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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】ガイドレールの据付方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/02 20060101AFI20231025BHJP
   B66B 7/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B66B7/02 G
B66B7/00 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019116058
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021001059
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松家 大介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】服部 誠
(72)【発明者】
【氏名】波田野 利昭
(72)【発明者】
【氏名】浜田 悠太
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-178561(JP,A)
【文献】特開2018-070362(JP,A)
【文献】特開2003-155179(JP,A)
【文献】特開昭61-127583(JP,A)
【文献】特開平06-156926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/02
B66B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガイドレールを連結し、エレベーターの昇降路内に立設させるガイドレールの敷設方法において、
前記昇降路の床面に、複数の前記ガイドレールのうち最下段に配置される最下段ガイドレールを固定する工程と、
前記ガイドレールの回転を防止する回転防止治具を前記最下段ガイドレールに取り付ける工程と、
前記昇降路内において前記ガイドレールを昇降装置により吊り上げる吊り上げ工程と、
吊り上げられた前記ガイドレールの下部に、新たなガイドレールを接続する接続工程と、
接続した前記ガイドレールに、前記昇降路の壁面に固定されるレールブラケットを取り付ける取付工程と、
前記吊り上げ工程、前記接続工程及び前記取付工程を繰り返し行い、前記最下段ガイドレールと、吊り上げられたガイドレールとを接続する工程と、
を含み、
前記吊り上げ工程、前記接続工程及び前記取付工程を行う際、前記ガイドレールにおける前記レールブラケットが固定される固定面部が前記昇降路の壁面と向き合わない位置で、前記ガイドレールは吊り上げられる
ガイドレールの敷設方法。
【請求項2】
前記取付工程は、前記ガイドレールを前記昇降装置により所定の高さまで上昇させてから行われる
請求項1に記載のガイドレールの敷設方法。
【請求項3】
前記回転防止治具には、前記ガイドレールの摺動面部が上下方向の下方から挿入されるガイド凹部が設けられている
請求項に記載のガイドレールの敷設方法。
【請求項4】
前記回転防止治具における前記昇降路の床面からの設置高さは、前記ガイドレールの長手方向の長さよりも長く設定される
請求項に記載のガイドレールの敷設方法。
【請求項5】
前記ガイドレールの前記摺動面部と、前記回転防止治具の前記ガイド凹部との位置を合わせる位置合わせ治具が前記昇降路内に取り付けられる
請求項に記載のガイドレールの敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターのガイドレールを昇降路内に敷設するガイドレールの敷設方法及びこのガイドレールの敷設方法で用いられる回転防止治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベーターの昇降路内には、乗りかごや釣合おもりの移動をガイドするガイドレールが設置されている。ガイドレールの敷設作業は、作業者が昇降路内に設けられた作業足場上で行われる。このガイドレールの敷設作業に関する技術としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。
【0003】
特許文献1には、昇降路の入口に通じるフロア上に作業台を設置し、この作業台上に所要本数のガイドレールを順番に寝かせて直列状態に次々載せると共に、これらガイドレール相互端部を連結金具により屈曲可能に連結する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-178561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、昇降路の入口に通じるフロアにまで作業スペースを確保する必要があった。そのため、建設中の建築構造物や、フロアに作業台を設置することができない場合等では、作業を行うことができない、という問題を有していた。
【0006】
本目的は、上記の問題点を考慮し、ガイドレールの敷設作業を昇降路内で行うことができるガイドレールの敷設方法提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するため、ガイドレールの敷設方法は、複数のガイドレールを連結し、エレベーターの昇降路内に立設させるガイドレールの敷設方法において、以下(1)から(3)に示す工程を含む。
