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特許7372767電源回路、電源遮断保護コントローラ、データ記憶装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】電源回路、電源遮断保護コントローラ、データ記憶装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
H02M3/155 G
H02M3/155 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019117722
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2021005924
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 旭
(72)【発明者】
【氏名】柳田 修
(72)【発明者】
【氏名】坂本 忠之
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-79069(JP,A)
【文献】特開昭62-224813(JP,A)
【文献】特開2016-24561(JP,A)
【文献】特開2014-160377(JP,A)
【文献】特開2003-272713(JP,A)
【文献】実開平6-9346(JP,U)
【文献】特開2016-92958(JP,A)
【文献】特開2018-82579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00- 3/44
H02J 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源からの入力電圧を監視し、第1レベルの前記入力電圧が供給されているときに正常状態と判定し、そうでないときに電源遮断状態と判定するコントローラと、
前記コントローラが前記正常状態と判定しているときにイネーブルとなり、前記入力電圧を降圧し、第2レベルの電源電圧を負荷に供給する降圧コンバータと、
(i)前記コントローラが前記正常状態と判定しているときに順方向で動作し、前記電源電圧を昇圧し、第3レベルの電圧によってバックアップキャパシタを充電し、前記コントローラが前記電源遮断状態と判定しているときに、逆方向で動作し、(ii)前記バックアップキャパシタのキャパシタ電圧を降圧し、前記第2レベルの前記電源電圧を前記負荷に供給する降圧モードと、前記バックアップキャパシタの前記キャパシタ電圧を昇圧し、前記電源電圧を負荷に供給する昇圧モードのいずれかで動作可能である昇降圧コンバータと、
前記外部電源から前記降圧コンバータに至る入力ライン上に設けられ、前記コントローラが前記正常状態と判定しているときにオン、前記コントローラが前記電源遮断状態と判定しているときにオフとなる第1スイッチと、
を備えることを特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記第3レベルは前記第1レベルより高いことを特徴とする請求項に記載の電源回路。
【請求項3】
前記負荷はパワーマネージメント回路であることを特徴とする請求項1または2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記第2レベルは3~6Vであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電源回路。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の電源回路を備えることを特徴とするデータ記憶装置。
【請求項6】
スイッチ、降圧コンバータ、バックアップキャパシタ、昇降圧コンバータを備える電源回路に使用される電源遮断保護コントローラであって、
前記スイッチは、外部電源から前記降圧コンバータの入力に至る入力ライン上に設けられるものであり、
前記降圧コンバータは、イネーブル状態において、前記外部電源からの入力電圧を降圧し、第2レベルの電源電圧を負荷に供給するものであり、
前記昇降圧コンバータは、(i)順方向で動作するときに、前記電源電圧を昇圧して得られる電圧によって前記バックアップキャパシタを充電し、(ii)逆方向で動作するときに、(ii-a)前記バックアップキャパシタのキャパシタ電圧を降圧して得られる電圧を、前記電源電圧として前記負荷に供給する動作と、(ii-b)前記バックアップキャパシタのキャパシタ電圧を昇圧して得られる電圧を、前記電源電圧として前記負荷に供給する動作と、が切り替え可能であり、
前記電源遮断保護コントローラは、
前記入力電圧を監視し、正常状態か電源遮断状態かを判定する判定部と、
(i)前記昇降圧コンバータを順方向で動作させることにより、前記キャパシタ電圧を第3レベルに安定化し、(ii)前記昇降圧コンバータを逆方向で動作させることにより、前記負荷に供給される前記電源電圧を、前記第2レベルに安定化するように構成された、昇降圧コンバータのコントローラと、
(i)前記正常状態において前記スイッチをオン、(ii)前記電源遮断状態において前記スイッチをオフするスイッチコントローラと、
