(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】運転適性検査プログラム、運転適性検査システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/18 20060101AFI20231025BHJP
G06Q 50/26 20120101ALI20231025BHJP
G09B 5/02 20060101ALI20231025BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
A61B5/18
G06Q50/26
G09B5/02
G09B19/00 H
(21)【出願番号】P 2023049489
(22)【出願日】2023-03-27
【審査請求日】2023-03-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523040598
【氏名又は名称】株式会社パルプランニング
(74)【代理人】
【識別番号】100215027
【氏名又は名称】留場 恒光
(72)【発明者】
【氏名】松本 義弘
(72)【発明者】
【氏名】宇崎 大成
(72)【発明者】
【氏名】岩田 博史
(72)【発明者】
【氏名】安田 和生
(72)【発明者】
【氏名】今泉 直行
(72)【発明者】
【氏名】小池 恵理子
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/131542(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/150916(WO,A1)
【文献】特開2006-158421(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0133412(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第101756705(CN,A)
【文献】特開2015-141536(JP,A)
【文献】特開2020-028319(JP,A)
【文献】特開2022-072024(JP,A)
【文献】警視庁,「認知機能検査の採点方法」,[online],2023年02月04日,インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20230204080108/https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ninti/saiten_r03.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
認知機能を測る少なくとも2種類以上の検査問題を出題する検査問題出題手段、
前記検査問題について受検者の解答入力を受け付ける解答入力受付手段、
前記解答入力の制限時間を計時する制限時間計時手段、
前記検査問題について受検者の得点を取得する得点取得手段、
記憶部にあらかじめ格納されている統計処理用データを用いて前記受検者の得点を統計処理し、換算後得点を算出する得点換算手段、および、
前記少なくとも2種類以上の検査問題のそれぞれの換算後得点に評価値算出用係数をかけたもの、の総和を用いることにより、少なくとも2以上の運転適性検査項目について評価値を算出する評価値算出手段、
として機能させ、
前記少なくとも2種類以上の検査問題が、
(1)上面視図である地図と、前記上面視図の所定位置における正面視に対応する正面視図と、前記所定位置に対応する選択肢を含む複数の選択肢と、を表示し、前記所定位置に対応する選択肢を受検者に解答させる認知地図問題、および、
(2)ある一定の関係にある少なくとも2以上の見本要素を備える見本と、各要素が各見本要素と同じ関係にある選択肢を含む複数の選択肢とを表示し、各要素が各見本要素と同じ関係にある選択肢を受検者に解答させる概念認知問題、を含み、
前記統計処理は、標準化または正規化であ
り、
前記少なくとも2以上の運転適性検査項目が、集中の持続、および、細かい点に気づく力、を含むことを特徴とする、
受検者の運転適性を検査するための運転適性検査プログラム。
【請求項2】
さらに、少なくとも受検者の運転特徴を含む受検者情報を登録する受検者情報登録手段、
前記受検者の得点を少なくとも含む運転適性検査結果と、前記受検者情報とを学習データとして学習する運転特徴学習手段、および、
受検者の得点を少なくとも含む運転適性検査結果を入力データとして当該受検者の運転特徴について定量化した値を出力する運転特徴推論手段、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の運転適性検査プログラム。
【請求項3】
学習済み機械学習モデルであって、
受検者の運転特徴と、認知機能を測る少なくとも2種類以上の検査問題における受検者の得点と、を学習データとして、
前記少なくとも2種類以上の検査問題における受検者の得点を、記憶部にあらかじめ格納されている統計処理用データにより統計処理して得るそれぞれの換算後得点に、評価値算出用係数をかけたものの総和を用いて算出する、少なくとも2以上の運転適性検査項目についての評価値と、前記運転特徴との関係を学習し、
認知機能を測る少なくとも2種類以上の検査問題における受検者の得点を入力データとして、当該得点を、記憶部にあらかじめ格納されている統計処理用データにより統計処理して得るそれぞれの換算後得点に、評価値算出用係数をかけたものの総和を用いて算出する、少なくとも2以上の運転適性検査項目についての評価値を算出することで、当該受検者の運転特徴について定量化した値を出力するようコンピュータを機能させ
、
前記少なくとも2種類以上の検査問題が、
(1)上面視図である地図と、前記上面視図の所定位置における正面視に対応する正面視図と、前記所定位置に対応する選択肢を含む複数の選択肢と、を表示し、前記所定位置に対応する選択肢を受検者に解答させる認知地図問題、および、
(2)ある一定の関係にある少なくとも2以上の見本要素を備える見本と、各要素が各見本要素と同じ関係にある選択肢を含む複数の選択肢とを表示し、各要素が各見本要素と同じ関係にある選択肢を受検者に解答させる概念認知問題、を含み、
前記少なくとも2以上の運転適性検査項目が、集中の持続、および、細かい点に気づく力、を含むことを特徴とする、学習済み機械学習モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転適性検査プログラム、運転適性検査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車事故の原因の一つとして、運転者の認知機能低下が考えられる場合がある。
ここで「認知」とは、AI(Artificial Intelligence)などの認知科学や、認知症という用語などからわかるように、ただ知覚するだけでなく、知覚、思考し、判断する全般ことを指す。知能・知覚心理学の分野の中では、比較的新しい考え方であり、例えば高年齢者の運転技術の程度を知るために、認知機能が指標となっている。
【0003】
認知機能の低下は自分では気づきにくいこともあるため、運転者の認知機能を客観的に正しく測定する方法が求められる。自動車の運転者が自身の認知機能やその低下を正しく知ることができれば、事故の防止に役立つと考えられる。
よって、オンラインで気軽に受検できる、認知機能の測定を含む運転適性検査があれば、多くの運転者が自己の認知機能を把握することができ、事故防止のためにも好ましい。
【0004】
また、知能・知覚心理学の分野の中で比較的新しい「認知」に関する検査問題を運転適性検査に積極的に取り入れることにより、運転適性検査の品質向上を見込むことができる。
【0005】
このほか、運転適性検査をオンラインで実施でき、コンピュータが出題や制限時間の管理、採点を行うのであれば、自動車学校など、運転適性検査の提供機関にとっては手間が少なくなるという利点がある。また、結果の提供までの時間が短縮されるため、受検者にとってもメリットが大きい。
さらに、運転適性検査を受検者自身のスマートフォンで受けられるのであれば、運転適性検査の受検率は高くなり、ひいては自己の運転適性を正しく知る機会が多くなると考えられる。
【0006】
特許文献1には、ワーキングメモリーの働きの向上に寄与できるワーキングメモリートレーニング装置が開示されている。
【0007】
非特許文献1には、運転適性に関わる認知機能検査について掲載されている。ここでは、「手がかり再生」及び「時間の見当識」という2つの検査項目について説明されている。
また非特許文献2は、認知機能についてオンラインでチェックを受けられるサイトである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】警察庁、“認知機能検査について”、[online]、[2023年3月23日検索]、インターネット<URL:https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ninchi.html>
【文献】認知症ねっと、(監修者)広川 慶裕、“認知機能チェック”、[online]、[2023年3月23日検索]、インターネット<URL:https://info.ninchisho.net/check/ch20>
【0010】
しかしながら、特許文献1で開示されている文献は、ワーキングメモリーに関するものであるが、運転適性に関するものではなく、認知機能に関しての記述もない。
また非特許文献1、非特許文献2のいずれも、制限時間を計時する手段については記載がない。また、標準化や規格化といった、受検者の得点に対する統計処理について具体的な記載はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする課題は、受検者の認知機能を測定できる運転適性検査のオンラインでの実現である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、例えば以下の手段を採用している。
すなわち、コンピュータを、認知機能を測る検査問題を出題する検査問題出題手段、前記検査問題において受検者の解答入力を受け付ける解答入力受付手段、前記解答入力の制限時間を計時する制限時間計時手段、前記検査問題について受検者の得点を取得する得点取得手段、
記憶部にあらかじめ格納されている統計処理用データを用いて前記受検者の得点を統計処理し、換算後得点を算出する得点換算手段、および、
前記換算後得点を用いて、少なくとも1以上の運転適性検査項目について評価値を算出する評価値算出手段、として機能させ、
前記統計処理は、標準化または正規化であることを特徴とする、受検者の運転適性を検査するための運転適性検査プログラムを提供することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の運転適性検査プログラムによる運転適性検査処理は、認知機能を測る検査問題を出題し、その受検者の得点について適切な統計処理を施すことにより、複数の評価項目間の比較を可能にし、また、他者の評価結果との比較を可能にする。
【0014】
本発明の運転適性検査プログラムにより実現する運転適性検査システムは、認知機能の評価を含む運転適性検査をオンラインで提供することを可能にする。
「認知(する)力」を測定する問題を組み入れることによって、現代のニーズにより対応した評価結果を導出することができる。
【0015】
また、本発明の運転適性検査システムにより、受検者や検査機関における検査にかかる負担を減少する。より具体的には、採点時間の大幅な減少と採点精度の向上による受検者の利便性向上や、検査機関の問題管理等に係る負担の減少が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】運転適性検査システム1の概要を示す図(ネットワーク構成図)である。
【
図2】運転適性検査システム1の受検者情報登録画面を示す図である。
【
図3】運転適性検査システム1のログイン画面を示す図である。
【
図4】運転適性検査システム1の個人ページ画面を示す図である。
【
図5】運転適性検査システム1の検査開始画面を示す図である。
【
図7】ワーキングメモリー問題出題画面の記憶対象表示画面を示す図である。
【
図8】ワーキングメモリー問題出題画面の計算問題出題画面を示す図である。
【
図9】ワーキングメモリー問題出題画面の記憶対象入力画面を示す図である。
【
図10】概念認知問題(言葉)の出題画面を示す図である。
【
図11】概念認知問題(イラスト)の出題画面を示す図である。
【
図12】受検者情報登録処理を示すフローチャートである。
【
図14】認知地図問題出題処理を示すフローチャートである。
【
図15】ワーキングメモリー問題出題処理を示すフローチャートである。
【
図16】概念認知問題出題処理を示すフローチャートである。
【
図17】認知機能評価処理を示すフローチャートである。
【
図18】運転特徴学習処理を示すフローチャートである。
【
図19】運転特徴推論処理を示すフローチャートである。
【
図21】受検者端末20のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の各実施形態では、同一又は対応する部分については同一の符号を付して説明を適宜省略する場合がある。
また、以下に用いる図面は本実施形態を説明するために用いるものであり、実際の装置の構成やユーザーインターフェース(UI)、データベースなどとは異なる場合がある。
【0018】
(実施形態の概要)
本実施形態の概要について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態の運転適性検査プログラムP1による処理を行うシステム(以下「運転適性検査システム1」とする。)の概要を示す図(ネットワーク図)である。
運転適性検査プログラムP1を備えるサーバ10は、受検者に対し、オンラインで運転適性検査を提供する。
【0019】
本実施形態の運転適性検査システム1は、受検者に認知機能を測定するための検査問題を出題する。この認知機能を測定する検査問題として、認知地図問題、ワーキングメモリー問題、概念認知問題を出題する。
【0020】
各検査問題において、受検者の得点は、例えば標準化といった、統計処理がなされる。この統計処理により、運転検査システム1は、認知地図問題、ワーキングメモリー問題、そして概念認知問題など、種類の異なる複数の問題の結果から、受検者の運転適性を評価する各種運転適性評価項目について評価値を算出する。
運転適性評価項目のそれぞれは同じ標準化手法で標準化されることから、運転適性検査項目同士でも比較をすることができる。
さらに、この標準化により、種類の異なる運転適性評価項目から総合評価を算出する。
【0021】
また、本実施形態の運転適性検査システム1は、検査問題における受検者の解答による得点(ひいては運転適性評価項目の評価値)と、受検者の運転特徴についてのアンケートと、を紐づけて学習する機械学習モデル(運転特徴機械学習モデルP22)を備える。
学習済みの運転特徴機械学習モデルP22は、受検者の解答を入力データとして、受検者の運転特徴を予測して出力する。
【0022】
さらに、本実施形態の運転適性検査システム1は、運転適性評価項目の評価値を算出するための計算式を更新する。
上述した運転適性評価項目の評価値は、運転適性検査の換算後得点と評価値算出用係数から求められる(後述の数式2参照)。そこで、当該運転適性評価項目の評価値と、本検査問題とは別の、運転適性評価項目を直接的に測定する手段による評価結果とを紐づけて学習する機械学習モデル(係数調整用学習モデルP24)により、評価値算出用係数を調整する。
これにより、検査問題を用いて算出する運転適性評価項目の評価値は、運転適性評価項目を直接的に測定する手段による評価結果により近い値を算出することができる。
【0023】
(実施形態の詳細)
以下、本実施形態に係る運転適性検査システム1について、詳細を説明する。運転適性検査システム1は、運転適性検査プログラムP1を備えるコンピュータを含み、受検者に対し、運転適性検査をオンラインで提供する。
すなわち運転適性検査システム1は、運転適性検査プログラムP1による情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されるものである。
以下、適性検査システム1を構成する、1.ユーザーインターフェース、2.プログラム処理、3.データ、および4.ハードウェア構成、について順に説明する。
【0024】
(用語の定義)
ここで、いくつか言葉の定義を行う。
