(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】有限空間の空気安定性のための熱的快適換気及び汚染物質制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20231025BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F7/08 Z
(21)【出願番号】P 2022574699
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 CN2020131617
(87)【国際公開番号】W WO2022000965
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】202010629312.4
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517439029
【氏名又は名称】湖南大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】弁理士法人井上国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲きょう▼光彩
(72)【発明者】
【氏名】▲とう▼暁瑞
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-169918(JP,A)
【文献】特開2009-186040(JP,A)
【文献】特開2002-22220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有限空間の空気安定性のための熱的快適換気及び汚染物質制御方法であって、温度勾配測定システムを設計し、該システムによって有限空間内の様々な高さの温度データを取得し、その温度勾配値を計算することにより、有限空間内の空気安定性作業条件、即ち安定型、中性型及び不安定型を判断し、安定型は噴流拡散分散過程を抑制し、不安定型は噴流拡散分散過程を加速し、中性型の噴流拡散分散に対する影響は安定型と不安定型との間にあり、前記温度勾配測定システムは、有限空間内に1本又は複数本の温度測定装置ロッドを適切な方式で、
梅の花の形に配置し、各測定ロッドで高さ方向に沿って等距離で複数の
温度測定点を取り、温度自己計測器を利用して温度勾配測定を行い、温度勾配の計算式は、
であり、
式中、Tは各高さの温度値であり、ケルビンであり、∇Tは温度勾配であり、単位はケルビン/メートルであり、ΔTは部屋の上下表面の温度差、又は考慮されるある流れ層の上下の温度差であり、単位はケルビンであり、Lは部屋の高さであり、単位はメートルであるという有限空間の安定性作業条件を判断するステップAと、
流出空間の大きさに応じて、
流体の流れが自由噴流であるか又は拘束噴流であるかを判断し、本発明で提案する噴流軌跡の相関式に従って噴流軌跡を予測し、慣性停滞現象が発生するか否かを判断し、前記噴流軌跡の相関式は、
ここで、
、
であり、
式中、Arは無次元基準数アルキメデス数で、重力と粘性力の比を示し、Gcは発明者が提案した無次元基準数Gc数で、浮力と慣性力の垂直成分の比を示し、xは噴流の長さであり、単位はメートルであり、Snは無次元開始セグメントの噴流のコア長さであり、Sendは無次元噴流減衰の最大距離であり、ν0は噴流の初速度であり、単位はメートル/秒であり、ν1は噴流の開始セグメントのコア速度(ν1=0.9ν0)であり、単位はメートル/秒であり、ν2は噴流が最大距離まで減衰する時の速度であり、人体の健康のニーズを考慮して、ν2=0.1メートル/秒を取ることができ、他の産業又は特定の要件の場合はプロセス条件のニーズによって決定することができ、完全な自由噴流である場合に(1-0.99)ν0を取ることができ、タバコの吸い殻、薫香、藁
