(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】粉体船積設備
(51)【国際特許分類】
B65G 67/60 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
B65G67/60 A
(21)【出願番号】P 2019094982
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 仁
(72)【発明者】
【氏名】村上 健祐
(72)【発明者】
【氏名】作野 崚哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智之
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-118535(JP,A)
【文献】特開2005-112576(JP,A)
【文献】特開2015-212566(JP,A)
【文献】実公昭52-057586(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 67/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送船に粉体を積み込む粉体船積設備であって、
地上に固定される第1ローダと、
地上を走行可能に構成される第2ローダと、を備え、
前記第1ローダは、
地上に固定される第1架台と、
前記第1架台の上端部に設けられ、粉体を搬送する第1搬送機構と、を含み、
前記第2ローダは、
地上を走行するための走行機構を備えた第2架台と、
前記第2架台の上端部に固定され、粉体を搬送する第2搬送機構と、
前記第2搬送機構の搬送方向下流側端部に基端部が接続され、粉体を搬送する第3搬送機構と、を含み、
前記第1搬送機構は、搬送方向上流側端部が前記第1架台に対して鉛直軸回りに旋回可能に取り付けられ、
前記第2搬送機構は、搬送方向上流側端部が前記第1搬送機構の搬送方向下流側端部に接続され、
前記走行機構は、前記第2搬送機構を前記第1搬送機構の搬送方向下流側端部の位置に追従する位置に位置させるために移動可能、かつ、前記第2搬送機構の前記第1搬送機構に対する相対的な搬送方向を変更するために旋回可能に構成され
、
前記第2搬送機構は、前記第1搬送機構と着脱可能に構成され、前記第2ローダの前記走行機構による移動後に、前記第1搬送機構と接続される、粉体船積設備。
【請求項2】
前記第1搬送機構、前記第2搬送機構および前記第3搬送機構は、それぞれ搬送方向上流側から下流側に向かうに従って低い位置となる下り傾斜を有するように構成される、請求項1に記載の粉体船積設備。
【請求項3】
前記第1搬送機構、前記第2搬送機構および前記第3搬送機構は、それぞれエアスライダとして構成されている、請求項2に記載の粉体船積設備。
【請求項4】
前記第3搬送機構は、搬送方向上流側端部が前記第2搬送機構に対して鉛直軸回りに旋回可能に構成される、請求項1から3の何れかに記載の粉体船積設備。
【請求項5】
前記第1搬送機構と前記第2搬送機構とを着脱可能とするための接続構造を備え、
前記第1搬送機構、前記第2搬送機構および前記第3搬送機構は、それぞれエアスライダとして構成され、
前記接続構造は、
前記第1搬送機構の搬送方向下流側端部に設けられたシュートと、
前記第2搬送機構の搬送方向上流側端部に設けられた、受入口を形成する複数の受入管と、を含み、
前記複数の受入管の何れか1つに前記シュートが選択的に接続され、残りの受入管に前記受入口を閉塞するキャップが取り付けられている、請求項
1から4の何れかに記載の粉体船積設備。
【請求項6】
前記第1ローダは、岸壁から所定距離離れた占有エリアにおいて地上に固定され、
前記第2ローダは、前記岸壁と前記占有エリアとの間における共用エリアを走行可能に構成される、請求項1から
5の何れかに記載の粉体船積設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送船に粉体を積み込む粉体船積設備に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体を輸送する輸送船では、貯蔵室の上方に供給口が設けられている。全長が長い輸送船においては、複数の貯蔵室が全長方向に配置されている、または、貯蔵室が複数区画に分かれている。複数の貯蔵室または複数区画のそれぞれには、供給口が設けられている。
【0003】