「運転適性検査」は、受検者の運転適性を検査する。運転は、本実施形態において自動車の運転を意味する。
【0025】
「運転適性」は、運転についての適性である。思考判断力のほか、運転操作の正確さや癖、または本人の性格や行動パターンなどから総合的に判断する。本実施形態では、特に、認知機能を測定する問題により、運転適性を測定する。
ここで、人の「認知機能」は、例えば思考判断力に関連し、運転に大きな影響を与える。例えば、著しい認知機能の低下は運転を困難にする。つまり、認知機能は運転適性と関連するため、認知機能を測定することで、運転適性の少なくとも一部を測定することができる。
認知機能の測定については、判断の速さや集中の持続など(次項の運転適性検査項目)が認知機能と関連するため、これらについて測定することで、認知機能を測定することができる。
【0026】
「運転適性評価項目」は、運転適性を評価するための項目である。本実施形態において、運転適性評価項目として特に認知機能が関わるものを採用している。具体的には、「判断の速さ」、「集中の持続」、「同時に複数のことを処理する力」、「細かい点に気づく力」、「空間の把握と視野の広さ」、「思考のスムースさ」、「落ち着いた行動」、「計画を立てる力」、「客観的な自己理解」の9項目を採用しているが、これに限られない。
【0027】
「受検者」は、運転適性検査システム1により運転適性検査を受ける者を意味する。
「管理者」は、運転適性検査システム1を運営し管理する者である。例えば自動車学校やその従業員などが挙げられる。つまり、組織を表すこともあれば、個人を表す場合もある。また、運転適性検査システム1により運転適性検査を行う組織を、検査機関とも記載する場合もある。
このほか、運転適性検査システム1を運営するものでなくても、例えばコンピュータシステムのメンテナンス業者など、システムのメンテナンスを行う者についても管理者と称する場合がある。
「ユーザ」は、上記受検者と管理者との2つの意味を有するが、特に断りが無い場合は受検者を意味する。
【0028】
「検査問題」は、運転適性検査を構成し、受検者の運転適性を検査するための問題である。検査問題として例えば、認知機能を評価するための問題がある。また、認知機能を評価するための問題として、本実施形態の認知地図問題、ワーキングメモリー問題、または概念認知問題などがある。
なお、本実施形態の認知地図問題、ワーキングメモリー問題、および/または概念認知問題を「各種検査問題」と称する場合がある。
本実施形態の検査問題は、小問を複数含む。例えば、本実施形態の認知地図問題では、最初の小問で選択肢を選択すると、次の小問に移る。つまり、認知地図問題は複数の小問により構成されると言える。
【0029】
「地図」は、ある場所の一部または全部を縮小して平面上に描き表したものである。地図はある場所を上方から見下ろす視点で描かれるため、地図上方から地図平面への視点を上面視と表記し、地図を「上面視図」とも称する。また、見下ろす角度により、「俯瞰図」または「鳥瞰図」とも称する場合がある。例えば、俯瞰図を写す視線は地図平面と略直交方向になる。
【0030】
これに対し、「正面視図」は、地図上のある所定位置における正面視の視点に対応する図である。正面視を写す視線は地図平面と略水平方向である。
言い換えると、上面視はトップビュー、正面視はサイドビューとなる。
【0031】
地図は目印となるものを含む。目印は、例えば道路標示などの平面的なものや、道路・建物・ランドマークなどの構造物、乗り物、動植物・岩石・水系などの自然物、または地形などの立体的なものである。
地図は実在する地形の地図である必要はなく、検査問題用に創作されたものでもよい。また、例えば三次元形状の辺だけを表示する、ワイヤーフレームを用いて構成されていてもよい。
【0032】
「押下」は、ブラウザ画面に表示されているボタンアイコンを押すことを言う。マウスを操作しているのであればクリックに該当し、スマートフォンやタブレットなどを操作しているのであればタップに該当する。選択入力と称する場合がある。
「解答入力」は、受検者による解答の入力である。例えば、選択肢の選択といった選択入力などである。また、計算問題について解答を数値で入力するのであれば、その数値入力が解答入力となる。
「制限時間」は、検査問題の解答時における、受検者に対する時間的制限である。本実施形態において、検査問題ごとに制限時間が設定されている。ただしこれに限られるものではなく、例えば検査問題全体で1つの制限時間を設定してもよい。
「アンケート」は、運転適性検査における、検査問題とは別の受検者回答項目である。例えば、受検者の運転特徴を取得するためのアンケートなどである。
【0033】
「得点」は、各種検査問題における受検者の評価に係る指標である。本実施形態において、誤答などによって減点されることはないため、得点は正解数と一致する。また、得点は検査問題ごとに算出される。
「換算後得点」は、統計処理方法により統計処理した得点である。特に、標準化した得点を「標準化得点」と称する。
「統計処理」は、標準化または正規化である。本実施形態では標準化を用いているため、主に標準化を用いて説明する。
「解答数」は、各種検査問題における受検者の解答の数である。解答数には、正答の数と誤答の数、および受検者が「わからない」と解答した問題の数を含む。
【0034】
「評価値」は、単独のまたは複数の換算後得点から算出する、ある1つの運転適性検査項目の評価指標である(数式2参照)。本実施形態において、評価値の数値が高いほど良い評価である。
「評価値算出用係数」は、換算後得点から運転適性評価項目の評価値を算出する際に用いられる係数である。具体例は後述する。
「評価値スコア」は、評価値を所定の数値ごとに区分して得られる多段階評価指標である。
「総合評価値」は、受検者の運転適性を表す評価指標である。本実施形態では、運転適性検査項目の評価値から算出する。
「総合スコア」は、総合評価値を所定の数値ごとに区分して得られる多段階評価指標である。
【0035】
「運転適性検査結果」は、運転適性検査により得られる結果である。例えば、認知機能を測定する検査問題の解答数・得点・換算後得点・解答に要した時間、評価値・評価値スコア、総合評価値・総合スコアなどである。
運転適性検査結果の語は、受検者の得点など、含まれる内容の一部を指すこともあれば、含まれる内容全体を指すこともある。
また、運転適性検査結果は、認知機能を測定する検査問題以外の検査結果を含んでいてもよい。例えば、運転適性検査で行われる心理テストの結果などである。
さらに、運転適性検査結果は、過去分の結果を含んでよい。
運転適性検査結果は広い概念であり、その中に各種検査問題の検査結果を含む。
【0036】
「運転特徴」は、受検者の運転に関する特徴である。具体的には例えば、運転歴(運転免許を取得してからの年数など)、免許の色(青色・ゴールドなど運転免許の色のほか、ゴールド免許の有無などであってもよい)、免許種別(自動車免許の普通、大型、第一種、第二種など)、所定の期間内における事故の有無などである。また、これらのような客観的に確認できる情報に限らず、運転の好き嫌い、嗜好など、受検者における主観的なものであってもよい。
【0037】
「ワーキングメモリー」の語は、本実施形態において2つの意味が存在し得る。1つは、人の認知機能と関わるワーキングメモリーである。作業記憶などとも呼ばれる。もう一つは、コンピュータの制御部を構成するランダムアクセスメモリ(RAM126)である。RAMは、プロセッサ122にワーキングメモリとして使用される。
本実施形態において、特に断りの無い場合は前者の意味を指す。
【0038】
以下において、「○○」処理と記載している場合、コンピュータのプロセッサは、プログラム格納部に記憶されている「○○」プログラムに基づく処理を実行することを意味する。本段落において、「○○」の箇所には同じ語が入る。
すなわち、「○○」プログラムは、「○○」処理の実行により、コンピュータを「○○」手段として機能させるプログラムである。またこの際、当該プロセッサを備える制御部は、「○○」部(または「○○」装置)としても機能することを意味する。
この場合において、「○○」部は、「○○」プログラムに基づく「○○」処理を実行することを意味する。
【0039】
例えば、運転適性検査プログラムP1は、運転適性検査処理の実行により、コンピュータを運転適性検査手段として機能させるプログラムである。またこの際、プロセッサ122を備えるコンピュータの制御部12は、運転適性検査部130(または運転適性検査装置)として機能する。
【0040】
運転適性検査システム1において、受検者端末20や管理者端末30などの各端末(コンピュータ)はそれぞれプロセッサを備えるが、単にプロセッサという場合は、運転適性検査プログラムP1により処理を行うプロセッサ、本実施形態ではサーバ10のプロセッサ122、を指すものとする。
【0041】
1.ユーザーインターフェース
まず、本実施形態の運転適性検査システム1が受検者端末20に表示させるインターフェース(UI)について、図を用いて説明する。
以降で説明するインターフェースは、プロセッサ122が端末(受検者端末20または管理者端末30)のブラウザに表示させるものを簡略化したものである。
【0042】
ユーザは画面要素(UI-10)の操作、つまりテキストボックスUI-12への入力や、カーソルUI-14によるボタンUI-16の押下などにより、情報の登録や解答の入力を容易に行うことができる。
なお、画面ごとにテキストボックスUI-12やボタンUI-16の役割は異なるが、簡単のため同じ符号を付し、各種機能の差異はその都度説明する。
【0043】
また、説明に必要な機能に関わるアイコン等のみ表示することとし、それ以外の公知のアイコンなどは省略する。例えば、直前に表示されていたページに戻るための戻るボタンなどは省略している。
【0044】
なお以下において、簡単のため、「サーバ10のプロセッサ122が、端末(受検者端末20や管理者端末30)からのリクエストを受けて、当該端末のブラウザに表示するためのデータを返す」ことを、「プロセッサ122が端末のブラウザに表示する(させる)」または「プロセッサ122が表示する(させる)」などと記載する場合がある。
また同様に、「サーバ10のプロセッサ122が、記憶部14のデータ記憶部14bにデータを保存させる」ことを、「プロセッサが(データを)保存する(させる)」などと記載する場合がある。
【0045】
以下のユーザーインターフェースの説明の前提として、受検者は、運転適性検査システム1を管理する検査機関に対して運転適性検査を申し込み、一意の受検者IDと企業コード、および認証手段が付与されている。
本実施形態において、運転適性検査システム1にアクセスするための認証手段はパスワードである。また、個人の受検者であっても、企業コードとして個人受検者用のコードが付与される。
これらの情報は、プロセッサ122が後述する受検者情報データベースD20に保存する。
【0046】
図2は、受検者情報登録画面を示す図である。受検者による運転適性検査システム1の利用に先立ち、受検者または管理者は、受検者個人に係る情報を登録する。
管理者が受検者の情報を登録する場合とは例えば、検査機関において、検査を希望する者(受検者)が紙の書面等で検査の申し込みを行い、検査機関の担当者(管理者)が当該書面に記載された受検者情報を入力する場合などである。
【0047】
図2に示すように、本実施形態において、受検者情報は、氏名、年齢、性別、住所、電話番号などのほか、運転特徴を得るためのアンケートを含む。
図2において、運転特徴は受検者の運転歴である。
【0048】
ただし、運転特徴はこれに限られるものではなく、免許の色(例えばゴールド免許の有無)、所定の期間内における事故の有無、などであってもよい。この運転特徴を含む受検者情報は、後述する機械学習に用いる。
【0049】
図2に戻り、受検者の情報登録を行うユーザがOKボタンを押下すると、プロセッサ122は受検者情報を受検者情報データベースD20に保存する。
【0050】
受検者情報に情報を多く含むほど、後述する機械学習などに利用できるデータが多くなるため、事故防止のための分析など、より多くの用途に役立てやすくなる。例えば、登録情報に住所情報を含める場合、データが蓄積することにより、都道府県別の事故分析などを行うことが想定される。
【0051】
図3は、運転適性検査システム1のログイン画面を示す図である。
図3に示すように、本実施形態において、受検者などのユーザは、企業コード、メールアドレス、およびパスワードをテキストボックス(UI-12)に入力し、画面中央下部のログインボタン(UI-16)を押下することで、個人ページ画面にログインする。
【0052】
プロセッサ122は、ログインボタンの押下による入力を受け付けると、パスワードを含む受検者の入力情報の組み合わせについて認証を行う。
認証に成功すると、プロセッサ122は次項の個人ページ表示画面などを表示させる。
【0053】
図4は、運転適性検査システム1の個人ページ画面を示す図である。
図4は受検者用の画面である。プロセッサ122は、ログインしている受検者に応じた内容を表示する。
例えば、受検者が検査を受けたことが無い場合、画面には「検査を受ける」と表示されているボタン(以下、「検査画面表示ボタン」とする。)のみが表示される。
図4中、「検査結果を参照する」と表示されているボタン(以下、「検査結果参照ボタン」とする。)の斜線は、押下(入力)を受け付けない態様で薄く表示されるか、表示されていないことを意味する。また、受検可能な検査が無い場合、プロセッサ122は、検査画面表示ボタンを表示させないようにしてもよい。
【0054】
一方、受検者が受検済みで、検査結果が検査結果データベースD22に保存されている場合、プロセッサ122は検査結果参照ボタンを表示する。受検者は検査結果参照ボタンを押下することで、検査結果参照画面(不図示)に進むことができ、自己の検査結果を閲覧等することができる。
【0055】
図5は、運転適性検査システム1の検査開始画面を示す図である。受検者が上述の検査画面表示ボタンを押下したときに、プロセッサ122が表示する画面である。
図5に示すように、受検可能な検査がある場合、プロセッサ122は検査を開始するためのボタン(以下、「検査開始ボタン」とする。)を表示する。
受検者が検査開始ボタンを押下すると、プロセッサ122は運転適性検査を開始する。
【0056】
プロセッサ122は、各検査問題のはじめに、説明画面の表示を行い、また、練習問題を数題出題する(不図示)。練習問題のUIは本番問題のUIに準ずるため、説明は省略する。
【0057】
本実施形態の運転適性検査では、プロセッサ122が認知機能を測定するための検査問題を表示し、出題する。つまり、プロセッサ122は、検査問題データベースD10から問題や解答選択肢を読み出し、受検者端末20のブラウザに表示させる。
【0058】
ここで、検査について補足する。
本実施形態のすべての検査は、制限時間が設定されている。プロセッサ122が最初の問題が表示すると共に、計時部128がカウントダウンを始める。カウントがゼロになると(制限時間が経過すると)、その検査は終了する。
【0059】
また本実施形態において、プロセッサ122は制限時間や残り時間を受検者端末20のブラウザ上に表示させていないが、これらを表示させるようにしてもよい。この場合、受検者は残り時間を把握して解答の時間配分等を行うことができる利点がある。
この制限時間は、運転適性検査システム1の管理者が設定により適宜変更することができる。
【0060】
検査問題は時間をかければ解ける問題もあり、また、検査機関等で行う検査である以上、解答時間の制限は必須である。
そのほか、制限時間を設定することにより、例えば検査機関等で使用するパーソナルコンピュータ等の回転率(使用効率)を上げることができるため、効率的な検査を提供することができる。
【0061】
本実施形態の運転適性検査システム1は、認知機能を測定するための問題として認知地図問題、ワーキングメモリー問題、概念認知問題を出題する。以下それぞれについて説明する。
【0062】
(認知地図問題のUI)
図6は、認知地図問題出題画面を示す図である。
本実施形態において、プロセッサ122は、問題文のほか、正面視図(イラスト)UI-182aと、上面視図(地図)UI-182bと、解答選択肢UI-162を表示する。
プロセッサ122は上面視図(地図)に、複数の立ち位置を示す記号(A~D)と、それぞれの立ち位置における視線方向を示す記号(矢印)を表示する。そして、立ち位置を示す記号(A~D)と、解答選択肢UI-162の記号(A~D)とは対応する。
【0063】
図6中の問題文にあるように、認知地図問題は、正面視図(イラスト)の画像が、上面視図(地図)中のどの地点から見ているものか、受検者に答えさせる問題である。