(i)前記正常状態において、前記電源遮断保護コントローラの外部に設けられる前記降圧コンバータのコントローラに対するイネーブル信号をアサートして前記降圧コンバータをイネーブル状態とし、前記昇降圧コンバータのコントローラに、前記昇降圧コンバータが前記順方向で動作するように指示し、(ii)前記電源遮断状態において、前記降圧コンバータのコントローラに対する前記イネーブル信号をネゲートして前記降圧コンバータをディセーブル状態とし、前記昇降圧コンバータのコントローラに、前記昇降圧コンバータが前記逆方向で動作するように指示するロジック回路と、
を備えることを特徴とする電源遮断保護コントローラ。
【請求項7】
ひとつの半導体基板に集積化されることを特徴とする請求項に記載の電源遮断保護コントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品には、安定した電源電圧の供給が欠かせない。ソリッドステートドライブやハードディスクなどの記憶装置は、電源電圧が瞬断されると、記憶中のデータの破壊、消失のおそれがある。入力電圧が遮断された後も、負荷がデータ対比などの必要な保護処理を実行する期間、電源電圧を維持することが求められる。このような機能は、電源遮断保護、PLP(Power Loss Protection)、PLI(Power Loss Imminent)、PFP(Power Failure Protection)などと称される。
【0003】
図1は、PLP機能を備えるシステムのブロック図である。システム2は、主電源10、負荷20および電源回路30を備える。主電源10は、12V程度の入力電圧VINを生成する。負荷20は、PMIC(電源管理回路)22および複数の電子部品24_1~24_nを含む。PMIC22は、12Vの電源電圧VDDを受け、それを昇圧あるいは降圧し、電子部品24_1~24_nに供給する。
【0004】
電源回路30は、主電源10と負荷20に設けられる。電源回路30は、スイッチ32、バックアップキャパシタ34、昇圧コンバータ36を備える。
【0005】
スイッチ32は、主電源10と負荷20を結ぶ電源ライン38上に設けられる。有効な入力電圧VINが供給される間、スイッチ32はオンとなり、入力電圧VINが電源電圧VDDとして負荷20に供給される。昇圧コンバータ36の入力端子INは、電源ライン38と接続され、出力端子OUTは、バックアップキャパシタ34と接続される。昇圧コンバータ36は、入力電圧VINが供給されている間、入力電圧VINを昇圧し、バックアップキャパシタ34を充電する。バックアップキャパシタ34の容量をC、バックアップキャパシタ34に発生する電圧をVstorageとすると、バックアップキャパシタ34に蓄えられる電荷QおよびエネルギーEは、以下の式で表される。
Q=C・Vstorage
Eは、E=C・Vstorage /2
【0006】
電源回路30は、入力電圧VINの遮断(喪失)を検出すると、スイッチ32をオフする。そして昇圧コンバータ36は、OUT側を入力、IN側を出力とする降圧コンバータとして逆方向に動作し、バックアップキャパシタ34のキャパシタ電圧Vstorageを、電源電圧VDDの電圧レベルに降圧し、負荷20に供給する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、従来と異なる形式の電源回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、電源回路に関する。電源回路は、外部電源から第1レベルの入力電圧が供給される正常状態においてイネーブルとなり、入力電圧を降圧し、第2レベルの電源電圧を負荷に供給する降圧コンバータと、正常状態において順方向で動作し、電源電圧を昇圧し、第3レベルの電圧によってバックアップキャパシタを充電し、入力電圧が遮断される電源遮断状態において、逆方向で動作し、バックアップキャパシタのキャパシタ電圧を降圧し、第2レベルの電源電圧を負荷に供給する昇圧コンバータと、を備える。
【0009】
本発明の別の態様もまた、電源回路である。この電源回路は、外部電源から第1レベルの入力電圧を入力端子に受け、入力電圧を降圧し、出力端子に接続される負荷に、第2レベルの電源電圧を供給する降圧コンバータと、電源電圧を昇圧し、第3レベルの電圧によってバックアップキャパシタを充電する昇圧コンバータと、を備える。入力電圧の遮断時に、バックアップキャパシタのキャパシタ電圧が、降圧コンバータの入力端子に供給されるように構成される。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、電源遮断保護コントローラに関する。この電源遮断保護コントローラは、スイッチ、降圧コンバータ、昇圧コンバータとともに使用されて電源回路を構成する。電源遮断保護コントローラは、外部電源からの入力電圧を監視し、正常状態か電源遮断状態かを判定する判定部と、昇圧コンバータのコントローラと、(i)正常状態においてスイッチをオン、(ii)電源遮断状態においてスイッチをオフするスイッチコントローラと、(i)正常状態において降圧コンバータをイネーブルとし、昇圧コンバータを順方向で動作させ、(ii)電源遮断状態において降圧コンバータをディセーブルとし、昇圧コンバータを逆方向で動作させるロジック回路と、を備える。
【0011】