のうちの何れかの材料の燃焼初速度は、浮力を駆動力、即ち作用圧力とする方法を参照して決定することができ、yは噴流軸心の縦方向の距離であり、単位はメートルであり、αは噴流の偏向角度であり、単位は度であり、d0はノズルの直径であり、単位はメートルであり、gは垂直方向の加速度であり、単位はメートル/秒の2乗であり、ν0は噴流の初速度であり、単位はメートル/秒であり、αは乱流係数であり、Teは周囲ガスの温度であり、単位はケルビンであり、T0は噴流の温度であり、単位はケルビンであり、ΔT0は噴流と周囲環境との温度差であり、単位はケルビンであり、ΔTは部屋の上下表面の温度差、又は考慮されるある流れ層の上下の温度差であり、単位はケルビンであり、Lは部屋の高さであり、単位はメートルであり、C、C1、C2は定数であり、実験又は数値方法によって較正することができ、Cを最初に1に設定することができ、2次元数値シミュレーションの比較分析に従って、それぞれC1、C2を0.214、0.115に予備的に推奨することができるという噴流のタイプを判断し、噴流の流れ方向を予測するステップBと、
ステップA~Bで計算されたパラメータと噴流軌跡に従って、放射空調方式、室内排気方式及び排気口の選択位置を最適化制御することにより、換気方式の合理的な利用を実現するという換気方式を最適化制御するステップCとを特徴とする有限空間の空気安定性のための熱的快適換気及び汚染物質制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有限空間の空気安定性のための熱的快適換気及び汚染物質制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
室内空気汚染とは、空気中の1種又は複数種の物質の性質、濃度、及び室内人員の暴露持続時間が一定の程度に達し、室内人員に一連の不適応症状を引き起こす現象である。これは、粉塵、煙塵、微生物、ウイルス(新型コロナウイルス、SARS、MERSウイルス)などの有害な物質を放出し得る室内の汚染源の存在に起因し得る。室内空気の気流組織パターンは、空気中の汚染物質の流れ及び拡散方向を大きく決定する。室内の気流組織形式は、主に換気方式によって実現される。室内換気方式の不適切な選択も、室内汚染を悪化させ得る。工場では、エンジン燃焼室も機能する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
暖房換気空調では、夏は冷気を送って室温を下げ、冬は熱気を送って室温を上げる。冷気降温と熱気暖房は、噴流自体の温度と周囲媒体の温度に差が生じることが多い。このような周囲媒体の温度と等しくない噴流は、温度差噴流と呼ばれる。噴流自体が受ける浮力と重力はアンバランスであるため、下向き又は上向きに曲がる。その軌跡のずれの程度は、アルキメデス数(Ar数)に関係している。しかし、Ar数は、噴流と周囲環境との温度差がその運動軌跡に与える影響のみを考慮してるが、流体領域において、垂直温度勾配が噴流の運動軌跡にも影響を与えることを考慮していない。有限空間の空気安定性によれば、流体領域の垂直温度勾配が正である場合(安定型)、噴流はその元の慣性を保持し、その主流方向に沿って運動する。流体領域の垂直温度勾配が負である場合(不安定型)、噴流の初期慣性力は環境における強い対流によって破壊されやすいため、その運動軌跡が主流方向から逸脱し、拡散面積がより広くなる。流体領域内に垂直温度勾配がない場合(中性型)、噴流の運動軌跡の特徴は安定型と不安定型との間にある。有限空間の空気安定性が室内気流組織の表現形式に与える影響は、無次元基準数Gc数によって反映することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、有限空間の空気安定性のための熱的快適換気及び汚染物質制御方法を提供することを目的とする。有限空間において、室内温度勾配状況に基づいてどの空気安定性作業条件に属するかを判断し、噴流拡散分散過程及び汚染物質拡散規則を得る。さらに、汚染物質排出方式に基づいてその流れ形式を判断し、有限空間の安定性に基づく噴流式に従って、噴流のタイプを判断し、汚染物質の方向を予測することにより、有限空間の換気設計指導方法を提供し、汚染物質の効率的な排出を保証し、室内の空気の質と人体の健康のニーズを満たす。
【0005】
