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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】曲面状の立体ワッペン
(51)【国際特許分類】
   A44C 3/00 20060101AFI20231025BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231025BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
A44C3/00
B32B27/00 E
B32B27/00 M
A41D27/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022140480
(22)【出願日】2022-09-05
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】391015627
【氏名又は名称】日本ダム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079234
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 彰夫
(72)【発明者】
【氏名】木越 大介
(72)【発明者】
【氏名】西 達也
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-227097(JP,A)
【文献】特開2012-237074(JP,A)
【文献】特開2001-109382(JP,A)
【文献】特開平7-67706(JP,A)
【文献】特開昭61-25502(JP,A)
【文献】特開2003-159898(JP,A)
【文献】特開2002-254897(JP,A)
【文献】特開2015-36201(JP,A)
【文献】登録実用新案第3047351(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 3/00
B32B 27/00
A41D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワッペン熱接着温度で熱収縮を発生しない表面の図柄層と、該図柄層の下に設けた中間ホットメルト層と、該中間ホットメルト層を介して積層する樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの下に設けた下方ホットメルト層とを有し、樹脂フィルムは両ホットメルト層の融点に達するワッペン熱接着温度によって溶融しないけれども熱収縮を生じることにより、ワッペンの熱接着時において樹脂フィルムの熱収縮で図柄層の周縁が内側へ回り込んで湾曲状になる曲面状の立体ワッペン。
【請求項2】
図柄層は、織地、編地、不織布、合成皮革布またはプラスチックシートである請求項1記載の立体ワッペン
【請求項3】
樹脂フィルムは厚みが30~500μmであり、両ホットメルト層の融点に達する100~150℃で熱収縮を発生する請求項1記載の立体ワッペン。
【請求項4】
樹脂フィルムは、柔軟性が高くて着用感を損ねにくいポリウレタン系フィルムであり、図柄層の周縁を湾曲させるために両ホットメルト層の融点に対応する熱収縮温度を有するポリウレタンフィルムを選択する請求項3記載の立体ワッペン。
【請求項5】
両ホットメルト層は厚みはそれぞれ50~200μmであり、その融点は100~150℃である請求項1記載の立体ワッペン。
【請求項6】
中間ホットメルト層は、図柄層および樹脂フィルムと接着相性のよいポリウレタン系であり、下方ホットメルト層は中間ホットメルト層よりも融点が高くて耐久性が優れている請求項5記載の立体ワッペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体感を有するので意匠性が高く、且つ使用時に剥がれにくくて耐久性が優れている曲面状の立体ワッペンに関する。
【背景技術】
【0002】
布製ワッペンやエンブレムは緻密で美しい刺繍製品であり、ゴルフウェア、サッカーウェアや野球ユニフォームなどに貼着する。一般に刺繍製品はコスト高であるため、安価な樹脂製ワッペンを代用することが多い。樹脂製ワッペンは、凹凸感のある多色図柄になると製造工程が複雑化して製造コストがアップする。また、樹脂製ワッペンは、接着対象の衣類と比べて手触り、伸縮性や柔軟性などが悪くなりやすく、樹脂製ワッペンの縁が使用時に剥がれたり、該ワッペンの縫い付け個所から衣類が損傷することが頻発する。
【0003】
