(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】配線回路基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/16 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
H05K1/16 B
(21)【出願番号】P 2019044777
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018049136
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】奥村 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】古川 佳宏
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199638(WO,A1)
【文献】特開平10-074626(JP,A)
【文献】特開2008-098406(JP,A)
【文献】特公昭44-031023(JP,B1)
【文献】特開昭63-092005(JP,A)
【文献】特開2017-037888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-17/08
H05K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の厚み方向一方面に配置される配線と、
前記配線を被覆する第2絶縁層と、
アスペクト比が2以上である形状を有する導電性粒子を含有しており、前記第2絶縁層を介して、前記配線を被覆する粒子含有層とを備え、
前記配線が、略湾曲形状を有
し、
前記第2絶縁層は、前記配線に沿うように略一定の厚みを持って被覆する部分を有し、
前記粒子含有層は、前記導電性粒子が前記湾曲形状に沿って配向する部分を有することを特徴とする、配線回路基板。
【請求項2】
前記導電性粒子が、磁性粒子であり、
前記粒子含有層が、磁性層であり、
磁性配線回路基板であることを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記第2絶縁層が、電着層であることを特徴とする、請求項2に記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記第2絶縁層の平均厚みTが、10μm以下であることを特徴とする、請求項2または3に記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記配線は、前記第1絶縁層の前記厚み方向一方面に間隔を隔てて対向配置される厚み方向一方面と、前記第1絶縁層の前記厚み方向一方面に接触する厚み方向他方面と、前記厚み方向一方面および前記厚み方向他方面の両端縁を連結する側面とを有し、
前記第2絶縁層は、前記厚み方向一方面および前記側面を被覆しており、
前記配線が、前記厚み方向一方面および前記側面によって形成される角部を有し、
前記角部が、略湾曲形状を有することを特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記角部の曲率半径Rが、9μm以上であることを特徴とする、請求項5に記載の配線回路基板。
【請求項7】
前記磁性層は、前記第1絶縁層において前記第2絶縁層から露出する前記厚み方向一方面を被覆しており、
前記配線は、前記厚み方向他方面および前記側面によって形成される第2角部を有し、
前記第2角部が、互いに向かい合う2つの前記側面間の長さが前記厚み方向他方側に近づくに従って長くなる部分を有することを特徴とする、請求項5または6に記載の配線回路基板。
【請求項8】
前記配線は、略円形状を有し、
前記第2絶縁層が、前記配線の周面を被覆し、
前記粒子含有層が、前記第2絶縁層を介して、前記配線の前記周面を被覆することを特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載の配線回路基板。
【請求項9】
第1絶縁層と、前記第1絶縁層の厚み方向一方面に配置される配線とを準備する第1工程と、
第2絶縁層により前記配線を被覆する第2工程と、
前記第2絶縁層を介して、前記配線を被覆し、アスペクト比が2以上である形状を有する導電性粒子を含有する粒子含有層を形成する第3工程とを備え、
前記配線は、略湾曲形状を形成し、
前記第2工程では、前記第2絶縁層が前記配線に沿うように略一定の厚みを持って被覆する部分を有するように、前記配線を被覆し、
前記第
3工程では、前記厚み方向に直交する方向に配向される前記導電性粒子を含有する粒子含有シートを、前記第2絶縁層に対して
前記湾曲形状に沿って配向するように熱プレスすることを特徴とする、配線回路基板の製造方法。
【請求項10】
前記導電性粒子が、磁性粒子であり、
前記粒子含有層が、磁性層であり、
粒子含有シートが、磁性シートであり、
磁性配線回路基板の製造方法であることを特徴とする、請求項9に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項11】
前記第1工程における前記配線は、前記第1絶縁層の前記厚み方向一方面に間隔を隔てて対向配置される厚み方向一方面と、前記第1絶縁層の前記厚み方向一方面に接触する厚み方向他方面と、前記厚み方向一方面および前記厚み方向他方面の両端縁を連結する側面とを有しており、さらに、前記厚み方向一方面および前記側面に、略湾曲形状の角部が形成され、
前記第2工程では、前記絶縁層により、前記配線の前記厚み方向一方面および前記側面を被覆し、
前記第3工程では、前記第2絶縁層を介して、前記配線の前記厚み方向一方面および前記側面を被覆する粒子含有層を形成することを特徴とする、請求項10に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項12】
前記第1工程は、
サブトラクティブ法により、厚み方向一方面および側面によって形成される尖り部を有する配線基部を形成する第4工程、および、
めっきにより、前記配線基部を被覆するめっき層であって、前記尖り部を被覆する被覆部を有する前記めっき層を形成することにより、前記角部を、前記被覆部から略湾曲形状に形成する第5工程
を備えることを特徴とする、請求項11に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項13】
前記第1工程における前記配線は、略円形状を有し、
前記第2工程では、前記絶縁層により、前記配線の周面を被覆し、
前記第3工程では、前記第2絶縁層を介して、前記配線の前記周面を被覆する粒子含有層を形成することを特徴とする、請求項10に記載の配線回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力を無線により伝送する無線通信や無線電力伝送に、コイルモジュールが用いられることが知られている。
【0003】
例えば、コイルパターンと、それを埋設し、扁平形状の磁性粒子(導電性粒子)を含有する磁性層とを備えるコイルモジュールが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このようなコイルモジュールは、例えば、まず、導体パターンニングによってコイルパターンを形成し、次いで、磁性粒子を含有する磁性シートをコイルパターンに対して熱プレスすることにより得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、コイルパターンに大電流を流す場合があり、その場合には、絶縁層に含有される扁平形状の磁性粒子がコイルパターン間を短絡させることがあるため、コイルパターンと磁性層との間における絶縁性が求められる。
【0007】
そこで、コイルパターンと磁性層との間に、絶縁層を形成することが試案される。
【0008】
しかし、上記したコイルパターンの上面および側面の稜線部には、上側斜め側方(外側)に向かって尖る尖り部が形成されるため、この場合に、絶縁層を形成すれば、尖り部に対向する絶縁層の厚みが過度に薄くなり易い。そのため、磁性粒子を含有する磁性シートを、絶縁層を介して、尖り部を含むコイルパターンに対して熱プレスすれば、磁性粒子が、尖り部に対向する絶縁層を貫通して、尖り部に接触してしまい、その結果、かかる接触によって、磁性層とコイルパターンとの絶縁性を確保できないという不具合がある。
【0009】
一方で、コイルモジュールには、高いインダクタンスも求められる。
【0010】
本発明は、粒子含有層の配線に対する絶縁性を確保できるとともに、高いインダクタンスを有する配線回路基板およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(1)は、第1絶縁層と、前記第1絶縁層の厚み方向一方面に配置される配線と、前記配線を被覆する第2絶縁層と、アスペクト比が2以上である形状を有する導電性粒子を含有しており、前記第2絶縁層を介して、前記配線を被覆する粒子含有層とを備え、前記配線が、略湾曲形状を有する、配線回路基板を含む。
【0012】
