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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】バックアップ材及び壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/682 20060101AFI20231025BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20231025BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
E04B1/682 A
E04B1/70 D
E04F13/08 Y
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019064731
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020165128
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 沙瑶
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-155456(JP,A)
【文献】実開昭61-036035(JP,U)
【文献】特開2009-030255(JP,A)
【文献】特開昭61-294047(JP,A)
【文献】特開平10-037321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04F 13/08
E04F 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に隣接する壁材の間に形成される目地に配置されたシーリング材を支持するバックアップ材であって、
前記バックアップ材は、上下方向に延びて長尺に形成され、受け部と2つの脚部から断面コ字状に形成される支持部と、前記脚部の端部から外側に向かって突出する固定部とを有し、
前記受け部の表面は、前記シーリング材を接触させる受け面として形成され、
前記受け面の一部が後方に向かって凹んで、前面と両方の側面とに開口する凹部が上下方向に並んで複数形成され、
前記凹部の底面は、下端部よりも上端部のほうが後方に位置するように形成される傾斜面として形成され、
前記受け部を貫通して前記凹部に開口する通気孔が、前記凹部の上方に形成され、
前記凹部は、前記バックアップ材が前記目地に配置された状態で、前記壁材を横方向で貫通する中空部の開口と対応するように配置され、前記凹部の箇所で前記シーリング材が膨張可能な空間が形成されるとともに、前記中空部の前記開口と前記通気孔とが、前記空間を介して連通するように構成される、
バックアップ材。
【請求項2】
横方向に隣接する壁材の間に形成される目地に配置されたシーリング材を支持するバックアップ材であって、
前記バックアップ材は、上下方向に延びて長尺に形成され、受け部と2つの脚部から断面コ字状に形成される支持部と、前記脚部の端部から外側に向かって突出する固定部とを有し、
前記受け部の表面は、前記シーリング材を接触させる受け面として形成され、
平坦な前記受け面の一部が後方に向かって凹んで、前面と両方の側面とに開口する凹部が上下方向に並んで複数形成され、
前記凹部の底面は、平坦面に形成され、
前記受け部を貫通して前記凹部に開口する通気孔が、前記凹部の上方に形成され、
前記凹部は、前記バックアップ材が前記目地に配置された状態で、前記壁材を横方向で貫通する中空部の開口と対応するように配置され、前記凹部の箇所で前記シーリング材が膨張可能な空間が形成されるとともに、前記中空部の前記開口と前記通気孔とが、前記空間を介して連通するように構成される、
バックアップ材。
【請求項3】
横方向に隣接する壁材の間に形成される目地に配置されたシーリング材を支持するバックアップ材であって、
前記バックアップ材は、上下方向に延びて長尺に形成され、受け部と2つの脚部から断面コ字状に形成される支持部と、前記脚部の端部から外側に向かって突出する固定部とを有し、
前記受け部の表面は、前記シーリング材を接触させる受け面として形成され、
前記受け面に、表側に向かって凸曲する上向きの砲弾の外面のような形状の曲面と前記曲面の上方に位置する平面とで構成される底面を有する凹部が形成され、前記凹部は、前面と両方の側面とに開口し、上下方向に並んで複数形成され、
前記受け部を貫通して前記凹部に開口する通気孔が、前記凹部の上方に形成され、
前記凹部は、前記バックアップ材が前記目地に配置された状態で、前記壁材を横方向で貫通する中空部の開口と対応するように配置され、前記凹部の箇所で前記シーリング材が膨張可能な空間が形成されるとともに、前記中空部の前記開口と前記通気孔とが、前記空間を介して連通するように構成される、
バックアップ材。
【請求項4】
横方向に隣接する壁材の間に形成される目地に配置されたシーリング材を支持するバックアップ材であって、
