおよび/または任意のビスマスを含む第1の強酸性溶液を、得られる溶液の酸濃度が35~45g/Lとなるようにして、
カルシウムをベースとする第1の中和剤スラリーと接触させて、
ヒ素の濃度が7g/Lよりも高く鉄を含む第2の酸性溶液と、ヒ素含有量が低い石膏を含む第1の固体を得る工程、
(ii)ヒ素に富む第3の酸性溶液を得るために、前記ヒ素に富む第2の酸性溶液を、亜ヒ酸イオンをヒ酸イオンに酸化し同時に鉄(II)イオンを鉄(III)イオンに酸化する
過酸化水素と接触させる工程、
(iii)ヒ素に富む第4の酸性溶液を得るために、前記ヒ素に富む第3の酸性溶液を、亜ヒ酸イオンをヒ酸イオンに酸化し同時に鉄(II)イオンを鉄(III)イオンに酸化する
亜塩素酸ナトリウムと接触させる工程、
(iv)ヒ素に富む第5の酸性溶液を得るために、前記ヒ素に富む第4の酸性溶液中の鉄(III)イオン:ヒ酸イオンのモル比を、1.0~2.0に調節する工程であって、このモル比となるように鉄(III)イオンに富む溶液を添加する、工程、
(v
)スコロダイトの第1のパルプ状物質を得るために、工程(x)から再循環された、かつ30重量%
のスコロダイトの一部からなる、ヒ素含有量が15%よりも多く、石膏の含有量が54%よりも少ない固体からな
るスコロダイトのパルプ状物質の一部を、
沈殿反応中のスコロダイトの核生成および粒径生
長のベースとして、前記ヒ素に富む第5の酸性溶液に添加する工程、
(vi)前
記スコロダイトの第1のパルプ状物質を、50~90℃に加熱する工程、
(vii)マグネシウム、カルシウム及び水をベースとする中和剤からなる第2の中和剤スラリーを添加し、遊離酸の濃度を5~33g/Lとして、ヒ素に乏しい第6の酸性溶液
、スコロダイトを含み、石膏の含有量が低
いスコロダイトの第2のパルプ状物質を生成する工程、
(viii)工程(vi)における前記温度において前
記スコロダイトの第2のパルプ状物質を5~48時間維持する工程、
(ix)前
記スコロダイトの第2のパルプ状物質を固液分離工程に送り、ヒ素含有量が15%よりも多く、石膏の含有量が54%よりも少ない固体からな
るスコロダイトのパルプ状物質と、ヒ素に乏しい第6の酸性溶液とを得る工程、および
(x)前記ヒ素含有量が15%よりも多く、石膏の含有量が54%よりも少ない固体からな
るスコロダイトのパルプ状物質の一部を、工程(v)に再循環させる工程、
を含む、方法。
【請求項2】
工程(i)の前記第1の中和剤スラリーが水酸化カルシウムスラリーおよび水からなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の中和剤スラリーを室温で添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ヒ素に富む前記第2の酸性溶液中のヒ素の40%を酸化するように、工程(ii)の前記
過酸化水素を添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ヒ素に富む前記第3の酸性溶液中のヒ素の60%を酸化するように、工程(iii)の前記
亜塩素酸ナトリウムを添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(iv)において、鉄(III)イオン:ヒ酸イオンのモル比を1.2に設定することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
鉄(III)イオン:ヒ酸イオンのモル比を、磁鉄鉱および/または赤鉄鉱の浸出溶液から得られた鉄(III)イオンに富む溶液で調整することを特徴とする、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
工程(vii)の前記第2の
中和剤スラリーが、47重量%の炭酸カルシウムおよび53重量%の炭酸マグネシウムを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(vii)の前記第2の
中和剤スラリーがドロマイト石灰岩であることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒ素含有量が多いスコロダイト(ヒ酸鉄水和物)を生成する方法に関する。本方法は、様々な種類の鉱業廃棄物を処理するための複数の工程から生じ得るヒ素含有量が多い廃水または水溶液の工業的処理に適用可能である。この廃水または水溶液から、分離および長期的な安定化の方法を必要とする主汚染物質として、溶液中のヒ素が得られる。本方法によって、ヒ素含有量が多いスコロダイト沈殿の生成による生産物とは別に、ヒ素に乏しい水溶液が得られる。
【背景技術】
【0002】
チリ特許出願第201000202号は、高レベルのヒ素およびアンチモンを含む廃液および固体廃棄物の環境安定化のためのヒ素およびアンチモンの除去方法に関する。この方法は、鋳造ダストを浸出させる工程、浸出溶液中に存在するAs(III)を酸化してAs(V)とする工程、富液画分をFe(III)のAs(V)に対するモル比が1対2となるように調整する工程、Fe(III):As(V)の調整工程で得られた液体である両富液を、溶液のpHレベルを中和剤の添加により変化させる2つの撹拌リアクタによって沈殿反応に供し、その後、固-液分離の中間工程に移す工程を含む。この方法によって、ヒ素(As)を含まず電気的な生成手段となるCuに富んだ液流と、スコロダイトおよび石膏の形態で安定化された固体とが得られる。
【0003】
チリ特許出願第201000202号は、本発明の技術的課題を解決しない。前記特許出願はプラスターを形成する中和剤を使用するが、これは最終固体中のヒ素含有量を減少させるものである。特に、請求項15には、中和工程が、パルプ状物質を、第1リアクタ中ではpH1.0に、第2リアクタ中ではpH1.5に中和することを含むことが記載されている。このpH1.5は、パルプ状物質が多量に中和されることを示しており、これにより過剰な量の石膏が生成し、固体中のヒ素含有量が減少する。
【0004】
特許CN103553197Bには、金属スラグを用いたヒ素の除去方法が教示されている。特に、前記特許は、ヒ素およびアンチモンを含む溶液をスラグおよび酸化剤と接触させるが、スラグ中へのヒ素およびアンチモンの吸着を促進させるために、40~100℃の温度および1~3時間の滞留時間の条件で前記接触を行う。使用し得る酸化剤として、この文献には、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、および二酸化塩素が特に挙げられている。続いて、pH6~9の中和工程があり、ここでは、とりわけ酸化マグネシウムまたは炭酸ナトリウムを使用することができる。
【0005】
特許CN103553197Bは、高濃度のヒ素を含むヒ素含有固体を生成しないため、本発明の技術的課題と同様の課題を解決しない。より興味深いことに、特許CN103553197Bは、ヒ素を安定化させる方法としてスコロダイトまたはヒ酸鉄(III)の生成を行わず鉄(II)鉱物を含むスラグにヒ素を吸着させているため、本発明から遠ざかっている。同様に、ヒ素およびアンチモンを表面に吸着させる吸着面としてスラグを添加するため、得られる固体のヒ素含有量は多くないことが示唆される。特に、本発明の技術により得られる固体のヒ素含有量は15%よりも多く、特許CN103553197Bにより生成されたものと比較して生成される固体の量は少ない。特許CN103553197Bは、塩素化酸化剤を使用しているが、当該文献では、ヒ素含有量が多いスコロダイトの形成を目的とするAs(III)およびFe(II)の酸化について教示されていない。加えて、酸性溶液の存在下で高い範囲のpHを使用することで、カルシウムベースの中和抗体による中和の場合において多量のプラスターを生成しており、これは、ヒ素含有量が多いスコロダイトを生成するという目的からも離れるものである。
【0006】
文献Jom.1997 Dec 1;49(12):52-5には、異なる複数の工程でヒ素を沈殿させることでスコロダイトを生成することが教示されている。この文献には、スコロダイトは、90℃の温度において酸化剤として過酸化水素を用いて亜ヒ酸イオンをヒ酸イオンに酸化することにより得ることができると示されている。そして、添加する中和剤の量を変えて異なるpHでヒ素を沈殿させる別の複数の工程でこの溶液を処理し、スコロダイトを生成する。この文献には、スコロダイトに含まれる沈殿の中のヒ素含有量を最大化するために必要な条件が教示されていない。開示されている方法によれば、溶液は弱酸で処理されることが示されており、沈殿はpH0.5において開始し、pH4.0において中和が終了している。この発明では最終沈殿物中のヒ素含有量が示されていないが、pH1.5をpH4.0に上昇させるために必要とされる多量のカルシウムまたは石灰の酸化物が用いられており、石膏が生成されるため最終沈殿物中のヒ素の量は少なくなる可能性が高い。一方、本発明には、亜ヒ酸イオンを同時に効率的に酸化可能な酸化剤を使用していることによる利点がある。これにより、提出した先行技術による報告よりも多い量の汚染成分を最終残留物中に含むヒ素沈殿を生成することができる。
