(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】細胞生存性及び/又は細胞増殖を低減するための薬物の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20231025BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20231025BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20231025BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231025BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231025BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231025BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K31/517
A61K31/5377
A61K39/395 T
A61P1/16
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2018559826
(86)(22)【出願日】2017-05-09
(86)【国際出願番号】 US2017031771
(87)【国際公開番号】W WO2017196854
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-05-07
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-10
(32)【優先日】2016-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【氏名又は名称】木元 克輔
(74)【代理人】
【識別番号】100135242
【氏名又は名称】江守 英太
(72)【発明者】
【氏名】セルヴァラジ, アナンド
(72)【発明者】
【氏名】スミス, ピーター
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】吉田 佳代子
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】Front.Pharmacol.、2015年、6:181
【文献】国際公開第2015/57938号
【文献】Cancer Research、2008年、Vol.68、No.7、p.2391-2399
【文献】Cancer、2008年、Vol.112、No.12、p.2733-2739
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44,45/00-45/06
REGISTRY/CAPLUS/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMedPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩を含む、肝細胞癌の治療剤であって、前記N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩が、EGFR阻害剤又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与され、
前記N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される
塩及びEGFR阻害剤又はその薬学的に許容される
塩が肝細胞癌の増殖を相乗的に阻害し、
前記EGFR阻害剤が、4-キナゾリンアミンN-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[[(3S)-テトラヒドロ-3-フラニル]オキシ]-6-キナゾリニル]-4(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド、N-(3-クロロ-4-{[(3-フルオロフェニル)メチル]オキシ}フェニル)-6-[5-({[2-(メチルスルホニル)エチル]アミノ}メチル)-2-フラニル]-4-キナゾリンアミンビス(4-メチルベンゼンスルホナート)一水和物、及びセツキシマブから成る群から選択される、治療剤。
【請求項2】
前記N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩が、50mg~600mgの間の1日当たりの投与量で投与される、請求項1に記載の治療剤。
【請求項3】
前記N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩が、200mg~400mgの間の1日当たりの投与量で投与される、請求項2に記載の治療剤。
【請求項4】
前記N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩が、300mgの1日当たりの投与量で投与される、請求項3に記載の治療剤。
【請求項5】
前記EGFR阻害剤が、ゲフィチニブである、請求項1に記載の治療剤。
【請求項6】
前記ゲフィチニブが、250mgの1日当たりの投与量で投与される、請求項5に記載の治療剤。
【請求項7】
前記
N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及び前記ゲフィチニブが、Loewe相加性の方程式による算出で17~134の範囲において肝細胞癌の増殖を相乗的に阻害する、請求項5に記載の治療剤。
【請求項8】
前記Loewe相加性の方程式による算出値が36~134の範囲である、請求項7に記載の治療剤。
【請求項9】
前記Loewe相加性の方程式による算出値が59~134の範囲である、請求項7に記載の治療剤。
【請求項10】
前記Loewe相加性の方程式による算出値が100~134の範囲である、請求項7に記載の治療剤。
【請求項11】
前記EGFR阻害剤が、アファチニブである、請求項1に記載の治療剤。
【請求項12】
前記アファチニブが、20mg/日の1日当たりの投与量で投与される、請求項11に記載の治療剤。
【請求項13】
前記アファチニブが、30mg/日の1日当たりの投与量で投与される、請求項11に記載の治療剤。
【請求項14】
前記アファチニブが、40mg/日の1日当たりの投与量で投与される、請求項11に記載の治療剤。
【請求項15】
前記
N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及び前記アファチニブが、Loewe相加性の方程式による算出で5~126の範囲において肝細胞癌の増殖を相乗的に阻害する、請求項11に記載の治療剤。
【請求項16】
前記Loewe相加性の方程式による算出値が24~126の範囲である、請求項15に記載の治療剤。
【請求項17】
前記Loewe相加性の方程式による算出値が50~126の範囲である、請求項15に記載の治療剤。
【請求項18】
前記Loewe相加性の方程式による算出値が114~126の範囲である、請求項15に記載の治療剤。
【請求項19】
前記EGFR阻害剤が、ラパチニブである、請求項1に記載の治療剤。
【請求項20】
前記ラパチニブが、1000mg~1500mgの間の1日当たりの投与量で投与される、請求項19に記載の治療剤。
【請求項21】
前記ラパチニブが、1000mgの1日当たりの投与量で投与される、請求項20に記載の治療剤。
【請求項22】
前記ラパチニブが、1250mgの1日当たりの投与量で投与される、請求項20に記載の治療剤。
【請求項23】
前記ラパチニブが、1500mgの1日当たりの投与量で投与される、請求項20に記載の治療剤。
【請求項24】
前記
N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及び前記ラパチニブが、Loewe相加性の方程式による算出で6~139の範囲において肝細胞癌の増殖を相乗的に阻害する、請求項19に記載の治療剤。
【請求項25】
前記Loewe相加性の方程式による算出値が27~139の範囲である、請求項24に記載の治療剤。
【請求項26】
前記Loewe相加性の方程式による算出値が56~139の範囲である、請求項24に記載の治療剤。
【請求項27】
前記Loewe相加性の方程式による算出値が123~139の範囲である、請求項24に記載の治療剤。
【請求項28】
前記EGFR阻害剤が、セツキシマブである、請求項1に記載の治療剤。
【請求項29】
前記セツキシマブが、200~300mg/m
2の間の週当たりの投与量で投与される、請求項28に記載の治療剤。
【請求項30】
前記セツキシマブが、250mg/m
2の週当たりの投与量で投与される、請求項29に記載の治療剤。
【請求項31】
前記N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及び前記EGFR阻害剤が、別個の製剤として投与される、請求項1~30のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項32】
前記N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及び前記EGFR阻害剤が、単一製剤として投与される、請求項1~30のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項33】
前記N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及び前記EGFR阻害剤が、連続的に投与される、請求項1~31のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項34】
前記N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及び前記EGFR阻害剤が、同時に投与される、請求項1~31のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項35】
遊離塩基形態のN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドを含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項36】
N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドの前記薬学的に許容される塩が、塩酸塩形態のN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドである、請求項1~34のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項37】
N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及びEGFR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を含む、医薬製剤であって、
前記
医薬製剤が肝細胞癌の増殖を相乗的に阻害
するために用いられ、
前記EGFR阻害剤が、4-キナゾリンアミンN-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[[(3S)-テトラヒドロ-3-フラニル]オキシ]-6-キナゾリニル]-4(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド、N-(3-クロロ-4-{[(3-フルオロフェニル)メチル]オキシ}フェニル)-6-[5-({[2-(メチルスルホニル)エチル]アミノ}メチル)-2-フラニル]-4-キナゾリンアミンビス(4-メチルベンゼンスルホナート)一水和物、及びセツキシマブから成る群から選択される、医薬製剤。
【請求項38】