前記バックアップ材は、上下方向に延びて長尺に形成され、受け部と2つの脚部から断面コ字状に形成される支持部と、前記脚部の端部から外側に向かって突出する固定部とを有し、
前記受け部の表面は、前記シーリング材を接触させる受け面として形成され、
平坦な前記受け面の一部が後方に向かって凹んで、前面と両方の側面とに開口する凹部が上下方向に並んで複数形成され、
前記凹部の底面は、表側に向かって凹曲する曲面で構成され、
前記受け部を貫通して前記凹部に開口する通気孔が、前記凹部の上方に形成され、
前記凹部は、前記バックアップ材が前記目地に配置された状態で、前記壁材を横方向で貫通する中空部の開口と対応するように配置され、前記凹部の箇所で前記シーリング材が膨張可能な空間が形成されるとともに、前記中空部の前記開口と前記通気孔とが、前記空間を介して連通するように構成される、
バックアップ材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のバックアップ材を使用した壁構造であって、
横方向に貫通する中空部を有する複数の壁材が、横方向に隣接して配置されて前記目地が形成され、
前記中空部の位置と前記凹部の位置とが対応するように、前記バックアップ材の前記凹部が前記目地に配置され、
前記凹部の箇所で前記シーリング材が膨張可能な空間が形成されているとともに、前記壁材における前記中空部の開口と前記通気孔とが、前記空間を介して連通している、
壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックアップ材及び壁構造に関する。より詳細には、隣接する壁材の間に形成される目地に配置されたシーリング材を支持するバックアップ材及びこれを使用した壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建築物の外壁目地構造が記載されている。この外壁目地構造は、一方の側端から他方の側端へと貫通する中空部を有する外装板材を使用した場合の目地構造に関する。
【0003】
図6は、特許文献1と同様に、中空部を有する外壁材を使用した場合の壁構造を示している。この壁構造は、複数の壁材40が下地50の屋外側に設けられている。壁材40は窯業系の外壁材であって、図7に示すように、厚み方向に並ぶ2面を有する板状に形成されている。壁材40には横方向に貫通する中空部41が設けられている。中空部41の端部は壁材40の側端面44に開口している。壁材40には、複数の中空部41が形成されており、複数の中空部41は上下方向に並んでいる。壁材40の上端には凸実部42が設けられ、壁材40の下端には凹実部43が設けられている。
【0004】
図6に示すように、複数の壁材40は、留め具51により下地50に取り付けられる。上下方向で隣接する壁材40は凸実部42と凹実部43とを嵌合して接続されている。横方向で隣接する壁材40は、側端面44同士を対向させて配置されている。対向する側端面44の間の空間は目地20として形成される。目地20には防水性の向上のために、シーリング材30が充填される。この場合、シーリング材30を支持する(バックアップする)ためのバックアップ材(ハット型ジョイナー)10が使用される。
【0005】
図8Aに示すように、バックアップ材10は、上下方向に延び、断面ハット状に形成されている。バックアップ材10は、受け部103と2つの脚部104から断面コ字状に形成される支持部102と、各脚部104の端部から外側に向かって突出する固定部101とを有している。受け部103の表面はシーリング材30が接触する受け面11として形成されている。
【0006】
そして、下地50に固定部101を固定してバックアップ材10を取り付けた後、支持部102を挟むようにして横方向に壁材40を取り付けて目地20を形成し、この後、屋外側から目地20にシーリング材30を充填していく。これにより、図8B及び図8Cに示すように、目地20内に配置されたバックアップ材10の受け面11にシーリング材30を接触させ、シーリング材30を支持部102で支持している。そして、バックアップ材10により、シーリング材30の幅や深さがを適正に保たれ、壁の外観が損なわれないようにしている。
【0007】
ところで、壁材40が中空部41を有する場合、気温の上昇などにより、中空部41内の空気が膨張することがある。そこで、中空部41内の空気は、中空部41の端部の開口から隙間53を通じて壁材40の裏面と下地50の表面との間に形成される通気層52に排出される。ここで、隙間53は壁材40の側端面44とバックアップ材10の脚部104との間に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-54243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来例では、隙間53が僅かな大きさであるため、壁材40とバックアップ材10との相対位置、バックアップ材10の粘度、充填量、形成位置、充填の仕方及び経時変化などによって、隙間53が形成されない(塞がれてしまう)場合があった。そして、隙間53が形成されていないと、中空部41内で膨張した空気の圧力でシーリング材30が押され、シーリング材30が表側に膨れるように変形したり、目地20から部分的に表側に飛び出したりして、壁の外観が損なわれる場合があった。