【0007】
文献US7695698B2には、ヒ素イオンおよび二価の鉄イオンを含む水溶液に酸化剤を添加して、溶液を撹拌しながらヒ素-鉄化合物の析出反応を生じさせることからなる、ヒ素-鉄化合物の生成方法が報告されている。酸化剤(酸素または空気である)は連続的なもしくは断続的な注入もしくはバブリングによって溶液に添加され、ここで、析出反応は、室温において50℃~100℃の湯浴中で大気圧下の溶液の撹拌下で進行し、pH0~12の範囲内で終了する。文献US7695698B2の析出開始時のpHおよび遊離酸度の範囲を検討すると、pHが0.5以下(酸性度は34.5g/L超)である開始溶液について、析出後に得られた溶液のヒ素濃度は1.2~7.02g/L(表6の実施例6-2、9、12、13、15、16および18参照)であり、この値は、工業レベルでは高い濃度であることがわかる。pH0.5未満の開始溶液から得られた析出固体のヒ素含有量は、As含有量27.5~31.8%であり、ヒ素の沈殿効率は、27~約64.9%の間で変動する。したがって、文献US7695698B2の教示は、ヒ素濃度が1.0g/L未満である溶液が生じる程度に高い効率でヒ素含有量が多いスコロダイトが沈殿するか定かではない。この文献には、pHが1.0(遊離酸度12.4g/L)を超えるヒ素溶液について、ヒ素含有量が多いヒ酸鉄(III)を生成するためには温度と十分な反応時間のみが必要であって、ヒ素濃度が1.0g/L未満である溶液が得られ、適切な量の鉄が提供されることが開示されている。一方、この発明では、ヒ素含有量が多いヒ酸鉄(III)を強酸性溶液からどのように得るかを教示している。ここでは、酸化剤と適切な中和剤との組み合わせの選択により、析出効率を犠牲とせずに、つまり、ヒ素濃度が1.0g/L未満の処理溶液を得つつ、そのような物質の析出物におけるヒ素含有量を最適化可能である。
【0008】
文献FI118802Bには、二酸化硫黄を含む溶液からヒ素を除去する方法が開示されている。この方法は、鉄、ヒ素および二酸化硫黄を含む水溶液を酸化リアクタに導入する工程と、水溶液中の鉄、ヒ素および二酸化硫黄を酸化する工程と、酸化した鉄、ヒ素および二酸化硫黄を含むその水溶液に中和した沈殿を播く工程と、この水溶液にカルシウムを含む塩基を播いて中和し、ヒ酸鉄(III)化合物を含む中和した沈殿を沈殿させる工程と、この中和した沈殿の一部を、前記の播く工程に再循環させる工程と、を含んでいる。鉄/ヒ素のモル比は少なくとも2でなくてはならず、中和によるpHは少なくとも7でなくてはならない。このような条件下では、カルシウムを含む塩基を用いた中和の機能によって、プラスターが必然的に生成され、そのため固体沈殿中のヒ素含有量は極めて小さくなる。したがって、文献FI118802B2には、強酸性溶液からどのように安定なスコロダイトを沈殿させるかが教示されていない。
【0009】
特許出願CA2927033A1には、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いてスコロダイトを生成する、ヒ素の安定化方法が報告されている。しかし、この出願には、ヒ素の単位質量比あたりどちらが酸化剤を消費するか、および、次亜塩素酸ナトリウム溶液に添加した後の溶液中の亜ヒ酸イオン濃度の残りがいくらであったかは教示されていない。そして、同段落20には、酸化した溶液内において、Fe/Asのモル関係を2.0に調整し、この溶液のpHを水酸化ナトリウムの添加により5.0まで上昇させて、ヒ酸鉄(III)を沈殿させると記載されている。この文献には、どのくらいの時間でどのような温度でヒ酸鉄(III)が沈殿するのか、スコロダイトの形成について保護を請求する際に関連する条件が言及されていない。スコロダイトは、Fe/Asのモル比が1に近く、50℃を超えると沈殿する。加えて、スコロダイトの形成は、室温では反応速度が極めて遅く、そのため滞留時間が長く、その結果、大きなサイズの装置が必要になる。反応速度を上げて48時間未満の時間でスコロダイトを沈殿させるには、沈殿温度を50℃よりも高くする必要がある。
【0010】
特許出願US20170145540A1には、銅濃縮物のアルカリ浸出の方法であって、ヒ素およびアンチモンを含む浸出溶液を調製し、銅を固体中に残留させる方法が教示されている。そして、ヒ素およびアンチモンを含む浸出溶液を、沈殿工程に供し、ここで、ヒ素およびアンチモンを除去して、新たな銅濃縮物の浸出のためにアルカリ溶液浸出剤を回収する。特許出願US20170145540A1は、ヒ素が銅濃縮物中に存在し、ヒ素およびアンチモンを浸出するためにアルカリ浸出工程を行い、このような条件の下でこれらの元素が除去されるという点で、本発明と相違する。
【発明の概要】
【0011】
〔技術的課題〕
技術的課題は、今日、遊離酸度が30g/Lを超える、または、pHが1.0を下回る強酸性溶液からヒ素含有量が多い(15%を超える)安定化スコロダイトを含む最終残留物を得る方法が存在しないという事実にある。
【0012】
本発明の利点は、第一には、生成した沈殿中にヒ素含量が多いスコロダイトの沈殿が生成することである。そして第二に、銅を含有する強酸性溶液の存在下で、亜ヒ酸イオンをヒ酸イオンに効果的に酸化し得る反応性酸化を使用することである。
【0013】
本技術状態が提供する溶液によって、カルシウムをベースにした中和剤(例えば、石灰および石灰岩など)を使用したスコロダイトの沈殿が可能になる。この中和剤は、酸を中和して石膏を生成する。石膏は、酸性条件下で不溶であり、ヒ酸鉄(III)と共沈してヒ素含有量が少なく体積が大きな沈殿を生成し、この最終残留物は、輸送と専用埋立地での処分の費用に大きく影響する。
【0014】
一方、ヒ素含有量が大きい酸性溶液中で、または化学平衡にあるときの酸塩素化酸化化学種(例えば、亜塩素酸塩、塩素酸塩および二酸化塩素)を含む水酸化ナトリウムで安定化された溶液(分子状態の塩素を含まない溶液)中で、直接的に亜塩素酸ナトリウムを用いた酸化は、従来技術により提供された技術的解決手段よりも効率的に、亜ヒ酸イオンをヒ酸イオンに酸化可能であり、また同時に、ヒ素を含有する溶液や廃水を中和可能である。
【0015】
過酸化水素による酸化は、次の化学反応により起こる。
H3AsO3+H2O2→H3AsO4+H2O
2FeS4+H2SO4+H2O2→Fe2(SO4)3+2H2O
【0016】
これらの関係式のモル効率により、過酸化水素の各モル当たり2モルの鉄(II)イオンおよび1モルの亜ヒ酸イオンが酸化されることが示されている。
【0017】
亜塩素酸ナトリウムの場合、この試薬は、過剰な塩素イオンの存在下で次の反応により二酸化塩素を生成する。
5NaClO2+2H2O→4ClO2+NaCl+4NaOH
【0018】
この反応によれば、亜塩素酸ナトリウムを添加すると溶液の中和効果が生じてソーダ(ナトリウム化合物)が生成されることが明らかである。これは結果として、わずかに高いpHで行う必要のあるスコロダイトの沈殿反応に有利である。この反応において、二酸化塩素はヒ素および鉄の化学種の酸化剤であり、これは次の酸化還元反応によって起こる。
NaCl2+2HAsO2+2H2O→NaCl+2H3As4
NaClO2+4FeSO4+2H2SO4
→2Fe2(SO4)3+NaCl+2H2O
【0019】
特に、亜塩素酸ナトリウムイオン:亜ヒ酸イオンのモル比1.41によって、溶液中に存在する亜ヒ酸イオンの81%を酸化可能であり、一方、過酸化水素:亜ヒ酸イオンのモル比12によって、亜ヒ酸イオンの78%を酸化可能である。鉄(II)イオンの酸化の場合、この状況は、亜塩素酸ナトリウムに一段と有利であり、亜塩素酸ナトリウム:鉄(II)イオンのモル比0.25によって、鉄(II)イオンの75パーセントを酸化可能であり、一方、過酸化水素:鉄(II)イオンのモル比2.84によって、鉄(II)イオンの83パーセントを酸化可能である。結果として、亜塩素酸ナトリウムは、過酸化水素と比較してより効果的な酸化剤である。当業者であれば、気体(溶解度の低い二酸化硫黄および酸素、等)による酸化では、亜塩素酸ナトリウムと比較して必要モル数がとても大きくなることが理解できるであろう。
【0020】
湿式冶金溶液中において過酸化水素が亜塩素酸ナトリウムよりも酸化剤として非効率である理由は、溶液中の硫酸銅の存在によるものであり、これが触媒となって過酸化水素が分解されるためで、先に挙げた化学反応に示すように消費量が大きいために化学量論量に影響が生じるからである。
【0021】
要約すると、本発明による新規性および進歩性を有する態様は、以下の通りである。
【0022】
(1)処理する酸性溶液の中和を同時に行う、三価のヒ素と鉄(II)イオンの酸化。
これは、塩基性媒体である酸塩素酸塩化学種(二酸化塩素)を含み遊離塩素を含まないin situで調製した試薬によって行う。この方法により、ヒ素含有量が多く、体積が小さく、安定化された最終残留物を得ることが可能になる。