本発明のさらに別の態様もまた、電源遮断保護コントローラである。この電源遮断保護コントローラは、第1スイッチ、第2スイッチ、降圧コンバータ、昇圧コンバータとともに使用されて電源回路を構成する。電源遮断保護コントローラは、外部電源からの入力電圧を監視し、正常状態か電源遮断状態かを判定する判定部と、降圧コンバータのコントローラと、昇圧コンバータのコントローラと、(i)正常状態において第1スイッチをオン、第2スイッチをオフ、(ii)電源遮断状態において第1スイッチをオフ、第2スイッチをオンするスイッチコントローラと、(i)正常状態において降圧コンバータおよび昇圧コンバータをイネーブルとし、(ii)電源遮断状態において降圧コンバータおよび昇圧コンバータをディセーブルとするロジック回路と、を備える。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のある態様によれば、従来と異なる形式の電源遮断保護用の電源回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】PLP機能を備えるシステムのブロック図である。
図2】実施の形態1に係る電源回路を備えるシステムのブロック図である。
図3図2のシステムの動作を説明する図である。
図4図2の電源回路の具体的な構成例を示す図である。
図5】実施の形態2に係る電源回路を備えるシステムのブロック図である。
図6図5のシステムの動作を説明する図である。
図7図5の電源回路の具体的な構成例を示す図である。
図8】コンバータコントローラの構成例を示す回路図である。
図9図9(a)、(b)は、コンバータコントローラの動作波形図である。
図10】実施の形態3に係る電源回路を備えるシステムのブロック図である。
図11】システムの動作を説明する図である。
図12】電源回路の具体的な構成例を示す図である。
図13】PLP機能付きのデータ記憶装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさず、あるいは機能を阻害しない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。また、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさず、あるいは機能を阻害しない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0017】
(実施の形態1)
図2は、実施の形態1に係る電源回路100Aを備えるシステム2Aのブロック図である。システム2Aは、主電源10、負荷20および電源回路100Aを備える。主電源10は、たとえばAC/DCコンバータやUSB(Universal Serial Bus)バスであり、所定の第1電圧レベル(以下、12Vとする)の直流の入力電圧VINを電源回路100Aに供給する。
【0018】
負荷20は、PMIC22および複数の電子部品24_1~24_nを含む。図1のシステム2では、PMIC22として、12V入力の部品(すなわち入力電圧と同じ電圧レベルの部品)を選定していたのに対して、図2のシステム2Aでは、第1電圧レベル(12V)より低い第2電圧レベル(たとえば3~6V、以下、5Vとする)を入力とするPMIC22が採用される。
【0019】
電源回路100Aは、第1電圧レベル(12V)の入力電圧VINを受け、負荷20に対して、第1電圧レベルより低い第2電圧レベル(5V)の電源電圧VDDを供給する。
【0020】
電源回路100Aは、スイッチSW1、バックアップキャパシタ102、降圧コンバータ110、昇圧コンバータ120、コントローラ130を備える。コントローラ130は電源回路100Aを統合的に制御する。スイッチSW1は、主電源10から降圧コンバータ110の入力INに至る入力ライン104上に設けられる。降圧コンバータ110の入力端子INには、スイッチSW1を介して入力電圧VINが供給される。降圧コンバータ110の出力OUTは、出力ライン108を介して負荷20と接続される。降圧コンバータ110は、イネーブル・ディセーブルが切り替え可能であり、コントローラ130によってイネーブル状態にセットされると、入力電圧VINを降圧し、その出力OUTから、第2電圧レベルに安定化された電源電圧VDDを出力する。電源電圧VDDは、出力ライン108を介して負荷20に供給される。
【0021】
昇圧コンバータ120の入力INは、出力ライン108と接続され、昇圧コンバータ120の出力OUTは、バックアップキャパシタ102と接続される。昇圧コンバータ120は、コントローラ130によるモード制御に応じて、電力伝送の方向を入れ替えることが可能である。昇圧コンバータ120は、第1モード(昇圧モード)において順方向で動作し、入力INの電圧VDDを昇圧し、バックアップキャパシタ102を、第1電圧レベル(12V)および第2電圧レベル(5V)よりも高い第3電圧レベル(以下、30Vとする)に充電する。これによりバックアップキャパシタ102に電力が蓄えられる。バックアップキャパシタ102は、電源喪失状態における電源となる。
【0022】