粉体船積設備(シップローダ)は、岸壁近くの地上に設置され、輸送船の貯蔵室へ供給口を通じて粉体を供給する。陸側から輸送船の供給口まで粉体を搬送して投下する搬送機構としては、例えば、エアスライダや圧送配管が用いられる。
【0004】
粉体船積設備には、貯蔵室の供給口の位置に搬送機構の出口を合わせるために、搬送機構を基端部(搬送方向上流側)において鉛直方向に設けられた回転軸回りに旋回可能とする旋回式の粉体船積設備が知られている。
【0005】
また、粉体船積設備には、下記特許文献1~3のように岸壁に沿って平行にレールが敷設され、粉体船積設備の搬送機構を岸壁に沿った方向に移動可能に構成したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-52418号公報
【文献】特許第5480523号公報
【文献】特許第2836735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、旋回式の粉体船積設備において、全長の長い輸送船に対応するためには、旋回する搬送機構の長さを長くする必要がある。旋回式の粉体船積設備において、旋回する搬送機構は、基端部のみで支えている場合には、強度不足または重量増となるおそれがある。また、旋回機構を基端部に加えて車輪付き架構部で支持することも考えられるが、架構部の重量が増加してしまう。特に、輸送船の全長が長くなると、輸送船の全幅も長くなるため、輸送船の供給口も基端部から遠くなる。このような大型の輸送船に対応するためには、旋回する搬送機構の長さをより長くする必要が生じる。
【0008】
また、レールを敷設して搬送機構を移動させる粉体船積設備のいずれにおいても、複数の貯蔵室を備えた輸送船に対して、すべての供給口に搬送機構の位置を合わせ難い場合がある。例えば、レールを敷設して搬送機構を移動させる粉体船積設備には、粉体を搬送機構に供給する供給機構(例えば、特許文献1における供給コンベヤ13)が別途必要となる。この供給機構は、旋回式の搬送機構として構成されるため、所定の鉛直軸回りに旋回するのみであり、供給機構によって搬送機構に粉体を供給可能な搬送機構の位置の範囲はレール長に対して限定的である。このようにレールを敷設して搬送機構を移動させる構成は、一見レール上の任意の位置で停止させることが可能に見えるものの、実際にはレール上において搬送機構を停止させる位置の自由度が低い問題がある。搬送機構を伸縮可能な構造とすることで自由度を高めることも考えられるが、その場合、搬送機構の構造が複雑になり、製造コストおよび設備維持コストが高くなってしまう。
【0009】
また、旋回式の粉体船積設備における地上への固定およびレールを敷設して搬送機構を移動させる粉体船積設備におけるレールの敷設は、粉体船積設備が所有している占有エリアにおいてのみ可能である。例えば、岸壁と占有エリアとの間に他の事業者等との共用エリア(共用岸壁)が存在する場所では、共用エリアへの固定物の設置およびレールの敷設は不可能である。この場合、占有エリアから輸送船までの距離が長くなり、搬送機構を長くする必要が生じるため、搬送機構の支持が困難になる。
【0010】
そこで、本発明は、複数の貯蔵室への粉体の供給を容易に行うことができる粉体船積設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の一態様に係る粉体船積設備は、輸送船に粉体を積み込む粉体船積設備であって、地上に固定される第1ローダと、地上を走行可能に構成される第2ローダと、を備え、前記第1ローダは、地上に固定される第1架台と、前記第1架台の上端部に設けられ、粉体を搬送する第1搬送機構と、を含み、前記第2ローダは、地上を走行するための走行機構を備えた第2架台と、前記第2架台の上端部に固定され、粉体を搬送する第2搬送機構と、前記第2搬送機構の搬送方向下流側端部に基端部が接続され、粉体を搬送する第3搬送機構と、を含み、前記第1搬送機構は、搬送方向上流側端部が前記第1架台に対して鉛直軸回りに旋回可能に取り付けられ、前記第2搬送機構は、搬送方向上流側端部が前記第1搬送機構の搬送方向下流側端部に接続され、前記走行機構は、前記第2搬送機構を前記第1搬送機構の搬送方向下流側端部の位置に追従する位置に位置させるために移動可能、かつ、前記第2搬送機構の前記第1搬送機構に対する相対的な搬送方向を変更するために旋回可能に構成される。
【0012】