既存の樹脂製ワッペンに対して、特開2009-15064号では、転写用ワッペンとして表面素材が布帛であり、布帛の裏面に熱接着フィルムを接着した後に、レーザー切断機によって所定の平面形状になるように溶断する。このワッペンの周縁部はレーザー切断機によって溶断されるのでほつれが生じることが少なく、レーザー切断機によって、布帛と熱接着フィルムの一体物を同時に溶断するので、該ワッペンが複雑な平面形状であっても、その周縁部まで熱接着フィルムが存在する。
【0004】
この反面、特開2009-15064号では、布帛の裏面に熱接着フィルムを接着した薄いワッペン素材をレーザー切断機で溶断し、これを吸引機上に載置して吸引することでワッペン素材の余剰片を取り除くため、該吸引機へ載置する前にワッペン本体がワッペン素材から脱離したり、吸引機への載置時にワッペン本体がずれたりする。得たワッペン本体はレーザー切断時に変形を生じ、接着後のワッペン平面形状が歪むこともある。一方、本出願人が提案した特開2015-25933号では、ベースシート付着のワッペン素材をレーザー切断機でベースシートまでハーフカットするので、レーザー切断機で溶断する前にワッペン本体がワッペン素材から脱離することがない。得たワッペン本体はレーザー切断時に変形せず、接着後の平面形状も正確である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-15064号公報
【文献】特開2015-25933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2015-25933号に開示の布製ワッペン基材は、弱粘着性を有する剥離可能なキャリアフィルムを有することにより、ワッペン本体を被着体上に貼着する際に、該キャリアフィルムで仮止めして正確に位置決めできる。特開2015-25933号に開示した製造法では、ロール状の帯状布からキャリアフィルム付きのワッペン基材の作成に至るまで手作業を無くすことで安価に製造できる。布帛ワッペン本体は、高速織機によって多数枚同時に織成されることにより、特開2009-15064号に開示の樹脂製ワッペンよりも安価である。
【0007】
しかしながら、特開2015-25933号に開示の布製ワッペンは、ワッペン本体の裏面に平面形状が一致した単一のホットメルト接着層が存在するだけであるので、ジャケットなどの被着体に接着した際に布帛製のワッペン本体は平坦のままであり、意匠性と美観が高くならないという課題がある。また、接着された布帛製のワッペン本体が平坦のままであると、洗濯や外部からの衝撃に対して剥離しやすいという問題があり、これは特開2009-15064号に開示の樹脂製ワッペンでも同様である。
【0008】
本発明は、従来のワッペンに関する問題点を改善するために提案されたものであり、意匠性が高く、従来の加工技術では再現しにくい曲面状の立体ワッペンを提供することを目的としている。本発明の他の目的は、洗濯時および外部からの衝撃によって剥離しにくい曲面状の立体ワッペンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における熱接着前のワッペン本体は、ワッペン熱接着温度で熱収縮を発生しない表面の図柄層と、該図柄層の下に設けた中間ホットメルト層と、該中間ホットメルト層を介して積層する樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの下に設けた下方ホットメルト層とを有する。樹脂フィルムは両ホットメルト層の融点であるワッペン熱接着温度で溶融しないけれども熱収縮を生じることにより、ワッペンの熱接着時において図柄層の周縁が内側へ回り込んで湾曲状になる。この図柄層は、織地、編地、不織布、合成皮革布またはプラスチックシートであると好ましい。
【0010】
本発明に係る立体ワッペンにおいて、好ましくは樹脂フィルムは厚みが30~500μmであり、両ホットメルト層の融点に達する100~150℃で熱収縮を発生する。この樹脂フィルムは、柔軟性が高くて着用感を損ねにくいポリウレタン系フィルムであり、図柄層の周縁を湾曲させるために両ホットメルト層の融点に対応する熱収縮温度を有するポリウレタンフィルムを選択すると好ましい。
【0011】