第2モード(降圧モード)では、昇圧コンバータ120の入力と出力の関係が入れ替わり、バックアップキャパシタ102が昇圧コンバータ120の電源となる。昇圧コンバータ120は、逆方向で動作し、キャパシタ電圧Vstorageを降圧し、出力ライン108に第2電圧レベルに安定化された電源電圧VDD’を発生する。
【0023】
コントローラ130は、入力電圧VINを監視し、有効な入力電圧VINが供給されている正常状態であるか、入力電圧VINが遮断されている電源喪失状態であるかを判定する。正常状態では、コントローラ130は、制御信号SCTRL1をアサートし、スイッチSW1をオンさせ、制御信号SEN1をアサートして降圧コンバータ110をイネーブル状態とする。また、制御信号SMODEによって、昇圧コンバータ120を第1モード(昇圧モード)にセットする。
【0024】
電源喪失状態では、コントローラ130は、制御信号SCTRL1をネゲートしてスイッチSW1をオフし、制御信号SEN1をネゲート(デアサート)して降圧コンバータ110をディセーブル状態とする。また、制御信号SMODEによって昇圧コンバータ120を第2モード(降圧モード)にセットする。
【0025】
以上がシステム2Aの構成である。続いてその動作を説明する。図3は、図2のシステム2Aの動作を説明する図である。時刻tにシステムが起動し、入力電圧VINが供給される。コントローラ130は、時刻tに有効な入力電圧VINを検出すると、制御信号SCTRL1および制御信号SEN1をアサートして、スイッチSW1をオンし、降圧コンバータ110をイネーブルとする。これにより、入力電圧VINが降圧され、出力ライン108には5Vの電源電圧VDDが発生し、負荷20に供給される。
【0026】
またコントローラ130は、制御信号SMODEによって、昇圧コンバータ120を第1モードにセットする。これによりバックアップキャパシタ102が充電され、キャパシタ電圧Vstorageが上昇する。時刻tにキャパシタ電圧Vstorageが第3電圧レベル(30V)に達し、その後は一定の電圧レベルに維持される。時刻t以降、昇圧コンバータ120は低消費電力モードに設定され、バックアップキャパシタ102の電圧を一定レベルに維持し続ける。なおバックアップキャパシタ102のリークが無視できる場合には、時刻t以降、昇圧コンバータの動作を停止してもよい。
【0027】
時刻tに入力電圧VINが喪失状態となる。時刻tにコントローラ130により電源喪失状態が検出されると、制御信号SCTRL1およびSEN1がネゲートされ、スイッチSW1がオフとなり、降圧コンバータ110がディセーブル状態となる。
【0028】
またコントローラ130は、制御信号SMODEによって昇圧コンバータ120を第2モードにセットする。これにより、昇圧コンバータ120は、バックアップキャパシタ102を電源として、出力ライン108の電圧VDDを一定に維持し続ける。キャパシタ電圧Vstorageは時間とともに低下していく。キャパシタ電圧Vstorageが5Vを下回ると、電源電圧VDDも低下し始める。
【0029】
以上がシステム2Aの動作である。続いてシステム2Aの利点を説明する。
【0030】
(第1の利点)
システム2Aでは、負荷20に供給すべき電源電圧VDDの電圧レベルが、入力電圧VINよりも低い電圧レベルに変更されている。これにより、負荷20の入力に接続される平滑キャパシタC1の耐圧を下げることができる。すなわち図1のシステム2では、このキャパシタC1は、耐圧が12Vより高い部品を選定する必要があったが、図2のシステム2Aでは、キャパシタC1の耐圧は5Vよりも高ければよく、例えば6.3Vの部品を選定できる。これにより、キャパシタC1のコストを下げることができる。また低耐圧のキャパシタの方が供給量が多く、また選択肢も多いため、システム2の安定供給の観点からも有利である。
【0031】
(第2の利点)
図1のシステム2では、昇圧コンバータ36の入力INが、入力電圧VINと同じ電圧レベル(12V)の電源ライン38と接続されている。この場合、昇圧コンバータ36は、電力遮断状態において、バックアップキャパシタ34のキャパシタ電圧Vstorageが12Vに低下するまで、負荷20が要求する電圧レベル12Vを出力し続けることができる。
【0032】
これに対して、図2のシステム2Aでは、昇圧コンバータ120の入力INには、入力電圧VINより低い電圧レベル(5V)の出力ライン108と接続される。これにより昇圧コンバータ120は、電力遮断状態において、キャパシタ電圧Vstorageが5Vに低下するまで、負荷20が要求する電圧レベル5Vを出力し続けることができる。つまり電源喪失後の負荷20の動作時間を延ばすことができる。
【0033】
図4は、図2の電源回路100Aの具体的な構成例を示す図である。電源回路100Aは、PLPコントローラ200Aを備える。PLPコントローラ200Aは、図2のコントローラ130と、昇圧コンバータ120の一部を集積化した機能ICである。
【0034】
PLPコントローラ200AのVINピンには、入力電圧VINが供給される。入力電圧VINは抵抗R11,R12により分圧される。コンパレータ202は、分圧後の入力電圧VIN’をしきい値電圧VTHと比較し、比較結果を示す検出信号SDETを生成する判定部である。検出信号SDETは、VIN’>VTHのとき正常状態を示すローレベルとなり、VIN’<VTHのとき電源喪失状態を示すハイレベルとなる。