上記構成によれば、旋回式の搬送機構として構成される第1搬送機構の先端部(搬送方向下流側端部)に自走可能な第2搬送機構が接続される。第2搬送機構は、走行機構により、第1搬送機構の先端部位置に追従した位置に移動可能、かつ、第2搬送機構の第1搬送機構に対する相対的な搬送方向を変更するために旋回可能に構成される。このため、第1搬送機構の先端部位置において第2搬送機構がさらに旋回可能となり、第2搬送機構の先端部位置の自由度を高くすることができる。これにより、輸送船の貯蔵室に設けられた供給口の位置に第2搬送機構の先端部に接続された第3搬送機構の先端部を位置させることが容易となる。したがって、複数の貯蔵室への粉体の供給を容易に行うことができる。また、第2ローダは自走可能なため、岸壁と占有エリアとの間に共用エリアがある場合においても、船積作業時にだけ共用エリアに第2ローダを位置させて第1搬送機構ないし第3搬送機構で構成される搬送部を構成させることができる。したがって、第1搬送機構の基端部(搬送方向上流側端部)から輸送船の供給口までの距離が長くても強度不足または重量増となることを防止することができる。
【0013】
前記第1搬送機構、前記第2搬送機構および前記第3搬送機構は、それぞれ搬送方向上流側から下流側に向かうに従って低い位置となる下り傾斜を有するように構成されてもよい。第1搬送機構ないし第3搬送機構で構成される搬送部において、輸送船の供給口に位置する第3搬送機構の先端部位置が最も低い位置となるようにするためには、第1搬送機構の基端部の位置をかなり高い位置にする必要がある。このため、従来のような基端部のみで搬送機構を支持するような構成または旋回機構を基端部および車輪付き架構部で支持するような構成では、搬送機構の強度を確保することが困難であった。これに対し、上記構成によれば、搬送部の中間部に位置する第2搬送機構が自走可能な第2架台により地上から支持される。また、搬送部が3つの搬送機構から構成されるため、1つ当たりの搬送機構の長さを比較的に短くすることができる。したがって、搬送部が強度不足または重量増となることを抑制することができる。
【0014】
前記第1搬送機構、前記第2搬送機構および前記第3搬送機構は、それぞれエアスライダとして構成されていてもよい。粉体の搬送機構として可動部のないエアスライダを用いることにより、各搬送機構を軽量化することができるとともに効率よく粉体を搬送することができる。
【0015】
前記第3搬送機構は、搬送方向上流側端部が前記第2搬送機構に対して鉛直軸回りに旋回可能に構成されてもよい。これにより、輸送船の貯蔵室に設けられた供給口への位置合わせの自由度をさらに高めることができる。
【0016】
前記第2搬送機構は、前記第1搬送機構と着脱可能に構成され、前記第2ローダの前記走行機構による移動後に、前記第1搬送機構と接続されてもよい。これにより、第2搬送機構の移動をスムーズに行うことができる。
【0017】
前記粉体船積設備は、前記第1搬送機構と前記第2搬送機構とを着脱可能とするための接続構造を備え、前記第1搬送機構、前記第2搬送機構および前記第3搬送機構は、それぞれエアスライダとして構成され、前記接続構造は、前記第1搬送機構の搬送方向下流側端部に設けられたシュートと、前記第2搬送機構の搬送方向上流側端部に設けられた、受入口を形成する複数の受入管と、を含み、前記複数の受入管の何れか1つに前記シュートが選択的に接続され、残りの受入管に前記受入口を閉塞するキャップが取り付けられていてもよい。これにより、シュートをどの受入管に接続するかによって第1搬送機構の先端部に対する第2搬送機構の基端部の位置を変更することができる。これにより、第2搬送機構の先端部の位置を変更することができる。したがって、輸送船の貯蔵室に設けられた供給口への位置合わせの自由度をさらに高めることができる。
【0018】
前記第1ローダは、岸壁から所定距離離れた占有エリアにおいて地上に固定され、前記第2ローダは、前記岸壁と前記占有エリアとの間における共用エリアを走行可能に構成されてもよい。船積作業時にだけ共用エリアに第2搬送機構を位置させて搬送部を共用エリア上で支持させることができるため、第1搬送機構の基端部(搬送方向上流側端部)から輸送船の供給口までの距離が長くても強度不足または重量増となることを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の貯蔵室への粉体の供給を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る粉体船積設備の概略構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す第1搬送機構と第2搬送機構との間の接続構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る粉体船積設備の概略構成を示す平面図である。また、