本発明の技術的解決手段は、有限空間の空気安定性のための熱的快適換気及び汚染物質制御方法であり、
温度勾配測定システムを設計し、該システムによって有限空間内の様々な高さの温度データを取得し、その温度勾配値を計算することにより、有限空間内の空気安定性作業条件、即ち安定型、中性型及び不安定型を判断し、安定型は噴流拡散分散過程を抑制し、不安定型は噴流拡散分散過程を加速し、中性型の噴流拡散分散に対する影響は安定型と不安定型との間にあり、前記温度勾配測定システムは、有限空間内に1本又は複数本の温度測定装置ロッドを適切な方式で、例えば梅の花の形に配置し、各測定ロッドで高さ方向に沿って等距離で複数の温度測定点、例えば5つを取り、温度自己計測器を利用して温度勾配測定を行い、温度勾配の計算式は、
であり、
式中、Tは各高さの温度値で、ケルビンであり、∇Tは温度勾配であり、単位はケルビン/メートルであり、ΔTは部屋の上下表面の温度差、又は考慮されるある流れ層の上下の
温度差であり、単位はケルビンであり、Lは部屋の高さであり、単位はメートルであると
いう有限空間の安定性作業条件を判断するステップAと、
流出空間の大きさに応じて、該流体の流れが自由噴流であるか又は拘束噴流であるかを判断し、本発明で提案する噴流軌跡の相関式に従って噴流軌跡を予測し、慣性停滞現象が発生するか否かを判断し、前記噴流軌跡の相関式は、
であり、
ここで、
、
であり、
式中、Arは無次元基準数アルキメデス数で、重力と粘性力の比を示し、Gcは発明者が提案した無次元基準数Gc数で、浮力と慣性力の垂直成分の比を示し、xは噴流の長さであり
、単位はメートルであり、S
nは
無次元開始セグメントの噴流のコア長さで
あり、S
endは
無
次元噴流減衰の最大距離
であり、ν
0は噴流の初速度であり、単位はメートル/秒であり
、ν
1は噴流の開始セグメントのコア速度(ν
1=0.9ν
0)であり、単位はメートル/秒で
あり、ν
2は噴流が最大距離まで減衰する時の速度であり、人体の健康のニーズを考慮し
て、ν
2=0.1メートル/秒を取ることができ、他の産業又は特定の要件の場合はプロセス
条件のニーズによって決定することができ、完全な自由噴流である場合に(1-0.99
)ν
0を取ることができ、タバコの吸い殻、薫香、藁等の材料の燃焼初速度は、浮力を駆
動力、即ち作用圧力とする方法を参照して決定することができ、yは噴流軸心の縦方向の
距離であり、単位はメートルであり、αは噴流の偏向角度であり、単位は度であり、d
0はノズルの直径であり、単位はメートルであり、gは垂直方向の加速度であり、単位はメー
トル/秒の2乗であり、ν
0は噴流の初速度であり、単位はメートル/秒であり、αは乱
流係数であり、T
eは周囲ガスの温度であり、単位はケルビンであり、T
0は噴流の温度であり、単位はケルビンであり、ΔT
0は噴流と周囲環境との温度差であり、単位はケルビンであり、ΔTは部屋の上下表面の温度差、又は考慮されるある流れ層の上下の温度差であり
、単位はケルビンであり、Lは部屋の高さであり、単位はメートルであり、C、C
1、C
2は定数であり、実験又は数値方法によって較正することができ、Cを最初に1に設定すること
ができ、2次元数値シミュレーションの比較分析に従って、それぞれC
1、C
2を0.214、0.115に予備的に推奨することができるという噴流のタイプを判断し、噴流の流れ方向を予測するステップBと、
ステップA~Bで計算されたパラメータと噴流軌跡に従って、放射空調方式、室内排気方式及び排気口の選択位置を最適化制御することにより、換気方式の合理的な利用を実現するという換気方式を最適化制御するステップCとを特徴とする。
【0006】
技術的解決手段のステップCに基づき、換気方式の最適化制御は次のようにアドバイスされる。
夏の床放射冷房又は冬の放射天井暖房(熱的快適性のニーズを満たす)の場合、安定型の状況が発生しやすく、この時、温度成層の制限作用により、汚染物質は一定の高さに集