【0035】
スイッチSW1は、NMOSトランジスタであり、そのゲートは、PLPコントローラ200Aのスイッチゲート(SW_G)ピンと接続される。スイッチコントローラ204は検出信号SDETを受け、正常状態においてスイッチSW1をオン、電源喪失状態においてスイッチSW1をオフする。なおスイッチSW1をPLPコントローラ200Aに集積化してもよい。なおスイッチSW1をPMOSトランジスタで構成してもよい。
【0036】
PLPコントローラ200Aは、図示しないホストコントローラと接続される。イネーブル(EN)ピンおよびシリアルインタフェース用のピンVCC_IO,SCL,SDA、割り込みピンINT_B,PLP_INT_Bおよびインタフェース回路206は、ホストコントローラとの通信のために設けられる。
【0037】
コントロールロジック208は、ホストコントローラからの制御指令にもとづいて、PLPコントローラ200Aの各ブロックの動作を制御する。コントロールロジック210は、検出信号SDETとコントロールロジック208からの制御信号に応じて、降圧コンバータ110に対するイネーブル信号SEN1を生成する。
【0038】
昇圧コンバータ120は、スイッチSW3、スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2、インダクタL1、ブートストラップ用のキャパシタC2、スイッチコントローラ212、コンバータコントローラ214を含む。
【0039】
スイッチコントローラ212は、正常状態において、スイッチSW3をオンする。コンバータコントローラ214は正常状態において第1モードにセットされ、キャパシタ電圧Vstorageが目標レベル(30V)に近づくように、トランジスタM1,M2をスイッチングをフィードバック制御する。キャパシタ電圧Vstorageが目標レベルに達した後、コンバータコントローラ214は低消費電力モードとなり、キャパシタ電圧Vstorageを目標レベルに維持し続ける。キャパシタからのリークが無視できる場合には、キャパシタ電圧Vstorageが目標レベルに達した後、スイッチコントローラ212はスイッチSW3をオフし、コンバータコントローラ214の動作を停止してもよい。
【0040】
降圧コンバータ110は、コンバータの制御IC112と、インダクタL2、ブートストラップキャパシタC3、出力キャパシタC4を含む。制御IC112は、トランジスタM3,M4、コンバータコントローラ114を含む。コンバータコントローラ114は、イネーブルピンENに入力される制御信号SENがアサートされるとアクティブとなり、電源電圧VDDが目標レベル(5V)に近づくように、トランジスタM3,M4をフィードバック制御する。
【0041】
以上が電源回路100Aの構成例である。続いてその変形例を説明する。
図4において、コンバータコントローラ114を、PLPコントローラ200Aに集積化してもよい。またスイッチSW1をPLPコントローラ200Aに集積化してもよい。
【0042】
トランジスタM2,M3は、PMOSトランジスタであってもよく、この場合、ブートストラップキャパシタは省略できる。トランジスタM1~M4は、ディスクリート素子であってもよい。
【0043】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2に係る電源回路100Bを備えるシステム2Bのブロック図である。システム2Bは、主電源10、負荷20および電源回路100Bを備える。主電源10および負荷20は、図2(実施の形態1)と同様である。
【0044】
電源回路100Bは、第1電圧レベル(12V)の入力電圧VINを受け、負荷20に対して、第1電圧レベルより低い第2電圧レベル(5V)の電源電圧VDDを供給する。
【0045】
電源回路100Bは、スイッチSW1,SW2、バックアップキャパシタ102、降圧コンバータ110、昇圧コンバータ120、コントローラ130を備える。コントローラ130は電源回路100Bを統合的に制御する。
【0046】
スイッチSW1は、主電源10から降圧コンバータ110の入力INに至る入力ライン104上に設けられる。降圧コンバータ110の入力端子INには、スイッチSW1を介して入力電圧VINが供給される。降圧コンバータ110の出力OUTは、出力ライン108を介して負荷20と接続される。
【0047】
降圧コンバータ110は、入力端子INの電圧を降圧し、その出力OUTから第2電圧レベルに安定化された電源電圧VDDを出力する。電源電圧VDDは、出力ライン108を介して負荷20に供給される。
【0048】
昇圧コンバータ120の入力INは、出力ライン108と接続され、昇圧コンバータ120の出力OUTは、バックアップキャパシタ102と接続される。昇圧コンバータ120は、イネーブル・ディセーブルが切り替え可能であり、コントローラ130によってイネーブル状態にセットされると、入力INの電圧VDDを昇圧し、バックアップキャパシタ102を、第1電圧レベル(12V)および第2電圧レベル(5V)よりも高い第3電圧レベル(以下、30Vとする)に充電する。これによりバックアップキャパシタ102に電力が蓄えられる。バックアップキャパシタ102は、電源喪失状態における電源となる。
【0049】
