IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理想科学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-画像形成装置 図1
  • 特許-画像形成装置 図2
  • 特許-画像形成装置 図3
  • 特許-画像形成装置 図4
  • 特許-画像形成装置 図5
  • 特許-画像形成装置 図6
  • 特許-画像形成装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/14 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
B41J11/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020011406
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021115791
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】大江 朋久
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-172361(JP,A)
【文献】特開2017-149509(JP,A)
【文献】特開2002-192799(JP,A)
【文献】特開2011-178494(JP,A)
【文献】特開2017-065064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
2/165-2/20
2/21 -2/215
11/00-11/70
B65H 7/00- 7/20
43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側搬送手段から中間搬送手段に印刷媒体を搬送し、前記中間搬送手段の搬送面上の前記印刷媒体に印字手段にて印字し、印字後の前記印刷媒体を前記中間搬送手段から下流側搬送手段へ搬送する画像形成装置において、
前記上流側搬送手段と前記下流側搬送手段の両方が前記印刷媒体を保持する状態で前記印刷媒体の搬送が停止された場合に、前記印刷媒体の搬送を制御する制御部が、前記上流側搬送手段と前記下流側搬送手段の少なくとも一方に、前記印刷媒体を前記中間搬送手段に向けて進行させる繰出動作を行わせると共に、前記中間搬送手段を前記印字手段から離間させる退避動作を行わせ
前記繰出動作による前記印刷媒体の移動速度と、前記退避動作による前記中間搬送手段の移動速度が同じであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記上流側搬送手段と前記下流側搬送手段のうち、前記印刷媒体の端部に近い側に前記繰出動作を行わせることを特徴とする請求項記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記中間搬送手段の前記搬送面に前記印刷媒体を吸着保持させる吸引手段を備え、前記制御部は、前記吸引手段を駆動して前記印刷媒体を前記搬送面に吸着保持させながら前記退避動作を行わせることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記繰出動作と同時に、前記中間搬送手段に、前記繰出動作と同じ方向へ前記印刷媒体を移動させる補助搬送動作を行わせることを特徴とする請求項1からのいずれか1項記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙などの印刷媒体に印刷を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のようなインクジェット方式の画像形成装置では、印刷媒体である用紙をベルトプラテン部の搬送面上に保持し、ベルトプラテン部によって用紙の搬送を行いながら、当該用紙に対してインクジェットヘッドからインクを吐出して印字を行う。
【0003】
この種の画像形成装置では、用紙搬送方向におけるベルトプラテン部の上流側に、用紙の斜行を補正しながらベルトプラテン部に向けて用紙を搬送するレジストローラが設けられる。また、印字が完了した用紙をベルトプラテン部から受け取って搬送させるために、下流側の搬送ローラが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-172361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像形成装置で用紙詰まり(ジャム)などの搬送不良が発生した場合、用紙搬送を停止させる処理を行い、搬送経路上に残存している用紙をユーザーが取り除く。既存の画像形成装置では、印刷部付近での残存用紙の除去作業性を向上させるべく、用紙搬送停止処理に伴って、インクジェットヘッドからベルトプラテン部を離間させる退避動作(下降動作)を行わせている。
【0006】
用紙がベルトプラテン部の搬送面のみに保持されている場合には、ベルトプラテン部の退避動作によって、用紙がベルトプラテン部に追従移動してインクジェットヘッドから離れるので、用紙の除去を行いやすくなる。
【0007】