まり、主流方向に沿って移動し、このような状況では、全体換気は汚染物質の迅速な希釈と排出に不都合であり、エネルギー消費量が大きい。この時、局所換気設計又は指向性換気設計を優先し、即ち、床放射冷房期間+局所又は指向性換気気流組織形式又は天井放射暖房期間+局所又は指向性換気気流組織形式を使用し、汚染源の位置及び汚染源の流れ方向に基づき、換気口の配置を合理的に設計する。上へ移動する場合、頂部に排気口を設置する必要があり、水平方向に沿って移動する場合、水平箇所に排気口を設計する。部屋に放射天井のみが取り付けられる場合、夏は放射冷天井が不安定型の状況を形成しやすく、部屋は、汚染物質を効果的に排出するための全体換気に適する。しかし、冬の放射暖房の状況は安定型の状況を形成し、冬に指向性換気を行うように、この時、事前にステップA~Bに基づいて汚染物質の軌跡を予測し、換気口を予め残す必要がある。不安定型及び中性型は全体換気に適し、夏に放射冷房、冬に床暖房を使用する部屋は、上冷下熱の温度分布状況を形成する。この時、室内は不安定型の状況であり、室内の対流運動が強く、汚染物質の分散希釈過程が加速され、全体換気方式を使用して汚染物質を排出することをアドバイスし、即ち、天井冷放射期間+全体換気の室内気流組織形式又は地上放射暖房期間+全体換気設計気流組織形式を形成し、任意の上面又は地上放射空調を使用しない場合に全体換気設計気流組織形式を使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明はまた、噴流と周囲環境の温度、及び流体領域の上下境界面の温度差による噴流の運動軌跡への影響を考慮し、両者の噴流に対する作用効果はそれぞれAr数及びGc数(Gc数は浮力と慣性力の垂直成分の比である)で示される。有限空間の空気安定性の定義では、噴流希釈過程は分散拡散希釈過程であり、不安定型は汚染物質の拡散分散を加速でき、室内の汚染物質を排出し、室内気流組織の死角を減少させることに有益である。安定型は拡散分散過程を抑制するため、汚染物質の堆積を引き起こす。有限空間の空気安定性の定義に基づいて、温度差噴流軌跡の予測方法を修正し、温度差噴流軌跡を確実かつ正確に予測することができる。噴流の温度、周囲環境の温度及び流体の上下表面の温度を変えることで、様々な噴流運動を得ることができ、噴流軌跡を正確に予測することができる。これを拘束噴流、自由噴流及び停滞現象に対する新しい基準とする。噴流の長さが有限空間の寸法より大きい場合、噴流は拘束噴流である。噴流の長さが有限空間の寸法より小さい場合、噴流は自由噴流である。室内の障害物と汚染源との間の距離が噴流の長さより小さい場合、噴流軌跡に慣性停滞現象が発生する。噴流軌跡を通じて、空間内の排気方式及び排気口の選択位置をアドバイスすることにより、換気方式の合理的な利用を実現し、エネルギーを節約し、汚染物質を効率的に除去する。本発明は、空気環境において室内の換気設計を指導することに有益であり、水環境において工場の汚水排出を指導することに有益であり、各種の環境保護装置の内部、燃焼装置の内部の最適化に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例における様々な有限空間の空気安定性作業条件での汚染物質の噴流軌跡である。
【
図2】安定型作業条件での指向性換気の概略図である。
【
図3】中性型作業条件での全体換気の概略図である。
【
図4】不安定型作業条件での全体換気の概略図である。
【0009】
図中:1 放熱板、2 給気ダクト、3 給気口、4 排気ダクト、5 排気口、6 垂直方向温度勾配測定システムの配置方式、7 温度測定プローブ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、実施例及び図面を参照しながら本発明及びその具体的な実施形態をさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明は、
温度勾配測定システムを設計し、該システムによって有限空間内の様々な高さの温度データを取得し、その温度勾配値を計算することにより、有限空間内の空気安定性作業条件、即ち安定型、中性型及び不安定型を判断し、安定型は噴流拡散分散過程を抑制し、不安定型は噴流拡散分散過程を加速し、中性型の噴流拡散分散に対する影響は安定型と不安定型との間にあり、前記温度勾配測定システムは、有限空間内に1本又は複数本の温度測定装置ロッドを適切な方式で、例えば梅の花の形に配置し、各測定ロッドで高さ方向に沿って等距離で複数の温度測定点、例えば5つを取り、温度自己計測器を利用して温度勾配測定を行い、温度勾配の計算式は、