【0010】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、壁の外観が損なわれにくいバックアップ材及び壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係るバックアップ材は、横方向に隣接する壁材の間に形成される目地に配置されたシーリング材を支持するバックアップ材であって、前記バックアップ材は、上下方向に延びて長尺に形成され、受け部と2つの脚部から断面コ字状に形成される支持部と、前記脚部の端部から外側に向かって突出する固定部とを有し、前記受け部の表面は、前記シーリング材を接触させる受け面として形成され、前記受け面の一部が後方に向かって凹んで、前面と両方の側面とに開口する凹部が上下方向に並んで複数形成され、前記凹部の底面は、下端部よりも上端部のほうが後方に位置するように形成される傾斜面として形成され、前記受け部を貫通して前記凹部に開口する通気孔が、前記凹部の上方に形成され、前記凹部は、前記バックアップ材が前記目地に配置された状態で、前記壁材を横方向で貫通する中空部の開口と対応するように配置され、前記凹部の箇所で前記シーリング材が膨張可能な空間が形成されるとともに、前記中空部の前記開口と前記通気孔とが、前記空間を介して連通するように構成される。
本発明の他の一態様に係るバックアップ材は、横方向に隣接する壁材の間に形成される目地に配置されたシーリング材を支持するバックアップ材であって、前記バックアップ材は、上下方向に延びて長尺に形成され、受け部と2つの脚部から断面コ字状に形成される支持部と、前記脚部の端部から外側に向かって突出する固定部とを有し、前記受け部の表面は、前記シーリング材を接触させる受け面として形成され、平坦な前記受け面の一部が後方に向かって凹んで、前面と両方の側面とに開口する凹部が上下方向に並んで複数形成され、前記凹部の底面は、平坦面に形成され、前記受け部を貫通して前記凹部に開口する通気孔が、前記凹部の上方に形成され、前記凹部は、前記バックアップ材が前記目地に配置された状態で、前記壁材を横方向で貫通する中空部の開口と対応するように配置され、前記凹部の箇所で前記シーリング材が膨張可能な空間が形成されるとともに、前記中空部の前記開口と前記通気孔とが、前記空間を介して連通するように構成される。
本発明の他の一態様に係るバックアップ材は、横方向に隣接する壁材の間に形成される目地に配置されたシーリング材を支持するバックアップ材であって、前記バックアップ材は、上下方向に延びて長尺に形成され、受け部と2つの脚部から断面コ字状に形成される支持部と、前記脚部の端部から外側に向かって突出する固定部とを有し、前記受け部の表面は、前記シーリング材を接触させる受け面として形成され、前記受け面に、表側に向かって凸曲する上向きの砲弾の外面のような形状の曲面と前記曲面の上方に位置する平面とで構成される底面を有する凹部が形成され、前記凹部は、前面と両方の側面とに開口し、上下方向に並んで複数形成され、前記受け部を貫通して前記凹部に開口する通気孔が、前記凹部の上方に形成され、前記凹部は、前記バックアップ材が前記目地に配置された状態で、前記壁材を横方向で貫通する中空部の開口と対応するように配置され、前記凹部の箇所で前記シーリング材が膨張可能な空間が形成されるとともに、前記中空部の前記開口と前記通気孔とが、前記空間を介して連通するように構成される。
本発明の他の一態様に係るバックアップ材は、横方向に隣接する壁材の間に形成される目地に配置されたシーリング材を支持するバックアップ材であって、前記バックアップ材は、上下方向に延びて長尺に形成され、受け部と2つの脚部から断面コ字状に形成される支持部と、前記脚部の端部から外側に向かって突出する固定部とを有し、前記受け部の表面は、前記シーリング材を接触させる受け面として形成され、平坦な前記受け面の一部が後方に向かって凹んで、前面と両方の側面とに開口する凹部が上下方向に並んで複数形成され、前記凹部の底面は、表側に向かって凹曲する曲面で構成され、前記受け部を貫通して前記凹部に開口する通気孔が、前記凹部の上方に形成され、前記凹部は、前記バックアップ材が前記目地に配置された状態で、前記壁材を横方向で貫通する中空部の開口と対応するように配置され、前記凹部の箇所で前記シーリング材が膨張可能な空間が形成されるとともに、前記中空部の前記開口と前記通気孔とが、前記空間を介して連通するように構成される。
【0012】