【0023】
(2)炭酸マグネシウムまたはマグネサイトもしくはドロマイトの鉱物などの中和剤を添加することによる、所定のモル比Fe:Asで規定のpHで添加された、酸化したヒ素および鉄(III)イオンの沈殿。この方法により、スコロダイトまたはヒ酸鉄(III)として長期的に安定化されたヒ素の最終残留物が得られる。このような残留物は、従来技術により確立された方法と比較してヒ素含有量が多く体積が小さいことを特徴とする。
【0024】
(3)この発明において規定する方法は、ヒ酸鉄(III)またはスコロダイトとして、高効率なヒ素の沈殿を達成し、従来技術に記載された方法と比較してヒ素含有量が多く体積が小さいことを特徴とする長期的に安定な最終残留物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】亜ヒ酸イオンの質量単位あたりの亜塩素酸ナトリウムの添加(g/g)に基づいて、亜ヒ酸イオンの酸化性能をパーセンテージで示している。
【
図2】鉄(II)イオンの質量単位あたりの亜塩素酸ナトリウムの添加(g/g)に基づいて、鉄(II)イオンの酸化性能をパーセンテージで示している。
【
図3】実施例4の試験における、亜ヒ酸イオン濃度1.33g/LであるPLSの酸化を、亜塩素酸ナトリウム(丸)および過酸化水素(三角)について示している。
【
図4】実施例4の試験における、亜ヒ酸イオン濃度2.61g/LであるPLSの酸化を、亜塩素酸ナトリウム(丸)および過酸化水素(三角)について示している。
【
図5】実施例4の試験における、亜ヒ酸イオン濃度3.96g/LであるPLSの酸化を、亜塩素酸ナトリウム(丸)および過酸化水素(三角)について示している。
【
図6】実施例31の証拠に基づいて、鉄(II)イオン濃度42.9g/Lである磁鉄鉱の浸出溶液の、亜塩素酸ナトリウムを用いた酸化を示している。実験データ(白抜き丸)、理論計算(黒丸)。
【
図7】実施例32の証拠に基づいて、鉄(II)イオン濃度12.4g/Lおよび亜ヒ酸イオン0.95g/Lである磁鉄鉱の浸出溶液中の亜ヒ酸イオンの、亜塩素酸ナトリウムを用いた酸化を示している。
【
図8】実施例32の証拠に基づいて、鉄(II)イオン濃度12.4g/Lおよび亜ヒ酸イオン0.95g/Lである磁鉄鉱の浸出溶液中の鉄(II)イオンの、亜塩素酸ナトリウムを用いた酸化を示している。実験データ(白抜き丸)、理論計算(黒丸)。
【
図9】本発明の方法により得られたヒ素沈殿のSEMモフォロジーを示している。1は、スコロダイトの結晶を示し、2は、石膏結晶を示している。
【
図10】ヒ素沈殿のX線回折スペクトルを示している。
【
図11】ヒ素沈殿のラマンスペクトルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔本発明の定義〕
本発明は、ヒ素含有量が多いヒ酸鉄(III)および/またはスコロダイトを含む鉱業または産業廃棄物を、酸の濃度が45g/Lより高く、ヒ素および任意の銅、鉄、アンチモンおよび/またはビスマスを含む強酸性溶液から得る方法を開示する。ここで、ヒ素に富む溶液とは、濃度が7g/Lよりも高い溶液であり、本方法は、以下の工程を含む:
(i)ヒ素に富み任意で鉄を含む強酸性溶液を、前記溶液の酸濃度が少なくとも35~45g/Lとなるようにして、中和剤であるパルプ状物質と接触させて、ヒ素に富み任意で鉄を含む酸除去溶液と、ヒ素含有量が低いプラスターを含む固体を得る工程、
(ii)前記ヒ素に富み任意で鉄を含む酸除去溶液を、亜ヒ酸イオンをヒ酸イオンに酸化し同時に鉄(II)イオンを鉄(III)イオンに酸化する酸化剤と接触させる工程、
(iii)ヒ素に富み任意で鉄を含む強酸性溶液を、亜ヒ酸イオンをヒ酸イオンに酸化し同時に鉄(II)イオンを鉄(III)イオンに酸化する第2の酸化剤と接触させる工程、
(iv)前記強酸性溶液中の鉄(III)イオン:ヒ酸イオンのモル比を、1.0~2.0に調節する工程であって、このモル比となるような鉄(III)イオンの溶液(例えば、鉄を含む物質の浸出溶液)の量を添加する、工程、
(v)30%のヒ酸鉄(III)および/またはスコロダイトの一部を、ヒ酸鉄(III)の核生成および粒径生長ならびに/または沈殿反応中のスコロダイトのベースとして、前記酸除去溶液に添加する工程、
(vi)前記強酸性溶液を、50~90℃に加熱する工程、
(vii)遊離酸の濃度が5~33g/Lとなるまで、マグネシウムおよびカルシウムをベースとする中和剤スラリーを添加し、中和された強酸性溶液、ヒ酸鉄(III)および/またはスコロダイトを含み、石膏の含有量が低い(例えば、石膏が54%未満である)パルプ状物質を生成する工程、
(viii)工程(iv)に示す前記温度において前記パルプ状物質を5~48時間維持する工程、
(ix)前記パルプ状物質を固液分離工程に送り、ヒ酸鉄(III)および/またはスコロダイトを含み、ヒ素含有量が15%よりも多く、プラスターの含有量が54%よりも少ない固体の第1のストリーム(流れ、stream)と、前記中和された強酸性溶液を含みヒ素に乏しい第2のストリームとを得る工程、および、
(x)ヒ酸鉄(III)および/またはスコロダイトを含む前記固体の一部を、工程(iii)に再循環させる工程。
【0027】
好ましい選択肢としては、工程(i)の中和剤であるパルプ状物質は水酸化カルシウムスラリーからなる。
【0028】
さらに好ましい選択肢としては、中和剤であるパルプ状物質を室温で添加する。
【0029】
好ましい選択肢としては、工程(ii)で使用する酸化剤は過酸化水素である。
【0030】
好ましい選択肢としては、工程(iii)で使用する酸化剤は亜塩素酸ナトリウムである。
【0031】
さらに好ましい選択肢としては、ヒ素に富む酸除去溶液中のヒ素の0.1~40%を酸化するように、工程(ii)において過酸化水素を添加する。
【0032】
さらに好ましい選択肢としては、ヒ素に富む酸除去溶液中のヒ素の60%~99.9%を酸化するように、工程(iii)において亜塩素酸ナトリウムを添加する。
【0033】
好ましい選択肢としては、工程(iv)において、鉄(III)イオン:ヒ酸イオンの比を1.2に設定する。
【0034】
さらに好ましい選択肢としては、鉄(III)イオン:ヒ酸イオンの比を、磁鉄鉱および/または赤鉄鉱の浸出溶液由来の鉄(III)イオンに富む溶液で調整する。
【0035】
好ましい選択肢としては、工程(vii)のスラリーは、0.1~47重量%の炭酸カルシウムおよび53~99.9重量%の炭酸マグネシウムを含む。
【0036】
さらに好ましい選択肢としては、工程(vii)のスラリーがドロマイト石灰岩である。
【実施例】
【0037】
以下の実施例は、本発明の実施形態であると解されるべきものであり、どのような場合にあっても本発明を限定するものとして解されるべきではなく、本発明の様々な変形例は、本発明により保護を請求する主題の範囲内に含まれるものである。
【0038】
〔実施例1〕
硫酸55g/Lを含み、pHが0.49であり、鉄(II)イオン濃度が9.27g/Lであり、亜ヒ酸イオン濃度が1.93g/Lであり、銅濃度が45g/Lである酸性溶液300mLを500mL容ビーカーに入れた。そして、300rpmにおいて室温で撹拌し、一定量の亜塩素酸ナトリウムを添加した。得られた混合物を30分間一定の撹拌状態に維持し、その後、溶液中の亜ヒ酸イオン濃度および鉄(II)イオン濃度を、メルクの0.1N酒石酸セリウム(IV)四水和物の硫酸塩を用いて容量分析で測定した。
【0039】
各種試験の結果を表1に示す。
【0040】
【0041】
〔実施例2〕
硫酸55g/Lを含み、pHが0.49であり、鉄(II)イオン濃度が9.27g/Lであり、亜ヒ酸イオン濃度が1.93g/Lであり、銅濃度が45g/Lである酸性溶液300mLを500mL容ビーカーに入れた。そして、300rpmにおいて室温で撹拌し、一定量の亜塩素酸ナトリウムを添加した。得られた混合物を30分間一定の撹拌状態に維持し、その後、溶液中の亜ヒ酸イオン濃度および鉄(II)イオン濃度を、メルクの0.1N酒石酸セリウム(IV)四水和物の硫酸塩を用いて容量分析で測定した。
【0042】
各種試験の結果を表2に示す。
【0043】
【0044】
〔実施例3〕
硫酸500ppm未満を含み、pHが2.85であり、鉄(II)イオン濃度が0.55g/Lであり、亜ヒ酸イオン濃度が9.76g/Lであり、銅濃度が200ppmである酸性溶液300mLを500mL容ビーカーに入れた。そして、300rpmにおいて室温で撹拌し、一定量の亜塩素酸ナトリウムを添加した。得られた混合物を30分間一定の撹拌状態に維持し、その後、溶液中の亜ヒ酸イオン濃度および鉄(II)イオン濃度を、メルクの0.1N酒石酸セリウム(IV)四水和物の硫酸塩を用いて容量分析で測定した。
【0045】
各種試験の結果を表2に示す。
【0046】
【0047】
〔実施例4〕