受検者は正しいと考える選択肢を解答選択肢UI-162から選択(押下)し、「次へすすむ」ボタンを押下する。「次へすすむ」ボタンの入力を受け付けると、プロセッサ122は次の問題を表示する。
なお本実施形態において、認知地図問題の制限時間は120秒である。
【0064】
図6の例において、正解選択肢はAである。目の前に直進や右折などの標示のほか、進行方向と直交する横断歩道があり、さらにその先には左から右に向かう車が見えることなどがヒントになる。
【0065】
Bの選択肢の場合、正面視において左から来る車は視界に入らないはずである。また、前を走る車の後部が正面視で視認できると考えられる。
Cの選択肢の場合、正面視において、進行方向を横切る横断歩道は視界に入らないはずである。また、前方の交差点を右から左に横切る車が視界に入ると考えられる。
Dの選択肢の場合、直近に交差点は無く、正面視において横断歩道も視界に入らないはずである。また、Dの矢印に沿う道路が別の道路の下をくぐる形となっているため、正面視図ではその立体交差の様子などが視界に入ると考えられる。
【0066】
なお、
図6に示すように、プロセッサ122は「わからない」ボタンも表示する。受検者は、答えが分からない場合は「わからない」ボタンを押下してもよい。
この場合、プロセッサ122はその小問については誤答とし、次の計算問題に進む。受検者が「わからない」ボタンを押下したときの処理は以下の出題処理でも同様である。
【0067】
認知地図問題は、言い換えると、プロセッサ122が、上面視図である地図と、前記上面視図の所定位置における正面視に対応する正面視図と、前記所定位置に対応する選択肢を含む複数の選択肢とを表示し、前記所定位置に対応する選択肢を受検者に解答させる問題である。
【0068】
ここで、「前記所定位置に対応する選択肢を受検者に解答させる」とは、「前記所定位置に対応する選択肢」が正しい選択肢(正解選択肢)であり、それ以外の選択肢は誤り(不正解選択肢)であることを意味する。
これは、後述する概念認知問題における「各要素が各見本要素と同じ関係にある選択肢を受検者に解答させる」の文言も同様である。
また、ワーキングメモリー問題の「受検者に前記記憶対象を入力させる」の文言も同様であり、記憶対象が解答されるべき内容であることを意味する。
【0069】
(ワーキングメモリー問題のUI)
図7から
図9は、ワーキングメモリー問題の出題画面を示す図である。
まず、記憶対象提示画面(
図7)に示すように、プロセッサ122は記憶対象である数桁の数字等を表示し、受検者はその記憶対象を記憶する(順序1(図中丸1))。
続いて、計算問題出題画面(
図8)に示すように、プロセッサ122は所定の数の計算問題を受検者に出題し、受検者はこれに解答する(順序2(図中丸2))。
最後に、記憶対象入力画面(
図9)に示すように、プロセッサは数値入力部(UI-122)を表示し、受検者は順序1で記憶した数桁の数字を入力する(順序3(図中丸3))。
順序1から順序3までを1セット(1つの小問)とし、プロセッサは制限時間の限り次々に小問を出題する。本実施形態において、制限時間は180秒である。
【0070】
図7から
図9の各図を用いて詳細に説明する。
図7は、ワーキングメモリー問題出題画面の記憶対象表示画面を示す図である。
本実施形態において、プロセッサ122は記憶対象表示部UI-20に3桁の数字を表示する。所定の時間経過後、プロセッサ122は自動的に次の画面(計算問題出題画面)を表示する。
【0071】
本実施形態において、前記所定の時間、つまり次の画面に切り替わるまでの時間(受検者が数字を記憶できる時間)は、
図7に示すように、プロセッサ122が残り時間表示部(UI-22)にバーグラフの形で表示する。バー(図中UI-22の斜線部)が右端まである状態(満タン)から、時間の経過とともに左の方に目盛り(図中斜線部)が減っていき、バーが無くなると制限時間は終了となる。制限時間終了でプロセッサ122は次の画面(計算問題出題画面)を表示する。
【0072】
図8は、ワーキングメモリー問題出題画面の計算問題出題画面を示す図である。
図8に示すように、本実施形態において、プロセッサ122は計算問題画像(UI-184)部分に簡単な足し算を表示する。
プロセッサ122は計算問題のほか、解答するための数字ボタンUI-164を表示する。受検者は題意に沿って、正しいと考える数字ボタンUI-164を押下して解答する。
【0073】
例えば、
図8の例では、「7+8=」の答えは15であるから、受検者はその下一桁(一の位)である「5」の数字ボタンを選択する。
受検者が正しい数値ボタンを選択すると、プロセッサ122は次の計算問題を出題する。受検者の解答が正しくない場合、プロセッサ122は誤答である旨を表示し、次の解答入力を待ち受ける。
【0074】
本実施形態において、この足し算の出題数は10題である。
受検者から10題の計算問題について(正しい)解答入力を受け付けると、プロセッサ122は次項の記憶対象入力画面を表示する。
【0075】
図9は、ワーキングメモリー問題出題画面の記憶対象入力画面を示す図である。
図9に示すように、本実施形態において、プロセッサ122は記憶対象入力画面で受検者が記憶していた数字を入力する数字入力部UI-122と、その解答入力のための数字ボタンUI-164を表示する。そのほか、プロセッサ122は間違った解答入力を1字分削除するための1字削除ボタンを表示する。
数字入力部UI-122において、数字ボタンを押すごとに上位の桁から解答欄にその数値が表示される。また、1字削除ボタンを押すごとに直近に入力した数字(下位の桁)から順に削除される。
【0076】
図9の例で入力されるべき数字は「592」である。受検者は解答の数字を入力したら「次へすすむ」ボタンを押下して解答を確定する。
【0077】
以上、
図7から
図9に示すように、受検者は(順序1)記憶対象の数字の記憶、(順序2)計算問題の解答、および(順序3)記憶対象の数字の入力を繰り返す。
なお本実施形態において、2セット目、3セット目と進むごとに、順序1で覚える数字の桁数は増えていく。
【0078】
例えば、最初の1セット目において、順序1で覚える数字は3桁であるが、2セット目ではこれが4桁となり、3セット目ではこれが5桁となる。つまり、後半になるほどより受検者の記憶力が試されることになる。
問題の難易度を上げていくことによって、用意する問題の数を減らすことができるなどの効果がある。
【0079】
本実施形態のワーキングメモリー問題は、(順序1)記憶対象の数字の記憶と(順序3)記憶対象数字の入力の間に、(順序2)計算問題を挟み、また、その計算問題では、計算させて下一桁を答えさせるものであるという特徴がある。
これは、難易度が適切であり、質問意図がわかりやすい、という利点がある。また、ワーキングメモリーとは、「作業に必要な情報を、一時的に保存し処理する能力」であるため、本実施形態では計算問題の部分を「簡単な足し算」と「その下一桁の確認」という作業にすることで、計算力が結果に与える影響を小さくしている。
【0080】
ワーキングメモリー問題は、言い換えると、プロセッサ122が、受検者に記憶させる記憶対象を表示した後、少なくとも2以上の計算問題を出題し、前記計算問題の出題後に、受検者に前記記憶対象を入力させる解答入力欄を表示する問題である。
【0081】
(概念認知問題のUI)
図10は、概念認知問題(言葉)の出題画面を示す図である。
図10に示すように、概念認知問題においてプロセッサ122は、問題文のほか、例示画像(UI-186)と4つの解答選択肢(UI-162)を表示する。問題文にあるように、受検者は例の組み合わせと同じものを4つの選択肢から選択する。
なお本実施形態において、概念認知問題の制限時間は120秒である。
【0082】
図10に示すように、ハイフンの左と右に表示される文字や図形などを「要素」と称する。
図10の例では、「野菜」と「大根」がそれぞれ要素である。つまり、上述した組み合わせは、要素の組み合わせである。
【0083】
図10の例には、「野菜」と「大根」という見本要素を含む見本が例示されており、各見本要素は例えば「全体」と「部分」の関係にある。受検者は、各要素がこれと同じ関係にある選択肢を探す。
各要素が各見本要素と同じ関係にあるといえるものは、選択肢Cの「果物」と「りんご」である。選択肢Cの各要素は「全体」と「部分」の関係にあるため、各要素が各見本要素と同じ関係にある。よって正解はCの選択肢である。
【0084】
Aの選択肢は「タクシー」と「トラック」であり、どちらも同じ自動車という分野に属する。
Bの選択肢は「医者」と「注射器」であり、その関係は例えば「道具の使用者」と「道具」である。
Dの選択肢は「野球」と「サッカー」であり、どちらも同じスポーツ競技に属する。
A、B、およびDのいずれの選択肢においても、各要素の関係は「全体」と「部分」の関係とは異なるため、要素同士が見本要素同士と同じ関係にあるとはいえない。
【0085】
解答選択肢UI-162はボタンとなっており、受検者は解答選択肢UI-162の画像部分を押下することで選択を行う。プロセッサ122は受検者の選択入力を受け付けると、その選択入力の内容を保存して次の問題を表示する。
【0086】
図11は、概念認知問題(イラスト)の出題画面を示す図である。
図11の例に表示されている組み合わせは「飲食」と「腹痛」であり、これらは例えば因果関係(「飲食をしたら、お腹を壊した」という関係)を示す。
例と同じになる組み合わせは、選択肢Cの「雨」と「風邪(発熱)」である。これらも因果関係(「雨に濡れたら、風邪をひいた」という関係)にある。よって正解はCの選択肢である。
【0087】
Aの選択肢は「野球」と「野球ボール」であり、スポーツ競技とその道具である。
Bの選択肢は「トマト」と「きゅうり」であり、どちらも同じ野菜という分野に属する。
Dの選択肢は「にわとり」と「鳩」であり、どちらも同じ鳥という分野に属する。
A、B、およびDのいずれの選択肢においても、各要素の関係は時系列を伴う因果関係にあるものではないため、要素同士が見本要素同士と同じ関係にあるとはいえない。
【0088】
概念認知問題は、言い換えると、プロセッサ122が、ある一定の関係にある少なくとも2以上の見本要素を備える見本と、各要素が各見本要素と同じ関係にある選択肢を含む複数の選択肢とを表示し、各要素が各見本要素と同じ関係にある選択肢を受検者に解答させる問題である。
【0089】
ここで、「少なくとも2以上の」とは、例えば、見本要素が「トマト」、「大根」、「人参」のように、3つあってもよいことを意味する。この場合、受検者はこれらの各見本要素の関係性を考察して解答する。
この例の場合、見本と正解選択肢は、要素がいずれも野菜である組み合わせであり、不正解選択肢は要素の少なくとも一つが野菜でない選択肢などである。
【0090】
以上、認知機能を測定する検査問題を3種類説明した。各種検査問題における評価の方法については、後述のプログラム処理のところで詳細を説明する。
認知機能を測定する検査問題は、認知機能を測定する問題が2種類以上出題されることが好ましい。例えば、認知地図問題、ワーキングメモリー問題、および概念認知問題のうち、2以上の組み合わせである。
種類の異なる複数の検査問題を用いて、受検者の運転適性を多面的に測定することで、より詳細に受検者の運転適性を把握することができるからである。よって、問題の種類は2種類よりも3種類の方がより好ましい。
【0091】
各検査問題について、検査に要する時間が妥当な長さである限り、検査問題の小問数は多いほどよい。より詳細に受検者の認知機能を測定できるためである。
例えば概念認知問題において、5問出題するよりも、10問出題することで、少なくとも0点から10点までの値で評価することができる。このように多くの小問で評価することで、より詳細に受検者の認知機能を評価することができ、また評価の誤差などを小さくすることができる。
【0092】
本実施形態の運転適性検査システム1において、受検者は受検者情報の登録や解答の入力をグラフィカルユーザインターフェース(以下「GUI」とする。)により行うことができる。これにより、受検者は視覚的かつ簡単な操作で運転適性検査を受けることができる。
【0093】
また本実施形態の運転適性検査システム1はレスポンシブデザインに対応しているため、受検者は、PCに限らず、スマートフォンでも運転適性検査を受けることができる。
【0094】
2.プログラム処理
<運転適性検査処理>
本実施形態の運転適性検査システム1において行われるプログラム処理について説明する。
【0095】
本実施形態において、プロセッサ122は、運転適性検査プログラムP1に基づき、運転適性検査処理を行う。
運転適性検査プログラムP1は、少なくとも受検者情報登録プログラムP12、検査問題出題プログラムP14、および認知機能評価プログラムP16を含み、プロセッサ122はこれらの各プログラムに基づいて、受検者情報登録処理、検査問題出題処理、および認知機能評価処理をそれぞれ実行する。
【0096】
また、運転適性検査プログラムP1は機械学習モデルP20を含む。本実施形態において、機械学習モデルP20として、運転特徴機械学習モデルP22と係数調整用学習モデルP24を含む。
プロセッサ122は、これらの機械学習モデル20に基づいて後述する各種判断を行う。
【0097】
以下において各処理を説明する。以下の説明において、運転適性検査システム1へのログインは済んでいるものとする。
【0098】
<2-1.受検者情報登録処理>
プロセッサ122は、受検者情報登録プログラムP12に基づき、受検者情報登録処理を行う。
すなわち、受検者情報登録プログラムP12は、プロセッサ122による受検者情報登録処理の実行により、コンピュータを受検者情報登録手段として機能させる。
【0099】
また、本実施形態において、受検者情報は受検者の運転特徴を含むことから、受検者情報登録手段は、「少なくとも受検者の運転特徴を含む受検者情報、を登録する受検者情報登録手段」である。「運転特徴を問うアンケート」については後述する。
【0100】
図12は、受検者情報登録処理を示すフローチャートである。プロセッサ122はブラウザに受検者情報登録画面を表示させる。
受検者情報登録処理において、プロセッサ122は、受検者情報の入力を受け付けて保存する。
プロセッサ122は、ユーザによる受検者情報登録処理開始の指示を端末(受検者端末20または管理者端末30)から受けることにより、受検者情報登録処理を開始する。
【0101】
プロセッサ122は受検者情報の入力を受け付け(ステップ01)、入力完了(OKボタンの押下)まで待機する(ステップ02No)。OKボタンの入力を受け付けたら(ステップ02Yes)、入力された受検者情報を含む各種データを保存し(ステップ03)、受検者情報登録処理を終了する。
プロセッサ122は、受検者IDと紐づける形でこの受検者情報を記憶部14(受検者情報データベースD20)に保存する。
【0102】
<2-2.検査問題出題処理>
プロセッサ122は、検査問題出題プログラムP14に基づき、検査問題出題処理を行う。
すなわち、検査問題出題プログラムP14は、プロセッサ122による検査問題出題処理の実行により、コンピュータを検査問題出題手段として機能させる。
本実施形態では認知機能を測るための検査問題を出題することから、検査問題出題手段は「認知機能を測る検査問題を出題する検査問題出題手段」である。
【0103】
検査問題出題処理において、プロセッサ122は、各種検査問題を出題する。また、本実施形態の検査問題出題処理において、プロセッサ122は解答制限時間の計時や、受検者の解答入力の正否判定(採点)および得点付与(得点計算)を行う。
【0104】
本実施形態において、検査問題出題プログラムP14は、解答入力受付プログラムP142、導入プログラムP144、認知地図問題出題プログラムP146、ワーキングメモリー問題出題プログラムP148、および概念認知問題出題プログラムP150を含み、プロセッサ122はこれらの各プログラムに基づいて、解答入力受付処理、導入処理、認知地図問題出題処理、ワーキングメモリー問題出題処理、および概念認知問題出題処理をそれぞれ実行する。
【0105】
解答入力受付プログラムP142は、プロセッサ122による解答入力受付処理の実行により、コンピュータを解答入力受付手段として機能させる。
ここで、検査問題において解答入力を行うのは運転適性検査の受検者であるため、解答入力受付手段は、「検査問題において受検者の解答入力を受け付ける解答入力受付手段」である。
【0106】