本発明の一態様に係る壁構造は、上記バックアップ材を使用した壁構造であって、横方向に貫通する中空部を有する複数の壁材が、横方向に隣接して配置されて前記目地が形成され、前記中空部の位置と前記凹部の位置とが対応するように、前記バックアップ材の前記凹部が前記目地に配置され、前記凹部の箇所で前記シーリング材が膨張可能な空間が形成されているとともに、前記壁材における前記中空部の開口と前記通気孔とが、前記空間を介して連通している。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シーリング材が膨張空気から圧力を受けても裏側に凹部があることによって裏側に膨張可能となり、表側に変形しにくくなり、壁の外観が損なわれにくい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1Aは、本発明に係るバックアップ材の一実施形態を示す一部を省略した斜視図である。図1Bは、本発明に係る壁構造の一実施形態を示す横断面図である。図1Cは、本発明に係る壁構造の一実施形態を示す縦断面図である。
図2図2Aは、本発明に係るバックアップ材の他の一実施形態を示す一部を省略した斜視図である。図2Bは、本発明に係るバックアップ材の他の一実施形態を示す縦断面図である。
図3図3Aは、本発明に係るバックアップ材の他の一実施形態を示す一部を省略した斜視図である。図3Bは、本発明に係るバックアップ材の他の一実施形態を示す縦断面図である。
図4図4Aは、本発明に係るバックアップ材の他の一実施形態を示す一部を省略した斜視図である。図4Bは、本発明に係るバックアップ材の他の一実施形態を示す縦断面図である。
図5図5Aは、本発明に係るバックアップ材の他の一実施形態を示す一部を省略した斜視図である。図5Bは、本発明に係るバックアップ材の他の一実施形態を示す縦断面図である。図5Cは、本発明に係るバックアップ材のさらに他の一実施形態を示す一部の縦断面図である。
図6図6は、壁構造の一例を示す斜視図である。
図7図7は、壁材の一例を示す斜視図である。
図8図8Aは、従来のバックアップ材を示す一部を省略した斜視図である。図8Bは、従来の壁構造を示す横断面図である。図8Cは、従来の壁構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態)
図1Aは、本実施形態に係るバックアップ材10を示している。バックアップ材10の材質は、樹脂、アルミニウム又は鋼板などの金属などである。
【0016】
バックアップ材10は、上下方向に延びて長尺に形成されている。バックアップ材10は、受け部103と2つの脚部104から断面コ字状に形成される支持部102と、各脚部104の端部から外側に向かって突出する固定部101とを有している。受け部103の表面はシーリング材30が接触する受け面11として形成されている。
【0017】
バックアップ材10は凹部12を有している。バックアップ材10は、複数の凹部12を有している。複数の凹部12は上下方向に並んで形成されている。凹部12は、前面と両方の側面とが開口している。凹部12の底面121は下端部よりも上端部のほうが後方に位置するように形成されている。すなわち、凹部12の底面121は上方に向かうほど、後方に位置する傾斜面として形成されている。したがって、底面121の下端部は上端部よりも前方に位置している。なお、前方とは、バックアップ材10を壁の下地50に取り付けた際に、下地50と反対側に向く方向であり、通常、下地50から屋外に向く方向である。後方とは、バックアップ材10を壁の下地50に取り付けた際に、下地50に向く方向であり、通常、屋内に向く方向である。
【0018】
バックアップ材10は、凹部12の上方に通気孔13を有している。通気孔13は、各凹部12の各々に対応させて形成されている。すなわち、バックアップ材10は、複数の通気孔13を有している。通気孔13は受け部103を貫通するように形成されている。したがって、凹部12は通気孔13を介して受け部103の後方の空間(対向する脚部104の間の空間)とを連通している。通気孔13はバックアップ材10の長手方向と直交する仮想面と平行な開口面を有している。
【0019】
本実施形態に係るバックアップ材10は、従来のバックアップ材と同様に施工される。すなわち、本実施形態に係るバックアップ材10は、図6に示すように、中空部41を有する壁材40を使用した場合の壁構造に適用される。
【0020】
この壁構造は外壁構造であって、複数の壁材40が下地50の屋外側に設けられている。壁材40は窯業系の外壁材であって、図7に示すように、厚み方向に並ぶ2面を有する板状に形成されている。壁材40には横方向に貫通する中空部41が設けられている。中空部41の端部は壁材40の両方の側端面44に開口している。壁材40には、複数の中空部41が形成されており、複数の中空部41は上下方向に並んでいる。壁材40の上端には凸実部42が設けられ、壁材40の下端には凹実部43が設けられている。
【0021】
複数の壁材40は、留め具51により下地50に取り付けられる。上下方向で隣接する壁材40は凸実部42と凹実部43とを嵌合して接続されている。横方向で隣接する壁材40は、側端面44同士を対向させて配置されている。対向する側端面44の間の空間は目地20として形成される。目地20には防水性の向上のために、シーリング材30が充填される。
【0022】