であり、
式中、Tは各高さの温度値であり、ケルビンであり、∇Tは温度勾配であり、単位はケルビン/メートルであり、ΔTは部屋の上下表面の温度差、又は考慮されるある流れ層の上
下の温度差であり、単位はケルビンであり、Lは部屋の高さであり、単位はメートルであ
るという有限空間の安定性作業条件を判断するステップAと、
流出空間の大きさに応じて、該流体の流れが自由噴流であるか又は拘束噴流であるかを判断し、本発明で提案する噴流軌跡の相関式(下式(2)、(3)、(4)を参照)に従って噴流軌跡を予測し、慣性停滞現象が発生するか否かを判断し、
技術的解決手段の特徴Bに基づき、噴流軌跡の相関式は、
であり、
ここで、
、
であり、
式中、Arは無次元基準数アルキメデス数で、重力と粘性力の比を示し、Gcは発明者が提案した無次元基準数Gc数で、浮力と慣性力の垂直成分の比を示し、xは噴流の長さであり
、単位はメートルであり、S
nは
無次元開始セグメントの噴流のコア長さで
あり、S
endは
無
次元噴流減衰の最大距離で
あり、ν
0は噴流の初速度であり、単位はメートル/秒であり
、ν
1は噴流の開始セグメントのコア速度(ν
1=0.9ν
0)であり、単位はメートル/秒で
あり、ν
2は噴流が最大距離まで減衰する時の速度であり、人体の健康のニーズを考慮し
て、ν
2=0.1メートル/秒を取ることができ、他の産業又は特定の要件の場合はプロセス条件のニーズによって決定することができ、完全な自由噴流である場合に(1-0.99)ν
0を取ることができ、タバコの吸い殻、薫香、藁等の材料の燃焼初速度は、浮力を駆
動力(作用圧力)とする方法を参照して決定することができ、yは噴流軸心の縦方向の距
離であり、単位はメートルであり、αは噴流の偏向角度であり、単位は度であり、d
0はノズルの直径であり、単位はメートルであり、gは垂直方向の加速度であり、単位はメート
ル/秒の2乗であり、ν
0は噴流の初速度であり、単位はメートル/秒であり、αは乱流
係数であり、T
eは周囲ガスの温度であり、単位はケルビンであり、T
0は噴流の温度であり、単位はケルビンであり、ΔT
0は噴流と周囲環境との温度差であり、単位はケルビンであり、ΔTは部屋の上下表面の温度差(又は考慮されるある流れ層の上下の温度差)であり
、単位はケルビンであり、Lは部屋の高さであり、単位はメートルであり、C、C
1、C
2は定数であり、実験又は数値方法によって較正することができ、Cを最初に1に設定すること
ができ、2次元数値シミュレーションの比較分析に従って、それぞれC
1、C
2を0.214、0.115に予備的に推奨することができるという噴流のタイプを判断し、噴流の流れ方向を予測するステップBと、
ステップA~Bで計算されたパラメータと噴流軌跡に従って、放射空調方式、室内排気方式及び排気口の選択位置を最適化制御することにより、換気方式の合理的な利用を実現するという換気方式を最適化制御するステップCとを特徴とする。
【0012】
技術的解決手段のステップCに基づき、換気方式の最適化制御は次のようにアドバイスされる。
夏の床放射冷房又は冬の放射天井暖房(熱的快適性のニーズを満たす)の場合、安定型の状況が発生しやすく、この時、温度成層の制限作用により、汚染物質は一定の高さに集まり、主流方向に沿って移動し、このような状況では、全体換気は汚染物質の迅速な希釈と排出に不都合であり、エネルギー消費量が大きい。この時、局所換気設計又は指向性換気設計を優先し、即ち、床放射冷房期間+局所又は指向性換気気流組織形式又は天井放射暖房期間+局所又は指向性換気気流組織形式を使用し、汚染源の位置及び汚染源の流れ方向に基づき、換気口の配置を合理的に設計する。上へ移動する場合、頂部に排気口を設置する必要があり、水平方向に沿って移動する場合、水平箇所に排気口を設計する。