しかし、用紙がベルトプラテン部以外の部分の保持を受けている場合には、ベルトプラテン部の退避動作に用紙が追従せず、印刷時の搬送経路上に用紙が残ってしまう可能性がある。例えば、ベルトプラテン部の上流側に配したレジストローラと下流側に配した搬送ローラの両方が用紙を保持した状態で用紙搬送を停止した場合には、レジストローラと搬送ローラによる両持ち状態になっている用紙が、インクジェットヘッドに近い位置に留まってしまう。特に、画像形成装置全体や印刷部の小型化によって、ベルトプラテン部の上流側と下流側の搬送手段の間隔が狭くなると、このような状況になりやすい。
【0008】
インクジェットヘッドに近い位置に留まっている用紙を取り除こうとすると、用紙がインクジェットヘッドに接触してノズルにダメージを与えるおそれがある。また、インクジェットヘッドに近い位置で用紙除去作業を行うので、ユーザーの手や工具などがインクジェットヘッドに接触してしまうリスクも高まる。
【0009】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、印刷部で搬送停止した印刷媒体を容易且つ確実に取り除くことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上流側搬送手段から中間搬送手段に印刷媒体を搬送し、前記中間搬送手段の搬送面上の前記印刷媒体に印字手段にて印字し、印字後の前記印刷媒体を前記中間搬送手段から下流側搬送手段へ搬送する画像形成装置において、前記上流側搬送手段と前記下流側搬送手段の両方が前記印刷媒体を保持する状態で前記印刷媒体の搬送が停止された場合に、前記印刷媒体の搬送を制御する制御部が、前記上流側搬送手段と前記下流側搬送手段の少なくとも一方に、前記印刷媒体を前記中間搬送手段に向けて進行させる繰出動作を行わせると共に、前記中間搬送手段を前記印字手段から離間させる退避動作を行わせ、前記繰出動作による前記印刷媒体の移動速度と、前記退避動作による前記中間搬送手段の移動速度が同じであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像形成装置によれば、上流側搬送手段や下流側搬送手段から中間搬送手段に向けて印刷媒体の繰出動作を行いながら、中間搬送手段を印字手段から離間させるので、印刷部で搬送停止した印刷媒体を、印字手段から離れた状態にさせて容易且つ確実に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】画像形成装置の概略構成を示す図である。
図2】ヘッド下搬送ユニットの退避動作を行った状態の画像形成装置を示す図である。
図3】下流側搬送ローラによる用紙繰出動作を行っている途中の画像形成装置を示す図である。
図4】下流側搬送ローラによる用紙繰出動作を完了した状態の画像形成装置を示す図である。
図5】上流側搬送ローラによる用紙繰出動作を完了した状態の画像形成装置を示す図である。
図6】画像形成装置の制御系を示す図である。
図7】画像形成装置の動作制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の概略構成を示している。図6は、画像形成装置1における制御系の概略を示している。画像形成装置1は、インクジェット方式の印刷装置であり、印刷媒体である用紙Pに対して、印字手段であるインクジェットヘッド12からインクを吐出させて印字する。
【0014】
画像形成装置1では、給紙部10の給紙トレイ(図示略)に積層された印刷前の用紙Pが印刷部11に送られ、印刷部11で用紙Pへの印字が行われる。印字後の用紙Pは、図示を省略する排紙部に送られて排紙トレイで回収される。以下に述べる用紙Pの搬送や印刷やその他の動作は、制御部30(図6)の制御に基づいて行われる。
【0015】
図1に示すように、給紙部10から印刷部11を経て排紙部(図示略)まで用紙Pを搬送する搬送経路が形成されている。給紙部10が位置する側を搬送経路の上流側、排紙部が位置する側を搬送経路の下流側、とする。印刷部11の上流側に上流側搬送手段である上流側搬送ローラ20が設けられ、印刷部11の下流側に下流側搬送手段である下流側搬送ローラ21が設けられている。
【0016】
上流側搬送ローラ20は、搬送方向に対する用紙Pの斜行を補正しながら用紙搬送を行う、いわゆるレジストローラである。上流側搬送ローラ20は、搬送経路の上下に配置したローラ対で構成されており、ローラ駆動部31(図6)によって回転駆動される。ローラ駆動部31は、モータと、該モータの駆動力を上流側搬送ローラ20に伝達する伝達機構などにより構成されている。対をなす上流側搬送ローラ20により用紙Pを挟んだ状態で上流側搬送ローラ20を回転させると、用紙Pが搬送経路上を移動する。
【0017】
ローラ駆動部31は、モータの駆動方向の切り替えによって、上流側搬送ローラ20の回転方向を変更することができる。用紙Pを上流側から下流側へ移動させる上流側搬送ローラ20の回転方向を順送方向A1とし、用紙Pを下流側から上流側へ移動させる上流側搬送ローラ20の回転方向を逆送方向A2とする(図1参照)。
【0018】
下流側搬送ローラ21は、搬送経路の上下に配置したローラ対で構成されており、ローラ駆動部32(図6)によって回転駆動される。ローラ駆動部32は、モータと、該モータの駆動力を下流側搬送ローラ21に伝達する伝達機構などにより構成されている。対をなす下流側搬送ローラ21により用紙Pを挟んだ状態で下流側搬送ローラ21を回転させると、用紙Pが搬送経路上を移動する。