PLS酸化について6種の試験を、濃度を可変としたヒ素および鉄ならびに濃度を一定とした銅(35g/Lに等しい)を用いて行った。ヒ素に対する酸化性能を比較するために、亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素を変化させて添加して試験を行った。
【0048】
【0049】
その結果、亜塩素酸ナトリウムによる酸化は、酸化範囲を通して直線的であったが、過酸化水素の場合は、亜ヒ酸イオンがより高濃度であるときに漸近的なプロファイルが観察されて亜ヒ酸イオンの酸化効率が失われた。
【0050】
〔実施例5〕
硫酸濃度が60g/Lであり、ヒ素総量が18.55g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.02g/L未満であり、鉄総量が15.45g/Lであり、鉄(II)イオンが0.17g/Lである酸性溶液3.76Lを、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.12mol:molとなるように5L容リアクタに入れ、400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、パルプ状物質のpHを2.2とするために、蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した炭酸カルシウムスラリー1,779mLを添加した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に5時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを80g/m2のろ紙を用いてKitasato式ろ過器(Kitasato system filter)でろ過した。ヒ素含有量が8.63%であり、鉄7.02%および銅2.64%である乾燥固体806gが得られた。一方、得られた溶液は、銅20g/L、ヒ素総量110ppm、および鉄総量430ppmを含んでいた。
【0051】
〔実施例6〕
硫酸濃度が60g/Lであり、ヒ素総量が18.55g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.02g/L未満であり、鉄総量が15.45g/Lであり、鉄(II)イオン0.17g/Lである酸性溶液3.76Lを、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.12mol:molとなるように5L容リアクタに入れ、400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、パルプ状物質のpHを2.2とするために、蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した炭酸マグネシウムスラリー1,779mLを添加した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に5時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2,5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素26.3%、鉄18.2%、銅1.47%、およびマグネシウム0.24%を含有する乾燥固体274gが得られた。一方、得られた溶液は、銅26g/L、ヒ素総量60ppm、および鉄総量480ppmを含んでいた。
【0052】
〔実施例7〕
硫酸濃度が55.7g/Lであり、銅含有量が31.8g/Lであり、ヒ素総量が19.3g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.02g/L未満であり、鉄総量が18.0g/Lであり、鉄(II)イオンが340ppmである酸性溶液3.76Lを、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.25mol:molとなるように5L容リアクタに入れ、400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、52重量%の炭酸カルシウムと48重量%の炭酸マグネシウムとを含むことを特徴とする中和スラリー1,640mLを添加した。このスラリーは、前記酸性溶液を含有するパルプ状物質のpHを2.2とするために蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に5時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素15.2%、鉄14.0%、銅0.61%、およびマグネシウム0.01%を含有する乾燥固体475gが得られた。一方、得られた溶液は、銅26.6g/L、ヒ素総量110ppm、および鉄総量200ppmを含んでいた。
【0053】
〔実施例8〕
硫酸濃度が55.7g/Lであり、銅含有量が32.5g/Lであり、ヒ素総量が20.4g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.02g/L未満であり、鉄総量が18.9g/Lであり、鉄(II)イオンが110ppmである酸性溶液3.76Lを、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.24mol:molとなるように5L容リアクタに入れ、400rpmにおいて50℃で撹拌した。この温度に達したら、52重量%の炭酸カルシウムと48重量%の炭酸マグネシウムとを含むことを特徴とする中和スラリー1,630mLを添加した。このスラリーは、前記酸性溶液を含有するパルプ状物質のpHを2.2とするために蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に5時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素16.4%、鉄12.6%、銅0.32%、およびマグネシウム0.02%を含有する乾燥固体471gが得られた。一方、得られた溶液は、銅25.8g/L、ヒ素総量40ppm、および鉄総量230ppmを含んでいた。
【0054】
〔実施例9〕
硫酸濃度が49.5g/Lであり、銅含有量が32.9g/Lであり、ヒ素総量が20.0g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.02g/L未満であり、鉄総量が10.04g/Lであり、鉄(II)イオンが0.17g/Lである酸性溶液3.5Lを5L容撹拌リアクタに入れた。そして、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.22mol:molとなるように、硫酸34.1g/l、鉄111.5g/L、および鉄(II)イオン2.65g/Lである磁鉄鉱浸出溶液256mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、パルプ状物質のpHを1.2とするために、蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した炭酸マグネシウムスラリー1,115mLを添加した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に5時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素27.3%、鉄21.5%、銅0.56%、およびマグネシウム0.02%を含有する乾燥固体220gが得られた。一方、得られた溶液は、銅24.2g/L、ヒ素総量1,230ppm、および鉄総量1,460ppmを含んでいた。
【0055】
〔実施例10〕
硫酸濃度が49.5g/Lであり、銅含有量が32.9g/Lであり、ヒ素総量が20.0g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.02g/L未満であり、鉄総量が10.04g/Lであり、鉄(II)イオンが0.17g/Lである酸性溶液3.5Lを5L容撹拌リアクタに入れた。そして、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.22mol:molとなるように、硫酸34.1g/lであり、鉄111.5g/Lおよび鉄(II)イオン2.65g/Lである磁鉄鉱浸出溶液256mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、パルプ状物質のpHを1.5とするために、蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した炭酸マグネシウムスラリー1,295mLを添加した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に5時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素25.7%、鉄20.7%、銅0.68%、およびマグネシウム0.12%を含有する乾燥固体266gが得られた。一方、得られた溶液は、銅22.5g/L、ヒ素総量300ppm、および鉄総量920ppmを含んでいた。