この配線回路基板では、配線が、略湾曲形状を有するので、配線において略湾曲形状に対応する部分を被覆する第2絶縁層を、過度に薄くなることを抑制しながら、形成することができる。そのため、導電性粒子が、第2絶縁層を貫通して配線に接触することを抑制することができる。その結果、第2絶縁層によって、粒子含有層の配線に対する絶縁性を確保することができる。
【0013】
従って、この配線回路基板は、第2絶縁層の絶縁性を確保できる。
【0014】
本発明(2)は、前記導電性粒子が、磁性粒子であり、前記粒子含有層が、磁性層であり、磁性配線回路基板である、(1)に記載の配線回路基板を含む。
【0015】
磁性配線回路基板である配線回路基板では、配線において略湾曲形状に対応する部分を第2絶縁層を介して被覆する磁性層においては、アスペクト比が2以上である磁性粒子が、配線の湾曲形状に沿って配向することができる。つまり、磁性粒子は、配線において略湾曲形状に対応する部分に対向する磁性層においては、厚み方向および直交方向に対して傾斜する方向に配向することができる。そのため、磁性層において配線の略湾曲形状に対応する部分に沿う滑らかな磁路を形成することができる。従って、配線の周囲の実効透磁率を向上させることができる。その結果、配線回路基板は、高いインダクタンスを有する。
【0016】
従って、この配線回路基板は、高いインダクタンスを有しながら、第2絶縁層の絶縁性を確保できる。
【0017】
本発明(3)は、前記第2絶縁層が、電着層である、(2)に記載の配線回路基板を含む。
【0018】
この配線回路基板では、第2絶縁層が、電着層であるので、第2絶縁層の厚みを薄くすることができる。そのため、かかる第2絶縁層を介して配線を被覆する磁性層の実効透磁率の低下を抑制することができる。その結果、この配線回路基板は、高いインダクタンスを有する。
【0019】
一方で、第2絶縁層の厚みが薄い場合には、磁性粒子が、薄い第2絶縁層を貫通して配線に接触し易い。しかし、この配線回路基板において、略湾曲形状を有する配線を被覆する第2絶縁層では、過度に薄い厚みで形成されることが抑制されているので、磁性粒子による第2絶縁層の貫通を抑制して、第2絶縁層の絶縁性を確保できる。
【0020】
本発明(4)は、前記第2絶縁層の平均厚みTが、10μm以下である、(2)または(3)に記載の配線回路基板を含む。
【0021】
この配線回路基板では、第2絶縁層の平均厚みTが、10μm以下と薄いので、磁性層の実効透磁率の低下を抑制することができる。その結果、この配線回路基板は、高いインダクタンスを有する。
【0022】
本発明(5)は、前記配線は、前記第1絶縁層の前記厚み方向一方面に間隔を隔てて対向配置される厚み方向一方面と、前記第1絶縁層の前記厚み方向一方面に接触する厚み方向他方面と、前記厚み方向一方面および前記厚み方向他方面の両端縁を連結する側面とを有し、前記第2絶縁層は、前記厚み方向一方面および前記側面を被覆しており、前記配線が、前記厚み方向一方面および前記側面によって形成される角部を有し、前記角部が、略湾曲形状を有する、(2)~(4)のいずれか一項に記載の配線回路基板を含む。
【0023】
この配線回路基板では、配線の角部が、略湾曲形状を有するので、かかる角部を被覆する第2絶縁層を、過度に薄くなることを抑制しながら、形成することができる。そのため、導電性粒子が、第2絶縁層を貫通して配線の角部に接触することを抑制することができる。その結果、第2絶縁層によって、粒子含有層の配線に対する絶縁性を確保することができる。従って、この配線回路基板は、第2絶縁層の絶縁性を確保できる。
【0024】
本発明(6)は、前記角部の曲率半径Rが、9μm以上である、(5)に記載の配線回路基板を含む。
【0025】
この配線回路基板では、角部の曲率半径Rが、9μm以上と大きいと、角部の円弧面が緩やかであるため、かかる角部に対応する第2絶縁層を十分な厚みで形成することができる。また、角部に対向する第2磁性層において、磁性粒子が、角部の円弧面に沿って確実に配向することができる。
【0026】
本発明(7)は、前記磁性層は、前記第1絶縁層において前記第2絶縁層から露出する前記厚み方向一方面を被覆しており、前記配線は、前記厚み方向他方面および前記側面によって形成される第2角部を有し、前記第2角部が、互いに向かい合う2つの前記側面間の長さが前記厚み方向他方側に近づくに従って長くなる部分を有する、(5)または(6)に記載の配線回路基板を含む。
【0027】
この配線回路基板では、磁性層が、第1絶縁層において第2絶縁層から露出する厚み方向一方面を被覆しているので、かかる磁性層における磁性粒子は、直交方向に沿って配向することができる。
【0028】
また、他方面および側面によって形成される第2角部が、互いに向かい合う2つの側面間の長さが他方面に近づくに従って長くなる部分を有するので、第2絶縁層を介してその部分を被覆する磁性層においては、第2角部における部分に対応して、磁性粒子が、直交方向に対して傾斜する方向に配向することができる。
【0029】
従って、第2角部の周囲において、滑らかな磁路を形成することができる。そのため、配線回路基板は、より一層高いインダクタンスを有する。
【0030】
本発明(8)は、前記配線は、略円形状を有し、前記第2絶縁層が、前記配線の周面を被覆し、前記粒子含有層が、前記第2絶縁層を介して、前記配線の前記周面を被覆する、(2)~(4)のいずれか一項に記載の配線回路基板を含む。
【0031】
配線の周囲における磁性層において、磁性粒子は、配線の周面に沿う滑らかな磁路を形成することができる。従って、配線の周囲の実効透磁率を向上させることができる。その結果、配線回路基板は、高いインダクタンスを有する。
【0032】
本発明(9)は、第1絶縁層と、前記第1絶縁層の厚み方向一方面に配置される配線とを準備する第1工程と、第2絶縁層により前記配線を被覆する第2工程と、前記第2絶縁層を介して、前記配線を被覆し、アスペクト比が2以上である形状を有する導電性粒子を含有する粒子含有層を形成する第3工程とを備え、前記配線は、略湾曲形状を形成し、前記第2工程では、前記厚み方向に直交する方向に配向される前記導電性粒子を含有する粒子含有シートを、前記第2絶縁層に対して熱プレスする、配線回路基板の製造方法を含む。
【0033】
しかるに、第2工程において、粒子含有シートを、第2絶縁層に対して熱プレスするときに、粒子含有シートに含有される導電性粒子が、第2絶縁層を貫通して配線に接触し易い。
【0034】
しかしながら、この配線回路基板の製造方法では、第1工程において、配線が略湾曲形状を形成するので、配線において略湾曲形状に対応する部分を被覆する第2絶縁層を厚く形成することができる。
【0035】
そのため、導電性粒子の第2絶縁層への貫通、および、導電性粒子の配線への接触を抑制することができる。
【0036】
従って、この製造方法は、第2絶縁層の絶縁性を確保した配線回路基板を得ることができる。
【0037】
本発明(10)は、前記導電性粒子が、磁性粒子であり、前記粒子含有層が、磁性層であり、磁性配線回路基板の製造方法である、(9)に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0038】
磁性配線回路基板の製造方法である配線回路基板の製造方法の第2工程では、厚み方向に直交する方向に配向される導電性粒子を含有する磁性シートを、第2絶縁層に対して熱プレスするので、第2絶縁層を介して、配線において略湾曲形状に対応する部分を被覆する磁性層において、磁性粒子が、配線の湾曲形状に沿って配向することができる。つまり、磁性粒子を、配線の略湾曲形状に対応する部分に対向する磁性層においては、厚み方向および直交方向に対して傾斜する方向に配向させることができる。そのため、磁性層において配線の略湾曲形状に対応する部分に沿う滑らかな磁路を形成することができる。従って、配線の周囲の実効透磁率を向上させることができる。その結果、高いインダクタンスを有する配線回路基板を製造することができる。
【0039】
本発明(11)は、前記第1工程における前記配線は、前記第1絶縁層の前記厚み方向一方面に間隔を隔てて対向配置される厚み方向一方面と、前記第1絶縁層の前記厚み方向一方面に接触する厚み方向他方面と、前記厚み方向一方面および前記厚み方向他方面の両端縁を連結する側面とを有しており、さらに、前記厚み方向一方面および前記側面に、略湾曲形状の角部が形成され、前記第2工程では、前記絶縁層により、前記配線の前記厚み方向一方面および前記側面を被覆し、前記第3工程では、前記第2絶縁層を介して、前記配線の前記厚み方向一方面および前記側面を被覆する粒子含有層を形成する、(10)に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0040】
この配線回路基板の製造方法では、第1工程の配線に、略湾曲形状の角部が形成されているので、かかる角部を被覆する第2絶縁層を厚く形成することができる。
【0041】
そのため、導電性粒子の第2絶縁層への貫通、および、導電性粒子の配線への接触を抑制することができる。
【0042】
従って、この製造方法は、第2絶縁層の絶縁性を確保した配線回路基板を得ることができる。
【0043】