【0019】
ローラ駆動部32は、モータの駆動方向の切り替えによって、上流側搬送ローラ20の回転方向を変更することができる。用紙Pを上流側から下流側へ移動させる下流側搬送ローラ21の回転方向を順送方向B1とし、用紙Pを下流側から上流側へ移動させる下流側搬送ローラ21の回転方向を逆送方向B2とする。
【0020】
ローラ駆動部31は、対をなす上流側搬送ローラ20の一方のみを回転駆動させてもよいし、両方を回転駆動させてもよい。同様に、ローラ駆動部32は、対をなす下流側搬送ローラ21の一方のみを回転駆動させてもよいし、両方を回転駆動させてもよい。
【0021】
なお、上流側搬送ローラ20や上流側搬送ローラ20以外にも、給紙部10から排紙部までの搬送経路に沿って複数の搬送ローラなどの搬送手段が設けられている。
【0022】
印刷部11は、複数のインクジェットヘッド12と、各インクジェットヘッド12の下方に位置するヘッド下搬送ユニット13と、を備えている。印刷部11での印刷時には、ヘッド下搬送ユニット13によって用紙Pを吸着保持しながら所定速度で上流側から下流側に搬送し、インクジェットヘッド12から用紙Pにインクを吐出して印字する。
【0023】
ヘッド下搬送ユニット13は、搬送ベルト14と、ベルト駆動ローラ15と、複数の従動ローラ16,17,18とを有する。搬送ベルト14は、ベルト駆動ローラ15と複数の従動ローラ16,17,18とに掛け渡される無端(ループ形状)の帯状体であり、ベルト駆動ローラ15と従動ローラ16の間で略水平な搬送面14aを形成する。搬送面14aは用紙搬送経路の一部を構成しており、印刷の際に用紙Pが搬送面14a上に載せられる。
【0024】
ベルト駆動ローラ15はベルト駆動部33(図6)によって回転駆動される。ベルト駆動部33は、モータと、該モータの駆動力をベルト駆動ローラ15に伝達する伝達機構などにより構成されている。ベルト駆動ローラ15が回転すると搬送ベルト14に駆動力が伝達されて、搬送ベルト14が従動ローラ16,17,18による案内を受けながら周回動作する。従動ローラ16,17,18は、搬送ベルト14を介してベルト駆動ローラ15に従動して回転する。
【0025】
ヘッド下搬送ユニット13では、ベルト駆動ローラ15の回転方向(ベルト駆動部33のモータの駆動方向)の切り替えによって、搬送面14a上の用紙Pを上流側から下流側に移動させる順送方向C1の動作と、搬送面14a上の用紙Pを下流側から上流側に移動させる逆送方向C2の動作とを搬送ベルト14に行わせることができる(図1参照)。
【0026】
搬送ベルト14には、表裏を貫通する複数の吸引孔(図示略)が形成されている。ヘッド下搬送ユニット13は、ベルト駆動ローラ15と従動ローラ16の間の搬送面14aの下方に、吸引手段である吸引ファン19を備えている。吸引ファン19は、ファン駆動部34(図6)によって回転駆動される。ファン駆動部34は、モータと、該モータの駆動力を吸引ファン19に伝達する伝達機構などにより構成されている。
【0027】
吸引ファン19の回転によって上方から下方へ向かう気流が生じ、複数の吸引孔を通して搬送面14aの上方空間から空気を吸引する力(負圧)が発生し、吸引孔に働く負圧によって用紙Pが搬送面14aに吸着保持される。吸引ファン19を駆動させてベルト駆動ローラ15を回転させることにより、用紙Pを搬送面14aに吸着保持しながら搬送することができる。
【0028】
ヘッド下搬送ユニット13は、昇降駆動部35(図6)の駆動力によって、上下方向に移動される。図1に示すヘッド下搬送ユニット13の位置は、搬送面14aをインクジェットヘッド12に接近させた接近位置である。ヘッド下搬送ユニット13の接近位置では、搬送面14aが、上流側搬送ローラ20から下流側搬送ローラ21の間の用紙Pの搬送経路と略一致する位置にある。
【0029】
ヘッド下搬送ユニット13は、接近位置から下降した退避位置(図2)に移動可能である。接近位置から退避位置へ向かうヘッド下搬送ユニット13の下降動作を、退避動作と呼ぶ。ヘッド下搬送ユニット13の退避位置では、搬送面14aが、上流側搬送ローラ20から下流側搬送ローラ21の間の用紙Pの搬送経路に対して下方に移動し、搬送面14aとインクジェットヘッド12との間隔が大きくなる(搬送面14aがインクジェットヘッド12から離間する)。
【0030】
搬送経路に沿って複数の搬送検知センサ22が設けられている。各搬送検知センサ22によって用紙Pの搬送状態が検知され、各搬送検知センサ22の検知信号が制御部30に送信される。印刷部11付近で生じる用紙Pの搬送不良(用紙Pの詰まりなど)、搬送面14aからの用紙Pの浮き上がり、搬送経路に対する用紙Pの斜行などを、搬送検知センサ22によって検知することができる。
【0031】
以上の画像形成装置1は、制御部30の制御に基づいて次のように印刷を行う。給紙部10から供給された用紙Pは、順送方向A1に回転する上流側搬送ローラ20によって印刷部11へ搬送される。上流側搬送ローラ20は、用紙Pを下流側に搬送しながら用紙Pの斜行を補正する。
【0032】