部屋に放射天井のみが取り付けられる場合、夏は放射冷天井が不安定型の状況を形成しやすく、部屋は、汚染物質を効果的に排出するための全体換気に適する。しかし、冬の放射暖房の状況は安定型の状況を形成し、冬に指向性換気を行うように、この時、事前にステップA~Bに基づいて汚染物質の軌跡を予測し、換気口を予め残す必要がある。不安定型及び中性型は全体換気に適し、夏に放射冷房、冬に床暖房を使用する部屋は、上冷下熱の温度分布状況を形成し、この時、室内は不安定型の状況であり、室内の対流運動が強く、汚染物質の分散希釈過程が加速され、全体換気方式を使用して汚染物質を排出することをアドバイスし、即ち、天井冷放射期間+全体換気の室内気流組織形式又は地上放射暖房期間+全体換気設計気流組織形式を形成し、任意の上面又は地上放射空調を使用しない場合に全体換気設計気流組織形式を使用することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、長沙市のあるオフィスビルを例として説明する。オフィスの寸法は、長さSが
4.5メートル(x方向)、幅Wが4メートル(y方向)、高さLが2.4メートル(z方向
)である。室内の主な汚染源は、室内のオフィススタッフの呼気と見なすことができる。口部は、直径d0が0.012メートルの円形の開孔部と見なすことができる。呼気温度T0は307ケルビンである。呼気速度v0は3.9メートル/秒である。水平方向の呼気であるため、αは0度を取る。乱流係数aは0.076を取る。本例では、定数Cは一時的に1を取る。垂直方向の加速度gは9.8メートル/秒の2乗を取り、オフィス内の温度は放射板1によって制御され、換気システムは給気ダクト2、給気口3、排気ダクト4及び排気口5で構成され、オフィスの底部温度、頂部温度及び様々な高さの温度データは室内温度勾配測定システム6における温度測定プローブ7に基づいて得られ、計算して得られた温度勾配値に基づいて、それが属する安定性作業条件を判断する。
【0014】
1)安定型作業条件:高さの増加に伴って、室内空気の温度が上昇し、即ち、室内空気の温度の垂直減少率が0より大きい。測定された空気温度は底部が295ケルビンであり、頂部が301ケルビンであり、この時、噴流と周囲環境との温度差ΔT
0は9ケルビンを取ることができ(噴流温度は呼気温度T
0で、307ケルビンであり、周囲環境温度Teは部屋内部の上下表面の温度の平均値、298ケルビンを取り)、したがって、
、
を得ることができ、
式(2)に代入すると、
が得られ、
得られた噴流軌跡は
図1に示すとおりであり、この時、該作業条件では、x
2、x
3は噴流長さの2乗又は3乗の演算値で、共に噴流偏向長さyと噴流長さxとの関係を示し、Ar、Gc及び噴流長さxを考慮する各要素の間の相互関係である。
式(3)に代入すると、
が得られ、
式(4)に代入すると、
が得られ、
この時、s
end>S、噴流は拘束噴流であり、ここで、s
endは
無次元噴流減衰の最大距離
で
あり、Sはオフィスの長さであり、単位はメートルであり、この安定した作業条件では、局所換気設計(指向性換気)を優先し、汚染源の位置及び汚染源の流れ方向に基づき、作業ステーションへの給気を設計し、頂部に排気口を設計する。具体的な配置は
図2に示すとおりである。
【0015】
2)中性型作業条件:高さの増加に伴って、室内空気の温度が変化せず、即ち、室内空気の温度の垂直減少率は基本的に0に等しい。測定された室内空気温度は297ケルビンであり、この時、噴流と周囲環境との温度差ΔT
0は10ケルビンを取ることができ(噴流温度は呼気温度T
0で、307ケルビンであり、周囲環境温度T
eは部屋内部の上下表面の温度の平均値、297ケルビンを取り)、したがって、
、
を得ることができ、
式(2)に代入すると、
が得られ、
得られた噴流軌跡は
図1に示すとおりであり、この時、該作業条件では、x
2、x
3は噴流長さの2乗又は3乗の演算値で、共に噴流偏向長さyと噴流長さxとの関係を示し、Ar、Gc及び噴流長さxを考慮する各要素の間の相互関係である。
式(3)に代入すると、
が得られ、
式(4)に代入すると、
が得られ、
この時、S