図2は、
図1に示す粉体船積設備の側面図である。粉体船積設備(シップローダ)1は、岸壁2から共用エリア(共用岸壁)3を挟んで所定距離離れた占有エリア4において地上に固定される。岸壁2と占有エリア4との間の共用エリア3は、シップローダ1を利用する事業者とは異なる他の事業者等と共用される場所である。共用エリア3では、他の事業者の車両の通行等を許容するため、共用エリア3への固定物の設置およびレールの敷設はできない(禁止されている)。
【0022】
岸壁2には輸送船5が接岸され、シップローダ1は、輸送船5に粉体を積み込むように構成されている。粉体は、特に限定されるものではないが、例えば、フライアッシュ(乾灰)やセメント等である。
【0023】
輸送船5は、全長方向に所定のピッチで並ぶ複数の貯蔵室6を含む。本実施の形態では、各貯蔵室6がハッチ7で覆われており、このハッチ7に供給口8が設けられている。つまり、供給口8は、貯蔵室6の上方に設けられている。なお、ハッチ7には、図示しない排気口が設けられ得る。
【0024】
例えば、輸送船5は、貯蔵室6の数が3つ以上であって、ハッチ7が開閉式である大型のバラ積貨物船であってもよい。あるいは、輸送船5は、貯蔵室6の数が2つであり、ハッチ7が開閉不能であって、船体上に集塵機が常設された粉体運搬専用船であってもよい。
【0025】
占有エリア4には、粉体の貯蔵サイロ9が設けられる。シップローダ1は、貯蔵サイロ9に貯蔵される粉体を輸送船5の複数の貯蔵室6に投入するための設備である。シップローダ1は、占有エリア4において地上に固定される第1ローダ11と、地上を走行可能に構成される第2ローダ12と、を備えている。
【0026】
第1ローダ11は、地上に固定される第1架台13と、第1架台13の上端部に設けられ、粉体を搬送する第1搬送機構14と、を備えている。第2ローダ12は、地上を走行するための走行機構15を備えた第2架台16と、第2架台16の上端部に固定され、粉体を搬送する第2搬送機構17と、第2搬送機構17の搬送方向下流側端部に基端部が接続され、粉体を搬送する第3搬送機構18と、を備えている。
【0027】
第1搬送機構14、第2搬送機構17および第3搬送機構18が本実施の形態のシップローダ1における搬送部10として構成される。貯蔵サイロ9から搬出された粉体は、第1架台13に隣接して設けられたバケットエレベータ19によって上方に持ち上げられ、第1搬送機構14に投入される。搬送部10は、第1搬送機構14、第2搬送機構17および第3搬送機構18の順で粉体を搬送する。第3搬送機構18の搬送方向下流側端部(先端部)には、下方に延びる粉体の排出口20が設けられている。排出口20が供給口8に配置(または接続)されることにより、搬送部10により搬送された粉体が輸送船5の貯蔵室6内に供給される。
【0028】
第1搬送機構14は、搬送方向上流側端部(基端部)が第1架台13に対して鉛直軸S1回りに旋回可能に取り付けられる。第1ローダ11は、第1搬送機構14を鉛直軸S1回りに旋回させるための駆動装置(図示せず)を備えている。第2搬送機構17は、搬送方向上流側端部(基端部)が第1搬送機構14の搬送方向下流側端部(先端部)に接続される。
【0029】
走行機構15は、第2搬送機構17を第1搬送機構14の先端部の位置に追従する位置に位置させるために移動可能、かつ、第2搬送機構17の第1搬送機構14に対する相対的な搬送方向を変更するために旋回可能に構成される。走行機構15は、特に限定されないが、例えば多数の車輪、チルローラ、または無限軌道等が採用され得る。
【0030】
走行機構15は、第2ローダ12に設けられた運転席15aに乗った作業員の操作に基づいて移動および旋回するよう構成されてもよい。これに代えて、走行機構15は、占有エリア4に設けられたシップローダ1の制御室(図示せず)に設置された操作装置の操作に基づいて移動および旋回してもよい。また、これに加えて、またはこれに代えて、制御室に設置された制御装置(図示せず)により移動および旋回が自動制御されてもよい。
【0031】
走行機構15は、その場で旋回(超信地旋回)可能に構成されることが好ましい。例えば多数の車輪を備えた走行機構15においては、複数車軸間で車輪が逆位相に操舵可能に構成されたり、左右の車輪の回転方向を互いに異ならせたりしてもよい。また、例えば無限軌道を備えた走行機構15においては、左右の無限軌道の回転方向を互いに異ならせてもよい。
【0032】