本発明(12)は、前記第1工程は、サブトラクティブ法により、厚み方向一方面および側面によって形成される尖り部を有する配線基部を形成する第4工程、および、めっきにより、前記配線基部を被覆するめっき層であって、前記尖り部を被覆する被覆部を有する前記めっき層を形成することにより、前記角部を、前記被覆部から、略湾曲形状に形成する第5工程を備える、(11)に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0044】
しかるに、第1工程において、尖り部を有する配線を形成すると、第2工程において、尖り部に対向する絶縁層の厚みが過度に薄くなる場合がある。その後、第3工程において、磁性層を形成すれば、磁性粒子が、尖り部に対向する絶縁層を貫通して、尖り部に接触してしまい、その結果、かかる接触によって、磁性層と配線との絶縁性を確保できない場合がある。
【0045】
しかし、この第4工程において、尖り部を有する配線基部を形成しても、第5工程において、尖り部を被覆する被覆部を有するめっき層を形成して、角部を、被覆部から、略湾曲形状に形成する。そのため、第2工程において、かかる角部を被覆する第2絶縁層を、過度に薄くなることを抑制しながら、形成することができる。
【0046】
第3工程において、磁性層を形成することにより、磁性層における磁性粒子が、第2絶縁層を貫通して配線に接触することを抑制することができる。
【0047】
本発明(13)は、前記第1工程における前記配線は、略円形状を有し、前記第2工程では、前記絶縁層により、前記配線の周面を被覆し、前記第3工程では、前記第2絶縁層を介して、前記配線の前記周面を被覆する粒子含有層を形成する、(10)に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0048】
第3工程では、配線の周囲における磁性層において、磁性粒子は、配線の略湾曲形状に沿う滑らかな磁路を形成することができる。従って、配線の周囲の実効透磁率を向上させることができる。その結果、高いインダクタンスを有する配線回路基板を製造することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の配線回路基板の製造方法により得られる本発明の配線回路基板は、第2絶縁層の絶縁性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、本発明の配線回路基板の一実施形態である磁性配線回路基板の断面図およびその一部拡大断面図を示す。
【
図2】
図2A~
図2Dは、
図1に示す磁性配線回路基板の製造工程図であり、
図2Aが、配線基部を形成する第4工程(第1工程)、
図2Bが、めっき層を形成して、配線を形成する第5工程(第1工程)、
図2Cが、第2絶縁層を形成する第2工程、
図2Dが、磁性層を形成する第3工程を示す。
【
図3】
図3は、
図1において、第1角部の湾曲面を通過する円弧面の円を説明する断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に磁性配線回路基板の変形例(めっき層が薄く、配線側面がくびれ部を有しない態様)の一部拡大断面図を示す。
【
図5】
図5は、
図1に磁性配線回路基板の変形例(第2角部が垂直面を有する態様)の一部拡大断面図を示す。
【
図6】
図6は、
図1に磁性配線回路基板の変形例(第2角部が第1窄み面を有する態様)の一部拡大断面図を示す。
【
図7】
図7は、
図1に磁性配線回路基板の変形例(第2角部が第2窄み面を有する態様)の一部拡大断面図を示す。
【
図8】
図8A~
図8Cは、
図1に示す磁性配線回路基板の変形例(配線部が断面略円形状である態様)の製造工程図であり、
図8Aが、第1絶縁層、配線部および第2絶縁層を準備する工程、
図8Bが、配線部および第2絶縁層を、第1絶縁層に配置する工程、
図8Cが、磁性シートを、第1絶縁層、配線部および第2絶縁層に対して熱プレス工程を示す。
【
図9】
図9A~
図9Bは、比較例の磁性配線回路基板の製造工程図であり、
図9Aが、第2絶縁層を形成する第2工程、
図9Bが、磁性層を形成する第3工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
<一実施形態>
本発明の配線回路基板の一実施形態である磁性配線回路基板1を、
図1を参照して説明する。
【0052】
磁性配線回路基板1は、厚み方向に互いに対向する厚み方向一方面および他方面を有し、面方向(厚み方向に直交する方向)に延びる形状を有する。磁性配線回路基板1は、絶縁層の一例である第1絶縁層2と、配線の一例としての配線部3と、第2絶縁層4と、粒子含有層の一例としての磁性層5とを備える。
【0053】
第1絶縁層2は、面方向に延びる形状を有する。第1絶縁層2は、次に説明する配線部3を支持する支持材であり、ひいては、磁性配線回路基板1を支持する支持層でもある。第1絶縁層2は、厚み方向一方面である第1絶縁面7および他方面である第2絶縁面8を有する。第1絶縁面7および第2絶縁面8のそれぞれは、面方向に沿う平坦面である。また、第1絶縁層2は、可撓性を有する。
【0054】
第1絶縁層2の材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの樹脂が挙げられる。また、第1絶縁層2は、単層および複層のいずれであってもよい。第1絶縁層2の厚みは、特に限定されず、例えば、1μm以上、1000μm以下である。
【0055】
配線部3は、第1絶縁層2の第1絶縁面7において、例えば、厚み方向および第1方向(
図1における左右方向に相当し、面方向に含まれる方向)に沿って切断した切断面において、第1方向に互いに間隔を隔てて複数配置されている。配線部3の平面視(厚み方向に見たときの)形状としては、特に限定されず、例えば、ループ形状(コイル形状など)を含む。
【0056】
配線部3は、第1絶縁層2の第1絶縁面7に対して厚み方向一方側に間隔を隔てて対向配置される厚み方向一方面である第1配線面9と、第1絶縁層2の第1絶縁面7に接触する第2配線面10と、第1配線面9および第2配線面10の第1方向両端縁を連結する側面である配線側面11とを備える。
【0057】
第1配線面9は、第1方向に沿う平坦面である。
【0058】
第2配線面10は、第1配線面9と厚み方向に間隔を隔てて対向配置されており、第1配線面9に平行する平坦面である。
【0059】
配線側面11は、厚み方向に沿って延びる。配線側面11は、1つの配線部3に2つ備えられる。2つの配線側面11は、第1方向に互いに間隔を隔てて対向(互いに向かい合って)配置される。
【0060】
この配線部3は、角部の一例としての第1角部21と、第2角部22とを有する。
【0061】
第1角部21は、配線部3において、第1配線面9および配線側面11によって形成される稜線部(第1稜線部)である。詳しくは、第1角部21は、第1配線面9の第1方向両端部のそれぞれと、それらに連続する配線側面11の厚み方向一端部にわたって形成される。第1角部21は、1つの配線部3につき、2つ形成されている。
【0062】
そして、この第1角部21は、断面(厚み方向および第1方向に沿う切断面)視において、略湾曲形状を有する。具体的には、第1角部21は、第1方向外側および厚み方向一方側に向かって膨らむ湾曲面(詳しくは、略円弧面)23を有する。
【0063】
湾曲面23(円弧面)をなす円Cの中心CPは、例えば、配線部3の内部に位置する。
【0064】
湾曲面23をなす円Cの半径(曲率半径)Rは、例えば、5μm以上、好ましくは、9μm以上、より好ましくは、15μm以上、さらに好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、30μm以下である。湾曲面23の曲率半径Rが上記した下限以上であれば、湾曲面23を緩やかにすることができ、次に説明する第2絶縁層4をより確実に十分な厚みTで形成することができる。また、磁性粒子18(後述)が、第1角部21に対向する第2絶縁層4において、湾曲面23に沿って確実に配向することができる。
【0065】
第1角部21の曲率半径Rが上記した上限以下であれば、配線側面11の厚み方向中央部50(後述)に隙間(ボイド)なく磁性層5を充填することができる。
【0066】
湾曲面23の中心角αは、円弧の一端および中心CPを結ぶ線分と、円弧の他端および中心CPを結ぶ線分との成す角度であり、例えば、180度未満である。具体的には、湾曲面23の中心角αは、例えば、45度以上、好ましくは、60度以上、より好ましくは、80度以上であり、また、例えば、150度以下、好ましくは、135度以下、より好ましくは、120度以下である。湾曲面23の中心角αが上記した下限以上であれば、湾曲面23の長さを長くすることができ、そのため、磁性粒子18が湾曲面23に確実に沿う(配向する)ことができる。湾曲面23の中心角αが上記した下限以上であれば、湾曲面23の長さを長くすることができ、そのため、磁性粒子18が湾曲面23に確実に沿う(配向する)ことができる。湾曲面23の中心角αが上記した上限以下であれば、配線側面11の厚み方向中央部50(後述)に隙間(ボイド)なく磁性層5を充填することができる。
【0067】
なお、
図1の拡大図で示すように、湾曲面23をなす円Cは、第1角部21において湾曲面23を最大限通過(重複)する円弧をなすように、中心CPを決定し、かかる中心CPに基づく円Cとして定義される。一方、