遊離塩基形態のN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドを含む、請求項37に記載の医薬製剤。
【請求項39】
N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドの前記薬学的に許容される塩が、塩酸塩形態のN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドである、請求項37に記載の医薬製剤。
【請求項40】
肝細胞癌の治療のための薬剤の調製におけるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及びEGFR阻害剤の組み合わせの使用であって、
前記N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される
塩及びEGFR阻害剤又はその薬学的に許容される
塩が肝細胞癌の増殖を相乗的に阻害し、
前記EGFR阻害剤が、4-キナゾリンアミンN-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[[(3S)-テトラヒドロ-3-フラニル]オキシ]-6-キナゾリニル]-4(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド、N-(3-クロロ-4-{[(3-フルオロフェニル)メチル]オキシ}フェニル)-6-[5-({[2-(メチルスルホニル)エチル]アミノ}メチル)-2-フラニル]-4-キナゾリンアミンビス(4-メチルベンゼンスルホナート)一水和物、及びセツキシマブから成る群から選択される、使用。
【請求項41】
1つ又は複数の細胞にN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及びEGFR阻害剤又はその薬学的に許容される塩の組み合わせを投与するステップを含む、インビトロにおいて細胞生存性又は細胞増殖を相乗的に低減する方法であって、
前記EGFR阻害剤が、4-キナゾリンアミンN-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[[(3S)-テトラヒドロ-3-フラニル]オキシ]-6-キナゾリニル]-4(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド、N-(3-クロロ-4-{[(3-フルオロフェニル)メチル]オキシ}フェニル)-6-[5-({[2-(メチルスルホニル)エチル]アミノ}メチル)-2-フラニル]-4-キナゾリンアミンビス(4-メチルベンゼンスルホナート)一水和物、及びセツキシマブから成る群から選択される、方法。
【請求項42】
インビトロにおいて細胞生存性又は細胞増殖を相乗的に低減するための、N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及びEGFR阻害剤の組み合わせの使用であって、
前記EGFR阻害剤が、4-キナゾリンアミンN-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[[(3S)-テトラヒドロ-3-フラニル]オキシ]-6-キナゾリニル]-4(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド、N-(3-クロロ-4-{[(3-フルオロフェニル)メチル]オキシ}フェニル)-6-[5-({[2-(メチルスルホニル)エチル]アミノ}メチル)-2-フラニル]-4-キナゾリンアミンビス(4-メチルベンゼンスルホナート)一水和物、及びセツキシマブから成る群から選択される、使用。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年5月10日に出願された米国特許仮出願第62/334,102号の利益を主張するものである。この出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景】
【0002】
肝癌は、世界中のあらゆる種類の癌による死亡率のうち2番目に多い原因であり、16番目に多い一般的な死因である(Llovet JMら、2015年“Advances in targeted therapies for hepatocellular carcinoma in the genomic era.” Nat. Rev. Clin Oncology 12, 408~424ページ)。肝細胞癌(HCC)は、すべての原発性肝癌のうち最大90%を占める(Llovet JMら、2015年)。
【0003】
とりわけ、線維芽細胞増殖因子(FGF)(特にFGF19/FGFR4)、上皮増殖因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、ERK/MAPK、及びラパマイシンの機構的標的(mTOR)を含む、さまざまなシグナル伝達経路がHCCに関わっている(Llovet JMら、2015年)。全HCCのうちの約3分の1においてFGF19が過剰発現しており、この過剰発現は、FGFR4及びその下流のシグナル伝達経路を過剰に活性化して、腫瘍増殖の増進につながると仮定されている(Xie MHら、1999年“FGF-19, a novel fibroblast growth factor with unique specificity for FGFR4.” Cytokine. 1999年 Oct;11(10):729~35ページ;Saweyら、2011年 “Identification of a therapeutic strategy targeting amplified FGF19 in liver cancer by Oncogenomic screening.” Cancer Cell. 2011年3月8日 Mar 8;19(3):347~58ページ)。FGF19/FGFR4経路と同様に、EGFRもHCCの40~70%で過剰発現しており、その活性化がHCCの発病に関与する(Chua CWLら、2011年. Targeted Therapy in Hepatocellular Carcinoma. Int J Hepatol. 2011; 2011年: 348297)。
【0004】
化合物1は、経口で生体利用可能な選択的小分子FGFR4阻害剤であり、式Iに示される構造、及び化学名N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドを有する。
【化1】
【0005】
化合物1及びその合成については、2015年4月23日に公開された国際公開第2015/057938号に報告されている。本文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
ゲフィチニブ(4-キナゾリンアミンN-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]))は、FDAに認可されたEGFR阻害剤である。ゲフィチニブは、以下の構造を有する遊離塩基である。
【化2】
【0007】
参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,770,599号を参照。
【0008】
アファチニブ(2-ブテンアミド,N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[[(3S)-テトラヒドロ-3-フラニル]オキシ]-6-キナゾリニル]-4-(ジメチルアミノ)-,(2E)-,(2Z)-2-ブテンジオアート(1:2)は、FDAに認可されたEGFR阻害剤である。アファチニブは、ジマレイン酸塩として一般に投与され、以下の構造を有する。
【化3】
【0009】
すべてが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,251,912号;同第8,426586号;同第8,545,884号;及び同第RE43431号を参照。
【0010】
ラパチニブ(N-(3-クロロ-4-{[(3-フルオロフェニル)メチル]オキシ}フェニル)-6-[5-({[2-(メチルスルホニル)エチル]アミノ}メチル)-2-フラニル]-4-キナゾリンアミンビス(4-メチルベンゼンスルホナート)一水和物)は、FDAに認可されたEGFR阻害剤である。ラパチニブは、以下の式を有するジトシラート一水和物として一般に投与される。
【化4】
【0011】
ともに参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第99/35146号として公開された国際出願PCT/EP99/00048、及び国際公開第02/02552として公開された国際出願PCT/US01/20706を参照。
【0012】
セツキシマブは、FDAに認可されたEGFRレセプターの阻害剤である。セツキシマブは、キメラ(マウス/ヒト)モノクローナル抗体であり、ヒトEGFRの細胞外ドメインに特異的に結合する。セツキシマブは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,217,866号において報告されている。
【0013】
HCCの治療が進歩してきたにもかかわらず、改善されたHCCに対する治療を提供することが必要とされている。
【概要】
【0014】
実施形態は、1つ又は複数の細胞の生存性及び/又は増殖を低減するための化合物1及びEGRF阻害剤の組み合わせを提供する。特定の実施形態において、EGFR阻害剤が、ゲフィチニブである。他の実施形態において、EGFR阻害剤が、アファチニブである。さらに別の実施形態において、EGFR阻害剤が、ラパチニブである。さらに別の実施形態において、EGFR阻害剤が、セツキシマブである。化合物1及びEGRF阻害剤の組み合わせの使用が、細胞の生存性及び/又は増殖の相乗的な低減をもたらすことができる。特定の実施形態において、細胞が、肝細胞である。特定の実施形態において、細胞の生存性及び/又は増殖の低減が、インビトロにおける低減である。
【0015】
実施形態は、有効量の化合物1及び有効量のEGFR阻害剤を含む併用療法を提供することができる。特定の実施形態において、EGFR阻害剤が、ゲフィチニブである。他の実施形態において、EGFR阻害剤が、アファチニブである。さらに別の実施形態において、EGFR阻害剤が、ラパチニブである。本明細書において提供される併用療法は、HCC細胞の生存性の相乗的な低減をもたらすことができ、治療を必要とする患者のHCCの腫瘍増殖阻害をもたらすこともできる。
【0016】
実施形態は、細胞生存性又は細胞増殖を低減する方法であって、1つ又は複数の細胞にN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及びEGFR阻害剤又はその薬学的に許容される塩の組み合わせを投与するステップを含む、方法を提供することができる。
【0017】
実施形態は、治療を必要とする患者の肝細胞癌を治療する方法であって、患者にN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及びEGFR阻害剤又はその薬学的に許容される塩の組み合わせを投与するステップを含む、方法を提供することができる。いくつかの実施形態において、N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩が、50mg~600mgの間の1日当たりの投与量で投与される。いくつかの実施形態において、N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩が、200mg~400mgの間の1日当たりの投与量で投与される。いくつかの実施形態において、N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩が、300mgの1日当たりの投与量で投与される。
【0018】