電源回路100Bは、入力電圧VINの遮断時に、キャパシタ電圧Vstorageが、降圧コンバータ110の入力INに供給されるように構成される。具体的は電源回路100Bは、バックアップキャパシタ102から降圧コンバータ110の入力INに至るバックアップライン106上に設けられたスイッチSW2を備える。スイッチSW1がオフ、スイッチSW2がオンの状態では、キャパシタ電圧Vstorageが降圧コンバータ110の入力電圧となる。
【0050】
コントローラ130は、入力電圧VINを監視し、正常状態であるか電源喪失状態であるかを判定する。正常状態においてコントローラ130は、制御信号SCTRL1をアサート、制御信号SCTRL2をネゲートし、スイッチSW1をオンさせ、スイッチSW2をオフさせる。降圧コンバータ110は、入力端子INに供給される入力電圧VINを降圧し、電源電圧VDDを生成する。
【0051】
またコントローラ130は、正常状態において昇圧コンバータ120をイネーブル状態とする。これにより降圧コンバータ110によって負荷20に電源電圧VDDが供給され、昇圧コンバータ120によってバックアップキャパシタ102が充電される。
【0052】
電源喪失状態においてコントローラ130は、制御信号SCTRL1をネゲート、制御信号SCTRL2をアサートし、スイッチSW2をオンさせ、スイッチSW1をオフさせる。降圧コンバータ110は、入力端子INに供給されるキャパシタのキャパシタ電圧Vstorageを降圧し、電源電圧VDDを生成する。
【0053】
ここで、降圧コンバータ110の入力端子INに供給される電圧は、通常状態と電源遮断状態で大きく異なる。このような場合において、降圧コンバータ110の内部のコンバータコントローラを同じ条件で動作させると、系が不安定になったり、効率が低下したりするおそれがある。そこで降圧コンバータ110は、入力端子INに供給される電圧レベルに応じて、動作パラメータを変更可能に構成するとよい。動作パラメータは、コントローラ130が生成する制御信号SMODEに応じて選択される。
【0054】
以上がシステム2Bの構成である。続いてその動作を説明する。図6は、図5のシステム2Bの動作を説明する図である。時刻tにシステムが起動し、入力電圧VINが供給される。コントローラ130は、時刻tに有効な入力電圧VINを検出すると、制御信号SCTRL1をアサートしてスイッチSW1をオンする。降圧コンバータ110は、入力電圧VINを受け、出力ライン108に5Vの電源電圧VDDを発生し、負荷20に供給する。
【0055】
またコントローラ130は、制御信号SEN2をアサートし、昇圧コンバータ120を動作させる。これによりバックアップキャパシタ102が充電され、キャパシタ電圧Vstorageが上昇する。時刻tにキャパシタ電圧Vstorageが第3電圧レベル(30V)に達し、その後は一定の電圧レベルに維持される。バックアップキャパシタ102は無負荷状態であるから、時刻t以降、制御信号SEN2をネゲートし、昇圧コンバータ120の動作を停止してもよい。
【0056】
時刻tに入力電圧VINが喪失状態となる。時刻tにコントローラ130により電源喪失状態が検出されると、制御信号SCTRL1がネゲートされ、制御信号SCTRL2がアサートされる。これにより降圧コンバータ110の入力端子INには、30Vのキャパシタ電圧Vstorageが供給され、バックアップキャパシタ102を電源として、出力ライン108の電圧VDDを一定に維持し続ける。キャパシタ電圧Vstorageは時間とともに低下していく。キャパシタ電圧Vstorageが5Vを下回ると、電源電圧VDDも低下し始める。
【0057】
以上がシステム2Bの動作である。続いてシステム2Bの利点を説明する。
(第1の利点)
第1の利点は、実施の形態1と同様であり、負荷20の入力に接続される平滑キャパシタC1の耐圧を下げることができる点である。
【0058】
(第2の利点)
実施の形態1では、電源喪失時に、昇圧コンバータ120を逆方向で動作させて負荷20に電力を供給するため、昇圧コンバータ120には、負荷20を駆動するのに足る駆動能力(電流容量)が要求される。これに対して実施の形態2では、昇圧コンバータ120はバックアップキャパシタ102の充電にのみ使用される。したがって、実施の形態2では実施の形態1に比べて、昇圧コンバータ120の駆動能力を低く設計することができる。このことは、昇圧コンバータ120を構成するトランジスタやインダクタのサイズを小さくでき、また安価な部品を選択できることを意味する。
【0059】
なお、昇圧コンバータ120の駆動能力を低く設計すると、図6に一点鎖線で示すように、充電に要する時間が長くなるが、それはデメリットにはならない。
【0060】
図7は、図5の電源回路100Bの具体的な構成例を示す図である。電源回路100Bは、PLPコントローラ200Bを備える。PLPコントローラ200Bは、図5のコントローラ130と、降圧コンバータ110の一部および昇圧コンバータ120の一部を集積化した機能ICである。
【0061】
PLPコントローラ200Bは、降圧コンバータ110のコンバータコントローラ114を含む。コンバータコントローラ114には、検出信号SDETが入力される。上述のように、降圧コンバータ110の降圧比(VDD/VIN)は、正常状態と電源遮断状態において大きくことなる。具体的には正常状態における降圧比5/12であり、電源遮断状態における降圧比は5/30である。