図3に示すように、第1角部21において湾曲面23をわずかに(最小限で)通過(重複)する円弧をなすような中心CP’を決定し、かかる中心CP’に基づく円C’ではない。
【0068】
第2角部22は、配線部3において、第2配線面10および配線側面11によって形成される稜線部(第2稜線部)である。詳しくは、第2角部22は、第2配線面10の第1方向両端部のそれぞれと、それらに連続する配線側面11の厚み方向他端部にわたって形成される。第2角部22は、1つの配線部3につき、2つ形成されている。
【0069】
2つの第2角部22のそれぞれは、2つの第1角部21のそれぞれに対して厚み方向他方側に配置されている。
【0070】
第2角部22は、第1方向外側(第1方向外側斜め第1方向他方側)に向かって尖る第2尖り部である。第2角部22は、傾斜面24と、平坦面26とを有する(により区画されている。)。
【0071】
傾斜面24は、テーパ面27を主要部として有する。好ましくは、傾斜面24は、テーパ面27のみからなる。傾斜面24は、配線側面11の厚み方向中央部(詳しくは、中央部と他端部との間付近)50から連続しており、第1方向外側に面している。2つの第2角部22に対応する2つの傾斜面24は、第1方向に互いに対向して(互いに向かい合って)配置されている。
【0072】
テーパ面27は、厚み方向および第1方向に対して傾斜している。つまり、テーパ面27は、厚み方向および第1方向に対して傾斜し、かつ、厚み方向他方側に進むに従って第1方向外側に傾斜する傾斜方向(第1傾斜方向)(拡大図と併せて示される方向矢印参照)に沿っている。2つの傾斜面24に対応する2つのテーパ面27は、それらの間の長さが厚み方向他方側に近づくに従って長くなる2つのテーパ面(部分の一例)である。具体的には、テーパ面27は、配線側面11の厚み方向中央部(詳しくは、中央部と他端部との間付近)50から、第2配線面10の第1方向両端縁(第1絶縁層2の第1絶縁面7)に向かうに従って、第1方向外側に向かって末広状に広がるように傾斜する。なお、テーパ面27における、第1方向長さを厚み方向長さで除したテーパ比(第1方向長さ/厚み方向長さ)は、例えば、0.001以上、好ましくは、0.01以上、より好ましくは、0.1以上であり、また、例えば、1.0以下、好ましくは、0.75以下である。
【0073】
平坦面26は、傾斜面24の厚み方向他方側他端縁から第1方向内側に向かって真っ直ぐ延びる平面である。平坦面26は、第2配線面10の第1方向両端縁に相当する。平坦面26は、第1絶縁面7に接触している。
【0074】
第2角部22の傾斜面24と、第1角部21の湾曲面23とは、例えば、配線側面11の厚み方向中央部50を隔てて配置されている。
【0075】
なお、この第2角部22は、後述する配線基部36における第2尖り部45(
図2A参照)と同一形状であってもよい。
【0076】
配線側面11は、第1角部21の湾曲面23のうち第1方向外側に面する部分と、厚み方向中央部50と、湾曲面23の傾斜面24のうち第1方向外側に面する部分とを連続して備える。
【0077】
なお、2つの配線側面11の厚み方向中央部50のそれぞれは、第1方向内側に向かってくびれる形状を有する。具体的には、配線側面11は、それらの間における長さが、第1方向中央部において最短となる形状(くびれ部)を有する。
【0078】
なお、配線部3は、
図2Bの仮想線で示すように、例えば、配線基部36と、その厚み方向一方面および両側面に形成されるめっき層30とを備える。
【0079】
配線部3の材料としては、例えば、銅、ニッケル、金、はんだなどの金属やそれら金属の合金などの導体が挙げられ、好ましくは、銅が挙げられる。
【0080】
配線部3の厚みは、第1配線面9および第2配線面10間の長さであって、具体的には、例えば、10μm以上、好ましくは、30μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、250μm以下である。
【0081】
配線部3の幅は、互いに向かい合う2つの第1角部21の第1方向における端縁間の距離として、例えば、20μm以上、、好ましくは、50μm以上、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。
【0082】
隣り合う配線部3間の間隔は、第2絶縁層4(後述)および磁性層5(後述)を隔てて隣り合う第1角部21の第1方向端縁間の間隔として、例えば、20μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
配線部3の厚みの、配線部3の幅に対する比(厚み/幅)は、例えば、0.005以上、好ましくは、0.03以上であり、また、例えば、25以下、好ましくは、5以下である。配線部3の厚みの、隣り合う配線部3間の間隔に対する比(厚み/間隔)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.06以上であり、また、例えば、25以下、好ましくは、5以下である。配線部3の幅の、隣り合う配線部3間の間隔に対する比(幅/間隔)は、例えば、0.02以上、好ましくは、0.01以上であり、また、例えば、100以下、好ましくは、20以下である。
【0083】
なお、配線部3は、上記した第1絶縁層2とともに、配線回路基板準備体6に備えられる。つまり、配線回路基板準備体6は、次に説明する第2絶縁層4および磁性層5を備えず、第1絶縁層2と、配線部3とを備える。好ましくは、配線回路基板準備体6は、第1絶縁層2と、配線部3とのみからなる。
【0084】
第2絶縁層4は、複数の配線部3に対応して複数設けられている。第2絶縁層4は、配線部3の第1配線面9および配線側面11(湾曲面23および傾斜面24を含む)に沿って薄膜状に形成されている。第2絶縁層4は、第1配線面9および配線側面11に接触する第4絶縁面13と、第4絶縁面13の厚み方向一方側または第1方向外側に間隔を隔てて配置される第3絶縁面12とを備える。
【0085】
第4絶縁面13は、第1配線面9および配線側面11に対応する(具体的には、同一の)形状を有する。
【0086】
第3絶縁面12は、第2絶縁層4の厚みTが確保されるように、第4絶縁面13に追従する形状を有する。第3絶縁面12は、第4絶縁面13に並行する形状を有する。
【0087】
また、第2絶縁層4は、例えば、電着層(後述)、塗布層(後述)などであり、好ましくは、電着層である。
【0088】
第2絶縁層4は、例えば、比較的軟らかく(とりわけ、後述する第3工程(
図2D参照)における熱プレスにおいて、軟らかくなる性質を有し)、一方、磁性を有さない。具体的には、第2絶縁層4の材料としては、磁性粒子18(後の磁性層5で詳述される)を含有しない樹脂などが挙げられる。第2絶縁層4の樹脂としては、好ましくは、水中でイオン性を有する樹脂であって、具体的には、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、それらの混合物などが挙げられる。
【0089】
第2絶縁層4の厚みTは、比較的薄く、その平均厚みとして、例えば、20μm以下、好ましくは、15μm以下、より好ましくは、10μm以下、さらに好ましくは、7.5μm、とりわけ好ましくは、5μm以下、最も好ましくは、3μm以下であり、また、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上、より好ましくは、1μm以上である。
【0090】
第2絶縁層4の厚みTが上記した上限以下と薄ければ、次に説明する磁性層5の実効透磁率を向上させて、磁性配線回路基板1のインダクタンスを高くすることができる。
【0091】
一方、第2絶縁層4が過度に薄いと、後述する磁性層5における磁性粒子が第2絶縁層4を貫通して配線部3に接触し易い。
【0092】
しかし、この磁性配線回路基板1では、配線部3の第1角部21が、略湾曲形状を有することから、第2絶縁層4の厚みTは、第2絶縁層4が、過度に薄くなることを抑制して、第2絶縁層4が磁性粒子18に貫通されることを抑制して、第2絶縁層4の絶縁性を確保できる。
【0093】
なお、第2絶縁層4において第1角部21を被覆する部分の厚みT1は、第2絶縁層4において上記した第1角部21以外の部分(例えば、配線側面11の厚み方向中央部50、および/または、第1配線面9の第1方向中央部)を被覆する部分の厚みT0と同一であり、あるいは、厚みT0に対してわずかに小さいことが許容される。
【0094】
第2絶縁層4において、第1角部21を被覆する部分の厚みT1の、第1角部21以外の部分を被覆する部分の厚みT0に対する比(T1/T0)は、例えば、1以下、好ましくは、1未満、より好ましくは、0.95以下、さらに好ましくは、好ましくは、0.9以下であり、また、例えば、0.7以上、好ましくは、0.8以上である。
【0095】
第2絶縁層4において第1角部21を被覆する部分の厚みT1は、例えば、0.5μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、7μm以下である。
【0096】
第2絶縁層4において他の部分を被覆する部分の厚みT0は、例えば、0.52μm以上、好ましくは、1.04μm以上であり、また、例えば、14.49μm以下、好ましくは、10.14μm以下である。