印刷の際には、ヘッド下搬送ユニット13が接近位置(図1)にあり、上流側搬送ローラ20から下流側へ送られた用紙Pが、搬送ベルト14の搬送面14a上に保持される。ヘッド下搬送ユニット13では、吸引ファン19の回転によって用紙Pを搬送面14aに吸着保持させると共に、搬送ベルト14を順送方向C1に動作させる。これにより、用紙Pは、搬送面14aからの浮き上がりを防止されながら上流側から下流側へ移動して、インクジェットヘッド12の下方を通過する。
【0033】
インクジェットヘッド12の下方を通過する用紙Pに対して、各インクジェットヘッド12からインクを吐出させて印字を行う。なお、図示を省略するが、印刷部11において用紙Pの搬送経路をループ状に形成して途中に用紙反転部を設け、用紙反転部によって用紙Pを反転させることで、用紙Pの表裏に印刷を行うことができる。
【0034】
印刷部11での印字後の用紙Pは、ヘッド下搬送ユニット13から下流側搬送ローラ21に送られ、順送方向B1に回転する下流側搬送ローラ21によって下流側へ搬送される。そして、排紙部に設けた排紙トレイによって、印刷済みの用紙Pを回収する。
【0035】
搬送経路上で用紙詰まりなどの搬送不良が生じた場合、制御部30は用紙搬送を停止させる。また、制御部30は、画像形成装置1が備える表示パネル23(図6)への情報表示や、スピーカーからの警告音などによって、用紙搬送の停止をユーザーに報知する。そして、搬送経路上に残留する用紙Pをユーザーが取り除いて、搬送不良状態から回復させる。
【0036】
ところで、用紙搬送を停止した際に、インクジェットヘッド12に近い位置に用紙Pがあると、用紙除去の際にインクジェットヘッド12を損傷させるおそれがある。
【0037】
例えば、本実施形態の画像形成装置1は、印刷部11を構成する中間搬送手段であるヘッド下搬送ユニット13の上流側に、上流側搬送手段である上流側搬送ローラ20が設けられ、ヘッド下搬送ユニット13の下流側に、下流側搬送手段である下流側搬送ローラ21が設けられている。ここで、用紙Pの上流側端部D1から下流側端部D2までの長さが、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の間隔よりも大きいと、図1に示すように、用紙Pが上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の両方によって同時に保持される状態が生じる。
【0038】
この場合、図2のようにヘッド下搬送ユニット13を接近位置から退避位置へ下降させても、その両側の上流側搬送ローラ20及び下流側搬送ローラ21で保持されている両持ち状態の用紙Pは、ヘッド下搬送ユニット13の下方への退避動作に追随せずに、インクジェットヘッド12に近い位置(印刷時の搬送経路と略同じ位置)を維持する。この状態で用紙Pを取り除こうとすると、用紙Pがインクジェットヘッド12のノズル面に接触してダメージを与えるおそれがある。あるいは、インクジェットヘッド12の近傍で用紙除去作業を行うので、ユーザーの手や工具などがインクジェットヘッド12のノズル面に接触してダメージを与えるおそれがある。
【0039】
特に、印刷部11を構成するインクジェットヘッド12やヘッド下搬送ユニット13の小型化によって、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の間の距離が短くなると、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21が同時に用紙Pを保持する状態が生じやすくなる。
【0040】
また、用紙詰まりの状況下で、ヘッド下搬送ユニット13を接近位置から退避位置へ退避動作させずに、搬送動作によって用紙Pを排出させようとすると、用紙詰まりの発生箇所や用紙Pの姿勢によっては、搬送面14aから浮いた状態で用紙Pがインクジェットヘッド12の下方に送られてしまい、用紙Pがノズル面に接触してダメージを与えるおそれがある。
【0041】
このような不具合を防ぐべく、本実施形態の画像形成装置1は、用紙搬送が停止した際に、用紙Pを確実にインクジェットヘッド12から離間させるように動作及び制御を行う。この動作及び制御を、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0042】
用紙詰まりなどによって用紙搬送が停止すると、図7のフローチャートの制御に入る。最初に、制御部30は、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21による用紙Pの保持状態をチェックする(ステップS1)。ステップS1での判定は、複数の搬送検知センサ22から制御部30に入力される検知信号や、ローラ駆動部31,32における負荷検知などを通じて行うことができる。
【0043】
上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の片方のみが用紙Pを保持している場合や、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21がいずれも用紙Pを保持していない場合、すなわち用紙Pが上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の両方による両持ち保持状態になっていない場合(ステップS1のNO)、制御部30が昇降駆動部35を駆動させて、ヘッド下搬送ユニット13を退避位置(図2参照)に移動させる(ステップS7)。上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21による両持ち保持状態になっていない用紙Pは、ステップS7でのヘッド下搬送ユニット13の退避動作に追従して下方に移動し、インクジェットヘッド12から離れる。従って、用紙Pが両持ち保持状態以外の状態にあるときには、ステップS7でのヘッド下搬送ユニット13の退避動作のみを行うことで、インクジェットヘッド12に損傷を与えるリスクが低減されて、用紙Pを容易に除去可能になる。