第2搬送機構17が移動可能かつ旋回可能に構成されることにより、第1搬送機構14に対する第2搬送機構17の向きを任意に変更可能である。したがって、輸送船5の貯蔵室6に設けられた供給口8への位置合わせの自由度を高めることができる。
【0033】
また、第3搬送機構18は、搬送方向上流側端部(基端部)が第2搬送機構17に対して鉛直軸S2回りに旋回可能に構成されている。第2ローダ12は、第3搬送機構18を鉛直軸S2回りに旋回させるための駆動装置(図示せず)を備えている。これにより、第2搬送機構17に対する第3搬送機構18の向きを任意に変更可能である。したがって、輸送船5の貯蔵室6に設けられた供給口8への位置合わせの自由度をさらに高めることができる。
【0034】
搬送部10を構成する第1搬送機構14、第2搬送機構17および第3搬送機構18は、それぞれエアスライダとして構成されている。このために、第1搬送機構14、第2搬送機構17および第3搬送機構18は、それぞれ搬送方向上流側(基端部側)から下流側(先端部側)に向かうに従って低い位置となる下り傾斜を有するように構成されている。
【0035】
各搬送機構14,17,18は、それぞれ、搬送方向上流側端部(基端部)から搬送方向下流側端部(先端部)まで搬送方向(長手方向)に延びる矩形筒状の筐体と、筐体内に配置された搬送面を構成する通気部材(例えば、メッシュ)と、を含む。通気部材と筐体の底面との間には、エアが供給される。このようにして、エアスライダ内部にエアを供給することにより、粉体が流動化する。搬送部10が下り傾斜を有することにより、流動化した粉体は、自重でエアスライダとして構成される搬送部10内を、基端部側から先端部側へ流下される。
【0036】
搬送部10は、このエアスライダへの空気を供給する構成およびエアスライダから空気を排気する構成として、図示しない供気ファン、バグフィルタおよび排気ファン等を備えている。これらの構成は、第1ローダ11および第2ローダ12に固定設置されていてもよいし、これらの構成の少なくとも一部がローダ11,12とは独立して設けられ、必要なときにローダ11,12に仮設されてもよい。
【0037】
このように、粉体の搬送機構として可動部のないエアスライダを用いることにより、各搬送機構14,17,18を軽量化することができるとともに効率よく粉体を搬送することができる。
【0038】
第2搬送機構17は、第1搬送機構14と着脱可能に構成されている。第2搬送機構17は、第2ローダ12の走行機構15による移動後に、第1搬送機構14と接続される。
【0039】
図3は、
図1に示す第1搬送機構と第2搬送機構との間の接続構造を示す断面図である。第1搬送機構14は、筐体141および通気部材142を備えている。第2搬送機構17は、筐体171および通気部材172を備えている。第1搬送機構14と第2搬送機構17との接続構造21は、主に、第1搬送機構14の先端部に設けられたシュート143と、第2搬送機構17の基端部に設けられた複数の受入口170と、2つの搬送機構14,17の間に設けられるフレキシブルチューブ22と、を備えている。
【0040】
第1搬送機構14の先端部には、当該先端部から下向きに延びる管状のシュート143が設けられている。シュート143の断面形状は、矩形であっても円形であってもよいし、上方から下方に向かって矩形から円形に変化してもよい。
【0041】
シュート143の下端にはフランジが設けられており、このフランジにフレキシブルチューブ22が図示しないボルト等によって取り付けられている。フレキシブルチューブ22の内部には、粉体がフレキシブルチューブ22に直接接触しないように内筒23が配置されている。
【0042】
第2搬送機構17の基端部には、受入部173が設けられている。受入部173は、上下方向に延びる矩形筒状の周壁174と、周壁174の上側の開口を閉塞する天板175とを含む。周壁174の断面形状は、第2搬送機構17の搬送方向に長い長方形状である。
【0043】
天板175には、受入口170を形成する複数の受入管176が設けられている。受入管176は、天板175から上向きに突出する。本実施の形態では、天板175に3つの受入管176が形成されているが、受入管176の数は2つ以下であってもよいし4つ以上であってもよい。
【0044】
本実施の形態では、受入管176が第2搬送機構17の搬送方向に並んでいる。ただし、受入部173の形状を、第2搬送機構17の搬送方向から見たときに下向きに尖る三角形状とすれば、受入管176は第2搬送機構17の幅方向に並んでいてもよい。あるいは、受入管176は、第2搬送機構17の軸方向および幅方向に対して斜め方向に並んでいてもよいし、マトリクス状に並んでいてもよい。