【0097】
なお、第2絶縁層4の平均厚みは、上記した厚みT1およびT0を、その面積比で按分することによって、算出される。
【0098】
磁性層5は、磁性配線回路基板1のインダクタンスを向上させるために、配線回路基板準備体6に対して設けられている。磁性層5は、面方向に延びる形状を有する。
【0099】
磁性層5は、第2絶縁層4を介して配線部3を埋設している。具体的には、磁性層5は、第2絶縁層4を介して、配線部3の第1配線面9および配線側面11(湾曲面23および傾斜面24を含む)を被覆している。また、磁性層5は、第1絶縁層2の第1絶縁面7において、第2絶縁層4から露出する露出面16を被覆している。
【0100】
磁性層5は、第1磁性面14と、第2磁性面15とを有する。
【0101】
第1磁性面14は、第2絶縁層4の第3絶縁面12に対して厚み方向一方側に間隔を隔てて配置されている。第1磁性面14は、厚み方向一方側に露出している。第1磁性面14は、複数の配線部3に対応して厚み方向一方側に向かって隆起する複数の凸部28と、互いに隣り合う凸部13の間に配置され、凸部28に対して厚み方向他方側に向かって沈下する凹部29とを有する。
【0102】
第2磁性面15は、第1磁性面14の厚み方向他方側に間隔を隔てて配置されている。第2磁性面15は、第3絶縁面12と、露出面16とに連続して接触している。
【0103】
磁性層5は、例えば、磁性粒子18を含有する。具体的には、磁性層5の材料としては、例えば、アスペクト比が2以上である磁性粒子18および樹脂成分19を含有する磁性組成物などが挙げられる。
【0104】
磁性粒子18を構成する磁性材料としては、例えば、軟磁性体、硬磁性体が挙げられる。好ましくは、インダクタンスの観点から、軟磁性体が挙げられる。
【0105】
軟磁性体としては、例えば、1種類の金属元素を純物質の状態で含む単一金属体、例えば、1種類以上の金属元素(第1金属元素)と、1種類以上の金属元素(第2金属元素)および/または非金属元素(炭素、窒素、ケイ素、リンなど)との共融体(混合物)である合金体が挙げられる。これらは、単独または併用することができる。
【0106】
単一金属体としては、例えば、1種類の金属元素(第1金属元素)のみからなる金属単体が挙げられる。第1金属元素としては、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、その他、軟磁性体の第1金属元素として含有することが可能な金属元素の中から適宜選択される。
【0107】
また、単一金属体としては、例えば、1種類の金属元素のみを含むコアと、そのコアの表面の一部または全部を修飾する無機物および/または有機物を含む表面層とを含む形態、例えば、第1金属元素を含む有機金属化合物や無機金属化合物が分解(熱分解など)された形態などが挙げられる。後者の形態として、より具体的には、第1金属元素として鉄を含む有機鉄化合物(具体的には、カルボニル鉄)が熱分解された鉄粉(カルボニル鉄粉と称される場合がある)などが挙げられる。なお、1種類の金属元素のみを含む部分を修飾する無機物および/または有機物を含む層の位置は、上記のような表面に限定されない。なお、単一金属体を得ることができる有機金属化合物や無機金属化合物としては、特に制限されず、軟磁性体の単一金属体を得ることができる公知乃至慣用の有機金属化合物や無機金属化合物から適宜選択することができる。
【0108】
合金体は、1種類以上の金属元素(第1金属元素)と、1種類以上の金属元素(第2金属元素)および/または非金属元素(炭素、窒素、ケイ素、リンなど)との共融体であり、軟磁性体の合金体として利用することができるものであれば特に制限されない。
【0109】
第1金属元素は、合金体における必須元素であり、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などが挙げられる。なお、第1金属元素がFeであれば、合金体は、Fe系合金とされ、第1金属元素がCoであれば、合金体は、Co系合金とされ、第1金属元素がNiであれば、合金体は、Ni系合金とされる。
【0110】
第2金属元素は、合金体に副次的に含有される元素(副成分)であり、第1金属元素に相溶(共融)する金属元素であって、例えば、鉄(Fe)(第1金属元素がFe以外である場合)、コバルト(Co)(第1金属元素がCo以外である場合)、ニッケル(Ni)(第1金属元素Ni以外である場合)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ストロンチウム(Sr)、各種希土類元素などが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0111】
非金属元素は、合金体に副次的に含有される元素(副成分)であり、第1金属元素に相溶(共融)する非金属元素であって、例えば、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、ケイ素(Si)、リン(P)、硫黄(S)などが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0112】
合金体の一例であるFe系合金として、例えば、磁性ステンレス(Fe-Cr-Al-Si合金)(電磁ステンレスを含む)、センダスト(Fe-Si-Al合金)(スーパーセンダストを含む)、パーマロイ(Fe-Ni合金)、Fe-Ni-Mo合金、Fe-Ni-Mo-Cu合金、Fe-Ni-Co合金、Fe-Cr合金、Fe-Cr-Al合金、Fe-Ni-Cr合金、Fe-Ni-Cr-Si合金、ケイ素銅(Fe-Cu-Si合金)、Fe-Si合金、Fe-Si―B(-Cu-Nb)合金、Fe-B-Si-Cr合金、Fe-Si-Cr-Ni合金、Fe-Si-Cr合金、Fe-Si-Al-Ni-Cr合金、Fe-Ni-Si-Co合金、Fe-N合金、Fe-C合金、Fe-B合金、Fe-P合金、フェライト(ステンレス系フェライト、さらには、Mn-Mg系フェライト、Mn-Zn系フェライト、Ni-Zn系フェライト、Ni-Zn-Cu系フェライト、Cu-Zn系フェライト、Cu-Mg-Zn系フェライトなどのソフトフェライトを含む)、パーメンジュール(Fe-Co合金)、Fe-Co-V合金、Fe基アモルファス合金などが挙げられる。
【0113】
合金体の一例であるCo系合金としては、例えば、Co-Ta-Zr、コバルト(Co)基アモルファス合金などが挙げられる。
【0114】
合金体の一例であるNi系合金としては、例えば、Ni-Cr合金などが挙げられる。
【0115】
これら軟磁性体の中でも、磁気特性の点から、好ましくは、合金体、より好ましくは、Fe系合金、さらに好ましくは、センダスト(Fe-Si-Al合金)、とりわけ好ましくは、高い透磁率を得る観点から、Si含有割合が9~15質量%であるセンダストが挙げられる。また、軟磁性体として、好ましくは、単一金属体、より好ましくは、鉄元素を純物質の状態で含む単一金属体、さらに好ましくは、鉄単体、あるいは、鉄粉(カルボニル鉄粉)が挙げられる。
【0116】
磁性粒子18の形状としては、例えば、厚みが薄くて面が広い扁平形状(板形状)、例えば、針形状など、異方性を有する形状が挙げられる。また、非異方性の磁性粒子をさらに含有することもできる。非異方性の磁性粒子は、例えば、球状、顆粒状、塊状、ペレット状などの形状を有していてもよい。磁性粒子18の形状として、好ましくは、異方性を有する形状が挙げられる。
【0117】
磁性粒子18が扁平状である場合における磁性粒子のアスペクト比は、2以上、好ましくは、5以上、より好ましくは、10以上、さらに好ましくは、20以上であり、また、100以下である。
【0118】
なお、磁性粒子18が扁平状である場合における扁平率(扁平度)は、例えば、8以上、好ましくは、15以上であり、また、例えば、500以下、好ましくは、450以下である。扁平率は、例えば、磁性粒子18の平均粒子径(平均長さ)を磁性粒子18の平均厚さで除したアスペクト比である。
【0119】
磁性粒子18の磁性層5(磁性組成物)における含有割合は、例えば、50体積%以上、好ましくは、55体積%以上であり、また、例えば、95体積%以下、好ましくは、90体積%以下である。
【0120】
樹脂成分19としては、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤を含有するエポキシ樹脂組成物などの熱硬化性樹脂が挙げられる。なお、このような磁性組成物は、例えば、特開2017-005115号公報、特開2015-092543号公報などに記載されている。
【0121】
磁性配線回路基板1の厚みは、その最大厚み(凸部28に対応する厚み)として、例えば、30μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、800μm以下である。
【0122】
次に、この磁性配線回路基板1の製造方法を、
図2A~
図2Dを参照して説明する。
【0123】
この製造方法は、第1絶縁層2と配線部3とを準備する工程の一例としての第1工程(
図2Aおよび
図2B参照)と、第2絶縁層4を形成する第2工程(
図2C参照)と、磁性層5を形成する工程の一例としての第3工程(
図2D参照)とを備える。
【0124】
図2Aおよび