(1)昇降路内においてガイドレールを昇降装置により吊り上げる吊り上げ工程。
(2)吊り上げられたガイドレールの下部に、新たなガイドレールを接続する接続工程。
(3)接続したガイドレールに、昇降路の壁面に固定されるレールブラケットを取り付ける取付工程。
そして、吊り上げ工程、接続工程及び取付工程を繰り返し行う。
【発明の効果】
【0009】
上記構成のガイドレールの敷設方法よれば、ガイドレールの敷設作業を昇降路内で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法における敷設作業中の状態を示す概略構成図である。
図2】第1の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法における敷設作業中の状態を示す平面である。
図3】レールブラケットを示すもので、図3Aはかご側ガイドレールのレールブラケットを示し、図3Bはおもり側ガイドレールのレールブラケットを示す。
図4】第1の実施の形態例にかかる回転防止治具を示す説明図である。
図5】第1の実施の形態例にかかる回転防止治具を示すものでおもり側ガイドレールに用いられる回転防止治具を示す説明図である。
図6】第1の実施の形態例にかかる回転防止治具を示す正面図である。
図7】第1の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法を示すフローチャートである。
図8】第1の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法を示す説明図である。
図9】第1の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法を示す説明図である。
図10】第2の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法を示すフローチャートである。
図11】第3の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法を示す説明図である。
図12】第3の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法で用いられる位置合わせ治具を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法ついて、図1図12を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0012】
1.第1の実施の形態例
1-1.ガイドレールの構成例及びガイドレールの敷設装置
まず、エレベーターのガイドレール及びガイドレールの敷設装置の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)について、図1図5を参照して説明する。
図1は、ガイドレールの敷設方法における敷設作業中の状態を示す概略構成図である。図2は、ガイドレールの敷設作業中の状態における平面図である。
【0013】
図1に示すように、エレベーターが設置される昇降路100内には、乗りかごを昇降可能に支持する複数のガイドレール10が設置される。複数のガイドレール10は、昇降路100内において連結部材30により連結される。そして、複数のガイドレール10は、昇降路100内において昇降方向に沿って立設している。図2に示すように、ガイドレール10は、レールブラケット11によって昇降路100の壁面102に固定される。また、最下段のガイドレール10Aは、昇降路100の底部であるピット101に設置されたピットベース130に固定される。
【0014】
図3Aは、レールブラケットを示す説明図である。
図3Aに示すように、ガイドレール10を壁面102に固定するレールブラケット11は、第1部材12と、第1部材12に固定される第2部材13と、レールクリップ16と、連結ボルト17と、クリップボルト18とを有している。第2部材13は、不図示のアンカーボルトにより壁面102に固定される。ガイドレール10の敷設作業を行う前に、第2部材13と第1部材12は、連結ボルト17により連結される。
【0015】
第1部材12には、ガイドレール10の固定面部10aがレールクリップ16及びクリップボルト18により固定される。このとき、ガイドレール10の固定面部10aは、壁面102と対向する。そして、ガイドレール10における乗りかごが摺動する摺動面部10bは、壁面102に対して直交する方向に向けて突出する。
【0016】
また、図2に示すように、昇降路100内には、乗りかごと主ロープを介して連結される釣合おもりを昇降可能に支持するおもり側ガイドレール20が設置される。おもり側ガイドレール20は、乗りかごをガイドするかご側のガイドレール10と同様に、連結部材30により連結されて、昇降路100内に立設される。また、おもり側ガイドレール20は、おもり側レールブラケット21によって昇降路100の壁面102に固定される。
【0017】
図3Bは、おもり側ガイドレール20のレールブラケット21を示す説明図である。
図3Bに示すように、レールブラケット21は、かご側のレールブラケット11と同様に、第1部材22と、第1部材22に固定される第2部材23と、レールクリップ26と、連結ボルト27と、クリップボルト28とを有している。第2部材23は、不図示のアンカーボルトにより壁面102に固定される。おもり側ガイドレール20の敷設作業を行う前に、第2部材23と第1部材22は、連結ボルト27により連結される。