【0044】
上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の両方が用紙Pを保持している場合(ステップS1のYES)、制御部30が昇降駆動部35を駆動させて、ヘッド下搬送ユニット13を退避位置に移動させる(ステップS2)。ステップS2でのヘッド下搬送ユニット13の退避動作は、上述したステップS7での退避動作と同様のものである。さらに、制御部30は、ローラ駆動部31,32を適宜駆動させて、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の少なくとも一方に、用紙繰出動作を行わせる(ステップS2)。この用紙繰出動作は、印刷部11のヘッド下搬送ユニット13に向けて用紙Pを進行させる動作である。ヘッド下搬送ユニット13の上流側に位置する上流側搬送ローラ20においては、順送方向A1の回転が用紙繰出動作になる。印刷部11の下流側に位置する下流側搬送ローラ21においては、逆送方向B2の回転が用紙繰出動作になる。上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21のいずれを駆動させるかは、後述する用紙端部位置などの条件に応じて、制御部30が適宜選択する。
【0045】
図3及び図4は、ステップS2において、下流側搬送ローラ21を逆送方向B2に回転させて用紙繰出動作を行う場合を示している。図3に示すように、逆送方向B2への下流側搬送ローラ21の回転によって、用紙Pがヘッド下搬送ユニット13側に繰り出される。この間、上流側搬送ローラ20は停止している。そのため、用紙Pの上流側端部D1の位置は変わらずに、下流側端部D2の位置が上流側に移動し、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の間での用紙Pの弛みが大きくなる。
【0046】
下流側搬送ローラ21が逆送方向B2に回転する際には、ヘッド下搬送ユニット13の退避動作が行われて搬送面14aの位置が下方へ変化している。従って、下流側搬送ローラ21によりヘッド下搬送ユニット13側に繰り出された用紙Pは、搬送面14aに追従して、印刷時の搬送経路(図1参照)よりも下方に垂れ下がった形状になり(図3参照)、インクジェットヘッド12への接触を回避することができる。
【0047】
下流側搬送ローラ21の逆送方向B2への回転(繰出動作)による用紙Pの移動速度(単位時間あたりの用紙繰出量)と、退避位置に向けて退避動作するヘッド下搬送ユニット13の移動速度(単位時間あたりの退避移動量)とを、略同じに設定することが好ましい。これにより、ヘッド下搬送ユニット13の退避動作に用紙Pを確実に追従させることができる。また、用紙Pがヘッド下搬送ユニット13側へ過剰に繰り出されないので、インクジェットヘッド12に接近するような上方への用紙Pの撓みや、用紙Pの折れ曲がりを抑制できる。
【0048】
なお、用紙Pの挙動がインクジェットヘッド12に影響しない範囲であれば、下流側搬送ローラ21の繰出動作による用紙Pの移動速度と、ヘッド下搬送ユニット13の退避動作の移動速度を異ならせることも可能である。ヘッド下搬送ユニット13の退避動作の移動速度に対して、下流側搬送ローラ21の繰出動作による用紙Pの移動速度が大きすぎると、インクジェットヘッド12と搬送面14aの間の空間で用紙Pの撓み量を吸収できずに、用紙Pがインクジェットヘッド12に接触してしまうおそれがある。従って、少なくとも、ヘッド下搬送ユニット13の退避動作の移動速度が、下流側搬送ローラ21の繰出動作による用紙Pの移動速度以上であるという条件を満たすことが望ましい。
【0049】
制御部30は、ヘッド下搬送ユニット13を退避動作させる際に、ファン駆動部34を駆動して吸引ファン19を回転させ、用紙Pを搬送面14aに吸引させる(ステップS3)。退避動作するヘッド下搬送ユニット13への用紙Pの追従性を、吸引ファン19による吸引動作によって向上させることができる。
【0050】
ステップS3での用紙Pに対する吸引力を、印刷時の用紙Pへの吸引力よりも大きく設定してもよい。印刷時には、インクジェットヘッド12から搬送面14a上の用紙Pに向けてインクが吐出され、画像形成に使用されるインクの主滴の他に霧状のインクミストが生じる。そのため、印刷時の用紙搬送中に用紙Pへの吸引力を大きくしすぎると、インクジェットヘッド12の下方空間の気流が吸引風によって乱されて、インクミストが飛散して主滴とは異なる位置で用紙Pに付着し、画像の乱れや用紙Pの汚れの原因になる。一方、ステップS3での用紙吸引の際には、インクジェットヘッド12からのインクの吐出は行われておらず、インクミストによる画像の乱れや用紙汚れなどの問題が生じないので、印刷時よりも大きい吸引力に設定して、搬送面14aへの用紙Pの追従性を高めることができる。ヘッド下搬送ユニット13での吸引力の大きさは、ファン駆動部34を介した吸引ファン19の回転数制御によって容易に変更できる。