本発明に係る立体ワッペンにおいて、好ましくは両ホットメルト層は厚みはそれぞれ50~200μmであり、その融点は100~150℃である。中間ホットメルト層は、図柄層および樹脂フィルムと接着相性のよいポリウレタン系であり、下方ホットメルト層は中間ホットメルト層よりも融点が高くて耐久性が優れていると好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る曲面状の立体ワッペンは、被着体に熱接着する際に、図柄層の下の樹脂フィルムが溶融せず熱収縮だけを生じることにより、熱接着したワッペンにおいて図柄層の周縁が内側へ回り込んで湾曲状に立体的になり、表面図柄の意匠性がいっそう高く、従来の加工技術では再現しにくい外観形状となる。また、熱接着したワッペンにおける図柄層の周縁が内側へ回り込んで周端縁が密になることにより、洗濯時および外部からの衝撃によって剥離しにくい曲面状の立体ワッペンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る熱接着前のワッペン素材を示す概略断面図である。
図2】本発明に係る熱接着後の立体ワッペンの一例を示す概略断面図である。
図3】キャリアフィルムに貼着したワッペン素材の一例を示す平面図である。
図4】図柄層のジャガード生地、樹脂フィルムおよびベースシートの貼り合わせ工程を示す概略側面図である。
図5】レーザーカット後のワッペン積層体の一例を示す概略断面図である。
図6】キャリアフィルムを貼着したワッペン素材からベースシートを剥離し、さらにエンボスフィルムを貼着する状態を示す概略断面図である。
図7】立体ワッペンが熱接着されたジャケットを例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、熱接着前のワッペン素材1は、図1に示すように、通常、熱接着前には全体がほぼ同じ平面形状である図柄層2と、該図柄層の下に設けた中間ホットメルト層3と、該中間ホットメルト層を介して積層する樹脂フィルム5と、該樹脂フィルムの下に設けた下方ホットメルト層7とを有する。図2は被着体8に熱接着した立体ワッペン10を示し、図柄層2は両ホットメルト層3,7の融点に達するワッペン熱接着温度で熱収縮を殆ど発生しないけれども、樹脂フィルム5はワッペン熱接着温度で熱収縮を生じる。
【0015】
ワッペン素材1において図柄層2は、織地、編地、不織布、合成皮革布またはプラスチックシートなどからなり、枚葉で製造してもよく、長寸の生地を用いると自動的且つ連続的に製造できる。図柄層2として、織地はジャガード生地、ドビー生地、レピア生地であり、表面に図形9(図3参照)、記号、文字またはこれらの組み合わせなどのデザインをスクリーン印刷や刺繍などで形成すると好ましい。
【0016】
図柄層2の織地、編地、不織布などにおいて、使用繊維の種類は特に限定されることはない。基本的には、レーザーカットで裁断するためにポリエステルやナイロンなどの合成繊維であればよく、ほつれ問題を回避できるならば天然繊維、化学繊維、耐熱性繊維、炭素繊維、ガラス繊維なども使用可能である。
【0017】
図柄層2自体は、被着体8に熱接着した際に収縮しないことが好ましく、その際に該図柄層の下の樹脂フィルム5だけが熱収縮することにより、図2のようにワッペン10を立体的で曲面状の外観形状にできる。このため、図柄層2の素材に応じて、該図柄層に熱セットを強くまたは弱く施してあらかじめ熱収縮させておき、被着体8への熱接着時には殆ど熱収縮させないことが望ましい。
【0018】
図柄層2の下の樹脂フィルム5は、被着体8に熱接着した際に両ホットメルト層3,7の溶融温度で熱収縮し、これによって図柄層2の周縁を内側へ湾曲させる(図2参照)。一般に、樹脂フィルム5について、熱収縮を生じる軟化点は100~150℃であり、その融点は軟化点よりも約20℃以上高いと好ましい。樹脂フィルム5は、熱可塑性で熱収縮する素材であれば図柄層2とホットメルト層3,7の素材に応じて使用可能になり、その素材としてポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィンなどが例示できる。
【0019】
樹脂フィルム5として、ポリウレタンフィルムは、エステル系、エーテル系、カーボネイト系のような適宜の組成を選択して適切な融点であると実用性の点から有効であり、柔軟性が高くて立体ワッペン10の着用感を損ねにくい。このポリウレタンフィルムの厚みは30~500μmであると好ましく、厚みが30μm未満であると被着体8に熱接着した際に図柄層2の周縁が湾曲しにくくなり、500μmを越えると立体ワッペン10が硬くなって美観上も良くならない。ポリウレタンフィルムの厚みは、通常、約200μmであれば一般的に好適である。
【0020】
樹脂フィルム5は一般的に平坦であるけれども、スクリーン印刷などで樹脂フィルム自体の表面に凹凸を形成することも可能である。樹脂フィルム自体がその表面に凹凸を有するならば、熱接着時に用いるプレス型にも同様の凹凸面を設けると凹凸面を維持できるので好ましく、図柄層2もより変化に富むことになる。
【0021】