【0018】
第1部材22には、おもり側ガイドレール20の固定面部20aがレールクリップ26及びクリップボルト28により固定される。このとき、おもり側ガイドレール20の固定面部20aは、壁面102に対して直交する方向に配置される。そして、おもり側ガイドレール20における釣合おもりが摺動する摺動面部20bは、壁面102と平行をなす方向に突出する。
【0019】
次に、ガイドレールの敷設方法で用いられるガイドレール敷設装置について説明する。
ガイドレール敷設装置は、昇降路100のピット101に設置される作業足場140と、ガイドレール10を吊り上げる昇降装置150と、ガイドレール10の回転を防止する回転防止治具160とを有している。回転防止治具160は、最下段のガイドレール10Aに取り付けられる。
【0020】
昇降装置150は、昇降路100の頂部に設置された支持部材120に固定される。昇降装置150は、昇降装置150により巻き上げられるロープ151と、吊り上げ雇152とを有している。吊り上げ雇152は、ロープ151の端部に設けられている。そして、敷設作業時において、吊り上げ雇152は、最上段のガイドレール10Bに組み付けられる。昇降装置150は、ロープ151を巻き上げることで、吊り上げ雇152に組み付けられたガイドレール10Bを昇降移動させる。
【0021】
次に、図4図6を参照して回転防止治具160の構成について説明する。
図4は、かご側のガイドレール10に取り付けられる回転防止治具160を示し、図5は、おもり側ガイドレール20に取り付けられる回転防止治具160Bを示している。図6は、回転防止治具160、160Bのガイド部162を示す正面図である。
【0022】
図4に示すように、回転防止治具160は、取付部161と、ガイド部162とを有している。取付部161には、取付凹部163が形成されている。取付凹部163は、取付部161における上下方向に沿って延在している。なお、取付部161の上下方向は、昇降路100の昇降方向と平行をなす。
【0023】
取付凹部163には、最下段のガイドレール10Aの摺動面部10bが挿入される。そして、取付部161は、取付ボルト164により最下段のガイドレール10Aに取り付けられる。
【0024】
ガイド部162は、取付部161における上下方向と直交する側面部に連続して設けられている。具体的には、ガイド部162は、回転防止治具160をガイドレール10Aに取り付けた際に、取付部161における作業足場140(図2参照)と対向する面と直交する面に連続して設けられている。また、ガイド部162は、取付部161が壁面102と対向する方向と直交する方向に設けられる。
【0025】
ガイド部162には、ガイド凹部165が設けられている。回転防止治具160を最下段のガイドレール10Aに取り付けた際に、ガイド凹部165は、ガイド部162における作業足場140と対向する側面部と直交する側面部に設けられている。ガイド凹部165は、ガイド部162の上下方向に沿って連続して形成されている。このガイド凹部165には、ガイドレール10B、10Cが上下方向の下方から挿入される。これにより、ガイド凹部165に挿入されたガイドレール10B、10Cの回転は、回転防止治具160により規制される。
【0026】
図4及び図6に示すように、ガイド部162は、複数の第1ガイドローラ166aと、複数の第2ガイドローラ166bを有している。第1ガイドローラ166aと第2ガイドローラ166bは、それぞれガイド凹部165の両側に回転可能に配置されている。そして、第1ガイドローラ166a及び第2ガイドローラ166bの一部は、ガイド凹部165に向けて張り出している。第1ガイドローラ166a及び第2ガイドローラ166bは、ガイド凹部165に挿入されたガイドレール10B、10Bの摺動面部10bに接触する。そして、第1ガイドローラ166a及び第2ガイドローラ166bが回転することで、ガイドレール10B、10Cを上下方向、すなわち昇降方向に沿ってスムーズにガイドすることができる。
【0027】
また、第1ガイドローラ166aは、第2ガイドローラ166bよりもガイド凹部165における上下方向と直交する方向の開口端側に配置されており、第2ガイドローラ166bは、第1ガイドローラ166aよりもガイド凹部165の奥部に配置されている。また、第1ガイドローラ166aは、第2ガイドローラ166bよりもガイド凹部165の内側に向けて張り出している。
【0028】
第1ガイドローラ166aは、摺動面部10bのくびれ部に接触する。そして、第2ガイドローラ166bは、摺動面部10bにおけるくびれ部から突出する摺動面に接触する。これにより、ガイド凹部165に挿入されたガイドレール10B、10Cがガイド凹部165における開口から抜け出ることを防ぐことができる。
【0029】
また、ガイド部162における上下方向の下部に配置される第1ガイドローラ166a及び第2ガイドローラ166bは、その一部がガイド部162の下部から上下方向の下方に向けて張り出している。この上下方向の下部に配置された第1ガイドローラ166a及び第2ガイドローラ166bが、ガイドレール10B、10Bの摺動面部10bを上下方向の下方からガイド凹部165に挿入する際のガイドとなる。これにより、ガイドレール10B、10Bの摺動面部10bをスムーズにガイド凹部165に挿入することができる。
【0030】