【0056】
〔実施例11〕
硫酸濃度が49.5g/Lであり、銅含有量が32.9g/Lであり、ヒ素総量が20.0g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.02g/L未満であり、鉄総量が10.04g/Lであり、鉄(II)イオンが0.17g/Lである酸性溶液3.5Lを5L容撹拌リアクタに入れた。そして、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.22mol:molとなるように、硫酸34.1g/l、鉄111.5g/L、および鉄(II)イオン2.65g/Lである磁鉄鉱浸出溶液256mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、52重量%の炭酸カルシウムと48重量%の炭酸マグネシウムとを含むことを特徴とするスラリー1,245mLを添加した。このスラリーは、パルプ状物質のpHを1.2とするために蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に5時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素16.8%、鉄12.9%、銅0.26%、カルシウム13.4%、およびマグネシウム0.01%を含有する乾燥固体393gが得られた。一方、得られた溶液は、銅25.4g/L、ヒ素総量1,010ppm、および鉄総量3,100ppmを含んでいた。
【0057】
〔実施例12〕
硫酸濃度が49.5g/Lであり、銅含有量が32.9g/Lであり、ヒ素総量が20.0g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.02g/L未満であり、鉄総量が10.04g/Lであり、鉄(II)イオンが0.17g/Lである酸性溶液3.5Lを5L容撹拌リアクタに入れた。そして、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.22mol:molとなるように、硫酸34.1g/l、鉄111.5g/L、および鉄(II)イオン2.65g/Lである磁鉄鉱浸出溶液256mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、52重量%の炭酸カルシウムと48重量%の炭酸マグネシウムとを含むことを特徴とするスラリー1,460mLを添加した。このスラリーは、パルプ状物質のpHを1.5とするために蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に5時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素15.6%、鉄13.1%、銅0.36%、カルシウム14.9%、およびマグネシウム0.01%を含有する乾燥固体456gが得られた。一方、得られた溶液は、銅24.5g/L、ヒ素総量160ppm、および鉄総量870ppmを含んでいた。
【0058】
〔実施例13〕
硫酸濃度が49.5g/Lであり、銅含有量が32.9g/Lであり、ヒ素総量が20.0g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.02g/L未満であり、鉄総量が10.04g/Lであり、鉄(II)イオンが0.17g/Lである酸性溶液3.5Lを5L容撹拌リアクタに入れた。そして、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.22mol:molとなるように、硫酸34.1g/l、鉄111.5g/L、および鉄(II)イオン2.65g/Lである磁鉄鉱浸出溶液256mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、パルプ状物質のpHを1.2とするために、蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した炭酸カルシウムスラリー1,385mLを添加した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に5時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素10.0%、鉄8.9%、銅0.23%、カルシウム17.8%、およびマグネシウム0.02%を含有する乾燥固体640gが得られた。一方、得られた溶液は、銅27.9g/L、ヒ素総量1,380ppm、および鉄総量1,640ppmを含んでいた。
【0059】
〔実施例14〕
硫酸濃度が49.5g/Lであり、銅含有量が32.9g/Lであり、ヒ素総量が20.0g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.02g/L未満であり、鉄総量が10.04g/Lであり、および鉄(II)イオンが0.17g/Lである酸性溶液3.5Lを5L容撹拌リアクタに入れた。そして、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.22mol:molとなるように、硫酸34.1g/l、鉄111.5g/L、および鉄(II)イオン2.65g/Lである磁鉄鉱浸出溶液256mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、パルプ状物質のpHを1.5とするために、蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した炭酸カルシウムスラリー1,699mLを添加した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に5時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素8.5%、鉄7.8%、銅0.28%、カルシウム17.6%、およびマグネシウム0.02%を含有する乾燥固体810gが得られた。一方、得られた溶液は、銅25.6g/L、ヒ素総量190ppm、および鉄総量990ppmを含んでいた。
【0060】
〔実施例15〕
硫酸濃度が49.5g/Lであり、銅含有量が32.9g/Lであり、ヒ素総量が20.0g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.02g/L未満であり、鉄総量が10.04g/Lであり、および鉄(II)イオンが0.17g/Lである酸性溶液3.5Lを5L容撹拌リアクタに入れた。そして、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.22mol:molとなるように、硫酸34.1g/l、鉄111.5g/L、および鉄(II)イオン2.65g/Lである磁鉄鉱浸出溶液256mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて50℃で撹拌した。この温度に達したら、パルプ状物質のpHを1.5とするために、蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した炭酸マグネシウムスラリー1,295mLを添加した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に5時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素33.1%、鉄28.7%、銅0.72%、およびマグネシウム0.13%を含有する乾燥固体175gが得られた。一方、得られた溶液は、銅25.9g/L、ヒ素総量1,120ppm、および鉄総量1,430ppmを含んでいた。
【0061】
〔実施例16〕
硫酸濃度が45.2g/Lであり、銅含有量が32.1g/Lであり、ヒ素総量が20.0g/lであり、亜ヒ酸イオンが0.04g/L未満であり、鉄総量が18.2g/Lであり、鉄(II)イオンが0.08g/Lである酸性溶液3.5Lを5L容撹拌リアクタに入れた。そして、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.20mol:molとなるように、硫酸59.6g/l、鉄総量145.6g/L、および鉄(II)イオン0.11g/Lである磁鉄鉱浸出溶液143mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて50℃で撹拌した。この温度に達したら、52重量%の炭酸カルシウムと48重量%の炭酸マグネシウムとを含むことを特徴とするスラリー1,210mLを添加した。このスラリーは、パルプ状物質のpHを1.5とするために蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に5時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素18.0%、鉄15.3%、銅0.17%、カルシウム9.9%、およびマグネシウム0.02%を含有する乾燥固体332gが得られた。一方、得られた溶液は、銅26.1g/L、ヒ素総量850ppm、および鉄総量1,300ppmを含んでいた。