【0051】
制御部30はさらに、ヘッド下搬送ユニット13を退避位置に移動させる際に、ベルト駆動部33を駆動して、搬送ベルト14を逆送方向C2に動作させる(ステップS4)。この逆送方向C2への搬送ベルト14の動作は、逆送方向B2に回転する下流側搬送ローラ21による繰出動作と同じ方向に用紙Pを移動させる補助搬送動作であり、用紙Pの撓みを抑制しながら、確実に用紙Pを搬送面14aに追従させる効果が得られる。
【0052】
下流側搬送ローラ21の逆送方向B2への回転(繰出動作)による用紙Pの移動速度(単位時間あたりの用紙繰出量)と、搬送ベルト14の逆送方向C2への補助搬送動作による用紙Pの移動速度(単位時間あたりの用紙搬送量)とを、略同じに設定することが好ましい。これにより、用紙Pをスムーズに逆送方向B2,C2に進行させることができる。
【0053】
なお、図7のフローチャートでは、説明の便宜上、ステップS2の後にステップS3とステップS4を記載しているが、これらのステップS2,S3,S4が図示の順序で段階的に実行されることを意味するものではない。ヘッド下搬送ユニット13での吸引ファン19による吸引動作や搬送ベルト14による補助搬送動作を開始させるタイミングは、任意に選択可能である。例えば、ヘッド下搬送ユニット13の退避動作の開始と同時に(または退避動作の開始よりも早く)、吸引ファン19による吸引動作や搬送ベルト14による補助搬送動作を開始させることも可能である。
【0054】
また、下流側搬送ローラ21による用紙繰出動作のみで用紙Pをヘッド下搬送ユニット13の退避動作に確実に追従させることができる場合には、ステップS3やステップS4を省略することも可能である。ヘッド下搬送ユニット13の退避動作に対する用紙Pの追従のしやすさは、用紙Pの特性(厚み、重さ、曲がりやすさ、摩擦係数など)に応じて異なる。そのため、用紙Pの種類などの情報を制御部30に入力し、当該情報を判定条件に含めた制御を行うことも可能である。具体的には、ヘッド下搬送ユニット13の退避動作に追従しやすい特性の用紙Pの場合には、ステップS3やステップS4を行わず(あるいは、ステップS3とステップS4の一方のみを行い)、ヘッド下搬送ユニット13の退避動作に追従しにくい特性の用紙Pの場合には、ステップS3とステップS4の両方を行う、といった制御を行うことができる。
【0055】
さらに、変形例として、負圧による吸引手段(吸引ファン19)に代えて、静電吸着によって搬送ベルト14の搬送面14aに用紙を吸着するタイプのヘッド下搬送ユニット13を用いることも可能である。この場合、帯電電圧を停止しても、搬送ベルト14と用紙Pの間には静電吸着力が残っているため、ステップS3での吸引動作を行わずに、ステップS2のみ、あるいはステップS2とステップS4のみの動作にしても、用紙Pをヘッド下搬送ユニット13の退避動作に追従させる効果が得られる。
【0056】
ステップS2の開始以降、制御部30は、下流側搬送ローラ21による用紙Pの保持が解除されたか否かを判定する(ステップS5)。用紙Pの保持の解除とは、用紙Pの端部が搬送ローラの位置を通過することを意味する。下流側搬送ローラ21の場合は、用紙Pの下流側端部D2が下流側搬送ローラ21から上流側に抜けた状態が、用紙保持解除になる。逆に、上流側搬送ローラ20の場合は、用紙Pの上流側端部D1が上流側搬送ローラ20から下流側に抜けた状態が、用紙保持解除になる。
【0057】
ステップS5での下流側搬送ローラ21の用紙保持解除の判定は、複数の搬送検知センサ22から制御部30に入力される検知信号や、ローラ駆動部31,32における負荷検知などを通じて、用紙Pの位置や状態を実際に検出して行うことができる。あるいは、制御部30に入力された用紙Pの長さ情報と、下流側搬送ローラ21(ローラ駆動部32)の駆動量情報とに基づいて、用紙Pの下流側端部D2が下流側搬送ローラ21を通過するタイミングを算出してもよい。算出する場合、ステップS2でのローラ駆動部32の駆動量をカウントし、上記算出に基づく所定の駆動量に達した段階で、下流側搬送ローラ21による用紙Pの保持が解除されたと判定する。
【0058】
下流側搬送ローラ21が用紙Pの保持を維持している間は(ステップS5のNO)、逆送方向B2への下流側搬送ローラ21の回転駆動を継続させる。下流側搬送ローラ21が用紙Pの保持を解除したと判定されると(ステップS5のYES)、終了処理を行って(ステップS6)、図7のフローチャートから抜ける。
【0059】
ステップS6の終了処理では、下流側搬送ローラ21の逆送方向B2の回転駆動(用紙繰出動作)を停止させる。また、ステップS3での吸引動作やステップS4での補助搬送動作を行った場合は、ステップS6の終了処理において、ファン駆動部34による吸引ファン19の駆動停止や、ベルト駆動部33によるベルト駆動ローラ15の駆動停止も実行させる。
【0060】
なお、ヘッド下搬送ユニット13の退避動作については、ステップS5での判定に関わりなく、図4に示す退避位置に達するまで行い、ヘッド下搬送ユニット13が退避位置に達した時点で、制御部30が昇降駆動部35の駆動を停止させる。