ホットメルト層3,7は、同一または異なるポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン、EVAなどからなる。ホットメルト層3,7の融点は、図柄層2へのダメージおよび樹脂フィルム5の熱収縮温度を考慮して、100~150℃であると好ましい。また、ホットメルト層3,7の厚みは、立体ワッペン10の良好な使用感、高い耐剥離性、耐洗濯性、耐ドライクリーニング性、柔軟性などを維持できるように50~200μmに定めると好ましい。
【0022】
中間ホットメルト層3には、通常、図柄層2の繊維および樹脂フィルム5との接着相性を考慮してポリウレタン系ホットメルト接着剤を用いると好ましい。また、下方ホットメルト層7には、通常、中間ホットメルト層3よりも融点の高いホットメルト接着剤を選択し、洗濯やタンブラー乾燥に耐性を有するものが好ましい。ホットメルト層3,7として、薄い接着剤フィルムを用いても、液状のホットメルト接着剤を樹脂フィルム5やベースシート12にコーティング、スクリーン印刷またはローラで塗布してもよい。
【0023】
図2から明らかなように、被着体8に熱接着した立体ワッペン10において、図柄層2は殆ど熱収縮しないけれども、該図柄層の下の樹脂フィルム5が相当に熱収縮することにより、ワッペン10において図柄層2の周縁が内側へ回り込んで湾曲状に立体的になり、表面の図柄の意匠性がいっそう高く、従来の加工技術では再現しにくい曲面状の外観形状となる。また、熱接着したワッペン10における図柄層の周縁が内側へ回り込んで周端縁が密になることにより、洗濯時および外部からの衝撃によって剥離しにくくなる。
【実施例1】
【0024】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。図柄層2としてジャガード織機によって織成したジャガード生地15を用い、該生地の表面にスクリーン印刷によって図形9(図3参照)や文字を設けたエンブレム調の模様を多数形成する。縦および横方向に連続模様が並んだジャガード生地15は、別のレーザーカッターで正確な幅を有する長寸体に裁断してからロール14に巻く。
【0025】
図4において、中間ホットメルト接着層3を設けた樹脂フィルム5はロール16に巻き、下方ホットメルト接着層7を設けたベースシート12はロール18に巻く。ベースシート12は厚さが200μmの市販の離型紙である。樹脂フィルム5は、厚さ200μmのエステル系またはエーテル系ポリウレタンフィルムであり、両ホットメルト3,7層の溶融温度である150℃で熱収縮を生じ、その融点は180℃である。
【0026】
ホットメルト層3,7はともに厚さ70μmのポリウレタンからなり、中間ホットメルト接着層3の融点は約100℃、下方ホットメルト接着層7の融点は約120℃である。ホットメルト層3,7は、それぞれコーティングによって樹脂フィルム5またはベースシート12上に形成されている。ホットメルト層3,7は樹脂フィルム5の表裏面にそれぞれコーティングで形成してから、ベースシート12と重ね合わせることも可能である。
【0027】
ロール14のジャガード生地15は、加温ローラ20,20によって、ロール16から出た樹脂フィルム5およびロール18から出たベースシート12と貼り合わせる。加温ローラ20,20において、ホットメルト接着層3,7は、通常、融点以下の温度に加温されて軟化し、加圧によって樹脂フィルム5およびベースシート12と貼り合わせて長寸のワッペン積層体22を得る。
【0028】
長寸のワッペン積層体22は、レーザーヘッドを有するレーザー加工機(図示しない)に通し、図5から明らかなように個々の図形9(図3参照)の輪郭に沿ってハーフカットする。このレーザーヘッドは、公知のガルバノスキャナヘッドである。この際に、ワッペン積層体22におけるジャガード生地15つまり図柄層2、ホットメルト接着層3、樹脂フィルム5およびホットメルト接着層7は完全に図形ごとにカットされるけれども、ベースシート12は貫通カットされずに一体性を保っている。
【0029】
ハーフカット後のワッペン積層体22の表面には、図6において、常温で弱粘着性を有する接着剤付きのポリエステル製キャリアフィルム24を連続的に貼り合わせる。キャリアフィルム24付きのワッペン積層体22は、図6に示すように連続走行させながら、ロール26によってベースシート12および図形余剰部を直交方向へ引き出して除去し、並列のワッペン基材1を得る。所望に応じて、ベースシート12などを剥離した後に、ロール状の並列ワッペン基材1にローラ27を押し当ててエンボスフィルム28を貼り付ける。最終的に、ロール状の並列ワッペン基材1を個々の図形9ごとに矩形に寸断する(図5図6の一点鎖線参照)。
【0030】