【0062】
〔実施例17〕
硫酸濃度が49.5g/Lであり、銅含有量が32.9g/Lであり、ヒ素総量が20.0g/lであり、亜ヒ酸イオンが0.02g/L未満であり、鉄総量が10.04g/Lであり、鉄(II)イオンが0.17g/Lである酸性溶液3.5Lを5L容撹拌リアクタに入れた。そして、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.20mol:molとなるように、硫酸59.6g/l、鉄総量145.6g/L、および鉄(II)イオン0.11g/Lである磁鉄鉱浸出溶液143mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて50℃で撹拌した。この温度に達したら、パルプ状物質のpHを1.5とするために、蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した炭酸カルシウムスラリー1,295mLを添加した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に5時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素13.0%、鉄11.6%、銅0.31%、カルシウム10.7%、マグネシウム0.02%を含有する乾燥固体454gが得られた。一方、得られた溶液は、銅25.6g/L、ヒ素総量990ppm、および鉄総量1,000ppmを含んでいた。
【0063】
〔実施例18〕
硫酸濃度が54.5g/Lであり、銅含有量が59.0g/Lであり、総量が12.2g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.37g/L未満であり、鉄総量が13.4g/Lであり、鉄(II)イオンが0.56g/L未満である酸性溶液3.5Lを5L1容撹拌リアクタに入れた。そして、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.63mol:molとなるように、硫酸59.6g/l、鉄総量145.6g/L、および鉄(II)イオン0.11g/Lである磁鉄鉱浸出溶液37mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、パルプ状物質のpHを遊離酸度30g/Lとするために、蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した炭酸カルシウムスラリー580mLを添加した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に5時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素16.8%、鉄12.5%、銅0.78%、カルシウム12.1%、およびマグネシウム0.01%を含有する乾燥固体229gが得られた。一方、得られた溶液は、銅49.5g/L、ヒ素総量1,060ppm、および鉄総量5,560ppmを含んでいた。
【0064】
〔実施例19〕
硫酸濃度が54.5g/Lであり、銅含有量が59.0g/Lであり、総量が12.2g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.37g/L未満であり、鉄総量が13.4g/Lであり、鉄(II)イオンが0.56g/L未満である酸性溶液3.5Lを5L1容撹拌リアクタに入れた。そして、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.63mol:molとなるように、硫酸59.6g/l、鉄総量145.6g/L、および鉄(II)イオン0.11g/Lである磁鉄鉱浸出溶液37mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、パルプ状物質のpHを遊離酸度30g/Lとするために、蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した炭酸カルシウムスラリー530mLを添加した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に44時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素19.5%、鉄14.5%、銅0.74%、カルシウム8.9%、およびマグネシウム0.01%を含有する乾燥固体218gが得られた。一方、得られた溶液は、銅52.2g/L、ヒ素総量130ppm、および鉄総量5,140ppmを含んでいた。
【0065】
〔実施例20〕
硫酸濃度が54.5g/Lであり、銅含有量が59.0g/Lであり、総量が12.2g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.37g/L未満であり、鉄総量が13.4g/Lであり、鉄(II)イオンが0.56g/L未満である酸性溶液3.5Lを5L1容撹拌リアクタに入れた。そして、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.62mol:molとなるように、硫酸59.6g/l、鉄総量145.6g/L、および鉄(II)イオン0.11g/Lである磁鉄鉱浸出溶液40mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、パルプ状物質のpHを遊離酸度30g/Lとするために、蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した炭酸マグネシウムスラリー530mLを添加した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に48時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素29.4%、鉄26.0%、銅0.84%、カルシウム0.07%、およびマグネシウム0.01%を含有する乾燥固体218gが得られた。一方、得られた溶液は、銅57.4g/L、ヒ素総量150ppm、および鉄総量5,280ppmを含んでいた。
【0066】
〔実施例21〕
硫酸濃度が54.5g/Lであり、銅含有量が59.0g/Lであり、総量が12.2g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.37g/L未満であり、鉄総量が13.4g/Lであり、鉄(II)イオンが0.56g/L未満である酸性溶液3.5Lを5L1容撹拌リアクタに入れた。そして、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.62mol:molとなるように、硫酸59.6g/l、鉄総量145.6g/L、および鉄(II)イオン0.11g/Lである磁鉄鉱浸出溶液40mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、パルプ状物質のpHを遊離酸度30g/Lとするために、蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した炭酸マグネシウムスラリー530mLを添加した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に48時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素23.0%、鉄18.9%、銅0.67%、カルシウム4.9%、およびマグネシウム0.02%を含有する乾燥固体218gが得られた。一方、得られた溶液は、銅53.4g/L、ヒ素総量160ppm、および鉄総量4,860ppmを含んでいた。
【0067】
〔実施例22〕