図5に示すように、おもり側の回転防止治具160Bは、取付部161と、ガイド部162とを有している。ガイド部162は、取付部161における作業足場140(図2参照)と対向する面と直交する面に連続して設けられている。すなわち、おもり側の回転防止治具160Bは、回転防止治具160と同様に、取付部161が壁面102と対向する方向と直交する方向にガイド部162が設けられる。
【0031】
取付部161には、取付凹部163が設けられており、最下段のおもり側ガイドレール20Aの摺動面部20bが挿入される。そして、取付部161は、取付ボルト164により摺動面部20bに取り付けられる。
【0032】
ガイド部162には、おもり側ガイドレール20B、20Cの摺動面部20bが挿入されるガイド凹部165が設けられている。そして、ガイド凹部165には、おもり側ガイドレール20B、20Cをガイドする複数のガイドローラ166が設けられている。
【0033】
その他の構成は、上述したかご側の回転防止治具160と同様であるため、その説明は省略する。このおもり側の回転防止治具160Bによっても、ガイド部162のガイド凹部165に挿入されたおもり側ガイドレール20B、20Cの回転を防止することができる。
【0034】
1-2.ガイドレールの敷設方法
次に、ガイドレールの敷設方法について図1図7図9を参照して説明する。
図7は、ガイドレールの敷設方法を示すフローチャートである。図8及び図9は、ガイドレールの敷設方法を示す説明図である。
【0035】
図7に示すように、まず作業者P1は、昇降路100の底部であるピット101に作業足場140を設置する(ステップS1)。次に、最下段のガイドレール10Aをピット101に設置されたピットベース130に固定する(ステップS2)。また、ステップS2の処理では、ガイドレール10にレールブラケット11Aを取り付け、このレールブラケット11Aを壁面102に固定する。これにより、最下段のガイドレール10Aが昇降路100に固定される。
【0036】
次に、最下段のガイドレール10Aの上部に回転防止治具160を取り付ける(ステップS3)。また、ガイド部162の上下方向の下部からピット101の床面までの長さがガイドレール10の長手方向の長さよりも長くなる位置に、回転防止治具160が取り付けられる。すなわち、回転防止治具160は、ガイドレール10の長手方向の長さよりも高い位置に設置される。
【0037】
次に、図8に示すように、最上段のガイドレール10Bを回転防止治具160に挿入し、最上段のガイドレール10Bに昇降装置150の吊り上げ雇152を取り付ける。そして、最上段のガイドレール10Bを昇降装置150によって所定の高さまで上昇させる(ステップS4:吊り上げ工程)。また、ステップS4の処理では、作業者P1は、最上段のガイドレール10Bにレールブラケット11を取り付ける。
【0038】
次に、図9に示すように、作業者P1は、作業足場140上において最上段のガイドレール10Bの下部に次のガイドレール10Cを連結部材30によって接続させる(ステップS5:接続工程)。次に、作業者P1は、ピット101に移動し、接続したガイドレール10Cにレールブラケット11を取り付ける(ステップS6:取付工程)。そして、昇降装置150を操作し、吊り上げたガイドレール10B、10Cをさらに上昇させる(ステップS7)。
【0039】
なお、ロープ151に発生する回転トルクによって、昇降装置150により吊り上げられたガイドレール10B、10Cが回転するおそれがある。そして、ガイドレール10B、10Cが回転することで、ガイドレール10B、10Cに取り付けたレールブラケット11が昇降路100内の他の構造物に接触する可能性がある。これに対して、本例のガイドレールの敷設方法では、回転防止治具160を用いてガイドレール10B、10Cの回転を防止している。これにより、ガイドレール10B、10Cが回転し、レールブラケット11が昇降路100内の他の構造物に接触することを防ぐことができる。
【0040】
また、図2及び図4に示すように、回転防止治具160は、ガイドレール10B、10Cの固定面部10aを壁面102と対向する方向と直交する方向に向けた状態でガイドレール10B、10Cを支持している。これにより、固定面部10aに取り付けられたレールブラケット11が壁面102に接触することを防ぐことができる。
【0041】
さらに、回転防止治具160は、固定面部10a及びレールブラケット11を作業足場140と対向する方向と直交する方向に向けて、ガイドレール10B、10Cを支持している。これにより、クリップボルト18が第1部材12やガイドレール10B、10Cによって隠れることなく、クリップボルト18の締結作業を作業足場140側から容易に行うことができる。
【0042】
また、ガイドレール10B、10Cの摺動面部10bに接触する第1ガイドローラ166a及び第2ガイドローラ166bが回転することで、ガイドレール10B、10Cをスムーズに上昇させることができる。
【0043】
ステップS7の処理が完了すると、最下段のガイドレール10Aを除く全てのガイドレール10B、10Cを接続したか否かを作業者P1が判断する(ステップS8)。ステップS8の処理において、接続されていないガイドレール10Cが残っている場合(ステップS8のNO判定)、ステップ5の処理に戻る。そして、全てのガイドレール10B、10Cの接続及びレールブラケット11の取り付け作業が完了するまで、ステップS5からステップS7の処理を繰り返す。
【0044】