【0062】
コンバータコントローラ114は、コンパレータ202からの検出信号SDETに応じて、動作パラメータが変更可能に構成される。各状態における動作パラメータは、降圧コンバータ110の安定性や効率を考慮して決めればよい。動作パラメータについては後述する。
【0063】
スイッチSW2は、オフ状態において、いずれの方向にも電流が流れない双方向スイッチであり、逆直列に接続される同極性の2個のトランジスタ(この例では2個のNMOSトランジスタ)を含む。PLPコントローラ200BのスイッチゲートピンSW_G2は、スイッチSW2と接続される。スイッチコントローラ204は、検出信号SDETに応じて、スイッチSW1とSW2を相補的に制御する。
【0064】
昇圧コンバータ120に着目すると、実施の形態2では、昇圧コンバータ120は昇圧動作のみ行い、逆向きの降圧動作は不要である。したがって、図4のトランジスタM2に代えて、ダイオードD2が設けられる。なお、ダイオードD2に代えてトランジスタM2を用いてもよく、トランジスタM2はPLPコントローラ200Bに集積してもよい。またトランジスタM3,M4、スイッチSW1,SW2をPLPコントローラ200Bに集積化してもよい。
【0065】
図8は、コンバータコントローラ114の構成例を示す回路図である。コンバータコントローラ114は、電圧モードの変調器であり、エラーアンプ220、オシレータ222、PWMコンパレータ224およびドライバ226を含む。エラーアンプ220は、電源電圧VDDに応じたフィードバック信号VFBと、その目標電圧VREFの誤差を増幅し、誤差信号VERRを生成する。オシレータ222は、のこぎり波あるいは三角波の周期信号VOSCを生成する。PWMコンパレータ224は、誤差信号VERRと周期信号VOSCを比較し、比較結果にもとづくパルス信号SPWMを生成する。なお、パルス信号SPWMは、所定の周波数のクロックと同期してオンレベルに遷移し、PWMコンパレータ224の出力の遷移点(誤差信号VERRと周期信号VOSCの交点)においてオフレベルに遷移してもよい。
【0066】
コンバータコントローラ114の動作パラメータは、オシレータ222が生成する周期信号VOSCのスロープの傾きであってもよい。図9(a)、(b)は、コンバータコントローラ114の動作波形図である。図9(a)は、周期信号VOSCの傾きが小さい場合を、図9(b)は、周期信号VOSCの傾きが大きい場合を示す。周期信号VOSCの傾きを大きくすると、同じ誤差信号VERRを与えたときのPWM信号SPWMのデューティ比dが大きくなる。定常状態における降圧コンバータの降圧比は、PWM信号SPWMのデューティ比dと等しい。つまり、正常状態と電源遮断状態とで、周期信号VOSCの傾きを変化させることで、系の安定性を高めることができる。
【0067】
コンバータコントローラ114は、PIコントローラなどを用いてデジタル回路で構成してもよい。この場合、比例ゲインや積分ゲインなどのパラメータを、正常状態と電源遮断状態とで変化させてもよい。
【0068】
(実施の形態3)
図10は、実施の形態3に係る電源回路100Cを備えるシステム2Cのブロック図である。システム2Cは、主電源10、負荷20および電源回路100Cを備える。負荷20は、図1の従来のシステム2と同様に、入力電圧VINと同じ電圧レベルの電源電圧VDDを要求する。
【0069】
電源回路100Cは、第1電圧レベル(12V)の入力電圧VINを受け、負荷20に対して、第1電圧レベル(12V)の電源電圧VDDを供給する。
【0070】
電源回路100Cは、スイッチSW1、バックアップキャパシタ102、昇降圧コンバータ140、コントローラ130を備える。コントローラ130は電源回路100Cを統合的に制御する。
【0071】
スイッチSW1は、主電源10から負荷20に至る電源ライン101上に設けられる。昇降圧コンバータ140の入力INは、電源ライン101と接続され、出力OUTにはバックアップキャパシタ102が接続される。
【0072】
昇降圧コンバータ140は、入力INから出力OUTに電力を伝送する第1モードと、出力OUTから入力INに電力を伝送する第2モードとが、コントローラ130が生成する制御信号SMODEに応じて切りかえ可能である。第1モードでは、昇降圧コンバータ140は、電源ライン101に発生する電源電圧VDD(入力電圧VIN)を昇圧し、バックアップキャパシタ102を充電する。
【0073】
第2モードでは、昇降圧コンバータ140は、バックアップキャパシタ102の電圧Vstorageを入力とし、Vstorage>12Vの範囲では、降圧コンバータとして動作し、Vstorage<12Vの範囲では昇圧コンバータとして動作する。
【0074】
以上がシステム2Cの構成である。続いてその動作を説明する。図11は、システム2Cの動作を説明する図である。時刻tにシステムが起動し、入力電圧VINが供給される。コントローラ130は、時刻tに有効な入力電圧VINを検出すると、制御信号SCTRL1をアサートしてスイッチSW1をオンする。これにより12Vの入力電圧VINが電源ライン101を介して負荷20に供給される。