解答入力受付プログラムP142は、受検者からの解答入力を受け付けるためのプログラムである。具体的には、解答入力受付プログラムP142によりプロセッサ122は、受検者によるテキストボックスUI-12への入力や、ボタンU-16(解答選択肢UI-162、数字ボタンUI-164など)の押下といった入力操作を受け付ける。プロセッサ122は、これらの入力操作を受け付けたことをトリガーとして、所定の処理を実行する。
【0107】
ここで、本実施形態のプロセッサ122は、解答入力受付プログラムP142により、検査問題ごとに設けられている制限時間内において解答入力を受け付ける。このとき、この制限時間は計時部128が計時する。つまり制御部12は、受検者の解答入力の制限時間を計時する制限時間計時手段として機能する。
【0108】
図13は、導入処理を示すフローチャートである。プロセッサ122は、導入プログラムP144に基づき、導入処理を行う。
導入処理によりプロセッサ122は、各種検査問題のはじめに、受検者に対して検査問題の内容を説明する画面を表示し、また、受検者に問題解答やその操作について練習する機会を与える。
各種検査問題処理において、サブルーチンとして導入処理の呼び出しがあった時に、プロセッサ122は導入処理を開始する。
なお、導入処理は必ずしもサブルーチン化する必要はなく、各検査問題に組み込んでもよい。
【0109】
図13に示すように、プロセッサ122は、検査の内容を説明する文章や画像を表示する(ステップ11)。受検者はその説明を読み終わったら、同画面に表示されているOKボタンを押下する。プロセッサ122は、OKボタンの押下入力を受け付けるか、所定の表示時間が経過するまで待機する(ステップ12No)。受検者によるOKボタンの押下、または表示時間経過により(ステップ12Yes)、プロセッサ122は練習問題を表示する(ステップ13)。
【0110】
練習問題における処理は、本番検査の処理に準ずる。例えば、認知地図問題であれば、後述するように、プロセッサ122は問題を表示し(
図14・ステップ22)、時間切れになるか(ステップ23No)、最後の問題が終わるまで(ステップ25Yes)次々と問題を出題する。
上述したとおり、練習問題は本番の問題より問題量が少ないか、解答時間が短い。
【0111】
図13に戻り、プロセッサ122は、練習時間が経過するか、すべての問題への解答が終わるまで待機し(ステップ14No)、練習時間経過か全練習問題の解答終了(ステップ14Yes)により、それぞれのメインプログラムに処理を戻す(リターン処理)。
【0112】
本実施形態の導入処理のように、プロセッサ122は少なくとも、各種検査問題のはじめに検査問題の内容を説明する画面を表示することが好ましい。
一般的な認知機能検査と異なり、本運転適性検査システム1は運転適性検査を測るものであるため、受検者は極めて広範囲の年齢層を対象としている。よって、何人も内容を理解できる検査であることが必要だからである。
【0113】
図14は、認知地図問題出題処理を示すフローチャートである。プロセッサ122は、認知地図問題出題プログラムP146に基づき、認知地図問題出題処理を行う。
認知地図問題出題処理により、プロセッサ122は、認知地図問題を出題する。
本実施形態において、認知地図問題が最初の検査問題であるため、受検者が検査開始ボタン(
図5参照)を押下すると、プロセッサ122は運転適性検査を開始し、認知地図問題出題処理を開始する。
なお、仮に、認知地図問題が2番目以降の検査問題となる場合は、直前の検査問題に係る処理が終わった後に、プロセッサ122は認知地図問題を開始する。
【0114】
プロセッサ122は、導入処理ののち(ステップ21)、認知地図問題を表示する(ステップ22)。認知地図問題を表示するとは、上述したように、プロセッサ122が、問題文のほか、上面視図(地図)、正面視図(イラスト)、解答選択肢を表示することを指す。
また、プロセッサ122は、問題の表示とともに制限時間のカウントダウンを開始する。最初の問題表示とともに制限時間が開始するのは、以降の出題処理でも同様である。
【0115】
図14に示すように、認知地図問題出題処理で設定されている制限時間内であれば(ステップ23Yes)、プロセッサ122は受検者の解答入力があるまで待機する(ステップ24No)。受検者の解答入力があった場合(ステップ24Yes)で、その問題が最後の問題でない場合(ステップ25No)は、プロセッサ122は次の問題を表示する(ステップ22)。
【0116】
ここで、受検者の解答は検査結果データベースD22に保存される(不図示)。また、プロセッサ122は、解答の正誤判定を行い、正解であれば得点を付与し、保存する。
またプロセッサ122は、問題表示から解答までに要した時間など、小問に係るそのほかの情報を保存してもよい。
ただし、解答の正誤判定や得点付与はこのタイミングに限られるものではなく、各種データの保存(認知地図問題出題処理の場合はステップ26)時に行ってもよい。これは以下の出題処理でも同様である。
【0117】
図14に戻り、制限時間が経過する(ステップ23No)か、最後の問題が終わった場合(ステップ25Yes)、プロセッサ122は受検者の解答を含む各種データを保存して(ステップ26)、認知地図問題出題処理を終了する。
【0118】
ここで各種データとは、認知地図問題の出題で得られたデータであり、例えば検査結果に関するデータ、つまり受検者の解答数、正答数(得点)、誤答数、わからないと答えた問題の数、個々の問題や全ての問題の解答に要した時間、などである。プロセッサ122は、これら検査結果のデータを検査結果データベースD22に保存される。これは以下の出題処理でも同様である。
なお、ここでいう検査結果は、上述した運転適性検査結果に含まれる。
【0119】
なお、出題処理の別の処理の途中であっても、制限時間が経過した場合、プロセッサ122は各種データを保存してその処理を終了する。これは以降の出題処理でも同様である。
【0120】
図15は、ワーキングメモリー問題出題処理を示すフローチャートである。プロセッサ122は、ワーキングメモリー問題出題プログラムP148に基づき、ワーキングメモリー問題出題処理を行う。
ワーキングメモリー問題出題処理により、プロセッサ122は、ワーキングメモリー問題を出題する。
本実施形態において、認知地図問題が終了すると、プロセッサ122はワーキングメモリー問題出題処理を開始する。
なお
図15において、円に囲まれた数字(1)は結合子であり、処理のつながりを示す。
【0121】
プロセッサ122は、導入処理ののち(ステップ31)、受検者が記憶する記憶対象を表示する(ステップ32)。
【0122】
本実施形態において、記憶対象は3桁以上の数字である。記憶対象の数字は、プロセッサ122がランダムで表示する。プロセッサ122は表示した数字を記憶し、最終的に受検者の解答と表示した数値が一致するか否かを判定する。
【0123】
なお、プロセッサ122が記憶対象の数字の選択し、表示する方法はこれに限られない。例えば、あらかじめ3桁の数字、4桁の数字などをワーキングメモリー問題データベースD104に格納しておき、プロセッサ122が記憶対象を表示するタイミングで格納している数字を取得してもよい。
【0124】
図15に戻り、プロセッサ122はあらかじめ定められている一定の表示時間が経過するまで待機し(ステップ33No)、表示時間が経過したら(ステップ33Yes)計算問題を表示する(ステップ34)。
【0125】
本実施形態において、計算問題は10題出題されるが、計算問題は計算問題用の制限時間があらかじめ設定されている。
図15に示すように、計算問題の制限時間内であれば(ステップ35Yes)、プロセッサ122は受検者の解答入力があるまで待機する(ステップ36No)。受検者の解答入力があった場合(ステップ36Yes)で、その問題が最後の計算問題でない場合(ステップ37No)は、プロセッサ122は次の計算問題を表示する(ステップ34)。
【0126】
なお本実施形態の計算問題において、受検者が正しい選択肢を選択しない場合、プロセッサ122は次の計算問題を表示させない(不図示)。
【0127】
本実施形態において、計算問題の正誤は次の計算問題に進むか否かの判断にのみ用いられ、得点や運転適性評価項目の評価値には用いられないため、プロセッサ122は受検者の解答を保持しない。ただし、これに限られるものではなく、プロセッサ122は、計算問題の結果を検査結果データベースD22に保存してもよい。
【0128】
図15に戻り、計算問題のおける制限時間が経過する(ステップ35No)か、最後(10問目)の計算問題が終わった場合(ステップ37Yes)、プロセッサ122は数値入力部を表示する(ステップ38)。
【0129】
図15に示すように、数値入力で設定されている制限時間内であれば(ステップ39Yes)、プロセッサ122は受検者の解答入力があるまで待機する(ステップ40No)。受検者の解答入力があった場合(ステップ40Yes)は、プロセッサ122はその解答を保存する。
【0130】
ここで、受検者の解答は検査結果データベースD22に保存される(不図示)。また、プロセッサ122は、解答の正誤判定を行い、正解であれば得点を付与し、保存する。
【0131】
図15に示すように、(順序1)記憶対象の標示、(順序2)計算問題の標示、(順序3)数値入力部標示までがワーキングメモリー問題における1つの小問である。
ワーキングメモリー問題出題処理の制限内である場合(ステップ41Yes)、プロセッサ122は次の小問に進み、順序1記憶対象の標示を行う(ステップ32)。
【0132】
ここで、次の小問に進む前に、本実施形態のプロセッサ122は、小問の難易度を上げる処理を行う(不図示)。
本実施形態において小問の難易度を上げるとは、記憶対象の数字の桁数を3桁から4桁に増やすことである。ただしこれに限られるものではなく、計算問題の問題数を例えば10問から12問に増やすなどであってもよい。また、小問の難易度を上げるタイミングもこれに限られるものではなく、例えば小問3問ごとに難易度を上げるようにしてもよい。
【0133】
図15に戻り、ワーキングメモリー問題の制限時間が経過した場合(ステップ41No)、プロセッサ122は各種データを保存し(ステップ42)、ワーキングメモリー問題出題処理を終了する。
【0134】
図16は、概念認知問題出題処理を示すフローチャートである。プロセッサ122は、概念認知問題出題プログラムP150に基づき、概念認知問題出題処理を行う。
概念認知問題出題処理により、プロセッサ122は、概念認知問題を出題する。
本実施形態において、ワーキングメモリー問題が終了すると、プロセッサ122は概念認知問題出題処理を開始する。
【0135】
プロセッサ122は、導入処理ののち(ステップ51)、概念認知問題を表示する(ステップ52)。認知地図問題を表示するとは、プロセッサ122が、問題文のほか、例と解答選択肢を表示することを指す。
【0136】
図16に示すように、認知地図問題出題処理で設定されている制限時間内であれば(ステップ53Yes)、プロセッサ122は受検者の解答入力があるまで待機する(ステップ54No)。受検者の解答入力があった場合(ステップ54Yes)で、その問題が最後の問題でない場合(ステップ55No)は、プロセッサ122は次の問題を表示する(ステップ52)。
【0137】
ここで、受検者の解答は検査結果データベースD22に保存される。また、プロセッサ122は、解答の正誤判定を行い、正解であれば得点を付与し、保存する。
【0138】
図16に戻り、制限時間が経過する(ステップ53No)か、最後の問題が終わった場合(ステップ55Yes)、プロセッサ122は受検者の解答を含む各種データを保存して(ステップ56)、認知地図問題出題処理を終了する。
【0139】
<2-3.認知機能評価処理>
プロセッサ122は、認知機能評価プログラムP16に基づき、認知機能評価処理を行う。すなわち、認知機能評価プログラムP16は、プロセッサ122による認知機能評価処理の実行により、コンピュータを認知機能評価手段として機能させる。
【0140】
また、認知機能評価処理は得点取得処理、得点標準化処理、および評価値算出処理を含む。
すなわち、認知機能評価プログラムP16は、プロセッサ122による認知機能評価処理(得点取得処理、得点標準化処理、および評価値算出処理)の実行により、コンピュータを得点取得手段、得点標準化手段、および評価値算出手段として機能させる。
【0141】
認知機能評価処理において、プロセッサ122は以下に係る処理を行う。
まず、プロセッサ122は、検査問題について受検者の得点を取得する(得点取得処理)。
また、プロセッサ122は、記憶部にあらかじめ格納されている統計処理用データを用いて受検者の得点を統計処理する(得点換算処理)。
さらに、統計処理した得点(換算後得点)を用いて、少なくとも1以上の運転適性検査項目について評価値を算出する(評価値算出処理)。
ここで、統計処理は標準化または正規化である。
このほか、認知機能評価処理において、プロセッサ122は、評価値スコアや総合評価値、総合スコアを導出し、評価レポートを作成する。
【0142】
図17は、認知機能評価処理を示すフローチャートである。
本実施形態において、例えば管理者などのユーザが、管理者端末30を用いて認知機能評価処理の開始を指示することにより、プロセッサ122は認知機能評価処理を開始する。
【0143】
まず、プロセッサ122は、採点対象となる受検者の得点を、検査結果データベースD22から検査問題(認知地図、ワーキングメモリー問題、概念認知問題)ごとに取得する(ステップ61)。例えば、問題が認知地図問題であれば、認知地図問題の得点である。
【0144】
つづいて、
図17に示すように、プロセッサ122は検査問題ごとに取得した受検者の得点をそれぞれ統計処理し、検査問題ごとの換算後得点として検査結果データベースD22に保存する(ステップ62)。
【0145】
ここで統計処理について説明する。プロセッサ122は、検査問題データベースD10に格納されている統計処理用データを用いて受検者の得点を統計処理し、換算後得点を算出する。
上述したように、統計処理は標準化または正規化である。統計処理用データは、標準化であれば得点の平均(平均点)と標準偏差である。正規化であれば、得点の最高値と最低値である。
【0146】
本実施形態の統計処理では標準化を用いているため、以下では標準化の例で説明する。運転適性検査の得点には平均点と比較して極めて高い得点、いわゆる外れ値が含まれることもあるため、統計処理として標準化を用いることがより好ましい。
【0147】
つまり、プロセッサ122は、検査問題ごとに、各検査問題の得点の平均値と標準偏差をもとに標準化を行い、(換算後得点である)標準化得点を得る。
例えば、検査問題が認知地図問題であれば、認知地図問題データベースD102に格納されている、認知地図問題の平均得点と得点の標準偏差をもとに標準化を行い、認知地図問題の標準化得点を算出する。
【0148】
得点の標準化について、詳細を説明する。本実施形態においてプロセッサ122は、以下の数式1に基づいて得点の標準化を行う。
【0149】
【0150】
具体的な数値を用いて説明する。認知地図問題データベースD102に格納されている、認知地図問題の平均点が5.0であり、得点の標準偏差は2.0、定数は3.5であるとする。
ここで、ある受検者の認知地図問題の得点が7であるとすると、上記数式1より、当該受検者の認知地図問題の標準化得点は((7.0-5.0)/2.0)+3.5=4.5である。
この例の場合、標準化得点は概ね1.0から5.9の範囲に収まる。ただし、ここで用いる平均点などの数値は説明のためのものであり、実際の数値とは異なる。
【0151】
ここで、検査問題データベースD10に格納されている平均点や標準偏差は、過去の運転適性検査の蓄積により得られているものであるが、固定されているわけではなく、適宜更新され得る。
例えば、運転適性検査システム1による運転適性検査の総受検者数が増えていったときに、管理者は平均値や標準偏差の値を更新でき、より多くの受検者データをもとにした標準化得点を得ることができる。
値を更新し得る点は、統計処理手法が標準化ではなく正規化である場合も同様である。
【0152】
図17に戻り、プロセッサ122は運転適性評価項目ごとに評価値を算出し、検査結果データベースD22に保存する(ステップ63)。
【0153】
本実施形態では、運転適性評価項目として、特に認知機能が関連する、「判断の速さ」、「集中の持続」、「同時に複数のことを処理する力」、「細かい点に気づく力」、「空間の把握と視野の広さ」、「思考のスムースさ」、「落ち着いた行動」、「計画を立てる力」、「客観的な自己理解」の9項目を採用している。
なお、運転適性評価項目はこの9項目に限るものではなく、さらに多くてもよい。受検者の運転適性をより多面的に測定するため、運転適性評価項目は多い方が好ましい。