図2Bに示すように、第1工程では、第1絶縁層2および配線部3を備える配線回路基板準備体6を準備する。この第1工程は、第1絶縁層2を準備する工程(
図2A参照)、配線基部36を形成する第4工程(
図2A参照)、および、めっき層30を形成する第5工程(
図2B参照)を備える。
【0125】
第4工程では、配線基部36を、例えば、サブトラクティブ法、アディティブ法などの導体パターンニング方法により、第1絶縁層2の第1絶縁面7に、形成する。
【0126】
配線基部36をサブトラクティブ法により形成するには、まず、第1絶縁層2および導体層(金属層)からなる積層体(図示せず)を準備し、続いて、導体層の厚み方向一方面に、エッチングレジストを、配線基部36と同一パターンで形成する。次いで、エッチングレジストから露出する導体層を、例えば、ウエットエッチング、ドライエッチングなどのエッチングによりパターンニングして、配線基部36を形成する。好ましくは、ウエットエッチングにより、配線基部36を形成する。その後、エッチングレジストを、例えば、剥離などによって、除去する。
【0127】
配線基部36をアディティブ法により形成するには、まず、第1絶縁層2の第1絶縁面7に導体薄膜(種膜)を形成し、続いて、導体薄膜の厚み方向一方面に、配線基部36と逆パターンのめっきレジストを形成する。次いで、めっきレジストから露出する導体薄膜に、めっきにより配線基部36を形成する。その後、めっきレジストおよびそれに対応する導体薄膜を除去する。
【0128】
導体パターンニング方法として、好ましくは、サブトラクティブ法が挙げられる。サブトラクティブ法であれば、アディティブ法に比べて、厚い厚みを有する配線基部36を迅速に形成することができる。
【0129】
一方、サブトラクティブ法で配線基部36を形成すれば、配線基部36に第1尖り部25が形成されてしまうが、後述するように、第1尖り部25に起因して第2絶縁層4が薄くなることは、後述する第5工程により形成するめっき層30によって解消することできる。
【0130】
なお、この配線基部36は、配線部3を形成するための基部(土台)であって、後述するめっき層30とともに、配線部3を形成する。つまり、
図2Aに示す配線基部36のみで、配線部3を構成しない。
【0131】
配線基部36は、第1角部21に対応する第1尖り部25と、厚み方向中央部50に対応する基部中央側面51と、第2角部22に対応する第2尖り部45とを有する。
【0132】
第1尖り部25は、配線基部36における厚み方向一方面および側面によって形成される稜線部である。第1尖り部25は、第1方向外側斜め第1方向一方側に向かって鋭く尖る。第1尖り部25における角度(第1配線面9および配線側面11の端部によって形成される角度)β1は、例えば、135度以下、好ましくは、120度以下、より好ましくは、90度以下であり、また、例えば、30度以上、好ましくは、45度以上である。
【0133】
第2尖り部45は、配線基部36における厚み方向他方面および側面によって形成される稜線部である。第2尖り部45は、第1方向外側斜め第1方向他方側に向かって鋭く尖る。第2尖り部45における角度(第2配線面10および配線側面11の端部によって形成される角度)β2は、例えば、35度以上、好ましくは、45度以上、より好ましくは、80度超過であり、また、例えば、150度以下、好ましくは、135度以下である。
【0134】
基部中央側面51は、第1尖り部25および第2尖り部45を厚み方向に連結する連結面である。
【0135】
配線基部36の材料は、上記した配線部3の材料と同一である。
【0136】
第5工程では、
図2Bに示すように、その後、めっき層30を配線基部36に形成する。
【0137】
めっき層30の材料としては、配線基部36の材料から適宜選択され、好ましくは、配線基部36の材料と同一である。
【0138】
めっきにより、めっき層30が形成される。
【0139】
めっきとしては、例えば、電解めっき、無電解めっきなどが挙げられる。好ましくは、めっき層30を厚く形成する観点から、電解めっき(より好ましくは、電解銅めっき)が挙げられる。
【0140】
めっきにより、配線基部36における厚み方向一方面および両側面に、めっき層30が、積層される。めっきでは、めっき層30が、配線基部36における厚み方向一方面および両側面において析出状に形成される。
【0141】
このめっきによって、第1尖り部25には、厚み方向一方側および第1方向外側に向かって成長(めっき成長)する被覆部の一例としての第1被覆部31が析出する。この第1被覆部31は、湾曲面23を備える第1角部21を形成する。
【0142】
一方、配線基部36において第1尖り部25以外の部分(第2尖り部45および厚み方向中央部50を含む部分)では、厚み方向一方側または第1方向外側に向かって成長(めっき成長)する第2被覆部32が析出する。この第2被覆部32は、配線基部36の厚み方向一方面および両側面(但し、第1角部21を除く部分であり、厚み方向中央部50および傾斜面24を含む部分。)を形成する。
【0143】
つまり、このめっき層30は、第1被覆部31および第2被覆部32を備える。好ましくは、めっき層30は、第1被覆部31および第2被覆部32のみからなる。
【0144】
第1被覆部31は、第1尖り部25から断面視略放射状(第1尖り部25の内部の方向を除く、扇状)にめっき成分がめっき成長することにより形成される。そのため、第1被覆部31は、湾曲面23を有する。
【0145】
一方、第2被覆部32は、第1尖り部25以外の部分において、各面から直交する方向、具体的には、配線基部36の厚み方向一方面においては、厚み方向上側に向かって面状にめっき成分がめっき成長するとともに、配線基部36の両側面(第2尖り部45における側面を含む)においては、第1方向両外側に向かって面状にめっき成分がめっき成長する。そのため、第2被覆部32は、上記した湾曲面23を有さず、第1配線面9および配線側面11(厚み方向中央部50を含むが、湾曲面23を除く)を有する。
【0146】
この第2被覆部32は、第2角部22を含んでおり、この第2角部22は、上記しためっき成長に基づいて、傾斜面24を含む。
【0147】
めっき層30において、第1被覆部31の厚み(成長厚み、あるいは、めっき厚み)は、好ましくは、第2被覆部32のそれに比べて厚い。めっきが電解めっきであれば、第1尖り部25における電流密度は、配線基部36における第1尖り部25以外の電流密度に比べて、高い。そのため、第1被覆部31のめっき成長が第2被覆部32のめっき成長に比べて速く、そのため、第1被覆部31の厚みが、第2被覆部32の厚みに比べて厚くなる。
【0148】
めっき層30の厚みは、めっきの成長速度およびめっき時間によって適宜設定される。なお、それらは、例えば、めっきで用いられるめっき液における金属(導体)濃度、温度など、例えば、めっきが電解めっきであれば、電流密度、極間距離、浴内撹拌度(速度)、硫酸銅濃度、硫酸濃度、塩化物イオン濃度、添加剤(レベラー、ブライトナー、ポリマー)の種類や量、例えば、めっきが無電解めっきであれば、配線基部36の表面に付着される触媒の種類、量などによって、適宜設定される。
【0149】
なお、
図2Bに示すように、配線基部36と、めっき層30との間に、仮想線で示す境界が示されているが、上記しためっき層30の材料が配線基部36の材料と同一であれば、上記した境界が不明瞭となり、あるいは、存在しない(観察されない)。
【0150】
このめっき層30において、第1被覆部31は、上記しためっきにより形成されるので、上記した湾曲面23を有する。一方、第2被覆部32は、傾斜面24を有する。
【0151】
第2工程では、
図2Cに示すように、続いて、第2絶縁層4を、上記した配線回路基板準備体6に形成する。具体的には、第2絶縁層4により、配線部3の第1配線面9および配線側面11を被覆する。
【0152】
第2絶縁層4を形成する方法としては、例えば、電着(電着塗装)、例えば、印刷などの塗布などが挙げられる。
【0153】
電着では、配線回路基板準備体6(製造途中の磁性配線回路基板1)を、樹脂(好ましくは、電着塗料)を含有する電着液に浸漬し、続いて、配線部3に電流を印加することによって、配線部3の第1配線面9および配線側面11に樹脂の被膜を析出させる。その後、必要により、被膜を乾燥させる。これにより、第2絶縁層4が電着層として形成される。その後、必要により、第2絶縁層4(電着層)を、焼き付けにより、加熱硬化させる。
【0154】
塗布の一例である印刷では、樹脂を含有するワニスを、スクリーンを介して、配線部3の第1配線面9および配線側面11に被膜を塗布する(スクリーン印刷)。その後、被膜を乾燥する。
【0155】
第2絶縁層4を形成する方法として、好ましくは、電着が挙げられる。電着であれば、第2絶縁層4を厚みTを薄く(但し、第2絶縁層4の絶縁性を確保できる程度の厚みに設定)することができる。また、電着であれば、第2絶縁層4が、露出面16を確実に露出することができ、そのため、隣り合う配線部3間において、次の第3工程において、磁性層5を、厚み方向全体にわたって配置することができるので、磁性層5の実効透磁率を向上させて、磁性配線回路基板1のインダクタンスが高くなる。
【0156】
第3工程では、その後、