【0061】
図4は、図7のフローチャートに基づく制御及び動作を行って、下流側搬送ローラ21が用紙Pの保持を解除した状態を示している。図2図4の比較から分かる通り、下流側搬送ローラ21からの保持が解除された片持ち保持状態の用紙Pは、印刷部11の部分で下方へ垂れ下がった形態になり、インクジェットヘッド12から大きく下方に離れている。この状態で印刷部11から用紙Pを取り除く際には、インクジェットヘッド12から下方に離れた位置で作業を行うので、ユーザーの手や工具がインクジェットヘッド12に接触するおそれがない。また、取り除く際に用紙Pに多少上下方向への挙動が生じても、インクジェットヘッド12との間隔が大きいので、用紙Pがインクジェットヘッド12に接触するおそれがない。従って、インクジェットヘッド12のノズル面を確実に保護しながら、用紙Pを簡単に取り除くことができる。
【0062】
ステップS2における用紙繰出動作は、下流側搬送ローラ21の逆送方向B2への回転に限らず、上流側搬送ローラ20の順送方向A1への回転で行うことも可能である。上流側搬送ローラ20を順送方向A1に回転させることにより、ヘッド下搬送ユニット13側に用紙Pが繰り出されて、ヘッド下搬送ユニット13の退避動作に伴って用紙Pをインクジェットヘッド12から離間させることができる。
【0063】
上流側搬送ローラ20に用紙繰出動作を行わせる場合、ステップS4における搬送ベルト14による補助搬送動作が、順送方向C1への動作になる。それ以外の動作や制御については、上述した下流側搬送ローラ21に用紙繰出動作を行わせる場合と共通であり、重複した説明を省略する。
【0064】
図5は、制御部30が上流側搬送ローラ20に用紙繰出動作(順送方向A1への回転)を行わせて、上流側搬送ローラ20が用紙Pの保持を解除した状態を示している。上流側搬送ローラ20からの保持が解除された片持ち保持状態の用紙Pは、インクジェットヘッド12からの距離が大きく離れている。従って、印刷部11から用紙Pを取り除く際に、用紙P、ユーザーの手、工具などがインクジェットヘッド12に接触するおそれが低減され、インクジェットヘッド12のノズル面を確実に保護しながら、用紙Pを簡単に取り除くことができる。
【0065】
用紙Pの保持を解除するために、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21のどちらに用紙繰出動作を行わせるかは、任意に選択できる。選択条件の一例として、搬送方向における用紙Pの端部からの各搬送ローラの距離を参照することができる。より詳しくは、用紙Pの端部に近い側の搬送ローラを駆動させるように制御する。
【0066】
例えば、図2の状態では、用紙Pの上流側端部D1から上流側搬送ローラ20までの距離と、用紙Pの下流側端部D2から下流側搬送ローラ21までの距離とが、略等しい。この場合、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21による搬送性能が同等であれば、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21のどちらを駆動させても、各搬送ローラ20,21が用紙Pの保持を解除するまでに要する時間や駆動量が略同じになる。
【0067】
これに対して、用紙Pの上流側端部D1から上流側搬送ローラ20までの距離と、用紙Pの下流側端部D2から下流側搬送ローラ21までの距離とに明確な差がある場合、当該距離が小さい方の搬送ローラを駆動すれば、当該距離が大きい方の搬送ローラを駆動するよりも、少ない駆動量で短時間に用紙Pの保持を解除でき、効率的に用紙Pの除去作業を進めることができる。
【0068】
また、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の搬送性能が異なる場合、搬送性能が高い方の搬送ローラの駆動で用紙繰出動作を行うという選択も可能である。
【0069】
上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の両方に用紙繰出動作を行わせることも可能である。上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の両方を駆動させる場合、上流側搬送ローラ20による順送方向A1への用紙繰出に対して搬送ベルト14の逆送方向C2の動作が逆行し、下流側搬送ローラ21による逆送方向B2への用紙繰出に対して搬送ベルト14の順送方向C1の動作が逆行する。搬送ローラ20,21からの用紙繰出に対して搬送ベルト14の搬送動作方向が逆行すると、搬送面14aに接触した用紙Pが上方に跳ね上がったり不規則に挙動したりするおそれがある。そのため、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の両方に用紙繰出動作を行わせる場合は、搬送ベルト14による補助搬送動作(図7のステップS4)は行わないように制御する。
【0070】