【0154】
【0155】
数式2は、運転適性評価項目の評価値を算出するための計算式である。
数式2のうち、a、b、c、およびdは係数である。ある検査問題の得点への寄与(関連の程度)が大きい場合、対応する係数が大きくなる。
例えば、ある運転適性評価項目について、認知地図問題の標準化得点が他の問題の標準化得点よりも大きく寄与するのであれば、係数aの値は他の係数よりも相対的に大きくなる。
以下において、便宜上、検査問題から運転適性評価項目の評価値を求めるために用いる係数を「評価値算出用係数」とも称する。
【0156】
数式2に示すように、評価値を算出するための計算式は、dを係数とする項を備える。
これは、運転適性評価項目によっては、認知機能に関する問題(本実施形態の認知地図問題、ワーキングメモリー問題、または概念認知問題)の標準化得点とは別の問題の標準化得点に影響を受けるものがあり得るためである。
なお、認知機能に関する問題以外の問題は1つに限らないが、簡単のため、dを係数とする項にまとめている。
【0157】
本実施形態において、各項の標準化得点は同一の標準化計算方法が用いられるため、その値の幅は上述したように概ね1.0から5.9の範囲に収まる。
よって、標準化得点から求める運転適性評価の評価値もこの数値の範囲に収まるよう、係数の総和(ここでは係数aからdの総和)で割り算している。標準化得点に係数を掛けて比重をかけた分について評価値を調整するためである。
【0158】
このほか数式2において、数値等を調整するために、さらに定数を加算または減算するなどの計算を行ってもよい。
【0159】
数式2について、具体例を挙げて説明する。
運転適性評価項目のうち、「集中の持続」の評価値は、認知地図問題の(標準化)得点の寄与が大きく、また、概念認知問題の(標準化)得点も寄与する。
これを数式2の形に当てはめると、次の数式3のようになる。
【0160】
【0161】
数式3に示すように、「集中の持続」の評価値は、認知地図問題と概念認知問題の(標準化)得点の影響を受けるが、特に認知地図問題の(標準化)得点の影響を大きく受ける。
これを式2にあてはめると、係数aからdは例えばそれぞれ、「1.0」、「0.0」、「0.5」、および「0.0」である。
なお、この係数の値は説明のための数値であり、実際の数値とは異なる(以下において同じ)。
【0162】
運転適性評価項目によっては、単一の問題の標準化得点に影響を受けるものがある。例えば、「同時に複数のことを処理する力」の評価値は、ワーキングメモリー問題の(標準化)得点が特に大きく寄与する。
なお、係数が0となる項は記載を省略する。
【0163】
【0164】
数式4に示すように、この例では、係数が約分されるため、「同時に複数のことを処理する力」の評価値は「ワーキングメモリー問題の標準化得点」と一致する。
【0165】
ここで、各運転適性評価項目の評価値と、認知機能を測定するための問題における(標準化)得点との関連の程度について説明する。
【0166】
「判断の速さ」は、概念認知問題の得点が寄与する、
「集中の持続」は、認知地図問題の得点が大きく寄与し、かつ概念認知問題の得点が寄与する。
「同時に複数のことを処理する力」は、ワーキングメモリー問題の得点が特に大きく寄与する。
【0167】
「細かい点に気づく力」は、認知地図問題の得点が大きく寄与し、かつ概念認知問題の得点が寄与する。
「空間の把握と視野の広さ」は、認知地図問題の得点が大きく寄与する。
「思考のスムースさ」は、ワーキングメモリー問題の得点が寄与し、かつ概念認知問題の得点が寄与する。
【0168】
「落ち着いた行動」は、ワーキングメモリー問題の得点が寄与し、かつ概念認知問題の得点が大きく寄与する。
「計画を立てる力」は、概念認知問題の得点が寄与する。
「客観的な自己理解」は、認知地図問題の得点が大きく寄与する。
【0169】
ここで、9つの運転適性評価項目のうち4つの評価項目の評価値について、認知地図問題の(標準化)得点が大きく寄与している。よって、認知機能を測る検査問題には認知地図問題を含めることが特に好ましい。
【0170】
また、上述したように、運転適性検査項目のうち「同時に複数のことを処理する力」の評価値はワーキングメモリー問題の(標準化)得点が特に大きく寄与する。よって、認知機能に関連する「同時に複数のことを処理する力」を測るため、検査問題にはワーキングメモリー問題を含めることが好ましい。
【0171】
さらに、概念認知問題は、9つの運転適性評価項目のうち5つの評価項目の評価値に寄与し、1つの評価項目の評価値に大きく寄与する。運転適性検査項目に単独で強い影響を与えるものではないが、多くの評価項目に影響を与えることから、認知機能を測る検査問題には概念認知問題を含めることが好ましい。
【0172】
上述した認知機能を測る検査問題は、1種類の検査問題だけでも認知機能を測ることができるが、2種類の検査問題をともに用いて測ることがより好ましく、さらに、3種類以上の検査問題を用いて測ることがより好ましい。
例えば、運転適性評価項目のうち「集中の持続」について、認知地図問題の得点のみをもとに評価値を算出してもよいが、上述のように、さらに概念認知問題の得点も用いて評価値を算出することがより好ましい。質の異なる評価方法を用いることにより、多面的に評価することができるためである。
【0173】
数式2で示した係数(評価値算出用係数aからd)について補足する。これらの評価値算出用係数の値は、検査問題データベースD10に格納されている。
また、評価値算出用係数の値は適宜更新され得る。管理者(特に問題設計等の担当者)は、評価値算出用係数の値を更新し、運転適性評価項目の算出方法を調整することができる。
また、評価値算出用係数の調整には機械学習を適用し得る。これについては後述の機械学習処理の項目で説明する。
【0174】
ここまで述べたように、プロセッサ122は、検査問題データベースD10から係数を、検査結果データベースD22から検査問題ごとの標準化得点を取得し、運転適性評価項目の評価値を算出する。
【0175】
本実施形態の認知機能評価処理において、プロセッサ122は各検査問題の得点を標準化する。この標準化処理により、認知地図問題、ワーキングメモリー問題、そして概念認知問題といった、種類の異なる複数の問題の結果から運転適性評価項目を算出できるという利点がある。
また、運転適性評価項目のそれぞれについても同じ標準化手法で標準化されることから、運転適性検査項目同士で比較ができる。さらに、この標準化により、種類の異なる運転適性評価項目から総合評価を算出することができるという利点がある。つづいてこれらについて説明する。
【0176】
図17に戻り、プロセッサ122は運転適性評価項目ごとの評価値を比較する(ステップ64)。この比較により、運転適性検査項目において、受検者が得意とする項目(以下「得意項目」とする。)と、苦手とする項目(以下「不得意項目」とする。)を判定する。
【0177】
例えば、運転適性検査項目が「判断の速さ」、「集中の持続」、「同時に複数のことを処理する力」、「細かい点に気づく力」、「空間の把握と視野の広さ」の5つであり、これらの評価値が、この順に「4.4」、「4.9」、「5.1」、「5.2」、「5.8」だったとする。
この場合、最も得意とする運転適性検査項目は、「空間の把握と視野の広さ」であり、2番目に得意とする項目は「細かい点に気づく力」である。
逆に、最も不得意とする項目は「判断の速さ」であり、2番目に不得意とする項目は「集中の持続」である。
【0178】
プロセッサ122は、これら得意項目、不得意項目の情報を、検査結果データベースD22に保存する。本実施形態では、評価値の良かった順に2つと、評価値の悪かった順に2つをそれぞれ保存する。これらの情報は、後述する評価レポートの作成に用いられる。
【0179】
図17に示すように、プロセッサ122は、運転適性検査項目ごとの評価値を、多段階評価に変換(以下「カテゴライズ」とする。)して評価値スコアとし、保存する(ステップ65)。
本実施形態において、この多段階評価は5段階評価である。評価値スコアは、後述する評価レポート作成に用いられる。
多段階評価への変換について具体例を挙げると、本実施形態において、評価値2未満を評価値スコア「1」、評価値2以上3未満を評価値スコア「2」、評価値3以上4未満を評価値スコア「3」、評価値4以上5未満を評価値スコア「4」、評価値5以上を評価値スコア「5」としている。
【0180】
なお本実施形態では、運転適性検査項目のどの評価値についても同じ方法で評価値スコアに変換しているが、評価値ごとに変換方法を変えてもよい。
【0181】
図17に示すように、プロセッサ122は、総合評価値を算出し、さらに総合評価値を多段階評価にカテゴライズして総合スコアとし、検査結果データベースD22に保存する(ステップ66)。総合スコアは後述する評価レポート作成に用いられる。
【0182】
本実施形態において、プロセッサ122は、運転適性検査項目ごとの評価値を合計して総合評価値を算出する。
ここで、運転適性検査項目ごとの評価値の合計は、認知機能を測定する検査問題による評価値の合計に限らない。認知機能を測定する検査問題以外の検査がある場合は、その検査結果(評価値)を含んでよい。つまり、運転適性検査で行われるすべての検査の評価の合計を指すものであってもよい。
【0183】
総合評価値の算出後、プロセッサ122は、さらに総合評価値を多段階評価にカテゴライズして総合スコアを算出する。
本実施形態において、総合スコアは、総合評価値が高い順に、H(高)/M(中)/L(低)の3つである。
例えば、総合スコアは、総合評価値35未満がL(低)、35以上45未満がM(中)、45以上がH(高)などと表現される。
【0184】
なお、総合評価値の算出方法は、運転適性検査項目ごとの評価値の合計に限らない。例えば、運転適性検査で行われるすべての検査問題の各評価値の平均値をもとに総合評価値を算出してもよい。この方法の場合、本実施形態の総合評価値は概ね1.0から5.9の範囲に収まる。
または、評価値を合計しあるいは平均して得た総合評価値について、検査問題データベースD10に格納されている所定の値(総合評価値の平均や標準偏差など)を用いて標準化するなど、統計処理を行ってもよい。
【0185】
図17に戻り、プロセッサ122は、評価レポートを作成する(ステップ67)。評価レポートは、受検者の運転適性検査結果の少なくとも一部について表示するレポートである。本実施形態において、受検者は評価レポートを受検者端末20のブラウザ上で閲覧することができる。
また、評価レポートは、受検者や受検者の属する企業などに電子データとして送信され、または印刷されて配布されてもよい。評価レポートを電子データとする場合のファイル形式は特に問わないが、本実施形態ではpdfファイル形式で作成される。
【0186】
本実施形態の評価レポートは、受検者の氏名のほか、各運転適性検査項目の評価値スコアと、総合スコア、得意項目・不得意項目を含む。
また、本実施形態の評価レポートは、得意項目・不得意項目に対するコメントも含む。受検者に自身の得意項目や不得意項目を認識してもらい、また、不得意項目に関しては注意を促すためである。
【0187】
得意項目・不得意項目に対するコメントについて例を挙げる。
例えば、運転適性評価項目のうち、「空間の把握と視野の広さ」の評価値が最も低い場合、「相対的にもっとも低いと評価された能力適性項目は、自分とは異なる視点の様子を想像して物事を考えられる「空間の把握と視野の広さ」でした。この項目が低い人は、車両感覚がつかめず車体をこすってしまったり、駐車に手間取ったりしがちです。まずは余裕を持った空間の把握を促します。」といったコメントが評価レポートに記載される。
【0188】
また、運転適性評価項目のうち、「空間の把握と視野の広さ」の評価値が2番目に低い場合、「次いで低いと評価された項目は、複数の作業を同時に行うことができるほか、作業の優先順位をつけられる「同時に複数のことを処理する力」でした。この項目が低い人は、目先のことに目を奪われがちです。最初に手順を思い浮かべてから行動するよう促します。考えを声に出すことも有効です。」といったコメントが評価レポートに記載される。
コメントに関するデータの詳細はデータベースの項で説明する。
【0189】
図17に戻り、プロセッサ122は評価レポートの作成後、各種データを保存して(ステップ66)、認知機能評価処理を終了する。
【0190】
なお、本実施形態において、認知機能評価処理には、検査問題ごとの得点の取得(ステップ61)と、その換算後得点(標準化得点)の算出(ステップ62)を含めているが、これらの処理は検査問題出題処理に含めてもよい。
例えば、認知地図問題の得点の取得とその標準化得点の算出は、認知地図問題出題処理に含めてもよい。
【0191】
便宜上、検査問題ごとの得点の取得と、その換算後得点の算出(ステップ61とステップ62)を「問題別得点換算処理」と称する。
つまり、本実施形態において「問題別得点換算処理」は「認知機能評価処理」に含まれるが、別の実施形態では、「問題別得点換算処理」を「検査問題出題処理」に含めてもよい。
【0192】
<2-4.機械学習処理>
プロセッサ122は、機械学習モデルP20に基づき、各種判断を行う。
本実施形態の機械学習モデルP20は、運転特徴機械学習モデルP22と、係数調整用学習モデルP24を含む。
【0193】
機械学習で用いるアルゴリズムとして、例えばSVM(Support Vector Machine)などを用いることができる。また、機械学習の一態様として、ディープラーニング(Deep Learning(DL))を用いてもよい。ディープラーニングで用いるアルゴリズムとして、例えば畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network(CNN))や再帰型ニューラルネットワーク(Reccurent Neural Network(RNN))など、公知の方法を用いることができる。
【0194】
機械学習モデルP20は、学習により、各種判断に資する一定の判断基準を有する分類器ともいえる。
機械学習モデルP20の判断(推論)に影響するパラメータ(例えば重みやバイアス)は、管理者が適宜調整することができる。
【0195】
便宜上、機械学習モデルP20に基づいて、プロセッサ122が機械学習に関して行う処理を、「機械学習処理」と称する。このとき、機械学習モデルP20は機械学習プログラムとして機能する。
【0196】
同様に、便宜上、運転特徴機械学習モデルP22に基づいて、プロセッサ122が受検者の運転特徴について機械学習(学習・推論)する処理を「運転特徴機械学習処理」と称する。
【0197】
運転特徴機械学習モデルP22は、運転特徴機械学習プログラムとして機能する。
運転特徴機械学習プログラムは、運転特徴機械学習処理の実行により、コンピュータを運転特徴機械学習手段として機能させるプログラムである。またこの際、当該コンピュータにおいて、プロセッサを備える制御部は、運転特徴機械学習部(または運転特徴機械学習装置)としても機能する。
【0198】
運転特徴機械学習モデルP22は、受検者情報(性別、年齢、住所、およびアンケートの回答など)と受検者の運転適性検査結果(得点、換算後得点、評価値、評価値スコア、総合評価値、および総合スコアなど)とをもとに学習する機械学習モデルである。
機械学習に用いる運転適性検査結果は、少なくとも、いずれかの検査問題における受検者の得点を含む。
プロセッサ122は、運転特徴機械学習モデルP22により、受検者情報や受検者の運転適性検査結果(検査問題の得点など)の入力を受けて、受検者の運転特徴を予測(推論)する。
【0199】
ここで、この運転特徴機械学習処理について具体的に説明する。運転特徴機械学習処理は、運転特徴学習処理と運転特徴推論処理を備える。
つまり、運転特徴機械学習プログラムは、運転特徴機械学習処理の実行により、コンピュータを運転特徴学習手段、および運転特徴推論手段として機能させるプログラムである。
【0200】
「運転特徴」は、上記で定義したとおり、受検者の運転に関する特徴であり、例えば、運転歴や所定の期間内における事故の有無などである。
運転特徴に関する情報は、例えば受検者に対するアンケート(以下「運転特徴を問うアンケート」と称する。)を通じてプロセッサ122が取得する。
【0201】
運転特徴と機械学習について例を挙げて説明する。運転特徴を問うアンケート項目の1つが、「5年以内の事故歴の有無」であったとする。
運転適性検査システム1は、運転適性検査の実施により、得点や評価値などを含む受検者の運転適性検査結果と、アンケートの回答(「5年以内の事故歴の有無」の情報)とを蓄積する。そうすると、運転特徴機械学習モデルP22は、運転適性検査結果と、5年以内の事故歴の有無との間に関係性を見出し得る(運転特徴学習処理)。