また、ステップS8の処理において、全てのガイドレール10B、10Cの接続作業が完了したと判断した場合(ステップS8のYES判定)、最下段のガイドレール10Aから回転防止治具160を取り外す。次に、最下段のガイドレール10Aの上部に、昇降装置150によって吊り上げたガイドレール10Cを連結部材30によって接続する(ステップS10)。
【0045】
次に、最下段のガイドレール10Aを除く他のガイドレール10B、10Cに取り付けたレールブラケット11を壁面102に固定する(ステップS11)。これにより、ガイドレール10の敷設作業が完了する。
【0046】
上述したように、ガイドレール10の接続作業及びレールブラケット11の取り付け作業を、作業足場140やピット101内で行うことができる。そのため、敷設作業で用いられるガイドレール10やレールブラケット11は、全て昇降路100のピット101内に搬入される。これにより、昇降路に通じるフロア等に作業場を設ける必要がなくなり、昇降路100内でガイドレール10の敷設作業を行うことができる。
【0047】
また、ステップS11の処理におけるレールブラケット11の壁面への固定作業では、作業者P1が昇降路100内を昇降移動するリフトに乗って行われる。上述したように、レールブラケット11は、ガイドレール10を接続する際に、作業足場140やピット101で取り付けられている。そのため、リフトにレールブラケット11を搬入する必要がなくなり、リフトでの作業スペースを広げることができる。
【0048】
さらに、リフトでの作業スペースを広げることができるため、リフトにロボットを載置するスペースができ、ステップS11の処理をロボットによって行うことができる。これにより、低所での作業を作業者P1が行い、ステップS11におけるリフトの高所の作業をロボットが行うことで、ガイドレール10の敷設作業の安全性を高めることができる。
【0049】
おもり側ガイドレール20の敷設方法は、上述したかご側のガイドレール10の敷設方法と同様であるため、その説明は省略する。
【0050】
2.第2の実施の形態例
次に、ガイドレールの敷設方法の第2の実施の形態例について図10を参照して説明する。
図10は、第2の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法を示すフローチャートである。
【0051】
この第2の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法が第1の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法と異なる点は、レールブラケット11の取り付け作業を作業足場140で行う点である。そのため、第1の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法と共通する工程の説明は省略する。
【0052】
図10に示すように、まず作業者P1は、昇降路100の底部であるピット101に作業足場140を設置する(ステップS21)。次に、最下段のガイドレール10Aをピット101に設置されたピットベース130に固定する(ステップS22)。そして、最下段のガイドレール10Aの上部に回転防止治具160を取り付ける(ステップS23)。
【0053】
次に、最上段のガイドレール10Bに吊り上げ雇152を取り付け、ガイドレール10Bを所定の高さまで上昇させる(ステップS24)。そして、図9に示すように、作業足場140上において吊り上げたガイドレール10Bの下部に次のガイドレール10Cを連結部材30によって接続させる(ステップS25)。
【0054】
この第2の実施の形態例にかかる敷設方法では、ステップS25の処理の後に、接続し、かつ吊り上げたガイドレール10B、10Cをさらに所定の高さまで上昇させる(ステップS26)。そして、作業者P1は、作業足場140上において、接続し、かつ吊り上げたガイドレール10Cにレールブラケット11を取り付ける(ステップS27)。そして、昇降装置150を操作し、吊り上げたガイドレール10B、10Cをさらに上昇させる(ステップS28)。
【0055】
なお、以下の工程は、上述した第1の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法と同様であるため、その説明は省略する。このような第2の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法においても、上述した第1の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0056】
この第2の実施の形態例にかかるガイドレール10の敷設方法によれば、ガイドレール10の接続作業だけでなく、レールブラケット11の取り付け作業も作業足場140上で行うことができる。これにより、作業者P1がガイドレール10の接続作業と、レールブラケット11の取り付け作業のために、作業足場140とピット101の床面との間を往復する回数を削減することがき、作業時間の短縮を図ることができる。
【0057】
3.第3の実施の形態例
次に、図11及び図12を参照して第3の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法について説明する。
図11は、第3の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法を示す説明図である。図12は、第3の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法で用いられる位置合わせ治具を示す平面図である。