【0045】
受入管176のいずれか1つ(
図3では中央の受入管176)には、シュート143がフレキシブルチューブ22を介して選択的に接続され、残りの2つの受入管176には、受入口170を閉塞するキャップ24が取り付けられている。
【0046】
より具体的には、各受入管176の上端にはフランジが設けられており、1つの受入管176のフランジにフレキシブルチューブ22が図示しないボルト等によって取り付けられている。残りの2つの受入管176のフランジには、それぞれキャップ24が図示しないボルトおよびナットによって取り付けられている。
【0047】
このような構成の接続構造21によれば、シュート143をどの受入管176に接続するかによって第1搬送機構14の先端部に対する第2搬送機構17の基端部の位置を変更することができる。これにより、第2搬送機構17の先端部の位置を変更することができる。例えば、シュート143を接続する受入管176を中央の受入管176から後側(より基端部側)の受入管176に変更すれば(
図2に示す接続状態にすれば)、第2搬送機構17の先端部の位置をより前方(より搬送方向下流方向)に移動することができる。
【0048】
このように、シュート143を搬送方向に並んだ複数の受入管176のうちの何れの受入管176に接続するかによって第1搬送機構14の先端部に対する第2搬送機構17の基端部の位置を変更することができる。これにより、第2搬送機構17の先端部の位置を搬送方向に沿って変更することができる。したがって、輸送船5の貯蔵室6に設けられた供給口8への位置合わせの自由度をさらに高めることができる。
【0049】
なお、接続構造21は、上記構成に限られない。例えば、複数の受入口170の代わりに、天板175に搬送方向に延びる長穴状の受入口が形成され、受入口の一部を閉塞板で閉塞するように構成され、当該閉塞板の位置を変えることで受入口の位置を搬送方向に変更する構成としてもよい。また、上記フレキシブルチューブ22はなくてもよい。すなわち、第1搬送機構14のシュート143と第2搬送機構17の受入口170(受入管176)とが直接接続されてもよい。
【0050】
以上のような構成を有するシップローダ1による粉体船積作業の流れについて説明する。まず、作業開始前において、第1搬送機構14と第2搬送機構17との接続は解除されており、第2ローダ12は、第1搬送機構14との位置関係にかかわらず自由に移動可能である。作業開始前において第2ローダ12は、占有エリア4に駐車されている。したがって、粉体船積作業時以外において、共用エリア3は、他の作業車等が通行可能である。
【0051】
作業の開始に際しては、予め粉体の供給対象となる貯蔵室6の供給口8の位置と第1ローダ11の基端部の位置(または先端部が位置し得る仮想円C1の位置)との関係から第2ローダ12のおおよその位置および向きが決定される。第2ローダ12の位置および向きの決定は、シップローダ1の制御装置が実行する演算により求められてもよいし、作業員が決定してもよい。
【0052】
第2ローダ12は、決定された位置に位置するべく、共用エリア3に移動する。この際、第2ローダ12は、第3搬送機構18の先端部(排出口20)が粉体供給対象の貯蔵室6(例えば、
図1における輸送船5の最も先頭の貯蔵室6)の供給口8に対応する位置に位置可能な場所まで移動する。それと同時に、第2ローダ12は、第2搬送機構17の基端部が第1搬送機構14の先端部に接続可能な位置に位置するように移動および旋回する。
【0053】
次に、第1搬送機構14を鉛直軸S1回りに旋回させて第1搬送機構14のシュート143の位置が第2搬送機構17の複数の受入管176のうちの何れかの位置に位置するようにする。第1搬送機構14の旋回だけではうまく位置調整できない場合には、再度第2ローダ12を移動または旋回させてもよい。
【0054】
次に、第1搬送機構14の先端部と第2搬送機構17の基端部とを接続する。このように、第2搬送機構17の移動および旋回時には第1搬送機構14と第2搬送機構17との接続を解除することができる。これにより、第2搬送機構17の移動をスムーズに行うことができる。
【0055】
また、第3搬送機構18を鉛直軸S2回りに旋回させて、第3搬送機構18の先端部(排出口20)を粉体供給対象の貯蔵室6の供給口8に位置させる。第3搬送機構18の排出口20と供給口8とは、互いに接続されてもよいし、接続されずに位置合わせのみ行われてもよい。なお、本工程においても位置合わせのために、再度第2ローダ12を移動または旋回させてもよい。また、第3搬送機構18の位置合わせを行ってから第1搬送機構14の先端部と第2搬送機構17の基端部とを接続してもよい。