そして、下地50に固定部101を固定してバックアップ材10を取り付けた後、支持部102を挟むようにして横方向に複数の壁材40を取り付けて目地20を形成し、この後、屋外側から目地20にシーリング材30を充填していく。これにより、図1B及び図1Cに示すように、目地20内に配置されたバックアップ材10の受け面11にシーリング材30を接触させ、シーリング材30を支持部102で支持している。
【0023】
ここで、壁材40は複数の中空部41を有しているが、各中空部41に少なくとも1つの凹部12が対応するように、壁材40とバックアップ材10とが配置される。また、側面視において、凹部12の底面121の下端部が、中空部41の開口と前後方向の位置で重なる。したがって、各中空部41は少なくとも1つの凹部12と隙間53を介して連通する状態となっている。また受け面11には凹部12が形成されているため、シーリング材30が凹部12が塞がれるまで充填されない。すなわち、図1Cのように、シーリング材30は凹部12の底面121の下端に引っ掛かって凹部12の奥(屋外方向から見て後方側)にまでは侵入しにくい。しかも、本実施形態に係るバックアップ材10は、底面121が上方に向かうほど後方側に傾く傾斜面であるため、さらにシーリング材30が凹部12の上部の奥にまで侵入しにくい。
【0024】
本実施形態に係るバックアップ材10では、シーリング材30を接触させる受け面11の一部が凹んで形成される凹部12を有する。したがって、シーリング材30が、気温の上昇などにより中空部41内で膨張した空気から圧力を受けても、シーリング材30の裏側(屋内側)に凹部12があることによって、シーリング材30が凹部12に進入しつつ裏側に膨張可能となる。よって、シーリング材30が表側(屋外側に向かって)に変形しにくくなり、壁の外観が損なわれにくい。
【0025】
すなわち、図8B及び図8Cに示す従来例では、シーリング材30の裏面が受け面11に対して全面にわたって接触しているため、シーリング30が側方から圧力(中空部41内で膨張した空気の圧力)を受けた場合に、表側にしか膨張するスペースがなく、よって、シーリング材30が表側(屋外側に向かって)に変形しやすかった。一方、本実施形態に係るバックアップ材10では、受け面11に凹部12が形成されているため、シーリング材30の裏面が受け面11に対して全面にわたって接触しにくく、凹部12の箇所でシーリング材30の膨張可能な空間が形成されている。したがって、シーリング30が側方から圧力を受けた場合に、シーリング材30が外部から見えにくい裏側にも膨張することが可能となり、よって、シーリング材30が表側に向かって変形しにくくなる。
【0026】
また、本実施形態に係るバックアップ材10では、凹部12の上方に形成されている通気孔13がシーリング材30で塞がれにくくなり、中空部41から通気孔13までの通気経路が確保されやすい。よって、中空部41内の空気が膨張しても、中空部41の端部の開口から隙間53を通じて壁材40の裏面と下地50の表面との間に形成される通気層52に排出される。したがって、本実施形態に係る壁構造は、中空部41内の空気が凹部12を通じて通気孔13へと排出されやすくなり、シーリング材30が膨れにくくなって、壁の外観が損なわれにくい。
【0027】
また、目地20に屋外側からシーリング材30を充填するにあたっては、目地20の上端から下方に向かって、シーリングガンを移動させていく。したがって、シーリング材30は下方に向かって応力を受けながら目地20に充填されていくが、本実施形態に係るバックアップ材10では、通気孔13は凹部12の上方(上方寄り、すなわち凹部12の上方に偏った位置)にあるため、上記のようなシーリング材30の充填方法でも、通気孔13にシーリング材30が到達しにくく、通気孔13がシーリング材30で塞がれにくい。
【0028】
(変形例)
実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0029】
(変形例1)
変形例1に係るバックアップ材10は、上記実施形態のバックアップ材10に比べて、通気孔13の形状及び大きさが相違する。以下、実施形態と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0030】
図2A及び図2Bに示すように、変形例1に係るバックアップ材10は、通気孔13が凹部12の上方と、傾斜面である底面121の上部とにわたるように形成されている。したがって、上記実施形態に比べて、通気孔13の開口面積が大きくなり、よりスムーズに排気を行うことができる。
【0031】
(変形例2)
変形例2に係るバックアップ材10は、上記実施形態のバックアップ材10に比べて、通気孔13の形状及び大きさが相違する。以下、実施形態と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0032】
図3A及び図3Bに示すように、変形例2に係るバックアップ材10は、凹部12の底面121が平面に形成されている。通気孔13は凹部12の上方に形成されている。この場合、上記実施形態よりも、シーリング材30が接触する平面が多くなり、シーリング材30のバックアップを充分に行うことができる。
【0033】