いくつかの実施形態において、EGFR阻害剤が、例えば、4-キナゾリンアミンN-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ])(ゲフィチニブ)、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[[(3S)-テトラヒドロ-3-フラニル]オキシ]-6-キナゾリニル]-4(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド)(アファチニブ)、及びN-(3-クロロ-4-{[(3-フルオロフェニル)メチル]オキシ}フェニル)-6-[5-({[2-(メチルスルホニル)エチル]アミノ}メチル)-2-フラニル]-4-キナゾリンアミンビス(4-メチルベンゼンスルホナート)一水和物(ラパチニブ)から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、EGFR阻害剤が、ゲフィチニブである。ゲフィチニブが、例えば、250mgの1日当たりの投与量で投与されてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、EGFR阻害剤が、アファチニブである。アファチニブが、例えば、20mg/日の1日当たりの投与量で投与されてもよい。アファチニブが、例えば、30mg/日の1日当たりの投与量で投与されてもよい。アファチニブが、例えば、40mg/日の1日当たりの投与量で投与されてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、EGFR阻害剤が、ラパチニブである。ラパチニブが、例えば、1000mg~1500mgの間の1日当たりの投与量で投与されてもよい。ラパチニブが、例えば、1000mgの1日当たりの投与量で投与されてもよい。ラパチニブが、例えば、1250mgの1日当たりの投与量で投与されてもよい。ラパチニブが、例えば、1500mgの1日当たりの投与量で投与されてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態において、EGFR阻害剤が、セツキシマブである。セツキシマブは、エルビタックス(ERBITUX)(登録商標)として、それを100mg/50mlバイアル及び200mg/100mlバイアルとして供給するイーライリリー・アンド・カンパニー(Eli Lilly and Company)及びその関連会社から市販されている。セツキシマブは、静脈内注入のための注射によって一般に投与される。セツキシマブの投与は、H1拮抗薬の前投薬に続く、120分の静脈内注入として400mg/m2の初期量の投与、それに続く週に1回の250mg/m2の60分にわたる注入を一般に含む。いくつかの実施形態において、注入反応が生じるであろう場合には、注入速度が50%低減される。
【0023】
いくつかの実施形態において、N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及びEGFR阻害剤が、別個の製剤として任意の順序で投与される。いくつかの実施形態において、N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及びEGFR阻害剤が、単一製剤として投与される。いくつかの実施形態において、N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及びEGFR阻害剤が、連続的に投与される。いくつかの実施形態において、N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及びEGFR阻害剤が、同時に投与される。
【0024】
いくつかの実施形態において、投与されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドの形態が、遊離塩基形態である。いくつかの実施形態において、投与されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドの形態が、塩酸塩形態である。
【0025】
別の実施形態は、N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及びEGFR阻害剤又はその薬学的に許容される塩を含む医薬製剤を提供することができる。いくつかの実施形態において、N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドが、遊離塩基形態である。いくつかの実施形態において、N-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドが、塩酸塩形態である。
【0026】
別の実施形態は、肝細胞癌の治療におけるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及びEGFR阻害剤の組み合わせの使用を提供することができる。別の実施形態は、肝細胞癌の治療のための薬剤の調製におけるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩及びEGFR阻害剤の組み合わせの使用を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】セルタイター-グロ(CellTiter-Glo)によって測定された化合物1及びゲフィチニブに関する細胞生存性の阻害を示す表である。
【
図1B】化合物1及びゲフィチニブに関するLoewe相加性を超える過剰阻害を示す表である。
【
図2A】化合物1及びアファチニブに関するセルタイター-グロによって測定された細胞生存性の阻害を示す表である。
【
図2B】化合物1及びアファチニブに関するLoewe相加性を超える過剰阻害を示す表である。
【
図3A】化合物1及びラパチニブに関するセルタイター-グロによって測定された細胞生存性の阻害を示す表である。
【
図3B】化合物1及びラパチニブに関するLoewe相加性を超える過剰阻害を示す表である。
【
図4A-4B】化合物1及びセツキシマブがインビトロにおいてHEP3B細胞の増殖を相乗的に阻害することを示す表である。
【
図5A-5C】
図5Aは、単剤としてのゲフィチニブに関する腫瘍体積を示すグラフであり、
図5B及び
図5Cは、ゲフィチニブ及び化合物1の組み合わせに関する腫瘍体積を示すグラフである。
【実施形態の詳細な説明】
【0028】
細胞生存性及び又は細胞増殖を低減するための化合物1及びEGFR阻害剤の組み合わせが本明細書において提供される。特定の実施形態において、EGFR阻害剤が、ゲフィチニブである。他の実施形態において、EGFR阻害剤が、アファチニブである。さらに別の実施形態において、EGFR阻害剤が、ラパチニブである。さらに別の実施形態において、EGFR阻害剤が、セツキシマブである。そのような組み合わせは、細胞生存性及び/又は細胞増殖の相乗的な低減をもたらすことができる。特定の実施形態において、細胞生存性及び/又は細胞増殖の低減が、インビトロにおける低減である。
【0029】
1つ又は複数の細胞の生存性又は増殖を低減する際に有用な療法が本明細書において提供される。そのような療法は、肝細胞癌(HCC)及び肝内胆管癌(IHCC)を治療するのに有用な可能性がある。いくつかの実施形態において、併用療法としては、EGFR阻害剤と組み合わせた化合物1の投与が挙げられる。特定の実施形態において、EGFR阻害剤が、ゲフィチニブである。他の実施形態において、EGFR阻害剤が、アファチニブである。さらに別の実施形態において、EGFR阻害剤が、ラパチニブである。
【0030】
肝細胞癌を治療するために有用な可能性のある薬剤の組み合わせの投与のための治療用薬剤の組み合わせ及び方法が本明細書において提供される。本明細書中で使用される場合、「治療用薬剤の組み合わせ」及び類似の用語は、(1)化合物1及び/又は薬理学的に活性なその塩並びに(2)EGFR阻害剤、及び/又は薬理学的に活性なその塩の2種類の治療用薬剤の組み合わせを指す。「組み合わせ」とは、本明細書中で使用される場合(「治療用薬剤の組み合わせ」という用語を含む)、単一剤形に共に製剤化されるか、個々に製剤化され、共投与されるか、又は個々に製剤化され、連続的に投与されるこうした種類の治療用薬剤を指す。
【0031】
化合物1は、式Iに示される構造を有する経口的に生体利用可能な選択的小分子FGFR4阻害剤である。
【化5】
【0032】
化合物1及びその合成については、2015年4月23日に公開された国際公開第2015/057938号に報告されている。本文献は、参照により本明細書に組み込まれる。化合物1はまた、HCC又は肝内胆管癌(IHCC)を含む胆管癌に対する治療として単独で、又は本明細書に記載されている組み合わせで使用されてもよい。単独で、又は本明細書に記載されている組み合わせで使用される場合、化合物1は、患者に以下の1日当たりの投与量のいずれかで投与されてもよい:150mg、300mg、600mg、1000mg、1500mg又は2000mg。1日当たりの投与量は、50mg~3000mg、50mg~600mg、又は200mg~400mgであってもよい。1日当たりの投与量は、14日間又は21日間続く間欠投与計画の一部であってもよい。1日当たりの投与量は、1回の投与として又は複数回の投与として投与されてもよい。
【0033】
本発明の使用に適したEGFR阻害剤としては、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Martinelli, Eら、2009年 “Anti-epidermal Growth Factor Receptor Monoclonal Antibodies in Cancer Therapy.” Clin. Exper. Immuno. 158: 1~9ページに報告されているマウスモノクローナル抗体M225の免疫グロブリンG1ヒト・マウスキメラ対応物であるセツキシマブ;及びEGFRモノクローナル抗体の細胞外ドメインを標的とする完全ヒトIgG2であるパニツムマブを含む中和モノクローナル抗体を挙げることができる。EGFR阻害剤としては、例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、イコチニブ、KD019、バルリチニブ、BMS599626、JNJ26483327、TAK285、AL6802、PKI166、AEE788、アファチニブ、ダコミチニブ、ネラチニブ、ポジオチニブ、BMS690514、CUDC101、KKI357、AV412、カネルチニブ、ペリチニブ、WZ4002、CO-1686、AZD-9291、HM61713、及びTAS-2913を含む、チロシンキナーゼ阻害剤をさらに挙げることができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Lee, Cら、2014年 “Small-molecule EGFR Tyrosine Kinase Inhibitors for the Treatment of Cancer.” Expert Opin. Investig. Drugs 23(10): 1333~1348ページを参照。
【0034】
治療用薬剤の組み合わせの投与は、単一製剤若しくは単位剤形としての組み合わせの個々の治療用薬剤の投与、組み合わせの個々の治療用薬剤の同時であるが別々の投与、又は任意の適した経路による組み合わせの個々の薬剤の連続的な投与を含んでもよい。組み合わせの個々の治療用薬剤の投与は、組み合わせ中の他方の薬剤と比較して一方の薬剤のより頻繁な投与を必要とすることもある。したがって、適切な投薬を可能にするために、包装された医薬品は、薬剤の組み合わせを含む1つ又は複数の剤形、及び薬剤の組み合わせの一方を含むが、組み合わせの他方の薬剤を含まない1つ又は複数の剤形を含んでもよい。
【0035】
本明細書中において報告される組み合わせは、1つ又は複数の化合物1及びEGFR阻害剤が薬学的に許容される塩として又は遊離塩基として投与される実施形態を含むことができる。両化合物が同じ薬学的に許容される塩として投与される必要はないが、そうであってもよい。特定の実施形態において、組み合わせは、遊離塩基形態の化合物1及びEGFR阻害剤を含む。他の実施形態において、組み合わせは、HCl形態の化合物1及びEGFR阻害剤を含む。
【0036】