また、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の両方に用紙繰出動作を行わせる場合、上流側搬送ローラ20の繰出動作による用紙Pの移動速度と、下流側搬送ローラ21の繰出動作による用紙Pの移動速度を、同程度に設定することが好ましい。さらに、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の双方の繰出動作を合わせた用紙Pの合算移動速度が、ヘッド下搬送ユニット13の退避動作の移動速度と略同じになるように設定することが好ましい。
【0071】
上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の両方に用紙繰出動作を行わせる場合、搬送ローラによる用紙保持解除(図7のステップS5)の判定については、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の両方から用紙Pが離れた時点を用紙保持解除の成立としてもよいし、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の一方から用紙Pが離れた時点を用紙保持解除の成立としてもよい。上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の両方から用紙Pが離れるまで駆動させると、用紙Pが図4図5のような片持ち状態にならずに、用紙Pの全体が搬送面14a上に落ちた状態になる。従って、インクジェットヘッド12に干渉せずに用紙Pの除去作業をより一層行いやすくなる。
【0072】
以上説明した通り、本実施形態の画像形成装置1では、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の両方が用紙Pを保持する状態で用紙搬送が停止された場合に、制御部30は、上流側搬送ローラ20と下流側搬送ローラ21の少なくとも一方に、用紙Pをヘッド下搬送ユニット13に向けて進行させる繰出動作を行わせると共に、ヘッド下搬送ユニット13をインクジェットヘッド12から離間させる退避動作を行わせる。これにより、印刷部11で搬送停止した用紙Pを、インクジェットヘッド12に悪影響を及ぼさずに容易且つ確実に取り除くことができる。
【0073】
なお、上記実施形態では、用紙Pを両側から挟むローラ対によって構成される上流側搬送ローラ20や下流側搬送ローラ21を用いているが、本発明における上流側搬送手段や下流側搬送手段の構成はこれに限定されない。例えば、ローラ対からなる搬送ローラに代えて、搬送ベルトと、該搬送ベルトに用紙を押し付けるローラとの組み合わせなどを用いてもよい。すなわち、印刷媒体(用紙)を保持しながら搬送する形態の搬送手段であれば、具体的な構成を問わずに上流側搬送手段や下流側搬送手段として適用が可能である。
【0074】
以上、添付図面に基づく実施の形態及び変形例によって本発明を説明したが、本発明は上述の実施の形態や変形例には限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や応用を行うことが可能である。上述の実施の形態において、添付図面に図示されている構成や制御等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
上流側搬送手段から中間搬送手段に印刷媒体を搬送し、前記中間搬送手段の搬送面上の前記印刷媒体に印字手段にて印字し、印字後の前記印刷媒体を前記中間搬送手段から前記下流側搬送手段へ搬送する画像形成装置において、
前記上流側搬送手段と前記下流側搬送手段の両方が前記印刷媒体を保持する状態で前記印刷媒体の搬送が停止された場合に、前記印刷媒体の搬送を制御する制御部が、前記上流側搬送手段と前記下流側搬送手段の少なくとも一方に、前記印刷媒体を前記中間搬送手段に向けて進行させる繰出動作を行わせると共に、前記中間搬送手段を前記印字手段から離間させる退避動作を行わせることを特徴とする画像形成装置。
[付記2]
前記繰出動作による前記印刷媒体の移動速度と、前記退避動作による前記中間搬送手段の移動速度が同じであることを特徴とする付記1記載の画像形成装置。
[付記3]
前記制御部は、前記上流側搬送手段と前記下流側搬送手段のうち、前記印刷媒体の端部に近い側に前記繰出動作を行わせることを特徴とする付記1又は2記載の画像形成装置。
[付記4]
前記中間搬送手段の前記搬送面に前記印刷媒体を吸着保持させる吸引手段を備え、前記制御部は、前記吸引手段を駆動して前記印刷媒体を前記搬送面に吸着保持させながら前記退避動作を行わせることを特徴とする付記1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
[付記5]
前記制御部は、前記繰出動作と同時に、前記中間搬送手段に、前記繰出動作と同じ方向へ前記印刷媒体を移動させる補助搬送動作を行わせることを特徴とする付記1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【符号の説明】
【0075】
1 :画像形成装置
10 :給紙部
11 :印刷部
12 :インクジェットヘッド(印字手段)
13 :ヘッド下搬送ユニット(中間搬送手段)
14 :搬送ベルト
14a :搬送面
19 :吸引ファン(吸引手段)
20 :上流側搬送ローラ(上流側搬送手段)
21 :下流側搬送ローラ(下流側搬送手段)
30 :制御部
P :用紙(印刷媒体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7