【0056】
第1搬送機構14、第2搬送機構17および第3搬送機構18の配置および接続が完了した後、貯蔵サイロ9に貯蔵された粉体がバケットエレベータ19を介して第1搬送機構14の基端部に供給されるとともに各搬送機構14,17,18の内部にエアが供給されることにより、粉体が搬送部10を通じて搬送され、粉体供給対象の貯蔵室6に供給される。
【0057】
貯蔵室6内に供給された粉体の量が所定量に達することにより、貯蔵室6への粉体の供給が完了した後、輸送船5の他の貯蔵室6に引き続き粉体の供給を行う場合、再度、搬送部10の位置および向きの決定が再度行われる。位置および向きの決定後、上記工程(第2ローダ12の移動および旋回等)が行われる。
【0058】
なお、粉体供給対象の貯蔵室6の変更前後で移動または旋回不要な搬送機構14,17,18が存在する場合、当該搬送機構の移動または旋回は行わない。例えば、
図1において、輸送船5の最も先頭の貯蔵室6への粉体の供給後、前から3つ目の貯蔵室6へ粉体を供給する場合、第1搬送機構14の位置は変更不要であるので、第1搬送機構14の旋回動作は行われない。
図1の破線で示されるように、第2搬送機構17(第2ローダ12)の移動および旋回と、第3搬送機構18の旋回とが行われる。この場合には、第1搬送機構14と第2搬送機構17との接続を解除せずに、第2ローダ12の移動および旋回を行ってもよい。
【0059】
一方、例えば前から3つ目の貯蔵室6への粉体の供給後、前から5つ目の貯蔵室6へ粉体を供給する場合、すべての搬送機構14,17,18の位置が変わるため、各搬送機構14,17,18の移動または旋回が行われる。この場合、第1搬送機構14と第2搬送機構17との接続がいったん解除され、第2ローダ12の移動および旋回が完了してから両者が再接続される。
【0060】
なお、第1搬送機構14および第2搬送機構17の接続および接続解除の態様は上記に限られない。例えば、第2搬送機構17を、基端部を旋回中心として旋回のみさせる場合であっても、両者の接続を解除してから旋回を行ってもよい。また、第2ローダ12の共用エリア3における移動および旋回に際しては、両者の接続解除を行わないとしてもよい。
【0061】
図1では、シップローダ1による先頭の貯蔵室6への粉体供給態様(実線)、前から3つ目および5つ目の貯蔵室6への粉体供給態様(破線)を例示しているが、その他の貯蔵室6にも同様に、輸送船5を移動させることなく粉体を供給することができる。すべての貯蔵室6に粉体を供給した後、第1搬送機構14と第2搬送機構17との接続が解除される。また、第3搬送機構18の排出口20と貯蔵室6の供給口8との接続も解除される。第1搬送機構14は、鉛直軸S1回りに旋回して初期位置(格納位置)に位置される。第2搬送機構17は、占有エリア4における初期位置(駐車位置)に移動する。これにより、共用エリア3において、再び他の作業車等が通行可能となる。
【0062】
上記構成によれば、旋回式の搬送機構として構成される第1搬送機構14の先端部(搬送方向下流側端部)に自走可能な第2搬送機構17が接続される。第2搬送機構17は、走行機構15により、第1搬送機構14の先端部位置に追従した位置に移動可能、かつ、第2搬送機構17の第1搬送機構14に対する相対的な搬送方向を変更するために旋回可能に構成される。このため、第1搬送機構14の先端部位置において第2搬送機構17がさらに旋回可能となり、第2搬送機構17の先端部位置の自由度を高くすることができる。
【0063】
これにより、輸送船5の貯蔵室6に設けられた供給口8の位置に第2搬送機構17の先端部に接続された第3搬送機構18の先端部を位置させることが容易となる。したがって、各搬送機構14,17,18の構造を複雑化させることなく、複数の貯蔵室6への粉体の供給を容易に行うことができる。また、第2搬送機構17(が設けられる第2ローダ12)は自走可能なため、岸壁2と占有エリア4との間に共用エリア3がある場合においても、船積作業時にだけ共用エリア3に第2搬送機構17を位置させて第1搬送機構14ないし第3搬送機構18で構成される搬送部10を共用エリア3上で支持させることができる。したがって、第1搬送機構14の基端部(搬送方向上流側端部)から輸送船5の供給口8までの距離が長くても強度不足または重量増となることを防止することができる。
【0064】