「薬学的に許容される塩」とは、本明細書中で使用される場合、本開示における化合物の酸付加塩又は塩基付加塩を指す。薬学的に許容される塩は、親化合物の活性を保持し、塩が投与されるヒト対象及びこの文脈において塩が投与される対象に過度に有害な又は望ましくないいかなる影響も与えない任意の塩である。薬学的に許容される塩としては、金属錯体並びに無機酸及びカルボン酸の両方の塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。薬学的に許容される塩としては、金属塩、例えば、アルミニウム、カルシウム、鉄、マグネシウム、マンガン及び錯塩も挙げられる。さらに、薬学的に許容される塩としては、酢酸、アスパラギン酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、アキセチル、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭水素、重硫酸、二酒石酸、酪酸、エデト酸カルシウム、カムシル酸、炭酸、クロロ安息香酸、クエン酸、エデト酸、エジシル酸、エストール酸、エシル、エシル酸、ギ酸、フマル酸、グルセプト酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキサンミン酸、ヘキシルレゾルシノール酸、ヒドラバム酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、硝酸メチル、メチル硫酸、粘液酸、ムコン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、p-ニトロメタンスルホン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、リン酸水素、リン酸二水素、フタル酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファンリック、スルホン酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、テオクル酸、トルエンスルホン酸などの酸塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
実施形態は、塩酸塩であってもよい。薬学的に許容される塩は、システインが挙げられるが、システインに限定されないアミノ酸から誘導されてもよい。塩として化合物を生成するための方法は、当業者に知られている(例えば、Stahlら、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, Wiley-VCH; Verlag Helvetica Chimica Acta, Zurich, 2002年;Bergeら、J. Pharm. Sci. 66: 1,1977年を参照)。
【0038】
「有効量」の治療用薬剤(例えば、化合物1及びEGFR阻害剤)の組み合わせとは、対象又は患者における未治療のままのHCC又はIHCCと比較して観察可能な治療上の利益をもたらすのに十分な量である。
【0039】
本明細書において報告されている活性薬剤は、その医薬製剤をもたらすために薬学的に許容される担体と組み合わされてもよい。担体及び製剤の個々の選択は、組成物が意図される個々の投与経路により決まることになる。
【0040】
「薬学的に許容される担体」とは、本明細書中で使用される場合、担体、アジュバント、又はビヒクルが製剤化される化合物の薬理学的活性を消失させない毒性のない担体、アジュバント、又はビヒクルを指す。本発明の組成物に使用されてもよい薬学的に許容される担体、アジュバント又はビヒクルとしては、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリラート、ワックス、ポリエチレングリコール及び羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明の組成物は、非経口投与、経口投与、吸入スプレー投与、局所投与、直腸投与、経鼻投与、頬側投与、経膣投与又は埋め込み型リザーバー投与などに適している場合もある。いくつかの実施形態において、製剤は、天然又は非天然原料由来の成分を含む。いくつかの実施形態において、製剤又は担体は、無菌形態として提供されてもよい。無菌担体の非限定例としては、エンドトキシンフリー水又はパイロジェンフリー水が挙げられる。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「非経口」という用語としては、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病巣内及び頭蓋内注射又は注入技術が挙げられる。特定の実施形態において、化合物は、静脈内、経口、皮下投与されるか、又は筋肉内投与により投与される。本発明の組成物の無菌の注入可能な形態は、水性又は油性懸濁液であってもよい。これらの懸濁液は、当該技術分野において知られている技術に従って、適した分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して製剤化されてもよい。無菌の注射可能な調製物はまた、毒性のない非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の無菌の注入可能な溶液又は懸濁液であってもよい。利用されてもよい許容されるビヒクル及び溶媒のうち、特に水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の不揮発性油が溶媒又は懸濁媒として従来利用されている。
【0043】
上記目的で、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の刺激の少ない不揮発性油が利用されてもよい。脂肪酸及びそれらのグリセリド誘導体は、注射液の調製に有用であり、オリーブ油又はヒマシ油、とりわけ、それらのポリオキシエチル化されたものなどの天然の薬学的に許容される油も有用である。これらの油の溶液又は懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤、例えば、カルボキシメチルセルロース又は乳剤及び懸濁剤を含む薬学的に許容される剤形の製剤に一般的に使用される同様の分散剤を含んでもよい。他の一般的に使用される界面活性剤、例えば、ツイーン、スパン、及び薬学的に許容される固体剤形、液体剤形、又はその他の剤形の製造に一般的に使用されるその他の乳化剤も製剤のために使用することができる。
【0044】
経口投与用に化合物又は塩が、カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤又は液剤を含むが、それらに限定されない許容される経口用剤形として提供されてもよい。経口使用用の錠剤の場合、一般的に使用される担体としては、ラクトース及びトウモロコシデンプンが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も添加することができる。カプセル形態としての経口投与用に有用な希釈剤としては、ラクトース及び乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。経口使用に水性懸濁剤が必要とされる場合、活性成分は、乳化剤及び懸濁化剤と組み合わされてもよい。必要に応じて、特定の甘味料、香味料又は着色剤も添加することができる。さらに保存料も添加することができる。薬学的に許容される保存料の適切な例としては、さまざまな抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、溶媒、例えば、エタノール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、第4級アンモニウム塩、及びパラベン(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンなど)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
「即時放出」とは、薬物の放出が投与の直後に始まる従来の放出を含むことを意味する。本明細書中で使用される場合、「即時放出」という用語は、薬物の溶解若しくは吸収を遅らせる、又は長引かせる意図はなく、薬物が胃腸の内容物中で溶解することを可能にする剤形を含む。この目的は、薬物が投与後速やかに放出されること、例えば、薬物が溶解試験における溶解開始後およそ30分以内に薬物のうちの少なくとも80%を放出することができることである。
【0046】
「持続放出」又は「徐放」は、時間経過及び/又は場所の薬物放出特性が、溶液若しくは即時放出剤形などの従来の剤形によってもたらされない治療上の目的又は利便性の目的を達成するよう選択された剤形を含む。
【0047】
「定常状態」という用語は、所与の活性薬剤又は活性薬剤の組み合わせに関する血漿レベルが達成され、それが活性薬剤(複数可)の連続投与により、所与の活性薬剤(複数可)に関して最低の有効な治療レベル以上であり、最低の毒性血漿レベルを下回るレベルに維持されることを意味する。
【0048】
「単一製剤」という用語は、本明細書中で使用される場合、有効量の両方の治療用薬剤を患者に送達するために製剤化された単一の担体又はビヒクルを指す。単一のビヒクルは、任意の薬学的に許容される担体又は賦形剤とともに有効量のそれぞれの薬剤を送達するために設計される。いくつかの実施形態において、ビヒクルは、錠剤、カプセル剤、丸剤、又はパッチである。
【0049】
「単位用量」という用語は、両薬剤を一緒に1つの剤形として、治療される患者に同時に投与されることを意味するよう本明細書中で使用される。いくつかの実施形態において、単位用量が、単一製剤である。特定の実施形態において、単位用量は、各ビヒクルが有効量の少なくとも一方の薬剤(化合物1又はEGFR阻害剤)を薬学的に許容される担体及び賦形剤とともに含むよう1つ又は複数のビヒクルを含む。いくつかの実施形態において、単位用量は、患者に同時に投与される1つ又は複数の錠剤、カプセル剤、丸剤、又はパッチ剤である。
【0050】
「用量範囲」という用語は、本明細書中で使用される場合、規定の薬剤の量の許容される変動の上限及び下限を指す。一般に、規定の範囲内のいかなる量の薬剤の用量も治療を受けている患者に投与することができる。
【0051】
「治療する」という用語は、対象の疾患の少なくとも1つの症状を軽減、低減又は緩和することを意味するよう本明細書中で使用される。例えば、HCCに関して、「治療する」という用語は、発症を阻止する、遅延させる(すなわち、疾患の臨床病態又は疾患の症状の前の期間)及び/又は疾患の症状が生じるか、若しくは悪化するリスクを低減することを意味する場合もある。「保護する」という用語は、対象の疾患の症状の発症又は継続又は悪化を予防する、遅延させる又は治療する或いは適切であればすべてを意味するよう本明細書中で使用される。
【0052】
「対象」又は「患者」という用語は、HCC又はIHCCを患っている可能性があるか、又はそれに苦しむ動物を含むことが意図される。対象又は患者の例としては、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、及びトランスジェニック非ヒト動物が挙げられる。特定の実施形態において、対象が、ヒト、例えば、HCC又はIHCCを患っている、患っているリスクがある、又は、場合によっては患っている可能性のあるヒトである。
【0053】
「約」又は「およそ」という用語は、所与の値又は範囲の20%以内、より好ましくは10%以内、最も好ましくはさらに5%以内を一般に意味する。或いは、特に生物系において、「約」という用語は、およそ1log(すなわち、1桁)以内、好ましくは所与の値の2倍以内を意味する。
【0054】