【0058】
この第3の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法が第1の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法と異なる点は、位置合わせ治具を設けた点である。のため、ここでは、位置合わせ治具について説明し、第1の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0059】
図11に示すように、最下段のガイドレール10Aの上部に回転防止治具160を取り付ける際に、最下段のガイドレール10Aの中間部には、位置合わせ治具190が取り付けられる。回転防止治具160に上下方向の下方からガイドレール10B、10Cを挿入する際に、位置合わせ治具190は、ガイドレール10B、10Cの摺動面部10bと回転防止治具160のガイド凹部165との位置合わせを行う。
【0060】
図12に示すように、位置合わせ治具190は、取付凹部193と、位置合わせ凹部195が形成されている。取付凹部193及び位置合わせ凹部195は、位置合わせ治具190の上下方向に連続して形成された凹部である。取付凹部193には、最下段のガイドレール10Aの摺動面部10bが挿入される。そして、位置合わせ治具190は、取付ボルト194により最下段のガイドレール10Aに取り付けられる。
【0061】
位置合わせ凹部195は、上下方向の上方に配置される回転防止治具160のガイド凹部165を臨む。位置合わせ凹部195には、接続するガイドレール10B、10Cの摺動面部10bが挿入される。また、摺動面部10bは、上下方向と直交する方向から位置合わせ凹部195に差し込まれる。これにより、ガイドレール10B、10Cの摺動面部10bが、上下方向の上方に配置された回転防止治具160のガイド凹部165を臨む。
【0062】
位置合わせ治具190によってガイドレール10B、10Cの摺動面部10bと、回転防止治具160のガイド凹部165との位置合わせを行うことができる。これにより、ガイドレール10B、10Cの摺動面部10bを回転防止治具160のガイド凹部165に上下方向の下方からスムーズに挿入することができる。その結果、ガイドレール10の敷設作業の作業性を向上させることができる。
【0063】
このような第2の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法においても、上述した第1の実施の形態例にかかるガイドレールの敷設方法と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0064】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0065】
上述した実施の形態例では、回転防止治具160を最下段のガイドレール10Aに取り付ける例を説明したが、これに限定されるものではなく、回転防止治具160は、昇降路100内に設置されているガイドレール10Aとは異なる部材に取り付けてもよい。回転防止治具160を最下段のガイドレール10Aとは異なる部材に取り付ける場合、他のガイドレール10B、10Cの接続作業が完了してから、最下段のガイドレール10Aを昇降路100内に固定してもよい。
【0066】
また、ガイド凹部165にガイドローラ166a、166bを設けた回転防止治具160について説明したが、これに限定されるものではなく、ガイド凹部165にガイドローラ166a、166bを設けなくてもよい。また、図12に示す位置合わせ治具190を回転防止治具として適用してもよい。なお、図12に示す位置合わせ治具190を回転防止治具として適用する場合、回転防止治具を設置する高さは、ガイドレール10の長手方向の長さよりも低い位置であってもよい。
【0067】
また、ガイド凹部165の開口形状を、ガイドレール10の摺動面部10bのくびれ部の形状に対応させて、一部の開口幅を狭く形成してもよい。これにより、ガイドレール10をガイド凹部165に挿入した際に、ガイドレール10における上下方向と直交する方向の移動を規制することができ、ガイドレール10が作業者の意図に反してガイド凹部165から抜け出ることを防ぐことができる。
【0068】
さらに、ガイドレール10には、レールブラケット11の取り付け位置を示す印を設けてもよい。印は、例えば、ケガキ線や、印字等によりガイドレール10に設けられる。
【符号の説明】
【0069】
10、10A、10B、10C…ガイドレール、 10a…固定面部、 10b…摺動面部、 11、11A…レールブラケット、 12…第1部材、 13…第2部材、 16…レールクリップ、 17…連結ボルト、 18…クリップボルト、 30…連結部材、 100…昇降路、 101…ピット、 102…壁面、 120…支持部材、 130…ピットベース、 140…作業足場、 150…昇降装置、 151…ロープ、 152…吊り上げ雇、 160、160B…回転防止治具、 161…取付部、 162…ガイド部、 163…取付凹部、 164…取付ボルト、 165…ガイド凹部、 166a、166b…ガイドローラ、 190…位置合わせ治具(回転防止治具)、 193…取付凹部、 194…取付ボルト、 195…位置合わせ凹部、 P1…作業者
図1
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図12