【0202】
例えば、運転特徴機械学習モデルP22は、データの蓄積により、「このような運転適性検査結果になった受検者は、5年以内の事故歴がない人が多い」、あるいは逆に、「このような運転適性検査結果になった受検者は、5年以内の事故歴がある人が多い」、といった関係を見出す(学習する)。
【0203】
この関係性は定量化した値で表される。定量化した値は例えば、パーセンテージであってもよいし、段階評価(例えば5段階評価)であってもよい。
具体的には、「年齢が30歳で、検査問題についてある所定の解答を入力した受検者が、5年以内の事故歴を有する人である確率は○○%である」といった確率値である。
【0204】
そして、運転特徴機械学習モデルP22が十分に学習したあとにおいて、受検者が運転適性検査システム1による運転適性検査を受けるとする。そうするとプロセッサ122は、受検者の運転適性検査の結果とともに、機械学習に基づく受検者の運転特徴、ここでは事故の起こしやすさ(5年以内事故率)を予測(推論)する(運転特徴推論処理)。この目安を得ることで、受検者はより安全な運転を心がけることができるなどの利点がある。
【0205】
言い換えると、コンピュータが少なくとも受検者の運転特徴を含む受検者情報を登録する受検者情報登録手段を備えたうえで、運転特徴機械学習モデルP22は、プロセッサ122による運転特徴機械学習処理の実行により、コンピュータを、前記受検者の得点を少なくとも含む運転適性検査結果と、前記受検者情報とを学習データとして学習する運転特徴学習手段、および、受検者の得点を少なくとも含む運転適性検査結果を入力データとして当該受検者の運転特徴について定量化した値を出力する運転特徴推論手段、として機能させる。
以下フローチャートを用いて説明する。
【0206】
図18は、運転特徴学習処理を示すフローチャートである。本実施形態において、例えば管理者などのユーザが、管理者端末30を用いて運転特徴学習処理の開始を指示することにより、プロセッサ122は運転特徴学習処理を開始する。
【0207】
プロセッサ122は、受検者の運転適性検査の得点や評価値などの「運転適性検査結果」と、運転特徴を問うアンケートの回答など「運転特徴を含む受検者情報」とを併せ持つデータセットを取得する(ステップ71)。
データセットのデータは、機械学習モデルへの入力に適するように前処理済みのデータが使用される。なお、データの前処理の方法に特に制限はなく、公知の方法が適宜用いられる。
【0208】
プロセッサ122は、多数のデータの中からサンプルを抽出する(ステップ72)。プロセッサ122は、抽出したサンプルを用いて機械学習モデル(運転特徴機械学習モデルP22)のトレーニングを行う(ステップ73)。機械学習モデルのトレーニングにより、プロセッサ122はデータセットに係る特徴量を抽出する。
【0209】
続いて、プロセッサ122は、機械学習モデルのテストを行う(ステップ74)。学習が十分であれば(ステップ75Yes)、プロセッサ122は、その機械学習モデルを保存して(ステップ76)、運転特徴学習処理を終了する。
学習が十分でない場合には(ステップ25No)、再度サンプル抽出を行い、学習を行う。なお、学習が十分か否かの閾値は、管理者等のユーザが設定する。
【0210】
図19は、運転特徴推論処理を示すフローチャートである。本実施形態において、例えば管理者などのユーザが、管理者端末30を用いて運転特徴推論処理の開始を指示することにより、プロセッサ122は運転特徴推論処理を開始する。
【0211】
まずプロセッサ122は、対象となる受検者の運転適性検査結果を(前処理済み)データとして取得し(ステップ81)、学習済みモデル(運転特徴機械学習モデルP22)への入力を行う(ステップ82)。
プロセッサ122は、当該受検者の運転特徴について推論を行い、出力する(ステップ83)。
プロセッサ122は、各種データを保存し(ステップ36)、推論処理を終了する。保存されたデータは、評価レポートの作成などに使用される。
【0212】
まとめると、本実施形態において、運転特徴機械学習モデルP22は、
「(1)少なくとも受検者の運転特徴を含む受検者情報と、
(2)認知機能を測る検査問題における前記受検者の得点を、記憶部にあらかじめ格納されている平均値および標準偏差を用いて標準化し、当該標準化による標準化得点を用いて算出する運転適性評価項目の評価値と、を学習データとし、
認知機能を測る検査問題における受検者の得点を少なくとも含む運転適性検査結果を入力データとして当該受検者の運転特徴について定量化した値を出力するようコンピュータを機能させるための、学習済み機械学習モデル」である。
【0213】
つづいて、係数調整用学習モデルP24について説明する。
係数調整用学習モデルP24は、プロセッサ122が、評価値算出用係数を調整するための機械学習モデルである。
【0214】
係数調整用学習モデルP24は、運転適性評価項目を直接的に測定する手段による評価と、受検者の運転適性検査結果(得点、換算後得点、評価値、評価値スコア、総合評価値、総合スコアなど)をもとに学習する。
【0215】
係数調整用学習モデルP24に基づいて、プロセッサ122が運転適性評価項目の評価値を算出するための係数(評価値算出用係数)を調整する処理を「係数調整処理」と称する。
【0216】
係数調整用学習モデルP24は係数調整プログラムとして機能する。
すなわち、係数調整プログラムは、係数調整処理の実行により、コンピュータを係数調整手段として機能させるプログラムである。またこの際、当該コンピュータにおいて、プロセッサを備える制御部は、係数調整部(または係数調整装置)としても機能する。
【0217】
係数調整処理について詳細を説明する。
本実施形態において、受検者の運転適性は、認知機能を測定する問題の換算後得点(標準化得点)をもとに、プロセッサ122が運転適性評価項目の評価値という形で算出する。
これとは別に、運転適性評価は、受検者本人の自己申告や、上述した認知機能を測定する問題以外の検査などによっても評価し得る。
【0218】
ここで、受検者本人の自己申告による評価について説明する。
例えば、運転適性評価項目のうち、「集中の持続」という項目だけを考えるとする。この場合、受検者本人の自己申告による評価とは、受検者に対して例えば「集中力はあるほうですか?」といった質問をアンケートにより行い、それに1から5の数値(数が大きいほどあてはまるとする)で答えてもらうことによる評価である。
なおこのような受検者本人の自己申告による評価を得るためのアンケートを、以下「運転適性評価項目について問うアンケート」と称する。
【0219】
また、認知機能を測定する問題以外の検査による評価とは、例えば、集中力の測定に特化したようなや心理学上の筆記テストや、測定装置を用いた実技テストによるものである。
例えば、運転適性評価項目が「判断の速さ」であれば、もぐらたたきゲーム機のような装置でも測ることができると考えられる。
【0220】
運転適性評価項目について問うアンケートや、認知機能を測定する問題以外の問題のように、運転適性評価項目のうち一部の項目について直接的に測る手段を、「運転適性評価項目を直接的に測定する手段」と称する。
【0221】
運転適性評価項目を直接的に測定する手段がある場合は、当該手段による評価結果がいわゆる教師データとなり、その運転適性評価項目の評価値を算出するための評価値算出用係数を改善し得る。
この運転適性評価項目を直接的に測定する手段による評価結果は、例えば標準化などの方法により、上述の数式による運転適性評価項目の評価値と対応させる。
【0222】
なお運転適性評価項目を直接的に測定する手段は、教師データである以上、ある運転適性評価項目の検査に使用するにあたり、本実施形態の検査問題による運転適性検査よりも適切に当該運転適性評価項目を測定できる手段でなくてはならない。
【0223】
係数調整処理について、具体例を挙げて説明する。運転適性評価項目のうち、「集中の持続」の評価値が{1.0×(認知地図問題の標準化得点)+0.5×(概念認知問題の標準化得点)}/1.5で算出されるとする。この1.0や0.5が係数である。
【0224】
「集中の持続」について、多くの受検者に運転適性評価項目について問うアンケート(運転適性評価項目(集中の持続)について問うアンケート)を行った結果、「集中力がある」と自己申告した受検者は、認知地図問題の得点が高い傾向にあったと学習したとする。
この場合、プロセッサ122は、先ほど1.0であった認知地図問題の標準化得点に係る係数を1.1に更新し得る。
【0225】
このように、運転適性評価項目を直接的に測定する手段、上記の例では運転適性評価項目について問うアンケートにより、運転適性評価項目の評価値をプロセッサ122は取得する。
これにより、係数調整用学習モデルP24は、データの蓄積により、「このような運転適性検査結果になった受検者は、ある運転適性評価項目を直接的に測定する手段において、高い(または低い)評価値となる人が多い」、といった関係を見出す(学習する)。
【0226】
この関係性は定量化した値で表される。本実施形態において、この関係性は評価値算出用係数で表される。
【0227】
なお本実施形態の係数調整用学習モデルP24は、学習後、当該運転適性評価項目の評価値算出用係数について、補正案を管理者等のユーザに提示する。プロセッサ122が評価値算出用係数を自動的に更新しないのは、運転適性試験の同一性を保持したい場合もあり得るからである。
ただし、これに限られるものではなく、プロセッサ122が、当該運転適性評価項目の評価値算出用係数を自動的に補正し、改善された評価値算出用の数式を保存するようにしてもよい。
【0228】
そして、係数調整用学習モデルP24が十分に学習し、その学習に基づいて係数を変更したあとにおいて、受検者が運転適性検査システム1による運転適性検査を受けるとする。そうすると受検者は、運転適性評価項目について、より改善された数式による評価値を得ることができる。これにより、受検者は自分の運転適性をより正確に知ることができるなどの利点がある。
つまり、評価値は定量化した値であるから、プロセッサ122は、運転適性検査の検査問題に対する受検者の標準化得点を入力データとして、運転適性評価項目の評価について定量化した値である評価値を与える。
【0229】
まとめると、本実施形態においての係数調整用学習モデルP24は、「少なくとも(1)運転適性評価項目を直接的に測定する手段による評価、(2)認知機能を測る検査問題における前記受検者の得点を、記憶部にあらかじめ格納されている平均値および標準偏差を用いて標準化し、当該標準化による標準化得点を用いて算出する運転適性評価項目の評価値、および(3)前記標準化得点から運転適性評価項目の評価値を算出する式に用いる評価値算出用係数、を学習データとして、
前記数式による評価値を、前記運転適性評価項目を直接的に測定する手段による評価に近づける評価値算出用係数を導出し、
運転適性検査の検査問題に対する受検者の標準化得点を入力データとして、運転適性評価項目の評価について定量化した値を出力するようにコンピュータを機能させるための学習済み機械学習モデル」である。
【0230】
以上のように、本実施形態の運転適性検査処理では、プロセッサ122が認知機能を測定する検査問題を出題し、受検者の解答入力を得てこれを採点し、検査問題ごとに得点をつける。
またプロセッサ122は、検査問題ごとに設定されている統計処理用データ(得点の平均値と標準偏差)を用いて得点を統計処理(標準化)して換算後得点(標準化得点)を算出する。
つづいてプロセッサ122は、標準化得点と所定の数式から、運転適性評価項目ごとに評価値を算出する。また、評価値を5段階に区分し評価値スコアとする。
さらに、プロセッサ122は、評価値をもとに、受検者の総合評価値を算出する。また、総合評価値を3段階に区分し、総合スコアとする。
プロセッサ122はこれらの評価結果をもとに評価レポートを作成する。
【0231】
本実施形態の運転適性検査処理において、プロセッサ122は、認知機能を測る3種類の検査問題(認知地図問題、ワーキングメモリー問題、概念認知問題)を用いて、9つの運転適性検査項目について評価(値)を出力する。
プロセッサ122は、検査問題の得点を統計的に処理(標準化、正規化)するため、それぞれの検査問題について同じ尺度で比較し、また加算等の演算をすることができる。つまり、運転適性を評価する(運転適性評価項目の評価値を得る)に際し、複数の検査問題を組み合わせて評価することができる。
【0232】
これにより、本実施形態の運転適性検査システム1は、運転適性評価項目について多面的に測定でき、より正確に受検者の運転適性を測ることができるという利点がある。
また、統計処理により、運転適性評価項目の評価値についても加算等の演算ができるため、受検者は自己の運転適性について総合的な結果を知ることができる。
【0233】
さらに、本実施形態の機械学習処理により、本実施形態の運転適性検査システム1は、受検者の運転適性予測や、評価値算出用係数の改善など、従来の運転適性検査にはない付加価値を与えることができる。
【0234】
知能・知覚心理学の分野の中では、「認知」は比較的新しい考え方であることから、認知機能を測る検査問題を出題する本実施形態の運転適性検査システム1により、運転適性検査の精度がより向上することが期待できる。
【0235】
そのほか、運転適性検査をオンラインで行うメリットもある。例えば、人が採点を行う場合、読み取るべき箇所を誤るなど、間違いなどが生じる可能性がある。採点者の教育や各種工夫によりこういった誤りは抑制できるが、完全にゼロにすることは困難である。この点、コンピュータによる評価は見間違いによる誤りは生じない。また一般に、判断速度や処理速度も、コンピュータによる評価の方がはるかに早いという利点がある。
【0236】
3.データ
以下、本実施形態の運転適性検査システム1が扱うデータについて、図を用いて説明する。
本実施形態の運転適性検査システム1は、サーバ10の記憶部14(データ格納部14b)に運転適性検査データベースD1を備える。運転適性検査データベースD1は、検査問題データベースD10、受検者情報データベースD20、および管理者情報データベースD30を備える。
【0237】
検査問題データベースD10は、検査問題に関するデータ(検査問題データ)を備えるデータベースである。検査問題データベースD10は、検査に応じた個々のデータベースを備える。本実施形態において、検査に応じた個々のデータベースとは例えば、認知地図問題データベースD102、ワーキングメモリー問題データベースD104、および概念認知問題データベースD106である。
また、検査問題データベースD10はコメントデータベースD12を含む。
【0238】
これら個々のデータベースはそれぞれ、検査の内容を説明するためのデータ(テキスト、画像など)、(練習問題を含む)検査問題データ、正解データ、および得点の統計処理のためのデータ(得点の平均値、標準偏差、最高値、最低値)など、検査や評価に必要なデータを含む。データ形式に制限はなく、テキストデータ、画像(映像)データ、音声データなどの各種データ形式を使用し得る。
以下検査問題データベースD10に含まれるデータベースについて例示する。
【0239】
【0240】
表1は、認知地図問題データベースD102に含まれるデータを例示するものである。
表1に示すように、本実施形態において認知地図問題データベースD102には、データとして一意の問題IDのほか、ブラウザ画面に表示される地図(上面視図)およびイラスト(正面視図)に用いられる画像ファイル名や、正解選択肢の情報が含まれる。
【0241】
例えば、認知地図問題出題処理において、問題ID「M0001」の問題を表示する場合、プロセッサ122は、ブラウザ上で上面視図(地図)を表示する部分に「map0001.png」の画像ファイルを、正面視図(イラスト)を表示する部分に「vision0001.png」の画像ファイルを配置する。
また、この問題の正解選択肢は「C」であるから、プロセッサ122は、受検者がCの選択肢を選択した場合は得点を付与し、それ以外の選択肢を選択した場合、あるいは「わからないボタン」を押下した場合は、得点を付与しない。
【0242】
ワーキングメモリー問題データベースD104は、ワーキングメモリー問題に関するデータを備える(不図示)。ワーキングメモリー問題データベースD104は例えば、計算問題に関するデータなどを含む。
【0243】
【0244】
表2は、概念認知問題データベースD106に含まれるデータを例示するものである。本実施形態において概念認知問題データベースD106には、データとして一意の問題IDのほか、ブラウザ画面に表示される例および解答選択肢の画像ファイル名と、正解選択肢の情報が含まれる。