ワッペン基材1には、図3に示すように、その表面に矩形状で透明のキャリアフィルム24およびその裏面に矩形状のエンボスフィルム28が存在し、エンボスフィルム28を剥がすと、該ワッペン基材の仮止めが可能である。一例として、熱接着作業時には、エンボスフィルム28を剥がし、ワッペン基材1をジャケット30(図7)の胸ポケットの位置に軽く押し当てて仮止めしてから加熱・加圧し、ついでキャリアフィルム24を剥離して立体ワッペン10を固着する。この熱接着条件は、温度を140℃、接着圧力を1kg/cm、接着時間を10秒に設定する。
【0031】
立体ワッペン10では、ジャケット30に熱接着する際に、図柄層2の下の樹脂フィルム5が140℃で溶融せずに熱収縮だけを生じる。図2に示すように、立体ワッペン10において、樹脂フィルム5の熱収縮によって図柄層2の周縁が内側へ回り込んで湾曲状に立体的になり、図柄層2の意匠性がいっそう高くなり、従来の加工技術では再現しにくい外観形状となる。また、熱接着したワッペン10における図柄層2の周縁が内側へ回り込んで周端縁が密になることにより、洗濯時および外部からの衝撃によって剥離しにくい立体ワッペン10を得ることができる。
【実施例2】
【0032】
枚葉のワッペン素材を製造する場合には、矩形状のベースシート12を台上に載置して、フィルム状の下方ホットメルト層7、樹脂フィルム5、フィルム状の中間ホットメルト層3および図柄層2を順次重ね合わせる。ベースシート12は厚さが200μmの市販の離型紙である。
【0033】
図柄層2はポリエステル繊維の不織布であり、該不織布の表面に複数の文字と図形の組み合わせがスクリーン印刷されている。図柄層2には熱セットを施してあらかじめ熱収縮させている。また、樹脂フィルム5は厚さ200μmのエステル系またはエーテル系ポリウレタンフィルムであり、軟化点が100℃、融点が180℃である。
【0034】
中間ホットメルト層3には、厚さが80μmで融点100℃であるポリウレタン系ホットメルトフィルムを用い、下方ホットメルト層7には、厚さが80μmで融点110℃であるポリエステル系接着剤を用いる、下方ホットメルト層7は洗濯やタンブラー乾燥に耐性を有する。
【0035】
積層した図柄層2、中間ホットメルト層3、樹脂フィルム5、下方ホットメルト層7、ベースシート12を熱プレスによって一体的に貼り合わせる。この際の加熱温度は約120℃であり、ホットメルト層3,7は、融点以上の温度に加温されて溶融し、加圧によって図柄層2と樹脂フィルム5および該樹脂フィルムとベースシート12を接着する。
【0036】
得た積層シートは、レーザー加工機(図示しない)に通して図形9の輪郭ごとにハーフカットされ、この際に積層シートの各層は完全にカットされ、さらにベースシート12は完全カットされても、貫通カットされずに一連性を保っていてもよい。次に、ベースシート12をハーフカットした場合には、図形外のフェルト残余部を剥離・除去し、該ベースシートを図柄層2ごとに寸断するとワッペン素材1を得る。
【0037】
ワッペン基材1は、熱接着作業時にベースシート12を剥がし、ワッペン基材1をジャケット30などの被着体8の所定の位置に軽く押し当てて仮止めしてから加熱・加圧して立体ワッペン10を固着する。この熱接着条件は、温度を140℃、接着圧力を1kg/cm、接着時間を10秒に設定する。
【0038】
立体ワッペン10では、被着体8に熱接着する際に、図柄層2の下の樹脂フィルム5が140℃で溶融せずに熱収縮だけを生じる。立体ワッペン10において、樹脂フィルム5の熱収縮によって図柄層2の周縁が内側へ回り込んで湾曲状に立体的になり、図柄層2の意匠性がいっそう高くなる。また、熱接着したワッペン10における図柄層2の周縁が内側へ回り込んで周端縁が密になる。
【符号の説明】
【0039】
1 ワッペン素材
2 図柄層
3 中間ホットメルト層
5 樹脂フィルム
7 下方ホットメルト層
8 被着体
10 立体ワッペン
【要約】
【課題】
立体感を有するので意匠性が高く、且つ使用時に剥がれにくくて耐久性が優れている曲面状の立体ワッペンを提供する。
【解決手段】
ワッペン熱接着温度で熱収縮を発生しない表面の図柄層2と、該図柄層の下に設けた中間ホットメルト層3と、該中間ホットメルト層を介して積層する樹脂フィルム5と、該樹脂フィルムの下に設けた下方ホットメルト層7とを有し、樹脂フィルム5は両ホットメルト層3,7の融点に達するワッペン熱接着温度によって溶融しないけれども熱収縮を生じることにより、ワッペンの熱接着時において樹脂フィルム5の熱収縮で図柄層2の周縁が内側へ回り込んで湾曲状になる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7