図2Dに示すように、磁性層5を配線回路基板準備体6に形成する。具体的には、磁性層5により、第2絶縁層4を介して、配線部3の第1配線面9および配線側面11を被覆する。
【0157】
第3工程では、例えば、
図2Cに示すように、まず、粒子含有シートの一例としての磁性シート17を準備する。磁性シート17を準備するには、例えば、上記した磁性粒子および樹脂成分(好ましくは、Bステージの熱硬化性樹脂)を含有する磁性組成物から、シート形状に形成する。磁性シート17において、磁性粒子18は、磁性シート17の面方向(厚み方向に直交する方向)に配向(配列)されている。
【0158】
その後、
図2Cの矢印に示すように、磁性シート17を、配線回路基板準備体6の第2絶縁層4に対して熱プレスする。磁性シート17を、配線回路基板準備体6の厚み方向一方側に配置し、磁性シート17を配線回路基板準備体6の厚み方向一方面に対して熱プレスする。
【0159】
これにより、磁性シート17は、第2絶縁層4を介して配線部3を埋設する。具体的には、磁性シート17は、第2絶縁層4の第1配線面9を、第2絶縁層4を介して被覆するとともに、互いに隣り合う配線部3の間(露出面16に対向する部分)に、進入(沈下)して、かかる間(部分)を充填する。
【0160】
熱プレスの前後における磁性シート17では、配線部3の第1配線面9に対向する磁性粒子18の配向方向(具体的には、面方向)は、変動しない。また、熱プレスの前後における磁性シート17では、露出面16に対向する磁性粒子18の配向方向(具体的には、面方向)は、変動しない。
【0161】
一方、熱プレスの前後における磁性シート17では、第1角部21に対向する磁性粒子18の配向方向(具体的には、面方向)は、湾曲面23に沿う方向(つまり、厚み方向他方側に向かうに従って第1方向外側に傾斜する斜め方向)に変動する。つまり、上記した磁性粒子18は、湾曲面23に沿って配向される。
【0162】
また、熱プレスの前後における磁性シート17では、第2角部22に対向する磁性粒子18の配向方向(具体的には、面方向)は、傾斜面24に沿う方向(つまり、厚み方向他方側に向かうに従って第1方向外側に傾斜する斜め方向)に変動する。つまり、上記した磁性粒子18は、傾斜面24に沿って配向される。
【0163】
他方、熱プレスの前後における磁性シート17では、配線側面11における第1角部21および第2角部22間に対向する磁性粒子18の配向方向(具体的には、面方向)は、厚み方向に沿う方向に変動する。つまり、上記した磁性粒子18は、厚み方向に沿って配向される。
【0164】
これによって、磁性シート17は、第2絶縁層4を介して、配線部3を被覆し、凸部28および凹部29を有する磁性層5として形成(成型)される。
【0165】
磁性層5において上記したように配向される磁性粒子18は、配線部3を囲む円滑な磁路を形成する。
【0166】
これによって、配線回路基板準備体6および磁性層5を備える磁性配線回路基板1が得られる。磁性配線回路基板1は、好ましくは、配線回路基板準備体6および磁性層5のみからなる。
【0167】
その後、磁性層5がBステージの熱硬化性樹脂を含む場合には、必要により、磁性層5を、例えば、加熱により、Cステージ化(完全硬化)させる。
【0168】
この磁性配線回路基板1は、例えば、無線電力伝送(無線給電および/または無線受電)、無線通信、センサ、受動部品などに用いられる。
【0169】
そして、この磁性配線回路基板1では、配線部3の第1角部21(配線部3において略湾曲形状に対応する部分)が、略湾曲形状を有するので、かかる第1角部21を被覆する第2絶縁層4を、過度に薄くなることを抑制しながら、形成することができる。そのため、磁性粒子18が、第2絶縁層4を貫通して配線部3に接触することを抑制することができる。その結果、第2絶縁層4によって、磁性層5の配線部3に対する絶縁性を確保することができる。
【0170】
また、第1角部21を第2絶縁層4を介して被覆する磁性層5においては、磁性粒子18が、第1角部21の湾曲形状に沿って配向することができる。つまり、磁性粒子18は、配線部3の第1配線面9に対向する磁性層5においては、面方向に配向し、配線部3の配線側面11に対向する磁性層5においては、厚み方向に配向し、第1角部21に対向する磁性層5においては、厚み方向および第1方向に対して傾斜する方向に配向する。そのため、磁性層5において配線部3を囲む滑らかな磁路を形成することができる。従って、配線部3の周囲の実効透磁率を向上させることができる。その結果、磁性配線回路基板1は、高いインダクタンスを有する。
【0171】
従って、この磁性配線回路基板1は、高いインダクタンスを有しながら、第2絶縁層4の絶縁性に優れる。
【0172】
また、この磁性配線回路基板1では、第2絶縁層4が、電着層であれば、第2絶縁層4の厚みを薄くすることができる。そのため、かかる第2絶縁層4を介して配線部3を被覆する磁性層5の実効透磁率の低下を抑制することができる。その結果、この磁性配線回路基板1は、高いインダクタンスを有する。
【0173】
一方で、
図9Aに示すように、第2絶縁層4の厚み、具体的には、第1尖り部25に対向する第2絶縁層4の厚みT1が薄い場合には、
図9Bに示すように、磁性粒子18が、薄い第2絶縁層4を貫通して配線部3に接触し易い。しかし、この磁性配線回路基板1では、
図1に示すように、配線部3の第1角部21が、略湾曲形状を有し、かかる第1角部21を被覆する第2絶縁層4を、過度に薄い厚みで形成されることが抑制されているので、磁性粒子18による第2絶縁層4の貫通を抑制して、第2絶縁層4の絶縁性を確保できる。
【0174】
また、この磁性配線回路基板1では、第1角部21の曲率半径Rが、9μm以上と大きければ、湾曲面23が緩やかであるため、第1角部21に対応する第2絶縁層4を十分な厚みT1で形成することができる。また、第1角部21に対向する第2絶縁層4において、磁性粒子18が、湾曲面23に沿って確実に配向することができる。
【0175】
また、第2絶縁層4の平均厚みTが、10μm以下と薄ければ、磁性層4の実効透磁率の低下を抑制することができる。その結果、この磁性配線回路基板1は、高いインダクタンスを有する。
【0176】
また、この磁性配線回路基板1では、磁性層5が、露出面16を被覆しているので、かかる磁性層5における磁性粒子18は、面方向に沿って配向することができる。
【0177】
また、配線部3の第2配線面10および配線側面11によって形成される第2角部22が、互いに向かい合う2つの配線側面11間の長さが第2配線面10に近づくに従って長くなるテーパ面27を有するので、第2絶縁層4を介して被覆する磁性層5においては、テーパ面27に対応して、磁性粒子18が、第1方向方向に対して傾斜する方向に配向することができる。
【0178】
従って、第2角部22の周囲において、滑らかな磁路を形成することができる。そのため、磁性配線回路基板1は、より一層高いインダクタンスを有する。
【0179】
しかるに、
図9Aおよび
図9Bに示すように、第2工程において、磁性シート17を、第2絶縁層4に対して熱プレスするときに、磁性シート17に含有される磁性粒子18が、第2絶縁層4を貫通して配線部3に接触し易い。
【0180】
しかしながら、
図2Bに示すように、この磁性配線回路基板1の製造方法では、第1工程において、配線部3に、略湾曲形状の第1角部21を形成するので、
図2Cに示すように、かかる第1角部21を被覆する第2絶縁層4を厚く形成することができる。
【0181】
そのため、磁性粒子18の第2絶縁層4への貫通、および、磁性粒子18の配線への接触を抑制することができる。
【0182】
従って、この製造方法は、第2絶縁層4の絶縁性に優れる磁性配線回路基板1を得ることができる。
【0183】
また、第2工程では、面方向に配向される磁性粒子18を含有する磁性シート17を、第2絶縁層4に対して熱プレスするので、第2絶縁層4を介して第1角部21を被覆する磁性層5において、磁性粒子18が、第1角部21の湾曲形状に沿って配向することができる。つまり、磁性粒子18を、配線部3の第1配線面9に対向する磁性層5においては、面方向に配向させ、配線部3の配線側面11に対向する磁性層5においては、厚み方向に配向させ、第1角部21に対向する磁性層5においては、厚み方向および第1方向に対して傾斜する方向に配向させることができる。そのため、磁性層5において配線部3を囲む滑らかな磁路を形成することができる。従って、配線部3の周囲の実効透磁率を向上させることができる。その結果、高いインダクタンスを有する磁性配線回路基板1を製造することができる。
【0184】
従って、この製造方法は、高いインダクタンスを有しながら、第2絶縁層4の絶縁性に優れる磁性配線回路基板1を得ることができる。
【0185】
しかるに、
図2Aに示すように、第1工程において、尖り部を有する配線部3を形成すると、
図9Aに示すように、第2工程において、第1尖り部25に対向する第2絶縁層4の厚みT1が過度に薄くなり易い。その後、
図9Bに示すように、第3工程において、磁性層5を形成すれば、磁性粒子18が配線部3に接触するので、磁性層5と配線部3との絶縁性を確保できない。
【0186】
しかし、
図2Aに示すように、この第4工程において、第1尖り部25を有する配線基部36を形成しても、