【0245】
例えば、概念認知問題出題処理において、問題ID「R0001」の問題を標示する場合、プロセッサ122は、例を表示する部分に「example0001.png」の画像ファイルを、選択肢Aから選択肢Dを表示する部分に「R000101.png」から「R000104.png」のそれぞれの画像ファイルを配置して表示する。
また、この問題の正解選択肢は「C」であるから、プロセッサ122は、受検者がCの選択肢を選択した場合は得点を付与し、それ以外の選択肢を選択し場合、あるいは「わからないボタン」を押下した場合は、得点を付与しない。
【0246】
【0247】
表3は、コメントデータベースD12に含まれるデータを例示するものである。本実施形態においてコメントデータベースD12には、データとして一意のコメントIDのほか、コメント選択条件、およびコメント文の情報が含まれる。
【0248】
本実施形態において、運転適性評価項目は9つある。そして、評価レポートには、1番目と2番目に評価値の高かった運転適性評価項目についてのコメントと、1番目と2番目に評価値の低かった評価項目についてのコメントが表示される。
【0249】
表3の例で説明すると、コメントIDでC0001からC0039のコメントのうち、プロセッサ122は4つのコメントを選択する。
つまり、最も評価値が高い運転適性評価項目について、プロセッサ122はC0001からC0009のどれかのコメントを選択する。
また、2番目に評価値が高い運転適性評価項目について、プロセッサ122はC0011からC0019のどれかのコメントを選択する。
不得意項目については、C0021からC0029から1つ、C0031からC0039から1つのコメントを選択する。
【0250】
例えば、9つの運転適性評価項目のうち、最も評価値の高かった評価項目が「集中の持続」だったとする。この場合、表3に示すように、最も評価値が高かった評価項目のコメントとして、プロセッサ122は「C0002」のコメントを選択し、評価レポート上に表示する。
また、2番目に評価値の高かった評価項目が「判断の速さ」だった場合、プロセッサ122は、2番目に評価値が高かった評価項目のコメントとして、「C0011」のコメントを選択し、表示する。
【0251】
受検者情報データベースD20は、受検者に関する情報(受検者情報)を記憶するデータベースである。
受検者情報とは例えば、受検者ID、受検者の年齢、氏名、性別、住所、電話番号、またはアンケートの回答などの情報である。上述したように、アンケートは受検者の運転特徴を得るためのアンケートを含む。
【0252】
【0253】
表4は、受検者情報データベースD20に含まれるデータを例示するものである。データには、受検者IDのほか、上述した各種受検者情報(氏名、性別、年齢、住所、電話番号、アンケートの回答)が含まれる。さらに、受検者情報には、認証情報や、更新履歴、評価レポートの発行履歴などの各種情報を含んでいてもよい。
なお、受検者情報データベースD20に含まれるデータはテキストデータに限られるものではなく、例えば認証用の登録画像など、画像情報を含んでいてもよい。
【0254】
【0255】
表5は、検査結果データベースD22に含まれるデータを例示するものである。
検査結果データベースD22は、受検者の運転適性検査結果を格納するデータベースである。
表5に示すように、検査結果データベースD22に格納されるデータは例えば、認知機能を測定する各種検査問題の解答数・得点・換算後得点、評価値・評価値スコア、総合評価値・総合スコアである。
【0256】
なお表5中、解答数・得点・換算後得点は認知地図問題についてのみ表記し、評価値・評価値スコアは「判断の速さ」と「集中の持続」についてのみ表記している。また、表5中、換算後得点は「換算後」と、評価値スコアは「判断の速さ」などの欄に「スコア」と、総合評価値は総合欄に「評価値」と、そして総合スコアは総合欄に「スコア」と表記している。
【0257】
そのほか、表5には記載していないが、個々の問題(小問)の正誤(次項)、誤答数、「わからない」を選択した数(不図示)、解答に要した時間などが含まれていてもよい。
さらに、検査結果データベースD22は、過去の運転適性検査結果を含んでもよく、例示した以外の各種運転適性検査結果が含まれ得る。
【0258】
なお、表5においては、認知地図問題、ワーキングメモリー問題、概念認知問題の検査結果を1つずつ表示しているが、これに限られるものではない。ほかの検査問題を複数組み合わせて、運転適性を測ることが考えられる。
例えば、異なる種類の認知地図問題が2つ含まれるケースや、上述した認知機能を測定するための問題とは別の心理テスト問題が含まれるケースなどである。上述したように、多くの評価問題で多面的に評価することで、受検者の運転適性がより適切に評価されるためである。
このような心理テストなどの結果など、運転適性検査結果に関するものであれば検査結果データベースD22に含まれ得る。
【0259】
【0260】
表6は、検査結果データベースD22に含まれるデータの別の例である。データには、受検者IDのほか、問題ID、その問題に対する受検者の解答、そしてその正誤が含まれる。
この例では、ある受検者(受検者ID:10010001)について、個々の問題(小問)のける正誤が示される。例えば、表6に示すように、この受検者は、M0001とM0003について正しい答えを入力しているが、M0002の問題では誤った答えを入力していることがわかる。
【0261】
本実施形態において、受検者情報データベースD20と、検査結果データベースD22は、受検者IDにより運転適性検査データベースD1内で紐づけられる。ただし本実施形態において、このデータベースへのアクセスは、どの端末からのアクセスかによって、プロセッサ122が適宜制御する。
【0262】
例えば、受検者は、自己の登録情報と自己の評価値スコア・総合スコアを知ることはできるが、当然他の受検者のデータにはアクセスできず、知ることはできない。また、本実施形態において、受検者は自己の得点、換算後得点(標準化得点)、運転適性検査項目の評価値、および総合評価値にもアクセスできない。
一方、本実施形態において、管理者は、すべての受検者のすべての運転適性検査結果にアクセスできるが、ある検査結果がどの受検者の検査結果であるかまではわからない。
【0263】
このようにしているのは、個人情報の保護と、ビッグデータの活用を両立するためである。例えば、管理者が、受検者の年齢、性別、住所(都道府県)、アンケートの回答、各検査の検査結果といった情報を、個人情報を除いて一括で取得できるようにすれば、この情報単独で、またはほかの情報との連携により、運転特徴などの情報を蓄積することができ、交通事故を低減するための情報分析などに利活用できる。
【0264】
管理者データベースD30は、運転適性検査システム1の管理者に係るデータベースである(不図示)。上述した通り、管理者とは例えば、検査機関やその職員などである。
管理者データベースD30は、個々の管理者のID(管理者ID)などを含む。また管理者データベースD30には、管理者である職員の個人の情報のほか、管理者のログイン情報、例えばパスワードや認証用の登録画像などを含んでいてもよい。
【0265】
以上のようなデータベースの構成により、運転適性検査システム1は、受検者情報や受検者の運転適性検査結果を蓄積することができる。この結果、例えば受検者が時間をおいて複数回受検し、前回の受検データと今回の受検データとを比較することにより、受検者の成長や変化などを客観的に把握することができる。
【0266】
また、データベースが受検者情報や受検者の運転適性検査結果を多く蓄積することにより、機械学習モデルを構築することができ、この機械学習モデルと機械学習プログラムを用いて、受検者の運転特徴を予測する運転特徴機械学習処理などを行うことができる。
【0267】
言い換えると、運転適性検査データベースD1は、コンピュータとの協働により、機械学習、特に本実施形態の運転特徴機械学習処理に適したデータ構造を有する。
すなわち、運転適性検査データベースD1は、「制御部及び記憶部を備えるコンピュータに用いられるデータ構造であって、前記データ構造はデータ要素として、(1)少なくとも受検者の運転特徴を含む受検者情報、(2)認知機能を測る検査問題、(3)前記検査問題における前記受検者の得点、(4)前記得点を統計処理することにより算出する換算後得点、および、(5)前記換算後得点より算出する運転適性評価項目の評価値、を含み、
認知機能を測る検査問題における受検者の得点を少なくとも含む運転適性検査結果を入力データとして当該受検者の運転特徴について定量化した値を出力する、運転特徴機械学習処理に用いられることを特徴とするデータ構造」を備える。
【0268】
4.ハードウェア構成
図1に示すように、本実施形態における運転適性検査システム1は、サーバ10、受検者端末20、および管理者端末30を備える。また、これらの各装置は、ネットワークNを介して接続されている。ネットワークNは例えばインターネットなどである。
サーバ10には本実施形態に係る運転適性検査システム1を動作させるためのソフトウェア(運転適性検査プログラムP1)がインストールされており、当該ソフトウェアの機能により、各種処理が実行される。
以下、各ハードウェアについて説明する。
【0269】
<サーバ10>
サーバ10は、運転適性検査プログラムP1を実行するためのコンピュータである。
図1においてサーバ10は1台のみ図示しているが、数は1台に限られるものではなく、複数のサーバにより実現してもよい。
【0270】
例えば、機械学習に係る処理を別のサーバで行わせるなどの機能分散が考えられる。この場合、運転適性検査に係るサーバ(コンピュータ)と機械学習に係るサーバ(コンピュータ)が異なるため、プロセッサも別のものになるが、本実施形態では簡単のため、いずれのプロセッサについてもプロセッサ122と表記している。
このほか、負荷分散や可用性の観点から、複数のサーバを用いることも考えられる。
【0271】
図20は、サーバ10のハードウェア構成図である。
図20に示すように、サーバ10は、制御部12、記憶部14、および通信制御部16を備える。
また制御部12は、プロセッサ122、ROM124、RAM126、計時部128を備える。
なお、本実施形態において、機器間の接続態様(ネットワークトポロジ)は特に限定されない。例えばバス型であってもよいし、スター型、メッシュ型などであってもよい(以下において同じ)。
【0272】
プロセッサ122は、ROM124や記憶部14などに記憶されたプログラムに従って、情報処理や各種装置の制御を行う。本実施形態において、プロセッサ122はCPU(Central Processing Unit)である。
【0273】
なお、プロセッサ122はCPUに限られるものではない。CPU、DSP(Degital Signal Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはGPGPU(General Purpose computing on GPU)など、各種プロセッサを単独で、あるいは組み合わせて用いてもよい。
例えば、CPUとGPUを統合したプロセッサはAPU(Accelerated Proessing Unit)などと呼ばれるが、このようなプロセッサを用いてもよい。
【0274】
プロセッサ122は、サーバ10において運転適性検査部130としても機能する(不図示)。運転適性検査部130は、運転適性検査プログラムP1を実行して運転適性検査処理を行う。
【0275】
また、一のプログラムは、別のプログラムを含んでいてもよい。例えば本実施形態において、運転適性検査プログラムP1は、受検者情報登録プログラムP12や検査問題出題プログラムP14などを含む。
【0276】
図20に戻り、ROM124は、プロセッサ122が各種制御や演算を行うための各種プログラムやデータがあらかじめ格納された、リードオンリーメモリである。
【0277】
RAM126は、プロセッサ122にワーキングメモリとして使用されるランダムアクセスメモリである。このRAM126には、本実施形態の各種処理を行うための各種エリアが確保可能になっている。
すなわち、記憶部14に格納された、運転適性検査プログラムP1などの各種プログラムや、運転適性検査データベースD1などの各種データがプロセッサ122により読み出され、RAM126に記録(格納)される。
【0278】
計時部128は、計時処理を行う。本実施形態において、計時部128は例えば、検査問題における制限時間の計算などに用いられる。
【0279】
記憶部14は、プログラムやデータなどの情報を記憶するための装置である。記憶部はストレージとも称する。本実施形態において、記憶部14はサーバ10に内蔵されるが、これに限られるものではなく、専用HDD(ハードディスクドライブ)等の外部記憶を備えていてもよい。
【0280】
記憶部14は、データの読み書きが可能な記憶媒体と、当該記憶媒体に読み書きするドライブとを含む。
当該記憶媒体は、特に制限されないが、例えば、内蔵型でも外付型でもよく、HD(ハードディスク)、CD-ROMなどが挙げられる。
当該ドライブは、特に制限されないが、例えばHDD(ハードディスクドライブ)、SSD(ソリッドステートドライブ)等が挙げられる。
【0281】
図20に示すように、記憶部14は、プログラム格納部14aとデータ格納部14bを備え、各種処理に必要なプログラムやデータを備える。
例えば。プログラム格納部14aには、本実施形態に係る運転適性検査プログラムP1のほか、サーバ10に接続されている機器を制御するための制御プログラム、例えば通信制御部16を制御する通信制御プログラムなどが格納されている。
【0282】
図20に示すように、通信制御部16は、サーバ10と、外部にある端末等との間で通信を行うための装置である。外部にある端末とは例えば、後述する受検者端末20や管理者端末30などである。通信制御部16は、
図1に示すように、サーバ10をネットワークNに接続する。
本実施形態における通信制御部16の通信方式は有線LANによる方式であるが、通信方式は公知のものを適宜用いることができる。
【0283】
上記のほか、サーバ10は、命令やデータの入力を行うための入力部(例えばキーボード)や、情報を何らかの形で出力するための出力部(例えば音声出力装置)などを備えていてもよい(不図示)。また、本実施形態の用途のために追加的に必要な装置や、本実施形態の用途について利便性を向上させるための装置を備えていてもよい。
【0284】
<受検者端末20>
受検者端末20は、受検者が運転適性検査システム1を利用するための情報処理装置である。受検者は受検者端末20を用いて、サーバ10にアクセスする。
【0285】
本実施形態において、受検者端末20はデスクトップPCである。ただし、受検者端末20はこれに限られるものではなく、スマートフォンやタブレットなどの携帯型端末であってもよい。
図20において、1台の受検者端末20のみ図示しているが、数は1台に限られるものではなく、複数の端末のそれぞれにより利用できる。
【0286】
図21は、受検者端末20のハードウェア構成図である。
図21に示すように、受検者端末20は、制御部22、記憶部24、通信制御部26、および入出力部28を備える。すでに説明済みの項目については、説明を省略する。
【0287】
制御部22は、サーバ10の制御部12同様、プロセッサ、ROM、RAM、および計時部を備えるが、これらの基本的な機能は上記で説明したものに準ずるため、説明は省略する。
【0288】
記憶部24は、プログラムやデータなどの情報を記憶するための装置である。記憶部24は、プログラム格納部とデータ格納部を備える。サーバ10同様に、各種処理に必要なプログラムやデータが格納されている。
記憶部24には例えば、運転適性検査システム1を利用するためのソフトウェア(アプリケーションソフトウェア)が格納されている。当該ソフトウェアは、サーバ10と通信を行い、データをやり取りして各種データを保存するための機能などを備える。
【0289】
ただし受検者端末20は専用のアプリケーションソフトウェアを必須とするものではない。例えば、受検者端末20は汎用的なブラウザを備えていればよく、サーバ10にアクセスするだけで運転適性検査システム1を利用するようにしてもよい。これは管理者端末30も同様である。
【0290】
通信制御部26は、受検者端末20と、外部にある端末等との間で通信を行うための装置である。外部にある端末等とは例えば、サーバ10である。通信制御部26は、
図1に示すように、受検者端末20をネットワークNに接続する。