本発明を説明する文脈における(特に、添付の請求項の文脈における)「ある(a及びan)」及び「前記(the)」という用語並びに同様のものの使用は、本明細書中に別に指示がある又は文脈から明らかに矛盾する場合を除いて、単数及び複数の両方を含むものと解釈されるべきである。「含むこと(comprising)」、「有すること(having)」、「含むこと(including)」及び「含有すること(containing)」という用語は、他に記載がない限り、制限のない用語と解釈されるべきである(すなわち、「含むが、それらに限定されるものではない」を意味する)。本明細書中における値の範囲の列挙は、本明細書中に別に指示がある場合を除いて、その範囲内にある個々にそれぞれ個別の値を言及することの省略表現法として働くことが単に意図され、それぞれ個別の値は、個々に本明細書中で列挙されたかのように明細書に組み込まれる。
【0055】
「相乗効果」という用語は、本明細書中で使用される場合、例えば、化合物1及びゲフィチニブなどの2つの薬剤の、単独で投与されたそれぞれの薬物の効果を単に加えたものよりも大きい効果、例えば、細胞生存性及び/又は細胞増殖の低減或いはHCCの進行の遅延をもたらす効果を指す。相乗効果は、例えば、Sigmoid-Emax方程式(Holford, N. H. G.及びScheiner, L. B., Clin. Pharmacokinet. 6: 429~453ページ(1981年))、Loewe相加性の方程式(Loewe, S,及びMuischnek, H., Arch. Exp. Pathol Pharmacol. 114: 313~326ページ(1926年))及び半数効果方程式(Chou, T. C.及びTalalay, P., Adv. Enzyme Regul. 22: 27~55ページ(1984年))などの適した方法を使用して算出することができる。上で言及したそれぞれの方程式を実験データに適用して、薬物の組み合わせの効果を評価する際に助けとなる対応するグラフを生成することができる。上で言及した方程式と関連づけられる対応するグラフは、それぞれ濃度・効果曲線、アイソボログラム曲線及び併用係数曲線である。
【0056】
いくつかの実施形態において、FGFR4及び/又はFGF19(線維芽細胞成長因子19)状態が変化した肝細胞癌を有する対象に対する治療が提供される。
【0057】
いくつかの実施形態において、治療は、前記肝細胞癌の細胞を含有する生物学的サンプル中のFGFR4及び/又はFGF19状態を分析するステップを含んでもよく、又はそのステップと併せて実施されてもよく、前記肝細胞癌がFGFR4及び/又はFGF19の変化を示す場合に、治療有効量の本明細書に記載される治療的組み合わせにより対象を治療する。
【0058】
治療の方法
【0059】
1つ又は複数の細胞の生存性及び/又は増殖を低減するのに有用な併用療法が本明細書において提供される。そのような組み合わせは、HCC又はIHCCの治療に有用な可能性もある。下で述べるとおり、本明細書において提供される組み合わせは、多くの利点を有する可能性がある。
【0060】
本明細書中で開示されている組み合わせの利点の1つは、(1)1つ又は複数の細胞の生存性及び/又は増殖の低減;並びに(2)腫瘍増殖阻害及びHCC又はIHCCの治療に対する化合物1及びEGFR阻害剤の組み合わせの予想外の相乗効果である。
【0061】
いくつかの実施形態において、化合物1及びEGFR阻害剤の組み合わせを含む単一医薬製剤が本明細書において提供される。本明細書において提供される利点は、いずれかの薬物の単回投与による治療と比較して細胞の生存性及び/又は増殖の低減或いはHCCの治療をもたらす相乗効果である。薬物が単一の単位用量又は単一製剤として提供される場合、HCCを患っている患者に対する「錠剤数の負担」は増加しない。
【0062】
上で明記されるとおり、一態様において、哺乳動物に有効量の化合物1及び有効量のEGFR阻害剤を含む併用療法を施すことを含む、哺乳動物におけるHCCの発症を治療する、予防する、阻止する、遅延させる及び/又はHCCが発症するリスクを低減する、或いはHCCを逆行させるのに有用な薬物の組み合わせが本明細書において提供される。
【0063】
いくつかの実施形態において、治療される対象(例えば、患者)は、1つ又は複数のHCC療法、例えば、化合物1に対して非反応性であるか又は耐性があると判断されている。他の実施形態において、治療される個体は、化合物1療法に反応するが、化合物1療法がEGFR阻害剤の投与により改善された。例えば、患者は、化合物1を投与される(例えば、いくらかの期間、例えば、1日を超える、2日を超える、3日を超える、1週間を超える、1カ月を超えるなどの期間、1日当たり50mg~600mg、1日当たり200mg~400mg、又は1日当たり300mg)。その時間の後、EGFR阻害剤が、その患者に化合物1と組み合わせて投与されるであろう。
【0064】
EGFR阻害剤の量は、使用されるEGFR阻害剤に応じて変化する可能性がある。例えば、ゲフィチニブは、250mg/日又は500mg/日の量で投与されてもよく、アファチニブは、10~50mg/日、20~40mg/日、20mg/日、30mg/日、又は40mg/日で投与されてもよく、ラパチニブは、100mg/日~1500mg/日、1250mg/日~4500mg/日、1500mg/日~5500mg/日、500mg/日、750mg/日、1000mg/日、1250mg/日、及び1500mg/日で投与されてもよい。1日当たりの投与量は、14~21日以上続く間欠投与計画の一部であってもよい。1日当たりの投与量は、1回の投与として又は複数回の投与として投与されてもよい。
【0065】
当業者は、有効量の活性薬物が投与された実際の量より低いことがあることを認識している。したがって、治療的用量を達成するために必要な用量が本明細書において提供される。
【0066】
さまざまな実施形態において、有効量の化合物1及びEGFR阻害剤を、HCCを有する個体に投与することによってHCCを治療するのに有用な可能性のある方法が本明細書において提供される。その量の薬剤の組み合わせは、HCCを治療するために有効な可能性がある。一実施形態において、薬剤の組み合わせが相乗効果を有する。一実施形態において、特定の投与量で単独で投与される1つ又は複数の薬剤が有効な可能性があっても、組み合わせて投与されると、それぞれ薬剤の同じ投与量で、治療がより有効である。例えば、一実施形態において、化合物1及びゲフィチニブの組み合わせが、いずれかの薬剤の単独投与よりも有効である。別の実施形態において、化合物1及びアファチニブの組み合わせは、いずれかの薬剤の単独投与よりも有効である。別の実施形態において、化合物1及びラパチニブの組み合わせは、いずれかの薬剤の単独の投与よりも有効である。
【0067】
投与量
【0068】
HCCの治療のための薬剤の組み合わせの最適な用量は、それぞれの個体に対して既知の方法を使用して経験的に決定することができ、薬剤の活性;個体の年齢、体重、全身の健康状態、性別及び食餌;投与の時間及び経路;並びに個体が服用している他の薬剤を含むさまざまな要因に左右されることになる。最適な投与量は、当該技術分野において周知の通常の検査及び手順を使用して確かめることができる。
【0069】
本発明の併用療法に関して、化合物1の1日当たりの用量は、50mg~600mgの範囲である。いくつかの実施形態において、化合物1の1日当たりの用量が最大600mgである。特定の実施形態において、化合物1の1日当たりの用量が最大400mgである。さまざまな実施形態において、化合物1の1日当たりの用量が最大300mgである。特定の実施形態において、化合物1の1日当たりの用量が200mg~400mgである。一実施形態において、1日当たりの用量が300mgである。
【0070】
投与の時間は、両方の薬物が同時に、別々に又は連続的に、午前中又は夜のいずれかに投与されるよう選択することができる。或いは、一方の薬物が午前中に投与され、他方が夜に投与されてもよい。特定の実施形態において、両方の薬物が、単一の錠剤、カプセル剤、丸剤、パッチ又はゼリー製剤として、1日に1回、午前中又は夜のいずれかに投与されてもよい。
【0071】
単一剤形を作製するために担体材料と組み合わされてもよい薬剤の組み合わせの量は、治療される個体及び投与の特定の様式により変化することになる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される薬剤の組み合わせを含む単位剤形は、薬剤が単独で投与されるときに一般に投与される組み合わせの各薬剤の量を含むことになる。
【0072】
医薬製剤及び投与の経路
【0073】
細胞生存性及び/又は細胞増殖を低減するための薬剤の組み合わせを含む医薬製剤が本明細書において提供される。そのような製剤は、HCCの治療に有用な可能性がある。本医薬製剤は、担体若しくは賦形剤、安定剤、香味料、及び/又は着色剤をさらに含んでもよい。
【0074】
薬剤の組み合わせは、当業者に既知のさまざまな投与の経路を使用して投与されてもよい。投与の経路としては、経口投与が挙げられる。特定の実施形態において、薬剤の組み合わせを含む医薬製剤は、液体、シロップ、錠剤、カプセル、粉末、スプリンクル、咀嚼錠、又は溶解性ディスクの形態として経口で服用されてもよい。或いは、本発明の医薬製剤は、静脈内又は経皮投与されてもよい。さらなる投与の経路が当業者に知られている(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Gennaro A. R., Ed., 第20版, Mack Publishing Co., Easton, Pa.を参照)。
【0075】
いくつかの実施形態において、化合物1及びEGFR阻害剤がペースト、ゼリー、又は懸濁液として製剤化される。例えば、薬物を、ゼラチン状溶液又は半固体中の薬物粒子、マイクロカプセル化粒子、又は薬物・ポリマー粒子の形態に溶解させるか、封入させるか、又は懸濁させる。経口ゼリー製剤の利点は、錠剤、カプセル剤又は丸剤を飲み込むのが難しい患者に薬物を投与するのがより容易であることである。特定の実施形態において、両薬剤は、徹底的に混合され、適切な媒体に懸濁させられて、ペースト又はゲルが形成される。経口投与中に香味をもたらすために付加的な薬剤が任意選択で混合されてもよい。ピーナッツバター又はラズベリー及び甘味料で風味を付けたアルギナートが多くの適した味覚マスキング剤の例である。さまざまな実施形態において、ペースト又はゼリーも、局所投与に関する当該技術分野において既知の適した結合剤又は賦形剤とともに製剤化されてもよい。
【0076】
錠剤、カプセル剤又は丸剤の形態の持続放出製剤を調製する方法が当該技術分野において知られている。いくつかの実施形態において、持続放出製剤は、薬物の活性成分をポリマー、好ましくは、不水溶性ポリマーでコーティングすることによって調製される。例えば、持続放出コーティング剤、腸溶コーティング剤、又は胃溶コーティング剤として医薬分野において使用される不水溶性ポリマー。不水溶性ポリマーとしては、例えば、エチルセルロース、精製セラック、白色セラック、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセタートフタラート、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、又はポリビニルアセタールジエチルアミノアセタートを挙げることができる。
【0077】
不水溶性ポリマーの種類、置換の程度及び分子量は、水又はアルコールへの活性成分の溶解度、所望の持続放出レベルなどにより決まる可能性がある。不水溶性ポリマーは、単独又は組み合わせのいずれかで使用することができる。コーティング補助薬剤として水素化油、ステアリン酸、又はセタノール、及び可塑剤として中鎖トリグリセリド、トリアセチン、トリエチルシトラート、又はセタノールがさらに組み込まれてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態において、持続放出製剤は、マトリックス型錠剤又は顆粒である。活性成分は、最大3つの異なる種類のポリマーでコーティングされてもよい。これらの3つの異なる種類のポリマーとしては、1)不水溶性ポリマー、例えば、エチルセルロース;2)pH非依存性ゲル化ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース;及び3)pH依存性ゲル化ポリマー、例えば、アルギン酸ナトリウムを挙げることができる。これらの3つの異なる種類のポリマーが、薬物の放出速度を減じるために一緒に使用されてもよい。