図2Bに示すように、第5工程において、第1尖り部25を被覆する第1被覆部31を有するめっき層30を形成して、第1角部21を、第1被覆部31から、略湾曲形状に形成する。そのため、
図2Cに示すように、第2工程において、かかる第1角部21を被覆する第2絶縁層4を、過度に薄くなることを抑制しながら、つまり、厚みT1(
図1の拡大図参照)で形成することができる。
【0187】
図2Dに示すように、第3工程において、磁性層5を形成することにより、磁性層5における磁性粒子18が、第2絶縁層4を貫通して配線部3に接触することを抑制することができる。
【0188】
<変形例>
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0189】
一実施形態では、本発明の配線回路基板の一例として、磁性層5を備える磁性配線回路基板1を挙げて説明している。しかし、図示しないが、これに限定されず、磁性層5以外の粒子含有層を備える配線回路基板を挙げることもできる。
【0190】
粒子含有層は、上記した磁性粒子以外の導電性粒子を適宜の割合で含有する。導電性粒子としては、特に限定されず、銅粒子、銀粒子、金粒子、鉄粒子、半田粒子などの金属粒子などが挙げられる。
【0191】
粒子含有層を備える配線回路基板を得るには、
図2Cが参照されるように、磁性シート17に代えて、上記した粒子含有シートを準備し、粒子含有シートを配線回路基板準備体6に熱プレスする。
【0192】
そして、この配線回路基板では、配線部3の第1角部21が、略湾曲形状を有するので、かかる第1角部21を被覆する第2絶縁層4を、過度に薄くなることを抑制しながら、形成することができる。そのため、導電性粒子が、第2絶縁層4を貫通して配線部3に接触することを抑制することができる。その結果、第2絶縁層4によって、粒子含有層の配線部3に対する絶縁性を確保することができる。
【0193】
しかるに、第2工程において、粒子含有シートを、第2絶縁層4に対して熱プレスするときに、粒子含有シートに含有される導電性粒子が、第2絶縁層4を貫通して配線に接触し易い。
【0194】
しかしながら、この配線回路基板の製造方法では、第1工程において、配線部3に、略湾曲形状の第1角部21を形成するので、かかる第1角部21を被覆する第2絶縁層4を厚く形成することができる。
【0195】
そのため、導電性粒子の第2絶縁層4への貫通、および、導電性粒子の配線部3への接触を抑制することができる。
【0196】
従って、この製造方法は、第2絶縁層4の絶縁性を確保した配線回路基板を得ることができる。
【0197】
従って、この配線回路基板は、第2絶縁層4の絶縁性を確保できる。
【0198】
図1に示すように、一実施形態では、1つの配線部3において、2つの配線側面11間における長さが、第1方向中央部において最短となるくびれ部を有する。しかし、
図4に示すように、配線部3は、くびれ部を有さない配線側面11を有することもできる。
【0199】
また、一実施形態における
図1は、めっき層30の厚みが比較的厚い一例を示す。
図4に示すように、この変形例は、めっき層30の厚みが一実施形態のそれに比べて薄い例である。
【0200】
この変形例では、湾曲面23をなす円Cの曲率半径Rが比較的小さく、また、中心角αも小さい。曲率半径Rが、例えば、9μm未満、さらには、5μm以下、さらには、2μm以下であり、中心角αが110度未満である。
【0201】
この変形例における曲率半径Rは、一実施形態の曲率半径Rに比べて小さいが、一実施形態と同様に、湾曲面23に対応する第2絶縁層4を十分な厚みで形成することができる。
【0202】
また、
図1に示すように、一実施形態では、第2角部22は、テーパ面27を有する傾斜面24を有する。しかし、
図5に示すように、第2角部22は、傾斜面24に代えて、平坦面26に対して垂直に形成される垂直面33を有してもよい。
【0203】
互いに向かい合う2つの垂直面33は、その間の長さが、厚み方向他方側に向かうに従って同一である。
【0204】
また、
図6に示すように、傾斜面24は、第2配線面10に向かうに従って、第1方向外側に向かって末広状に広がるテーパ面27に代えて、第1絶縁面7に向かうに従って、第1方向内側に向かって窄む(すぼむ)第2テーパ面(第1窄み面)34を有することもできる。
【0205】
このような第2テーパ面(第1窄み面)34は、例えば、アディティブ法によって形成される。
【0206】
図1に示すように、一実施形態では、傾斜面24は、テーパ面27のみからなる。しかし、
図7に示すように、例えば、傾斜面24の厚み方向他端縁は、第2湾曲面35であってもよい。互いに隣り合う第2湾曲面35は、第1絶縁面7に向かうに従って、その間の長さが短くなる第2窄み面37である。この場合には、配線側面11は、第1角部21の湾曲面23のうち第1方向外側に面する部分と、厚み方向中央部50と、傾斜面24におけるテーパ面27および第2窄み面37とを連続して備える。
【0207】
一実施形態では、
図1A~
図1Bに示すように、配線部3は、平坦面(例えば、第1配線面9および第2配線面10)を含むが、この変形例では、
図8Cに示すように、平坦面を含まない、断面略円形状を有する。
【0208】
詳しくは、配線部3は、電流を伝送する方向(伝送方向)(紙面奥行き方向)に直交する断面で切断したときに、略円形状を有する。配線部3は、外周面である配線周面46を有する。
【0209】
配線部3の半径は、例えば、25μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0210】
第2絶縁層4は、配線部3の配線周面37を被覆している。第2絶縁層4は、第1周面37に沿う均一な厚みで形成されており、具体的には、断面略円環形状を有する。第2絶縁層4は、配線部3の配線周面46に接触する内周面と、外周面である絶縁周面47とを有する。絶縁周面47の厚み方向他端縁は、第1絶縁層2の第1絶縁面7に接触している。
【0211】
第2絶縁層4の厚みTは、内周面および絶縁周面47の距離であって、一実施形態で開示した通りである。
【0212】
磁性層5は、配線部3の配線周面46を、第2絶縁層4を介して被覆している。
【0213】
磁性層5において、磁性粒子18は、第2絶縁層4の近傍においては、配線部3の配線周面46、具体的には、第2絶縁層4の絶縁周面47に沿って配向している。なお、第2絶縁層4の近傍領域は、例えば、配線部3の半径の1.5倍以内の領域と定義される。
【0214】
図8Aに示すように、この磁性配線回路基板1を製造するには、まず、第1絶縁層2を準備する。別途、配線部3および第2絶縁層4を準備する。配線部3および第2絶縁層4は、市販のエナメル線として準備することができる。
【0215】
次いで、
図8Bに示すように、第2絶縁層4の厚み方向他端縁を、第1絶縁層2の第1絶縁面7に配置する。これにより、第1工程および第2工程が同時に実施される。
【0216】
その後、磁性シート17を、第1絶縁層2、配線部3および第2絶縁層4に対して熱プレスする(第3工程の実施)。
【0217】
これにより、第2絶縁層4において、第2絶縁層4の近傍領域において、磁性粒子18が、配線部3の配線周面46、具体的には、第2絶縁層4の絶縁周面47に沿って配向する。
【0218】
これにより、第1絶縁層2、配線部3、第2絶縁層4および磁性層5を備える磁性配線回路基板1を得る。
【0219】
そして、この磁性配線回路基板1では、配線部3(第2絶縁層4)の周囲(近傍領域)における磁性層5において、磁性粒子18は、配線周面46、具体的には、絶縁周面47に沿う滑らかな磁路を形成することができる。従って、配線部3の周囲の実効透磁率を向上させることができる。その結果、この磁性配線回路基板1は、高いインダクタンスを有する。
【0220】
また、磁性配線回路基板1の製造方法では、第3工程では、配線部3(第2絶縁層4)の周囲(近傍領域)における磁性層5において、磁性粒子18は、配線部3の略湾曲形状に沿う滑らかな磁路を形成することができる。従って、配線部3の周囲の実効透磁率を向上させることができる。その結果、高いインダクタンスを有する磁性配線回路基板1を製造することができる。
【0221】
なお、磁性層5における磁性粒子18の割合は、磁性層5において一様でもよく、また、各配線部3から離れるに従って、高くなってもよく、あるいは、低くなってもよい。
【0222】
なお、
図8A~
図8Cに示す変形例では、配線部3は、断面略円形状を有するが、断面視において、略湾曲形状を有すれば、特に限定されず、例えば、図示しないが、略湾曲形状の角部を少なくとも1つ有する略矩形状、略台形状であってもよい。この変形例において、絶縁層4は、図示しないが、配線部3の配線周面46全面を被覆する。
【符号の説明】
【0223】
1 磁性配線回路基板(配線回路基板の一例)
2 第1絶縁層
3 配線部(配線の一例)
4 第2絶縁層
5 磁性層(粒子含有層の一例)
7 第1絶縁面
9 第1配線面
10 第2配線面
11 配線側面
16 露出面
17 磁性シート(粒子含有シートの一例)
18 磁性粒子
21 第1角部
22 第2角部
24 傾斜面
25 尖り部
27 テーパ面
30 めっき層
31 第1被覆部
36 配線基部
46 配線周面
47 絶縁周面
T 第2絶縁層の厚み(平均厚み)