本実施形態における通信制御部16の通信方式は、有線でも無線でもよい。受検者端末20がデスクトップPCであれば有線、無線の両方の場合が考えられる。また、受検者端末20がスマートフォンであれば、無線による通信方式が考えられる。
【0291】
有線であれば、例えばIEEE802.3(例えばバス型やスター型の有線LAN)で規定される通信方式を好適に用いることができるが、それ以外にも、IEEE802.5(例えばリング型の有線LAN)で規定される通信方式などを用いてもよい。
無線であれば、例えばIEEE802.11(例えばWi-Fi)で規定される通信方式を好適に用いることができるが、それ以外にも、IEEE802.15(例えばブルートゥース(登録商標)、BLE(ブルートゥース(登録商標)ローエナジー)など)、IEEE802.16(例えばWiMAX)、または赤外線通信などの光通信で規定される通信方式などを用いてもよい。
【0292】
図21に示すように、入出力部28は、受検者端末20への入力、および受検者端末からの出力に係る装置である。入出力部28は、入力を受け付ける入力部282と、出力を行う出力部284とを備える。
入力部282として例えば、キーボード、ポインティングデバイスとしてのマウス、トラックパッド、タブレット、またはタッチパネルなどが挙げられる。
【0293】
出力部284は例えば、画像や音声、帳票などを出力するための装置である。
出力部284として例えば、ディスプレイ(液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ)などの表示装置や、スピーカなどの音声出力装置、プリンタなどの帳票出力装置が挙げられる。
便宜上、受検者端末20の出力部284のうち、画像等を表示する表示部を表示部284aとする。
【0294】
受検者端末20がスマートフォンなどの場合、入力部282は、タッチスクリーンなど、画像などを表示する表示部(表示部284a)の表面に配置される。この場合、入力部282は、表示部284aに表示される各種操作キーに対応した、ユーザのタッチ位置を特定し、当該操作キーの入力を受け付ける。
【0295】
<管理者端末30>
管理者端末30は、サーバ10の管理のために用いられる端末である。本実施形態において、管理者端末30はデスクトップPCである。管理者端末30は、例えば運転適性検査を提供する検査機関(自動車学校など)に設置される。
【0296】
管理者端末30は、制御部、記憶部、通信制御部、入力部、および出力部を備える。ハードウェア構成図やすでに説明済みの項目の説明については省略する。
管理者端末30の制御部は、受検者端末20の制御部22同様、運転適性検査システム1を利用するためのソフトウェア(アプリケーションソフトウェア)を備える。
【0297】
管理者は管理者端末30により、サーバ10の管理のほか、サーバ10が保有するデータにアクセスし、統計情報を取得することなどもできる。そのため、管理者端末30は運転適性検査システム1について、受検者端末20よりも高度なアクセス権限を有する。
上述したUIについても、管理者端末30に対してのみ表示されるUIがあってもよい。その場合、サーバ10は、データへのアクセスが管理者端末30からであることを認識し、管理者端末30用のデータを送信する。
【0298】
以上のような構成により、運転適性検査の問題等はサーバ10の記憶部14(データ格納部14b)に記憶されるため、受検者端末20とは隔離される。
この点、本実施形態の運転適性検査システム1では、受検者端末20には運転適性検査の問題が表示されるのみであるため、紙ベースの運転適性検査のように問題用紙を回収等するが必要なく、問題用紙の管理の手間を省くことができる。
また、受検者情報をサーバ10の特に秘匿性の高い領域に格納することで、受検者端末20から個人情報が流出するなどのリスクを低減できるメリットがある。
【0299】
また、従来の紙ベースの運転適性検査と異なり、本実施形態の運転適性検査システム1は、問題の変更が容易というメリットがある。これにより、最新の心理学の研究成果などを応用した検査を取り入れやすいという利点がある。
例えば問題の切り替えについて、紙ベースの運転適性検査は、検査用紙を発行する必要上、古い検査用紙と新しい検査用紙が併存し得る。よって、新しい問題の細かい期間でアップデートし、切り替えることは困難である。一方、本実施形態の運転適性検査システム1では、場所や日時を問わず、問題のアップデートを短時間で一斉に行うことができる。
【0300】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0301】
(ログイン認証の変形例)
例えば、上述した実施形態において、受検者は、企業コード、メールアドレス、およびパスワードを入力して受検システムにログインしていた。
このログイン認証に用いる入力情報の組み合わせはこれに限られない。例えば、受検者IDとパスワードで認証してもよい。この場合、メールアドレスを持たない受検者であってもログインが可能となる。
【0302】
また、本実施形態において認証手段はパスワード(知識認証)を用いていたが、これに限られない。例えば、受検者が使用する端末による所有物認証や、生体認証によりログインできるようにしてもよい。
所有物認証であれば、例えばICカードやワンタイムパスワード、SMS(ショートメッセージサービス)を用いた認証などが挙げられる。
また、生体認証の場合、指紋認証装置による認証などが挙げられる。この場合、受検者端末20に入力部282として指紋認証装置を接続する。
【0303】
(入力方式の変形例)
上述した実施形態では、受検者の入力は主にボタン押下などの選択入力であった。しかしこれに限られるものではなく、受検者の解答(解答入力)は、問題に形式に応じて種々の形式を取り得る。
例えばワーキングメモリー問題の計算問題において、解答入力は、受検者端末20に付属するキーボードやテンキーなどの入力装置によるものや、タッチペンを用いた筆記入力を採用することなどが挙げられる。
【0304】
(制限時間表示の変形例)
上述した実施形態のユーザーインターフェースでは省略していたが、各検査問題において、画面上に残り時間を表示するようにしてもよい。解答時における受検者の時間管理が容易になるという利点がある。
また、表示方式はバーグラフで表示するもの(
図7参照)のほか、円グラフなどの各種グラフや、数値(例えば、「残り時間○○秒」、「残り時間1:20」、「経過時間5:25(解答時間10:00)」など)などで表示するものであってもよい。
【0305】
(検査問題出題処理の変形例)
上述の実施形態において、検査問題出題処理で出題される問題は、プロセッサ122が検査問題データベースD10からランダムに問題を選択して出題する。ただしこれに限られるものではなく、出題される一部の問題またはすべての問題が固定であってもよい。
すべての問題が固定である場合、各受検者に対して同一の問題を出題することで、極めて信頼度の高い統計データが取得できるという利点がある。
一方、ランダムに問題を出題する場合、出題と実際の運転傾向を見ながら、運転適性検査システムを動的に改良できるほか、心理学等の研究結果を踏まえて問題を改良することができるといった利点がある。
【0306】
(認知地図問題における変形例)
上述した実施形態において、プロセッサ122は、問題文のほか、正面視図(イラスト)UI-182aと、上面視図(地図)UI-182bと、解答選択肢UI-162を1つの画面に同時に表示していた。
しかしこれに限られるものではなく、受検者の操作により正面視図と上面視図を切り替えられるようにしてもよい。スマートフォンなどの画面の場合、ある程度解像度が必要な2つの図を同時に表示するのは困難なためである。
また、上面視図(地図)が画面に映り切らない場合、地図をスクロール表示できるようにしてもよい。
【0307】
また、上述した実施形態において、上面視図(地図)は真上から見た図、いわゆる俯瞰図であったが、これに限られるものではなく、斜め上から見た図、いわゆる鳥瞰図であってもよい。
俯瞰図は、地図平面の法線上から法線に沿って真下に地図を見ているといえる。これを地図平面と視線の角度(見下ろす角度)で表すと、上述した俯瞰図は視線の角度が90度といえる。
斜め上からみた図について定量化すると、視線の角度は30度以上90度以下が好ましい。30度未満だと俯瞰図として見づらくなり、また正面視(角度で表すと0度)とあまり変わらなくなるためである。
【0308】
本実施形態を含む発明は、換言すると以下の特徴を備える。下記は本願出願時における特許請求の範囲と対応する。ただし、出願後における特許請求の範囲の補正により、当該補正後の特許請求の範囲の記載とは異なる場合がある。
(1)第1の発明は、コンピュータを、認知機能を測る検査問題を出題する検査問題出題手段、前記検査問題において受検者の解答入力を受け付ける解答入力受付手段、前記解答入力の制限時間を計時する制限時間計時手段、前記検査問題について受検者の得点を取得する得点取得手段、
記憶部にあらかじめ格納されている統計処理用データを用いて前記受検者の得点を統計処理し、換算後得点を算出する得点換算手段、および、
前記換算後得点を用いて、少なくとも1以上の運転適性検査項目について評価値を算出する評価値算出手段、として機能させ、
前記統計処理は、標準化または正規化であることを特徴とする、受検者の運転適性を検査するための運転適性検査プログラムを提供する。
(2)第2の発明は、前記認知機能を測る検査問題は、(1)上面視図である地図と、前記上面視図の所定位置における正面視に対応する正面視図と、前記所定位置に対応する選択肢を含む複数の選択肢とを表示し、前記所定位置に対応する選択肢を受検者に解答させる認知地図問題、(2)受検者に記憶させる記憶対象を表示した後、少なくとも2以上の計算問題を出題し、前記計算問題の出題後に、受検者に前記記憶対象を入力させる解答入力欄を表示するワーキングメモリー問題、または、(3)ある一定の関係にある少なくとも2以上の見本要素を備える見本と、各要素が各見本要素と同じ関係にある選択肢を含む複数の選択肢とを表示し、各要素が各見本要素と同じ関係にある選択肢を受検者に解答させる概念認知問題、のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の運転適性検査プログラムを提供する。
この場合、まず、認知地図問題を含むことで、運転適性評価項目のうち多くの項目を測定することができる。認知地図問題の結果(得点、標準化得点)は、多くの項目に寄与するためである。そのほか、さらにワーキングメモリー問題、概念認知問題をさらに検査問題として含むことにより、受検者の認知機能(ひいては運転適性)をより多面的に、正確に評価することができるという利点がある。検査問題の種類は、多いほど好ましい。
(3)第3の発明は、さらに、少なくとも受検者の運転特徴を含む受検者情報を登録する受検者情報登録手段、
前記受検者の得点を少なくとも含む運転適性検査結果と、前記受検者情報とを学習データとして学習する運転特徴学習手段、および、
受検者の得点を少なくとも含む運転適性検査結果を入力データとして当該受検者の運転特徴について定量化した値を出力する運転特徴推論手段、を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の運転適性検査プログラムを提供する。
この場合、さらに運転特徴機械学習手段を備えることで、運転適性検査にとどまらず、受検者に対し、ビッグデータを利用した運転特徴の予測という付加価値を与えることができるという利点がある。
(4)第4の発明は、学習済み機械学習モデルであって、少なくとも受検者の運転特徴を含む受検者情報と、
認知機能を測る検査問題における前記受検者の得点を、記憶部にあらかじめ格納されている平均値および標準偏差を用いて標準化し、当該標準化による標準化得点を用いて算出する運転適性評価項目の評価値と、を学習データとし、
認知機能を測る検査問題における受検者の得点を少なくとも含む運転適性検査結果を入力データとして当該受検者の運転特徴について定量化した値を出力するようコンピュータを機能させるための、学習済み機械学習モデルを提供する。
(5)第5の発明は、制御部及び記憶部を備えるコンピュータに用いられるデータ構造であって、前記データ構造はデータ要素として、(1)少なくとも受検者の運転特徴を含む受検者情報、(2)認知機能を測る検査問題、(3)前記検査問題における前記受検者の得点、(4)前記得点を統計処理することにより算出する換算後得点、および、(5)前記換算後得点より算出する運転適性評価項目の評価値、を含み、
認知機能を測る検査問題における受検者の得点を少なくとも含む運転適性検査結果を入力データとして当該受検者の運転特徴について定量化した値を出力する、運転特徴機械学習処理に用いられることを特徴とするデータ構造を提供する。
(6)第6の発明は、学習済み機械学習モデルであって、少なくとも、(1)運転適性評価項目を直接的に測定する手段による評価、(2)認知機能を測る検査問題における前記受検者の得点を、記憶部にあらかじめ格納されている平均値および標準偏差を用いて標準化し、当該標準化による標準化得点を用いて算出する運転適性評価項目の評価値、および、(3)前記標準化得点から運転適性評価項目の評価値を算出する式に用いる評価値算出用係数、を学習データとして、
前記式による評価値を、運転適性評価項目を直接的に測定する手段による評価に近づける評価値算出用係数を導出し、
運転適性検査の検査問題に対する受検者の標準化得点を入力データとして、運転適性評価項目の評価について定量化した値を出力するようにコンピュータを機能させるための、学習済み機械学習モデルを提供する。
この場合、ほかの運転適性評価方法による結果のデータも取り込むことにより、標準化得点から評価値を算出する式を改善し、運転適性検査の精度を高められるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0309】
知能・知覚心理学の分野の中では比較的新しい「認知」の考え方を取り込んだ運転適性検査システム1により、運転適性検査の精度がより向上することが期待できる。
また、運転適性検査システム1で蓄積するビッグデータを活用することで、運転適性検査システムそのものの改善のほか、自動車事故などの傾向分析を行う用途に適応し得る。これにより、自動車事故を低減する、安心・安全な社会の実現に貢献する。
【符号の説明】
【0310】
1 運転適性検査システム
10 サーバ
12 制御部
122 プロセッサ
124 ROM
126 RAM
128 計時部
130 運転適性検査部
14 記憶部
14a プログラム格納部
14b データ格納部
16 通信制御部
20 受検者端末
22 制御部
24 記憶部
26 通信制御部
28 入出力部
282 入力部
284 出力部
284a 表示部
30 管理者端末
UI-1 ブラウザ
UI-10 画面要素
UI-12 テキストボックス
UI-122 数値入力部
UI-14 カーソル
UI-16 ボタン
UI-162 解答選択肢
UI-164 数字ボタン
UI-18 画像
UI-182 問題画像
UI-182a 正面視図(イラスト)
UI-182b 上面視図(地図)
UI-184 計算問題画像
UI-186 例示画像
UI-20 記憶対象表示部
UI-22 残り時間表示部
P1 運転適性検査プログラム
P12 受検者情報登録プログラム
P14 検査問題出題プログラム
P142 解答入力受付プログラム
P144 導入プログラム
P146 認知地図問題出題プログラム
P148 ワーキングメモリー問題出題プログラム
P150 概念認知問題出題プログラム
P16 認知機能評価プログラム
P20 機械学習モデル
P22 運転特徴機械学習モデル
P24 係数調整用学習モデル
D1 運転適性検査データベース
D10 検査問題データベース
D102 認知地図問題データベース
D104 ワーキングメモリー問題データベース
D106 概念認知問題データベース
D12 コメントデータベース
D20 受検者情報データベース
D22 検査結果データベース
D30 管理者情報データベース
【要約】
【課題】認知機能の評価を含む運転適性検査を、オンラインで実現する。採点時間の短縮と採点精度の向上を図るほか、受検者・検査機関双方の利便性を向上する。
【解決手段】本実施形態の運転適性検査システム1は、受検者に認知機能を測定するための検査問題を出題する。各検査問題において、受検者の得点は標準化される。この標準化処理により、種類の異なる複数の問題の結果を統合して運転適性評価項目の評価値を算出できる。さらに、種類の異なる運転適性評価項目から総合評価を算出する。
【選択図】
図6