【0079】
剤形:放出特性
【0080】
持続放出製剤は、ある程度の持続した効果を実現することができる。ただし、活性成分の曝露及び/又はバイオアベイラビリティは、例えば、吸収ウィンドウ、製剤に使用される担体若しくは賦形剤、製剤の送達の様式、及び/又は患者の胃腸管を介した活性成分の移行時間などのさまざまな要因に基づいて変化することがある。
【0081】
併用療法は、持続放出機能を果たすための少なくとも1つの持続放出部分及び即時放出機能を果たすための1つの即時放出部分を含んでもよい。特定の実施形態において、併用療法が単一剤形である場合、剤形は、持続放出部分を構成する持続放出顆粒及び即時放出部分を構成する即時放出顆粒の混合物から形成される錠剤、カプセルに持続放出顆粒及び即時放出顆粒を充填することによって得られるカプセル調製物、又は持続放出部分を構成する内部コアの上に即時放出部分を構成する外層が形成される有核錠の形態であってもよい。ただし、上記の実施形態に限定されない。
【0082】
さらに、組成物又は即時放出部分若しくは持続放出部分中のそれぞれの薬物の封入の状態に対して特定の制限はなく、化合物1は、組成物、即時放出部分又は持続放出部分中に均一に分散していてもよく、或いは組成物、即時放出部分又は持続放出部分の一部にのみ含まれてもよく、或いは濃度勾配があるよう含まれてもよい。
【0083】
本発明による組成物中の持続放出部分は、薬物放出を制御するための少なくとも1つの非pH依存性高分子物質又はpH依存性高分子物質を含んでもよい。
【0084】
本明細書中で使用される非pH依存性高分子物質は、胃腸管において一般に見られるpH条件、具体的にはpH1~pH8下において電荷状態がほとんど変化しない高分子物質を含んでもよい。これは、例えば、アミノ基などの塩基性官能基又はカルボン酸基などの酸性官能基などのpHに応じて電荷状態が変化する官能基を有さない高分子物質を意味する。なお、非pH依存性高分子物質は、本発明による組成物に持続放出機能を与えるために含まれてもよいが、別の目的のために含まれてもよい。さらに、本発明に使用される非pH依存性高分子物質は、不水溶性であってもよく、或いは水中で膨張するか、又は水に溶解して、ゲルを形成してもよい。
【0085】
不水溶性の非pH依存性高分子物質の例としては、セルロースエーテル、セルロースエステル及びメタクリル酸・アクリル酸コポリマー(ローム株式会社(Rohm GmbH & Co. KG)、ダルムシュタット、ドイツによって製造された商標名オイドラギット(Eudragit))が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例としては、セルロースアルキルエーテル、例えば、エチルセルロース(ダウ・ケミカル(Dow Chemical Company)、米国によって製造された商標名エトセル(Ethocel))、エチルメチルセルロース、エチルプロピルセルロース又はイソプロピルセルロース、及びブチルセルロース、セルロースアラルキルエーテル、例えば、ベンジルセルロース、セルロースシアノアルキルエーテル、例えば、シアノエチルセルロース、セルロース有機酸エステル、例えば、セルロースアセタートブチラート、セルロースアセタート、セルロースプロピオナート又はセルロースブチラート、及びセルロースアセタートプロピオナート、エチルアクリラート・メチルメタクリレートコポリマー(ローム株式会社、ダルムシュタット、ドイツによって製造された商標名オイドラギットNE)、及びアミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(商標名オイドラギットRL、オイドラギットRS)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明に使用される不水溶性ポリマーの平均粒径に特定の制限はないが、一般に平均粒径が小さい程、より良好に働き、平均粒径は、好ましくは0.1~100μm、より好ましくは1~50μm、特に好ましくは3~15μm、最も好ましくは5~15μmである。さらに、水溶性又は水膨潤性の非pH依存性高分子物質の例としては、ポリエチレンオキシド(ダウ・ケミカルによって製造された商標名ポリオックス(Polyox)、分子量100,000~7,000,000)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社(Shin-Etsu Chemical)、日本によって製造された商標名L-HPC)、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社(Nippon Soda, Co., Ltd)、日本によって製造された商標名HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社、日本によって製造された商標名メトローズ(Metolose)60SH、65SH、90SH)、及びメチルセルロース(信越化学工業株式会社、日本によって製造された商標名メトローズSM)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
いくつかの実施形態において、1つの非pH依存性高分子物質が組成物中に含まれてもよく、又は複数の非pH依存性高分子物質が含まれてもよい。非pH依存性高分子物質は、本明細書において報告されている実施形態に使用される場合、不水溶性高分子物質、より好ましくはエチルセルロース、エチルアクリラート・メチルメタクリレートコポリマー(商標名オイドラギットNE)、又はアミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(商標名オイドラギットRL、オイドラギットRS)であってもよい。少なくとも1つのエチルセルロース及びアミノアルキルメタクリレートコポリマーRSが特に好ましい。エチルセルロースが最も好ましい。組成物に含まれる非pH依存性高分子物質の量に特定の制限はなく、この量は、持続する薬物放出の制御などの目的に従って必要に応じて調節することができる。
【0087】
本明細書において報告されている実施形態に使用することができるpH依存性高分子物質は、胃腸管において一般に見られるpH条件、具体的にはpH1~pH8下において電荷状態が変化する高分子物質であってもよい。これは、例えば、アミノ基などの塩基性官能基又はカルボン酸基などの酸性官能基などのpHに応じて電荷状態が変化する官能基を有する高分子物質を意味する。pH依存性高分子物質のpH依存性官能基は、好ましくは酸性官能基であり、最も好ましくはカルボン酸基を有するpH依存性高分子物質である。
【0088】
本発明に使用されるpH依存性高分子物質は、不水溶性であってもよく、或いは水中で膨張するか、又は水に溶解して、ゲルを形成してもよい。本発明に使用されるpH依存性高分子物質の例としては、腸溶性高分子物質が挙げられるが、これに限定されるものではない。腸溶性高分子物質の例としては、メタクリル酸・メチルメタクリレートコポリマー(ローム株式会社、ダルムシュタット、ドイツによって製造されたオイドラギットL100、オイドラギットS100)、メタクリル酸・エチルアクリラートコポリマー(ローム株式会社、ダルムシュタット、ドイツによって製造されたオイドラギットL100-55、オイドラギットL30D-55)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(信越化学工業株式会社、日本によって製造されたHP-55、HP-50)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート(信越化学工業株式会社、日本によって製造されたAQOAT)、カルボキシメチルエチルセルロース(フロイント産業株式会社(Freund Corporation)、日本によって製造されたCMEC)、及びセルロースアセタートフタラートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
水中で膨張するか、又は水に溶解して、ゲルを形成するpH依存性高分子物質の例としては、アルギン酸、ペクチン、カルボキシビニルポリマー、及びカルボキシメチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明において、1つのpH依存性高分子物質が組成物中に含まれてもよく、又は複数のpH依存性高分子物質が含まれてもよい。本発明に使用されるpH依存性高分子物質は、好ましくは腸溶性高分子物質、より好ましくはメタクリル酸・エチルアクリラートコポリマー、メタクリル酸・メチルメタクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、特に好ましくはメタクリル酸・エチルアクリラートコポリマーである。
【0090】
本発明による組成物の製造プロセスにpH依存性高分子物質を使用する場合、粉末タイプ若しくは顆粒タイプ、又は、pH依存性高分子物質があらかじめ溶媒に分散させられた懸濁液タイプの市販の製品をそのまま使用してもよく、或いはそのような市販の製品を水又は有機溶媒に分散させて使用してもよい。pH依存性高分子物質の粒径が小さい程、より良好に働き、pH依存性高分子物質は、好ましくは粉末タイプである。メタクリル酸・エチルアクリラートコポリマーの場合、例はオイドラギットL100-55である。本発明に使用されるpH依存性高分子物質の平均粒径に特定の制限はないが、平均粒径は、好ましくは0.05~100μm、より好ましくは0.05~70μm、最も好ましくは0.05~50μmである。さらに、pH依存性高分子物質の量に特定の制限はなく、例えば、腸溶性高分子物質の場合、量は、組成物の100重量部に基づいて一般に0.1~90重量部、好ましくは1~70重量部、より好ましくは5~60重量部、特に好ましくは10~50重量部である。
【0091】
本明細書において報告されている実施形態による併用療法は、必要に応じて、任意のさまざまな添加物、例えば、希釈剤、滑沢剤、結合剤、及び崩壊剤、並びに保存料、着色料、甘味料、可塑剤、フィルムコーティング剤などの任意のさまざまな薬理学的に許容される担体をさらに含んでもよい。希釈剤の例としては、ラクトース、マンニトール、二塩基性リン酸カルシウム、デンプン、アルファ化デンプン、結晶性セルロース、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、マグネシウムアルミナートメタシリカート又は同種のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム又は同種のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。結合剤の例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン又は同種のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。崩壊剤の例としては、カルボキシメチルセルロース、カルシウムカルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース又は同種のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。保存料の例としては、パラオキシ安息香酸エステル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸又は同種のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。着色料の好ましい例としては、不水溶性レーキ顔料、天然の顔料(例えば、ベータ-カロチン、クロロフィル、赤色酸化鉄)、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄又は同種のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。甘味料の好ましい例としては、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビア又は同種のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。可塑剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、トリエチルシトラート、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール又は同種のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。フィルムコーティング剤の例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又は同種のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