硫酸濃度が54.5g/Lであり、銅含有量が59.0g/Lであり、総量が12.2g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.37g/L未満であり、鉄総量が13.4g/Lであり、鉄(II)イオンが0.56g/L未満である酸性溶液3.5Lを5L1容撹拌リアクタに入れた。そして、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.62mol:molとなるように、硫酸59.6g/l、鉄総量145.6g/L、および鉄(II)イオン0.11g/Lである磁鉄鉱浸出溶液40mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、52重量%の炭酸カルシウムと48重量%の炭酸マグネシウムとを含むことを特徴とするスラリー530mLを添加した。このスラリーは、パルプ状物質のpHを遊離酸度30g/Lとするために蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に48時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素23.0%、鉄18.9%、銅0.67%、カルシウム4.9%、およびマグネシウム0.02%を含有する乾燥固体218gが得られた。一方、得られた溶液は、銅53.4g/L、ヒ素総量160ppm、および鉄総量4,860ppmを含んでいた。
【0068】
〔実施例23〕
硫酸濃度が41.1g/Lであり、銅含有量が50.9g/Lであり、総量が12.1g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.37g/L未満であり、鉄総量が13.4g/Lであり、鉄(II)イオンが5.7g/Lである酸性溶液3.5Lを5L容撹拌リアクタに入れた。この酸化溶液は、水酸化ナトリウムによってpH12で安定化させた亜塩素酸ナトリウム溶液63g/Lであらかじめ酸化した。この酸化溶液に、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.1mol:molとなるように、硫酸59.6g/l、鉄総量145.6g/L、および鉄(II)イオン0.11g/Lである磁鉄鉱浸出溶液42mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、パルプ状物質のpHを遊離酸度30g/Lとするために、蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した炭酸カルシウムスラリー286mLを添加した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に48時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素24.9%、鉄17.1%、銅1.34%、カルシウム5.9%、およびマグネシウム0.03%を含有する乾燥固体162gが得られた。一方、得られた溶液は、銅57.2g/L、ヒ素総量480ppm、および鉄総量7,000ppmを含んでいた。
【0069】
〔実施例24〕
硫酸濃度が41.1g/Lであり、銅含有量が50.9g/Lであり、総量が12.1g/Lであり、亜ヒ酸イオンが0.37g/L未満であり、鉄総量が13.4g/Lであり、鉄(II)イオンが5.7g/Lである酸性溶液3.5Lを5L容撹拌リアクタに入れた。この酸化溶液は、水酸化ナトリウムによってpH12で安定化させた亜塩素酸ナトリウム溶液63g/Lであらかじめ酸化した。この酸化溶液に、鉄(III)イオンとヒ酸イオンとのモル比が1.1mol:molとなるように、硫酸59.6g/l、鉄総量145.6g/L、および鉄(II)イオン0.11g/Lである磁鉄鉱浸出溶液42mLを添加した。リアクタを400rpmにおいて90℃で撹拌した。この温度に達したら、52重量%の炭酸カルシウムと48重量%の炭酸マグネシウムとを含むことを特徴とするスラリー253mLを添加した。このスラリーは、パルプ状物質のpHを遊離酸度30g/Lとするために蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した。パルプ状物質を一定の撹拌状態に48時間維持した。その後、パルプ状物質を16時間デカンテーションしておき、これを2.5μmのろ紙を用いてKitasato式ろ過器でろ過した。ヒ素27.5%、鉄18.3%、銅2.21%、カルシウム4.5%、およびマグネシウム0.03%を含有する乾燥固体147gが得られた。一方、得られた溶液は、銅58.6g/L、ヒ素総量520ppm、および鉄総量7,300ppmを含んでいた。
【0070】
〔実施例25〕
スコロダイトの連続酸化および沈殿試験を、ヒ素総量8.0g/L、亜ヒ酸イオン1.4g/L、および鉄総量10.0g/Lを含む酸性溶液に対して10日間行った。この酸性溶液を、ヒ酸イオン1gあたり2.1gの亜塩素酸ナトリウムで酸化した。これによりヒ酸イオン濃度は370ppmを下回った。この酸性溶液における鉄(III)イオンのヒ酸イオンに対するモル比は1.69mol:molであり、磁鉄鉱浸出溶液で調整する必要はなかった。このシステムには、直列に接続されて700rpm Lで撹拌する2つの20L容リアクタを配置した。各リアクタあたりの滞留時間は24時間とした。52重量%の炭酸カルシウムと48重量%の炭酸マグネシウムとを含むことを特徴とするスラリーを供給した。このスラリーは、パルプ状物質のpHが第1リアクタにおいては遊離酸度35g/Lとなるように、第2リアクタにおいても35g/Lとなるように、蒸留水100mLあたり中和剤が15gとなる割合で調製した。このシステムは、オンライン方式のデカンテーションとろ過に接続した。ここから、濃縮したパルプ状物質の30パーセントをリアクタ1に再循環させて、スコロダイトの結晶生成のための表面とした。このシステムを10日間運転すると、総ヒ素濃度が平均で600g/Lである酸性溶液と、As平均含有量が24%である固体が得られた。
【0071】
〔実施例26〕
体積が4,120mLであり、ヒ素濃度が12.5g/Lであり、硫酸が45g/LであるPLSの中和試験を4つ行った。スラリーを25%p/pの水酸化カルシウムに添加した。これにより、pHはそれぞれ0.7、0.9、1.1、および1.3となった。
【0072】
【0073】
試験P01では、ヒ素除去量が小さく、ヘッドに存在するヒ素の0.06パーセントのみであり、最少量のヒ素を含む石膏70gが生成した。
【0074】
〔実施例27〕
8.8g/Lのヒ素(3.0g/LのAs(III))の溶液3,000mLを用いて試験を行った。ここでは、50%p/p過酸化水素4.8mLで酸化し、その後、亜塩素酸ナトリウム13.6gで酸化した。これは、As(III)の25%が過酸化水素によって酸化され、As(III)の75%が亜塩素酸ナトリウムによって酸化されたことに相当する。そして、この溶液を磁鉄鉱浸出溶液で調整して、Fe(III)/As(V)を1.2とし、90℃に加熱して、47%の炭酸マグネシウムと53%の炭酸カルシウムとを含む人工ドロマイト石灰岩スラリーを添加して、溶液の酸性度を30g/Lとした。これを400rpmで48時間撹拌し、その後、固体をろ過して蒸留水で洗浄した。
【0075】
〔実施例28〕
8.8g/Lのヒ素(3.0g/LのAs(III))の溶液3,000mLを用いて試験を行った。ここでは、亜塩素酸ナトリウム20gで酸化した。そして、この溶液を磁鉄鉱浸出溶液で調整して、Fe(III)/As(V)を1.2とし、90℃に加熱して、47%の炭酸マグネシウムと53%の炭酸カルシウムとを含む人工ドロマイト石灰岩スラリーを添加して、溶液の酸性度を30g/Lとした。これを400rpmで48時間撹拌し、その後、固体をろ過して蒸留水で洗浄した。
【0076】
〔実施例29〕
8.8g/Lのヒ素(3.0g/LのAs(III))の溶液3,000mLを用いて試験を行った。ここでは、濃度が100g/Lの次亜塩素酸ナトリウム260mLで酸化した。そして、この溶液を磁鉄鉱浸出溶液で調整して、Fe(III)/As(V)を1.2とし、90℃に加熱して、47%の炭酸マグネシウムと53%の炭酸カルシウムとを含む人工ドロマイト石灰岩スラリーを添加して、溶液の酸性度を30g/Lとした。これを400rpmで48時間撹拌し、その後、固体をろ過して蒸留水で洗浄した。
【0077】
〔実施例30〕
実施例26の試験P01(0.9g/LのAs(III))の中和溶液3,000mLを用いて試験を行った。この溶液を、亜塩素酸ナトリウム6.8gで酸化した。そして、この溶液を磁鉄鉱浸出溶液で調整して、Fe(III)/As(V)を1.2とし、90℃に加熱して、47%の炭酸マグネシウムと53%の炭酸カルシウムとを含む人工ドロマイト石灰岩スラリーを添加して、溶液の酸性度を30g/Lとした。これを400rpmで48時間撹拌し、その後、固体をろ過して蒸留水で洗浄した。
【0078】
〔実施例31〕
硫酸90g/LおよびFe(II)42.9g/lを含む磁鉄鉱浸出溶液2,000mLを用いて室温で試験を行った。鉄(II)イオンを鉄(III)イオンに酸化するために、亜塩素酸ナトリウムの量を変えて添加した。亜塩素酸ナトリウムの各添加の30分後に試料を採取した。その結果、Fe(II)の酸化は直線的挙動を示し、理論消費量と非常に類似した性能を示した。
【0079】
【0080】
〔実施例32〕