【0075】
またコントローラ130は、制御信号SMODEによって、昇降圧コンバータ140を第1モードに設定する。これによりバックアップキャパシタ102が充電され、キャパシタ電圧Vstorageが上昇する。時刻tにキャパシタ電圧Vstorageが第3電圧レベル(30V)に達し、その後は一定の電圧レベルに維持される。バックアップキャパシタ102は無負荷状態であるから、時刻t以降、昇降圧コンバータ140を停止してもよい。
【0076】
時刻tに入力電圧VINが喪失状態となる。時刻tにコントローラ130により電源喪失状態が検出されると、制御信号SCTRL1がネゲートされ、スイッチSW1がオフする。またコントローラ130は、制御信号SMODEによって、昇降圧コンバータ140を第2モードに設定する。初めは昇降圧コンバータ140は12Vより高いキャパシタ電圧Vstorageを12Vの電源電圧VDDに降圧する降圧コンバータとして動作する。キャパシタ電圧Vstorageは時間とともに低下していく。そしてキャパシタ電圧Vstorageが12Vを下回ると、昇圧コンバータとして動作し、電源電圧VDDを12Vに維持し続ける。
【0077】
以上がシステム2Cの動作である。続いてシステム2Cの利点を説明する。図1のシステム2では、キャパシタ電圧Vstorageが12Vを下回ると、電源電圧VDDを12Vに維持することができなくなる。これに対して、図10のシステム2Cによれば、キャパシタ電圧Vstorageが12Vを下回っても、昇降圧コンバータ140を昇圧コンバータとして動作させることにより、電源電圧VDDを12Vに維持し続けることができる。
【0078】
図12は、電源回路100Cの具体的な構成例を示す図である。電源回路100Cは、PLPコントローラ200Cを備える。PLPコントローラ200Cは、図10のコントローラ130と、昇降圧コンバータ14の一部を集積化した機能ICである。
【0079】
スイッチSW1は、オフ状態において、いずれの方向にも電流が流れない双方向スイッチであり、逆直列に接続される2個の同じ極性のトランジスタ(この例ではNMOSトランジスタ)を含む。PLPコントローラ200CのスイッチゲートピンSW_Gは、スイッチSW1のゲートと接続される。スイッチコントローラ204は、検出信号SDETに応じて、スイッチSW1を制御する。
【0080】
昇降圧コンバータ140は、コンバータコントローラ216およびトランジスタM11~M14、インダクタL3、ブートストラップキャパシタC11,C12、電流センス抵抗Rs2を含む。トランジスタM11~M14あるいはスイッチSW1は、PLPコントローラ200Cに集積化してもよい。
【0081】
コンバータコントローラ216は、コンパレータ202からの検出信号SDETにもとづいて、第1モードと第2モードが切り替えられる。またコンバータコントローラ216は、第2モードにおいて、キャパシタ電圧Vstorageと電源電圧VDDの大小関係にもとづいて、降圧動作と昇圧動作を切り替える。
【0082】
その他は実施の形態1,2と同様である。
【0083】
(用途)
実施の形態に係る電源回路100A~100C(以下、符号100を付して総称する)は、データ記憶装置300に用いることができる。図13は、PLP機能付きのデータ記憶装置300のブロック図である。データ記憶装置300はたとえばSSD(Solid State Drive)であり、電源回路100、PMIC302、コントローラ304やNANDメモリ306、キャッシュメモリ308、インタフェース310を備える。
【0084】
データ記憶装置300は、サーバー用であってもよいし、コンピュータに内蔵されてもよいし、ポータブルのSSDであってもよい。
【0085】
電源回路100は、AC/DCコンバータやUSBバス(上述の主電源10、図13に不図示)から直流の入力電圧VDCを受け、PMIC302に所定の電圧レベルの電源電圧VDDを供給する。PMIC302は、コントローラ304やNANDメモリ306、キャッシュメモリ308、インタフェース310に、電源電圧を供給する。
【0086】
なお電源回路100の用途はデータ記憶装置300に限定されず、電源遮断後にも、ある時間、電源電圧を維持すべき用途に利用できる。
【0087】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0088】
2 システム
10 主電源
20 負荷
22 PMIC
24 電子部品
100 電源回路
SW1 スイッチ
102 バックアップキャパシタ
104 入力ライン
106 バックラップライン
108 出力ライン
110 降圧コンバータ
114 コンバータコントローラ
120 昇圧コンバータ
130 コントローラ
140 昇降圧コンバータ
200 PLPコントローラ
202 コンパレータ
204 スイッチコントローラ
206 インタフェース回路
208,210 コントロールロジック
212 スイッチコントローラ
214,216 コンバータコントローラ
300 データ記憶装置
302 PMIC
304 コントローラ
306 NANDメモリ
308 キャッシュメモリ
310 インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13