製造方法
【0093】
本明細書において報告されている実施形態を製造するために、1つの従来法、又は従来法の組み合わせが使用されてもよい。例えば、持続放出部分又は即時放出部分として薬物含有顆粒を製造する場合、造粒が主な操作であるが、造粒は混合、乾燥、ふるいかけ、及び分類などの他の操作と組み合わされてもよい。造粒法として、例えば、結合剤及び溶媒が粉末に添加され、造粒が行われる湿式造粒法、粉末が圧縮され、造粒が行われる乾式造粒法、加熱すると融解する結合剤が添加され、加熱され、造粒が行われる融解造粒法、又は同種のものが使用されてもよい。
【0094】
さらに、造粒法によると、遊星歯車ミキサー、スクリュー型ミキサー又は同種のものを使用した混合造粒法、ヘンシェル(Henschel)ミキサー、スパーミキサー又は同種のものを使用した高速混合造粒法、円筒造粒機、ロータリー式造粒機、スクリュー型押出し造粒機、ペレットミル型造粒機又は同種のものを使用した押出し造粒法、湿式高剪断造粒法、流動層造粒法、圧縮造粒法、粉砕造粒法、或いは噴霧造粒法などの操作方法を使用することができる。造粒後、使用のための顆粒又は微細な顆粒を得るために、乾燥機、流動層又は同種のものを使用した乾燥、粉砕、及びふるいかけが行われてもよい。さらに、本発明による組成物を調製するときに造粒溶媒が使用されてもよい。そのような造粒溶媒に特定の制限はなく、水或いは任意のさまざまな有機溶媒、例えば、水、低級アルコール、例えば、メタノール若しくはエタノール、ケトン、例えば、アセトン若しくはメチルエチルケトン、塩化メチレン、又はその混合物であってもよい。
【0095】
実施形態に含まれる持続放出顆粒に関して、少なくとも1つの薬物並びに非pH依存性高分子物質及びpH依存性高分子物質から選択される少なくとも1つが一緒に混合され、必要に応じて希釈剤及び結合剤が添加され、粒状物質を得るために造粒が行われる。得られた粒状物質は、トレー乾燥機、流動層乾燥機又は同種のものを使用して乾燥され、ミル又はオシレーターを使用してふるわれ、それにより持続放出顆粒を得ることが可能である。或いは、本発明における持続放出顆粒を製造する方法として、少なくとも1つの薬物、非pH依存性高分子物質及びpH依存性高分子物質から選択される少なくとも1つ、並びに必要に応じて希釈剤及び結合剤を、乾燥コンパクター、例えば、ローラーコンパクター又はスラッグ打錠機を使用して添加し、混合と同時に圧縮成形した後、適した大きさへの粉砕によって造粒を行うことができる。そのような造粒機を使用して調製された粒状物質は、そのまま本発明による顆粒又は微細な顆粒として使用されてもよく、又はパワーミル、ロール造粒機、ロータースピードミル又は同種のものを使用してさらに粉砕され、ふるいにかけられて持続放出顆粒が得られてもよい。なお、即時放出顆粒も持続放出顆粒と同様に製造することができる。
【0096】
圧縮成形品は、薬物含有持続放出部分又は即時放出部分として、或いは本明細書において報告されている組成物として、1つの従来法、又は従来法の組み合わせを使用して製造することができる。例えば、少なくとも1つの薬物、非pH依存性高分子物質及びpH依存性高分子物質から選択される少なくとも1つ、希釈剤、例えば、マンニトール又はラクトース、結合剤、例えば、ポリビニルピロリドン又は結晶性セルロース、崩壊剤、例えば、カルメロースナトリウム又はクロスポビドン、及び滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム又はタルクが使用され、通常の方法を使用して錠剤化され、それにより圧縮成形品を得ることができる。この場合、錠剤化が圧縮成形品を製造する方法における主な操作であるが、混合、乾燥、糖衣形成、及びコーティングなどの他の操作と組み合わされてもよい。
【0097】
錠剤化するための方法の例としては、少なくとも1つの薬物及び薬理学的に許容される添加物が一緒に混合された後、混合物が打錠機を使用して錠剤に直接圧縮成形される直接圧縮成形、及び本発明による持続放出顆粒又は即時放出顆粒が、必要に応じて滑沢剤若しくは崩壊剤の添加後に圧縮成形に供される乾式顆粒圧縮或いは湿式顆粒圧縮が挙げられるが、これらに限定されるものではない。圧縮成形に使用される打錠機に特定の制限はなく、例えば、単発式打錠機、ロータリー式打錠機、又は有核打錠機が使用されてもよい。
【0098】
本明細書における実施形態による薬物含有持続放出顆粒又は即時放出顆粒、或いは圧縮成形品は、組成物としてそのまま顆粒又は錠剤の形態で使用されてもよいが、組成物を製造するためにさらなる加工に供されてもよい。例えば、圧縮成形品又は顆粒は、エチルセルロース、カゼイン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸コポリマーL、セルロースアセタートフタラート、セラック若しくは同種のものなどのフィルムベース材料を使用してフィルムコーティングを与えられてもよく、或いは、サッカロース、糖アルコール、アラビアゴム粉末、タルク若しくは同種のものを含む糖衣液を使用して糖衣を与えられてもよく、それによりフィルムコート錠又は糖衣錠を製造する。このコーティング技術における溶媒の1つは、精製水であってもよいが、アルコール、ケトン、エーテル若しくは塩素化炭化水素、又はその混合物などの有機溶媒も使用することができる。例えば、エタノール、アセトン、塩化メチレン又は同種のものが有機溶媒として使用されてもよい。さらに、コーティング装置としては、薬剤を製造するためのコーティング技術に通常使用される装置を使用することができ、例としては、コーティング液又は同種のものをスプレーすることによってコーティングが行われるスプレーコーティング装置、及び層形成のためのローター流動層造粒機が挙げられる。
【0099】
カプセル調製物を製造する場合、カプセル調製物は、自動式カプセル充填機を使用して上記のとおりの持続放出顆粒若しくは即時放出顆粒、又はミニ錠剤を硬ゼラチンカプセル又はHPMCカプセルに充填することによって製造することができる。或いは、チューブからの投与用の調製物又は服用のときに水若しくは同種のものと混合して使用されるドライシロップの場合、上記のとおりの持続放出顆粒又は即時放出顆粒は、これらの顆粒を分散させるために増粘剤又は分散剤と混合されてもよく、その後、混合物が顆粒又は錠剤にされる。さらに、液体又はゼリーが、水、及び分散剤、乳化剤、増粘剤、保存料、pH調整剤、甘味料、香味料、芳香剤などから選択される物質を使用して作製されてもよい。ただし、他の製造方法に関して、上記に対する制限はない。
【0100】
本明細書に記載される実施形態をさらに完全に理解できるように、以下の実施例を記載する。当然のことながら、これらの実施例は説明のためのものに過ぎず、限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0101】
材料及び方法
【0102】
化合物及び薬物
【0103】
化合物1は、H3バイオメディスン(Biomedicine)によって開発されている経口で生体利用可能な選択的小分子FGFR4阻害剤である。ゲフィチニブ、アファチニブ、ラパチニブ、及びセツキシマブは、FDAに認可されたEGFR阻害剤である。
【0104】
試験細胞株
【0105】
使用した細胞株、Hep3B(HEP3B.1-7とも称される)は、American Type Culture Collection(ATCC)から入手し、マイコバクテリウム汚染がないことを検査し、9つのマーカーの短いタンデムリピート分析によって同一性に関して検査した。
【0106】
細胞株維持及び調査条件
【0107】
増殖のための培地条件には、10%ウシ胎仔血清(FBS)を加えたイーグル最小必須培地(EMEM)(ATCC(登録商標)30-2003(商標))又は10%FBSを含むRPMI1640培地が含まれた。実験前及び実験中、細胞を37℃、5%CO2、及び95%相対湿度に維持した。細胞継代数は、12~20の間に限定した。インビトロ実験の過程において、実験標的化合物曝露期間中及びそれを超えて少なくとも24時間、対数増殖を得るよう細胞を適切な密度で播いた。
【0108】
化合物調製及び細胞への提示
【0109】
アッセイのための化合物を小容量リキッドハンドラー(バイアフロ アシスト(VIAFLO ASSIST)及びバイアフロ(VIAFLO)II電動16チャネルピペット、0.5~12.5μL)を使用して、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で11段階の半対数段階希釈で段階希釈して、全試験に使用するマスター用量反応材料(MDR)を作成した。抗体溶液をリン酸緩衝食塩水(PBS)中において連続希釈した。
【0110】
MDR材料プレートから細胞ARPへの化合物及び抗体の移動は、組み合わせ特異的な移動マップ(トランスファートラック(TransferTrack)、バイオセロ(BioSero))を使用して低エネルギー音響的移動(ATS100、EDC)によって直接達成した。化合物及び抗体のアッセイプレートへの移動後、細胞が経験した用量反応範囲は、それぞれ典型的には5μM~50pM及び30nM~0.5pM(5log)であった。アッセイにおける最終DMSO濃度は、化合物・化合物の組み合わせに関して均一に0.1%、及び抗体・化合物の組み合わせに関して均一に0.05%であった。二つ組の11×11の組み合わせ行列、ビヒクル/DMSO又はビヒクル/PBS陰性対照、殺細胞陽性対照、及び静的対照薬剤シクロヘキシミドを含む各アッセイプレートが自己固定された。
【0111】
処理細胞の抗増殖活性の測定
【0112】
製造業者の説明書(製品G7570、G7571、G7572、G7573の使用のためのセルタイター-グロ(登録商標)発光細胞生存性アッセイ技術公報説明書 文献 #TB288、改訂3/15)に従ってセルタイター-グロ(登録商標)発光細胞生存性アッセイ試薬(プロメガ(Promega))を使用し、その後、マイクロタイタープレートリーダー(エンビジョン(Envision)、PE)により発光シグナルを測定する治療後72~144時間、細胞増殖アッセイを実施した。
【0113】
陽性対照として時間ゼロ(T0)シグナルを及び陰性対照としてプレート内のビヒクルウェル(DMSO)を使用して細胞増殖を評価した。データを阻害パーセントに変換し、増殖の0%~100%の範囲に収めている。ここで、0%はT0におけるシグナルに等しく、100%は阻害されていない増殖又は最高の増殖に等しい。0%又は0%に近い細胞増殖は、静的反応と考慮される。
【0114】
プレート内の殺細胞対照化合物(1μMボルテゾミブ、1μMスタウロスポリン)に関する反応データ及び陰性対照としてT0シグナルを使用して細胞生存性又は死滅を評価した。データを阻害パーセントに変換し、-100%~0%の範囲に収めている。-100%又は-100%に近い細胞増殖は、殺細胞反応と考慮する。
【0115】
インビトロにおける化合物相乗作用の確認
【0116】
Hep3B細胞モデルに対して単剤として及び組み合わせて化合物1及びEGFR阻害剤を試験した。相対的な阻害パーセントデータをデータ解析ソフトウェア(エカビア(ECABIA)、H3バイオメディスン)によって記載されるとおり算出し、その後、さらなる解析に適合した0~200%のデータ様式に変換した(200%=殺細胞、100%=静的、0%=効果なし)。