(変形例3)
変形例3に係るバックアップ材10は、上記変形例2のバックアップ材10に比べて、通気孔13の形状及び大きさが相違する。以下、実施形態と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0034】
図4A及び図4Bに示すように、変形例3に係るバックアップ材10は、通気孔13が凹部12の上方と、底面121の上部とにわたるように形成されている。したがって、上記変形例2に比べて、通気孔13の開口面積が大きくなり、よりスムーズに排気を行うことができる。
【0035】
(変形例4)
変形例4に係るバックアップ材10は、上記実施形態のバックアップ材10に比べて、底面121の形状が相違する。以下、実施形態と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0036】
図5A及び図5Bに示すように、変形例4に係るバックアップ材10は、凹部12の底面121が表側に向かって凸曲する曲面と平面とで構成されている。曲面は砲弾の外面のような形状を有している。したがって、上記実施形態に比べて、通気孔13からの排気とシーリング材30の支持の両方が十分に行える。
【0037】
また図5Cに示すように、凹部12の底面121が表側に向かって凹曲するように形成してもよい。この場合、受け部103の裏側に凹部12に対応する部分が突出して形成される。また、この変形例の場合も、底面121の上方に通気孔13が形成されている。
【0038】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係るバックアップ材10は、隣接する壁材40の間に形成される目地20に配置されたシーリング材30を支持する。シーリング材30を接触させる受け面11の一部が凹んで形成される凹部12を有する。凹部12に開口する通気孔13を備える。
【0039】
この態様によれば、受け面11に接触させてシーリング材30が、壁材40に設けた中空部41内で膨張した空気から圧力を受けても、シーリング材30の裏側に凹部12があることによって、裏側に膨張可能となる。よって、シーリング材30が表側に変形しにくくなり、壁の外観が損なわれにくい。また、目地20に配置されたシーリング材30が凹部12に充填されにくく、シーリング材30で通気孔13が塞がれにくくなる。したがって、壁材40が中空部41を有する場合に、中空部41内の空気が凹部12を通じて通気孔13へと排出されやすくなり、シーリング材30が膨れにくくなって、壁の外観が損なわれにくい、という利点がある。
【0040】
第2の態様に係るバックアップ材10は、第1の態様において、凹部12の底面121は、平面、傾斜面及び曲面の少なくとも1つを有する。
【0041】
この態様によれば、目地20に配置されたシーリング材30が凹部12に更に充填されにくく、また凹部12内の空気が通気孔13へと流れやすくなり、中空部41内の空気が凹部12を通じて通気孔13へとスムーズに排出されやすくなる、という利点がある。
【0042】
第3の態様に係るバックアップ材10は、第1又は2の態様において、通気孔13は、目地20に配置された状態で凹部12の上方寄りになるように形成されている。
【0043】
この態様によれば、目地20に配置されたシーリング材30が通気孔13を塞ぎにくくなり、通気孔13からの空気の排出が損なわれにくくなる、という利点がある。
【0044】
第4の態様に係るバックアップ材10は、第1~3のいずれか1つの態様において、凹部12を複数有する。
【0045】
この態様によれば、壁材40が複数の中空部41を有する場合に、複数の中空部41内の空気が複数の凹部12を通じて複数の通気孔13へと排出されやすくなり、シーリング材30の膨れを更に低減することができる、という利点がある。
【0046】
第5の態様に係る壁構造は、第1~4のいずれか1つの態様のバックアップ材10を使用する。中空部41を有する複数の壁材40が隣接して配置されて目地20が形成されている。中空部41の位置と凹部12の位置とが対応するように凹部12が目地20に配置されている。目地20における中空部41の開口と通気孔13とが連通している。
【0047】
この態様によれば、シーリング材30が、気温の上昇などにより中空部41内で膨張した空気から圧力を受けても、シーリング材30の裏側に凹部12があることによって、裏側に膨張可能となる。よって、シーリング材30が表側に変形しにくくなり、壁の外観が損なわれにくい。また、目地20に配置されたシーリング材30が凹部12に充填されにくく、シーリング材30で通気孔13が塞がれにくくなる。したがって、中空部41内の空気が凹部12を通じて通気孔13へと排出されやすくなり、シーリング材30の膨れを低減することができる、という利点がある。
【符号の説明】
【0048】
10 バックアップ材
11 受け面
12 凹部
121 底面
13 通気孔
20 目地
30 シーリング材
40 壁材
41 中空部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8