end>S、噴流は
無次元拘束噴流であり、ここで、S
endは噴流減衰の最大距離
で
あり、Sはオフィスの長さであり、単位はメートルであり、中性型作業条件は全体換気
に適し、具体的な配置は
図3に示すとおりである。
【0016】
3)不安定型作業条件:高さの増加に伴って、室内空気の温度が逆に低下し、即ち、室内空気の温度の垂直減少率は0より小さい。測定された空気温度は底部が298ケルビンであり、頂部が293ケルビンである。この時、噴流と周囲環境との温度差ΔT
0は11.5ケルビンを取ることができ(噴流温度は呼気温度T
0で、307ケルビンであり、周囲環境温度T
eは部屋内部の上下表面の温度の平均値295.5ケルビンを取る)、
、
を得ることができ、
式(2)に代入すると、
が得られ、
得られた噴流軌跡は
図1に示すとおりであり、この時、該作業条件では、x
2、x
3は噴流長さの2乗又は3乗の演算値で、共に噴流偏向長さyと噴流長さxとの関係を示し、Ar、Gc及び噴流長さxを考慮する各要素の間の相互関係である。
式(3)に代入すると、
が得られ、
式(4)に代入すると、
が得られ、
この時、s
end>S、噴流は拘束噴流であり、ここで、s
endは
無次元噴流減衰の最大距離
であり、Sはオフィスの長さであり、単位はメートルであり、不安定な作業条件下では、
室内の対流運動が強く、全体換気に適し、具体的な配置は
図4に示すとおりである。
【0017】
噴流減衰の最大距離を例とし、空間が中性型にある場合、Send=26.822メートルに対応する安定型及び不安定型における最大減衰距離は、中性型における最大噴流減衰距離より長く又は短く、それぞれ27.414メートル、26.821メートルであり、有限空間の空気安定性の特徴に合致する。
【0018】
以上は本発明の具体的な実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではなく、本発明の精神及び原則内で行われた任意の修正、同等の置換、改善等は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0019】
工業作業場、データルーム、一般的な部屋及び病院などの場所では、夏の床放射冷房又は冬の放射天井暖房、又は自然の状況で地面温度が室内の気温及び天井より低い場合、安定型の状況が発生しやすく、この時、温度成層の制限作用により、汚染物質は一定の高さに集まり、主流方向に沿って移動し、このような状況では、全体換気は汚染物質の迅速な希釈と排出に不都合であり、エネルギー消費量が大きい。この時、局所換気設計又は指向性換気設計を優先し、即ち、床放射冷房期間+局所又は指向性換気気流組織形式又は天井放射暖房期間+局所又は指向性換気気流組織形式を使用し、汚染源の位置及び汚染源の流れ方向に基づき、換気口の配置を合理的に設計する。汚染物質が上へ移動する場合、頂部に排気口を設置する必要があり、水平方向に沿って移動する場合、水平箇所に排気口を設計する。部屋に放射天井のみが取り付けられる場合、夏は放射冷天井が不安定型の状況を形成しやすく、部屋は、汚染物質を効果的に排出するための全体換気に適する。しかし、冬の放射暖房の状況は安定型の状況を形成し、冬に指向性換気を行うように、この時、事前にステップA~Bに基づいて汚染物質の軌跡を予測し、換気口を予め残す必要がある。不安定型及び中性型は全体換気に適し、夏に放射冷房、冬に床暖房を使用する部屋は、上冷下熱の温度分布状況を形成し、この時、室内は不安定型の状況であり、室内の対流運動が強く、汚染物質の分散希釈過程が加速され、全体換気方式を使用して汚染物質を排出することをアドバイスし、即ち、天井冷放射期間+全体換気の室内気流組織形式又は地上放射暖房期間+全体換気設計気流組織形式を形成し、任意の上面又は地上放射空調を使用しない場合に全体換気設計気流組織形式を使用することが好ましい。全体換気を使用したデータルームは、給気気流と部屋内の空気との混合を加速するために、不安定型の作業条件を使用することが好ましい。指向性換気が要求される室内建築、例えば病院の手術室では、部屋内で安定型作業条件を作ることを考慮する必要がある。