また、第1搬送機構14ないし第3搬送機構18で構成される搬送部10をエアスライダとして構成するためには、輸送船5の供給口8に位置する第3搬送機構18の先端部位置が最も低い位置となるようにする必要がある。このためには、第1搬送機構14の基端部の位置をかなり高い位置にする必要がある。このため、従来のような基端部のみで搬送機構を支持するような構成では、搬送機構の強度を確保することが困難であった。これに対し、上記構成によれば、搬送部10の中間部に位置する第2搬送機構17が自走可能な第2架台16により地上から支持される。また、搬送部10が3つの搬送機構14,17,18から構成されるため、1つ当たりの搬送機構の長さを長くする必要もない。したがって、搬送部10が強度不足または重量増となることを抑制することができる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0066】
例えば、上記実施の形態においては、第1搬送機構14、第2搬送機構17および第3搬送機構18が粉体を搬送する構造のみを備えている例に基づいて説明したが、これらの搬送機構14,17,18が貯蔵室6内の集塵を行う集塵装置および集塵ダクトを備えていてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態においては、搬送部10が自走可能な第2搬送機構17を1つ備えた構成を例示したが、搬送部10がそれぞれ独立して移動および旋回が可能な複数の第2搬送機構17を備えていてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態において、第1搬送機構14と第2搬送機構17とが着脱可能に構成され、粉体の搬送に第1搬送機構14、第2搬送機構17および第3搬送機構18を用いることを例示したが、貯蔵室6が1つのみの小型の輸送船5に粉体を供給する場合等においては、第2搬送機構17との接続を解除し、第1搬送機構14のみで輸送船5の貯蔵室6に粉体を供給してもよい。
【0069】
また、上記実施の形態において、第3搬送機構18は、第2搬送機構17に常時接続されている構成について例示したが、第2搬送機構17と第3搬送機構18とが着脱可能に構成されていてもよい。この場合、輸送船5の構造または大きさによっては、第3搬送機構18を用いずに、第1搬送機構14および第2搬送機構17によって輸送船5の貯蔵室6に粉体を供給してもよい。また、上記実施の形態において、第1搬送機構14と第2搬送機構17とが着脱可能に構成されている例について示したが、第1搬送機構14と第2搬送機構17とが着脱不能に構成されてもよい。ただし、この場合でも、第2搬送機構17が第1搬送機構14に対して、相対回動可能に構成される。
【0070】
また、上記実施の形態において、搬送部10がエアスライダにより構成された例を示したが、搬送部10として各種コンベヤ、圧送配管等、粉体を搬送可能な構造であれば種々適用可能である。また、エアスライダ以外の構成において、搬送部10は下り傾斜でなくてもよい。
【0071】
また、上記実施の形態においては、岸壁2と第1搬送機構14が固定される占有エリア4との間に共用エリア3が設けられている場所にシップローダ1を適用する例を示したが、共用エリア3がなく岸壁2から近い位置に占有エリア4が設けられている場所であっても、上記実施の形態におけるシップローダ1を適用可能である。特に、大型の輸送船5においては、船幅が長くなり、岸壁2から船体の幅方向中央部に設けられる貯蔵室6の供給口8までの距離が遠い。このような場合に、本実施の形態であれば、第2ローダ12を移動させることにより、第3搬送機構18の基端部の位置を、岸壁2に近い位置かつ輸送船5の全長方向に関して供給口8に相対する位置に位置させることが容易にできるため、第3搬送機構18の長さを最大限利用することができ、大型の輸送船5にも対応可能なシップローダ1を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、複数の貯蔵室への粉体の供給を容易に行うために有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 シップローダ(粉体船積設備)
2 岸壁
3 共用エリア
4 占有エリア
5 輸送船
11 第1ローダ
12 第2ローダ
13 第1架台
14 第1搬送機構
15 走行機構
16 第2架台
17 第2搬送機構
18 第3搬送機構
21 接続構造
143 シュート
170 受入口
176 受入管
24 キャップ