硫酸46g/L、Fe(II)12.8g/l、およびAs(III)0.95g/Lを含む鋳造粉末の浸出液2,000mLを用いて室温で試験を行った。鉄(II)イオンを鉄(III)イオンに酸化し、亜ヒ酸イオンをヒ酸イオンに酸化するために、亜塩素酸ナトリウムの量を変えて添加した。亜塩素酸ナトリウムの各添加の30分後に試料を採取した。その結果、Fe(II)およびAs(III)の酸化は直線的挙動を示し、理論消費量と非常に類似した性能を示した。
【0081】
【0082】
【0083】
〔実施例33〕
12.5g/L、20g/lのFe、35.9g/LのCuおよび46.6g/Lの硫酸を含むPLS溶液3,500mLを採取した。パルプ状物質を中和するために、石灰スラリーを25%p/vで33g/Lとなるまで室温で添加した。ヒ素除去銅の効果を有し、鉄が0.1%未満である、石膏が得られた。
【0084】
〔実施例34〕
12.5g/L(0.9g/LのAs(III))、20g/lのFe、35.9g/LのCuおよび46.6g/Lの硫酸を含むPLS溶液3,500mLを採取した。パルプ状物質を中和するために、石灰スラリーを25%p/vで36g/Lとなるまで室温で添加した。ヒ素除去銅の効果を有し、鉄が0.05%未満である、石膏が得られた。
【0085】
〔実施例35〕
あらかじめ中和した実施例33のPLS溶液を、スコロダイトの沈殿工程に供した。ここでは、6.8gの80%NaClO2の添加により、亜塩素酸ナトリウムを用いて存在するAs(III)およびFe(II)を酸化し、温度を90℃まで上昇させ、ドロマイト石灰岩のスラリーで中和して15%p/vにして、30g/Lとした。そして、この酸性度を維持し、一定の撹拌状態を48時間維持した。その結果、沈殿効率は、Asについては99.3%であり、Cuについては0.9%に過ぎなかった。残留物は、石膏沈殿を伴いAs含有量が28%であるスコロダイトであった。塩化物濃度は、0.7g/Lであった。
【0086】
〔実施例36〕
46.6g/Lの硫酸、7.4g/L(3.0g/LのAs(III))、13.5g/LのCu、および14g/lのFeを含むPLS溶液を、石膏の沈殿工程に供し、この混合物を、実施例33に記載されているように、硫酸の33g/Lとした。ここでは、100g/LのNaClO130mLの添加により、次亜塩素酸ナトリウムを用いて存在するAs(III)およびFe(II)を酸化し、温度を90℃まで上昇させ、ドロマイト石灰岩のスラリーで中和して15%p/vにして、30g/Lとした。そして、この酸性度を維持し、一定の撹拌状態を48時間維持し、これによりスコロダイトを沈殿させた。その結果、沈殿効率は、Asについては97%であり、Cuについては1.2%に過ぎなかった。残留物は、石膏沈殿を伴いAs含有量が24%であるスコロダイトであった。塩化物濃度は、4g/Lであった。
【0087】
〔実施例37〕
46.6g/Lの硫酸、7.4g/L(3.0g/LのAs(III))、13.5g/LのCu、および14g/lのFeを含むPLS溶液を、石膏の沈殿工程に供し、この混合物を、実施例33に記載されているように、硫酸の33g/Lとした。ここでは、亜塩素酸ナトリウム12gを用いてAs(III)およびFe(II)を酸化し、その後、温度を90℃まで上昇させ、ドロマイト石灰岩のスラリーで中和して15%p/vにして、30g/Lとした。そして、この酸性度を維持し、一定の撹拌状態を48時間維持し、これによりスコロダイトを沈殿させた。その結果、沈殿効率は、Asについては98%であり、Cuについては1.2%に過ぎなかった。残留物は、石膏沈殿を伴いAs含有量が25%であるスコロダイトであった。塩化物濃度は、1.6g/Lであった。
【0088】
〔実施例38〕
46.6g/Lの硫酸、7.4g/L(3.0g/LのAs(III))、13.5g/LのCu、および14g/lのFeを含むPLS溶液を、石膏の沈殿工程に供し、この混合物を、実施例33に記載されているように、硫酸の33g/Lとした。ここでは、第1段階では過酸化水素を50%v/vまで添加し、第2段階では亜塩素酸ナトリウムを添加して、存在するAs(III)およびFe(II)を酸化して、これによりスコロダイトを沈殿させた。As(III)の40%を過酸化水素により酸化し、残りを亜塩素酸ナトリウムで酸化するために、As(III)1molあたり過酸化水素0.44molの割合で過酸化水素を添加し、その後、溶液中の初期As(III)1molあたり亜塩素酸ナトリウム0.4molの割合で添加した。酸化後、温度を90℃まで上昇させ、ドロマイト石灰岩のスラリーで中和して15%p/vにして、30g/Lとした。そして、この酸性度を維持し、一定の撹拌状態を48時間維持した。その結果、沈殿効率は、Asについては97%であり、Cuについては1.2%に過ぎなかった。残留物は、石膏沈殿を伴いAs含有量が25%であるスコロダイトであった。塩化物濃度は、1.0g/Lであった。
【0089】
図には、鋳造粉末の浸出溶液と共に作用するときの、亜塩素酸ナトリウムの酸化能を過酸化水素と比較して示す。
図1および2には、亜塩素酸ナトリウムの供給量に対して直線的挙動を示すAs(III)の酸化効率とFe(II)の酸化効率を示す。
【0090】
〔実施例39〕
実施例35で得られたヒ素沈殿を走査型電子顕微鏡で分析した。As、Fe、およびOの割合により、スコロダイトFeAsO4の化学種の割合を有し、石膏が沈殿の中に存在する結晶が生成される。
【0091】
【0092】
〔実施例40〕
実施例35に記載の手順で得られた沈殿について化学安定性試験を行った。その結果、Asの放出が非常に小さいことが示され、これが生成残留物の安定性の理由である。
【0093】
【0094】
〔実施例41〕
X線回折(
図10)およびラマン分光法(
図11)で分析した。両分析により、実施例35のヒ素沈殿中にスコロダイトと石膏が存在することが確認された。ラマンスペクトルについて、428、487、629、669、および1018cmにおけるピークは、バサナイト(bassanita)鉱物(CaSO
4・0.5H
2O)に対応し、一方、335、807、および893cmにおけるピークは、スコロダイト鉱物(FeAsO
4・2H
2O)に対応する。
【0095】
As(III)の化学量論的消費量は、以下のように算出される。
亜塩素酸ナトリウム
HAsO
2+H
2O+1/2NaClO
2→H
3AsO
4+NaCl
【数1】
【0096】
過酸化水素
HAsO
2+H
2O
2→H
3AsO
4
【数2】
【0097】
Fe(II)の化学量論的消費量は、以下のように算出される。
亜塩素酸ナトリウム
FeSO
4+1/2H
2SO
4+1/4NaClO
2
→1/2Fe
2(SO
4)
3+1/2NaCl+1/2H
2O
【数3】
【0098】
過酸化水素
FeSO
4+1/2H
2SO
4+1/2H
2O
2
→1/2Fe
2(SO
4)
3+H
2O
【数4】
【0099】
図3は、1.33g/LのオーダーのAs濃度について、As(III)の酸化反応における化学量論的消費量が、過酸化水素と比較して亜塩素酸ナトリウムにおいてより効率的であることを示す。As(III)濃度が2.61g/L(
図4)および3.96g/L(
図5)に増加するにつれて、亜塩素酸ナトリウムの化学量論的消費量は、過酸化水素の消費量と比較してより効果的である。
図1、2、3、4および5の化学量論的消費量は、As(III)の酸化に関して計算したものであるが、実験ではFe(II)も存在していて、これが酸化剤を消費してFe(III)が生成されるため、プロットしたAs(III)の化学量論的消費量が100%を超えていることに留意することが重要である。
【0100】
図6および8の場合、低濃度の亜ヒ酸イオンの存在下での鉄(II)イオンの酸化性能は非常に効率的であり、亜塩素酸ナトリウムを用いると化学量論的性能の100%に近づくことに注目されたい。
【0101】
ドロマイト石灰岩を用いた沈殿反応は、この種の炭酸塩中のマグネシウムが石膏を生成することなく酸を中和するため、炭酸カルシウムまたは石灰岩の沈殿反応と比較して、沈殿物中のヒ素含有量を増加させ得る点で有益である。
【0102】
亜塩素酸ナトリウムを用いた酸化は、次亜塩素酸ナトリウムを用いるよりもより有益であり、これは、As(III)およびFe(II)を酸化するためにはより大きなモル数の次亜塩素酸ナトリウムが必要であって、そのため、銅に富む最終溶液中の塩化物濃度が上昇するからである。塩化物が多く存在するほど、下流工程において有害となり得る。これが、過酸化水素および亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤の組み合わせにより、銅に富む溶液中の塩化物含有量を減少させることができるが、それでも亜ヒ酸イオンの酸化を最大にし得る理由である。過酸化水素による酸化は、酸化挙動が直線的挙動を示す初期段階で行うべきであり、一方、亜塩素酸ナトリウムは、酸化を完了させ得る第2の酸化剤として使用することができる。
【0103】
XRD、ラマンおよび走査型電子顕微鏡などの物理的キャラクタリゼーション分析により、ヒ素沈殿中にスコロダイトが存在することが確認された。