【0117】
その後、組み合わせの効果を、Loewe相加性モデル(Lehar Jら、2009年及びZimmermann GRら、2006年)を使用し、組み合わせの反応をその一致する単剤の効果と比較してシャリス(Chalice)ソフトウェア(ホライゾン・ディスカバリー(Horizon Discovery))を使用して評価した。相乗効果が生じた薬物濃度範囲は、全用量行列チャートをLoewe相加性モデルチャートと比較することによって、及び過剰反応チャートの直接の観察結果によってシャリスにおいて視覚化することができる。シャリス相乗作用スコアによって提供される組み合わせの反応の面積及び強度によって、1調査内又はつながった複数の調査にわたって量的な評価を行うことができる。他の添加物のみの組み合わせを用いた自己交差実験及び試験がベースライン対照として働く。
【0118】
異種移植形成、投薬及び抗腫瘍活性の測定
【0119】
ヒト肝細胞癌細胞株Hep3Bを、10%ウシ胎仔血清を含むRPMI1640培地中、5%CO2気圧において37℃で培養し、指数増殖期に維持した。回収するために、細胞をリン酸緩衝食塩水で洗浄し、0.25%トリプシン・EDTAとともにインキュベーションし、RPMI1640培地及びマトリゲル(Matrigel)(コーニング(Corning))の1:1混合物に5×107細胞/mLの最終濃度で懸濁させた。異種移植をもたらすために、0.1mLの接種材料をマウスの右脇腹領域に皮下注射して、5×106細胞/マウスの最終濃度にした。平均腫瘍体積(TV)がおよそ170mm3に達したとき(移植10日後)、56匹のマウスをマウスのTVに基づいて選択し、1群当たり8匹の動物を含む7つの治療群に分けた。化合物1(100及び300mg/kg)単独又はビヒクル(対照)若しくはゲフィチニブ(50、100、200mg/kg)と組み合わせた経口(PO)治療を15日間続けて、12時間毎(BID)に施した。投与前に投与体積(0.1mL/10g体重)を個々のマウスの体重(BW)から算出した。体重は毎日測定し、腫瘍の測定は、週に2回実施した。
【0120】
以下の式に従ってTVをmm
3単位で算出した:TV=長さ×幅
2×0.5 長さ:腫瘍の最大径(mm) 幅:長さと垂直な直径(mm) 腫瘍増殖阻害%(TGI)は以下の式に従って算出した。
【数1】
ここで、X日目は任意の測定日である。
【0121】
治療の抗腫瘍効果、部分的な退縮(PR)及び完全な退縮(CR)、安定した疾患(SD)及び進行性の疾患(PD)をH3異種移植モデル反応基準(添付書類4)によって定義した。1日目の体重と比較して>20%の体重減少があるか、又は最長の直径が>2000mmの腫瘍をもつマウスは、H3バイオメディスン動物ケア及び使用プログラム並びに試験プロトコル13-05-1gによって定義されるIACUCガイドラインに従って動物のあらゆる痛み又は苦しみを防ぐためにすぐに安楽死させた。
【0122】
統計分析
【0123】
データは、TVに関して平均±SEM又はBWに関して平均±STDEVと表す。ビヒクル処理群と化合物1組み合わせ処理群との間の15日目のTVの差を2元配置ANOVAに続くダネットの事後検定により解析した。相対的な体重変化を、2元配置ANOVAに続くダネットの事後によって解析した。グラフパッドプリズム(GraphPad Prism)バージョン5.04(グラフパッド(GraphPad)ソフトウェア、ラ・ホーヤ、CA)を使用して統計分析を行った。
【0124】
H3異種移植モデル反応基準
【0125】
進行性の疾患(PD):3つの連続した測定値が開始体積の>120%又は最良の反応より高い3つの連続した測定値、安定した疾患(SD):3つの連続した測定値が開始体積の>50%且つ<120%、部分的退縮(PR):3つの連続した測定値が開始体積の<50%、完全な退縮(CR):3つの連続した測定値が<30mm3。
【0126】
結果
【0127】
インビトロにおける組み合わせ調査
【0128】
FGFR4阻害剤及びEGFR阻害剤が細胞生存性及び/又は増殖の低減に相乗作用を示すかどうかを判断するために、化合物1(FGFR4阻害剤)並びに4つのEGFR阻害剤、ゲフィチニブ、アファチニブ、ラパチニブ、及びセツキシマブを組み合わせで、インビトロにおいてHEP3B細胞株(典型的なHCC細胞株)を使用して試験した。細胞を化合物に曝露した後、72時間後に生存性に対する効果を測定した。
【0129】
化合物1及びゲフィチニブ
【0130】
単剤としての最高用量の1μM化合物1及び5μMゲフィチニブが、それぞれ細胞生存性を72%及び43%低減した(
図1A)一方で、1μM化合物1及び5μMゲフィチニブの組み合わせは、全体細胞を死滅させた(すなわち200%の効果)。さらに、組み合わせた場合、より低い用量の化合物1及びゲフィチニブが、対応する単剤の用量と比較してより大きな程度に細胞生存性を低減した(
図1A)。Loewe相加性モデルを使用して相加性を超える過剰阻害を算出し、0.01μM化合物1及び0.05μMゲフィチニブから始まる相乗的な値が観察された(
図1B)。
【0131】
図1A及び
図1Bは、化合物1及びゲフィチニブが、インビトロにおいてHEP3B細胞の増殖を相乗的に阻害することを示している。HEP3B細胞を、さまざまな用量の化合物1及びゲフィチニブで72時間処理した。細胞生存性の阻害をセルタイター-グロを使用して測定し(
図1A)、シャリスソフトウェアを使用して、それぞれの化合物1及びゲフィチニブの用量の組み合わせに関するLoewe相加性を超えた過剰阻害を算出した(
図1B)。
【0132】
化合物1及びアファチニブ
【0133】
単剤として最高用量の1μM化合物1及び1μMアファチニブが、それぞれ細胞生存性を82%及び47%低減した(
図2A)一方で、1μM化合物1及び1μMアファチニブの組み合わせは全体細胞を死滅させた(すなわち200%の効果)。さらに、組み合わせた場合、より低い用量の化合物1及びアファチニブが、対応する単剤の用量と比較してより大きな程度に細胞生存性を低減した(
図2A)。Loewe相加性モデルを使用して相加性を超える過剰阻害を算出し、0.12μM化合物1及び0.004μMアファチニブから始まる相乗的な値が観察された(
図2B)。
【0134】
図2A及び
図2Bは、化合物1及びアファチニブが、インビトロにおいてHEP3B細胞の増殖を相乗的に阻害することを示す。HEP3B細胞をさまざまな用量の化合物1及びアファチニブで72時間処理した。細胞生存性の阻害をセルタイター-グロを使用して測定し(
図2A)、シャリスソフトウェアを使用して、それぞれの化合物1及びアファチニブの用量の組み合わせに関するLoewe相加性を超える過剰阻害を算出した(
図2B)。
【0135】
化合物1及びラパチニブ
【0136】
単剤としての最高用量の1μM化合物1及び5μMラパチニブが、それぞれ細胞生存性を66%及び61%低減した(
図3A)一方で、1μM化合物1及び5μMラパチニブの組み合わせは全体細胞を死滅させた(すなわち200%の効果)。さらに、組み合わせた場合、より低い用量の化合物1及びラパチニブが、対応する単剤の用量と比較してより大きな程度に細胞生存性を低減した(
図3A)。Loewe相加性モデルを使用して相加性を超える過剰阻害を算出し、0.001μM化合物1及び0.005μMラパチニブから始まる相乗的な値が観察された(
図3B)。
【0137】
図3A及び
図3Bは、化合物1及びラパチニブが、インビトロにおいてHEP3B細胞の増殖を相乗的に阻害することを示す。HEP3B細胞をさまざまな用量の化合物1及びラパチニブで72時間処理した。細胞生存性の阻害をセルタイター-グロを使用して測定し(
図3A)、シャリスソフトウェアを使用して、それぞれの化合物1及びラパチニブの用量の組み合わせに関するLoewe相加性を超える過剰阻害を算出した(
図3B)。
【0138】
化合物1及びセツキシマブ
【0139】
単剤としての最高用量の1μM化合物1及び30nMセツキシマブが、それぞれ細胞生存性を46%及び1%低減した(
図4A)一方で、1μM化合物1及び30nMセツキシマブの組み合わせは、生存性を大幅に低減した(173%の効果)。さらに、組み合わせた場合、より低い用量の化合物1及びセツキシマブが、対応する単剤の用量と比較してより大きな程度に細胞生存性を低減した(
図4A)。Loewe相加性モデルを使用して相加性を超える過剰阻害を算出し、0.001μM化合物1及び0.00004μMセツキシマブから始まる相乗的な値が観察された(
図4B)。
【0140】
図4A及び
図4Bは、化合物1及びセツキシマブが、インビトロにおいてHEP3B細胞の増殖を相乗的に阻害することを示す。HEP3B細胞をさまざまな用量の化合物1及びセツキシマブで72時間処理した。細胞生存性の阻害をセルタイター-グロを使用して測定し(
図4A)、シャリスソフトウェアを使用して、それぞれの化合物1及びセツキシマブの用量の組み合わせに関するLoewe相加性を超える過剰阻害を算出した(
図4B)。
【0141】
インビボにおける組み合わせ調査
【0142】
化合物1及びゲフィチニブがインビボにおける腫瘍増殖に相乗的に影響を及ぼすかどうかを判断するために、雌の免疫不全ヌードマウスに異種移植としてHEP3B細胞株を増殖させた。腫瘍をもつマウスを、単剤又は組み合わせて100mg/kg又は300mg/kgの化合物1、及び50、100、又は200mg/kgのゲフィチニブで毎日17日間治療した。単剤としてのゲフィチニブは、どの用量レベルでも腫瘍増殖を阻害しなかった(
図5A)。対照的に、化合物1の単剤は、100mg/kgで16%及び300mg/kgで64%の腫瘍増殖阻害(TGI)をもたらした(ビヒクル対照と比較した300mg/kgの化合物1はp<0.05、
図5B及び
図5C)。
【0143】
100mg/kgの化合物1及びゲフィチニブの組み合わせは、化合物1 100mg/kg単剤と比較して全3用量レベルで抗腫瘍効果の有意な増加をもたらし、50mg/kgに関して27%のTGI(8/8PD)、100mg/kgに関して32%のTGI(8/8PD)及び、200mg/kgに関して72%のTGIであった(3/8SD及び5/8PD;ビヒクル対照と比較した100mg/kgの化合物1を使用した全用量の組み合わせはp<0.05)。300mg/kgの化合物1及びゲフィチニブの組み合わせもまた、化合物1 300mg/kg単剤と比較して全3用量レベルで抗腫瘍効果の有意な増加をもたらし、50mg/kgに関して75%のTGI(2/8SD及び6/8PD)、100mg/kgに関して89%のTGI(3/8PR、4/8SD及び1/8PD)、及び200mg/kgに関して98%のTGIであった(5/8CR、2/8PR、及び1/8SD;ビヒクル対照と比較した300mg/kgの化合物1に関する全用量の組み合わせはp<0.05)。体重又は事前の臨床的な健康状態の観察によって判断した場合、治療のいずれも全く毒性をもたらさなかった(データは示していない)。
【0144】
図5A、
図5B、及び
図5Cは、肝細胞癌のHep3B異種移植モデルにおける経口の化合物1及びゲフィチニブの抗腫瘍効果を示す。化合物1及びゲフィチニブの両方を経口(PO)で1日に1回(QD)17日間与えた。データは、平均±SEM(腫瘍体積)を表す。
図5Aは、単剤としてのゲフィチニブを示す。
図5Bは、100mg/kgのN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミド又はその薬学的に許容される塩を伴うゲフィチニブの3用量を示す(2元配置ANOVAに続くダネットの事後検定を使用して、100mg/kgの化合物1単剤と比較した、200mg/kgのゲフィチニブと組み合わせた100mg/kgの化合物1の投与は
*p<0.05)。
図5Cは、300mg/kgの化合物1を伴うゲフィチニブの3用量を示す(2元配置ANOVAに続くダネットの事後検定を使用して、300mg/kgの化合物1と比較した100又は200mg/kgのゲフィチニブと組み合わせた化合物1の300mg/kgの投与は
*p<0.05)。